【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人 科学技術振興機構「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」「無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
Atsuto SEKO et al.,Prediction of ground-state structures and order-disorder phase transitions in II-III spinel oxides: A combined cluster-expansion method and first-principles study,PHYSICAL REVIEW B,2006年,Vol.73, No.18,pp.184117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)及び
図1(b)は、第1実施形態に係る磁気抵抗素子を例示する模式的断面図である。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子110は、第1磁性層11、第2磁性層12及び第1非磁性層11Nを含む。第1非磁性層11Nは、第1磁性層11と第2磁性層12との間に設けられる。
【0009】
第1磁性層11は、例えば、強磁性層である。第2磁性層12は、例えば、強磁性層である。第1非磁性層11Nは、例えば、トンネルバリア層である。例えば、第1非磁性層11Nは、酸化物を含む。
【0010】
図1(b)に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子110Aの例では、第1磁性層11、第2磁性層12及び第1非磁性層11Nに加えて、ベース層10S及び第2非磁性層12Nが設けられている。ベース層10Sと第2磁性層12との間に、第1磁性層11が設けられる。第2非磁性層12Nは、第1磁性層11と第1非磁性層11Nとの間に設けられる。第2非磁性層12Nは、例えば、非磁性の金属層である。第2非磁性層12Nと第1非磁性層11Nとの間の境界は、不明確である場合がある。第2非磁性層12Nが薄い場合(例えば0.6nm以下)、第2非磁性層12N及び第1非磁性層11Nは、一体として観測される場合がある。
【0011】
後述するように、実施形態において、第1磁性層11、第2磁性層12及び第1非磁性層11Nの他に、種々の層が設けられても良い。
【0012】
例えば、磁気抵抗素子110及び110Aに、エネルギー(例えば、磁界、電界、電流、電圧及び応力の少なくともいずれか)が加わると、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗が変化する。
【0013】
電気抵抗の変化は、例えば、磁気抵抗効果に基づく。例えば、加わるエネルギーに応じて、第1磁性層11の磁化及び第2磁性層12の磁化の少なくともいずれかの方向が変化する。例えば、加わるエネルギーに応じて、これらの磁化の間の角度が変化する。これにより、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗が変化する。
【0014】
例えば、第1磁性層11は、例えば、自由層として機能する。第1磁性層11は、例えば、記憶層として機能する。第2磁性層12は、例えば、参照層として機能する。
【0015】
第1磁性層11と第2磁性層12とを結ぶ第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。第1方向は、第1磁性層11、第1非磁性層11N及び第2磁性層12の積層方向に対応する。
【0016】
第1非磁性層11Nは、第1方向(Z軸方向)と交差する面11Naを有する。面11Naは、例えば、第1磁性層11に対向する面である。面11Naは、例えば、{100}面に沿う。実施形態において、面11Naは、例えば、{100}面に対して完全に平行でなくても良く、例えば、傾斜していても良い。面11Naと{100}面との間の角度は、例えば、10度以下でも良い。{100}面は、例えば、第1磁性層11の結晶方位の面でも良い。
【0017】
第1非磁性層11Nの厚さ(第1非磁性層厚t1、
図1(a)参照)は、例えば、0.2nm(ナノメートル)以上4nm以下である。このような厚さにより、例えば、適正なトンネルバリア効果が得られる。後述するように、このような厚さにより、高い磁気抵抗比が得られる。第1非磁性層厚t1は、第1方向(Z軸方向)に沿った、第1非磁性層11Nの長さである。第1非磁性層厚t1は、例えば、1.1nm以上3.3nm以下でも良い。第1非磁性層厚t1は、例えば、1.1nm以上3.0nm以下でも良い。第1非磁性層厚t1は、例えば、1.1nm以上2.8nm以下でも良い。
【0018】
既に説明したように、第1非磁性層11Nは、酸化物を含む。この酸化物は、例えば、Mg及びGaを含む。この酸化物は、MgGa
2O
4を含む。第1非磁性層11Nに含まれる酸化物の他の例については、後述する。
【0019】
実施形態においては、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、逆スピネル構造を含む。
【0020】
これにより、高い磁気抵抗比MRが得られることが分かった。例えば、低い面積抵抗RAを維持しつつ高い磁気抵抗比MRが得られる。磁気抵抗比MRは、例えば、トンネル磁気抵抗比(TMR比)である。
【0021】
以下、実施形態に係る磁気抵抗素子の特性の例について説明する。以下に説明する実験の試料(第1試料)は、磁気抵抗素子110Aの構成を有する。
【0022】
この例では、ベース層10Sは、Cr層である。第1磁性層11は、Fe層である。第2非磁性層12Nは、Mg層である。このMg層の厚さは、0.6nmである。第1非磁性層11Nは、MgGa
2O
4層である。このMgGa
2O
4層の厚さ(第1非磁性層厚t1)は、3.0nmである。第2磁性層12は、Fe層である。
【0023】
本明細書において、「第1材料名/第2材料名」の表記が記載される場合がある。この表記は、第2材料名の層の上に第1材料名の層が設けられることを示す。本明細書において、「第1材料名(第1長さ)」の表記が記載される場合がある。この表記は、第1材料名の層の厚さが、第1長さであることを示す。例えば、「Fe/MgGa
2O
4(3.0nm)」の記載は、3.0nmの厚さのMgGa
2O
4の層の上に、Fe層が設けられている状態に対応する。
【0024】
この第1試料においては、Fe/MgGa
2O
4(3.0nm)/Mg(0.6nm)/Fe/Crの構造が設けられる。
【0025】
第1試料の作製条件は、以下である。基板(図示しない)の上に、Cr層が、室温のスパッタにより形成され、その後、800℃で加熱処理される。このCr層の上に、Fe層が、室温のスパッタにより形成され、その後、400℃で加熱処理される。このFe層の上に、Mg層が、室温のスパッタにより形成され、さらに、このMg層の上に、MgGa
2O
4層が、室温のスパッタにより形成される。その後、500℃で加熱処理される。このMgGa
2O
4層の上に、Fe層が、室温のスパッタにより形成され、その後、400℃で加熱処理される。このようにして、第1試料が作製される。
【0026】
図2は、実施形態に係る磁気抵抗素子の特性を例示するグラフ図である。
図2の横軸は、上記の第1試料SP1(磁気抵抗素子110A)に外部から加えられる外部磁界Ha(エルステッド:Oe)である。縦軸は、磁気抵抗比MR1(%)である。磁気抵抗比MR1の測定温度は、300K(ケルビン)である。
【0027】
図2に示すように、第1試料SP1においては、磁気抵抗比MR1(室温)は、約121%と高い。第1試料SP1において、例えば、コヒーレントなトンネル効果が発現していると示唆される。
【0028】
以下、試料の構造解析結果の例について説明する。この構造解析の試料は、第1試料SP1においてMg層を設けない構造を有する。すなわち、構造解析の試料は、
図1(a)に例示した磁気抵抗素子110の構造を有する。この他は、第1試料SP1と同様である。
【0029】
図3(a)〜
図3(e)は、磁気抵抗素子の解析結果を例示する写真像である。
図3(a)は、試料の断面STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)像である。この像は、Fe[110]面に沿って観察された像である。
図3(b)〜
図3(d)は、エネルギー分散型X線分光法(EDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による分析結果を示す。
図3(b)〜
図3(d)は、Mg、Ga及びOの分布のそれぞれに対応する。
図3(e)は、試料のナノ電子線回折像を示す。この像は、試料中の第1非磁性層11N(MgGa
2O
4層)の近傍の領域から取得される。
図3(e)に示される数字は、反射スポットの結晶面を示す。
【0030】
図3(a)から分かるように、MgGa
2O
4層の界面は極めて平坦である。試料中の積層構造は、(001)配向を伴ったエピタキシャル成長により形成されたと考えられる。MgGa
2O
4層は、例えば、立方晶の逆スピネル構造を有する。MgGa
2O
4層は、正方晶型に僅かに歪んでいても良い。これは、MgGa
2O
4層を含まれる積層構造に生じる応力の影響であると考えられる。この試料のMgGa
2O
4層において、転位が実質的に形成されていない。格子整合した界面が得られている。
【0031】
図3(b)〜
図3(d)に示すように、MgGa
2O
4層は、均一である。界面における析出、または、相互元素拡散が観測されない。RBS分析結果により、このMgGa
2O
4層は、実質的に化学量論組成を有することが分かっている。
【0032】
図3(e)から分かるように、試料の積層構造は、Fe(001)[110]//MgGa
2O
4(001)[100]のエピタキシャル関係を有する。
図3(e)において、MgGa
2O
4の{022}スポットが存在する。このことから、MgGa
2O
4がスピネル構造に規則化していることが、示唆される。スピネル構造は、正スピネル構造または逆スピネル構造を含む。
【0033】
以下に説明するように、上記の試料においては、このスピネル構造は、逆スピネル構造を含む。
【0034】
図4(a)及び
図4(b)は、磁気抵抗素子の分析結果を例示するグラフ図である。
これらの図は、第2〜第4試料SP2〜SP4のXANES(エックス線吸収端近傍構造:X-ray Absorption Near Edge Structure)分析結果の例を示す。第2〜第4試料SP2〜SP4は、上記の第1試料SP1と同様の構成(
図1(b)に例示した磁気抵抗素子110Aの構造)を有する。第2〜第4試料SP2〜SP4においては、MgGa
2O
4層(第1非磁性層11N)の第1非磁性層厚t1が異なる。第2〜第4試料SP2〜SP4において、第1非磁性層厚t1は、それぞれ、2.8nm、1.9nm及び1.1nmである。この分析結果では、Gaの結合状態が着目されている。
図4(b)は、
図4(a)の一部の拡大図である。これらの図において、横軸は、フォトンエネルギーEp(eV)である。縦軸は、強度Intである。強度Intは、規格化されて表示されている。第2〜第4試料SP2〜SP4においては、Mg層及びMgGa
2O
4層の室温でのスパッタによる形成の後に、400℃の熱処理が行われる。この温度の違いの他は、第1試料SP1と同様の条件で第2〜第4試料SP2〜SP4が作製される。
【0035】
図4(a)及び
図4(b)において、10370eV(エレクトロンボルト)以上10385eV以下のフォトンエネルギーEpの範囲において、ピークが得られる。このピークが、Gaの結合状態に関係する。この例では、このピークは、Ga−K殻の電子エネルギーに対応するフォトンエネルギーEpのピークに対応する。
【0036】
第1非磁性層厚t1が1.1nmのときにおいて、このフォトンエネルギーEpの範囲において、2つのピークが明確に観察される。2つのピークの1つ(低エネルギー側のピーク)は、Gaが4面体配置に存在しているとき(第1状態)のピークに対応する。2つのピークの別の1つ(高エネルギー側のピーク)は、Gaが8面体配置に存在するとき(第2状態)のピークに対応する。
【0037】
第1非磁性層厚t1が1.1nmの第4試料SP4において、2つのピークが観察される。第4試料SP4において、上記の第1状態及び第2状態が存在していると推定される。2つのピークの間に、谷が観察される。谷における強度Intは、2つのピークにおけるそれぞれの強度Intよりも低い。第4試料SP4においては、これらの2つのピークの強度Intは実質的に同じである。
【0038】
完全な逆スピネル構造においては、4面体配置のGaの量(密度)と、8面体配置のGaの量(密度)が、互いに同じになる。このことから、第1非磁性層厚t1が1.1nmの試料においては、実質的に完全な逆スピネル構造が設けられていると推定される。
【0039】
第1非磁性層厚t1が、1.9nmの第3試料SP3においても、2つのピークが観察される。第3試料においては、低エネルギー側のピークの強度Intが、高エネルギー側のピークの強度Intよりも低い。第3試料SP3においては、第1状態の領域が相対的に少なくなっていると考えられる。第3試料SP3においても、2つのピークの間に谷が観察される。
【0040】
一方、第1非磁性層厚t1が、2.8nmの第2試料SP2においては、低エネルギー側のピークは、ショルダー状である。
【0041】
第1非磁性層厚t1の減少に伴って、低エネルギー側のピークの強度Intが相対的に上昇する。このことは、逆スピネル度の増大を示唆する。
【0042】
少なくとも2つのピークが観察される場合は、逆スピネル構造が存在していることが明確である。低エネルギー側のピークがショルダー状の場合も、このショルダーは逆スピネル構造に由来するものである。ショルダー状においても、逆スピネル構造が含まれる。
【0043】
本実施形態において、例えば、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、Gaを含んでおり、この酸化物は、エックス線吸収端近傍構造分析において、酸化物に含まれるGaの結合状態に対応する複数のフォトンエネルギーピークを有する。例えば、この酸化物は、エックス線吸収端近傍構造分析において、酸化物に含まれるGa−K殻の電子エネルギーに対応する複数のフォトンエネルギーピークを有する。
【0044】
本実施形態において、例えば、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物が、Mg、Ga及び酸素を含む場合、その酸化物は、XANES分析において、10370e
V以上10385eV
以下のフォトンエネルギーEpの範囲において、2つのピーク強度と、その2つのピークの間の中間強度(谷)と、を有する。2つのピーク強度の1つは、第1フォトンエネルギー(この例では、10373eV以上17376eV未満)の第1ピーク強度である。2つのピーク強度の別の1つは、第2フォトンエネルギー(この例では、10376eV超10385eV以下)の第2ピーク強度である。第2フォトンエネルギーは、第1フォトンエネルギーよりも大きい。中間強度は、第3フォトンエネルギーに対応する強度である。第3フォトンエネルギーは、第1フォトンエネルギーと第2フォトンエネルギーとの間である。第3フォトンエネルギーの中間強度は、第1ピーク強度よりも低く、第2ピーク強度よりも低い。少なくともこのような中間強度(谷)が観察されるとときには、第1非磁性層11Nは、逆スピネル構造を含む。
【0045】
図3(a)及び
図3(b)に例示した試料においても、第1非磁性層11N(MgGa
2O
4層)は、逆スピネル構造を含む。上記のショルダーが観察される。
【0046】
上記の試料においては、各層の成膜の後に熱処理が行われる。この熱処理の条件によって、第1非磁性層11Nの結晶の状態は変化する。例えば、熱処理の温度及び時間などにより、結晶の状態が変化する。熱処理の温度の上昇カーブまたは下降カーブなどによっても結晶の状態が変化する。適正な作製条件を採用することで、逆スピネル構造を有する酸化物が得られる。
【0047】
例えば、4nm以下の薄い酸化物層(第1非磁性層11N)は、この酸化物層に隣接する層の影響を受けやすい。例えば、薄い酸化物層は、第1磁性層11または第2磁性層12の影響を受けやすい。例えば、薄い酸化物層は、下地となるベース層10Sまたは第2非磁性層12Nの影響を受けやすい。適正な作製条件を採用することで、薄い酸化物層においても逆スピネル構造が形成できる。
【0048】
MgGa
2O
4の層において、作製条件及び厚さなどにより構造(正スピネル、逆スピネル、アモルファスの割合)が変化すると考えられる。適正な作製条件及び厚さを用いることで、逆スピネル構造が得られる。例えば、熱処理の温度、処理の時間、または、温度変化カーブ(上昇及び下降)などによっても、結晶の状態が変化する。例えば、加熱中または加熱後の酸素充填における酸素濃度範囲も、結晶性に関係する。例えば、複数の層の形成のそれぞれの後に熱処理するか、または、複数の層の形成の後に一括して熱処理するかも、結晶性に影響する。結晶性の変化は、例えば、Ga
3+の一部が、金属Gaに還元されやすくなることも含む。成膜レートが高いと、結晶性及び平坦性が向上し、逆スピネル構造が得られやすい。例えば、厚さが薄くなると、逆スピネル構造の割合が多くなる。過度に薄いと、結晶化する臨界膜厚以下になり、アモルファスの割合が増える。MgGa
2O
4の層(第1非磁性層11N)の厚さは例えば、1.1nm以上3.3nm以下である。
【0049】
一般的に、スピネル構造酸化物は(A
1−xB
x)[A
xB
2−x]O
4と表記される。この表記において、「x」は、逆スピネル度である。「A」及び「B」は、典型元素、または、遷移金属の元素である。「A」は、例えば、2価の陽イオンとなる元素である。「B」は、3価の陽イオンとなる元素である。「O」は、酸素である。この表記において、()内の元素は、酸素イオンで形成される立方格子の4面体空隙の1/8を占めるように配置される。()内の元素の配置は、例えば規則的である。この表記において、[]内の元素は、8面体空隙の1/2を占めるように配置される。[]内の元素の配置は、例えば規則的である。前者及び後者は、それぞれ、スピネル構造を形成する。
【0050】
例えば、正スピネル構造においては、x=0である。正スピネル構造は(A)[B
2]O
4と表記される。一方、逆スピネル構造においては、x=1である。逆スピネル構造は、(B)[AB]O
4と表記される。
【0051】
スピネル構造に含まれる典型元素金属は、例えば、2価の陽イオンとなる元素、及び、3価の陽イオンとなる元素を含む。2価の陽イオンとなる元素は、例えば、Zn及びMgからなる群から選択された少なくとも1つを含む。3価の陽イオンとなる元素は、例えば、In、Ga及びAlからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0052】
酸素の4面体位置への入りやすさは、例えば、(容易)Zn>In>Ga>Mg>Al(困難)である。例えば、InまたはGaは、Mgよりも、4面体位置を占め易い。例えば、MgGa
2O
4及びMgIn
2O
4は、逆スピネル構造を安定構造として有する。
【0053】
例えば、トンネルバリア層(例えば第1非磁性層11N)として岩塩型のMgOを用いる参考例がある。この参考例において、高い磁気抵抗比MR(例えば約300%)が得られる。しかしながら、MgOのバンドギャップは7eV〜8eVと高く、このため、面積抵抗が高い。磁気抵抗素子が用いられた磁気記憶装置において、記憶密度を高め、素子サイズが小さくなったときに、抵抗が高くなる。このためこの参考例の構成で素子サイズを小さくする場合には、MgO層の厚さを非常に薄くする。しかしながら、薄いMgOにおいて、絶縁性が劣化し、製造歩留まりまたは信頼性が低下する。
【0054】
これに対して、後述するように、実施形態に係る酸化物においては、低い面積抵抗が得られる。これは、実施形態に係る酸化物のバンドギャップが小さいことに起因すると考えられる。後述するように、例えば、MgGa
2O
4のバンドギャップは約4.7eV(4.7eV以上4.9eV以下)である。
【0055】
実施形態によれば、低い面積抵抗を維持しつつ、高い磁気抵抗比MRを得ることができる。
【0056】
岩塩型のMgOにおいて高い磁気抵抗比MRが得られることは、岩塩型のMgOの結晶構造に由来していると考えられる。岩塩型のMgOにおいては、MgOがすべての8面体位置に配置されている。
【0057】
一方、MgGa
2O
4(すなわち(Ga)[MgGa]O
4)において、2種類のスピネル構造のうちで、正スピネル構造よりも逆スピネル構造が、MgOの構造により近い。このことが、逆スピネル構造のMgGa
2O
4において、高い磁気抵抗比MRが得られることに関係していると考えられる。このように、第1非磁性層11Nの酸化物(MgGa
2O
4またはMgIn
2O
4など)が、高いMR比が得られることは、逆スピネル構造に基づいていると考えられる。
【0058】
そして後述するように、MgGa
2O
4などにおいては、低い面積抵抗RAが得られる。
【0059】
一方、MgAl
2O
4は、正スピネル構造を基底状態として持つ。本願発明者達の実験によると、MgOと同様に室温成膜プロセスにおいても、MgGa
2O
4においては自己組織的に陽イオンサイトが規則化することが分かった。このため、MgGa
2O
4においては、MgAl
2O
4よりも、逆スピネル構造が形成され易い。
【0060】
自己組織的に規則化する性質により、例えば、第1非磁性層11N以外の層(例えば第1磁性層11など)の選択の幅を広げることが可能である
。例えば、第1非磁性層11Nは、単結晶でも良く、多結晶でも良い。第1非磁性層11Nが多結晶を含む場合、第1非磁性層11Nには、例えば、配向膜が含まれる。
【0061】
実施形態において、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、例えば、Mg
1−xGa
xO
y(xは0を超え1未満、yは3以上5以下)である。または、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、例えば、Mg
1−xIn
xO
y(xは0を超え1未満、yは3以上5以下)である。このような組成範囲において、例えば、逆スピネル構造が得られる。酸化物の他の例については、後述する。
【0062】
以下、第1非磁性層11Nの結晶状態の分析方法の例について説明する。
例えば、TEM(Transmission Electron Microscope)による構造解析法により、第1非磁性層11Nの結晶状態に関する情報が得られる。例えば、TEMにより、結晶パターン、格子欠陥の存在、及び、結晶の配向方位などに関する情報が得られる。例えば、電子線回折パターンを併せて取得することで、原子レベルでの組織構造及び結晶構造に関する情報を得ることができる。例えば、特定の回折スポットに着目することで、逆スピネル構造か否かに関する情報が得られる。
【0063】
例えば、HAADF−STEM(high-angle annular dark-field scanning transmission electron microscopy TEM)により、第1非磁性層11Nの結晶状態に関する情報が得られる。この分析方法においては、原子に照射され散乱した電子が検出される。原子量に比例したコントラストが得られる。コントラストに着目することで、原子配置に関する情報が得られる。逆スピネル構造か否かに関する情報が得られる。
【0064】
例えば、XAFS(X-ray absorption fine structure)法、EXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)法、または、XANES法などにより、第1非磁性層11Nの結晶状態に関する情報が得られる。これらの分析方法では、化学状態に関する分析、及び、構造解析が可能である。これらの方法において、分析深さ(表面またはバルク)を選択することで、非破壊で、深さ方向の化学状態分析または構造解析が可能である。XANES分析においては、構成元素の配位構造に関する情報が得られる。逆スピネル構造か否かに関する情報が得られる。
【0065】
磁気抵抗素子を用いた磁気記憶装置において、微細化すると抵抗値が上昇する。このため、磁気抵抗素子における面積抵抗RAを低減することが望まれる。バリア層(例えば第1非磁性層11N)としてMgOまたはMgAl
2O
4を用いる参考例がある。これらの参考例において、材料としての面積抵抗RAの低減に限界があり、バリア層の厚さを薄くする必要がある。薄くすると、バリア層の破壊電圧が急激に劣化する。このため、磁気抵抗比MR比の向上とともに、面積抵抗RAが低いことが望まれる。
【0066】
以下、実施形態に係る磁気抵抗素子についての面積抵抗の例について説明する。
【0067】
図5は、磁気抵抗素子の特性を例示するグラフ図である。
図5には、第1非磁性層11NがMgGa
2O
4である試料(例えば、第1〜第4試料SP1〜SP4などを含む)と、第1非磁性層11NがMgAl
2O
4である試料(参考例)と、における面積抵抗RAの例を示す。これらの試料において、第1磁性層11及び第2磁性層12は、ともにFe層である。
図5の横軸は、第1非磁性層厚t1(nm)である。縦軸は、面積抵抗RA(Ω・μm
2)である。この面積抵抗RAは、第1磁性層11の磁化と第2磁性層12の磁化が平行状態であるときに対応する。測定温度は、300Kである。MgGa
2O
4の試料において、MgGa
2O
4は、逆スピネル構造を含む。MgAl
2O
4の試料(参考例)において、MgAl
2O
4は、正スピネル構造を含む。
【0068】
図5に示すように、同じ第1非磁性層厚t1において、MgGa
2O
4の面積抵抗RAは、MgAl
2O
4の面積抵抗RAよりも低い。このような特性は、少なくとも、第1非磁性層厚t1が、1.1nm以上3.3nm以下において確認されている。
【0069】
このように、実施形態に係るMgGa
2O
4(第1非磁性層11N)により、低い面積抵抗RAが得られる。実施形態によれば、高い磁気抵抗比MRを得つつ、低い面積抵抗RAが得られる。例えば、第1非磁性層11Nは、過度に薄くされない。これにより、高い信頼性が得られる。本実施形態によれば、高い磁気抵抗比MRが得られる。さらに、低い面積抵抗が得られる。高い信頼性が得られる。
【0070】
図5に示すように、2つの試料において、面積抵抗RAの対数は、第1非磁性層厚t1に対して線形に増加する。これらの試料において、ダイレクトトンネリングモードが支配的であると示唆される。
【0071】
MgGa
2O
4の試料における、厚さの増加に対する面積抵抗RAの増加の変化率(傾き)は、MgAl
2O
4の試料のそれよりも低い。このことから、MgGa
2O
4の試料におけるバリア障壁高さが、MgAl
2O
4の試料におけるバリア障壁高さよりも小さいことが示唆される。
【0072】
図6は、磁気抵抗素子の特性を例示するグラフ図である。
図6は、
図5に示した2つの試料における、電流密度の例を示す。
図6の横軸は、バイアス電圧Vb(ボルト:V)である。縦軸は、電流密度CD(A/cm
2)である。測定温度は、300Kである。
図6において、実線は、第1磁性層11の磁化と第2磁性層12の磁化が平行である状態に対応する。点線は、第1磁性層11の磁化と第2磁性層12の磁化が反平行である状態に対応する。
【0073】
図6に示すように、MgGa
2O
4の試料においては、電流密度CDが急激に変化するバイアス電圧Vbは、約0.6Vである。これに対して、MgAl
2O
4の試料においては、電流密度CDが急激に変化するバイアス電圧Vbは、約1.1Vである。
【0074】
一般的に、電流密度CDが急激に増加するバイアス電圧Vbは、バリア障壁高さと関係がある。
図6の結果から、MgGa
2O
4のバリア障壁高さは、MgAl
2O
4のバリア障壁高さよりも低いことが示唆される。
【0075】
バンドギャップ及びバリア障壁高さにおいて、相関がある。バンドギャップを小さくすることで、バリア障壁高さが低くなる。例えば、バンドギャップを小さくすることで、例えば、面積抵抗RAが低くなる。
【0076】
MgOまたはMgAl
2O
4において、高い磁気抵抗比(MR比)が得られている。これらの材料のバンドギャップは、7eV〜8eVである。
【0077】
REELS(reflection electron energy loss spectroscopy)分析結果によると、MgGa
2O
4のバンドギャップは、約4.7eVと見積もられる。このように、MgGa
2O
4のバンドギャップは、MgOまたはMgAl
2O
4のバンドギャップよりも小さい。例えば、MgGa
2O
4のバリア障壁高さは、MgOまたはMgAl
2O
4のバリア障壁高さよりも低い。MgGa
2O
4の面積抵抗RAは、同じ第1非磁性層厚t1において、MgOまたはMgAl
2O
4の面積抵抗よりも低くなる。
【0078】
実施形態において、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物のバンドギャップは、例えば、7eV未満であることが好ましい。この酸化物のバンドギャップは、5eV以下であることがさらに好ましい。
【0079】
一方、バンドギャップが過度に小さいと、例えば、トンネル伝導モードの維持が困難になり、例えば、MR比が十分に高くできない場合がある。実施形態において、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物のバンドギャップは、2eV以上であることが好ましく、3eV以上であることがより好ましい。
【0080】
実施形態において、第1非磁性層11Nの面内格子間隔と、第1磁性層11の面内格子間隔との差、及び、第1非磁性層11Nの面内格子間隔と、第2磁性層12の面内格子間隔との差は、小さいことが好ましい。例えば、転位が実質的に無い界面が得られる。例えば、トンネル電子の波数選択性が阻害されない。例えば、高い磁気抵抗比MRが得られる。
【0081】
磁気抵抗素子に含まれる磁性層は、例えば、Feと同程度の格子定数を有する立方晶型材料を含む。または、磁性層は、MnGaと同程度の格子定数を有する正方晶型材料を含む。
【0082】
実施形態において、例えば、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、Fe及びMnGaの両者と格子整合性の高い材料を含むことが好ましい。Feのa軸格子定数は、0.287nmである。面内に45度回転すると、格子定数は、0.405nmとなる。一方、MnGaのa軸格子定数は0.389nmである。
【0083】
例えば、第1非磁性層11Nの格子定数の1/2は、0.3775nm以上0.4255nm以下であることが好ましい。この下限値及び上限値は、0.755nm/2及び0.851nm/2にそれぞれ対応する。これにより、第1非磁性層11Nは、Feなどの立方晶型磁性層と、5%以内の格子定数差で、整合する。
【0084】
または、例えば、第1非磁性層11Nの格子定数の1/2は、0.370nm以上0.409nm以下であることが好ましい。この下限値及び上限値は、0.740nm/2及び0.818nm/2にそれぞれ対応する。これにより、第1非磁性層11Nは、MnGaなどの正方晶型磁性層と、5%以内の格子定数差で、整合する。
【0085】
上記の格子定数は、例えば、X−Y平面内の1つの方向における格子定数に対応する。
【0086】
図1(b)に関して説明した磁気抵抗素子110Aにおいて、Mg層(第2非磁性層12N)により、例えば、界面の酸化状態が良好に制御される。実施形態において、第2非磁性層12Nは省略されても良い。
【0087】
本実施形態に係る磁気抵抗素子(例えば磁気抵抗素子110など)において、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、例えば、{100}面の結晶質であり、2価の陽イオンと、3価の陽イオンと、を含む。酸化物は、逆スピネル構造を、安定構造として有する。
【0088】
実施形態において、例えば、書き込み電流などの外部から供給されるエネルギーにより、磁気抵抗素子の電気抵抗が変化する。電気抵抗の変化は、例えば、第1磁性層11の磁化と、第2磁性層12の磁化と、の間の角度の差に基づく。外部から供給されるエネルギーの例が、書き込み電流である。書き込み電流は、例えば、Z軸方向に沿う。
【0089】
例えば、磁気抵抗素子への書き込み電流の供給の前後において、第1磁性層11及び第2磁性層12の一方の磁化の方向は、実質的に変化しない。第1磁性層11及び第2磁性層12の他方の磁化の方向は、書き込み電流の供給の前後において変化する。前者は、例えば、参照層に対応する。後者は、記憶層(または自由層)に対応する。
【0090】
例えば、第1磁性層11が記憶層であり、第2磁性層12が参照層である場合における磁化の変化の例について説明する。
【0091】
例えば、第1磁性層11の磁化と第2磁性層12の磁化とが互いに反平行の場合において、第1磁性層11から第2磁性層12に向かう方向の書き込み電流が供給される。電子は、第2磁性層12から第1非磁性層11Nを通って第1磁性層11に流れる。第2磁性層12を通ることにより電子はスピン偏極される。スピン偏極された電子が、第1磁性層11に流れる。第1磁性層11の磁化と同じ方向のスピンを有するスピン偏極された電子は、第1磁性層11を通過する。一方、第1磁性層11の磁化と逆方向のスピンを有するスピン偏極された電子は、第1磁性層11の磁化に、スピントルクを作用する。第1磁性層11の磁化の方向は、第2磁性層12の磁化と同じ向きになる。第1磁性層11の磁化の方向が反転する。第1磁性層11の磁化は、第2磁性層12の磁化の方向と平行(同じ方向)になる。
【0092】
一方、第1磁性層11の磁化の方向と第2磁性層12の磁化の方向とが、互いに平行な場合において、第2磁性層12から第1磁性層11に向かう書き込み電流が供給される。電子は、第1磁性層11から第1非磁性層11Nを通って第2磁性層12に流れる。第1磁性層11を通ることにより電子はスピン偏極される。スピン偏極された電子が、第2磁性層12に流れる。第2磁性層12の磁化と同じ方向のスピンを有するスピン偏極された電子は、第2磁性層12を通過する。一方、第2磁性層12の磁化と逆向きのスピンを有するスピン偏極された電子は、第1非磁性層11Nと第2磁性層12との間の界面で反射され、第1非磁性層11Nを通って第2磁性層12に流れ込む。この電子は、第1磁性層11の磁化にスピントルクを作用し、第1磁性層11の磁化の方向が第2磁性層12の磁化と反対方向に向くように働く。第1磁性層11の磁化の方向が反転する。第1磁性層11の磁化は、第2磁性層12の磁化の方向と反平行になる。
【0093】
本実施形態において、第1磁性層11と第2磁性層12は、互いに入れ替え可能である。例えば、第1磁性層11が参照層で、第2磁性層12が記憶層でも良い。
【0094】
実施形態において、第1磁性層11及び第2磁性層12の間において、保磁力、異方性磁界Hk、及び、磁気摩擦定数αの少なくともいずれかが異なっていることが好ましい、例えば、より安定的に磁化方向の角度を制御することができる。
【0095】
例えば、保磁力、異方性磁界Hk、及び、磁気摩擦定数αのいずれかが相対的に大きい磁性層が参照層に対応する。保磁力、異方性磁界Hk、及び、磁気摩擦定数αのいずれかが相対的に小さい磁性層が記憶層に対応する。
【0096】
以下、本実施形態に係る別の磁気抵抗素子のいくつかの例について説明する。以下の磁気抵抗素子も、第1磁性層11、第2磁性層12及び第1非磁性層11Nを含む。さらに、ベース層10S(例えばCrなどの金属層)が設けられても良い。これらについては、磁気抵抗素子110または110Aと同様なので説明を省略する。以下に説明する磁気抵抗素子のいくつかの例において、第2非磁性層12Nが設けられても良い。
【0097】
以下の説明において、「第1元素名(第2元素名)」の記載は、第1元素名の材料に第2元素名の元素が含まれている状態、または、第2元素が実質的に含まれていない状態を示す。例えば、「CoFe(B)」の記載は、CoFeを含む状態、または、CoFeBを含む状態に対応する。
【0098】
以下の説明において、「材料名(面方位)」の記載は、その材料名の層の1つの面(膜面)がその面方位に沿っていることを示す。例えば、「MnGa(001)」の表記は、MnGaの層が別の層と積層されており、MnGaの1つの面が(001)面に沿っている状態に対応する。この1つの面は、MnGaの層と、その別の層と、を結ぶ方向(積層方向)と交差する。この1つの面は、例えば、X−Y平面に沿う面である。
【0099】
図7は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る別の磁気抵抗素子111においては、第3磁性層13が設けられる。第3磁性層13は、第1磁性層11と第1非磁性層11Nとの間に設けられる。
【0100】
例えば、第1磁性層11と第3磁性層13とが互いに磁気的に結合している状態が好ましい。例えば、第1磁性層11の磁化は、第3磁性層13と一体となって反転する。例えば、第3磁性層13の磁化は、第1磁性層11と一体となって反転する。第1磁性層11の磁化の向きは、第3磁性層13の磁化の向きと実質的に同じである。
【0101】
第3磁性層13により、例えば、スピン分極率が大きくできる。これにより、磁気抵抗比MRがさらに大きくできる。
【0102】
磁気抵抗素子111の第1例において、第1磁性層11は、MnGaを含む。第3磁性層13は、CoFe(B)を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/MgGa
2O
4(001)/CoFe(B)(001)/MnGa(001)の配向関係が得られる。
【0103】
磁気抵抗素子111の第2例において、第1磁性層11は、MnGaを含む。第3磁性層13は、Co
2FeAlを含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/MgGa
2O
4(001)/Co
2FeAl(001)/MnGa(001)の配向関係が得られる。
【0104】
磁気抵抗素子111の第3例において、第1磁性層11は、MnGaを含む。第3磁性層13は、Fe
3O
4を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/MgGa
2O
4(001)/Fe
3O
4(001)/MnGa(001)の配向関係が得られる。
【0105】
図8は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図8に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Aは、第3磁性層13及び第1中間層21を含む。第3磁性層13は、第1磁性層11と第1非磁性層11Nとの間に設けられる。第1中間層21は、第1磁性層11と第3磁性層13との間に設けられる。
【0106】
第3磁性層13により、例えば、スピン分極率が増大する。第1中間層21により、例えば、第1磁性層11と第3磁性層13との間において、結晶構造が調整される。第1中間層21により、例えば、元素の拡散が抑制される。
【0107】
磁気抵抗素子111Aの第1例において、第1磁性層11は、MnGaを含む。第1中間層21は、アモルファス層を含む。第3磁性層13は、例えば、CoFe(B)を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/MgGa
2O
4(001)/CoFe(B)(001)/アモルファス層/MnGa(001)の配向関係が設けられる。
【0108】
アモルファスの第1中間層21により、例えば、成膜時に、第3磁性層13の少なくとも一部がアモルファスとなる。例えば、第1非磁性層11Nの配向性が向上する。第1中間層21のアモルファス層は、例えば、Mg、Ba、Ca、Sr、Sc、Y、Ta、W、Nb、Gd、Tb、Dy、Ce、Ho、Yb、Er、B、C及びNからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含む。
【0109】
磁気抵抗素子111Aの第2例において、第1磁性層11はMnGaを含む。第1中間層21は、結晶質層を含む。第3磁性層13は、Co
2FeAlを含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/MgGa
2O
4(001)/Co
2FeAl(001)/結晶質層/MnGa(001)の配向関係が設けられる。
【0110】
図9は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Bは、第4磁性層14
を含む。第4磁性層14は、第2磁性層12と第1非磁性層11Nとの間に設けられる。
【0111】
第4磁性層14は、例えば、第2磁性層12と磁気的に結合する。第4磁性層14を設けることにより、例えば、スピン分極率が増大する。
【0112】
磁気抵抗素子111Bの第1例において、例えば、第1磁性層11は、CoFe(B)を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層14は、CoFe(B)を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/CoFe(B)(001)/MgGa
2O
4(001)/CoFe(B)(001)の配向関係が設けられる。
【0113】
磁気抵抗素子111Bの第2例において、第1磁性層11は、Co
2FeAlを含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層14は、Co
2FeAlを含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/Co
2FeAl(001)/MgGa
2O
4(001)/Co
2FeAl(001)の配向関係が設けられる。
【0114】
図10は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図10に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Cは、第4磁性層14及び第2中間層22を含む。第4磁性層14は、第2磁性層12と第1非磁性層11Nとの間に設けられる。第2中間層22は、第4磁性層14と第2磁性層12との間に設けられる。
【0115】
第4磁性層14は、例えば、第2磁性層12と磁気的に結合する。第4磁性層14を設けることにより、例えば、スピン分極率が増大する。
【0116】
第2中間層22により、例えば、第2磁性層12と第4磁性層14との間において、結晶構造が調整される。第2中間層22により、例えば、元素の拡散が抑制される。
【0117】
磁気抵抗素子111Cの第1例において、第1磁性層11は、CoFe(B)を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層14は、CoFe(B)を含む。第2中間層22は、アモルファス層を含む。第2磁性層12は、CoPtを含む。例えば、CoPt(111)/アモルファス層/CoFe(B)(001)/MgGa
2O
4(001)/CoFe(B)(001)の配向関係が設けられる。アモルファス層を用いることにより、第2磁性層12と第4磁性層14との間において、結晶型の違いがリセットされる。第2中間層22となるアモルファス層は、例えば、Ta、W、Mo、Nb、Ru,Rh、Irからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含む。
【0118】
磁気抵抗素子111Cの第2例において、第1磁性層11は、Co
2FeAlを含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層14は、Co
2FeAlを含む。第2中間層22は、結晶質層を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/結晶質層/Co
2FeAl(001)/MgGa
2O
4(001)/Co
2FeAl(001)の配向関係が設けられる。
【0119】
図11は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図11に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Dは、第3磁性層13及び第4磁性層14を含む。
【0120】
磁気抵抗素子111Dの第1例において、第1磁性層11は、MnGaを含む。第3磁性層13は、CoFe(B)を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層14は、CoFe(B)を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/CoFe(B)(001)/MgGa
2O
4(001)/CoFe(B)(001)/MnGa(001)の配向関係が設けられる。
【0121】
磁気抵抗素子111Dの第2例において、第1磁性層11は、MnGaを含む。第3磁性層13は、Co
2FeAlを含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層14は、Co
2FeAlを含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/Co
2FeAl(001)/MgGa
2O
4(001)/Co
2FeAl(001)/MnGa(001)の配向関係が設けられる。
【0122】
図12は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図12に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Eは、第1中間層21、第3磁性層13、第4磁性層14及び第2中間層22を含む。
【0123】
磁気抵抗素子111Eの第1例において、第1磁性層11は、MnGaを含む
。第1中間層21は、アモルファス層を含む。第3磁性層13は、CoFe(B)を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層
14は、CoFe(B)を含む。第2中間層22は、アモルファス層を含む。第2磁性層12は、CoPtを含む。例えば、CoPt(111)/アモルファス層/CoFe(B)(001)/MgGa
2O
4(001)/CoFe(B)(001)/アモルファス層/MnGa(001)の配向関係が設けられる。
【0124】
磁気抵抗素子111Eの第2例においては、第1磁性層11は、MnGaを含む。第1中間層21は、結晶質層を含む。第3磁性層13は、Co
2FeAlを含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層14は、Co
2FeAlを含む。第2中間層22は、結晶質層を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/結晶質層/Co
2FeAl(001)/MgGa
2O
4(001)/Co
2FeAl(001)/結晶質層/MnGa(001)の配向関係が設けられる。
【0125】
磁気抵抗素子111Eの第3例において、第1磁性層11は、MnGaを含む。第1中間層21は、結晶質層を含む。第3磁性層13は、Fe
3O
4を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第4磁性層14は、Co
2FeAlを含む。第2中間層22は、結晶質層を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/結晶質層/Co
2FeAl(001)/MgGa
2O
4(001)/Fe
3O
4(001)/結晶質層/MnGa(001)の配向関係が設けられる。
【0126】
図13は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図13に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Fは、第1磁性層11,第1非磁性層11N及び第2磁性層12を含む。
【0127】
磁気抵抗素子111Fの第1例において、第1磁性層11は、CoFe(B)を含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第2磁性層12は、CoFe(B)を含む。CoFe(B)(001)/MgGa
2O
4(001)/CoFe(B)の配向関係が設けられる。
【0128】
磁気抵抗素子111Fの第2例において、第1磁性層11は、MnGaを含む。第1非磁性層11Nは、結晶質のMgGa
2O
4を含む。第2磁性層12は、MnGeを含む。例えば、MnGe(001)/MgGa
2O
4(001)/MnGa(001)の配向関係が設けられる。
【0129】
図14は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図14に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Gは、第3磁性層13、第4磁性層14、第3非磁性層13N及び第5磁性層15を含む。
【0130】
第1磁性層11と第5磁性層15との間に第2磁性層12が設けられる。第2磁性層12と第5磁性層15との間に第3非磁性層13Nが設けられる。この場合も、第1磁性層11と第1非磁性層11Nとの間に第3磁性層13が設けられる。第2磁性層12と第1非磁性層11Nとの間に第4磁性層14が設けられる。
【0131】
この例では、第4磁性層14及び第2磁性層12が、参照層となる。第3磁性層13及び第1磁性層11が、記憶層となる。
【0132】
第5磁性層15は、例えば、バイアス層またはシフト調整層として機能する。第5磁性層15の磁化は、第2磁性層12の磁化の向きと反平行(逆向き)である。第5磁性層15は、第3非磁性層13Nを介して、第2磁性層12と反強磁性(Synthetic Anti-Ferromagnetic)結合してもよい。これにより、例えば、参照層からの漏れ磁界による記憶層の磁化反転の電流のシフトを抑制できる。例えば、漏れ磁界による磁化反転の電流のシフトを調整できる。
【0133】
第3非磁性層13Nは、高い耐熱性を有することが好ましい。例えば、熱工程による、第2磁性層12と第5磁性層15との間における熱混合が抑制できる。第3非磁性層13Nは、例えば、第5磁性層15を形成する際において結晶の配向を制御する機能を有することが好ましい。
【0134】
第3非磁性層13Nが過度に厚くなると、第5磁性層15と、記憶層(この例では、第1磁性層11など)と、の間の距離が長くなる。このため、第5磁性層15から記憶層に印加されるシフト調整磁界が減少する場合がある。第3非磁性層13Nの厚さは、例えば、5nm以下であることが好ましい。これにより、上記のシフト調整磁界の減少が抑制される。
【0135】
第5磁性層15は、例えば、膜面に垂直方向に磁化容易軸を有する強磁性材料を含む。例えば、第5磁性層15と記憶層との間の距離は、参照層と記憶層との間の距離よりも長い。例えば、第5磁性層15の厚さは、参照層の厚さよりも厚いことが好ましい。例えば、第5磁性層15の飽和磁化は、参照層の飽和磁化よりも大きい。これにより、記憶層との距離が参照層よりも長い第5磁性層15により、記憶層に印加される漏れ磁界が効果的に調整できる。
【0136】
例えば、参照層の厚さをtrとし、参照層の飽和磁化をMsrとする。第5磁性層15の厚さをt5とし、第5磁性層15の飽和磁化をMs5とする。このとき、例えば、(Msr×tr)は、(Ms5×t5)よりも小さいことが好ましい。第2磁性層12の厚さをt2とし、第2磁性層12の飽和磁化をMs2とする。第4磁性層14の厚さをt4とし、第4磁性層14の飽和磁化をMs4とする。この例において、参照層の厚さ(tr)は、第4磁性層14の厚さ(t4)と、第2磁性層12の厚さ(t2)と、の和である。参照層の磁化量(Msr×tr)は、例えば、(Ms2×t2+Ms4×t4)である。
【0137】
第5磁性層15は、任意の参照層と組み合わせて設けられても良い。このとき、例えば、第5磁性層15と記憶層との間に参照層が位置する。第3非磁性層13Nが、第5磁性層15と参照層との間に設けられても良い。
【0138】
図15は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図15に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Hは、第3磁性層13、第4磁性層14及び第5磁性層15を含む。
【0139】
第5磁性層15と第2磁性層12との間に第1磁性層11が設けられる。この例では、ベース層10Sが、第5磁性層15と第1磁性層11との間に設けられる。この例においても、第1磁性層11と第2磁性層12との間に第1非磁性層11Nが設けられる。第1磁性層11と第1非磁性層11Nとの間に第3磁性層13が設けられる。第2磁性層12と第1非磁性層11Nとの間に第4磁性層14が設けられる。この例では、例えば、第1磁性層11が参照層となる。第2磁性層12が記憶層となる。
【0140】
図16は、第1実施形態に係る別の磁気抵抗素子を示す模式的断面図である。
図16に示すように、本実施形態に係る磁気抵抗素子111Iは、第3磁性層13、第4磁性層14、第5磁性層15及び第3非磁性層13Nを含む。
【0141】
ベース層10Sと第2磁性層12との間に第5磁性層15が設けられる。第5磁性層15と第2磁性層12との間に第1磁性層11が設けられる。第5磁性層15と第1磁性層11との間に第3非磁性層13Nが設けられる。この例においても、第1磁性層11と第2磁性層12との間に第1非磁性層11Nが設けられる。第1磁性層11と第1非磁性層11Nとの間に第3磁性層13が設けられる。第2磁性層12と第1非磁性層11Nとの間に第4磁性層14が設けられる。この例では、例えば、第1磁性層11が参照層となる。第2磁性層12が記憶層となる。
【0142】
第5磁性層15が設けられる磁気抵抗素子111G〜111Iにおいて、例えば、第5磁性層15(シフト調整層)から記憶層に印加される漏れ磁界の強さは、参照層から記憶層に印加される漏れ磁界の強さと実質的に同じに設定されても良い。例えば、記憶層とシフト調整層との間の距離が、記憶層と参照層との間の距離よりも短い場合は、シフト調整層の総磁化量は、参照層の総磁化量よりも小さい。一方、記憶層とシフト調整層との間の距離が、記憶層と参照層との距離よりも長い場合は、シフト調整層の総磁化量は、参照層の総磁化量よりも大きい。これにより、適正なシフト調整が得られる。
【0143】
上記の磁気抵抗素子111及び111A〜111Iにおいても、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、逆スピネル構造を含む。これにより、高い磁気抵抗比MRが得られる。さらに、低い面積抵抗が得られる。高い信頼性が得られる。
【0144】
実施形態に係る磁気抵抗素子(例えば磁気抵抗素子111及び111A〜111I)において、第1磁性層11及び第2磁性層12の結晶の配向が制御される。これにより、例えばこれらの磁性層の容易磁化方向を膜面に対して垂直にすることが可能である。
【0145】
膜面に対して垂直である状態は、Z軸方向に沿う状態に対応する。膜面に対して平行である状態は、X−Y平面の1つの方向に沿う状態に対応する。
【0146】
例えば、実施形態に係る磁気抵抗素子は、面内磁化素子(面内磁化MTJ素子)または垂直磁化素子(垂直磁化MTJ素子)である。面内磁化素子において、例えば、第1磁性層11の磁化方向及び第2磁性層12の磁化方向は、膜面に沿う。垂直磁化素子において、例えば、第1磁性層11の磁化及び第2磁性層12の磁化は、膜面に対して垂直方向に沿う。
【0147】
マクロなサイズの強磁性体において、外部磁界のない状態で、自発磁化が容易磁化方向に向くと、最も内部エネルギーが低くなる。マクロなサイズの強磁性体において、外部磁界がない状態で、自発磁化が困難磁化方向に向くと、最も内部エネルギーが大きくなる。
【0148】
上記の磁気抵抗素子111及び111A〜111Fの第1例において、第1非磁性層11Nは、面内方向において結晶方位が均一なエピタキシャル成長層でなくても良い。例えば、第1非磁性層11Nは、エピタキシャル成長した単結晶を有しても良い。または、第1非磁性層11Nは、c軸配向した多結晶構造を有しても良い。例えば、トンネル電子の波数選択性を向上させることができる。高い磁気抵抗比MRを得ることができる。
【0149】
上記の磁気抵抗素子111及び111A〜111Fの第2例において、第1非磁性層11Nは、エピタキシャル成長していることが好ましい。これにより、トンネル電子の波数選択性を向上させることができる。高い磁気抵抗比MRが得られる。
【0150】
上記の磁気抵抗素子111及び111Eの第3例において、第1非磁性層11Nは、エピタキシャル成長していることが好ましい。これにより、トンネル電子の波数選択性を向上させることができる。高い磁気抵抗比MRが得られる。
【0151】
実施形態において、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、Inと酸素とを含んでも良い。この場合も、この酸化物は、逆スピネル構造を有する。実施形態において、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、Mg、Ga、In及び酸素を含んでも良い。この場合も、この酸化物は、逆スピネル構造を有する。
【0152】
例えば、第1磁性層11及び第2磁性層12の少なくとも1つは、Co及びFeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、第1磁性層11及び第2磁性層12の少なくとも1つは、第1元素及び第2元素を含む。第1元素は、Mn、Al、Ge及びGaからなる群から選択される。第2元素は、Mn、Al、Ge及びGaからなる群から選択され、上記の第1元素とは異なる。
【0153】
第3磁性層13及び第4磁性層14の少なくとも1つは、例えば、Co及びFeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0154】
以下、実施形態に係る磁気抵抗素子に含まれる層の材料及び厚さなどの例について説明する。
【0155】
ベース層10Sは、例えば、下地層である。ベース層10Sにより、例えば、他の
層(例えば、第1磁性層11など)の結晶性が制御される。結晶性は、例えば、結晶の配向性または結晶の粒径などを含む。ベース層10Sは、導電性または絶縁性である。ベース層10Sに電流を流す場合は、ベース層10Sは導電性材料を含む。
【0156】
ベース層10Sの第1例において、ベース層10Sは、(001)配向したNaCl構造を有する。ベース層10Sは、窒化物を含む。この窒化物は、Ti、Zr、Nb、V、Hf、Ta、Mo、W、B、Al及びCeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0157】
ベース層10Sの第2例において、ベース層10Sは、ペロブスカイト系酸化物層を含む。このペロブスカイト系酸化物層は、ABO
3の(002)配向したペロブスカイト系酸化物を含む。サイト「A」は、Sr、Ce、Dy、La、K、Ca、Na、Pb及びBaからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含む。サイト「B」は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Nb、Mo、Ru、Ir、Ta、Ce及びPbからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含む。
【0158】
ベース層10Sの第3例において、ベース層10Sは、酸化物の層を含む。この酸化物の層は、(001)配向したNaCl構造を有する。この酸化物の層は、Mg、Al及びCeからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含む。
【0159】
ベース層10Sの第4例において、ベース層10Sは、Al、Cr、Ga、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Mo及びWからなる群から選択された少なくとも1つを含む層を含む。この層は、(001)配向した正方晶構造を有する。または、この層は、(001)配向した立方晶構造を有する。
【0160】
ベース層10Sの第5例においては、ベース層10Sは、上記の第1〜第4例のいずれかの複数の層を含む積層構造を有する。
上記のような第1〜第5例のベース層10Sにより、例えば、他の層の結晶性を制御できる。良好な特性が得られる。
【0161】
第1磁性層11は、例えば、垂直磁化を有する。第1磁性層11の材料(磁性材料)は、例えば、飽和磁化Msが小さい。第1磁性層11の材料は、例えば、高い磁気異方性エネルギーKuを有する。第1磁性層11の材料は、例えば、低い磁気摩擦定数を有する。例えば、高い熱擾乱耐性が得られる。例えば、低電流での磁化反転が行われる。高い磁気異方性エネルギーKuにより、例えば、熱擾乱指数Δが維持される。
【0162】
第3磁性層13を用いない場合は、第1磁性層11の材料は、高分極率を有することが好ましい。
【0163】
第1磁性層11の第1例において、第1磁性層11は、Co及びFeからなる群から選択された少なくとも1つを含む磁性層を含む。第1磁性層11は、例えば、Co、Fe、CoFe及びCoFeBからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0164】
第1磁性層11の第2例において、第1磁性層11は、Co基ホイスラー合金を含む磁性層を含む。Co基ホイスラー合金は、Co
2YZと表記される。第1磁性層11は、Co
2FeAl、Co
2MnSi、Co
2MnGe、Co
2Mn(Si、Ge)及びCo
2Mn(Ga、Ge)からなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0165】
上記の第1及び第2例において、材料及び厚さは、適切に選択される。これにより、第1磁性層11において、垂直磁気異方性が得られる。例えば、一定の厚さにより、界面垂直磁気異方性が顕著に誘起される。垂直磁化膜としての特性が得られる。
【0166】
第1磁性層11の第3例において、第1磁性層11に含まれる磁性層は、Mn及び第1元素を含む。この第1元素は、Al、Ge及びGaからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1磁性層11は、MnGa、MnAl、MnGe及びMnAlGeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0167】
第1磁性層11の第4例において、第1磁性層11は、Mn、Ga及び第1元素を含む。この第1元素は、Al、Ge、Ir、Cr、Co、Pt、Ru、Pd、Rh、Ni、Fe、Re、Au、Cu、B、C、P、Gd、Tb及びDyよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1磁性層11は、例えば、MnGaAl、MnGaGe、MnGaIr、MnGaCr、MnGaCo、MnGaPt、MnGaRu、MnGaPd、MnGaRh、MnGaNi、MnGaFe、MnGaRe、MnGaAu、MnGaCu、MnGaB、MnGaC、MnGaP、MnGaGd、MnGaTb及びMnGaDyよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0168】
上記の第1磁性層11の第3及び第4例において、第1磁性層11は、例えば、c軸が膜面に対して垂直になるように成長される。第1磁性層11は、例えば、(001)配向成長される。これにより、例えば、垂直磁気異方性が得られる。例えば、ベース層10Sが適切に選択される。これにより、第1磁性層11の結晶配向成長を制御できる。
【0169】
第1磁性層11の第5例において、第1磁性層11は、合金を含む。この合金は、第1元素及び第2元素を含む。第1元素は、例えば、Fe、Co及びNiからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuからなる群から選択された少なくとも1つを含む。または、第1磁性層11は、積層体を含んでも良い。積層体は、例えば、Co/Pt人工格子、Co/Pd人工格子、Co/Ru人工格子、Co/Ir人工格子、及び、Co/Au人工格子よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。これらの人工格子において、元素の添加、及び、磁性層と非磁性層とにおける厚さの比が調整される。これにより、例えば、垂直磁気異方性及び飽和磁化が調整される。上記の合金は、例えば、FeRh、FePt、FePd、CoPt及びCoPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。この合金は、例えば、強磁性合金である。
【0170】
第1磁性層11の第6例において、第1磁性層11は、酸化物を含む。この酸化物は、Mn、Co、Ni、Cu、Zn及びFeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1磁性層11は、例えば、Fe
3O
4、MnFe
2O4、CoFe
2O
4、NiFe
2O
4、CuFe
2O
4及びZnFe
2O
4からなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1磁性層11は、例えば、上記の群から選択された少なくとも2つを含む混晶を含む。上記の材料の群は、例えば、スピネル型結晶構造を有するフェライトである。上記の材料の群を第1磁性層11に用いた場合、第1磁性層11は、第1非磁性層11Nと同じ結晶対称性を有する。このため、良好な適合性が得られる。例えば、高結晶品位で整合性が高い界面が得られる。例えば、転位が実質的に無い界面が得られる。例えば、マグネタイト(Fe
3O
4)は、金属性酸化物であり、ハーフメタル性を有する。マグネタイト(Fe
3O
4)においては、磁気摩擦定数が低い。マグネタイト(Fe
3O
4)は、特に第1磁性層11への適用に好ましい。
【0171】
第1磁性層11の厚さは、薄いことが好ましい。第1磁性層11の厚さ(Z軸方向に沿う長さ)は、例えば、1nm以上5nm以下である。これにより、例えば、低電流での磁化反転が得られる。例えば、結晶磁気異方性により高い熱擾乱指数Δが得られる結晶系材料においては、薄い厚さにおいて異方性が低下する場合がある。このような結晶系材料を用いる場合には、第1磁性層11の厚さは10nm以下であることが好ましい。
【0172】
以下、第3磁性層1
3の例について説明する。以下では、
この磁性層を便宜的に「中間磁性層」と記載する。「中間磁性層」は、第3磁性層1
3を指す。
【0173】
中間磁性層は、例えば、垂直磁化膜である。中間磁性層は、例えば、高い磁気異方性エネルギーKuを有する。中間磁性層は、高分極率を有する。高い磁気異方性エネルギーKuにより、例えば、高い熱擾乱指数Δが維持される。中間磁性層が、参照層側の中間磁性層として機能する場合、この中間磁性層の飽和磁化は低いことが好ましい。これにより、記憶層への漏れ磁界が低減できる。一方、中間磁性層が記憶層側の中間磁性層として機能する場合、この中間磁性層の磁気摩擦定数は低いことが好ましい。これにより、例えば、電流による磁化反転が容易になる。
【0174】
中間磁性層の第1例として、中間磁性層は、合金を含む。この合金は、Fe及びCoからなる群から選択された少なくとも1つを含む。中間磁性層は、Ni、B、C、P、Ta、Ti、Mo、Si、W、Nb、Mn、Al及びGeからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含んでも良い。例えば、中間磁性層の飽和磁化が制御できる。例えば、中間磁性層に含まれる合金は、第1元素及び第2元素を含んでも良い。この第1元素は、Fe及びCoからなる群から選択された少なくとも1つを含む。この第2元素は、Ni、B、C、P、Ta、Ti、Mo、Si、W、Nb、Mn、Al及びGeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。中間磁性層は、例えば、CoFeBを含む。中間磁性層は、例えば、CoFeSi、CoFeP、CoFeW及びCoFeNbからなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。これらの合金は、CoFeBと同等のスピン分極率を有している。中間磁性層は、例えば、ホイスラー金属を含んでも良い。ホイスラー金属は、例えば、Co
2FeSi、Co
2MnSi、Co
2MnGe、Co
2MnAl、Co
2FeAl、Co
2(Fe、Mn)Si及びCo
2(Fe、Mn)Alからなる群から選択された少なくとも1つを含む。ホイスラー金属は、例えば、CoFeBと同等か、または、より高いスピン分極率を有している。ホイスラー金属は、中間磁性層に適している。
【0175】
中間磁性層の第2例において、中間磁性層は、酸化物を含む。この酸化物は、Mn、Co、Ni、Cu、Zn及びFeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。中間磁性層は、例えば、Fe
3O
4、MnFe
2O
4、CoFe
2O
4、NiFe
2O
4、CuFe
2O
4及びZnFe
2O
4からなる群から選択された少なくとも1つを含む。中間磁性層は、上記の材料の群から選択された2つ以上を含む混晶を含んでも良い。上記の材料の群は、例えば、スピネル型結晶構造を有するフェライトである。スピネル型結晶構造を有するフェライトは、第1非磁性層11Nと同じ結晶対称性を有する。例えば、スピネル型結晶構造を有するフェライトは、適合性に優れる。例えば、高い結晶品位が得られる。例えば、転位を実質的に有しない界面が得られる。マグネタイト(Fe
3O
4)は、金属性酸化物で、ハーフメタル性を有する。マグネタイト(Fe
3O
4)は、低い磁気摩擦定数を有する。マグネタイト(Fe
3O
4)は、特に中間磁性層への適用に好ましい。
【0176】
中間磁性層の第3例において、中間磁性層は、MnGa合金を含む。この例において、中間磁性層は、Al、Ge、Ir、Cr、Co、Pt、Ru、Pd、Rh、Ni、Fe、Re、Au、Cu、B、C、P、Gd、Tb及びDyからなる群から選択された少なくとも1つをさらに含んでも良い。例えば、飽和磁化、垂直磁気異方性、磁気摩擦定数及びスピン分極率の少なくともいずれかが制御される。中間磁性層は、例えば、MnGaXを含む。MnGaXは、Mn、Ga及び第1元素を含む。第1元素(X)は、Al、Ge、Ir、Cr、Co、Pt、Ru、Pd、Rh、Ni、Fe、Re、Au、Cu、B、C、P、Gd、Tb及びDyからなる群から選択された少なくとも1つを含む。中間磁性層は、例えば、MnGaAl、MnGaGe、MnGaIr、MnGaCr、MnGaCo、MnGaPt、MnGaRu、MnGaPd、MnGaRh、MnGaNi、MnGaFe、MnGaRe、MnGaAu、MnGaCu、MnGaB、MnGaC、MnGaP、MnGaGd、MnGaTb及びMnGaDyからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0177】
中間磁性層の第4例において、中間磁性層は、MnGe合金を含む。MnGe合金は、例えば、(001)方向において、一方のスピンバンドの状態は、フェルミ準位近傍に位置する。MnGe合金は、この結晶方位に対して、ハーフメタリックな特性を有すると考えられる。例えば、MnGe合金において、スピン分極率を向上できる。MnGe合金を適用することで、高い磁気抵抗比MRが得られる。
【0178】
中間磁性層の第5例において、中間磁性層は、合金を含む。この合金は、第1元素、第2元素及び第3元素を含む。第1元素は、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、As、Sb及びBiからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3元素は、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、As、Sb及びBiからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3元素は、第2元素とは異なる。中間磁性層は、例えば、MnAlGe及びMnZnSbからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0179】
中間磁性層の第6例において、中間層は、MnAl合金を含む。MnAl合金は、軽元素を含む。MnAl合金の磁気摩擦定数は、小さい。例えば、磁化反転に必要なエネルギーが少ない。例えば、スピン偏極した電子によって磁化を反転させるための電流密度を、大幅に低減できる。MnAl合金は、MnGe合金と同様に、(001)方向において、ハーフメタリックの特性を有する。MnAl合金は、高いスピン分極率を有する。MnAl合金を用いることにより、例えば、高い磁気抵抗比MRが得られる。
【0180】
中間磁性層の上記の第3〜第6例において示した、MnGa、MnGaX、MnGe、MnAlGe、MnZnSb及びMnAlなどにおいて、適切な組成範囲において、磁化膜としての特性が得られる。例えば、c軸を膜面に対して垂直になるように、中間磁性層を配向させる。例えば、中間磁性層を(001)配向成長させる。これにより、垂直磁気異方性が得られる。例えば、第1磁性層11の上に中間磁性層を形成する場合には、第1磁性層11が適切に選択される。例えば、第1非磁性層11Nの上に中間磁性層を形成する場合には、第1非磁性層11Nが適切に選択される。例えば、中間磁性層の形成の際に下に位置する層により、中間磁性層の結晶配向成長を制御できる。
【0181】
一般に、磁性材料の磁気摩擦定数は、その磁性材料のスピン軌道相互作用の大きさと相関がある。例えば、原子番号の大きな元素を含む材料においては、スピン軌道相互作用が大きい。原子番号の大きな元素を含む材料においては、一般的に、磁気摩擦定数が大きい。上記の例の磁性材料は、比較的軽い元素を含む。このため、磁気摩擦定数が小さい。磁化反転に必要なエネルギーが少ない。例えば、スピン偏極した電子によって磁化を反転させるための電流密度を、大幅に低減できる。上記の例の磁性材料は、特に、記憶層側の中間磁性層へ、効果的に適用できる。
【0182】
例えば、第3磁性層13または第4磁性層14は、第1非磁性層11Nに対してエピタキシャル成長している。これにより、高い磁気抵抗比MRが得られる。例えば、第1非磁性層11Nと接する中間磁性層において、X−Y平面に沿った格子長が、材料の固有の格子定数からシフトしても良い。
【0183】
第1非磁性層11Nは、例えば、トンネルバリア層として機能する。
【0184】
第1非磁性層11Nは、結晶質である。第1非磁性層11Nは、例えば、単結晶を含む。第1非磁性層11Nは、多結晶を含んでも良い。第1非磁性層11Nは、アモルファス領域を含んでも良い。第1非磁性層11Nが、結晶質であることにより、例えば、第1非磁性層11Nにおける電子の散乱が抑制される。例えば、電子が波数を保存したまま選択的にトンネル伝導する確率が上昇する。これにより、高い磁気抵抗比MRが得やすくなる。したがって、大きな磁気抵抗比MRを得るという観点においては、トンネルバリア層において単結晶が多結晶(配向膜を含む)よりも好ましい。
【0185】
第1非磁性層11Nの第1例において、第1非磁性層11Nは、酸化物を含む。この酸化物は、Mg及びGaを含む。第1非磁性層11Nは、例えば、MgGa
2O
4を含む。MgGa
2O
4のバンドギャップは、約4.7eVである。これにより、低い面積抵抗RAが得られる。MgGa
2O
4の格子定数は、0.8286nmである。例えば、MgGa
2O
4とFeとの間の格子ミスマッチは、約2.2%である。MgGa
2O
4とMnGaとの間の格子ミスマッチは、約6.4%である。MgGa
2O
4においては、多くの強磁性材料との格子整合性が良い。
【0186】
「MgGa
2O
4」における各元素の組成比は、厳密でなくても良い。例えば、逆スピネル構造が維持できる範囲で、Mg、Ga及びOの組成は、調整されても良い。MgGa
2O
4は、完全な立方晶を有していなくても良い。例えば、10%以下の正方晶歪みが含まれても良い。
【0187】
図2に関して説明した実験結果では、第1磁性層11及び第2磁性層12としてFeが用いられている。MgGa
2O
4層がFe層と共に用いられる場合、面内の格子間隔が異なるため、バンド折り畳み効果が発現すると考えられる。バンド折り畳み効果により、例えば、FeのΔ1バンドの有効スピン分極率が低下する可能性がある。有効スピン分極率の低下が抑制されるとさらに高い磁気抵抗比MRが得られる。
【0188】
例えば、MgGa
2O
4と物理的に直接接する磁性層が、ハーフメタリックである場合、バンド折り畳み効果が実質的に無視できる。例えば、この磁性層が、ハーフメタリックなホイスラー合金などである場合、
図2に関して説明した実験結果における磁気抵抗比MRよりもさらに高い磁気抵抗比MRが得られると考えられる。
【0189】
実施形態において、例えば、第1非磁性層11Nと物理的に直接接する磁性層(第1〜第4磁性層11〜14など)は、ホイスラー合金を含むことが好ましい。
【0190】
第1非磁性層11Nの第2例において、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、Mg、Ga及びInを含む。第1非磁性層11Nは、例えば、Mg(Ga、In)
2O
4などを含む。
【0191】
「Mg(Ga、In)
2O
4」における各元素の組成は、厳密でなくても良い。例えば、逆スピネル構造が維持できる範囲で、Mg、Ga、In及びOの組成は、調整されても良い。
【0192】
MgGa
2O
4及びMgIn
2O
4においては、逆スピネル度が高い。例えば、MgIn
2O
4においては、逆スピネル構造が安定であると考えられる。
【0193】
例えば、第1非磁性層11Nは、MgGa
2O
4(母材)と、Inと、を含んでも良い。Inは、融点が低く、イオン半径が大きい。このようなInを用いることで、逆スピネル度を高めることができる。
【0194】
MgIn
2O
4のバンドギャップは、MgGa
2O
4のバンドギャップよりも小さい。例えば、第1非磁性層11Nは,MgGa
2O
4(母材)と、Inと、を含んでも良い。例えば、小さいバンドギャップが得られる。第1非磁性層11Nの酸化物は、Mg、Ga及びInを含むことが好ましい。逆スピネル構造がより安定になり、小さいバンドギャップが得られる。
【0195】
第1非磁性層11Nの第3例において、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物は、Inを含む。第1非磁性層11Nは、例えば、MgIn
2O
4、ZnIn
2O
4及び(Mg、Zn)In
2O
4からなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0196】
上記の「MgIn
2O
4」における各元素の組成は、厳密でなくても良い。例えば、逆スピネル構造が維持できる範囲で、Mg、In及びOの組成は調整されても良い。
【0197】
第1非磁性層11Nの上記の第1〜第3例に関して説明した材料において、典型元素金属がさらに含まれても良い。この典型元素は、スピネル構造を形成する元素である。この典型元素の含有量は、例えば、10atm%(原子パーセント)以下である。これにより、逆スピネル構造が実質的に劣化しない。このような典型元素金属は、例えば、Zn、Cd、Al、Si、Ge及びSnからなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、このような典型金属元素により、逆スピネル構造に含まれる元素の一部が置換されても良い。例えば、バンドギャップ、相安定性及び格子定数が調整される。
【0198】
第1非磁性層11Nの第4例において、第1非磁性層11Nは、上記の第1〜第3例に関して説明した材料の2つ以上の層を含む。これらの層は、積層される。積層構造に含まれる第1層は、例えば、磁性層(第1〜第4磁性層11〜14など)に接する。積層構造に含まれる第2層は、磁性層に接しない。例えば、第1層の、上記の磁性層に対する格子整合性は良好である。例えば、第2層のバンドギャップは、低い。このような構成により、例えば、高い磁気抵抗比MRと、低い面積抵抗RAと、が得られる。第1非磁性層11Nは、例えば、MgIn
2O
4/MgGa
2O
4、Mg(Ga、In)
2O
4/MgGa
2O
4、MgGa
2O
4/MgIn
2O
4/MgGa
2O
4、及び、MgGa
2O
4/Mg(Ga、In)
2O
4/MgGa
2O
4、からなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0199】
上記の「AB
2O
4」における各元素の組成は、厳密でなくても良い。例えば、逆スピネル構造が維持できる範囲で、A、B及びOの各元素の組成は調整されても良い。
【0200】
第1非磁性層11Nの第5例において、第1非磁性層11Nは、第1化合物層と、第1層と、を含む。第1化合物層は、MgO及びMgAl
2O
4の一方である。第1層は、第1化合物層と積層される。第1層は、上記の第1〜第3例に関して説明した材料を含む。第1化合物層は、例えば、磁性層(第1〜第4磁性層11〜14など)と接する。第1層は、磁性層と接しない。このような構成により、例えば、高い磁気抵抗比MRと、低い面積抵抗RAと、が得られる。第1化合物においては、例えば、高い磁気抵抗比MRが得られる。上記の第1〜第3例で示した材料を含む第1層においては、低い面積抵抗RAが得られる。第1非磁性層11Nは、例えば、MgGa
2O
4/MgO、MgGa
2O
4/MgAl
2O
4、MgO/MgGa
2O
4/MgO、MgAl
2O
4/MgGa
2O
4/MgAl
2O
4、MgIn
2O
4/MgO、MgIn
2O
4/MgAl
2O
4、MgO/MgIn
2O
4/MgO、MgAl
2O
4/MgIn
2O
4/MgAl
2O
4、Mg(Ga、In)
2O
4/MgO、Mg(Ga、In)
2O
4/MgAl
2O
4、MgO/Mg(Ga、In)
2O
4/MgO、及び、MgAl
2O
4/Mg(Ga、In)
2O
4/MgAl
2O
4よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0201】
上記の「MgO」における各元素の組成は、厳密でなくても良い。例えば、岩塩型構造が維持できる範囲で、Mg及びOの各元素の組成は調整されても良い。上記の「AB
2O
4」における各元素の組成は、厳密でなくても良い。例えば、逆スピネル構造が維持できる範囲でA、B及びOの各元素の組成は調整されても良い。
【0202】
第2磁性層12は、例えば、垂直磁化を有する。第2磁性層12は、例えば、高い磁気異方性エネルギーKuを有する。第2磁性層12は、例えば、第1磁性層11の保磁力よりも大きい保磁力、第1磁性層11の異方性磁界よりも大きい異方性磁界、及び、第1磁性層11の磁気摩擦定数よりも大きい磁気摩擦定数の少なくともいずれかを有する。高い磁気異方性エネルギーKuにより、例えば、熱擾乱指数Δが維持できる。第2磁性層12の飽和磁化Msは小さいことが好ましい。これにより、例えば、参照層からの漏れ磁界の影響を低減できる。第2磁性層12の分極率は高いことが好ましい。これにより、例えば、高い磁気抵抗比MRが得られる。
【0203】
第2磁性層12の第1例において、第2磁性層12は、Mn及び第1元素を含む。第1元素は、Al、Ge及びGaから選択された少なくとも1つを含む。第2磁性層12は、MnGa、MnAl、MnGe及びMnAlGeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0204】
第2磁性層12の第2例において、第2磁性層12
は、Mn、Ga及び第1元素を含む。第1元素は、Al、Ge、Ir、Cr、Co、Pt、Ru、Pd、Rh、Ni、Fe、Re、Au、Cu、B、C、P、Gd、Tb及びDyからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2磁性層12は、例えば、MnGaAl、MnGaGe、MnGaIr、MnGaCr、MnGaCo、MnGaPt、MnGaRu、MnGaPd、MnGaRh、MnGaNi、MnGaFe、MnGaRe、MnGaAu、MnGaCu、MnGaB、MnGaC、MnGaP、MnGaGd、MnGaTb及びMnGaDyからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0205】
例えば、第1非磁性層11N及び第4磁性層14の少なくともいずれかが、適切に選択される。これにより、例えば、第2磁性層12の結晶配向成長が制御できる。例えば、第2磁性層12において、c軸が膜面に垂直方向となる。例えば、第2磁性層12において、(001)配向成長が得られる。例えば、垂直磁気異方性が得られる。
【0206】
第2磁性層12の第3例において、第2磁性層12は、合金を含む。この合金の少なくとも一部の結晶は、例えば、面心立方構造(FCC)の(111)に配向する。または、この合金の少なくとも一部の結晶は、六方最密充填構造(HCP)の(0001)に配向する。第2磁性層12に含まれる合金は、例えば、人工格子を形成し得る。
【0207】
例えば、FCCの(111)またはHCPの(0001)に結晶配向する上記の合金は、例えば、第1元素及び第2元素を含む。第1元素は、Fe、Co、Ni及びCuからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、Pt、Pd、Rh及びAuからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2磁性層12に含まれる合金は、例えば、強磁性合金である。この強磁性合金は、例えば、CoPd、CoPt、NiCo及びNiPtからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0208】
第2磁性層12に含まれ人工格子を形成し得る上記の合金は、例えば、交互に積層された第1層及び第2層を含む。第1層は、例えば、Fe、Co及びNiからなる群から選択された1つの元素を含む合金(強磁性膜)を含む。第2層は、例えば、Cr、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Re、Au及びCuからなる群から選択された1つの元素を含む合金(非磁性膜)を含む。第2磁性層12は、例えば、Co/Pt人工格子、Co/Pd人工格子、CoCr/Pt人工格子、Co/Ru人工格子、Co/Ir人工格子、Co/Os人工格子、Co/Au人工格子、及び、Ni/Cu人工格子からなる群から選択された少なくとも1つを含む。これらの人工格子において、強磁性膜への元素の添加、及び、強磁性膜と非磁性膜との厚さの比の少なくともいずれかが、調整される。垂直磁気異方性及び飽和磁化の少なくともいずれかが調整できる。
【0209】
第2磁性層12の第4例において、第2磁性層12は、合金を含む。この合金は、第1元素及び第2元素を含む。第1元素は、Fe、Co及びNiからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1元素は、例えば、遷移金属である。第2元素は、例えば、Tb、Dy及びGdからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、例えば、希土類金属である。第2磁性層12は、例えば、TbFe、TbCo、TbFeCo、DyTbFeCo及びGdTbCoからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2磁性層12は、積層体を含んでも良い。この積層体は、複数の層を含む。この複数の層のそれぞれは、上記の合金を含む。積層体において、複数の種類の層が、交互に積層されても良い。第2磁性層12は、例えば、TbFe/Co、TbCo/Fe、TbFeCo/CoFe、DyFe/Co、DyCo/Fe及びDyFeCo/CoFeからなる群から選択された少なくとも1つの積層体を含んでも良い。これらの合金において、例えば、厚さ及び組成の少なくともいずれらが調整される。例えば、垂直磁気異方性及び飽和磁化の少なくともいずれかが調整される。
【0210】
第2磁性層12の第5例において、第2磁性層12は、合金を含む。この合金は、第1元素及び第2元素を含む。第1元素は、Fe、Co、Ni及びCuからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、Pt、Pd、Rh及びAuからなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2磁性層12は、例えば、強磁性合金を含む。この強磁性合金は、FeRh、FePt、FePd、CoPt及びCoPdからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0211】
以下、第1中間層21及び第2中間層22の例について説明する。以下では、これらの層を便宜的に「中間層」と記載する。「中間層」は、第1中間層21及び第2中間層22の少なくともいずれかを指す。中間層は、非磁性材料を含むことが好ましい。
【0212】
中間層により、例えば、第1磁性層11と第3磁性層13との間における元素拡散による混合が、抑制される。中間層により、例えば、第2磁性層12と第4磁性層14との間における元素拡散による混合が、抑制される。
【0213】
例えば、中間層に含まれる元素、及び、磁性層に含まれる元素は、互いに非固溶でも良い。または、中間層に含まれる元素、及び、磁性層に含まれる元素は、実質的に完全な金属間化合物を形成しても良い。混合が抑制される。例えば、中間層において、異種元素をより弾く効果が生じる。例えば、中間層において、拡散が抑制される。例えば、中間層は、高い耐熱性を有することが好ましい。中間層は、高融点材料を含むことが好ましい。例えば、中間層に含まれる非磁性層は、Mg、Ba、Ca、Sr、Sc、Y、Ta、W、Nb、Gd、Tb、Dy、Ce、Ho、Yb、Er、B、C及びNからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。中間層は、上記の元素を含む化合物を含んでも良い。この化合物により、例えば、融点が上昇する。例えば、中間層は、上記の元素を含むホウ化物、上記の元素を含む炭化物、及び、上記の元素を含む窒化物からなる群から選択された少なくとも1つを含む。中間層は、積層体を含んでも良い。この積層体は、上記の元素を含む複数の層を含む。この積層体は、上記の化合物を含む複数の層を含む。
【0214】
2つの層の間に中間層が設けられ、これらの2つの層において結晶構造が互いに類似している場合、中間層は結晶質であることが好ましい。例えば、これら2つの層に対する、中間層の結晶型及び格子定数の整合性が良好であることが好ましい。これにより、例えば、中間層の格子緩衝層としての機能が高まる。一方、2つの層の間に中間層が設けられ、これらの2つの層において結晶構造が互いに異なる場合、中間層はアモルファス状態を含むことが好ましい。中間層がアモルファス状態を含むことにより、例えば、2つの層の少なくとも一方において、所望の配向状態が得易くなる。中間層におけるアモルファス(非晶質)状態においては、例えば、結晶のような長距離秩序(周期的構造)がない。中間層におけるアモルファス状態は、短距離秩序を有しても良い。中間層におけるアモルファス状態は、2nm以下の平均結晶粒を有する多結晶も含んでも良い。
【0215】
中間層の厚さは、例えば、0.1nm以上2nm以下であることが好ましい。厚さが0.1nm以上において、例えば、中間層を挟む2つの層における元素拡散の抑制が効果的に得られる。厚さが2nm以下において、例えば、中間層を挟む2つの層における磁気的結合が維持される。
【0216】
以下、第1非磁性層11Nの製造方法の例について説明する。
例えば、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物の形成の少なくとも一部には、例えば、気相成長プロセスが用いられる。気相成長プロセスは、例えば、スパッタリング法、MBE法及びレーザーアブレーション法の少なくともいずれかを含む。例えば、第1製造方法においては、合金層の形成後に、種々の酸化プロセスを経て、酸化物層が形成される。酸化プロセスは、例えば、酸素ガスをフローすることを含む。酸化プロセスは、例えば、プラズマ酸化プロセス及びラジカル酸化プロセスの少なくともいずれかを含んでも良い。第1非磁性層11Nとなる合金層の材料及び厚さに適した、温度、処理時間及びパワーが適用される。第2製造方法においては、酸化物ターゲットを用いた膜の形成が行われる。例えば、スピネル構造酸化物(例えばAB
2O
4)に含まれる、「A」の元素及び「B」の元素において酸化力及び融点の差が大きい場合には、第2製造方法が適している。いずれの製造方法においても、加熱成膜及び後加熱処理の少なくともいずれかが実施されても良い。例えば、より結晶性の高い第1非磁性層11Nが得られる。
【0217】
既に説明したように、第1非磁性層11Nに含まれる酸化物(例えば、MgGa
2O
4)は、例えば、室温のスパッタにより形成される。この後、例えば、300℃以上600℃以下で熱処理される。熱処理の温度は、400℃以上500℃以下でも良い。熱処理により、高い結晶性と高い平坦性とが得られる。熱処理により酸素が脱離することがあり得る。例えば、熱処理中または熱処理後に酸素ガスなどを導入しても良い。これにより、酸素の離脱が抑制できる。
【0218】
(第2実施形態)
本実施形態は、磁気記憶装置に係る。
図17は、第2実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式的断面図である。
図17に示すように、本実施形態に係る磁気記憶装置210は、例えば、第1実施形態に係る磁気抵抗素子と、制御素子75と、を含む。第1実施形態に係る任意の磁気抵抗素子及びその変形の磁気抵抗素子が用いられても良い。この例では、磁気抵抗素子111が用いられている。
【0219】
制御素子75は、磁気抵抗素子111と電気的に接続される。この例では、制御素子75は、トランジスタ70Tを含む。
【0220】
この例では、第1導電層11E及び第2導電層12Eが設けられる。これらの導電層は、例えば、電極である。これらの導電層の間に、第1磁性層11、第2磁性層及び第1非磁性層11Nが設けられる。第1導電層11Eは、第1磁性層11と電気的に接続される。第2導電層12Eは、第2磁性層12と電気的に接続される。
【0221】
この例では、第1配線70a及び第2配線70bが設けられる。第1配線70aは、第1磁性層11(この例では第1導電層11E)と電気的に接続される。第2配線70bは、第2磁性層12(この例では第2導電層12E)と電気的に接続される。例えば、第2配線70bは、1つのビット線である。
【0222】
トランジスタ70Tのドレイン70Tdは、接続部78aを介して第1配線70aと電気的に接続される。トランジスタ70Tのソース70Tsは、接続部78bを介して別の配線78cと電気的に接続される。別の配線78cは、例えば、別のビット線である。トランジスタ70Tのゲート70Tgは、ワード線に対応する。この例では、トランジスタ70Tは、半導体基板70Sの一部に設けられる。トランジスタ70Tは、例えば、選択トランジスタとして機能する。トランジスタ70T、配線及び接続部などの周りに層間絶縁部70Iが設けられる。
【0223】
上記の、配線、導電層及び接続部の少なくともいずれかは、例えば、W、Al、AlCu及びCuからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0224】
後述するように、複数の磁気抵抗素子111(メモリセル)が設けられる。複数の磁気抵抗素子111の1つに、1つの制御素子75が電気的に接続される。例えば、制御素子75により、複数の磁気抵抗素子111の1つが選択される。
【0225】
以下、実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の例について説明する。以下の例の製造方法は、貼り合わせプロセスを含む。
【0226】
図18(a)〜
図18(e)は、第2実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図18(a)に示すように、第1積層体SB1が用意される。第1積層体SB1は、第1実施形態に係る任意の磁気抵抗素子を含む。この例では、磁気抵抗素子111が設けられている。この例では、基板25の上に、磁気抵抗素子111が設けられている。第1基板25は、シリコンの単結晶基板である。磁気抵抗素子111の上に、第1接合層25aが設けられている。
【0227】
例えば、基板25の上に、磁気抵抗素子111に含まれる層が形成される。この形成は、例えば、スパッタ法及びMBE(Molecular Beam Epitaxy)の少なくともいずれかの実施を含む。磁気抵抗素子111に適切な条件が適用される。例えば、基板25のシリコン単結晶の結晶性を反映した結晶性が、磁気抵抗素子111に含まれる層に設けられても良い。例えば、磁気抵抗素子111に含まれる少なくとも1つの層において、実質的な単結晶性が設けられる。
【0228】
図18(b)に示すように、第2積層体SB2が用意される。第2積層体SB2は、例えば、半導体基板70S、トランジスタ70T、接続部(
図17参照)、層間絶縁部70I及び第2接合層25bを含む。トランジスタ70T、接続部及び層間絶縁部70Iの上に第2接合層25bが設けられる。
【0229】
第1接合層25a及び第2接合層25bは、金属を含む。この金属は、例えば、Al、Au、Cu、Ti及びTaからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0230】
図18(c)に示すように、第1接合層25aと第2接合層25bとを互いに対向させる。例えば、圧力の印加、及び、加熱の少なくともいずれかが行われる。第1接合層25aと第2接合層25bとが互いに接合される。
【0231】
図18(d)に示すように、基板25の一部を除去する。例えば、BSG(Back Side Grind
er)処理が行われる。これにより、基板25の厚さは減少する。
【0232】
図18(e)に示すように、基板25の残った部分を除去する。例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理が行われる。
【0233】
この後、配線などの形成を経て、磁気記憶装置210が作製される。
【0234】
上記の製造方法においては、磁気抵抗素子111を含む第1積層体SB1と、トランジスタ70T(制御素子75)を含む第2積層体SB2と、が別に準備される。これらの積層体が貼り合わされる。このため、2つの積層体のそれぞれにおいて適正な条件(熱に関する条件を含む)が適用される。これにより、それぞれの積層体に含まれる素子(磁気抵抗素子111及びトランジスタ70Tなど)において良好な特性が得られる。例えば、層における良好な結晶性が得られる。例えば、層における良好なアモルファス性が得られる。
【0235】
図19は、第2実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図19に示すように、本実施形態に係る磁気記憶装置220は、例えば、第1実施形態に係る磁気抵抗素子と、制御部70と、を含む。第1実施形態に係る任意の磁気抵抗素子及びその変形の磁気抵抗素子が用いられても良い。この例では、磁気抵抗素子110が用いられている。
【0236】
制御部70は、磁気抵抗素子110と電気的に接続される。この例では、第1配線70aは、第1磁性層11(この例では第1導電層11E)と、制御部70と、を互いに電気的に接続する。第2配線70bは、第2磁性層12(この例では第2導電層12E)と、制御部70と、を互いに電気的に接続する。電気的な接続の経路上に、すでに説明した制御素子75が設けられても良い。
【0237】
制御部70は、例えば、磁気抵抗素子110の電気抵抗に対応する値(例えが、電流、電圧及び抵抗の少なくともいずれか)を検知可能である。例えば、制御部70は、磁気抵抗素子110に記憶される情報を読み出す。制御部70は、例えば、読み出し動作を実施しても良い。
【0238】
制御部70は、例えば、磁気抵抗素子110に外部エネルギー(電流、電圧、電場及び磁界など)を加えても良い。この外部エネルギーにより、磁気抵抗素子110に複数の状態が形成されても良い。複数の状態において、磁気抵抗素子110における電気抵抗が互いに異なる。複数の状態は、例えば、記憶される情報に対応する。例えば、書き込み動作及び消去動作を実施しても良い。
【0239】
図20は、第2実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図20に示すように、本実施形態に係る磁気記憶装置230は、複数のメモリセルMCと、制御部70と、含む。
【0240】
複数のメモリセルMCの1は、少なくとも1つの磁気抵抗素子と、少なくとも1つの制御素子75と、を含む。この少なくとも1つの磁気抵抗素子は、第1実施形態に係る任意の磁気抵抗素子、または、その変形である。この例では、磁気抵抗素子110が設けられる。磁気抵抗素子110の一端と、制御素子75の第1端子と、が電気的に接続される。制御素子75は、例えば、トランジスタ70Tに対応する。第1端子は、例えば、トランジスタ70Tのドレイン70Tdに対応する。
【0241】
複数のビット線BL1、複数のビット線BL2及び複数のワード線WLが設けられる。この例では、複数のビット線BL1及びBL2は、Y軸方向に延びる。複数のビット線BL1及びBL2は、X軸方向に並ぶ。複数のワード線WLは、X軸方向に延びる。複数のワード線WLは、Y軸方向に並ぶ。
【0242】
複数のビット線BL1の1つに、複数のメモリセルMCの1つに含まれる磁気抵抗素子110の他端が電気的に接続される。複数のビット線BL2の1つに、複数のメモリセルMCの1つに含まれる制御素子75の第2端子が電気的に接続される。第2端子は、例えば、トランジスタ70Tのソース70Tsに対応する。
【0243】
複数のワード線WLの1つに、複数のメモリセルMCの1つに含まれる制御素子75の第3端子が電気的に接続される。制御素子75の第3端子が電気的に接続される。第3端子は、例えば、トランジスタ70Tのゲート70Tgに対応する。
【0244】
複数のビット線BL1のそれぞれは、第1スイッチSW1を介して、第1電流ソース/シンク回路SSC1と接続される。複数のビット線BL2のそれぞれは、第2スイッチSW2を介して、第2電流ソース/シンク回路SSC2と接続される。
【0245】
複数のビット線BL2のそれぞれの他端は、読み出し回路RCと電気的に接続される。読み出し回路RCは、例えば、読み出し電流回路及びセンスアンプなどを含む。読み出し回路RCは、複数のビット線BL1のそれぞれと電気的に接続されてもよい。
【0246】
第1電流ソース/シンク回路SSC1は、例えば、書き込み電流Iwを、複数のビット線BL1に供給する。または、第1電流ソース/シンク回路SSC1は、例えば、書き込み電流Iwを、複数のビット線BL1から受け取る。第2電流ソース/シンク回路SSC2は、例えば、書き込み電流Iwを、複数のビット線BL2に供給する。または、第2電流ソース/シンク回路SSC
2は、例えば、書き込み電流Iwを、複数のビット線BL2から受け取る。
【0247】
複数のワード線WLは、ロウデコーダRDと電気的に接続される。
【0248】
例えば、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第1電流ソース/シンク回路SSC1、第2電流ソース/シンク回路SSC2、読み出し回路RC及びロウデコーダRDの少なくとも一部は、制御部70に含まれる。制御部70は、制御素子75を含んでも良い
例えば、書き込み動作において、選択セル(複数のメモリセルMCの1つ)に対応する第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び、制御素子75(トランジスタ70T)がオン状態となる。例えば、第1電流ソース/シンク回路SSC1及び第2電流ソース/シンク回路SSC2の一方が、電流ソースとして機能する。例えば、第1電流ソース/シンク回路SSC1及び第2電流ソース/シンク回路SSC2の他方が、電流シンクとして機能する。選択セルに、書き込まれるべき情報に応じた方向に、書き込み電流Iwが流れる。
【0249】
例えば、書き込み電流Iwは、電流パルスを含む。電流パルスのパルス幅は、例えば、数ナノ秒以上数マイクロ秒以下である。書き込み電流Iwは、選択セルの磁気抵抗素子110を流れる。書き込み電流Iwにより、例えば、スピン注入書込みが行われる。
【0250】
読み出し動作において、磁気抵抗素子110に読み出し電流が流される。読み出し電流の大きさは、書き込み電流Iwの大きさよりも小さい。読み出し回路RCのセンスアンプは、磁気抵抗素子110の電気抵抗に応じた値(電流及び電圧の少なくともいずれか)を検知する。
【0251】
磁気記憶装置230は、例えば、スピン注入書き込み型の磁気メモリである。
【0252】
図21は、第2実施形態に係る別の磁気記憶装置を例示する模式図である。
図21に示すように、本実施形態に係る磁気記憶装置240は、第1実施形態に係る磁気抵抗素子またはその変形と、制御部70と、を含む。この例では、磁気抵抗素子110が設けられている。磁気抵抗素子110は、第1磁性層11、第2磁性層12及び第1非磁性層11Nを含む。
【0253】
第1導電層11Eの一部(後述する第3部分11Ec)と、第2導電層12Eと、の間に、第1磁性層11が設けられる。第1磁性層11と第2導電層12Eとの間に、第2磁性層12が設けられる。第1非磁性層11Nは、第1磁性層11及び第2磁性層12の間に設けられる。第1導電層11Eは、第1磁性層11と電気的に接続される。第2導電層12Eは、第2磁性層12と電気的に接続される。
【0254】
制御部70は、第1導電層11Eの第1部分11Eaと電気的に接続される。この接続は、例えば、第1配線70aにより行われる。制御部70は、第1導電層11Eの第2部分11Ebと電気的に接続される。この接続は、例えば、第3配線70cにより行われる。上記の第3部分11Ecは、第1部分11Eaと第2部分11Ebとの間に設けられる。制御部70は、第2導電層12E(第2磁性層12)と電気的に接続される。
【0255】
制御部70は、第1動作及び第2動作を実施する。第1動作において、制御部70は、第1導電層11Eに第1電流Ic1を供給する。第1電流Ic1は、第1部分11Eaから第2部分11Ebに向かって流れる。第2動作において、制御部70は、第1導電層11Eに第2電流Ic2を供給する。第2電流Ic2は、第2部分11Ebから第1部分11Eaに向かって流れる。
【0256】
上記の第1動作の後における、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗は、上記の第2動作の後における、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗とは異なる。
【0257】
例えば、上記の第1動作の後において、第1磁性層11の磁化は、上記の第1電流Ic1の向きに応じた状態となる。上記の第2動作の後において、第1磁性層11の磁化は、上記の第2電流Ic2の向きに応じた状態となる。これは、例えば、スピン軌道相互作用に基づく。
【0258】
例えば、上記の第1動作の後における、第1磁性層11の磁化と、第2磁性層12の磁化と、の間の角度は、上記の第2動作の後における、第1磁性層11の磁化と、第2磁性層12の磁化と、の間の角度とは異なる。
【0259】
例えば、第1導電層11Eと第2導電層12Eとの間に印加される電圧により、磁気抵抗素子110が選択される。第1磁性層11の磁化は、この電圧、及び、上記の電流の向きにより制御される。
【0260】
実施形態によれば磁気抵抗比を向上できる磁気抵抗素子及び磁気記憶装置が提供できる。
【0261】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0262】
以上、例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの例に限定されるものではない。例えば、磁気抵抗素子または磁気記憶装置に含まれる磁性層、中間層、導電層、制御素子、配線及び制御部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0263】
各例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0264】
本発明の実施の形態として上述した磁気抵抗素子及び磁気記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気抵抗素子及び磁気記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0265】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0266】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。