特許第6366029号(P6366029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366029
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   B32B27/00 L
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-544972(P2017-544972)
(86)(22)【出願日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】JP2017029527
(87)【国際公開番号】WO2018037991
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2018年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-164437(P2016-164437)
(32)【優先日】2016年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】辻内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中垣 貴充
(72)【発明者】
【氏名】杉山 竜一
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−221737(JP,A)
【文献】 特開2004−021032(JP,A)
【文献】 特開2012−144021(JP,A)
【文献】 特開2007−314636(JP,A)
【文献】 特開2012−224082(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/156662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、離型層が非シリコーン系化合物を主成分として含有し、かつ離型層の表面粗さSRa(A)が10nm未満であり、離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が10nm未満であり、かつ離型層の表面自由エネルギーが20〜35mJ/mの範囲であり、かつ離型フィルムのヘイズ値が1.5%未満である、離型フィルム。
【請求項2】
基材フィルムの一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、離型層が非シリコーン系化合物を主成分として含有し、前記非シリコーン系化合物が長鎖アルキル化合物であり、かつ離型層の表面粗さSRa(A)が10nm未満であり、離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が10nm未満であり、かつ離型層の表面自由エネルギーが20〜35mJ/mの範囲である、離型フィルム。
【請求項3】
基材フィルムの厚みが30μm未満である、請求項1または2に記載の離型フィルム
【請求項4】
基材フィルムが3層積層構造である、請求項1〜3のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
基材フィルムが、A層/B層/A層からなる3層積層構造である、請求項4に記載の離型フィルム。
【請求項6】
基材フィルムが3層積層構造であり、両側の表面層の厚みがいずれも0.1〜2.0μmである、請求項4または5に記載の離型フィルム。
【請求項7】
基材フィルムが3層積層構造であり、両側の表面層がいずれも、平均粒子径が0.2〜0.7μmの粒子を含有する、請求項4〜6のいずれかに記載の離型フィルム
【請求項8】
離型層表面の剥離力が7N/50mm以下である、請求項1〜のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項9】
離型層の表面自由エネルギーが21〜32mJ/mの範囲である、請求項1〜のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項10】
離型層が、少なくとも長鎖アルキル化合物およびメラミン化合物を含有する熱硬化性組成物の硬化層である、請求項1〜のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項11】
離型層が、少なくとも長鎖アルキル化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化層である、請求項1〜のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項12】
長鎖アルキル化合物が、分子中にエチレン性不飽和基と長鎖アルキル基を有する化合物である、請求項11に記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムに関する。詳細には、非シリコーン系化合物を用いた離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、セラミックコンデンサー、ハードディスクドライブ、半導体装置等の精密電子機器の製造工程に用いられる粘着剤層の表面を保護する目的で使用されている。
【0003】
また、離型フィルムは、粘着シートを製造する際のキャリアフィルムとしても使用されている。
【0004】
また、離型フィルムは、グリーンシートや光学用樹脂シートなどを成型するときのキャリアフィルムとして使用されている。
【0005】
離型フィルムには、通常、剥離性の向上を目的として離型層が設けられている。
【0006】
離型フィルムの離型層にはシリコーン系化合物が一般的に用いられるが、精密電子機器等に関連する用途にシリコーン系化合物を用いると、離型層に含まれる低分子量のシリコーン系化合物が粘着剤層に移行して精密電子機器に残存し、精密電子機器にトラブルを発生させることが懸念されている。
【0007】
そこで、離型層に非シリコーン系化合物を用いた離型フィルムが知られている。非シリコーン系化合物として、例えば、長鎖アルキル系化合物、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ゴム系離型剤が知られている。以下、離型層に非シリコーン系化合物を用いた離型フィルムを「非シリコーン系離型フィルム」ということがある。
【0008】
また、非シリコーン系離型フィルムの離型層表面の中心面平均粗さSRaを小さくし、離型層を有する面とは反対面の中心面平均粗さSRaを比較的大きくすることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−300283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
離型フィルムの離型層上に積層される被転写膜、例えば、粘着剤層、セラミック層、光学用樹脂層などの被転写膜の良好な塗工性や表面平滑性を確保するという観点から、離型層表面は平滑であることが好ましい。
【0011】
しかしながら、特許文献1のように、非シリコーン系離型フィルムにおいて、離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さが比較的大きくなると、即ち反対面が粗面状態になると、例えば反対面の凹凸形状や突起形状が、離型層に転写したり、離型層を傷付けたり、また、離型層上に積層された被転写膜に転写したり、転写膜を傷付けるなどの不都合が生じることがある。
【0012】
また、離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さを比較的大きくすると、離型フィルムのヘイズ値が高くなることがある。離型フィルムのヘイズ値が高くなると、例えば、光学用途への適用が難しくなるという問題がある。
【0013】
従って、本発明の目的は、離型フィルムの離型層上に積層される被転写膜の良好な塗工性や表面平滑性を確保することができ、かつヘイズ値が比較的低い、非シリコーン系離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的は以下の発明によって達成された。
[1]基材フィルムの一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、離型層が非シリコーン系化合物を主成分として含有し、かつ離型層の表面粗さSRa(A)が10nm未満であり、離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が10nm未満である、離型フィルム。
[2]基材フィルムの厚みが30μm未満である、[1]に記載の離型フィルム。
[3]離型フィルムのヘイズ値が1.5%未満である、[1]または[2]に記載の離型フィルム。
[4]基材フィルムが3層積層構造である、[1]〜[3]のいずれかに記載の離型フィルム。
[5]基材フィルムが、A層/B層/A層からなる3層積層構造である、[4]に記載の離型フィルム。
[6]基材フィルムが3層積層構造であり、両側の表面層の厚みがいずれも0.1〜2.0μmである、[4]または[5]に記載の離型フィルム。
[7]基材フィルムが3層積層構造であり、両側の表面層がいずれも、平均粒子径が0.2〜0.7μmの粒子を含有する、[4]〜[6]のいずれかに記載の離型フィルム。
[8]前記非シリコーン系化合物が長鎖アルキル化合物である、[1]〜[7]のいずれかに記載の離型フィルム。
[9]離型層表面の剥離力が7N/50mm以下である、[1]〜[8]のいずれかに記載の離型フィルム。
[10]離型層の表面自由エネルギーが20〜35mJ/mの範囲である、[1]〜[9]のいずれかに記載の離型フィルム。
[11]離型層が、少なくとも長鎖アルキル化合物およびメラミン化合物を含有する熱硬化性組成物の硬化層である、[1]〜[10]のいずれかに記載の離型フィルム。
[12]離型層が、少なくとも長鎖アルキル化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化層である、[1]〜[10]のいずれかに記載の離型フィルム。
[13]長鎖アルキル化合物が、分子中にエチレン性不飽和基と長鎖アルキル基を有する化合物である、[12]に記載の離型フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、離型層上に積層される被転写膜の良好な塗工性や表面平滑性を確保することができ、かつヘイズ値が比較的低い、非シリコーン系離型フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの一方の面に、非シリコーン系化合物を主成分として含有する離型層を有する。本発明の離型フィルムは、基材フィルムの一方の面のみに、つまり片面のみに離型層を有することが好ましい。
【0017】
ここで、シリコーン系化合物とは、従来からシリコーン系離型剤として一般的に知られているシリコーン系化合物を指す。
【0018】
シリコーンとは、有機基(例えばアルキル基やフェニル基など)をもつケイ素と酸素が交互に結合してできた主鎖より成るポリマーである。例えば、基本骨格としてジメチルポリシロキサンを有するシリコーン系化合物がよく知られている。
【0019】
本発明における離型層は、非シリコーン系化合物を主成分として含有する。非シリコーン系化合物とは、上記したシリコーン系化合物以外の化合物を指す。本発明における非シリコーン系化合物には、非シリコーン系離型剤、非シリコーン系バインダー樹脂、非シリコーン系架橋剤等が含まれる。
【0020】
離型層が非シリコーン系化合物を主成分として含有するとは、離型層の固形分総量100質量%に対して非シリコーン系化合物を50質量%以上含有することを意味する。好ましくは離型層の固形分総量100質量%に対して非シリコーン系化合物を60質量%以上含有することであり、より好ましくは70質量%以上含有することであり、さらに好ましくは80質量%以上含有することであり、特に好ましくは90質量%以上含有することである。上限は100質量%である。本発明における離型層は、シリコーン系化合物を含まないことが最も好ましい。
【0021】
離型層に非シリコーン系化合物として含有することができる非シリコーン系離型剤としては、フッ素樹脂、ゴム系樹脂、ポリオレフィン樹脂、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、長鎖アルキル化合物等が挙げられる。これらの中でも、長鎖アルキル化合物、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく、さらに長鎖アルキル化合物、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂が好ましく、特に長鎖アルキル化合物が塗工性や離型性の観点から好ましい。
【0022】
フッ素樹脂としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体などが挙げられる。
【0023】
ゴム系樹脂としては、例えば、ブタジエン系、スチレンブタジエン系、コロロプレン系、ブチル系、エチレン・プロピレン系、アクリル系のゴムが挙げられる。
【0024】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセンの単独重合体やこれらの共重合体が挙げられる。
【0025】
アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂としては、炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、例えば、メラミンモノマーにホルムアルデヒドを助剤として添加し、メチロール化メラミンを生成させ、生成したメチロール基に炭素数6〜20のアルキル基を導入することによって得られる。
【0026】
長鎖アルキル化合物とは、炭素数が8以上の直鎖あるいは分岐のアルキル基(長鎖アルキル基ともいう。)を有する化合物を指し、具体的には、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物等が挙げられる。
【0027】
長鎖アルキル基の炭素数は、8以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が特に好ましい。長鎖アルキル基の炭素数は30以下が好ましく、28以下がより好ましく、25以下が特に好ましい。
【0028】
長鎖アルキル化合物の中でも、剥離性が良好であるという観点から、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0029】
長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂は、ビニルアルコール重合体(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を含む)、エチレン−ビニルアルコール重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を含む)あるいはビニルアルコール−アクリル酸共重合体(酢酸ビニル−アクリル酸共重合体の部分ケン化物を含む)と、長鎖アルキル基含有イソシアネート化合物とを反応させることによって合成することができる。この場合、長鎖アルキル基含有イソシアネート化合物の添加量を調整することにより重合体中に水酸基を含有させることができる。重合体中に水酸基を含有させることにより、後述する架橋剤との併用によって離型層の架橋が促進され、その結果、剥離力を安定的に小さくすることができる。
【0030】
長鎖アルキル基含有イソシアネート化合物としては、炭素数が8以上のアルキル基を有するモノイソシアネート化合物が挙げられ、具体的には、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネートなどが挙げられる。
【0031】
長鎖アルキル基含有アクリル樹脂は、長鎖アルキル基を有するアクリルモノマーあるいはメタクリルモノマー、例えば、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシルなどの単独重合体あるいは共重合体が挙げられる。
【0032】
上記共重合体に用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレンなどが挙げられる。
【0033】
上記した長鎖アルキル化合物は、市販されており、それらを使用することができる。市販品としては、中京油脂社製のレゼムシリーズの「K−256」、「N−137」、「P−677」、「Q−472」、アシオ産業(株)社製のアシオレジンシリーズの「RA−80」、「RA−95H」、「RA−585S」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のピーロイルシリーズの「HT」、「1050」、「1010」、「1070」、「406」、日本酢ビ・ポバール社製の「ZF−15」、「ZF−15H」、日本触媒社製のエポミン「RP−20」などが挙げられる。
【0034】
離型層に非シリコーン系化合物として含有することができる非シリコーン系バインダー樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン樹脂およびメラミン樹脂が好ましい。
【0035】
離型層に非シリコーン系化合物として含有することができる非シリコーン系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、剥離力を小さくするという観点からメラミン系架橋剤が好ましく用いられる。
【0036】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0037】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートトリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。
【0039】
カルボジイミド系架橋剤としては、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。
【0040】
メラミン系架橋剤として用いられるメラミン化合物とは、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基がそれぞれ結合した、いわゆるメラミン[1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン]のアミノ基に種々の変性を施した化合物の総称であり、トリアジン環が複数縮合したものも含む。変性の種類としては、3つのアミノ基の水素原子の少なくとも1つがメチロール化されたものが好ましく、さらに、メチロール化メラミン化合物のメチロール基を炭素数が1〜4の低級アルコールで部分もしくは完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン化合物が好ましい。
【0041】
エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールが挙げられる。
【0042】
メラミン系架橋剤は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC(株)のスーパーベッカミンJ−820−60、同J−821−60、同J−1090−65、同J−110−60、同J−117−60、同J−127−60、同J−166−60B、同J−105−60、同G840、同G821、三井化学(株)のユーバン20SB、同20SE60、同21R、同22R、同122、同125、同128、同220、同225、同228、同28−60、同2020、同60R、同62、同62E、同360、同165、同166−60、同169、同2061、住友化学(株)のスミマールM−100、同M−40S、同M−55、同M−66B、日本サイテックインダストリーズのサイメル303、同325、同327、同350、同370、同235、同202、同238、同254、同272、同1130、(株)三和ケミカルのニカラックMS17、同MX15、同MX430、同MX600、ハリマ化成(株)のバンセミンSM−975、同SM−960、日立化成(株)のメラン265、同2650Lなどが挙げられる。
【0043】
離型層は、離型層の硬化を促進させるために酸触媒を含有することが好ましい。酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、p−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
【0044】
離型層の好ましい態様の一つとして、少なくとも長鎖アルキル化合物と架橋剤を含有する熱硬化性組成物の硬化層を挙げることができる。長鎖アルキル化合物および架橋剤は前述の化合物を用いることができる。熱硬化性組成物は、さらに上記の酸触媒を含有することが好ましい。
【0045】
熱硬化性組成物における長鎖アルキル化合物の含有量は、離型層表面の剥離力を小さくするという観点から、熱硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一方、長鎖アルキル化合物の含有量が多くなり過ぎると、離型層の強度(硬度)が低下し耐溶剤性や耐熱性が低下することがあるので、長鎖アルキル化合物の含有量は、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。
【0046】
熱硬化性組成物における架橋剤の含有量は、剥離力を小さくするという観点から、熱硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。一方、架橋剤の含有量が多くなり過ぎると、離型層表面の剥離力が高くなることあるので、架橋剤の含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0047】
熱硬化性組成物に含有させる架橋剤としては、前述したようにメラミン系架橋剤が好ましい。熱硬化性組成物が長鎖アルキル化合物とメラミン系架橋剤を含有する場合、離型層の剥離力を小さくするという観点から、メラミン系架橋剤以外の架橋剤、例えばイソシアネート系架橋剤の含有量は、メラミン系架橋剤の含有量より少ないことが好ましい。具体的には、メラミン系架橋剤以外の架橋剤の含有量は、メラミン系架橋剤100質量部に対して90質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下が特に好ましい。
【0048】
熱硬化性組成物が酸触媒を含有する場合における酸触媒の含有量は、剥離力を小さくするという観点から、熱硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.3〜5質量%以上がより好ましく、0.5〜3質量%の範囲が特に好ましい。
【0049】
熱硬化性組成物を硬化させるときの条件(加熱温度、時間)は特に限定されないが、加熱温度は70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、加熱温度は300℃以下が好ましい。加熱時間は3〜300秒の範囲が好ましく、5〜200秒の範囲がより好ましい。
【0050】
また、離型層の好ましい他の態様として、少なくとも長鎖アルキル化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化層を挙げることができる。
【0051】
活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線によって重合し硬化する化合物(以下、活性エネルギー線硬化性化合物)を含有する。かかる活性エネルギー線硬化性化合物としては、分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(モノマーやオリゴマー)が挙げられる。ここで、エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。
【0052】
活性エネルギー線硬化性組成物に含有される長鎖アルキル化合物は、活性エネルギー線硬化性化合物であってもよいし、なくてもよいが、活性エネルギー線硬化性化合物であることが好ましい。つまり、活性エネルギー線硬化性組成物に含有される長鎖アルキル化合物は、分子中にエチレン性不飽和基と長鎖アルキル基を含む化合物(以下、「活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物(α)」ということがある)であることが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性化合物ではない長鎖アルキル化合物を非硬化性長鎖アルキル化合物ということがある。
【0053】
活性エネルギー線硬化性組成物に含有される長鎖アルキル化合物が、非硬化性長鎖アルキル化合物である場合は、前述した長鎖アルキル化合物を用いることができる。この場合の活性エネルギー線硬化性組成物は、分子中に長鎖アルキル基(炭素数8以上のアルキル基)を有しない活性エネルギー線硬化性化合物(以下、「他の活性エネルギー線硬化性化合物(β)」ということがある)を含有する必要がある。他の活性エネルギー線硬化性化合物(β)については、詳細は後述する。
【0054】
活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物(α)と、非硬化性長鎖アルキル化合物あるいは他の活性エネルギー線硬化性化合物(β)を併用することができる。特に、活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物(α)と他の活性エネルギー線硬化性化合物(β)を併用することが好ましい。
【0055】
以下、活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物(α)を含有する態様について、詳細に説明する。
【0056】
尚、以下の説明において、「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」の総称である。
【0057】
活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物(α)は、分子中にエチレン性不飽和基と長鎖アルキル基を含む化合物である。長鎖アルキル基の炭素数は、8以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が特に好ましい。長鎖アルキル基の炭素数は30以下が好ましく、28以下がより好ましく、25以下が特に好ましい。
【0058】
活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物(α)としては、例えば、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0059】
特に、以下に示す活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物(α)が好ましく用いられる。かかる化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを分子中にそれぞれ1個以上有する(メタ)アクリレート化合物(a)と、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b)と、炭素数が8〜30の高級アルコール(c)とを反応させて得られる化合物が挙げられる。
【0060】
上記(メタ)アクリレート化合物(a)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−アシッドフォスフェート、エポキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、分子中に2〜30個のアルキレンオキシ基(例えば、エンチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基など)を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0061】
上記化合物の中でも、剥離力を比較的小さくし、かつ耐熱性を向上させるという観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、分子中に2〜30個のアルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0062】
ポリイソシアネート化合物(b)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、さらにはこれら各種ジイソシアネート化合物と水とを反応させて得られるビウレット型ポリイソシアネート化合物、または各種ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の多価アルコールとを反応させて得られるアダクト型ポリイソシアネート化合物、または各種化合物をイソシアヌレート化せしめて得られる多量体等公知慣用のものがあげられる。
【0063】
上記ポリイソシアネート化合物の中でも、分子量が50〜500の化合物が好ましく、分子量が100〜400の化合物がより好ましく、特に分子量が130〜300の化合物が好ましい。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)が好ましい化合物として例示される。
【0064】
高級アルコール(c)としては、例えば、直鎖状の高級アルコールとして、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニールアルコールなど、直鎖状の不飽和高級アルコールとしてオレイルアルコールなど、分岐型高級アルコールとして2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラドデカノールなどが挙げられる。
【0065】
高級アルコール(c)としては、市販品を使用することができる。例えば、直鎖状の飽和高級アルコールとしては、コノール10WS、コノール1098、コノール1275、コノール20F、コノール20P、コノール1495、コノール1670、コノール1695、コノール30CK、コノール30OC、コノール30RC、コノール30F、コノール30S、コノール30SS、コノール30T、コノール2265、コノール2280(新日本理化株式会社製の商品名)、カルコール0898、カルコール0880、カルコール1098、カルコール2098、カルコール4098、カルコール6098、カルコール8098、カルコール200GD、カルコール2475、カルコール2474、カルコール2473、カルコール2463、カルコール2455、カルコール2450、カルコール4250、カルコール6870、カルコール6850、カルコール8688、カルコール8665、カルコール220−80(花王(株)の商品名)、直鎖状の不飽和高級アルコールとしては、リカコール60B、リカコール70B、リカコール75BJ、リカコール85BJ、リカコール90B、リカコール90BR、リカコール90BHR、リカコール110BJ、アンジェコール50A、アンジェコール60AN、アンジェコール70AN、アンジェコール80AN、アンジェコール85AN、アンジェコール90AN、アンジェコール90NR、アンジェコール90NHR(新日本理化(株)商品名)、分岐型の高級アルコールとしてはエヌジェコール160BR、エヌジェコール200A、エヌジェコール240A(新日本理化(株)の商品名)などが挙げられる。
【0066】
活性エネルギー線硬化性組成物に含有することができる他の活性エネルギー線硬化性化合物(β)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート−トルエンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート−イソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマーなどが挙げられる。
【0067】
上記化合物の中でも、分子中に2〜7個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、特に分子中に3〜6個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
【0068】
活性エネルギー線硬化性組成物における長鎖アルキル化合物(活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物(α)および非硬化性長鎖アルキル化合物の合計量)の含有量は、離型層の剥離力を小さくするという観点から、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が特に好ましい。一方、長鎖アルキル化合物の含有量が多くなり過ぎると離型層の強度(硬度)が低下し耐溶剤性や耐熱性が低下することがあるので、長鎖アルキル化合物の含有量は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0069】
活性エネルギー線硬化性組成物における他の活性エネルギー線硬化性化合物(β)の含有量は、離型層の強度(硬度)を高めて耐溶剤性や耐熱性を向上させるという観点から、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、他の活性エネルギー線硬化性化合物(β)の含有量が多くなり過ぎると、離型層表面の剥離力が高くなることがあるので、他の活性エネルギー線硬化性化合物(β)の含有量は90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
【0070】
活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに光重合開始剤を含むことが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えばアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0071】
また、光重合開始剤は一般に市販されており、それらを使用することができる。例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173等、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46等、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
【0072】
上記光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%の範囲が適当であり、0.5〜8質量%の範囲が好ましい。
【0073】
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化させるための活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、β線、γ線などが挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、紫外線および電子線が好ましく、特に紫外線が好ましく用いられる。
【0074】
紫外線を照射するための光源としては、特に限定されないが、例えば、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく用いられる。また、紫外線を照射するときに、低酸素濃度下の雰囲気下、例えば、酸素濃度が500ppm以下の雰囲気下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができるので好ましい。
【0075】
紫外線の照射光量は、50mJ/cm以上が好ましく、100mJ/cm以上がより好ましく、特に150mJ/cm以上が好ましい。また、紫外線の照射光量は2000mJ/cm以下が好ましく、1000mJ/cm以下がより好ましい。
【0076】
離型層の厚みは、10〜1000nmの範囲が好ましく、20〜600nmの範囲がより好ましく、20〜300nmの範囲がさらに好ましく、50〜250nmの範囲が特に好ましい。
【0077】
離型フィルムの離型層上に積層される被転写膜の良好な塗工性を確保するという観点および剥離力を小さくするという観点から、離型層の表面自由エネルギーは、20〜35mJ/mの範囲であることが好ましく、21〜32mJ/mの範囲がより好ましく、22〜30mJ/mの範囲が特に好ましい。離型層の表面自由エネルギーが20mJ/m未満になると被転写膜の塗工性が悪化することがあり、一方、35mJ/mより大きくなると剥離力が高くなることがある。
【0078】
ここで、表面粗自由エネルギーは、接触角計、例えば、協和界面科学(株)の「Drop Master DM501」を用いて測定することができる。詳細は後述する。
【0079】
離型層の表面自由エネルギーを20〜35mJ/mの範囲に調整するには、離型層に含有させる離型剤として非シリコーン系離型剤を用いることが好ましく、特に長鎖アルキル化合物を用いることが好ましい。
【0080】
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの一方の面に離型層を有し、かつ離型層の表面粗さSRa(A)が10nm未満である。
【0081】
ここで、表面粗さSRaは、光干渉型顕微鏡、例えば、(株)菱化システム製の「VertScan」を用いて測定することができる。詳細は後述する。
【0082】
離型層の表面粗さSRa(A)が10nm以上となると、離型層上に積層される被転写膜、例えば、粘着剤層、セラミック層、金属粒子含有樹脂層、光学用樹脂層などの被転写膜の塗工性が悪化したり、被転写膜の平滑性が低下するなどの不都合が生じる。また、離型層の表面粗さSRa(A)が10nm以上となると、離型フィルムのヘイズ値が高くなる傾向にある。
【0083】
上記観点から、離型層の表面粗さSRa(A)は、さらに8nm未満であることが好ましく、7nm未満であることがより好ましく、6nm未満であることが特に好ましい。下限の表面粗さSRa(A)は0.1nm程度である。
【0084】
離型層の表面粗さSRa(A)を10nm未満に制御する方法は、特に限定されないが、例えば、
(i)離型層には粒子(フィラー)を含有させない、
(ii)離型層に粒子(フィラー)を含有させる場合は、粒子径や含有量を調整する、
(iii)基材フィルムの離型層が積層される面(A)を平滑にする、
などが挙げられる。
【0085】
上記の制御方法の中でも、(i)および(iii)が好ましく、特に(i)と(iii)を組み合わせることが好ましい。(iii)の詳細は、後述する。
【0086】
さらに、本発明の離型フィルムは、該離型フィルムの離型層が設けられる面とは反対面(以下、「離型フィルムの反対面」、または、単に「反対面」と略すことがある)の表面粗さSRa(B)が10nm未満であることが重要である。
【0087】
離型フィルムの反対面の表面粗さSRa(B)が10nm以上となると、即ち、反対面の表面状態が粗面化傾向であると、反対面の粗面状態、例えば微細凹凸形状や微細突起形状が、離型層あるいは離型層上に積層された被転写膜に転写して平滑性が低下したり、傷を付けるなどの不都合が生じることがある。また、離型フィルムの反対面の表面粗さSRa(B)が10nm以上となると、離型フィルムのヘイズ値が高くなる傾向にある。
【0088】
本発明の離型フィルムは、ロール・ツー・ロール方式で連続的に生産されることが好ましく、また、離型フィルムの離型層上に被転写膜を積層する工程も、ロール・ツー・ロール方式で連続的に行われることが好ましい。しかし、このような生産方式では、離型層あるいは被転写膜と反対面とが強く接触し、反対面の表面状態の影響を受けるので、反対面は表面が平滑であることが好ましい。つまり、離型フィルムの反対面の表面粗さSRa(B)は10nm未満であることが重要である。
【0089】
上記観点から、離型フィルムの反対面の表面粗さSRa(B)は、さらに8nm未満であることが好ましく、7nm未満であることが特に好ましい。また、表面粗さSRa(B)は0.5nm以上が好ましく、1.0nm以上がより好ましく、2.0nm以上が特に好ましい。
【0090】
本発明の離型フィルムの反対面は、基材フィルム自体で構成されていてもよいし、基材フィルム上に設けられた塗布膜で構成されていてもよい。
【0091】
離型フィルムの反対面が塗布膜で構成される場合の塗布膜は、平滑な樹脂膜であることが好ましい。また、塗布膜は、帯電防止性やオリゴマーブロックなどの機能を有していてもよい。
【0092】
本発明の離型フィルムの反対面は基材フィルム自体で構成されていることがより好ましい。つまり、離型フィルムの反対面には、塗布膜は有しないことがより好ましい。すなわち、離型フィルムの反対面は、基材フィルム表面が露出していることが好ましい。
【0093】
離型フィルムの反対面に塗布膜を設けると、塗布膜の成分が離型層あるいは被転写膜に移行するなどの不都合が生じることがある。また、塗布膜を設けることにより、生産性低下やコスト上昇を招くことがあるからである。
【0094】
本発明の離型フィルムは、ヘイズ値が1.5%未満であることが好ましい。このような低ヘイズの離型フィルムは、例えば、離型フィルムを介して被転写膜の光学検査を行うような光学用途に好適である。
【0095】
離型フィルムのヘイズ値は、さらに、1.3%未満が好ましく、1.0%未満がより好ましく、0.8%未満が特に好ましい。下限のヘイズ値は特に限定されないが、0.1%程度である。
【0096】
上記したような低ヘイズの離型フィルムは、ヘイズ値が低い基材フィルムを用いること、あるいは離型層に粒子を含有させないこと、などの手段によって実現することができる。ヘイズ値の低い基材フィルムについては、詳細は後述する。
【0097】
本発明の離型フィルムに用いられる基材フィルムは特に限定されないが、基材フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の各種樹脂が使用できる。
【0098】
基材フィルムの厚みは、30μm未満であることが好ましく、25μm未満であることがより好ましく、20μm未満であることが特に好ましい。また、基材フィルムの厚みは、5μm以上が好ましく、10μm以上が特に好ましい。
【0099】
基材フィルムを比較的薄膜とすることにより、離型フィルムの曲げ剛性が小さくなり、被転写膜から離型フィルムを剥離するときの剥離力が相対的に小さくなることから好ましい。
【0100】
また、基材フィルムを薄膜とすることによって単位長さ当たりの質量が相対的に小さくなるので、1つの巻き取りロールの最大長さを長尺にすることができる。巻き取りロールを長尺化することによって、離型フィルムをロール・ツー・ロール方式で連続的に生産するとき、あるいは離型フィルム上にロール・ツー・ロール方式で連続的に被転写膜を積層するときに、生産性向上が図られる。
【0101】
一方、基材フィルムを比較的薄膜とし、1つの巻き取りロールの最大長さを長尺にすると、巻き取りロールの下巻き部には強い圧力がかかるので、離型フィルムの離型層や離型層上に積層された被転写膜は、離型フィルムの反対面の影響を強く受けるようになるが、離型フィルムの反対面の表面粗さSRa(B)を10nm未満とすることによって上記影響力は軽減される。
【0102】
つまり、本発明の離型フィルムは、基材フィルムを比較的薄膜とし、1つの巻き取りロールの最大長さを長尺にして生産性向上を図る上で有益である。上記観点から、1つの巻き取りロールの最大長さは、例えば、3,000m以上が好ましく、5,000m以上がより好ましく、10,000m以上が特に好ましい。上限は30,000m程度である。また、巻き取りロールの幅方向長さは特に限定されないが、300〜3,000mm程度が適当であり、500〜2,000mmの範囲が好ましく、700〜1,700mmの範囲が特に好ましい。
【0103】
本発明に用いられる基材フィルムは、ポリエステルフィルムが好ましく、特に、二軸延伸されたポリエステルフィルムが好ましい。上記ポリエステルフィルムの中でもポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0104】
ここで、ポリエステルとは、少なくとも70モル%以上が、芳香族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルであることが好ましい。
【0105】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、などであり、とくにはテレフタル酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、イソフタル酸など他の芳香族ジカルボン酸、あるいは脂肪酸を一部共重合してもよい。
【0106】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、などを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0107】
ポリエステルとして、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体等を挙げることができ、とくに、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0108】
ポリエステルは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法などが採用できる。この際、必要に応じて、反応触媒として従来公知のアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることもできる。
【0109】
本発明の離型フィルムにおいて、離型層の表面粗さSRa(A)を10nm未満に制御するという観点から、基材フィルムの離型層が設けられる面の表面粗さSRa(1)は、10nm未満であることが好ましく、8nm未満であることがより好ましく、7nm未満であることが特に好ましい。また、表面粗さSRa(1)は0.5nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましく、2nm以上が特に好ましい。
【0110】
また、離型フィルムの反対面のSRa(B)を10nm未満に制御するという観点から、基材フィルムの離型層が設けられる面とは反対面のSRa(2)は、10nm未満であることが好ましく、8nm未満であることがより好ましく、7nm未満であることが特に好ましい。また、表面粗さSRa(1)は0.5nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましく、さらに2nm以上が好ましく、特に3nm以上が好ましい。
【0111】
ここで、離型フィルムの反対面が基材フィルム自体で構成される場合、つまり、離型フィルムの反対面には塗布膜が設けられない場合、基材フィルムの反対面の表面粗さSRa(2)が、離型フィルムの反対面の表面粗さSRa(B)となる。
【0112】
本発明の離型フィルムは、ヘイズ値が1.5%未満であることが好ましいことは前述した通りであり、これを実現するには、基材フィルムのヘイズ値は1.5%未満であることが好ましい。このようなヘイズ値の低い基材フィルムを用いることによって、離型フィルムのヘイズ値を低く抑えることができる。基材フィルムのヘイズ値は、さらに1.3%未満が好ましく、1.0%未満がより好ましく、0.8%未満が特に好ましい。下限のヘイズ値は特に限定されないが、0.1%程度である。
【0113】
上記したような、表面粗さSRaが比較的小さく、かつ低ヘイズの基材フィルムを得るには、基材フィルム中に含有する粒子などによる光線透過の阻害を抑制し、さらに基材フィルムの表面粗さを抑制することが好ましい。このためには、基材フィルム中に含有する粒子の平均粒子径を小さくし、含有量を少なくすることが有効である。一方、基材フィルム表面が平滑化し過ぎると、搬送性や巻き取り性などの加工性が低下することがあるので、加工性を維持しながらヘイズ値の上昇を抑制することが好ましい。
【0114】
上記観点から、基材フィルムは、3層積層構造であることが好ましい。そして、3層積層構造の両側の表面層がいずれも、平均粒子径が0.2〜0.7μmの粒子を含有することが好ましい。上記粒子の平均粒子径は、さらに0.2〜0.6μmの範囲が好ましい。上記粒子の平均粒子径が0.7μmを超えると、基材フィルムの表面粗さSRaが大きくなり、離型フィルムの表面粗さSRa(A)およびSRa(B)が10nm以上となることがある。また、ヘイズ値も1.5%以上となることがある。一方、上記粒子の平均粒子径が0.2μmより小さくなると、搬送性や巻き取り性などの加工性が低下することがある。
【0115】
それぞれの表面層における上記粒子の含有量は、それぞれの表面層の固形分総量100質量%に対して0.01〜0.10質量%の範囲が好ましく、0.02〜0.08質量%の範囲がより好ましい。
【0116】
ここで、3層積層構造は、A層/B層/A層またはA層/B層/C層からなる3層積層構造であることが好ましい。表面層であるA層およびC層に含有する粒子種、平均粒子径、含有量は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0117】
A層/B層/A層の構成においては、両側の2つのA層は、厚みが同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましく、これによって、生産設備の簡易化や生産性向上が図られる。
【0118】
上記の3層積層構造を採用するに際し、B層には実質的に粒子を含有せず、表面層(A層あるいはC層)に粒子を含有することが好ましい。また、基材フィルムが3層積層構造であり、両側の表面層(A層あるいはC層)の厚みがいずれも0.1〜2.0μmであることが好ましく、0.2〜1.0μmであることがより好ましく、0.4〜0.8μmであることが特に好ましい。B層の厚みは、基材フィルムの総厚みに応じて適宜設定することができる。
【0119】
表面層(A層あるいはC層)に含有する粒子としては、無機粒子や有機粒子を用いることができる。例えば、酸化珪素、炭酸カルシウム、アルミナ、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウムなどの無機粒子、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂などの有機粒子を挙げることができる。
【0120】
上記粒子の中でも、粒子形状が球状に近く、さらに、ポリエステルとの屈折率の差が比較的小さい粒子好ましく、例えば、コロイダルシリカ、シリコーン粒子、架橋ポリスチレン粒子などが好ましく用いられる。中でも、乳化重合で調製された、ビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子は粒子形状が真球に近く、粒径分布が均一であることから、特に好ましく用いられる。
【0121】
さらに、3層積層構造の表面層(A層あるいはC層)には、上記粒子とともに、凝集アルミナを含有することが好ましい。ここで、凝集アルミナは、一次粒子が数個から数百個凝集したものである。凝集アルミナを形成するアルミナの平均一次粒子径は5〜30nmの範囲が好ましく、8〜15nmの範囲がより好ましい。凝集アルミナの平均二次粒子径は、0.01〜0.20μmの範囲が好ましく、0.02〜0.15μmの範囲がより好ましい。
【0122】
凝集アルミナとしては、無水塩化アルミニウムを原料として火焔加水分解法、あるいはアルコシドアルミナの加水分解などによって製造されたものが採用できる。これらの結晶型としてδ型、θ型、γ型などが知られているが、とくにδ型アルミナが好適に使用できる。これらの凝集アルミナについて、ポリエステル樹脂の場合は、ポリエステル重合時に添加することで使用に供せるが、例えば、ポリエステル重合時の原料の一部であるエチレングリコールのスラリーとして、サンドグラインダーなどの粉砕、分散を行い、精密濾過を行うことによって、平均二次粒子径が0.01〜0.20μmの凝集アルミナを得ることができる。
【0123】
このようにして得られた凝集アルミナを基材フィルム中に添加した場合、二軸延伸によって、面方向に配置され、実質的突起を形成せず、表面粗さへの影響が少なく、また、光透過性が良いため、ヘイズ値の上昇を抑制できる。
【0124】
また、表面層(A層あるいはC層)に凝集アルミナを含有させることにより、基材フィルム表面の地肌補強効果が大きく、耐摩耗性が向上する。
【0125】
それぞれの表面層(A層あるいはC層)における凝集アルミナの含有量は、それぞれの表面層の固形分総量100質量%に対して0.1〜1.0質量%の範囲が好ましく、0.2〜0.9質量%の範囲がより好ましく、0.6〜0.8質量%の範囲が特に好ましい。
【0126】
次に、基材フィルムとして特に好適な二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法について説明する。
【0127】
ポリエステルに粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散せしめ、例えば3μm以上の粗大粒子を95%以上捕集できる高精度濾過を行った後、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制できるので好ましい。また粒子の水スラリーを直接、所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も有効である。
【0128】
このようにして準備した、粒子含有マスターペレットと粒子などを実質的に含有しないペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、ポリマーをフィルターにより濾過する。
【0129】
続いて、スリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを製造する。即ち、1から3台の押出機、1から3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて必要に応じて積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを製造する。この場合、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は有効である。
【0130】
延伸方法は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であってもよい。
【0131】
逐次延伸の場合、最初の長手方向の延伸が重要であり延伸温度は90〜130℃、好ましくは105〜120℃である。延伸温度が90℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなるとフィルム表面が熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。また、延伸ムラ、およびキズを防止する観点からは延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は長さ方向に3〜4.5倍、好ましくは3.2〜4.2倍であり、幅方向に3.2〜5.0倍、好ましくは3.9〜4.5倍である。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向の破断強度を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。かかる温度、倍率範囲をはずれると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こし、本発明における基材フィルムが得られにくいため好ましくない。再縦または横延伸した後、200〜230℃、好ましくは210〜230℃で0.5〜20秒、好ましくは1〜15秒熱固定を行う。とくに熱固定温度が200℃よりも低くなるとフィルムの結晶化が進まないために構造が安定せず、目標とする熱収縮率などの特性が得られず好ましくない。その後、長手及び/又は幅方向に0.5〜7.0%の弛緩処理を施すことが好ましい。
【0132】
延伸過程では、フィルムとロールの接触が避けられず、ロールの周速とフィルムの速度差を極力抑えるようにするとともに、延伸ロールとしては、表面の粗さなどを制御しやすい非粘着性のシリコーンロールが好ましい。従来技術のようにセラミックスやテフロン(登録商標)さらには金属のロールを用いても可能であるが、フィルム表面のみが局所的に加熱されて粘着が発生し、フィルム表面に傷を発生する場合があり、好ましくない。
【0133】
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの一方の面に離型層を積層することによって製造される。離型層は、上述した離型剤、バインダー樹脂、架橋剤などを溶媒に溶解あるいは分散した塗布液を基材フィルム上にウェットコーティング法により塗布し、乾燥および必要に応じて硬化させることによって形成される。
【0134】
ウェットコーティング法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0135】
本発明の離型フィルムは、離型層表面の剥離力は、離型層上に積層された被転写膜の良好な剥離性を得るという観点から、比較的小さい方が好ましく、具体的には、7N/50mm以下が好ましく、5N/50mm以下がより好ましく、2N/50mm以下が特に好ましい。剥離力が小さくなり過ぎると、被転写膜の塗工性が低下したり、被転写膜が本来の剥離工程以外で剥離することがあるので、剥離力は、0.05N/50mm以上が好ましく、0.10N/50mm以上が好ましく、0.20N/50mm以上が特に好ましい。
【0136】
ここで、離型層表面の剥離力は、粘着テープとの剥離力である。つまり、離型フィルムの離型層表面に粘着テープを貼り合せ、粘着テープ側を180°に引き剥したときの剥離力である。この剥離力は、後述の実施例において、剥離力(1)として評価した。測定方法の詳細は後述する。
【0137】
前述したように、本発明の離型フィルムを構成する基材フィルムの厚みは比較的小さいことが好ましい。具体的には、30μm未満が好ましく、25μm未満がより好ましく、20μm未満が特に好ましい。このように、基材フィルムを比較的薄膜とすることにより、離型フィルムの曲げ剛性が小さくなり、被転写膜から離型フィルムを剥離するときの剥離力が相対的に小さくなることから好ましい。このことは、離型フィルムの離型層表面に粘着テープを貼り合せ、離型フィルム側を180°に引き剥すことによって確認することができる。この剥離力は、後述の実施例において、剥離力(2)として評価した。測定方法の詳細は後述する。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0139】
[測定方法および評価方法]
(1)表面粗さSRaの測定
離型フィルムあるいは基材フィルムの表面粗さSRaは、光干渉型顕微鏡((株)菱化システム社製、VertScan2.0、型式:R5300 GL−Lite−AC)を用いて、観察モード=Waveモード、面補正=4次、フィルター=530nmWhite、対物レンズ=50倍、測定領域=252.69×189.53μmにて表面形態観察し、求めた。測定は1水準につき10回行い、その平均値から求めた。
【0140】
(2)離型フィルムおよび基材フィルムのヘイズ値の測定
JIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製の濁度計「NDH−4000」を用いて離型フィルムのヘイズ値を測定した。測定に際し、離型フィルムの離型層表面に光が入射するように配置する。
【0141】
また、基材フィルムのヘイズ値もJIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製の濁度計「NDH−4000」を用いて測定した。
【0142】
(3)剥離力(1)の測定
離型フィルムの離型層表面にアクリル系粘着テープ(日東電工(株)製の「No.31B」)の粘着面を自重5kgのゴムローラーで押さえながら一往復させて貼り合わせ、室温(23±2℃)で24時間放置後、引張り試験機にて、300mm/minの速度で、粘着テープ側を180°に引き剥したときの剥離力を測定した。
【0143】
(4)剥離力(2)の測定
基材フィルムの厚みが異なる、実施例1、14、比較例2、3について、上記の剥離力(1)の測定と同様にして剥離力を測定した。但し、測定に際し、離型フィルム側を180°に引き剥した。
【0144】
(5)各層の厚み
離型フィルムの断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム(日立製FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡(日立製H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、断面観察用サンプルの断面を観察し、基材フィルムおよび離型層の厚みを測定した。
【0145】
(6)基材フィルムに含有する粒子の平均粒子径の測定
基材フィルムの断面を電子顕微鏡(約2万〜5万倍)で観察し、その断面写真から、
無作為に選択した30個の粒子のそれぞれの最大長さを計測し、それらを算術平均した値を粒子の平均粒子径とした。
【0146】
(7)被転写膜の塗工性の評価
実施例および比較例で作製した離型フィルム(幅1000mm、巻長さ3000mのロール状の離型フィルム)の最下巻きから100mの箇所でサンプリングして、20cm×30cmのシートサンプルを3枚用意した。
【0147】
これらのシートサンプルの離型層上に、それぞれ下記の被覆転写膜用塗工液(セラミックスラリー)を乾燥膜厚が2μmとなるようにワイヤーバーで塗布し、乾燥して被転写膜を形成した。
【0148】
<被転写膜用塗工液>
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)の「HPBT−1」)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)の「BL−1」)7質量部、フタル酸ジブチル2質量部、トルエン/メチルエチルケトン(質量比1:1)40質量部に、ガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状のセラミックスラリーを調製した。
【0149】
<被転写膜の塗工性評価>
上記のようにして作製したサンプルの中央部をサイズ15cm×20cmに切り抜いて評価サンプルとした。評価サンプルの反対面から1000ルクスの光を当て、塗工性評価としてピンホールの発生状況を観察した。3枚の評価サンプルのピンホールを合計し、以下の基準で評価した。
A;ピンホールの発生がない。
B;ピンホールが1〜2個認められる。
C;ピンホールが3個以上認められる。
(8)離型層の表面自由エネルギーの測定
表面自由エネルギーおよびその各成分(分散力、極性力、水素結合力)の値が既知の3種の液体として、水、ジヨードメタン、1−ブロモナフタレンを用い、23℃、65%RH下で、接触角計DropMasterDM501(協和界面科学(株)製)にて、各液体の離型層上での接触角を測定する。1つの測定面に対し5回測定を行いその平均値を接触角(θ)とする。この接触角(θ)の値および各液体の既知の値(Panzerによる方法IV(日本接着協会誌第15巻、第3号、第96頁に記載)の数値から、北崎・畑の式より導入される下記式を用いて各成分の値を計算する。
【0150】
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2=γL(1+cosθ)/2
ここで、γLd、γLp、γLhは、それぞれ測定液の分散力、極性力、水素結合力の各成分を表し、θは測定面上での測定液の接触角を表し、また、γSd、γSp、γShは、それぞれ積層膜表面の分散力、極性力、水素結合力の各成分の値を表し、γLは各液体の表面エネルギーを表す。既知の値およびθを上記の式に代入して得られた連立方程式を解くことにより、測定面(離型層表面)の3成分の値を求める。
【0151】
下記式の通り、求められた分散力成分の値と極性力成分の値と水素結合力成分の値の和を、表面自由エネルギー(E)の値とする。
【0152】
E=γSd+γSp+γSh
[基材フィルムの作製]
幅1000mm、巻長さ3000mのロール状のポリエステルフィルム1〜5を作製した。
【0153】
<ポリエステルフィルムの原料となるポリエステルペレットa〜eの調製>
(ポリエステルペレットaの調製)
ジメチルテレフタレート(DMT)に、DMT1モルに対して1.9モルのエチレングリコールと、DMT100質量部に対して0.05質量部の酢酸マグネシウム・4水塩と、0.015質量部のリン酸を加えて加熱エステル交換を行い、エステル交換反応物aを得た。引き続きDMT100質量部に対して三酸化アンチモンを0.025質量部加え、加熱昇温し真空化で重縮合反応を行い、固有粘度0.62のポリエステルペレットaを得た。
【0154】
(ポリエステルペレットbの調製)
凝集アルミナとしてδ型−アルミナを10質量%含むエチレングリコールを、サンドグラインダーを用い、粉砕、分散処理を行い、さらに捕集効率95%の3μmフィルターで濾過してエチレングリコールスラリーを得た。これを前記と同様に調製したエステル交換反応物aに添加し、引き続き三酸化アンチモンを加え、重縮合反応を行い、凝集アルミナを2質量%含有する、固有粘度0.62のポリエステルペレットbを得た。
【0155】
(ポリエステルペレットcの調製)
上記と同様にして調製したポリエステルペレットaに、平均粒子径が0.45μmのビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、ベント式二軸混練機を用いて、前記架橋粒子を1質量%含有するポリエステルペレットcを得た。
【0156】
(ポリエステルペレットdの調製)
上記と同様にして調製したポリエステルペレットaに、平均粒子径が0.20μmのビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、ベント式二軸混練機を用いて、前記架橋粒子を1質量%含有するポリエステルペレットdを得た。
【0157】
(ポリエステルペレットeの調製)
上記と同様にして調製したポリエステルペレットaに、平均粒子径が0.80μmのビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、ベント式二軸混練機を用いて、前記架橋粒子を1質量%含有するポリエステルペレットeを得た。
【0158】
<製造例1;ポリエステルフィルム1の作製>
3層積層構造(A層/B層/A層)からなるポリエステルフィルムを以下の要領で作製した。
・A層;原料として、ポリエステルペレットa、ポリエステルペレットbおよびポリエステルペレットcを混合し、凝集アルミナを0.7質量%、ジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を0.03質量%含有するポリエステルAを調製した。
・B層;原料として、ポリエステルペレットaを用いてポリエステルBを調製した。
【0159】
上記で調製したポリエステルAおよびBをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して5μmのフィルターで高精度濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステルA/ポリエステルB/ポリエステルAからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。この未延伸積層フィルムを逐次二軸延伸機により、110℃で長手方向に3.7倍、および幅方向にそれぞれ4.1倍、トータルで15.2倍延伸しその後、再度180℃で1.05倍幅方向に延伸し、定長下、220℃で3秒間熱処理した。その後長手方向に1%、幅方向に2%の弛緩処理を施し、総厚みが16μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム1)を得た。
【0160】
このポリエステルフィルム1の両面のポリエステルA層の厚みはそれぞれ0.6μm、B層の厚みは14.8μmであった。また、ポリエステルフィルム1の表面粗さSRa(1)およびSRa(2)はそれぞれ6nmであり、ヘイズ値は0.4%であった。
【0161】
<製造例2;ポリエステルフィルム2の作製>
ポリエステルフィルム1の作製において、両面のポリエステルA層の厚みはそれぞれ0.6μm、B層の厚みは36.8μmに変更する以外は、ポリエステルフィルム1と同様にして、総厚みが38μmのポリエステルフィルム2を作製した。
【0162】
このポリエステルフィルム2の表面粗さSRa(1)およびSRa(2)はそれぞれ6nmであり、ヘイズ値は0.5%であった。
【0163】
<製造例3;ポリエステルフィルム3の作製>
ポリエステルフィルム1の作製において、ポリエステルペレットcをポリエステルペレットdに変更する以外は、ポリエステルフィルム1と同様にしてポリエステルフィルム3を作製した。
【0164】
このポリエステルフィルム3は、総厚みが16μm、両面のポリエステルA層の厚みがそれぞれ0.6μm、B層の厚みが14.8μmであった。このポリエステルフィルム3の表面粗さSRa(1)およびSRa(2)はそれぞれ4nmであり、ヘイズ値は0.3%であった。
【0165】
<製造例4;ポリエステルフィルム4の作製>
3層積層構造(A層/B層/C層)からなるポリエステルフィルムを以下の要領で作製した。
・A層;A層の原料として、ポリエステルペレットa、ポリエステルペレットbおよびポリエステルペレットcを混合し、凝集アルミナを0.7質量%、ジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を0.03質量%含有するポリエステルAを調製した。
・B層;B層の原料として、ポリエステルペレットaを用いてポリエステルBを調製した。
・C層;C層の原料として、ポリエステルペレットa、ポリエステルペレットbおよびポリエステルペレットeを混合し、凝集アルミナを0.7質量%、ジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を0.13質量%含有するポリエステルCを調製した。
【0166】
上記で調製したポリエステルA、BおよびCをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して5μmのフィルターで高精度濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステルA/ポリエステルB/ポリエステルCからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。この未延伸積層フィルムを逐次二軸延伸機により、110℃で長手方向に3.7倍、および幅方向にそれぞれ4.1倍、トータルで15.2倍延伸しその後、再度180℃で1.05倍幅方向に延伸し、定長下、220℃で3秒間熱処理した。その後長手方向に1%、幅方向に2%の弛緩処理を施し、総厚みが16μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム4)を得た。
【0167】
このポリエステルフィルム4の両面のポリエステルA層およびC層の厚みはそれぞれ0.6μm、B層の厚みは14.8μmであった。また、ポリエステルフィルム4のA層の表面粗さSRa(1)が6nm、C層の表面粗さSRa(2)が15nm、ヘイズ値が1.5%であった。
【0168】
<ポリエステルフィルム5>
東レ(株)のポリエステルフィルム(“ルミラー(登録商標)” R80)を用いた。このポリエステルフィルムは、総厚みが38μm、表面粗さSRa(1)が7nm、表面粗さSRa(2)が25nm、ヘイズ値が9.0%であった。
【0169】
<ポリエステルフィルム6>
東レ(株)のポリエステルフィルム(“ルミラー(登録商標)” R75X)を用いた。このポリエステルフィルムは、総厚みが38μm、表面粗さSRa(1)およびSRa(2)はそれぞれ25nm、ヘイズ値が5.0%であった。
【0170】
[実施例1]
ポリエステルフィルム1の一方の面(表面粗さSRa(1)の面)に、下記の離型層塗工液p1(熱硬化性組成物)をグラビアコーターで塗布し、100℃で予備乾燥後、160℃で加熱乾燥し、離型層を形成して離型フィルムを作製した。離型層の厚みは100nmであった。
【0171】
<離型層塗工液p1>
・離型剤;長鎖アルキル化合物(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050)を固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン系架橋剤(三井化学(株)の「ユーバン」28−60)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒;p−トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC−700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例2]
下記の離型層塗工液p2(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0172】
<離型層塗工液p2>
・離型剤;長鎖アルキル化合物(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050)を固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン系架橋剤(住友化学(株)の「スミマール」M66−B)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒;p−トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC−700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例3]
下記の離型層塗工液p3(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0173】
<離型層塗工液p3>
・離型剤;長鎖アルキル化合物(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050)を固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン系架橋剤(DIC(株)の商品名「スーパーベッカミンG」821)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒;p−トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC−700)を固形分換算で1.3質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例4]
下記の離型層塗工液p4(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0174】
<離型層塗工液p4>
・離型剤;長鎖アルキル化合物(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」HT)を固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン系架橋剤(三井化学(株)の「ユーバン」28−60)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒;p−トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC−700)を固形分換算で1.8質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例5]
下記の離型層塗工液p5(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0175】
<離型層塗工液p5>
・離型剤;長鎖アルキル化合物(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」HT)を固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン系架橋剤(住友化学(株)の「スミマール」M66−B)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒;p−トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC−700)を固形分換算で1.8質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例6]
下記の離型層塗工液p6(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0176】
<離型層塗工液p6>
・離型剤;長鎖アルキル化合物(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」HT)を固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン系架橋剤(DIC(株)の商品名「スーパーベッカミンG」821)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒;p−トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC−700)を固形分換算で1.8質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例7]
下記の離型層塗工液p7(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0177】
<離型層塗工液p7>
長鎖アルキル化合物(アシオ産業(株)の「アシオレジン」RA−80)を固形分換算で10質量部、メラミン系架橋剤(三井化学(株)の「ユーバン」28−60)を固形分換算で2.5質量部を、トルエンで溶解して、固形分濃度2.0質量%の塗工液を調製した。
【0178】
[実施例8]
下記の離型層塗工液p8(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0179】
<離型層塗工液p8>
長鎖アルキル化合物(アシオ産業(株)の「アシオレジン」RA−80)を固形分換算で10質量部、メラミン系架橋剤(住友化学(株)の「スミマール」M66−B)を固形分換算で2.5質量部を、トルエンで溶解して、固形分濃度2.0質量%の塗工液を調製した。
【0180】
[実施例9]
下記の離型層塗工液p9(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0181】
<離型層塗工液p9>
長鎖アルキル化合物(アシオ産業(株)の「アシオレジン」RA−80)を固形分換算で10質量部、メラミン系架橋剤(DIC(株)の商品名「スーパーベッカミンG」821)を固形分換算で2.5質量部を、トルエンで溶解して、固形分濃度2.0質量%の塗工液を調製した。
【0182】
[実施例10]
下記の離型層塗工液p10(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0183】
<離型層塗工液p10>
長鎖アルキル化合物(アシオ産業(株)の「アシオレジン」RA−95H)をトルエンで溶解して、固形分濃度2.0質量%の塗工液を調製した。
【0184】
[実施例11]
下記の離型層塗工液p11(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0185】
<離型層塗工液p11>
撹拌機、窒素導入管、冷却管、ラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、オクタデシルメタクリレート70質量部、アクリル酸ブチル25質量部、アクリル酸5質量部およびトルエン150質量部を入れ、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を加え、60℃に加熱して24時間重合反応を行い、アクリル系重合体の粘稠溶液を得た。このアクリル系重合体は、オクタデシルメタクリレートとアクリル酸ブチルとアクリル酸とのランダム共重合体からなり、側鎖に長鎖アルキル基としてオクタデシル基を有するとともに、官能基としてカルボキシル基を有するものであり、数平均分子量は9.6万であった。
【0186】
このアクリル系重合体からなる粘稠溶液の100質量部当たり、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン誘導体を2質量部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1質量部とを配合し、よく混合して、塗工液を調製した。
【0187】
[実施例12]
下記の離型層塗工液p12(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0188】
<離型層塗工液p12>
下記の長鎖アルキル化合物10質量部を、トルエン400質量部とメチルエチルケトン130質量部で溶解して調製した。
【0189】
<長鎖アルキル化合物の合成>
4つ口フラスコにキシレン200質量部、オタデシルイソシアネート600質量部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、ポリビニルアルコール(平均重合度500、ケン化度88モル%)100質量部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。
【0190】
ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140質量部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た。
【0191】
[実施例13]
下記の離型層塗工液p13(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0192】
<離型層塗工液p13>
アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂(三羽研究所製、商品名「RP−30」;直鎖オクチル基を1分子中に5〜6個有するメラミンとホルムアルデヒドとの付加縮合物である直鎖オクチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂)を固形分換算で10質量部をトルエン/メチルエチルケトン混合溶液(混合質量比3:1)に溶解した後、p−トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC−700)を固形分換算で0.3質量部添加し、固形分濃度3質量%の塗工液溶液を調製した。
【0193】
[実施例14]
実施例1において、ポリエステルフィルム1をポリエステルフィルム2に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0194】
[実施例15]
実施例1において、ポリエステルフィルム1をポリエステルフィルム3に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0195】
[実施例16]
ポリエステルフィルム1の一方の面(表面粗さSRa(1)の面)に、下記の離型層塗工液p14(活性エネルギー線硬化性組成物)をグラビアコーターで塗布し、100℃で乾燥後、紫外線を300mJ/cm照射し硬化させて離型層を形成して離型フィルムを作製した。離型層の厚みは200nmであった。
【0196】
<離型層塗工液p14>
下記合成の活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物を25質量部、他の活性エネルギー線硬化性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)を75質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)を10質量部仕込み100℃に昇温してから1時間混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。この組成物をトルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒(トルエン:IPA=3:1(質量比))で固形分濃度4質量%にして塗工液を調製した。
【0197】
<活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物の合成>
撹拌機および温度計を装備したフラスコに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(a)として2−ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒(株)の「BHEA」を100質量部、ポリイソシアネート化合物(b)としてジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)の「ミリオネートMT」)を240質量部、高級アルコール(c)としてステアリルアルコール(新日本理化(株)の「コノール30SS」)26質量部を仕込み、100℃まで昇温して7時間保温して反応させ、IR測定の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、反応を終了させた。
【0198】
[実施例17]
下記の離型層塗工液p15(活性エネルギー線硬化性性組成物)に変更する以外は、実施例16と同様にして離型フィルムを作製した。
【0199】
<離型層塗工液p15>
下記合成の活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物を15質量部、他の活性エネルギー線硬化性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)を85質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)を10質量部仕込み100℃に昇温してから1時間混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。この組成物をトルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒(トルエン:IPA=3:1(質量比))で固形分濃度4質量%にして塗工液を調製した。
【0200】
<活性エネルギー線硬化性長鎖アルキル化合物>
撹拌機および温度計を装備したフラスコに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(a)として2−ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒(株)の「BHEA」を100質量部、ポリイソシアネート化合物(b)としてヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)の商品名「HDI」)を86質量部、高級アルコール(c)としてステアリルアルコール(新日本理化(株)の「コノール30SS」)46質量部を仕込み、100℃まで昇温して7時間保温して反応させ、IR測定の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、反応を終了させた。
【0201】
[比較例1]
実施例1において、ポリエステルフィルム1をポリエステルフィルム4に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0202】
[比較例2]
実施例1において、ポリエステルフィルム1をポリエステルフィルム5に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0203】
[比較例3]
実施例1において、ポリエステルフィルム1をポリエステルフィルム6に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0204】
[比較例4]
下記の離型層塗工液p16(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0205】
<離型層塗工液p16>
付加反応型の硬化性シリコーン樹脂であるKS847H(信越化学工業(株)製)40質量部、硬化剤であるPL−50T(信越化学工業(株)製)0.4質量部をトルエン500質量部、n−ヘプタン500質量部に混合した。
【0206】
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の離型フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0207】
【表1】