(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365944
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】集合住宅インターホンシステム
(51)【国際特許分類】
H04M 9/00 20060101AFI20180723BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20180723BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20180723BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
H04M9/00 D
H04M1/00 U
G08B25/04 J
G08B25/00 510M
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-63090(P2015-63090)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-184813(P2016-184813A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】三好 秀明
【審査官】
山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】
特表平07−509793(JP,A)
【文献】
特開2010−146189(JP,A)
【文献】
特表2013−539854(JP,A)
【文献】
特開2012−159345(JP,A)
【文献】
特開2007−249763(JP,A)
【文献】
特開2002−048863(JP,A)
【文献】
特開2001−298732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
13/00−13/95
G01V 1/00−99/00
G06K 7/00− 7/14
17/00
G08B 13/00−15/02
23/00−31/00
H04B 5/00− 5/06
H04M 1/00
1/24− 3/00
3/16− 3/20
3/38− 3/58
7/00−11/10
99/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共用玄関に設置された集合玄関機と、集合住宅の各住戸に設置された住戸親機と、前記集合玄関機と前記住戸親機との間の通信を制御する制御装置とを有する集合住宅インターホンシステムにおいて、
60GHz帯を使用した通信を実施する携帯端末を居住者が携行すると共に、
前記集合玄関機に、前記携帯端末と60GHz帯通信を実施する無線通信部を設け、
前記無線通信部は、前記携帯端末に対して電波を送信する送信部と、前記携帯端末から送信された電波を受信する受信部と、送受信を制御する送受信制御部と、入館者の有無を判断する入館者検知部とを有し、
前記送受信制御部は、待機状態ではデータ通信用ベースバンド部をオフして60GHz帯の変調のないキャリア電波を所定間隔で繰り返して前記送信部から発信させると共に、前記受信部が受信した前記キャリア電波の反射波の位相を検出し、当該位相の反転を検出したら共用玄関に人物が現れたと判断することを特徴とする集合住宅インターホンシステム。
【請求項2】
訪問者を撮像するためのカメラを前記集合玄関機或いは共用玄関に設ける一方、
前記カメラの撮像映像を保存する映像保存手段と、
居住者と前記携帯端末との関連付けを記憶する携帯端末情報記憶手段と、
前記映像保存手段に保存制御する訪問者録画制御手段と、
前記携帯端末情報記憶手段を参照して入館者が居住者であるか判別する入館者判別手段と、を有し、
前記送受信制御部は、前記入館者検知部が共用玄関に人物が現れたと判定したら、前記データ通信用ベースバンド部を起動させて前記送信部から60GHz帯通信のビーコン送信を開始すると共に、
前記入館者判別手段が、前記携帯端末からの応答信号を基に入館者は居住者であると判断したら、当該居住者に関連する訪問者映像を前記映像保存手段から読み取って、前記応答信号送信元の前記携帯端末へ送信することを特徴とする請求項1記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項3】
居住者と前記携帯端末との関連付けを記憶する携帯端末情報記憶手段と、
前記携帯端末情報記憶手段を参照して入館者が居住者であるか判別する入館者判別手段と、を有し、
前記送受信制御部は、前記入館者検知部が共用玄関に人物が現れたと判定したら、前記データ通信用ベースバンド部を起動させて前記送信部から60GHz帯通信のビーコン送信を開始すると共に、
前記携帯端末からの応答信号を基に、前記入館者判別手段が入館者は居住者であると判断したら、共用玄関ドアの電気錠を解錠することを特徴とする請求項1記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項4】
解錠した前記電気錠は一定時間後施錠動作すると共に、
前記送受信制御部は、前記電気錠の施錠動作を受けて、前記データ通信用ベースバンド部をオフして60GHz帯の変調のないキャリア電波を所定間隔で繰り返して送信する前記待機状態に移行することを特徴とする請求項3記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項5】
集合住宅居住者への連絡情報を蓄積した居住者関連情報記憶手段を有し、
前記送受信制御部は、前記入館者判別手段が入館者は居住者であると判断したら、当該居住者に関連する情報を前記居住者関連情報記憶手段から読み取って、前記送信部から前記応答信号送信元の前記携帯端末へ送信することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の集合住宅インターホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅において訪問者が訪問先を呼び出すための集合住宅インターホンシステムに関し、詳しくは入館者を検知する機能を備えた集合住宅インターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
共用玄関に入ってきた人物を認識する機能を持たせた集合住宅インターホンシステムがある。例えば、特許文献1では人感センサを設置してエントランスから入ってきた入館者を検知している。そして、この人感センサが検知動作したにも関わらず集合玄関機が操作されなければ、不審者と判断して集合玄関機から警告音を鳴動させてセキュリティの向上を図った。
また、特許文献2では居住者にIDカードを携行させて、帰宅した際にカードリーダにIDカードを翳させることで入館者が帰宅者であることを検知させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−198741号公報
【特許文献2】特開2003−274026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の集合住宅インターホンシステムでは、上述したように入館者を検知するためにセンサを設けていた。また、帰宅者に対してはIDカードを使用することでセンサを設ける必要は無くなったが、IDカードを翳す手間が必要であった。
【0005】
一方で、スマートフォン等の携帯端末が普及しており、この携帯端末の機能を利用することで、帰宅者であることが認識できれば不在時の訪問者情報等を共用玄関において通知することも可能である。
ただし、現状は携帯端末へ大容量のファイル伝送を行う場合、LTEや無線LANの使用が考えられるが、実効帯域の制約が大きく数秒程度で送信することが難しい。
この点、利用が可能となった60GHz帯の電波を使用する携帯端末を居住者が携行すれば、ミリ波の持つ特性である送信情報量の増加や直進性、更には限られた空間での良好な通信性を利用して、新たな利用形態が考えられる。
【0006】
そこで、本発明はこのような背景から、集合住宅の共用玄関において、人感センサ等のセンサを設置すること無く入館者の検知を可能とし、更に検知した入館者が帰宅者である場合は不在時の訪問者映像情報等を共用玄関に居る間に通知可能とし、利便性を高めた集合住宅インターホンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、共用玄関に設置された集合玄関機と、集合住宅の各住戸に設置された住戸親機と、集合玄関機と住戸親機との間の通信を制御する制御装置とを有する集合住宅インターホンシステムにおいて、60GHz帯を使用した通信を実施する携帯端末を居住者が携行すると共に、集合玄関機に、携帯端末と60GHz帯通信を実施する無線通信部を設け、無線通信部は、携帯端末に対して電波を送信する送信部と、携帯端末から送信された電波を受信する受信部と、送受信を制御する送受信制御部と、入館者の有無を判断する入館者検知部と、を有し、送受信制御部は、待機状態ではデータ通信用ベースバンド部をオフして60GHz帯の変調のないキャリア電波を所定間隔で繰り返して送信部から発信させると共に、受信部が受信したキャリア電波の反射波の位相を検出し、当該位相の反転を検出したら共用玄関に人物が現れたと判断することを特徴とする。
この構成によれば、集合住宅の共用玄関において、集合玄関機から発信されるキャリア電波の反射波から訪問者や帰宅者を検知するため、人感センサ等のセンサを設置すること無く入館者の有無を判別できる。そして、入館者を検知しない状態では、無線通信部はキャリア電波を定期的に発信させる動作のみであるため、消費電力は僅かで済む。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、訪問者を撮像するためのカメラを集合玄関機或いは共用玄関に設ける一方、カメラの撮像映像を保存する映像保存手段と、居住者と携帯端末との関連付けを記憶する携帯端末情報記憶手段と、映像保存手段に保存制御する訪問者録画制御手段と、携帯端末情報記憶手段を参照して入館者が居住者であるか判別する入館者判別手段とを有し、送受信制御部は、入館者検知部が共用玄関に人物が現れたと判定したら、データ通信用ベースバンド部を起動させて送信部から60GHz帯通信のビーコン送信を開始すると共に、入館者判別手段が、携帯端末からの応答信号を基に入館者は居住者であると判断したら、当該居住者に関連する訪問者映像を映像保存手段から読み取って、応答信号送信元の携帯端末へ送信することを特徴とする。
この構成によれば、携帯端末からの応答信号により、入館者が帰宅者であるかそうでないか判別できる。そして、帰宅者に対しては、共用玄関において居住者が携行する携帯端末に対して、帰宅者に関連する訪問者映像、例えば外出して不在時の訪問者映像が送信されるため、外出していた居住者は共用玄関に入った時点で不在時に誰が来たか映像で確認できる。そのため、自宅に戻ってから確認操作する手間を省くことができ利便性が良い。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の構成において、居住者と携帯端末との関連付けを記憶する携帯端末情報記憶手段と、携帯端末情報記憶手段を参照して入館者が居住者であるか判別する入館者判別手段とを有し、送受信制御部は、入館者検知部が共用玄関に人物が現れたと判定したら、データ通信用ベースバンド部を起動させて送信部から60GHz帯通信のビーコン送信を開始すると共に、携帯端末からの応答信号を基に、入館者判別手段が入館者は居住者であると判断したら、共用玄関ドアの電気錠を解錠することを特徴とする。
この構成によれば、携帯端末からの応答信号により、入館者が帰宅者であるかそうでないか判別できる。そして、帰宅者に対しては、共用玄関ドアの電気錠の解錠を実施するため、利便性が良い。一方、居住者ではないと判断した場合は、監視カメラの録画等を行わせることができ、セキュリティの向上に活用できる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の構成において、解錠した電気錠は一定時間後施錠動作すると共に、送受信制御部は、電気錠の施錠動作を受けて、データ通信用ベースバンド部をオフして60GHz帯の変調のないキャリア電波を所定間隔で繰り返して送信する待機状態に移行することを特徴とする。
この構成によれば、電気錠が施錠したら、即ち共用玄関に人がいなくなったら待機状態に戻るため、無線通信部の起動時間は僅かであり、60GHz帯通信を実施しても消費電力は僅かで済む。
【0011】
請求項5の発明は、請求項2乃至4の何れかに記載の構成において、集合住宅居住者への連絡情報を蓄積した居住者関連情報記憶手段を有し、送受信制御部は、入館者判別手段が入館者は居住者であると判断したら、当該居住者に関連する情報を居住者関連情報記憶手段から読み取って、送信部から応答信号送信元の携帯端末へ送信することを特徴とする。
この構成によれば、共用玄関において、帰宅した居住者が携行する携帯端末に対して帰宅者に関連する回覧情報等を送信するため、帰宅者に対して確実に未伝達の情報を伝達できる。よって、管理人の負担を軽減できる。一方、帰宅者は自宅に入る前に自身に関連する情報を把握でき、利便性が良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、集合住宅の共用玄関において、集合玄関機から発信されるキャリア電波の反射波から訪問者や帰宅者を検知することができるため、人感センサ等のセンサを設置すること無く入館者の有無を判定できる。
そして、帰宅者に対しては、共用玄関において居住者が携行する携帯端末に対して、帰宅者に関連する訪問者映像が送信されるため、外出していた居住者は共用玄関に入った時点で不在時に誰が来たか映像で確認できる。そのため、自宅に戻ってから確認操作する手間を省くことができ利便性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る集合住宅インターホンシステムの一例を示すシステム構成図である。
【
図2】
図1の集合玄関機の60GHz帯無線通信部の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る集合住宅インターホンシステムの一例を示す構成図であり、1は共用玄関であるエントランスに設置されて訪問者が居住者を呼び出すための集合玄関機、2は集合住宅の各住戸に設置されて集合玄関機1からの呼び出しに応答するための住戸親機、3は管理室に設置されて居住者や訪問者と通話するための管理室親機、4は機器間の通信を制御する制御装置、5は居住者が携行して60GHz帯の通信を実施する携帯端末、6は住戸毎に住戸玄関に設置された玄関子機、7は集合住宅の居住者に関連する情報を蓄積したサーバ、10は共用玄関から居住エリアに通ずる共用玄関ドアの電気錠、11はこの電気錠10を制御する電気錠制御盤である。
【0015】
集合玄関機1、管理室親機3はそれぞれ伝送線L1,L2を介して制御装置4に接続され、各住戸親機2は分配器8を介して制御装置4から延設されている親機幹線L3に接続されている。サーバ7は、汎用通信網であるインターネットNを介して制御装置4に接続されている。
【0016】
そして集合玄関機1は、住戸を選択して呼び出す機能に加えて、来訪者を撮像するためのカメラ1a、携帯端末5と通信するための60GHz帯無線通信部1bを備え、1cは入館者が居住者であるか判別すると共に集合玄関機1全体を制御する集合玄関機制御部である。また、伝送線L4を介して電気錠10を制御する電気錠制御盤11に接続され、電気錠10の施解錠を行う機能を有している。
【0017】
またサーバ7は、集合住宅の居住者に関連する情報が保存され、集合玄関機1のカメラ1aが撮像した映像を保存する映像保存部7a、居住者が携行する携帯端末の番号情報を記憶する居住者端末情報記憶部7b、集合住宅の回覧板情報記憶部7c等を有している。
映像保存部7aには、集合玄関機1が呼出操作された際に撮像を開始したカメラ1aの撮像映像のうち、呼出先の住戸親機2から応答が無かった場合の映像(来訪者映像)が保存される。この保存は制御装置4の制御により行われ、呼出先情報と共に保存される。また回覧板情報記憶部7cには、管理人が管理室親機3を操作することで居住者に伝えるべき情報が保存される。
【0018】
図2は、60GHz帯無線通信部1bの回路ブロック図を示している。
図2に示すように、携帯端末5と通信するための送信部15及び受信部16、送受信を制御する送受信制御部17、送信データのデータ通信用ベースバンド部18、受信データのデータ通信用ベースバンド部19、人物に存在を判定するための近接判定部20、LPF部21を備えている。
【0019】
送信部15は、送信信号を変調する変調部151、60GHz帯発振部152、発振を制御する発振制御部153、90°分配器154、送信信号を増幅する送信アンプ155、送信用アンテナ156等を備えている。
【0020】
受信部16は、受信用アンテナ161、受信信号を増幅する受信アンプ162、I相混合部163aとQ相混合部163bを有する位相検波部163、受信信号を復調する復調部164等を備えている。
【0021】
位相検波部163は、送信部15の90°分配器154から受信部16に対して位相0度の情報であるI相情報と位相90度の情報であるQ相情報とが送られ、受信用アンテナ161が受信した反射波の位相と比較する。
【0022】
このように構成された集合住宅インターホンシステムは次のように動作する。但し、集合玄関機1から居住者の呼び出し、呼出操作に伴いカメラ1aが撮像を開始して撮像映像が住戸親機2に表示される動作は従来と同様であるため説明を省略し、ここでは集合玄関機1が備えている60GHz帯無線通信部1bの動作について説明する。
【0023】
60GHz帯無線通信部1bの送受信制御部17は、送信用アンテナ156から発信するキャリア電波の反射波を受信用アンテナ161が受信して、位相検波部163が一定時間以上位相の変化を検出しなければ、共用玄関に人が居ないと判断してデータ通信用ベースバンド部118をオフ、変調部151をオフすると共に、60GHz帯発振部152をオンさせ、60GHz帯の変調のないキャリア電波を所定間隔で繰り返して送信用アンテナ156から発信させる。尚、この状態を以下「待機状態」として説明する。
【0024】
この待機状態で、位相検波部163は受信用アンテナ161が受信したキャリア電波の反射波の位相検波を継続して実施し、位相の反転が発生したら近接判定部20がそれを認識して共用玄関に人物が入ってきたと判断する。
具体的に、共用玄関へ人物が現れる入館動作は次のように演算して判定される。送信周波数f、送信波振幅Atx、受信波振幅Arx、反射体による位相変動φ(t)とすると、まず送信波及び受信波は数1の(1)、(2)式で示される。
【0026】
(2)式に示す受信波は、位相検波部163において数2の(3)、(4)式で示される波形に加工されて近接判定部20に入力される。
【0028】
この(3)、(4)式に加工された波形は、近接判定部20において数3に示す(5)式の演算処理が行われる。
【0030】
この(5)式に示す位相変動φ(t)の時間微分を演算することで、反射体の接近(または離反)を判定でき、接近と判定したら人物は入館したと判断される。
【0031】
ここでLPF部21を説明すると、LPF部21はデータ通信系の影響を遮断するためのもので、カットオフ周波数10kHzの特性を有している。近接判定部20で用いる位相変動は、数4に示す(6)式のfdで示されるドップラー効果に伴うものであり、キャリア周波数を60Hzとし、移動体相対速度を10m/secとしても4kHzであるのに対し、データ通信では数百Mbps〜1Gbpsオーダを目的としている。従って、10kHzのカットオフ周波数でデータ通信系の影響を容易に遮断できる。尚、(6)式において、Vは移動体相対速度、λは波長である。
【0033】
こうして、位相検波部163が反射波の位相変化を検出し、近接判定部20が正又は負のどちらかの変化を検出したら入館者有りと判断する。そして、この判断を受けて送受信制御部17は、ベースバンド部18,19及び変調部151をオンして、60GHz帯のデータ通信を開始する。
【0034】
データ通信用ベースバンド部18,19及び変調部151が起動すると、送信用アンテナ156から60GHz帯通信のビーコン送信が開始され、入館した人物が携行している携帯端末5からの応答を待つ。ビーコン信号を受信した携帯端末5から応答信号を受信したら、この応答信号をもとに集合玄関機制御部1cが居住者端末情報記憶部7bを参照して居住者が携行している携帯端末5であるか判別する。
居住者が携行する携帯端末5であれば、更に特定した居住者情報を基に帰宅者に関連する不在時の訪問者映像を映像保存部7aから読み取る。更に、回覧板情報記憶部7cに帰宅者に関連する情報があれば、その情報も合わせて読み取る。
こうして読み取った映像、回覧板情報は、送信部15から携帯端末5に送信される。
【0035】
また、帰宅者であると判別した集合玄関機制御部1cは、電気錠制御盤11に対して解錠指示を出し、電気錠制御盤11の制御により共用玄関ドアの電気錠10が解錠される。
その後、この電気錠10が施錠動作したら、電気錠制御盤11から集合玄関機制御部1cがその信号を入手し、この信号を基に60GHz帯無線通信部1bは待機状態に戻る。
【0036】
一方、ビーコン送信を開始しても応答信号がない場合、或いは応答信号があっても居住者でない場合は、情報の送信等は行わず予め設定された動作を実施する。例えば、集合玄関機1のカメラ1a或いは共用玄関に設置されている図示しない監視カメラを起動してサーバ7での録画を開始し、所定時間が経過しても集合玄関機1が操作されなければ、集合玄関機1から警報音を出力させる。
【0037】
このように集合住宅の共用玄関において、集合玄関機1から発信されるキャリア電波の反射波から訪問者や帰宅者を検知するため、人感センサ等のセンサを設置すること無く入館者の有無を判別できる。そして、入館者を検知しない状態では、60GHz帯無線通信部1bはキャリア電波を定期的に発信させる動作のみであるため、消費電力は僅かで済む。
また、携帯端末5からの応答信号により、入館者が帰宅者であるかそうでないか判別し、帰宅者に対しては共用玄関において居住者が携行する携帯端末5に対して、帰宅者に関連する外出していた不在時の訪問者映像が送信されるため、外出していた居住者は共用玄関に入った時点で不在時に誰が来たか映像で確認できる。そのため、自宅に戻ってから確認操作する手間を省くことができ利便性が良い。更に、帰宅者に関連する回覧板情報がある場合は、その情報も合わせて共用玄関において携帯端末5に対して送信するため、帰宅者に対して確実に未伝達の情報を伝達でき、管理人の負担を軽減できる。一方、帰宅者は自宅に入る前に自身に関連する情報を把握でき、利便性が良い。
加えて、帰宅者に対しては共用玄関の電気錠10の解錠を実施するため、利便性が良い。一方、居住者ではないと判断した場合は、監視カメラ映像の録画等を行わせることができ、セキュリティの向上に活用できる。
また、電気錠10が施錠したら、即ち共用玄関に人がいなくなったら待機状態に戻るため、60GHz帯無線通信部の起動時間は僅かであり、60GHz帯通信を実施しても消費電力は僅かで済む。
また、60GHz帯の変調のないキャリア電波を所定間隔で繰り返して送信用アンテナから発信させて、その反射波の位相変化をトリガとして60GHz帯通信を開始するため、60GHz帯以外の通信やセンサーを用いてトリガとする場合に比べて、限られた空間に入ってきたことを比較的簡便に且つ誤動作が少なく検出することができる。
【0038】
尚、上記実施形態では、60GHz帯無線通信部1bを集合玄関機1に内蔵させているが、独立して設け、集合玄関機1と通信する形態としても良い。また、映像保存部7aや、回覧板情報記憶部7c等を専用のサーバ7に配置して制御装置4を介して通信する形態としたが、これらの記憶部を制御装置4に設けても良い。また、来訪者映像に関しては、訪問先の住戸親機2に録画させて、帰宅時に住戸親機2から読み取って携帯端末5に送信しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1・・集合玄関機、1a・・カメラ、1b・・60GHz帯無線通信部(無線通信部)、1c・・集合玄関機制御部(入館者判別手段)、2・・住戸親機、4・・制御装置(訪問者録画制御手段)、7・・サーバ、7a・・映像保存部(映像保存手段)、7b・・居住者端末情報記憶部(携帯端末情報記憶手段)、7c・・回覧板情報記憶部(居住者関連情報記憶手段)、10・・電気錠、15・・送信部、16・・受信部、17・・送受信制御部、18,19・・データ通信用ベースバンド部、20・・近接判定部(入館者検知部)、163・・位相検波部。