(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均粒子径A[μm]の熱ラジカル重合開始剤(a)、平均粒子径B[μm]のフィラー(b)及び硬化性化合物(c)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、A[μm]及びB[μm]が、下記式(I)及び(II)で表される条件を満たし、かつ硬化性化合物(c)中に熱ラジカル重合開始剤(a)とフィラー(b)を分散する前に、熱ラジカル重合開始剤(a)とフィラー(b)を複合化する工程を有する樹脂組成物の製造方法。
0.5μm≦A≦3μm・・・(I)
0.005×A≦B≦0.3×A・・・(II)
樹脂組成物の総量を100質量部としたときの(b)の含有量が0.00005質量部以上20質量部未満である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、平均粒子径の異なる熱ラジカル重合開始剤(a)とフィラー(b)を用い、硬化性化合物(c)中に分散する前に、熱ラジカル重合開始剤(a)とフィラー(b)を複合化する工程を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法である。
熱硬化剤、硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、フィラー等を含有する樹脂組成物を製造する場合、例えばエポキシ樹脂のような硬化性化合物中に、熱ラジカル重合開始剤、フィラー等をそれぞれ添加し、攪拌混合し、その後2本ロール等の混練器によって分散する方法が一般的である。しかし、この方法では、熱ラジカル重合開始剤とフィラーがそれぞれ独立して、硬化性化合物中に分散され、相互に作用することはない。
本発明は、平均粒子径の大きい熱ラジカル重合開始剤(a)と平均粒子径の小さいフィラー(b)を事前に複合化し、これを硬化性化合物(c)中に分散することによって、最終的に保存安定性樹脂組成物の製造を可能にするものである。
複合化とは、微粒子(子粒子)をそれより大きなサイズの粒子(母粒子)上に分散、固定化することを言い、上記特許文献2に記載のようにホソカワミクロン製ノビルタを使用することにより実現することができる。
本発明では熱ラジカル重合開始剤の表面にフィラーを複合化しているため、室温では樹脂と熱ラジカル重合開始剤が接触することなく、熱ラジカル重合開始剤が融点に達したときに複合化が壊れ、樹脂と熱硬ラジカル剤が接触する。そのため、融点以下での保存安定性は良好であり、硬化温度では従来通りの反応性を示す。
【0010】
平均粒子径A[μm]の熱ラジカル重合開始剤(a)、平均粒子径B[μm]のフィラー(b)及び硬化性化合物(d)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、A[μm]及びB[μm]が、下記式(I)及び(II)で表される条件を満たし、かつ硬化性化合物(c)中に熱ラジカル重合開始剤(a)とフィラー(b)を分散する前に、熱ラジカル重合開始剤(a)とフィラー(b)を複合化する工程を有する樹脂組成物の製造方法。
0.5μm ≦ A ≦ 3μm ・・・ (I)
0.005×A ≦ B ≦ 0.3×A ・・・ (II)
[数式(I)に関して]
数式(I)は、平均粒子径の大きい熱ラジカル重合開始剤(a)の平均粒子径を規定している。すなわち、熱硬ラジカル剤(a)の平均粒子径は、0.5μm以上3μm以下である。平均粒子径が小さいと、保存安定性が悪くなる傾向がある。従って、0.5μm未満である場合、本発明の効果が十分に得られない場合がある。また、平均粒子径が大きすぎると、液晶表示セルのギャップより大きくなりギャップ不良を起こす可能性がある。平均粒子径の更に好ましい範囲は、1μm以上3μm以下であり、特に好ましくは、1μm以上2μm以下である。
[数式(II)に関して]
数式(II)は、熱ラジカル重合開始剤(a)とフィラー(b)の平均粒子径の関係を示したものである。すなわち、フィラー(b)の平均粒子径は、熱ラジカル重合開始剤(a)の平均粒子径の1000分の5以上1000分の300以下である。フィラー(b)の平均粒子径がこの範囲である場合には、フィラー(b)の粒子は熱ラジカル重合開始剤(a)の粒子との静電引力が強まり、熱ラジカル重合開始剤(a)の表面に引き寄せられ、熱ラジカル重合開始剤(a)と硬化性化合物(c)の間に効率よく入り込む。フィラー(b)の平均粒子径は、更に好ましくは、1000分の5以上1000分の200以下であり、特に好ましくは、1000分の8以上1000分の100以下である。
【0011】
本明細書において平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定することができる。また、市販品であれば、各社カタログにも明記されている。
【0012】
本願発明の製造方法で得られる樹脂組成物は、熱ラジカル重合開始剤(a)を含有しても良い。この熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメック
RTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックス
RTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステル
RTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチル
RTMB、パーカドックス16、カヤカルボン
RTMBIC−75、AIC−75(以上、化薬アクゾ株式会社製)、パーメック
RTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサ
RTMH、HC、パTMH、C、V、22、MC、パーキュアー
RTMAH、AL、HB、パーブチル
RTMH、C、ND、L、パークミル
RTMH、D、パーロイル
RTMIB、IPP、パーオクタ
RTMND、(以上、日油株式会社製)等などが市販品として入手可能である。また、アゾ化合物としては、VA−044、V−70、VPE−0201、VSP−1001等(以上、和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。なお、本明細書中、上付きのRTMは登録商標を意味する。
ベンゾピナコール系の熱ラジカル重合開始剤(ベンゾピナコールを化学的に修飾したものを含む)としては、ベンゾピナコール、1, 2−ジメトキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ジエトキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ジフェノキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ジメトキシ−1,1, 2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1, 2−ジフェノキシ−1,1, 2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン等、が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタンであり、さらに好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタンであり、特に好ましくは1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタンである。
上記ベンゾピナコールは東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社等から市販されている。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をエーテル化することは、周知の方法によって容易に合成可能である。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をシリルエーテル化することは、対応するベンゾピナコールと各種シリル化剤をピリジン等の塩基性触媒下で加熱させる方法により合成して得ることができる。シリル化剤としては、一般に知られているトリメチルシリル化剤であるトリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)やトリエチルシリル化剤としてトリエチルクロロシラン(TECS)、t−ブチルジメチルシリル化剤としてt−ブチルメチルシラン(TBMS)等が挙げられる。これらの試薬はシリコン誘導体メーカー等の市場から容易に入手することが出来る。シリル化剤の反応量としては対象化合物の水酸基1モルに対して1.0〜5.0倍モルが好ましい。さらに好ましくは1.5〜3.0倍モルである。1.0倍モルより少ないと反応効率が悪く、反応時間が長くなるため熱分解を促進してしまう。5.0倍モルより多いと回収の際に分離が悪くなったり、精製が困難になったりしてしまう。
【0013】
熱ラジカル重合開始剤(a)は粒径を細かくし、均一に分散することが好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶表示セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせる際のギャップ形成が上手くできない等の不良要因となるため、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。また、際限なく細かくしても差し支えないが、通常下限は0.1μm程度である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
【0014】
熱ラジカル重合開始剤(a)の含有量としては、本発明で使用される樹脂組成物の総量を100質量部とした場合、0.0001〜10質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005〜5質量部であり、0.001〜3質量部が特に好ましい。
【0015】
本願発明の製造方法に用いられるフィラー(b)は、有機フィラー及び/又は無機フィラーを意味する。
有機フィラーとしては、例えばナイロン6、ナイロン12、ナイロン66等のポリアミド微粒子、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等のフッ素系微粒子、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系微粒子、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系微粒子、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム等のゴム微粒子等が挙げられる。このうち好ましいものはゴム微粒子であって、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、二トリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム( EPM、EP)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、ウレタンゴム(PUR)、シリコーンゴム(SI、SR)、フッ素ゴム(FKM、FPM)、多硫化ゴム(チオコール)などが挙げられる。これら固形成分(I)は2種以上を混合して用いても良い。これらのうち、好ましくは、シリコーンゴム、スチレンゴム、スチレンオレフィンゴム、アクリルゴムである。
【0016】
また、上記アクリルゴムを使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、特に好ましくはコア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが好ましい。これはゼフィアック
RTMF−351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
【0017】
上記無機フィラーの例としては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。
ただし、平均粒子径は上記数式(II)を満たすもの、又は、解砕工程を経て、上記数式(II)を満たすものとしたものに限られる。また、無機フィラーは様々の方法によって表面処理をされたものでも良いが、未処理のものが好ましい。
このフィラー(b)としては、シリカ又はアルミナが好ましく、特に好ましくはフュームドシリカ、フュームドアルミナである。
フィラー(b)の樹脂組成物中の含有量としては、本願発明の樹脂組成物の総量を100質量部とした場合に、1〜20質量部である場合が好ましく、2〜15質量部である場合がより好ましく、3〜10質量部である場合が更に好ましい。
なお、本願発明では、上記数式(II)を満たす有機フィラー又は無機フィラーが存在すればその効果を奏する為、その他に数式(II)を満たさない有機フィラー又は無機フィラーを添加しても良い。
【0018】
本願発明の製造方法で得られる樹脂組成物は、硬化性化合物(c)を含有する。
この硬化性化合物(c)は、光又は熱によって重合反応するものであれば特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物である場合が特に好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、例えば(メタ)アクリルエステル、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリルエステルとしては、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、フロログリシノールトリアクリレート等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、レゾルシン骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、例えばレゾルシンジグリシジルエーテル等である。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性及び液晶汚染性の観点から適切に選択される。
したがって、好ましい(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有し、さらにレゾルシン骨格を有する硬化性化合物であり、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルのアクリル酸エステルやレゾルシンジグリシジルエーテルのメタクリル酸エステルである。
また、硬化性化合物(c)の樹脂組成物中に占める含有率としては、樹脂組成物の総量を100質量部とした場合に、30〜90質量部の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは40〜80質量部程度である。
【0019】
上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物中には、一分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物を含有する場合が好ましい。一分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物は、架橋速度(反応速度)が速いため、優れた差込耐性を実現できる。なお、この方法を用いた場合、熱ラジカル重合開始剤等の量を増やして、反応性を向上させる方法とは異なり、ハンドリング性にも優れる。
一分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物としては、KAYARAD
RTMPET−30、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DPEA−12、GPO−303、TMPTA、THE-330、TPA−320、TPA−330、D−310,D−330、RP−1040、UX−5000、DPHA−40H(以上、日本化薬株式会社製)、NKエステル
RTMA−9300、A−9300−1CL、A−GLY−9E、A−GLY−20E、A−TMM−3、A−TMM−3LM−N、A−TMPT、AD−TMP、ATM−35E、A−TMMT、A−9550、A−DPH(以上、新中村化学工業株式会社)、SR295、SR350、SR355、SR399、SR494、CD501、SR502、CD9021、SR9035、SR9041(以上、サートマー社製)等を挙げることができる。これらのうち、モル平均分子量が800以上である場合が好ましく、例えばKAYARAD
RTMDPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPEA−12が好ましい。また、分子内にC1−C4アルキレンオキサイド(−O−R−O−)を含有する硬化性化合物である場合が好ましく、KAYARAD
RTMDPEA−12が特に好ましい。
【0020】
本願発明の製造方法で得られる樹脂組成物は、熱硬化剤(d)を含有しても良い。
本願発明の熱硬化剤(d)は特に限定されるものではなく、多価アミン類、多価フェノール類、ヒドラジド化合物等を挙げることができるが、有機酸ヒドラジドが特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるサリチル酸ヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、1−ナフトエ酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。この熱硬化剤は、単独で用いても2種以上混合しても良い。硬化反応性と潜在性とのバランスから好ましくは、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくは1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインである。かかる熱硬化剤を使用する場合の含有量としては、樹脂組成物の総量を100質量部とした場合に、1〜30質量部程度である。
【0021】
本願発明の製造方法で得られる樹脂組成物は、シランカップリング剤(e)を用いて、接着強度向上や耐湿信頼性向上を図ることができる。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されているため、市場から容易に入手可能である。シランカップリング剤の樹脂組成物に占める含有量は、本発明で使用される樹脂組成物の全体を100質量部とした場合、0.05〜3質量部が好適である。
【0022】
本願発明の製造方法で得られる樹脂組成物は、エポキシ樹脂(f)を添加して、更なる接着強度の向上を図ることができる。用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点より好ましいのはビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂である。エポキシ基を有する硬化性樹脂の樹脂組成物中に占める含有量は、樹脂組成物の総量を100質量部とした場合に、1〜30質量部程度である。
【0023】
本発明の製造方法で得られる樹脂組成物は上記成分及び必要な場合に含有される成分以外にも、例えば光重合開始剤、ラジカル重合防止剤、硬化促進剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などを含有するものであってもよい。
【0024】
上記硬化促進剤は特に限定されるものではなく、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2 ,4−ジアミノ−6(2 ’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4− ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1 ’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化促進剤を使用する場合には、樹脂組成物の総量を100質量部とした場合に、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0025】
上記光重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURE
RTM 651、184、2959、127、907、396、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURE
RTM1173、LUCIRIN
RTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオール
RTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用する事が好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
光重合開始剤を用いる場合の樹脂組成物総量中の含有率は、通常0.001〜3質量%、好ましくは0.002〜2質量%である。
【0026】
上記ラジカル重合防止剤としては、光重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤は、成分(c)を合成する際に添加する方法や、樹脂組成物の製造時において成分(c)に溶解させる方法があるが、より有効な効果を得る為には樹脂組成物の製造時において成分(c)に溶解させるほうが好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明の樹脂組成物総量中、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
【0027】
本発明の製造方法によって得られる樹脂組成物は、電子部品用、特に狭ギャップが要求される電子部品用とし、好適に用いられる。狭ギャップが要求される電子部品としては、例えば液晶表示セルを挙げることができる。
液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の樹脂組成物でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明で得られる樹脂組成物に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて、80〜120℃で仮硬化を行う。その後、該樹脂組成物の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、必要に応じて1000mJ/cm
2〜6000mJ/cm
2の紫外線を照射し、その後90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の樹脂組成物100質量%に対し通常0.1〜4質量%、好ましくは0.5〜2質量%、更に、好ましくは0.9〜1.5質量%程度である。
【0028】
本発明の樹脂組成物の製造方法は例えば次のような方法が挙げられる。まず、成分(c)(複数の場合は熱混合を行い、冷却する)に必要に応じ、成分(f)を溶解する。次いで事前に複合化した成分(a)、(b)、また必要に応じて、成分(d)、(e)、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば2本ロール、3本ロール等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過する。
【0029】
本発明の製造方法によって得られる樹脂組成物は、保存安定性が良好な為、ディスペンスやスクリーン印刷といった塗布作業性に優れ、安定した液晶表示セルの作成が可能である。また、構成成分の液晶への溶出も極めて少なく、液晶表示セルの表示不良を低減することが可能である。従って、本発明の樹脂組成物を用いることにより、信頼性に優れる液晶表示セルを作成することが可能である。また、本発明の樹脂組成物を用いて作成した液晶表示セルは、電圧保持率が高く、イオン密度が低いという液晶表示セルとして必要な特性も充足される。
【0030】
本発明の製造方法によって得られる樹脂組成物は、液晶の差し込みへの耐性が高い為、熱のみによる液晶滴下工法への適用も可能であり、生産タクト等の観点から、より好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実験例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0032】
[合成例1]
[レゾルシンジグリシジルエーテルのエポキシアクリレートの合成]
レゾルシンジグリシジルエーテル181.2g(ナガセケムテックス株式会社製)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするレゾルシンジグリシジルエーテルのエポキシアクリレート293gを得た。
【0033】
[製造例1]
[複合化微粒子の製造]
ノビルタNOB−130(ホソカワミクロン株式会社製)にV−70(和光純薬工業株式会社製、2,2’-アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジェットミルで平均粒径1.8μmに微粉砕したもの)100.0gとアエロジルOX−50(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径80nm)20.0gを投入し、ロータ回転数6000rpmで120分間運転することにより、目的とする複合化微粒子117.2gを得た。複合化されていることは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により、OX−50由来の1μm以下の微小ピークが消失したことにより確認した。
【0034】
[実施例1、比較例1〜4]
下記表1に示す割合で硬化性化合物(c)、エポキシ樹脂(f)、光重合開始剤、を90℃で加熱溶解させた後、室温まで冷却し、熱ラジカル重合開始剤(a)、フィラー(b)、シランカップリング剤(e)、熱硬化剤(d)、硬化促進剤を添加し、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、樹脂組成物実施例1、比較例1〜3を調製した。
なお、実施例1は製造例1に記載の複合化微粒子を使用した。
また比較例1は、事前の複合化をせず、表1に記載したとおりの配合を行った。
【0035】
評価試験は下記の方法で実施した。
【0036】
(保存安定性評価)
得られた樹脂組成物15gに5μmのスペーサPF−50S(日本電気硝子株式会社製)0.15gを混ぜた後、自転500rpm、公転1500rpmで5分間真空撹拌脱泡した。真空撹拌脱泡装置としては、真空撹拌脱泡ミキサーVMX−360K(株式会社EME製)を用いた。これを25℃における粘度変化を測定した。25℃50RH%の条件下で72時間放置した後の粘度測定を行い、初期粘度に対する粘度増加率を表1に示す。粘度はE型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
【0037】
(評価用液晶セルの作成)
透明電極付き基板に配向膜液(PIA−5540−05A;チッソ株式会社製)を塗布、焼成し、ラビング処理を施した。この基板に得られた樹脂組成物を貼り合せ後の線幅が1mmとなるようにメインシールおよびダミーシールをディスペンスし、次いで液晶(JC−5015LA;チッソ株式会社製)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。更にもう一枚のラビング処理済み基板に面内スペーサ(ナトコスペーサKSEB−525F;ナトコ株式会社製;貼り合せ後のギャップ幅5μm)を散布、熱固着し、貼り合せ装置を用いて真空中で先の液晶滴下済み基板と貼り合せた。大気開放してギャップ形成した後、シールパターン枠内のみマスクをしてUV照射機により50mJ/cm
2の紫外線を照射後、オーブンに投入して120℃1時間熱硬化させ評価用液晶テストセルを作成した。
【0038】
作成した評価用液晶セルのシールの耐差込み性およびシール近傍の液晶配向乱れを偏光顕微鏡にて観察し、シール近傍の液晶配向について以下に示す基準に従って評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
[シール近傍の液晶配向の評価]
◎:液晶の配向乱れがシールから0.2mm未満である。
○:液晶の配向乱れがシールから0.2mm以上0.4mm未満である。
△:液晶の配向乱れがシールから0.4mm以上0.6mm未満である。
×:液晶の配向乱れがシールから0.6mm以上である。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果より、粒子を複合化していない比較例1は、保存安定性に劣る結果を示した。また、フィラー(b)を含有しない比較例2、3は保存安定性に不具合を生じており、比較例4は保存安定性は良いものの液晶汚染性に不具合を生じている。これに対し、本願発明に係る実施例1については、安定な保存安定性を実現しながら、液晶汚染性も優れていることが確認される。この結果より、本願発明の樹脂組成物は、保存安定性に優れ、低液晶汚染性も良好であることから液晶表示セルの高信頼性を実現できることが言える。