特許第6366032号(P6366032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366032
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】リードフレームおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   H01L23/50 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-247483(P2013-247483)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-106616(P2015-106616A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】517363861
【氏名又は名称】大口マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 啓一
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−349497(JP,A)
【文献】 特開平03−003294(JP,A)
【文献】 特開2010−111899(JP,A)
【文献】 特開2001−284797(JP,A)
【文献】 特開2000−077850(JP,A)
【文献】 特開平10−265968(JP,A)
【文献】 特開平06−029439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を搭載するリードフレームにおいて、少なくとも半導体素子が搭載されるパッド部上の最表面に銀または銀を含有する合金によるめっき層を有し、その形状が下地に形成された球状の突起群を有するニッケルによるめっき層により形成された球状の突起群であり、
前記突起群は、下部の断面積に比べて、上部の球状の直径に相当する部分の断面積の方が大きくなっている無数の突起を有してなることを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記ニッケルによるめっき層は、まずレベリング性の良い平滑なニッケルめっきが施され、その平滑なニッケルめっき面上に球状の突起群が形成されたニッケルめっきが施され、更にその上にレベリング性の良いニッケルめっきが施された三層構造であることを特徴とする請求項に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記最表面の銀または銀を含有する合金によるめっき層の厚さは0.5μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
リードフレームの基材質が銅合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のリードフレーム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のリードフレームの製造方法であって、前記球状の突起群を有するニッケルめっき層を得るためのめっき浴は、ニッケルめっき浴中のニッケル濃度を5g/L以上20g/L以下の範囲とし、塩素濃度を12g/L以上22g/L以下の範囲としたことを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項6】
めっき浴中にニッケルを含有させる構成成分として硫酸ニッケルを用い、また塩素を含有させる構成成分として塩化アンモニウムを用いることを特徴とする請求項に記載のリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルめっきと銀または銀を含有する合金めっきを施した半導体用リードフレーム及びそのリードフレームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子搭載用部品の一つとしてリードフレームがある。従来、リードフレーム上の全面または部分的に銀めっきを施したリードフレームが多く使用されているが、銀または銀を含有する合金は封止樹脂との密着性が悪く、衝撃や熱によってリードフレームと封止樹脂が容易に剥離するため、信頼性に問題がある。そのため、図4に示すようなリードフレームの表面をマイクロエッチング処理によって凹凸を形成した粗化状態とすることで物理的なアンカー効果を生み出し、封止樹脂との密着性を向上させる手法が知られているが、リードフレームで多く使用されているケイ素を含む銅合金のリードフレームではマイクロエッチング処理によってスマットと呼ばれる不純物残渣が発生するため使用できない。
【0003】
また、銅合金のリードフレームの場合は、半導体素子との接合時に用いる金属線との良好な接合性を確保するには、下地に存在する銅の拡散の影響を最小化する必要があるため、銀または銀を含有する合金などの貴金属または貴金属合金によるめっき層を直接下地銅の上に形成させる場合は、一般的にその貴金属または貴金属合金によるめっき層の厚さを2μm以上にする必要がある。近年半導体パッケージは小型化、低コスト化のため、軽薄短小での高密度実装が求められている。小型化のためにはめっき層の厚みをより薄くすることが求められており、貴金属または貴金属合金によるめっき層の厚みに関しては低コスト化の観点からもより一層薄くすることが求められている。
【0004】
銅合金のリードフレームにおいて、貴金属または貴金属合金によるめっき層の厚さを薄くするための方策の一つに、貴金属または貴金属合金によるめっき層の下層として、銅の拡散を抑制する効果のあるニッケルまたはニッケルを含有する合金によるめっき層を形成することで、貴金属または貴金属合金によるめっき層の厚みを薄くする手法がある。
【0005】
しかし、この様な貴金属または貴金属合金によるめっき層が薄くなると樹脂との密着性が悪化してしまう。
そこで、特許文献1として示す特開平9−29826号公報には、図3に示すような銅合金の全面に緻密で平坦なニッケルめっき層を形成し、その上に縦方向への結晶成長を優先させたニッケルめっき層を形成して表面を凹凸のある面とすることにより物理的なアンカー効果を生み出し、封止樹脂との密着性を向上させる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2として示す特開2010−111899号公報には、銅合金上に山型状のニッケルめっき層を形成させた後、その上にレベリング性の良いニッケルめっき層を形成することで凹凸形状を半球状とすることにより、特許文献と1と同様に封止樹脂との密着性を向上させた上で、エポキシ樹脂成分の滲み出しを防止する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献3として示す特許第5151438号公報には、粗面のニッケル層上に金層と銀層からなる貴金属めっき層を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−298265公報
【特許文献2】特開2010−111899公報
【特許文献3】特許第5151438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示されるものにあっては、チップ搭載面に必要なアンカー効果を得るという目的はある程度は実現されている。しかし、微細な凹凸面がパッド部にも同様のめっき状態で形成されるため、半導体素子を接着するためのダイボンディング用エポキシ樹脂をパッド部に塗布し、半導体素子を搭載後に加熱硬化させた時、塗布したダイボンディング用エポキシ樹脂中の未硬化のエポキシ樹脂成分が、結晶成長による微細な凹凸構造の隙間から滲み出して不良品を発生させる原因となることもあるため、製造時に細心の注意を払う必要があり、現実としては半導体装置の製造工程が複雑なものとならざるを得ない。
【0010】
また、特許文献2に示されるものにあっては、ニッケルめっき上の貴金属めっきの厚みを減らすことは可能であり、また封止樹脂との密着性も維持される。しかし、ニッケルめっき層を半球状に形状にするためには、山型状ニッケルめっき層を1μm施した上に、レベリング性の良いニッケルめっき層を1μmめっきしてニッケルめっき層を半球状に形成する必要があり、更にその上に貴金属または貴金属合金のめっき層を形成する必要があるため、めっき厚みは従来の2μm以上の厚みと大差が無いか、逆に厚くなってしまう場合がある。
【0011】
また、特許文献3に示されるものにあっては、ニッケル層の表面を十分に荒らす方法が見いだせていないため、貴金属めっき層の厚みを0.5μm以下にしないとニッケル層粗化の効果が得られない上、ニッケル層と金層と銀層の厚さの合計を5μmより薄くすることが出来ていない。また、貴金属めっき層の厚みが薄すぎると、下地の影響が強く出てしまい、半導体素子を接着するためのダイボンディング用エポキシ樹脂が十分に濡れ広がらず十分な接合性が得られない、半導体素子との接合に使用される金属線との金属拡散が十分に行われず接合性が十分に得られない、といった不具合を発生してしまう場合もある。
【0012】
そこで、本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、銀または銀を含む合金のめっきを施したリードフレームで、封止樹脂との密着性が高く、且つ銀または銀を含有する合金めっき層を含んだめっき層全体の厚さを薄くしたリードフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明のリードフレームは、半導体素子を搭載するリードフレームにおいて、少なくとも半導体素子が搭載されるパッド部上の最表面に銀または銀を含有する合金によるめっき層を有し、その形状が下地に形成された球状の突起群を有するニッケルによるめっき層により形成された球状の突起群であり、前記突起群は、下部の断面積に比べて、上部の球状の直径に相当する部分の断面積の方が大きくなっている無数の突起を有してなることを特徴とする。
銀めっき層の最表面に形成される球状の突起群とは、直径1〜4.0μm程度の複数の球状の突起を有する性状のことを示す。図1に一例として直径2〜4.0μm程度の球状突起を有する銀メッキ層の表面状態を示す。本形状の多くは、お互いが銀めっきにより繋がっているものの、球状を維持し、突起部の下部の断面積よりもその上に形成された球状部分の直径に相当する部分の断面積の方が大きくなっている部分を多く有するため、表面積増大の効果とともに、樹脂が球状突起の下側にまで流入して硬化するため、物理的なアンカー効果をも発揮し良好な密着性を得ることが出来る。なお、球状突起群の直径は上記の大きさに限定されるものではなく、例えば直径0.5〜6.0μm程度の範囲で任意に選択可能である。
【0014】
ッケルめっき層に形成される球状の突起群は、直径0.5〜2.0μm程度の複数の球状めっき合金で形成される。図2に一例として直径0.5〜1.0μm程度の球状突起を有するニッケルめっき層の表面状態を示す。本形状の多くは、下地の接触部分の断面積よりもその上に形成された球状部分の直径に相当する部分の断面積の方が大きくなっている。なお、球状突起群の直径は上記の大きさに限定されるものではなく、例えば直径0.2〜4.0μm程度の範囲で任意に選択可能である。
上記銀めっき層上に形成された球状突起は、下地のニッケルめっき層に形成された球状突起の形状を保持したまま、銀めっきにより一回り大きくなった突起が形成される。
【0015】
また、本発明のリードフレームにおいては、前記ニッケルによるめっき層は、まずレベリング性の良い平滑なニッケルめっきが施され、その平滑なニッケルめっき面上に球状の突起群が形成されたニッケルめっきが施され、更にその上にレベリング性の良いニッケルめっきが施された三層構造であることが好ましい。
なお、レベリング性の良いニッケルめっきとは延展性に優れ、めっき面の表面形状に滑らかに沿うような特性を有するめっきのことをいう。
【0016】
また、本発明のリードフレームにおいては、前記最表面のめっき層の銀または銀を含有する合金めっき層の厚さは0.5μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のリードフレームにおいては、その基材質が銅合金であることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明のリードフレームの製造方法は、前記本発明のリードフレームの製造方法であって、前記球状の突起群を有するニッケルめっき層を得るためのめっき浴は、ニッケルめっき液中のニッケル濃度を5g/L以上20g/L以下の範囲とし、塩素濃度を12g/L以上、22g/L以下の範囲としたことを特徴としている。
【0019】
また、本発明のリードフレームの製造方法は、前記リードフレームの製造方法であって、めっき浴中にニッケルを含有させる構成成分として硫酸ニッケルを用い、また塩素を含有させる構成成分として塩化アンモニウムを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、最表面の銀または銀を含有する合金によるめっき層が球状の突起群を有するめっき層となるため、単なる凹凸による粗化面よりも更に深部にまで封止樹脂が入り込むことにより、より密着性が高くなる。さらに、最表面に球状突起群を形成させるための下地ニッケルめっき層の球状突起群を効率的に形成できるため、下地の銅の拡散を抑制する厚みまでニッケルめっき層を薄く形成できることから、ニッケルのコストおよび銀または銀を含有する合金のコストを最小化でき、且つめっきの総厚みを最小化したリードフレームを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のめっき方法により製造されたリードフレーム最表面の銀めっき表面状態の一例を示す図面代用写真である。
図2】本発明のめっき方法によるリードフレームのニッケルめっき表面状態の一例を示す図面代用写真である。
図3】一般的なめっき方法によるリードフレームのニッケルめっき表面状態の一例を示す図面代用写真である。
図4】一般的なエッチングによるリードフレームのニッケルめっき表面状態の一例を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を適用したリードフレーム及びその製造方法について説明する。なお、本発明は、特に限定が無い限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
本発明のリードフレームのめっき工程は、銅合金の上に下地となるニッケルめっき層と、最表面に接合電極部となる銀または銀を含有する合金のめっき層と、下地ニッケルめっき層と銀または銀を含有する合金の最表面層との接合性を向上させる金属または合金による中間めっき層を形成するリードフレームにおいて、まず、スルファミン酸浴等によってレベリング性の良好な平滑なニッケルめっき層を形成し、次に硫酸ニッケルと塩化アンモニウムからなるニッケルめっき浴によって表面に球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成する。
【0023】
球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成するために、ニッケルめっき浴中のニッケル濃度を5g/L以上20g/L以下、塩素濃度を12g/L以上22g/L以下の範囲とするのが好ましい。特にニッケル濃度が8g/L以上15g/L以下、塩素濃度が14g/L以上20g/L以下の範囲であることがより好ましい。
【0024】
ニッケルの濃度が5g/L未満だと、十分なニッケルめっき被膜を形成することができないので好ましくない。ニッケルの濃度が20g/Lよりも高いと、形成されるニッケルめっき被膜が平滑表面となってしまい、凹凸のある表面を得ることができないので好ましくない。塩素濃度が12g/L未満だと、陽極が不動態化し印加電圧の上昇が起こるので好ましくない。塩素濃度が22g/Lよりも高いと、被膜硬度が上昇し内部応力も高くなってしまうので好ましくない。
【0025】
次に、球状の突起を多数有するニッケルめっき層の表面を保護するため、スルファミン酸浴等によってごく薄いニッケルめっき層を形成する。次に、銀または銀を含有する合金のめっき層との接合性を向上させるために銀または銀を含有する合金のストライクめっきを施すことが好ましい。そして最表面に、半導体素子との接合性を確保するために、銀または銀を含有する合金のめっき層を形成する。
【0026】
また、ニッケルめっき層と銀または銀を含有する合金のめっき層との接合性を向上させるために用いる銀または銀を含有する合金のストライクめっきの代替として、パラジウムまたはパラジウムを含有する合金のめっき層を用いることにより、ニッケルめっき層と銀または銀を含有する合金のめっき層を好適に接合させることも出来る。
【0027】
さらに、半導体素子との接合時に用いる金属線との接合性を向上させるために金または金を含有する合金のめっき層を銀または銀を含有する合金のめっき層の下に形成することもある。
【0028】
上記のいずれにおいても、半導体素子を接着するためのダイボンディング用エポキシ樹脂の濡れ性を確保するため、また、半導体素子との接合に使用される金属線と接合性を確保するため、銀または銀を含有する合金めっき層の厚さは0.5μm以上必要であり、さらにコストの観点から、0.5μm〜1.0μmの範囲にあることが好ましい。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
リードフレーム用銅合金として、厚さ0.2mm、幅180mmの帯状銅材(株式会社神戸製鋼所製:KLF−194)を用いて、この銅材の両面に、厚さ25μmのレジスト層(旭化成イーマテリアルズ株式会社製:AQ−2558)を形成し、所定の形状のマスクを用いて露光した後、現像、エッチング処理を行い、めっき用マスクを形成したリードフレームを得た。
【0030】
このめっき用マスクを形成したリードフレームに対し、アルカリおよび酸によって前処理を施した後、次のように電気めっき処理を施した。
まず、スルファミン酸ニッケルと塩化ニッケル、ホウ酸からなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度として5A/dm2で3分間めっきを行い、厚さが約0.5μmの平滑なニッケルめっき層を形成した。
【0031】
次に、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルと、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムからなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度として30A/dm2で30秒間めっきを行い、球状の突起を多数有する厚さが約0.5μmのニッケルめっき層を形成した。
【0032】
次に、表面の保護を目的として、スルファミン酸ニッケルと塩化ニッケル、ホウ酸からなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度として5A/dm2で30秒間めっきを行い、厚さが約0.1μmのニッケルめっき層を形成して、球状の突起群が形成された三層めっき構造を得た。
【0033】
その後に、この球状の突起群が形成されたニッケルめっき層の上に青化銀および青化カリウムからなるストライク銀めっき浴を用いて、電流密度として15A/dm2で30秒間めっきを行い、下地となるニッケルめっき層と銀めっき層との密着性を確保してニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する銀ストライクめっき層を形成した。
【0034】
さらに銀ストライクめっき層の上に、青化銀、青化銀カリウム、青化カリウムからなる銀めっき浴を用いて、電流密度として10A/dm2で1分30秒間めっきを行い、ニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する厚さが約0.5μmの銀めっき層を形成し、リードフレームの製造を完了した。
【0035】
完成したリードフレームの銀めっき層の上に、評価用のΦ2mmの円筒形の樹脂モールドを形成した。この樹脂に対し、ボンドテスタとしてDage Series4000(Dage社製)を用いてシェア強度を測定することで樹脂密着性の評価を行ったところ、密着強度は23.0MPaで良好な密着性を示した。
【0036】
また、完成したリードフレームの銀めっき層の上に評価用の金属線を接合した。金属線の接合にはワイヤボンダとしてUTC−1000Super(新川社製)を、金属線には純度4N、直径20μmの金線(住友金属鉱山社製)を用いた。この金属線の2nd側のスティッチプル強度をDage Series4000(Dage社製)を用いて測定したところ、6.3gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0037】
(実施例2)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルに代えてニッケル濃度5g/Lの硫酸ニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0038】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は14.7MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.3gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0039】
(実施例3)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルに代えてニッケル濃度20g/Lの硫酸ニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0040】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は15.2MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.5gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0041】
(実施例4)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムに代えて塩素濃度12g/Lの塩化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0042】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は22.3MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.2gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0043】
(実施例5)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムに代えて塩素濃度22g/Lの塩化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0044】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は24.1MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は5.3gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0045】
(実施例6)
リードフレーム上にニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する銀めっき層を形成させる工程の内、銀ストライクめっき層の上に青化銀、青化銀カリウム、青化カリウムからなる銀めっき浴を用いて、電流密度として10A/dm2で3分間めっきを行い、厚さが約1.0μmの銀めっき層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0046】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は22.7MPaで良好な密着性を示した。また、金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.7gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は2.1μmであった。
【0047】
(比較例1)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルに代えてニッケル濃度3g/Lの硫酸ニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0048】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着強度は7.7MPaであり、これは実用においては十分な密着性を示しているとは言い難い。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.1gfで良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0049】
(比較例2)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、ニッケル濃度13g/Lの硫酸ニッケルに代えてニッケル濃度25g/Lの硫酸ニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0050】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は7.3MPaであり、これは実用においては十分な密着性を示しているとは言い難い。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.3gfで、良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0051】
(比較例3)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムに代えて塩素濃度10g/Lの塩化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0052】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は23.0MPaであり、良好な密着性を示した。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.2gfで、良好な接合性を示した。しかしながら、本条件で球状の突起を多数有するニッケルめっきを行う際、電圧の上昇が確認された。この電圧の上昇は陽極の不導体化が原因であり、継続して処理することにより陽極の不導体化が進行し、それに伴い電圧が継続して上昇することにより、非常に高電圧となってしまうため、安全上好ましくない。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0053】
(比較例4)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程の内、球状の突起を多数有するニッケルめっき層を形成させる工程において、塩素濃度17g/Lの塩化アンモニウムに代えて塩素濃度25g/Lの塩化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0054】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は22.8MPaであり、良好な密着性を示した。金属線の2nd側のスティッチプル強度は4.8gfであり、これは実用においては十分な接合性を示しているとは言い難い。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.6μmであった。
【0055】
(比較例5)
リードフレーム上にニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する銀めっき層を形成させる工程の内、銀ストライクめっき層の上に、青化銀、青化銀カリウム、青化カリウムからなる銀めっき浴を用いて、電流密度として10A/dm2で1分間めっきを行い、厚さが約0.3μmの銀めっき層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0056】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は23.2MPaであり、良好な密着性を示した。金属線の2nd側のスティッチプル強度は3.9gfであり、これは実用においては十分な接合性を示しているとは言い難い。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は1.4μmであった。
【0057】
(比較例6)
リードフレーム上にニッケルめっき層の球状の突起群の形状に沿った形状の球状の突起群を有する銀めっき層を形成させる工程の内、銀ストライクめっき層の上に、青化銀、青化銀カリウム、青化カリウムからなる銀めっき浴を用いて、電流密度として10A/dm2で4分30秒間めっきを行い、厚さが約1.5μmの銀めっき層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0058】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は21.3MPaであり、良好な密着性を示した。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.6gfであり、良好な接合性を示した。しかしながら、銀めっき層が厚くなったことにより、下地の球状効果が弱くなり、実施例1よりは密着性が劣り、接合性は実施例1と大差ないことから、銀めっき層を1.0μmよりも厚くすることは特性改善がなくコストアップに繋がり、かつ従来品と同等かそれ以上のめっき厚になってしまうので好ましくない。
ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は2.6μmであった。
【0059】
(比較例7)
リードフレーム上にニッケルめっき処理を施す工程において、最初のスルファミン酸ニッケルと塩化ニッケル、ホウ酸からなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度を5A/dm2で6分間めっきを行い、厚さが約1.0μmの平滑なニッケルめっき層のみを形成して三層めっき構造としなかった以外は、実施例1と同様の方法で電気めっき処理を施し、リードフレームの製造を完了した。
【0060】
実施例1と同様にして樹脂密着性を評価した結果、完成したリードフレームの銀めっき層の樹脂密着性は7.1MPaであり、これは実用においては十分な密着性を示しているとは言い難い。金属線の2nd側のスティッチプル強度は6.6gfで、良好な接合性を示した。
なお、ニッケルめっき層と銀ストライクめっき層と銀めっき層の3層合計の平均めっき厚は2.0μmであった。
図1
図2
図3
図4