特許第6365912号(P6365912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6365912-巻線部品の冷却構造 図000002
  • 特許6365912-巻線部品の冷却構造 図000003
  • 特許6365912-巻線部品の冷却構造 図000004
  • 特許6365912-巻線部品の冷却構造 図000005
  • 特許6365912-巻線部品の冷却構造 図000006
  • 特許6365912-巻線部品の冷却構造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365912
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】巻線部品の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/08 20060101AFI20180723BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20180723BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20180723BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20180723BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01F27/08 153
   H01F27/02 150
   H01F37/00 S
   H01F37/00 M
   H01F30/10 S
   H01F27/28 176
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-519062(P2017-519062)
(86)(22)【出願日】2016年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2016061050
(87)【国際公開番号】WO2016185812
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-100099(P2015-100099)
(32)【優先日】2015年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潔
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−277482(JP,A)
【文献】 特開2011−71190(JP,A)
【文献】 実開平5−38836(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/08
H01F 27/02
H01F 27/28
H01F 30/10
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア構体の脚部にコイルが巻かれた巻線部品を空冷するための冷却構造において、
前記コア構体及び前記コイルを備えた巻線部品本体と、
前記コイルの側面を覆う平板部、及び、前記平板部の内面に突設され、かつ前記コイルの中心軸に平行であって前記コイルの外周面の隅部に隙間を隔てて対向する整流リブ、を有する整流部材と、
を備え、
前記脚部の一部と前記平板部と前記整流リブとにより、前記コイルの外側に、前記コイルの中心軸に直交する方向に沿ってほぼ均一な距離を有する第1の冷却用風洞を形成し、前記第1の冷却用風洞に冷却風を通過させることを特徴とする巻線部品の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載した巻線部品の冷却構造において、
前記整流リブは、前記コイルの中心軸に直交する方向の断面形状がほぼ三角形であることを特徴とする巻線部品の冷却構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載した巻線部品の冷却構造において、
前記コイルの内周面と前記コイルが巻かれる前記脚部の外周面との間に、前記コイルの中心軸に直交する方向に沿ってほぼ均一な距離を有する第2の冷却用風洞を形成したことを特徴とする巻線部品の冷却構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載した巻線部品の冷却構造において、
前記巻線部品が、前記コア構体の複数の脚部に前記コイルがそれぞれ巻かれたリアクトルまたは変圧器であることを特徴とする巻線部品の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器やリアクトル等の巻線部品を空冷するための冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、特許文献1に記載された内鉄型のリアクトルを示しており、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は右側面図である。
これらの図において、101はコア構体であり、その一対の脚部にはコイル102,103が巻かれている。また、コイル102,103の軸方向の一部を包囲するように、絶縁材料からなる整流部材104が配置されている。
【0003】
図6は、この従来技術の冷却作用を説明するための平面図である。なお、101a,101bはコア構体101に形成された磁気的ギャップを示す。
図6において、コイル102,103に高周波電流が流れると、コイル102,103だけでなく、磁気的ギャップ101a,101bを有するコア構体101の温度も上昇する。
【0004】
図6に示す構造では、整流部材104の軸方向端部104aがコア構体101の端部101cからはみ出るように整流部材104が配置されている。このため、端部104aの内面に沿った冷却風の気流Aが形成され、この気流Aの一部はコイル102,103とコア構体101の脚部との間の隙間102a,103aを通過する気流B,Bとなる。
従来技術によれば、上記の気流A,B,Bにより、コイル102,103及びコア構体101の冷却が行われることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−191623号公報(図2図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示したように、気流Aは、主に、コア構体101の周囲に回り込んで整流部材104の内側をコイル102,103方向に流れる。このため、コイル102,103とコア構体101との間を流れる冷却風は気流Bが支配的になって内側の気流Bが少なく、また、コイル102,103間の隙間を流れる気流も少ない。
従って、従来技術では、コイル102,103及びコア構体101を均等かつ十分に冷却することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明の解決課題は、コイル周辺における冷却風の流路の抵抗を均等にしてコイル及びコア構体を効率良く均一に冷却するようにした巻線部品の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、コア構体の脚部にコイルが巻かれた変圧器やリアクトル等の巻線部品を空冷するための冷却構造に関するものである。
そして、本発明の特徴は、前記コア構体及び前記コイルを備えた巻線部品本体と、
前記コイルの側面を覆う平板部、及び、前記平板部の内面に突設され、かつ前記コイルの中心軸に平行であって前記コイルの外周面の隅部に隙間を隔てて対向する整流リブ、を有する整流部材と、を備え、
前記脚部の一部と前記平板部と前記整流リブとにより、前記コイルの外側に、前記コイルの中心軸に直交する方向に沿ってほぼ均一な距離を有する第1の冷却用風洞を形成し、前記第1の冷却用風洞に冷却風を通過させることにある。
【0009】
請求項2に記載するように、前記整流リブは、コイルの中心軸に直交する方向の断面形状をほぼ三角形とすることが望ましい。
【0010】
また、請求項3に記載するように、コイルの内周面とコイルが巻かれる脚部の外周面との間に、コイルの中心軸に直交する方向に沿ってほぼ均一な距離を有する第2の冷却用風洞を形成しても良い。
【0011】
請求項4に記載するように、本発明は、例えば、コア構体の複数の脚部にコイルがそれぞれ巻かれたリアクトルまたは変圧器等の巻線部品に適用可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、整流リブを有する整流部材を巻線部品本体に取り付けてコイルの周囲に第1の冷却用風洞を形成し、この風洞に冷却風を通過させることで、巻線部品全体を効率良く均等に冷却することができる。
これにより冷却ファン等の冷却装置の容量が少なくて済むため、巻線部品を組み込んだ装置全体の小型化、低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。
図2図1の組立状態を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態を示す一部切り欠き正面図(図4(a))、A−A断面図(図4(b))及びB−B断面図(図4(c))である。
図5】特許文献1に記載された内鉄型のリアクトルの平面図(図5(a))、正面図(図5(b))及び右側面図(図5(c))である。
図6図5のリアクトルの冷却作用を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。この実施形態は、巻線部品としての外鉄型のリアクトルに本発明を適用した場合のものであり、図1はリアクトルの分解斜視図、図2は組立状態を示す平面図である。
【0015】
図1図2において、10は巻線部品本体としての外鉄型のリアクトル本体であり、三相分のコイル11,12,13と、これらのコイル11,12,13が巻かれるコア構体14とを備えている。コア構体14は、コイル11,12,13の中心部にそれぞれ配置される三つの脚部と、コイル11,13の外側に配置される二つの脚部とを有する。
なお、16は、コイル11,12,13を外部導体(図示せず)に接続するための出力導体である。
【0016】
また、50A,50Bは、コイル11,12,13を挟むようにコイル11,12,13の両側から取り付けられる整流部材である。これらの整流部材50A,50Bは、コイル11,12,13の側面を覆う矩形の平板部51と、その両側端に形成された固定端部52と、平板部51の内面(コイル11,12,13側の面)に形成された整流リブ53a,53b,53c,53dとを備えている。
【0017】
図2に示すように、整流リブ53a,53b,53c,53dは、コイル11,12,13の外周面の隅部15a,15b,15c,15dとの間に一定の隙間を保有しつつ対向するように断面ほぼ三角形に形成されている。これらの整流リブ53a,53b,53c,53dは、コイル11,12,13の中心軸に平行であってコイル11,12,13の軸方向長さよりも長い凸状の部材である。
なお、整流リブ53a,53b,53c,53dを含む整流部材50A,50Bは、その全体が樹脂または金属材料を用いてそれぞれ一体的に製作されている。
【0018】
図3は、リアクトル本体10と整流部材50A,50Bとを組み合わせて形成されるリアクトルの斜視図である。ここで、整流部材50A,50Bは、リアクトル本体10の両側の脚部14に接着やスポット溶接によって取り付けられる。
【0019】
また、図4(a)は整流部材50Bの平板部51の一部を切り欠いて示した正面図、図4(b)は図4(a)のA−A断面図、図4(c)はB−B断面図である。ここで、断面を表示するためのハッチングは便宜上、省略してある。
図4(b)に示すように、コイル11,12,13の相互間、外側の脚部14aとコイル11の外周面との間、及び、外側の脚部14eとコイル13の外周面との間には、第1の冷却用風洞17(薄墨を付した部分)の一部となる隙間が保有されている。なお、図4(b)において、14b,14c,14dはコイル11,12,13がそれぞれ巻かれる脚部である。
【0020】
この実施形態において、図4(a)に示すように、冷却ファン等(図示せず)により発生させた冷却風をリアクトルの下方から供給すると、その気流は、コイル11,12,13の外周面に形成された冷却用風洞17を通過して出力導体16側に流出する。
本実施形態では、平板部51と整流リブ53a,53b,53c,53dとを備えた整流部材50A,50Bを脚部14a,14eの間に取り付けてコイル11,12,13を両側から挟み込んでいる。これにより、図4(b)に示すごとく、コイル11,12,13の外周面には、その中心軸に直交する方向に沿ってほぼ均一な距離を有する第1の冷却用風洞17が形成される。このため、コイル11,12,13の周囲における流路の抵抗がほぼ均一になり、冷却風はコイル11,12,13の外周面を万遍なく通過するので、各コイル11,12,13をそれぞれ外側から均等に冷却することができる。
【0021】
また、コイル11,12,13の内周面と脚部14b,14c,14dの外周面との間にも、コイル11,12,13の中心軸に直交する方向に沿ってほぼ均一な距離を有する第2の冷却用風洞18を形成することにより、コイル11,12,13の内周面及び脚部14b,14c,14dの外周面の冷却が可能になる。
すなわち、第1の冷却用風洞17及び第2の冷却用風洞18により、コイル11,12,13を内外から冷却すると共に、脚部14a,14b,14c,14d,14eを均等に冷却することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、変圧器やリアクトルのようにコイルとコア構体とを備えた巻線部品であって、単相または多相、外鉄型または内鉄型の各種巻線部品の冷却構造として利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
10:リアクトル本体
11,12,13:コイル
14:コア構体
14a,14b,14c,14d,14e:脚部
15a,15b,15c,15d:隅部
16:出力導体
17:第1の冷却用風洞
18:第2の冷却用風洞
50A,50B:整流部材
51:平板部
52:固定端部
53a,53b,53c,53d:整流リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6