【実施例】
【0029】
(実施例1)
リードフレーム用銅合金として、厚さ0.2mm、幅180mmの帯状銅材(株式会社神戸製鋼所製:KLF−194)を用いて、この銅材の両面に、厚さ25μmのレジスト層(旭化成イーマテリアルズ株式会社製:AQ−2558)を形成し、所定の形状のマスクを用いて露光した後、現像、エッチング処理を行い、めっき用マスクを形成したリードフレームを得た。
【0030】
このめっき用マスクを形成したリードフレームに対し、アルカリおよび酸によって前処理を施した後、次のように電気めっき処理を施した。
まず、スルファミン酸ニッケルと塩化ニッケル、ホウ酸からなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度として5A/dm
2で3分間めっきを行い、厚さが約0.5μmの平滑なニッケルめっき層を形成した。
【0031】
次に、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルと、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムからなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度として30A/dm
2で30秒間めっきを行い、球状の突起を多数有する厚さが約0.5μmのニッケルめっき層を形成した。
【0032】
次に、表面の保護を目的として、スルファミン酸ニッケルと塩化ニッケル、ホウ酸からなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度として5A/dm
2で30秒間めっきを行い、厚さが約0.1μmのニッケルめっき層を形成して、球状の突起群が形成された三層めっき構造を得た。
【0033】
その後に、この球状の突起群が形成されたニッケルめっき層の上に青化銀および青化カリウムからなるストライク銀めっき浴を用いて、電流密度として15A/dm
2で30秒間めっきを行い、下地となるニッケルめっき層と銀めっき層との密着性を確保してニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する銀ストライクめっき層を形成した。
【0034】
さらに銀ストライクめっき層の上に、青化銀、青化銀カリウム、青化カリウムからなる銀めっき浴を用いて、電流密度として10A/dm
2で1分30秒間めっきを行い、ニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する厚さが約0.5μmの銀めっき層を形成し、リードフレームの製造を完了した。
【0035】
完成したリードフレームの銀めっき層の上に、評価用のΦ2mmの円筒形の樹脂モールドを形成した。この樹脂に対し、ボンドテスタとしてDage Series4000(Dage社製)を用いてシェア強度を測定することで樹脂密着性の評価を行ったところ、密着強度は23.0MPaで良好な密着性を示した。
【0036】
また、完成したリードフレームの銀めっき層の上に評価用の金属線を接合した。金属線の接合にはワイヤボンダとしてUTC−1000Super(新川社製)を、金属線には純度4N、直径20μmの金線(住友金属鉱山社製)を用いた。この金属線の2nd側のスティッチプル強度をDage Series4000(Dage社製)を用いて測定したところ、6.3gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0037】
(実施例2)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルに代えてニッケル濃度5g/Lの硫酸ニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0038】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は14.7MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.3gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0039】
(実施例3)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルに代えてニッケル濃度20g/Lの硫酸ニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0040】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は15.2MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.5gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0041】
(実施例4)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムに代えて塩素濃度12g/Lの塩化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0042】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は22.3MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.2gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0043】
(実施例5)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムに代えて塩素濃度22g/Lの塩化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0044】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は24.1MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は5.3gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0045】
(実施例6)
リードフレーム上にニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する銀めっき層を形成させる工程の内、銀ストライクめっき層の上に青化銀、青化銀カリウム、青化カリウムからなる銀めっき浴を用いて、電流密度として10A/dm
2で3分間めっきを行い、厚さが約1.0μmの銀めっき層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0046】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は22.7MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.7gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は2.1μmであった。
【0047】
(比較例1)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルに代えてニッケル濃度3g/Lの硫酸ニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0048】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は7.7MPaであり、これは実用においては十分な密着性を示しているとは言い難い。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.1gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0049】
(比較例2)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルに代えてニッケル濃度25g/Lの硫酸ニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0050】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は7.3MPaであり、これは実用においては十分な密着性を示しているとは言い難い。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.3gfで、良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0051】
(比較例3)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムに代えて塩素濃度10g/Lの塩化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0052】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は23.0MPaであり、良好な密着性を示した。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.2gfで、良好な接合性を示した。しかしながら、本条件で球状の突起を多数有するニッケルめっきを行う際、電圧の上昇が確認された。この電圧の上昇は陽極の不導体化が原因であり、継続して処理することにより陽極の不導体化が進行し、それに伴い電圧が継続して上昇することにより、非常に高電圧となってしまうため、安全上好ましくない。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0053】
(比較例4)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムに代えて塩素濃度25g/Lの塩化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0054】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は22.8MPaであり、良好な密着性を示した。金属線の2nd側のスティッチプル強度は4.8gfであり、これは実用においては十分な接合性を示しているとは言い難い。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0055】
(比較例5)
リードフレーム上にニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する銀めっき層を形成させる工程の内、銀ストライクめっき層の上に、青化銀、青化銀カリウム、青化カリウムからなる銀めっき浴を用いて、電流密度として10A/dm
2で1分間めっきを行い、厚さが約0.3μmの銀めっき層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0056】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は23.2MPaであり、良好な密着性を示した。金属線の2nd側のスティッチプル強度は3.9gfであり、これは実用においては十分な接合性を示しているとは言い難い。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.4μmであった。
【0057】
(比較例6)
リードフレーム上にニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する銀めっき層を形成させる工程の内、銀ストライクめっき層の上に、青化銀、青化銀カリウム、青化カリウムからなる銀めっき浴を用いて、電流密度として10A/dm
2で4分30秒間めっきを行い、厚さが約1.5μmの銀めっき層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0058】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は21.3MPaであり、良好な密着性を示した。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.6gfであり、良好な接合性を示した。しかしながら、銀めっき層が厚くなったことにより、下地の球状効果が弱くなり、実施例1よりは密着性が劣り、接合性は実施例1と大差ないことから、銀めっき層を1.0μmよりも厚くすることは特性改善がなくコストアップに繋がり、かつ従来品と同等かそれ以上のめっき厚になってしまうので好ましくない。
ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は2.6μmであった。
【0059】
(比較例7)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程において、最初のスルファミン酸ニッケルと塩化ニッケル、ホウ酸からなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度を5A/dm
2で6分間めっきを行い、厚さが約1.0μmの平滑なニッケルめっき層のみを形成して三層めっき構造としなかった以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0060】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は7.1MPaであり、これは実用においては十分な密着性を示しているとは言い難い。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.6gfで、良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は2.0μmであった。