(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366058
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】トーピードが設けられた溶融材料供給装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/20 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
B29C45/20
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-136495(P2014-136495)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-13647(P2016-13647A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155159
【氏名又は名称】株式会社名機製作所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 省二
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04176152(US,A)
【文献】
特開昭57−125027(JP,A)
【文献】
実開平01−137216(JP,U)
【文献】
特開昭50−030956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒内に設けられた溶融材料供給部材の前方の流路の断面積を狭くするトーピードが設けられた溶融材料供給装置において、
前記トーピードは溶融材料供給部材の側に凹部が形成され、
前記凹部に連通して前記トービートの内部に形成される内部流路と、前記トーピードの外周側に形成される外周流路とが少なくとも一部において並行して設けられ、
前記内部流路の少なくとも一部は前記外周流路に接続されていることを特徴とする溶融材料供給装置。
【請求項2】
前記溶融材料供給部材の先端の円錐部はトーピードの凹部に挿入可能であることを特徴とする請求項1に記載の溶融材料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーピードが設けられた溶融材料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トーピードが設けられた溶融材料供給装置としては特許文献1および特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1は、最も一般的な形状のトーピードであって両側端部が尖がった紡錘形状をしている。トーピードの役割は、特許文献1の明細書の(0007)にも記載されるように流動経路の断面積を小さくすることで樹脂材料のせん断速度を速くし、樹脂溶融の溶融を良好にするものである。
【0003】
しかしながら特許文献1は、トーピードの外側を溶融材料が通過していくのみであるので、断面積は減少による溶融効果はあるが、溶融材料の混練の点ではほとんど効果がない。前記のものに対して、特許文献2はノズルに挿嵌されたトーピードは、入口14から供給口9,10を通過した材料が凹部を流れて排出口11,12を通過して出口15へ流動するように設けられている。そのため圧力損失を過度に増加させることなく溶融樹脂の混練状況を改善することが可能と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−119277号公報(請求項1、0007、
図5)
【特許文献2】特開平11−34108号公報(請求項1、0010、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献2のトーピードも外側と内側の樹脂の流れが合流するわけではないので、溶融材料の混練がそれほど良好というわけではない。また特許文献2はノズルに設けられるものであり、加熱筒内に設けられることは想定されていないので、加熱筒との関係は何も記載されていない。
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、溶融材料供給部材の前方の流路の断面積を狭くするトーピードが設けられた溶融材料供給装置において、複数の流路からの溶融材料が合流して混練が良好になるようにした溶融材料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の溶融材料供給装置は、加熱筒内に設けられた溶融材料供給部材の前方の流路の断面積を狭くするトーピードが設けられた溶融材料供給装置において、前記トーピードは溶融材料供給部材の側に凹部が形成され、前記凹部に連通して前記トービートの内部に形成される内部流路と、前記トーピードの外周側に形成される外周流路とが少なくとも一部において並行して設けられ、
前記内部流路の少なくとも一部は前記外周流路に接続されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の溶融材料供給装置は、
請求項1において、前記溶融材料供給部材の先端の円錐部はトーピードの凹部に挿入可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の溶融材料供給装置は、加熱筒内に設けられた溶融材料供給部材の前方の流路の断面積を狭くするトーピードが設けられた溶融材料供給装置において、前記トーピードは溶融材料供給部材の側に凹部が形成され、前記凹部に連通して前記トービートの内部に形成される内部流路と、前記トーピードの外周側に形成される外周流路とが並行して設けられ、
前記内部流路の少なくとも一部は前記外周流路に接続されているので、溶融材料の混合が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の溶融材料供給装置の要部の拡大断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の溶融材料供給装置の応用例の要部の拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の溶融材料供給装置の更に別の応用例の要部の拡大断面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態の溶融材料供給装置の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の溶融材料供給装置について
図1を参照して説明する。一例として本実施形態の溶融材料供給装置は、射出成形機11の射出装置12である。また射出成形機11は射出装置12の前方に型締装置13が設けられ、その金型14(固定金型)にノズル15がタッチされるようになっている。射出装置12については加熱筒16の後方部近傍にハウジング部17が設けられ、ハウジング部17には材料供給孔18や供給装置19が設けられている。また加熱筒16は軸方向に向けて内孔16aが設けられ、外周には各ゾーン毎に温度制御可能なヒータ20が設けられている。また加熱筒16の前方にはシリンダヘッド部21が固定されている。シリンダヘッド部21の内側面21aはテーパー状に縮径され、後部の大径部は加熱筒16の内孔16aに接続され、前部の小径部はノズル15のノズル孔15aに接続されている。本発明ではシリンダヘッド部21も含めて加熱筒と称し、その内部の空洞部を加熱筒内と称する。また加熱筒16は、ノズル15側を前方と称し、ハウジング部17を後方と称す。
【0012】
加熱筒16の内孔16aにはスクリュ22が設けられている。スクリュ22は図示しない計量用モータにより回転可能に設けられ、また図示しない射出用モータにより前後進移動可能に設けられている。スクリュ22の形状は、後方から順にフィードゾーン23、コンプレッションゾーン24、メタリングゾーン25と軸部が太くなるように形成されている。スクリュ22のフライトは同じピッチに形成されている。スクリュ22の圧縮比については、これに限定されるものではないが、1.0〜2.0と比較的圧縮比を低くして、せん断力を小さくして繊維材料を用いる場合には切断を防止することが望ましい。またスクリュ22は、サブフライト等の別のフライトのあるものや、細かい凹凸が形成されたミキシングゾーンが設けられたものでもよい。更にまた加熱筒16の内部は、材料供給孔18、加熱筒16の中部ゾーン等から真空ポンプにより真空吸引されるようにしたものや窒素ガスを供給するようにしたものでもよい。
【0013】
またスクリュ22の前方には逆流防止弁26がスクリュ22の軸部に対して前後進可能に設けられ、逆流防止弁26が前方に移動した際には溶融材料が移動可能であり、逆流防止弁26が後方に移動した際には溶融材料が前方から後方へ移動不可能となるようになっている。なお本発明において逆流防止弁26は必須ではない。またスクリュ22の逆流防止弁26が設けられた部分の前方にはスクリュヘッド27が設けられている。スクリュヘッド27は円錐形状の円錐部からなっている。なおスクリュヘッド27は後述するトーピード28の凹部29に嵌合されるものであれば、完全な円錐形状でなくてもよい。
【0014】
加熱筒16内に設けられた溶融材料供給部材であるスクリュ22が最大限前方へ移動した位置(前進限)よりも更に前方の位置には、トーピード28が設けられている。トーピード28は、外周部30の直径が加熱筒16の内孔よりも小径となっており、トーピード28の設けられた部分において加熱筒16内の流路の断面積が狭くなっている。トーピード28は、外側は円筒形をしており加熱筒16の方向に長手方向を向けて固定されている。トーピード28の取付方法は、加熱筒16の内孔16a側から軸芯側に向けて形成された図示しない複数の支持部により加熱筒16内に固定支持されている。トーピード28は溶融材料供給部材であるスクリュ22の先端のスクリュヘッド27の側が、テーパー状の凹部29が形成されている。そして凹部29に連通してトーピード28の内部には内部流路31が形成されている。ここでは内部流路31は、トーピード28の軸芯に沿って前方に向けて形成された直進部31aと、トーピード28の前後方向の中央部分で、外周側に向けて4方向に向けて流路が形成された分岐部31bからなっている。そして内部流路31のうちの分岐部31bは、トーピード28の外周部30のうちの円筒部30aに開口している。なお前記分岐部31bの本数は2〜6が適切である。
【0015】
なお
図2の応用例に示されるようにトーピード28の内部流路31の分岐部31bは、外周部30のうちの前方の円錐部30bに接続されるようにしてもよい。このことにより内部流路31を流れる溶融樹脂が流動抵抗を受けにくくなる。また更に内部流路31の直進部31aの数も一には限定されない。
図3の更に別の応用例に示されるように、複数本の内部流路31cがそれぞれ分岐しないで外周部30に直接接続されるようにしてもよい。いずれにしても内部流路31が外周部30のいずれかの部分に開口されることにより、別途外周側に形成される外周流路32との合流部を形成する。
【0016】
またトーピード28の外周部30と加熱筒16の内孔16a(シリンダヘッド部21の凹部21a内を含む)との間には外周流路32が形成されている。外周流路32は前記支持部以外の部分はトーピード28の後方から前方に向けて全周に形成されている。従ってトーピード28の前後方向の中央よりも後ろの部分では内周流路31と外周流路32が少なくとも一部において並行して設けられることになる。なお内部流路31は、凹部29よりも前方で前記外周流路32に接続されるものであればよい。また内周流路31は、少なくとも一部が外周流路32に接続されていればよく、一部の内周流路31がトーピード28の軸芯が貫通したものを除外するものではない。
【0017】
またトーピード28の前後方向の中央は、円筒形であるが、それよりも更に前方のトーピード28の全長に対して1/3〜1/10程度の長さの部分は、シリンダヘッド側の凹部21aの形状に対応した円錐形状をした円錐部30b(突起部)となっている。また本実施形態では、トーピード28の外周部30の全域には複数の突部33が形成されている。本実施形態では突部は溶融材料の流動方向に長手方向が向けられた楕円形状である。そしてトーピード28の後方側よりも前方側のほうほど突部の数が増加するように形成されている。また円錐部30bにも前記突部が形成されている。なお突部の形状は楕円形に限らず、円形、5角以上の多角形、長方形、三角形等でもよい。またトーピード28の径を若干大きくして窪みを多数設けたものでもよい。また加熱筒16の内孔16aの側に突部や凹凸を設けたものでもよい。更に本発明において突部は必須ではない。
【0018】
次に本実施形態の溶融材料供給装置である射出装置12を用いた計量および射出(材料供給)ついて説明する。本実施形態で使用される材料は、ガラス繊維と熱可塑性のペレットが別々に供給されたものである。ただし熱可塑性のペレット自体にガラス繊維を含有したものでもよい。供給装置19から材料供給孔18を介して加熱筒16内に供給され、溶融材料供給部材であるスクリュ22が計量用モータの作動により回転されるとフィードゾーン23、コンプレッションゾーン24、メタリングゾーン25の順に送られたガラス繊維と熱可塑性樹脂はメタリングゾーン25でほぼ完全に溶融されて開放された逆流防止弁26を介してスクリュ22の前方に送られる。
【0019】
この際に溶融材料供給部であるスクリュ22には射出用モータにより背圧が掛けられており、スクリュ22の後退とともにトーピード28の凹部29の側とスクリュ22のスクリュヘッド27との間の間隔が広がりガラス繊維の含有した溶融樹脂(溶融材料)がその部分に貯留される。射出装置12は、計量工程が終了すると、金型14内の成形品が取り出されて再度型締がなされるまで待機する。そして次に射出工程が開始されると射出装置は射出モータが作動して、スクリュ22を高速で前進させる。その結果溶融樹脂は、加熱筒16内のトーピード28の部分を介してノズル15から金型14内へ射出される。この際逆流防止弁26は後方に移動してスクリュ先端側からフライト側への溶融樹脂の流動を遮断する。
【0020】
射出の際、ガラス繊維の含有した溶融樹脂はトーピード28の内部流路31と外周流路32から並行して前方に送られる。そしてトーピード28の前後方向のほぼ中央部分で内部流路31の分岐流路31bは前記外周流路32に接続されていることから、内部流路31と外周流路32から送られてきた溶融樹脂は合流して混合される。しかしそれに対して特許文献2ではこういった流れは起きない。またトーピード28の外周部30の円筒部30aや円錐部30bにも突部33や凹部が形成されることにより、トーピード28の後方から前方へ溶融樹脂が送られるうちに良好に混合がなされる。そしてスクリュ22が前進される圧力によりトーピード28の前方からノズル孔15aを介して金型14のキャビティ内に溶融樹脂が射出充填される。またスクリュヘッド27はトーピード28の凹部29内に収納される形で射出および保圧が終了する場合が多い。従ってトーピード28の後方部分に溶融樹脂が滞留しにくい。
【0021】
次に
図4の別の実施形態の溶融材料供給装置51のトーピード52について説明する。
図4の溶融材料供給装置51は、図示しない可塑化装置が別に設けられたプランジャ装置53であり、可塑化装置とは連絡通路54で接続されている。そしてプランジャ装置53の加熱筒55内には溶融材料供給部材であるピストン(プランジャ)56が前後進可能に内蔵されている。
図4では、トーピード52は、加熱筒55内(シリンダヘッドを含む)には設けられておらず、その全部またはほとんど全部がノズル57内に設けられている。トーピード52の形状としては、
図1ないし
図3に記載されたものやそれらの技術思想を有するものが採用可能であり、トーピード52の部分には内部流路58と外部流路59が並行して設けられる。またトーピード52の後方部分は凹部60となっていて内部流路58に連通されている。またスクリュが設けられた射出成形機において
図4のノズル内のトーピードを設けてもよい。
【0022】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。
図4に記載したように溶融材料供給装置の溶融材料供給部材についてはスクリュ以外に回転不能なプランジャでもよい。その場合、トーピードの後方とプランジャの間に別の可塑化装置から溶融材料流路が接続され、溶融材料供給部材であるプランジャの前に貯留されることが一般的である。またはスクリュインプランジャ装置の構造のものでもよい。
【0023】
溶融材料供給装置の溶融材料供給部材であるスクリュについては回転のみ可能であって、前後進不能な押出機のスクリュであってもよい。その場合であっても、溶融材料は、前記トーピードの凹部に連通される内部流路と、トーピードと外周部との間に形成される外周流路との間を通過して前方へ継続的に供給され、その間に混合がなされる。溶融材料供給装置により溶融される材料は、熱可塑性または熱硬化性の樹脂に炭素繊維、ガラス繊維等の繊維材料を混ぜたものを混合することを主な目的とするが、樹脂同士の混合を良好にするものでもよく、一部または全部が樹脂以外の材料を混合するものでもよい。
【符号の説明】
【0024】
11 射出成形機
12 射出装置(溶融材料供給装置)
16 加熱筒
16a 内孔
22 スクリュ
28 トーピード
29 凹部
30 外周部
31 内部流路
32 外周流路