(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366041
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】バケットコンベアのバケット取付用座金
(51)【国際特許分類】
B65G 17/42 20060101AFI20180723BHJP
B65G 17/12 20060101ALI20180723BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20180723BHJP
F16B 39/24 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B65G17/42 A
B65G17/12 A
F16B43/00 A
F16B39/24 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-113409(P2015-113409)
(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公開番号】特開2016-222453(P2016-222453A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】河野 弘明
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−140910(JP,A)
【文献】
特開平04−257776(JP,A)
【文献】
実開昭48−104969(JP,U)
【文献】
実開平06−082013(JP,U)
【文献】
特開2015−072056(JP,A)
【文献】
特開2005−311239(JP,A)
【文献】
特開2007−302971(JP,A)
【文献】
米国特許第01600985(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/42
B65G 17/12
F16B 39/24
F16B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクチェーンとこれにボルトで取り付けられた複数のバケットとからなるバケットコンベアにおける各バケットの取付部に用いるバケット取付用座金であって、1枚の湾曲したバネ板とこれを両面から挟み込む2枚の金属板とからなり、該バネ板はその湾曲方向の中央部と両端部との少なくとも3箇所にそれぞれボルトが挿通するボルト挿通孔を有しており、該両端部のボルト挿通孔は該湾曲方向に延びる長孔であることを特徴とするバケット取付用座金。
【請求項2】
前記バネ板は、その湾曲方向の両縁部における凹側湾曲面側の角部が面取りされていることを特徴とする、請求項1に記載のバケット取付用座金。
【請求項3】
前記2枚の金属板のうち、前記バネ板の凹側湾曲面に対向する金属板において少なくとも前記バネ板の前記両縁部が接し得る部分が硬化処理されていることを特徴とする、請求項2に記載のバケット取付用座金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバケットコンベアのバケット取付用座金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェロニッケル製錬などの金属製錬においては、製錬炉から排出される高温のスラグに高圧の水砕水を加えて粉砕するいわゆる水砕処理が行われている。かかる水砕処理で水砕されたスラグは水砕水と共にピットに一旦溜められた後、バケットコンベアで連続的にすくい取ってピットから取り出される。バケットコンベアには、例えば特許文献1に示すような無端ベルトに複数のバケットを取り付けた構造のものや、リンクチェーンに複数のバケットを取り付けた構造のものが用いられている。
【0003】
バケットコンベアのバケットは一般にボルトによって無端ベルトやリンクチェーンに取り付けられている。例えばリンクチェーンにバケットを取り付ける場合は、リンクチェーンに穿孔されたバケット取付用のボルト挿通孔及びバケットの取付部においてこれに対応する位置に穿孔されたボルト挿通孔にリンクチェーン側からボルトを挿通し、バケットの内側に突出する該ボルトの先端部に平ワッシャ及びスプリングワッシャをこの順に嵌装した後、ナットを螺合させることでバケットの取り付けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−29517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなバケットコンベアのバケットでピット内に堆積したスラグをすくい取るときは、バケットに大きな荷重がかかる上、ピット内のスラグは水砕処理されてはいるものの依然として高温状態にあるため、バケットはかかる高温のスラグによって熱せられる。このように水砕処理されたスラグを搬出するバケットコンベアのバケットには荷重及び熱による負荷が繰り返しかかることになる。そのため、バケットをリンクチェーンに締結する上記ボルトが徐々に伸びるのを避けることはできない。
【0006】
このボルトの伸びがスプリングワッシャの伸縮範囲を超えると、リンクチェーンとバケットの取付部との間の締結力が失われる。その結果、以下の2つの問題が発生して最終的にバケットがリンクチェーンから脱落してしまう。すなわち1つめの問題は、バケットの取付部と平ワッシャとの間に隙間が生じ、ここにスラグが浸入してバケットの取付部が摩耗する問題である。この摩耗によりバケットの取付部の肉厚がスラグを搭載したバケット自身を支持可能な限度を超えて減肉すると、当該減肉した箇所を起点としてバケットが破れ、最終的にバケットが脱落してしまう。
【0007】
2つめの問題は、リンクチェーンとバケットの取付部との間の締結力が失われた状態でバケットコンベアの運転を続けると、バケットがリンクチェーンに取り付けられていた当初位置からずれやすくなる問題である。このようにバケットがずれやすくなると、バケットの取付部に設けたボルト挿通孔の内周部分とボルトの外周部分との衝突や摺動が繰り返されることで摩耗し、当該ボルト挿通孔が徐々に拡大する。そして、この拡大したボルト挿通孔の内径が平ワッシャの外径より大きくなると、バケットが脱落してしまう。
【0008】
本発明は上記した従来の問題に鑑みてなされたものであり、バケットコンベアのリンクチェーンからバケットが脱落する要因となる上記した2つの問題の発生を抑えることが可能なバケットコンベアのバケット取付用座金を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るバケット取付用座金は、リンクチェーンとこれにボルトで取り付けられた複数のバケットとからなるバケットコンベアにおける各バケットの取付部に用いるバケット取付用座金であって、1枚の湾曲したバネ板とこれを両面から挟み込む2枚の金属板とからなり、該バネ板はその湾曲方向の中央部と両端部との少なくとも3箇所にそれぞれボルトが挿通するボルト挿通孔を有しており、該両端部のボルト挿通孔は該湾曲方向に延びる長孔であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バケットコンベアのリンクチェーンからバケットが脱落する問題を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一具体例のバケット取付用座金を用いて締結されたバケットを有するバケットコンベアの模式的な正面図である。
【
図2】本発明の一具体例のバケット取付用座金の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のバケット取付用座金の一具体例について図面を参照しながら説明する。
図1にはリンクチェーン1とこれにボルト2で取り付けられた複数のバケット3とからなるバケットコンベア4が示されており、このバケットコンベア4によりピットP内に水砕水と共に貯められている水砕処理後の高温スラグSがピットPから連続的に取り出される。本発明の一具体例のバケット取付用座金10は、各バケット3のリンクチェーン1への取付部に用いられている。
【0013】
バケット取付用座金10は、
図2に示すように、矩形の金属板を湾曲させたバネ板11とこれを両面から挟み込む互いに略同サイズの2枚の矩形の金属板12、13とからなる。バネ板11はその湾曲方向の中央部と両端部との計3箇所にボルト2がそれぞれ挿通するボルト挿通孔11a、11bが設けられている。また、バネ板11の凹側湾曲面に対向する金属板12(以降、下側金属版とも称する)においてバネ板11のボルト挿通孔11a、11bにそれぞれ対応する位置にボルト挿通孔12a、12bが設けられており、同様にバネ板11の凸側湾曲面に対向する金属板13(以降、上側金属版とも称する)においてバネ板11のボルト挿通孔11a、11bにそれぞれ対応する位置にボルト挿通孔13a、13bが設けられている。なお、本明細書において湾曲方向とは
図2の矢印Aで示すようにバネ板11の面上に沿った曲げの方向を意味しており、
図2に示すように長方形のバネ板11をその長手方向に沿って曲げる場合は湾曲方向は長手方向となる。
【0014】
バネ板11において中央部のボルト挿通孔11aを除いた両端部のボルト挿通孔11bはバネ板11の湾曲方向に延びる長孔になっている。なお、
図2にはバネ板11及び金属板12、13の各々の両端部に1個ずつボルト挿通用の長孔を設けた例が示されているが、これに限定されるものではなく、両端部に2個以上ずつボルト挿通用の長孔を設けてもよい。
【0015】
上記した
図2の構成により、バケット3に高温のスラグSの熱及び荷重が繰り返しかかってボルト2に伸びが生じても、このボルト2の伸び量よりも厚み方向に大きく変形可能なバネ板11を使用することでリンクチェーン1とバケット3との締結力が低下したり、締結力が失われるのを防ぐことができる。これにより、座金の役割を担う下側金属板12とバケット3の取付部との間に隙間が生じにくくなり、当該隙間にスラグSが浸入してバケット3の取付部が摩耗したりバケット3がずれてボルト挿通孔が大きくなったりする問題を防ぐことができる。
【0016】
本発明の一具体例のバケット取付用座金10においては、ボルトで締め付ける前の応力がかからない状態のバネ板11とこれを挟んだ2枚の金属板12、13との計3枚を重ね合わせたときの合計の高さが30mm以下であることが好ましい。すなわち、バネ板11及び2枚の金属板12、13の厚さを各々好適な厚さである3.2mmにした時、バネ板11が湾曲状態から平板状態に変形する時の厚み方向の変形量が20mm以下であるのが好ましい。なお、上記変形量はバネ板11をその凹側湾曲面を下にして応力をかけずに床面に置いた時、バネ板11の湾曲方向中央部と床面との間の距離と考えることができる。
【0017】
上記した合計高さが30mmを超えると、例えば既存のバケットコンベアに使用している従来のスプリングワッシャと平ワッシャとからなるバケット取付用座金を本発明の一具体例のバケット取付用座金10に入れ替えた時に、これら従来のスプリングワッシャ及び平ワッシャの合計厚みよりバケット取付用座金10の厚みの方が厚くなってボルトの長さが足りなくなるおそれがある。この場合、従来のボルトより長いボルトを用いて対応すると、ボルトが熱せられた時にその長さ方向の伸びが従来より大きくなってしまうので本発明の一具体例のバケット取付用座金を用いることにより得られる効果が減少するおそれがある。
【0018】
本発明の一具体例のバケット取付用座金10は、バネ板11の湾曲方向中央部に設けられるボルト挿通孔11aの内径が、バネ板11の幅の1/2.5以下であることが好ましい。ボルト挿通孔11aの内径がバネ板11の幅の1/2.5を超えるとバネ板11が湾曲方向中央部で折れ曲がる可能性があるからである。また、バネ板11の両端部に設けられる長孔のボルト挿通孔11bは、その長手方向の開口長さが、バネ板11が湾曲状態から平板状態に変形する際の湾曲方向の全体的な変形量の1/2をボルトの外径に加えた長さ以上であるのが好ましい。
【0019】
本発明の一具体例のバケット取付用座金10のバネ板11は、その湾曲方向の両縁部において、凹側湾曲面側の角部が面取りされているのが好ましい。これにより、バネ板11がボルト2の伸縮などの応力を受けて変形する際、バネ板11の両縁部の凹側湾曲面側の角部と下側金属板12のバネ板11との対向面側の端部とが集中的に接触するのを抑制することができる。その結果、下側金属板12の当該接触箇所が摩耗により窪んでそこにバネ板11の角部が食い込んでバネ板11が自在に伸縮しにくくなるのを防ぐことができる。
【0020】
バネ板11の角部の面取りは、例えばバネ板11の縁部の断面形状が孤状になるようにするのが好ましい。このように断面形状を孤状にする事により、バネ板11の両縁部が下側金属板12にかかる力を簡易に分散させることができ、よって上記した下側金属板12のバネ板11との対向面への集中的な接触による摩耗が生じにくくなる。具体的にはバネ板11の両縁部の各断面形状をR1.6mm以上の弧状となるように面取りすることが好ましい。
【0021】
本発明の一具体例のバケット取付用座金10では、バネ板11の凹側湾曲面に対向する下側金属板12において、少なくともバネ板11の両縁部が接し得る部分が硬化処理されているのが好ましい。この部分を硬化処理することより、バネ板11がボルト2の伸縮などの応力で変形する際、バネ板11の上記した角部と下側金属板12のバネ板11との対向面側の端部が集中的に接触しても、該接触箇所において摩耗が生じにくくなる。よって、上記した窪みによるバネ板11の自在な伸縮の阻害の問題の発生をより一層抑制することができる。
【0022】
また、本発明の一具体例のバケット取付用座金10では、バネ板11の凸側湾曲面に対向する上側金属板13において、少なくともバネ板11と対向する面の中央部が硬化処理されているのが好ましい。この部分を硬化処理することにより、バネ板11がボルト2の伸縮などによる応力で変形する際、該バネ板11の中央部と上側金属板13の中央部とが集中的に接触しても該接触箇所において摩耗が生じにくくなる。よって、上側金属板13がその中央部で破断するトラブルを防ぐことができる。
【0023】
上記したように、下側金属板12の少なくとも端部と上側金属板13の少なくとも中央部とを硬化処理する事により、下側金属板12のバネ板11との対向面側の端部に接触するバネ板11の凹部湾曲面側の角部、及び上側金属板13のバネ板11との対向面側の中央部に接触するバネ板11の凸部湾曲面側の中央部の摩耗が進行しやすくなる。しかし、上記したように、バネ板11の両縁部を面取りすることである程度摩耗の進行を抑えることができる。また、摩耗が進んだ場合であってもバネ板11のみを取り換えれば良いので経済的である。なお、硬化処理の例としては焼き入れ処理を挙げることができる。
【0024】
本発明の一具体例のバケット取付用座金10では、下側金属板12と上側金属板13とで挟まれた内側空間をバケット3内の空間から隔離するように、例えば金属製の四角筒状体等の隔離手段で該内側空間を囲んでもよい。このように隔離手段でバケット取付用座金10の内側空間を囲むことで該内側空間にスラグが侵入するのを防ぐことができるので、上記した下側金属板12、上側金属板13及びバネ板11やこれらを締結するボルトの摩耗をより確実に抑えることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 リンクチェーン
2 ボルト
3 バケット
4 バケットコンベア
10 バケット取付用座金
11 バネ板
11a、11b ボルト挿通孔
12 下側金属版
12a、12b ボルト挿通孔
13 上側金属版
13a、13b ボルト挿通孔
A 湾曲方向
P ピット
S 高温スラグ