特許第6366067号(P6366067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366067
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】熱硬化性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/12 20060101AFI20180723BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20180723BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20180723BHJP
【FI】
   C09D175/12
   C09D7/63
   C09D7/41
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-14617(P2015-14617)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-138203(P2016-138203A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直之
(72)【発明者】
【氏名】山下 文男
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/099750(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/099749(WO,A1)
【文献】 特表平09−503796(JP,A)
【文献】 特開平08−302280(JP,A)
【文献】 特開2000−038436(JP,A)
【文献】 特開2004−238525(JP,A)
【文献】 特公昭46−011644(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基含有樹脂(A)、ブロックイソシアネート硬化剤(B)、及びカルボニル基の炭素を含めた炭素数が4〜12の脂肪酸とカルシウム、バリウムから選ばれる少なくとも一種の金属との金属脂肪酸塩である金属触媒(C)を含有し、塗料組成物の樹脂固形分合計質量を基準として、アミン価が5mgKOH/g以上であることを特徴とする熱硬化性塗料組成物。
【請求項2】
アミン化合物(D)を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項3】
アミノ基含有樹脂(A)が、3級アミノ基を有することを特徴とする請求項1又はに記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項4】
ブロックイソシアネート化合物(B)のブロック剤が、アルコール系化合物、ピラゾール系化合物、オキシム系化合物、及びラクタム系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項5】
着色顔料、防錆顔料及び/又は体質顔料を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装し、加熱硬化させる塗膜形成方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装して得られる塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機錫化合物を実質的に含有しないにもかかわらず塗膜硬化性及び塗膜外観に優れる熱硬化性塗料組成物及び該塗料組成物を塗装した塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート硬化剤は塗料等の硬化剤として一般的に用いられているが、イソシアネート基と活性水素との反応は常温でも進行するため、活性水素を有する樹脂とポリイソシアネート硬化剤を予め混合しておく、いわゆる一液型塗料としての使用は困難である。そこで、ポリイソシアネートを活性水素基含有化合物(ブロック剤)と反応させて常温で不活性化したブロックイソシアネートを用いる方法が実用化されている。
【0003】
このブロックイソシアネートは、常温では樹脂と反応しないが、加熱されることでブロック剤が解離してイソシアネート基を再生し、活性水素を有する樹脂との架橋反応が進むものである。このため、可使時間に制限がなく、一液型塗料とすることができ、さらに活性水素を有する水やアルコールを媒体とする水性塗料への適用も可能となっている。
【0004】
上記ブロックイソシアネートに用いられるブロック剤としては、フェノール系、カプロラクタム系、オキシム系、活性メチレン系、ピラゾール系等の化合物が知られており、また、該ブロック剤の解離触媒としては、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドなどの有機錫化合物が一般的に用いられてきた。(特許文献1、特許文献2)
しかし、有機錫化合物は、その触媒性能は非常に高いものの、近年その毒性が問題となっているため、有機錫化合物に代わる触媒が求められてきた。その代替品として、ビスマス系、チタン系、または亜鉛系の触媒が開発されている。(例えば、特許文献3、特許文献4)
しかし、それぞれ、高価であったり、触媒効果が不十分であったり、水性塗料中で不安定であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−283366号公報
【特許文献2】特許第3062625号公報
【特許文献3】特表2010−536943号公報
【特許文献4】特開2012−152725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、有機錫化合物のような有毒性化合物を実質的に用いることなく、触媒としての有効性及び塗料安定性を備えたブロックイソシアネート解離触媒を含有する熱硬化性塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の金属触媒、アミノ基含有樹脂、及びブロックイソシアネート硬化剤、を含有することを特徴とする熱硬化性塗料組成物によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下のブロックイソシアネート解離触媒を含有する熱硬化性塗料組成物及び該塗料組成物を塗装した塗装物品を提供するものである。
項1.アミノ基含有樹脂(A)、ブロックイソシアネート硬化剤(B)、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属元素を含有する金属触媒(C)を含有することを特徴とする熱硬化性塗料組成物。
項2.アミン化合物(D)を含有することを特徴とする前記項1に記載の熱硬化性塗料組成物。
項3.塗料組成物の樹脂固形分合計質量を基準として、アミン価が5mgKOH/g以上であることを特徴とする前記項1又は2に記載の熱硬化性塗料組成物。
項4.アミノ基含有樹脂(A)が、3級アミノ基を有することを特徴とする前記項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物。
項5.金属触媒(C)が、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属と炭化水素基の炭素数が2〜12の脂肪酸との金属脂肪酸塩であることを特徴とする前記項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物。
項6.金属触媒(C)の金属が、カルシウム、バリウム、カリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物。
項7.ブロックイソシアネート化合物(B)のブロック剤が、アルコール系化合物、ピラゾール系化合物、オキシム系化合物、及びラクタム系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物。
項8.着色顔料、防錆顔料及び/又は体質顔料を含有することを特徴とする前記項1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物。
項9.前記項1〜8のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装し、加熱硬化させる塗膜形成方法。
項10.前記項1〜8のいずれか1項に記載の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装して得られる塗装物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱硬化性塗料組成物は、良好な塗料安定性を維持した上、有毒性である有機錫化合物を使うことなく、優れた塗膜硬化性を有している。また、得られた塗膜は、仕上がり性が良好で、耐薬品性、耐候性、防食性、耐水性などに優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、特定の金属触媒、アミノ基含有樹脂、及びブロックイソシアネート硬化剤を含有する熱硬化性塗料組成物に関する。
以下、詳細に述べる。
【0010】
アミノ基含有樹脂(A)
本発明の熱硬化性塗料組成物で用いることができるアミノ基含有樹脂(A)としては、アミノ基を含有し、ブロックイソシアネート硬化剤(B)と架橋できる樹脂であれば、公知のものを特に制限なく使用できる。
ブロックイソシアネートと架橋できる上記アミノ基含有樹脂の反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、活性メチレン基等の活性水素を有する反応性官能基の他、エポキシ基、カルボン酸無水物基などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができるが、水酸基を含有することが好ましい。
また、アミノ基含有樹脂(A)は、アミノ基として、3級アミノ基を有することが好ましい。
【0011】
アミノ基含有樹脂(A)の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、アクリル樹脂(A1)、エポキシ樹脂(A2)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
アクリル樹脂(A1)
本発明の熱硬化性塗料組成物に用いることができるアクリル樹脂(A1)としては、アクリルモノマーをラジカル共重合することによって製造することができる。
【0013】
上記アクリルモノマーとしては、公知のものを特に制限なく使用できるが、少なくとも1種のアミノ基含有アクリルモノマーを使用する必要がある。アミノ基含有アクリルモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0014】
また、アミノ基含有アクリルモノマーを用いる以外では、(1)グリシジル(メタ)アクリレートを用いて、共重合と同時に又は前後に、グリシジル(メタ)アクリレートとアミノ化合物とを反応せしめることでアクリル樹脂(A1)にアミノ基を含有する方法、(2)イソシアネート基含有アクリルモノマーを用いて、共重合と同時に又は前後に、イソシアネート基含有アクリルモノマーとアミノ化合物とを反応せしめることでアクリル樹脂(A1)にアミノ基を含有する方法などが挙げられる。
【0015】
アミノ基含有アクリルモノマー以外のアクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加生成物(例えばダイセル株式会社製の商品名としてプラクセルFA−2、及びFM−3)などの水酸基含有アクリルモノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
アクリル樹脂(A1)は、上記のモノマーを公知の方法によりラジカル共重合反応することによって得ることができる。
【0017】
なお、アクリル樹脂(A1)のアミン価は、通常5〜300mgKOH/gの範囲内、好ましくは15〜200mgKOH/gの範囲内、より好ましくは30〜100mgKOH/gの範囲内、水酸基価は、通常0〜300mgKOH/gの範囲内、好ましくは10〜200mgKOH/gの範囲内、より好ましくは20〜100mgKOH/gの範囲内、重量平均分子量は、通常1,000〜100,000の範囲内、好ましくは、2,000〜30,000の範囲内が適当である。
【0018】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0019】
エポキシ樹脂(A2)
本発明の熱硬化性塗料組成物に用いることができるエポキシ樹脂(A2)としては、エポキシ樹脂(A2−1)と、アミン化合物(A2−2)と、さらに必要に応じて変性剤(A2−3)とを反応させて得ることができる。
【0020】
エポキシ樹脂(A2)の原料として用いることができるエポキシ樹脂(A2−1)としては、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、その分子量は、少なくとも300、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。かかるエポキシ樹脂(A3−1)としては、例えば、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリン等)との反応によって得られるものを使用することができる。
【0021】
上記エポキシ樹脂(A2−1)の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0022】
また、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂(A2−1)としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
【0023】
【化1】
【0024】
ここで、n=0〜8で示されるものが好適である。
【0025】
かかるエポキシ樹脂(A2−1)の市販品としては、例えば、三菱化学(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂(A2)の原料として用いることができるアミン化合物(A2−2)としては、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有するアミン化合物であれば特に制限なく用いられ、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン、ピラジンなどの環状アミンなどが挙げられる。また、これら上記のアミンと、1級アミンをケチミン化したアミンとを併せて用いることもできる。
【0027】
エポキシ樹脂(A2)の原料として用いることができる変性剤(A2−3)としては、上記エポキシ樹脂(A2−1)との反応性を有する成分であれば特に限定されず、例えば、多価アルコール、一価アルコール、酸性化合物、フェノール類、アミン化合物、ラクトン類、イソシアネート化合物、キシレンホルムアルデヒド化合物などが挙げられる。
【0028】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、2,3―ブタンジオール、1,5―ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,3−プロパンシオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどの二価アルコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの三価アルコール;ペンタエリスリトールなどの四価アルコール;ポリエステルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。
上記一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
上記酸性化合物としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、アクリル酸、オレイン酸、グリコール酸、乳酸、安息香酸、没食子酸、脂肪酸、二塩基酸などの酸性化合物などが挙げられる。
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、パラ−tert−ブチルフェノール、ノニルフェノール、カテコール、レゾルシノール、4−tert−ブチルカテコールなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0029】
上記エポキシ樹脂(A2)の製造方法としては、上記エポキシ樹脂(A2−1)と、アミン化合物(A2−2)と、さらに必要に応じて変性剤(A2−3)とを、公知の方法で反応させることにより製造することができる。
また、エポキシ樹脂(A2)の数平均分子量は、塗料安定性、仕上がり性などの観点から、通常1,000〜50,000の範囲内であり、好ましくは1,300〜20,000の範囲内であり、より好ましくは1,600〜10,000の範囲内であることが好適である。
エポキシ樹脂(A2)のアミン価は、得られる塗膜の硬化性の観点から、通常5〜300mgKOH/gであり、好ましくは15〜250mgKOH/g、さらに好ましくは30〜200mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
エポキシ樹脂(A2)の水酸基価は、得られる塗膜の硬化性の観点から、通常10〜300mgKOH/gであり、好ましくは20〜250mgKOH/g、さらに好ましくは30〜200mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0030】
ブロックイソシアネート硬化剤(B)
ブロックイソシアネート硬化剤(B)は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物である。ブロックイソシアネート硬化剤(B)で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0031】
一方、上記イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約80〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生することが望ましい。
【0032】
ブロックイソシアネート硬化剤(B)で使用されるイソシアネートブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系化合物;ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ジメチルピラゾールなどのピラゾール系化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
なかでも、解離温度と塗料安定性の観点から、アルコール系化合物、ピラゾール系化合物、オキシム系化合物、及びラクタム系化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0033】
金属触媒(C)
本発明の熱硬化性塗料組成物で用いることができる金属触媒(C)としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属元素を含有する金属触媒である。なかでも、下記式(1)で示される金属脂肪酸塩(C1)であることが好ましい。
M{OOC−R}n・・・式(1)
(式中、nは1又は2の整数である。Rは有機基である。2個のRCOO基は同じであってもよく、異なってもよい。Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。)
上記式(1)のRの有機基としては、飽和、不飽和、直鎖、分岐、環状のものを好適に使用することができる。上記金属脂肪酸塩(C1)の脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの直鎖飽和脂肪酸類;ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、2−ヘキサデセン酸、6−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、10−ウンデセン酸などのモノエン不飽和脂肪酸類;リノエライジン酸、リノール酸、10,12−オクタデカジエン酸、ヒラゴ酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸、7,10,13−ドコサトリエン酸、4,8,11,14−ヘキサデカテトラエン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、8,12,16,19−ドコサテトラエン酸、4,8,12,15,18−エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ニシン酸、ドコサヘキサエン酸などのポリエン不飽和脂肪酸類;1−メチル酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、イソ吉草酸、ツベルクロステアリン酸、ピバル酸、ネオデカン酸などの枝分れ脂肪酸類;プロピオール酸、タリリン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸、7−ヘキサデシン酸などの三重結合をもつ脂肪酸類;ナフテン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルビン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸などの脂環式カルボン酸類;アセト酢酸、エトキシ酢酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グルコン酸、サビニン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニペリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸、カムロレン酸、リカン酸、フェロン酸、セレブロン酸などの含酸素脂肪酸類;安息香酸、9−アントラセンカルボン酸、アトロラクチン酸、アニス酸、イソプロピル安息香酸、サリチル酸、トルイル酸などの芳香族モノカルボン酸などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、特に入手が容易で安価である観点から、上記脂肪酸としては、2−エチルヘキサン酸、オクチル酸、ネオデカン酸、オレイン酸、ナフテン酸、ラウリン酸などが好ましい。
【0034】
また、上記脂肪酸の炭素数が多い(分子量が大きい)場合には、その酸基を有するカルボン酸金属塩は、固状または粘度の高い液状となり、取り扱い難く塗料への溶解性及び安定性も劣る。逆に、上記脂肪酸の炭素数が少ない(分子量が小さい)場合には、その脂肪酸金属塩は、加熱によって揮発しやすい成分を多く含み、触媒能が低下する場合がある。従って、上記脂肪酸は、カルボニル基の炭素を含めた炭素数が、通常、2〜40であり、2〜12であることが好ましく、4〜12であることがより好ましく、6〜12であることが特に好ましい。
【0035】
上記金属脂肪酸塩(C1)の金属元素としては、通常、アルカリ金属又はアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは、カルシウム、バリウム、カリウムから選ばれる少なくとも1種であることが好適である。
【0036】
アミン化合物(D)
本発明の熱硬化性塗料組成物で用いることができるアミン化合物(D)としては、少なくとも1個以上のアミノ基を含有しているアミン化合物であれば公知のものを特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N−メチルピペリジン、ピリジン、4−エチルピリジンなどの3級アミン;ジメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンなどのジアルキレントリアミン;トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミンなどのトリアルキレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン、テトラプロピルペンタミンなどのテトラアルキレンペンタミン;ペンタアルキレンヘキサミン;ヘキサアルキレンヘプタミン;モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノオクチルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−アルキルアミン又はジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N−ブチルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、モノメチルアミノエタノール、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、3−メチルアミン−1,2−プロパンジオール、3−tert−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオール、N−メチルグルカミン、N−オクチルグルカミンなどのアルカノールアミン;ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4−アミノブチル)アミンなどのアルキレンポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族又は脂環族ポリアミン;ピペラジン、1−メチルピペラジン、3−ピロリジノール、3−ピぺリジノール、4−ピロリジノールなどの複素環を有するポリアミン;上記ポリアミン1モルに対しエポキシ基含有化合物を1〜30モル付加させることによって得られるエポキシ付加ポリアミン;上記ポリアミンと芳香族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物、ハロゲン化酸無水物及び/又はダイマー酸との縮合によって生成するポリアミド樹脂の分子中に1個以上の1級又は2級アミンを含有するポリアミドポリアミン;上記ポリアミン中の1個以上の1級又は2級アミンとケトン化合物とを反応せしめたケチミン化アミン;などが挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。なかでも、硬化性の観点から、3級アミノ基を有するアミン化合物(D1)が好ましい。
【0037】
熱硬化性塗料組成物
本発明の熱硬化性塗料組成物におけるアミノ基含有樹脂(A)及びブロックイソシアネート硬化剤(B)の配合割合としては、樹脂固形分の合計質量を基準にして、成分(A)が、通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、成分(B)が、通常10〜60質量%、好ましくは15〜55質量%の範囲内であることが、仕上がり性、硬化性に優れた塗装物品を得る為にも好ましい。上記範囲を外れると、塗料特性及び塗膜性能のいずれかを損うことがあり、好ましくない。
また、金属触媒(C)及びアミン化合物(D)の含有量としては、熱硬化性塗料の樹脂固形分の合計質量を基準にして、成分(C)が、通常0.1〜4質量%、好ましくは0.2〜3質量%、成分(D)が、通常0〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲内であることが、硬化性の観点から好適である。
【0038】
熱硬化性塗料組成物のアミン価としては、硬化性の観点から、熱硬化性塗料組成物の樹脂固形分合計質量を基準として、通常5mgKOH/g以上であり、好ましくは10〜200mgKOH/gであり、さらに好ましくは15〜150mgKOH/gであり、さらに特に好ましくは20〜100mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0039】
本発明の熱硬化性塗料組成物は、特に限定されるものではないが、例えば、成分(A)〜(D)に加え、必要に応じて、顔料分散ペースト、水や有機溶剤などの溶媒、中和剤、界面活性剤、表面調整剤、増粘剤、沈降防止剤、解離触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤などの塗料用添加剤を含有することができる。
【0040】
上記顔料分散ペーストは、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などの顔料をあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤、溶媒及び顔料を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストを調製できる。
【0041】
上記顔料としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、モノアゾレッド、キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等の着色顔料;バリタ粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料などを添加することができる。
【0042】
上記溶媒としては、水や有機溶剤など、公知のものを制限なく使用することができる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0043】
また、イソシアネートブロック剤の解離触媒としては、本願で用いる金属触媒(C)以外にビスマス系化合物、亜鉛系化合物、チタン系化合物などを好適に使用することができるが、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドなどの有機錫化合物は、環境面への配慮から実質的に使用しない事が好ましい。
【0044】
塗膜形成方法
本発明で用いる塗膜形成方法としては、刷毛塗り、ローラー塗装、ディッピング塗装、バーコーダー塗装、アプリケーター塗装、カーテン塗装、スプレー塗装、回転霧化塗装、電着塗装など、公知の塗装方法を特に制限なく用いることができる。
【0045】
塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5〜60μm、好ましくは10〜40μmの範囲内とすることができる。
【0046】
また、塗膜の焼き付け乾燥は、塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で60〜300℃、好ましくは80〜200℃にて、時間としては3〜180分間、好ましくは10〜50分間、加熱して行う。上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
【0047】
本発明の被塗物としては、自動車ボディ、自動車部品、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、素材としては、金属、プラスティック、無機材料、木材、繊維材料など、特に制限はない。金属素材の場合は、例えば、必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄した後、さらに必要に応じてリン酸塩化成処理、クロメート処理等の表面処理を行ったものが用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0049】
アミノ基含有アクリル樹脂の製造
製造例1
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル31部を仕込み、窒素ガス通気下で115℃に昇温した。115℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2−ヒドロキシエチルアクリレート22部、メチルメタクリレート22部、2−エチルへキシルアクリレート22部、スチレン25部、アクリル酸1部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート8部、及び2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)4部からなる混合物を4時間かけて滴下した。ついで、115℃で窒素ガスを通気しながら2時間熟成させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈することにより、固形分60%のアミノ基含有アクリル樹脂(A−1)溶液を得た。
アミノ基含有アクリル樹脂(A−1)は、重量平均分子量14,000、水酸基価106mgKOH/g、アミン価28.5mgKOH/gであった。
【0050】
製造例2〜4
下記表1で示される以外は製造例1と同様にして、固形分60%のアミノ基含有アクリル樹脂(A−2)〜(A−3)及びアクリル樹脂(A−4)を得た。樹脂の特数値を下記表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
アクリル樹脂(A−4)は、比較例用のアクリル樹脂である。
【0053】
アミノ基含有エポキシ樹脂
製造例5 アミノ基含有エポキシ樹脂(A−5)の製造
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL 1200部、ビスフェノールA 500部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。次に、1,6−ヘキサンジオール118部及びジエタノールアミン84部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルで調整して固形分80%の水酸基含有エポキシ樹脂(A−5)溶液を得た。アミノ基含有エポキシ樹脂(A−5)の数平均分子量は2,500、アミン価は24mgKOH/g、であった。
【0054】
製造例6 アミノ基含有エポキシ樹脂(A−6)
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER1001(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量475、数平均分子量900)950部、モノメチルエタノールアミン150部、ジメチルベンジルアミン0.2gを加え、200℃でエポキシ当量が30,000以上になるまで反応させ、更にエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂(A−6)溶液を得た。アミノ基含有エポキシ樹脂(A−6)の数平均分子量は2,300、アミン価は51mgKOH/gであった。
【0055】
製造例7 変性エポキシ樹脂(A−7)
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER1001(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量475、数平均分子量900)950部、1,6−ヘキサンジオール236部、ジメチルベンジルアミン0.2gを加え、200℃でエポキシ当量が30,000以上になるまで反応させ、更にエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、固形分80%の変性エポキシ樹脂(A−7)溶液を得た。変性エポキシ樹脂(A−7)の数平均分子量は2,500、アミン価は0mgKOH/gであった。
【0056】
ブロックイソシアネート硬化剤
製造例8 ブロックイソシアネート硬化剤(B−1)
反応容器中に、コスモネートM−200(商品名、三井化学社製、クルードMDI)270部及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後、100℃に昇温し、この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、更にメチルイソブチルケトンを加えて樹脂固形分70%のブロックイソシアネート硬化剤(B−1)を得た。得られたブロックイソシアネート硬化剤(B−1)のNCO量は16.7%であった。
なお、本明細書において、NCO量は樹脂固形分100質量部に対するNCO基の量(%)を意味する

製造例9 ブロックイソシアネート硬化剤(B−2)
攪拌機、加熱装置、冷却装置、減圧装置を備えた4つ口フラスコにヘキサメチレンジイソシアネート272部及びメチルエチルケトン214部を仕込み、60℃に加熱した。次いで、メチルエチルケトオキシム169部を攪拌しながら1時間かけて徐々に添加した。その後、60℃で2時間反応させた後、トリメチロールプロパン59部を温度が70℃以上にならないように徐々に添加した。攪拌下、その反応混合物を赤外分光法によって、遊離のイソシアネート基が検出されなくなるまで60℃にて反応させた。反応終了後、固形分70%のブロックイソシアネート硬化剤(B−2)を得た。得られたブロックイソシアネート硬化剤(B−2)のNCO量は16.4%であった。
【0057】
製造例10 ブロックイソシアネート硬化剤(B−3)
攪拌機、加熱装置、冷却装置、減圧装置を備えた4つ口フラスコに、「スミジュールN3300」(住化バイエルウレタン社製、商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)250部及びメチルエチルケトン125部を仕込み、30℃に加熱した。次いで、3,5−ジメチルピラゾール126部を攪拌しながら2時間かけて徐々に添加し、攪拌下、その反応混合物を赤外分光法によって、遊離のイソシアネート基が検出されなくなるまで30℃にて反応させた。反応終了後、固形分70%のピラゾールブロックのブロックイソシアネート硬化剤(B−3)を得た。得られたピラゾールブロックのブロックイソシアネート硬化剤(B−3)のNCO量は14.4%であった。
【0058】
顔料分散ペーストの製造
製造例11 顔料分散ペースト
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL 1010部、ビスフェノールA 390部、プラクセル212(商品名、ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン 0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1,090になるまで反応させた。次に、ジメチルエタノールアミン134部及び90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%の4級アンモニウム塩型顔料分散用樹脂溶液を得た。
続いて、上記顔料分散用樹脂溶液8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー8.0部、カーボンブラック0.3部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル24.5部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分50%の顔料分散ペーストを得た。
【0059】
熱硬化性塗料の製造
実施例1 熱硬化性塗料(X−1)
製造例2で得られたアミノ基含有アクリル樹脂(A−2)溶液を80.3部(固形分48.2部)、デスモジュールBL1265/1 MPA/X(商品名、住化バイエルウレタン社製、TDIのε−カプロラクタムブロック、固形分65%、NCO量4.8%)を79.7部(固形分51.8部)、オクチル酸カリウム0.57部を配合して均一に攪拌し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加して固形分50%の熱硬化性塗料(X−1)を製造した。
【0060】
実施例2〜24及び比較例1〜4 熱硬化性塗料(X−2)〜(X−28)
下記表2で示される以外は実施例1と同様にして、固形分50%の熱硬化性塗料(X−2)〜(X−28)を製造した。
また、後述する方法で評価試験(ゲル分率)を行った。表中に評価結果を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
尚、表中の配合量は、固形分量または有効成分量の値である。
また、表中の「アミン価(塗料中)」は、塗料組成物中の樹脂固形分合計質量を基準とした数値である。
【0063】
実施例25 熱硬化性塗料(X−29)
製造例2で得られたアクリル樹脂(A−2)溶液を72部(固形分43.2部)、デスモジュールBL1265/1 MPA/X(商品名、住化バイエルウレタン社製、TDIのε−カプロラクタムブロック、固形分65%、NCO量4.8%)を79.7部(固形分51.8部)、製造例11で得られた顔料分散ペーストを55.6部(固形分27.8部、樹脂固形分5部)、オクチル酸カリウム0.57部を配合して均一に攪拌し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加して固形分50%の熱硬化性塗料(X−29)を製造した。
【0064】
実施例26〜48及び比較例5〜8 熱硬化性塗料(X−30)〜(X−56)
下記表3で示される以外は実施例25と同様にして、固形分50%の熱硬化性塗料(X−30)〜(X−56)を製造した。
また、後述する方法で評価試験〔耐水性(光沢保持率)〕を行った。表中に評価結果を示す。
【0065】
【表3】
【0066】
尚、表中の配合量は、固形分量または有効成分量の値である。
また、表中の「アミン価(塗料中)」は、塗料組成物中の樹脂固形分合計質量を基準とした数値である。
【0067】
評価試験
<ゲル分率>
ガラス板に実施例又は比較例の熱硬化塗料を硬化膜厚約30μmとなるようにアプリケーターを用いて塗装し、表1に記した温度で30分間加熱硬化させ、ガラス板から塗膜を剥離した。次に金網の中に入れた塗膜をセパレート型丸底フラスコの中に設置し、塗膜1gに対してアセトン100gを加え5時間還流した。取り出した塗膜を105℃×1時間で乾燥後、塗膜重量を測定し、以下の式によりゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=還流後の塗膜重量/還流前の塗膜重量×100
ゲル分率は高い数値であるほど硬化性が優れており、70%未満が不合格である。
【0068】
<耐水性(光沢保持率)>
「パルボンド#3020」(日本パーカライジング社製、りん酸亜鉛処理)を施した冷延鋼板(大きさ400×300×0.8mm)に、「エレクロンGT−10」(関西ペイント社製、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させ、該塗膜上に「TP−65」(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗塗料)を乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた。
次いでその上に、実施例又は比較例の熱硬化塗料を硬化塗膜約20μmとなるようにアプリケーターを用いて塗装し、表2に記した温度で30分間加熱硬化させた。
【0069】
得られた試験板を純水に浸漬させ40℃で240時間放置し、浸漬後の光沢度を測定して光沢保持率を算出した。
光沢保持率は、その表面(試験面)をJIS Z 8741−1997に基づく方法で、鏡面光沢度を入射角60度で測定した値に基づいて、光沢保持率を以下の式により算出したものである。
光沢保持率(%)=(耐水試験後の光沢度/初期光沢度)×100
尚、以下の基準で評価を行なった。S〜Bが合格、Cが不合格である。
S:光沢保持率が90%以上であり、非常に優れている。
A:光沢保持率が80%以上且つ90%未満であり、優れている。
B:光沢保持率が70%以上且つ80%未満であり、普通である。
C:光沢保持率が70%未満であり、劣っている。