特許第6366056号(P6366056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366056
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/40 20060101AFI20180723BHJP
   D06F 33/02 20060101ALI20180723BHJP
   D06F 39/08 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   D06F37/40 F
   D06F33/02 T
   D06F39/08 311F
   D06F33/02 P
   D06F33/02 F
   D06F33/02 L
   D06F33/02 K
   D06F37/40 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-120606(P2014-120606)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-84(P2016-84A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 弘暁
(72)【発明者】
【氏名】久野 功二
(72)【発明者】
【氏名】秋田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】小倉 範史
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−264089(JP,A)
【文献】 特開2013−192784(JP,A)
【文献】 特開平02−224791(JP,A)
【文献】 特開2002−282575(JP,A)
【文献】 特開2013−244031(JP,A)
【文献】 特開平08−033788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/40
D06F 33/02
D06F 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、
前記水槽の内部に縦軸回りに回転可能に設けられ内部に洗濯物が収容される回転槽と、
前記回転槽の内底部に設けられ、モータにより回転される撹拌体と、
前記回転槽内から排水する排水弁と、
少なくとも脱水用クラッチ態様と洗い用クラッチ態様とに切替えられるクラッチと、
前記クラッチを前記洗い用クラッチ態様とし且つ前記回転槽内に水を溜めた状態で前記撹拌体を回転させる洗い運転を実行し、この洗い運転後に、前記クラッチを引き続き前記洗い用クラッチ態様とし且つ当該洗い運転とは前記撹拌体の回転モードが異なるほぐし運転を実行する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ほぐし運転の実行期間の一部期間で前記排水弁を開放し、別の期間で前記排水弁を閉鎖し、
前記制御手段は、前記回転槽内の水位が前記回転槽内の洗濯物に浮力を作用させる水位であるときに前記クラッチを前記脱水用クラッチ態様に切替え、
前記制御手段は、
前記ほぐし運転を開始すると、前記排水弁を開放し、その後、前記ほぐし運転において前記回転槽内の水位が前記回転槽内の洗濯物に浮力を作用させる水位であるときに前記排水弁を閉鎖し、
前記排水弁を閉鎖した後、前記ほぐし運転を終了するための動作、前記排水弁を開放するための動作、および前記クラッチを前記脱水用クラッチ態様に切替えるための動作を実行する洗濯機。
【請求項2】
水槽と、
前記水槽の内部に縦軸回りに回転可能に設けられ内部に洗濯物が収容される回転槽と、
前記回転槽の内底部に設けられ、モータにより回転される撹拌体と、
前記回転槽内から排水する排水弁と、
少なくとも脱水用クラッチ態様と洗い用クラッチ態様とに切替えられるクラッチと、
前記クラッチを前記洗い用クラッチ態様とし且つ前記回転槽内に水を溜めた状態で前記撹拌体を回転させる洗い運転を実行し、この洗い運転後に、前記クラッチを引き続き前記洗い用クラッチ態様とし且つ当該洗い運転とは前記撹拌体の回転モードが異なるほぐし運転を実行する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ほぐし運転の実行期間の一部期間で前記排水弁を開放し、別の期間で前記排水弁を閉鎖し、
さらに、運転を一時停止する一時停止用入力手段を備え、
前記制御手段は、前記ほぐし運転の実行中に前記一時停止用入力手段の入力により当該ほぐし運転が一時停止された場合には、排水弁を閉鎖し、一時停止復帰後は前記ほぐし運転は中止して当該ほぐし運転の次の制御へ移行する洗濯機。
【請求項3】
水槽と、
前記水槽の内部に縦軸回りに回転可能に設けられ内部に洗濯物が収容される回転槽と、
前記回転槽の内底部に設けられ、モータにより回転される撹拌体と、
前記回転槽内から排水する排水弁と、
少なくとも脱水用クラッチ態様と洗い用クラッチ態様とに切替えられるクラッチと、
前記クラッチを前記洗い用クラッチ態様とし且つ前記回転槽内に水を溜めた状態で前記撹拌体を回転させる洗い運転を実行し、この洗い運転後に、前記クラッチを引き続き前記洗い用クラッチ態様とし且つ当該洗い運転とは前記撹拌体の回転モードが異なるほぐし運転を実行する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ほぐし運転の実行期間の一部期間で前記排水弁を開放し、別の期間で前記排水弁を閉鎖し、
前記制御手段は、前記ほぐし運転の実行中に当該ほぐし運転が停止された場合には、停止復帰後前記ほぐし運転は中止して当該ほぐし運転の次の制御へ移行する洗濯機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記クラッチを前記洗い用クラッチ態様とし且つ前記回転槽内に水を溜めた状態で前記撹拌体を回転させるすすぎ運転を実行可能であり、前記すすぎ運転後には前記ほぐし運転は実行しない請求項1からのいずれか一項記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
水槽及び回転槽の軸方向が上下方向に指向する縦軸形の洗濯機においては、脱水運転でのアンバランス回転が発生することがないように、脱水運転前の洗い行程において、洗い運転に引き続いてほぐし運転を実行するようにしたものがある。このほぐし運転は、洗い運転後の排水時に撹拌体を回転(正逆回転)させることを行う。このほぐし運転により当該ほぐし運転終了時(排水終了時)には洗濯物が回転槽底部に均一に配置されるようになって、後の脱水運転では、アンバランス回転が発生しないようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−244031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、洗い運転では、クラッチにより撹拌体のみが回転可能状態(洗い用クラッチ態様)とされ、脱水運転への移行する場合には、クラッチにより撹拌体と回転槽とを連結させて一体回転可能状態(脱水用クラッチ態様)とする。この場合、撹拌体と回転槽との回転位相がずれているとクラッチが完全に切替わらないことから、モータを回転させて撹拌体の回転位相を調整すること(モータのクラッチ用回転動作)を行う。
【0005】
ところが、前述のほぐし運転において排水が終了すると、洗濯物が多い場合などに、回転槽の底部において、重量の重い洗濯物が撹拌体と回転槽底面とに跨って張り付いた状態となり、撹拌体がロックされた状態となることがある。この場合、クラッチの切り替え時において前記モータの負荷が大きくて、上述のクラッチ用回転動作ができない、もしくは時間がかかるといった問題がある。
そこで、ほぐし運転後のクラッチ切替えを確実に行い得る洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による洗濯機は、水槽と、前記水槽の内部に縦軸回りに回転可能に設けられ内部に洗濯物が収容される回転槽と、前記回転槽の内底部に設けられ、モータにより回転される撹拌体と、前記回転槽内から排水する排水弁と、少なくとも脱水用クラッチ態様と洗い用クラッチ態様とに切替えられるクラッチと、前記クラッチを前記洗い用クラッチ態様とし且つ前記回転槽内に水を溜めた状態で前記撹拌体を回転させる洗い運転を実行し、この洗い運転後に、前記クラッチを引き続き前記洗い用クラッチ態様とし且つ当該洗い運転とは前記撹拌体の回転モードが異なるほぐし運転を実行する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ほぐし運転の実行期間の一部期間で前記排水弁を開放し、別の期間で前記排水弁を閉鎖する。また、前記制御手段は、前記回転槽内の水位が前記回転槽内の洗濯物に浮力を作用させる水位であるときに前記クラッチを前記脱水用クラッチ態様に切替える。さらに、前記制御手段は、前記ほぐし運転を開始すると、前記排水弁を開放し、その後、前記ほぐし運転において前記回転槽内の水位が前記回転槽内の洗濯物に浮力を作用させる水位であるときに前記排水弁を閉鎖し、前記排水弁を閉鎖した後、前記ほぐし運転を終了するための動作、前記排水弁を開放するための動作、および前記クラッチを前記脱水用クラッチ態様に切替えるための動作を実行する
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による洗濯機の縦断側面図
図2】脱水用クラッチ態様におけるクラッチ部分の縦断側面図
図3】洗い用クラッチ態様におけるクラッチ部分の縦断側面図
図4】電気的構成のブロック図
図5】制御手段の制御内容(メインルーチン)を示すフローチャート
図6】各種動作を示すタイムチャート
図7】洗い運転での撹拌体の回転モードを示す図
図8】ほぐし運転での撹拌体の回転モードを示す図
図9】(a)はほぐし運転前における回転槽内部の様子を示す図、(b)はほぐし運転終了時における回転槽内部の様子を示す図
図10】時間設定に関連する制御内容を示すフローチャート
図11】一時停止に関連する制御内容を示すフローチャート
図12】運転停止に関連する制御内容を示すフローチャート
図13】第2実施形態を示す図6相当図
図14】第3実施形態を示す図5相当図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、第1実施形態による洗濯機について図1から図12を参照して説明する。図1には、縦軸形洗濯機の全体の概略構成が示されている。洗濯機本体1の外殻は、矩形箱状をなす外箱2と、この外箱2の底部に設けられた台板3と、外箱2の上部に装着されたトップカバー4とにより構成されている。外箱2の内部には、槽5が収容されている。この場合、槽5は、それぞれ有底円筒状をなす水槽6と、この水槽6内に回転可能に配設された洗濯槽兼脱水槽たる回転槽7とから構成されている。
【0009】
このうち、水槽6は、吊り棒8aとスプリング8bを主体とする弾性支持機構8により、軸方向を上下方向とした縦軸状態で弾性的に吊り下げ支持されている。水槽6の上部には水槽カバー9が装着されており、この水槽カバー9のほぼ中央部に、内蓋10が開閉可能に設けられている。
【0010】
回転槽7は、周側壁に脱水兼通風用の小孔7aを有していて、縦軸周りに回転可能とされている。この回転槽7内に洗濯物が出し入れ可能に収容される。回転槽7の上端開口部には、液体封入形の回転バランサ11が装着されている。回転槽7内の底部には、撹拌体12が回転可能に配設されている。水槽6の底部の外側(下側)には、図2及び図3にも示すように、モータ13及びクラッチ14が配設されている。
前記モータ13は、アウターロータ形のブラシレスモータから構成され、そのロータ13aは、撹拌軸12aの下端が直結されている。この撹拌軸12aの上端部は前記撹拌体12に連結されている。
【0011】
前記撹拌軸12aの周囲には筒状の脱水軸7aが回転可能に設けられており、この脱水軸7aの上端部は前記回転槽7に連結されている。
前記クラッチ14は、図2及び図3に示すように、脱水軸7aの周囲に上下移動可能に設けられた筒体14aを備えていると共に、この筒体14aを上下移動させるための機構部(図示せず)及びクラッチモータ15(図4参照)を有する。この筒体14aは、脱水用クラッチ態様となる下方位置(図2参照)と、洗い用クラッチ態様となる上方位置(図3参照)とに移動可能である。
【0012】
筒体14aは、図2に示す脱水用クラッチ態様において、セレーション機構14bにより脱水軸7aに対して上下移動可能に噛合し、セレーション機構14cによりアウターロータ13aのボス部13bに対して上下移動可能に噛合している。この結果、アウターロータ13aの回転が撹拌軸12aに伝達されるのに加え、脱水軸7aにも伝達される。つまり、回転槽7と撹拌体12とを連結してモータ13の回転を回転槽7及び撹拌体12の双方に伝達する。又、この場合、筒体14aを、水槽6に取り付けられた軸受ハウジング6aに対して固定・固定解除するための噛み合い機構14dは分離しており、もって、回転槽7と撹拌体12とは一体回転可能である。
【0013】
又、筒体14aは、図3に示す洗い用クラッチ態様において、セレーション機構14bにより脱水軸7aに対して上下移動可能に噛合し、又、セレーション機構14cは分離している。さらに噛み合い機構14dは噛合していて筒体14aは軸受ハウジング6aに固定されている。この結果、回転槽7と撹拌体12との連結が解除されて撹拌体12aのみにモータ13の回転が伝達される。この場合、筒体14aが軸受ハウジング6aに固定されていることで、脱水軸7a(回転槽7)は筒体14aを介して軸受ハウジング6aひいては水槽6に固定されている。この洗い用クラッチ態様は、洗い運転(洗剤洗い運転)及びすすぎ運転(ためすすぎ洗い運転)時に設定される。
【0014】
図3に示す洗い用クラッチ態様から図2の脱水用クラッチ態様へ切り替える場合、筒体14aをクラッチモータ15により下方へ移動させてセレーション機構14cを噛合させるが、この場合、回転槽7と撹拌体12との回転位相、つまりセレーション機構14cの上セレーション14c1と下セレーション14c2との回転位相が合わないと、脱水用クラッチ態様とならない。この対策として、筒体14aを下方へ移動させるときにモータ13を低速で回転させることにより上述の回転位相を適正に合わせるようにしている(モータ13のクラッチ用回転動作)。
【0015】
一方、図1において、水槽6の底部には排水口6bが設けられており、この排水口6bは、排水弁16を介して排水管17に接続されている。
また、水槽6の底部において排水口6bに連通する部分には、水位検知用のエアトラップ18が設けられており、このエアトラップ18に、エアチューブ19の一端部が接続されている。このエアチューブ19の他端部は、後述する水位センサ20に接続されている。
【0016】
前記トップカバー4は、前記内蓋10の上方に設けられている。このトップカバー4は洗濯物出入口21を有していて、矩形枠状をなしている。洗濯物出入口21は、二つ折れ式の外蓋22により開閉されるようになっている。トップカバー4の前部(図1において左側)には操作パネル23が設けられている。操作パネル23には、種々のスイッチからなる操作入力部23a(図4参照)及び各種の表示を行なう表示部23b(図4参照)が設けられているとともに、その下方部位には、制御手段としての制御装置25が配置されている。
【0017】
図4に示すように、前記操作入力部23aには、運転時間変更用入力手段としての時間設定スイッチ23a1と、一時停止用入力手段としての一時停止スイッチ23a2とが含まれている。
そして、トップカバー4の後部(図1において右側)には、部品収納部26が設けられており、この部品収納部26内には、前述の水位センサ20が配置されていると共に、回転槽7内に給水するための給水装置27が配設されている。給水装置27は、給水弁28(図4参照)、給水ケース29及び給水管30などを備えている。
【0018】
図4には、制御装置25を中心とした電気的構成の概略が示されている。制御装置25は、マイクロコンピュータを主体に構成されたもので、ソフトウエア構成により洗濯機の作動全般を制御する制御手段25a(これは洗濯物重量検出手段25bを含む)としての機能を備えている。上記制御手段25aは例えば主として洗い運転、ほぐし運転、中間脱水運転、すすぎ運転、最終脱水運転を制御する。
【0019】
この制御装置25には、前記操作パネル23の操作入力部23aの操作信号が入力されるほか、水槽6内に貯留される水の水位を検出する水位センサ20の水位検出信号、モータ13の回転速度を検知する回転センサ37の回転速度検出信号、モータ13に流れる電流を検知する電流センサ38の電流検出信号が入力されるようになっている。
【0020】
制御装置25は、これらの入力信号並びに予め備えた制御プログラムに基づき、表示部23b、モータ13、排水弁16、給水弁28、クラッチモータ15、ブザー36などを、駆動回路39を介して制御するようになっている。なお、この駆動回路39は、各機器に対応する駆動回路を総称する。
【0021】
次に制御装置25の制御内容(制御手段25aなどの制御内容)について図5図6を参照して説明する。
制御手段25aは、洗濯物重量検出、給水、布質検出、給水、洗い運転、ほぐし運転、排水、中間脱水運転、給水、すすぎ運転(ためすすぎ)、排水、最終脱水運転の順に実行する。具体的には、下記の制御が行われる。
【0022】
上記洗濯物重量検出(ステップS1)からほぐし運転(ステップS6)までは、洗い行程と称され、又、ほぐし運転直後の排水(ステップS7)からすすぎ運転(ステップS10)までは、すすぎ行程と称され、又、すすぎ運転直後の排水(ステップS11)及び最終脱水運転(ステップS12)は最終脱水行程と称される。
【0023】
ステップS1では洗濯物の重量を検出する(洗濯物重量検出手段25b)。この洗濯物重量検出は、回転槽7内に洗濯物を収容した状態でモータ13に一定の電力を与えて撹拌体12を回転させて得られた回転数と、回転槽7内に洗濯物が収容されていない状態でモータ13に一定の電力を与えて撹拌体12を回転させて得られている回転数との比較から、洗濯物重量(重量)を検出するものである。この検出データは水位設定などに用いる。なお、この洗濯物重量検出は、モータ13に流れる電流に基づいて洗濯物の重量を検出するようにしても良い。
【0024】
ステップS2では、給水を実行する。この給水は、排水弁16を閉塞した状態で、給水弁28を開放して回転槽7内に布質検出に用いる所定量の水を供給するものである。
ステップS3では、布質検出を実行する(布質検出手段)。この布質検出は、回転槽7内に一定量の水が収容された状態でモータ13に一定の電力を与えて撹拌体12を回転させ、撹拌体12の回転数の大きさにより洗濯物の布質、例えば、「ごわごわ」、「標準」、「しなやか」の3段階のいずれかを検出するものである。この検出データは、水流の強弱度合いの設定などに用いる。
【0025】
ステップS4では給水を実行する。この給水は、排水弁16の閉塞を維持した状態で、回転槽7内に設定された水位(洗い用水位)に達するまで水を供給するものである。
ステップS5では、洗い運転を実行する。この洗い運転では、クラッチ14は洗い用クラッチ態様とされる。この洗い運転は、回転槽7に水が溜められて当該回転槽7が回転しない状態で、モータ13ひいては撹拌体12を間欠的に正逆回転させるものである。モータ13の回転モード(正逆回転パターン)を図7に示す。この場合、1秒間正回転、1秒間停止、1秒間逆回転、1秒間休止を繰り返す回転モードである。これにより回転槽7内に洗い水流が形成される。
【0026】
この洗い運転では、回転槽7内には予め洗剤が供給されており、従って、当該洗い運転は、いわゆる洗剤洗い運転である。
この洗い運転の後は、洗い用クラッチ態様としたままで、ステップS6に移行してほぐし運転を実行する。このほぐし運転では、図8に示すように、モータ13ひいては撹拌体12を間欠的に正逆回転させると共に排水弁16を開放及び閉鎖する。すなわち、モータ13を、図8に示すように、洗い運転の場合と同じ回転数で、0.6秒間正回転、0.6秒間停止、0.6秒間逆回転、0.6秒間休止を繰り返す短周期の回転モードで駆動する。これにより回転槽7内に前述の洗い水流よりはやや弱いほぐし水流が形成される。なお、上記ほぐし運転時の回転モードは、洗い運転時の回転モードに対して、モータ13の回転数を洗い運転時よりも低くしても良い。
【0027】
そして、排水弁16を、回転槽7内の水位が、図6及び図9(b)に示すように、洗濯物に対して浮力を及ぼし得る水位のうち下限水位Hzに近い所定水位H0、この場合、洗い運転時の給水水位Hk(図9(a)参照)に対する所定比率の水位(例えば1/3以上の所定水位H0)となったところ(時間にすると期間th1)で、排水弁16を閉鎖する。これにより、排水弁16は、このほぐし運転の実行期間thのうちの一部期間である開始からの期間th1で開放し、残りの期間th2で閉鎖する。
【0028】
上記ほぐし運転では、洗い運転よりも弱い水流(ほぐし水流)によって、洗濯物がほぐされ、そして水位が減少することで、洗濯物が回転槽7下方に変位してその内底部にほぼ均一状態に分布する。
【0029】
このほぐし運転が終了したところでは、図9(b)に示すように、回転槽7内に所定水位H0の水が残っている。なお、水位の変化を図6に示している。
このほぐし運転が終了した後は、ステップS7に移行して、排水弁16を開放すると共に、クラッチ14を洗い用クラッチ態様から脱水用クラッチ態様に切替える。この切り替えの初期には、前述したモータ13のクラッチ用回転動作を実行する。この時点では、回転槽7内には、洗濯物に浮力を作用させる水位H0の水が残っているから、撹拌体12に対する洗濯物荷重が軽減されていると共に、洗濯物が当該撹拌体12及び回転槽7に張り付くこともない。このため、モータ13に対する洗濯物による負荷が小さく、当該モータ13は支障なく回転する。これにより、クラッチ14が適正な噛み合わせ位置(回転位相)となってクラッチ14が脱水用クラッチ態様に円滑に切替えられる。
【0030】
前記排水弁16の開放により回転槽7内の水が排水される。この場合洗濯物は、前述のほぐし運転によって回転槽7の内底部にほぼ均一状態に分布しているので、そのまま均一状態に回転槽7内底面に沈み込んで、ほぼ均一状態に残存する。
【0031】
次に、ステップS8に移行して中間脱水運転を開始する。
このため、ステップS8で中間脱水運転を実行した場合には、この脱水回転制御は、時間の進行と共に回転槽7の回転数を順次高めるように制御する。この場合、回転槽7内の洗濯物は回転槽7の内底部にほぼ均一状態に残存しているので、アンバランス回転となることはなく、脱水は成功する。この中間脱水運転は所定時間実行され、終了間際には排水弁16を閉鎖する。
【0032】
ステップS8の後はステップS9に移行して給水を実行する。この給水は、排水弁16の閉塞を維持した状態で、回転槽7内に設定された水位(ためすすぎ用水位)に達するまで水を供給するものである。この後、ステップS10に移行して、すすぎ運転を所定時間で実行する。このすすぎ運転は、いわゆるためすすぎ洗いのことである。このすすぎ運転では、回転槽7内に一定量の水が収容された状態で、撹拌体12を間欠的に正逆回転させる。このすすぎ運転においては、回転槽7に溜められた水道水によって洗濯物がすすがれる。すすぎ運転後には前述のほぐし運転は実行しない。
【0033】
この後、ステップS11に移行して、排水を実行する。この排水は、排水弁16を開放し回転槽7内の水を排出するものである。次のステップS12では、最終脱水運転を所定時間で実行する。この最終脱水運転は、回転槽7及び撹拌体12を回転させて洗濯物を脱水する。
これにより、洗濯運転が終了する。
さらに、制御手段25aは、前記メインルーチンを実行する中で、所定時間間隔で、次の制御も実行している。
【0034】
図10においては、時間設定に関する制御の内容を示している。制御手段25aは、ステップT1で、操作入力部23aが備えた時間設定スイッチ23a1の操作が有ったか否かの判断をし、操作が有れば、ステップT2でほぐし運転中であるか否かを判断する。ほぐし運転中であることが判断されると、時間の変更はしない(ステップT3)。ステップT2で「NO」であれば、ステップT4に移行して時間の変更を行う。
【0035】
図11においては、一時停止に関連する制御の内容を示している。制御手段25aは、ステップU1で操作入力部23aが備えた一時停止スイッチ23a2の操作(一時停止指令)が有ったか否かの判断をし、「YES」であればステップU2でほぐし運転中か否かを判断する。ほぐし運転中であれば、ステップU3に移行し、ほぐし運転を停止すると共に、排水弁16を一義的に停止する。そして、ステップU4で、一時停止スイッチが再度操作された(復帰指令が有った)か否かを判断する。復帰指令が有ったことが判断されると、ほぐし運転を中止し、当該ほぐし運転の次の制御(この場合排水動作)に移行する。
【0036】
前記ステップU2で「NO」であれば、ステップU6に移行して、該当運転もしくは該当動作を停止する。そして、ステップU7で一時停止スイッチが再度操作された(復帰指令が有った)ことが判断されると、ステップU8に移行し、運転を再開する。
図12においては、一時停止スイッチの操作以外(何らかの異常を検知したときに運転を停止する異常時停止機能が作動した場合)でほぐし運転が停止された場合の制御を示している。ステップV1で、ほぐし運転中に運転が停止されたか否かを判断し、「YES」であればステップV2で、例えばユーザーによる復帰処理により運転が復帰したか否かを判断する。運転が復帰されれば、当該ほぐし運転は中止して、当該ほぐし運転の次の制御へ移行する。
【0037】
上述した本実施形態においては、制御手段25aが、ほぐし運転の実行期間thの全期間で排水弁16を開放させるのではなく、実行期間thの一部期間である期間th2では排水弁16を閉鎖するようにしたので、このほぐし運転の終了時点で、洗濯物が含水する以外に回転槽7内に水が残るようになり、この結果、洗濯物が多量にあって全体重量が重い場合でも、当該洗濯物が撹拌体12と回転槽7底面とに跨って張り付くことがない。この結果、撹拌体12ひいてはモータ13がロックされることがなく、クラッチ14を脱水用クラッチ態様に切替える場合に、モータ13のクラッチ用回転動作が支障なく行われるようになる。この結果、ほぐし運転後のクラッチ切替えを確実に行い得る。
【0038】
なお、ほぐし運転の最初から最後まで排水弁16を開放し、当該ほぐし運転の実行時間を短くすれば、ほぐし運転終了時に水が残るが、この場合、ほぐし運転の実行時間が短くて本来の目的であるほぐし効果が上がらない。この点上記実施形態では、ほぐし運転の実行時間を短くすることはないので、ほぐし効果が低下することはない。
【0039】
又、本実施形態においては、制御手段25aが、ほぐし運転において、回転槽7内の洗濯物に浮力が作用する水位のうちの所定水位H0で排水弁16を閉鎖するので、撹拌体12にかかる洗濯物荷重を軽減できて、洗濯物を良好に均一分布とすることができる。従って、この後の脱水運転(中間脱水運転)においてアンバランス回転の発生を防止でき、脱水成功を図ることができる。
【0040】
又、本実施形態においては、制御手段25aが、回転槽7内の洗濯物に浮力が作用する所定水位H0で、クラッチ14を脱水用クラッチ態様に切替えるので、ほぐし運転後のクラッチ切替え時において、モータ13にかかる洗濯物の荷重をさらに小さくできて、当該クラッチ切替えをさらに確実に行い得る。
【0041】
又、本実施形態においては、制御手段25aが、ほぐし運転の実行期間thにおいて、排水弁16を開放し(期間th1)、その後の排水弁16を閉鎖する(期間th2)ので、ほぐし運転の最初から最後まで排水弁16を開放する場合とは異なり、ほぐし運転の後期ではある程度の低水位を維持した状態でほぐし運転を行うこととなり、ほぐし効果が向上する。
【0042】
又、本実施形態においては、制御手段25aが、脱水運転(中間脱水運転)とすすぎ運転とをその順に実行可能であり、すすぎ運転後にはほぐし運転は実行しないようになっている。
脱水運転後にすすぎ運転が行われると、脱水運転によって洗濯物が固まったままですすぎ運転がなされることがあり、この場合、このすすぎ運転後に、低水位のほぐし運転がなされると、前記固まった洗濯物がモータ13に大きな負荷として作用しほぐし効果が期待できない。
【0043】
その点、本実施形態では、すすぎ運転後には、ほぐし効果を期待できないほぐし運転は実行しないから、無駄なほぐし運転をなくすことができる。
又、本実施形態においては、運転時間の変更を入力する運転時間変更用入力手段としての時間設定スイッチ23a1を備え、制御手段25aは、ほぐし運転の実行中に時間設定スイッチ23a1から運転時間変更の入力があっても、当該入力の受け付けはしないようにした。
【0044】
例えば、ほぐし運転を長くするような時間設定がなされたとしても、このほぐし運転は洗い運転よりも低い水位で行われるから、洗浄効果は期待できない。又、ほぐし運転を短くするような時間設定がなされると、ほぐし効果が期待できなくなる。
従って、上記構成とした本実施形態では、ほぐし運転についての運転時間の変更入力は受付しないようにしたので、洗浄効果が期待できなかったり、ほぐし効果が期待できないような運転時間の変更を無くすことができる。
【0045】
又、本実施形態においては、運転を一時停止する一時停止用入力手段としての一時停止スイッチ23a2を備え、制御手段25aは、ほぐし運転の実行中に一時停止スイッチ23a2の入力により当該ほぐし運転が一時停止された場合には、排水弁16を閉鎖し、一時停止復帰後はほぐし運転は中止して当該ほぐし運転の次の制御へ移行するようにした。
ほぐし運転での一時停止時において、洗濯物が追加された場合には、低水位である上に洗濯物過多となってしまい、一時停止が復帰したときにそのままほぐし運転を再開すると、モータ13の負荷が増加してほぐし運転に支障を来すおそれがある。
【0046】
その点、上記構成とした本実施形態によれば、ほぐし運転が一時停止された場合には、排水弁16を閉鎖し、一時停止復帰後はほぐし運転は中止して当該ほぐし運転の次の制御へ移行するようにしたから、洗濯物追加などによってほぐし運転に支障を来す運転再開を防止して洗濯を続行できる。
【0047】
又、本実施形態では、制御手段25aは、例えば異常時停止機能などにより異常が検知されて、ほぐし運転の実行中に当該ほぐし運転が停止された場合(一時停止スイッチ23a2以外で停止された場合)には、停止復帰後ほぐし運転は中止して当該ほぐし運転の次の制御へ移行するようにしたから、上述同様、運転停止時おける洗濯物追加などによってほぐし運転に支障を来す運転再開を防止して洗濯を続行できる。
【0048】
図13は第2実施形態を示しており、この第2実施形態では、制御手段25aが、ほぐし運転が開始されたとき、排水弁16を、洗濯物に浮力が作用する水位に含まれる給水水位Hkの状態で閉鎖し(洗い運転から閉鎖を継続し)、そして、ほぐし運転の実行期間thのうち最初の期間th1´でこの排水弁16の閉鎖を持続し、その後の期間th2´で排水弁16を開放するようにした。上記期間th2´は、ほぐし運転の実行終了時点で回転槽7内に、洗濯物に対して浮力を及ぼし得る水位のうちの前記所定水位H0が残るような期間に設定している。そして、この所定水位H0の状態でクラッチ14が脱水用クラッチ態様に切替えられる。
【0049】
この第2実施形態においては、制御手段25aが、ほぐし運転の実行期間thの全期間で排水弁16を開放させるのではなく、実行期間thの一部期間である期間th1´で排水弁16を閉鎖するようにしたので、このほぐし運転の終了時点で、洗濯物が含水する以外に回転槽7内に水が残るようになり、この結果、洗濯物が多量にあって全体重量が重い場合でも、当該洗濯物が撹拌体12と回転槽7底面とに跨って張り付くことがない。この結果、撹拌体12ひいてはモータ13がロックされることがなく、クラッチ14を脱水用クラッチ態様に切替える場合に、モータ13のクラッチ用回転動作が支障なく行われるようになる。この結果、ほぐし運転後のクラッチ切替えを確実に行い得る。
【0050】
図14は第3実施形態を示しており、この第3実施形態では、ステップS5の次にステップSaを追加した点が第1実施形態と異なる。すなわち、制御手段25aは、洗濯物重量検出手段25bにより洗濯物の重量が所定重量以上であることが検出されたときに(ステップSaで「YES」)ほぐし運転を実行し、所定重量未満であるときには前記ほぐし運転を実行しない。
【0051】
洗濯物が多量(全体重量が重い)である場合に、洗い運転終了時に洗濯物が固まっていることが多く、逆に、洗濯物が少量である場合には、固まっていることは少ない。つまり、ほぐし運転は、洗濯物重量が重いときに有効であり、洗濯物量が軽いときには無駄である。
この点を考慮した第3実施形態では、洗濯物重量検出手段25bにより洗濯物の重量が所定重量以上であることが検出されたときにほぐし運転を実行し、所定重量未満であるときにはほぐし運転を実行しないので、ほぐし運転を無駄に実行することがない。
【0052】
なお、排水弁を閉鎖するについては水位検出に基づいて閉鎖する以外、タイマーによる設定時間に基づいて閉鎖するようにしても良い。
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
図面中、6は水槽、7は回転槽、12は撹拌体、13はモータ、14はクラッチ、16は排水弁、25aは制御手段、25bは洗濯物重量検出手段を示す。
図1
図2
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