特許第6366071号(P6366071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366071
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20180723BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20180723BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180723BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H05K5/06 A
   H05K7/14 E
   B60R16/02 610B
   H02G3/16
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-240926(P2015-240926)
(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2017-108000(P2017-108000A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】安田 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】南出 守
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−074064(JP,A)
【文献】 特開2014−197620(JP,A)
【文献】 特開2014−045213(JP,A)
【文献】 特開2013−115270(JP,A)
【文献】 特開2003−258443(JP,A)
【文献】 特開2013−041863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
H05K 7/14
B60R 16/02
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装され、電気回路が形成された回路基板と、
前記回路基板の一端部に実装されたコネクタと、
前記回路基板を収容し、前記コネクタ側に開口部を有するケースと、
前記コネクタの嵌合部が前記回路基板と反対側へ露出するように前記コネクタと一体化され、前記開口部を塞ぐように前記ケースに係合されるカバーと、
前記開口部を封止するシール材と、を備えた電子装置において、
前記カバーは、前記コネクタの前記嵌合部と反対側に、前記ケースの前記開口部側の端部を受けるトレー状の受部を有し、
前記受部の内周面は、前記ケースの前記開口部側の端部の外周面と距離を隔てて、当該外周面よりも外側に位置し、
前記受部の前記内周面と前記ケースの前記外周面との間に形成される空間が、前記シール材を充填するための充填口を構成し
前記開口部と前記受部は、長方形に形成されており、
前記ケースと前記カバーは、前記長方形の短辺側において係合しており、
前記ケースと前記カバーが係合した状態で、前記長方形の一方の長辺側に形成される充填口は、他方の長辺側に形成される充填口より広い幅を有している、ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記カバーの前記受部に、前記コネクタの端子が貫通する端子孔が設けられ、
前記充填口から充填された前記シール材によって、前記カバーと前記ケースとの間隙、および前記端子と前記端子孔との間隙がそれぞれ封止されている、ことを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子装置において、
前記シール材は、前記充填口から前記受部内に充填されており、
前記シール材によって前記カバーと前記ケースと前記コネクタのうち、少なくとも2つの間に存在する間隙または少なくとも1つに存在する間隙が封止されている、ことを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子装置において、
前記カバーと前記コネクタのハウジング部は、同一部材から構成されている、ことを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の電子装置において、
前記カバーは、前記受部が上向きで前記コネクタの嵌合部が下向きになるように配置され、
前記ケースは、前記開口部が下向きになるように前記カバーの上側に配置され、
前記回路基板は、両板面が上下方向に対して側方を向くように前記ケース内に収容されている、ことを特徴とする電子装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の電子装置において、
前記ケースの内面に、前記ケースの前記開口部から内奥へ向かって延びるリブが設けられている、ことを特徴とする電子装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の電子装置において、
前記ケースの前記開口部側の前記端部に鍔部が設けられ、
前記鍔部の外周の長さは、前記受部の内周の長さより小さく、
前記シール材は、前記鍔部より上方の位置まで充填されている、ことを特徴とする電子装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の電子装置において、
前記ケースの前記開口部側の前記端部の外周面に、前記ケースの外周方向に連続する溝部が設けられ、
前記シール材は、前記溝部より上方の位置まで充填されている、ことを特徴とする電子装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の電子装置において、
前記ケースの前記開口部側の前記端部に、
少なくとも4つの角近傍にあって前記受部の底に着地する複数の脚部と、
隣り合う前記脚部の間にあって前記脚部より前記受部の底と反対側へ窪んだ複数の凹部と、が設けられている、ことを特徴とする電子装置。
【請求項10】
請求項に記載の電子装置において
記凹部は、前記開口部の長辺方向へ広がるように形成された第1凹部と、前記開口部の短辺方向へ広がるように形成された第2凹部と、から成り、
前記第1凹部の前記長辺方向の幅は、前記第2凹部の前記短辺方向の幅より広く、
前記第1凹部の深さは、前記第2凹部の深さより深い、ことを特徴とする電子装置。
【請求項11】
請求項または請求項10に記載の電子装置において、
前記凹部の底は、前記受部の底側へ突出するようにV字形に形成されている、ことを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の一端部に実装したコネクタの嵌合部が露出するように、回路基板をケース内に収容した電子装置の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1および特許文献2のように、車載機器を制御するための電子装置には、電子部品が実装され電気回路が形成された回路基板が備わっている。回路基板の一端部には、外部装置と接続するためのコネクタが実装されている。コネクタの嵌合部が露出するように、回路基板は袋状のケースの開口部から内部に収容される。
【0003】
ケース内の回路基板の防水のため、特許文献1では、ケースの開口部から内部に回路基板を挿入した後、開口部が斜め上方を向くように、ケースを傾けて、開口部におけるケースとコネクタの間から、樹脂から成るシール材をケース内に充填する。そして、シール材を硬化させて、ケース内の回路基板をシール材により封止する。
【0004】
特許文献2の第2図では、コネクタをカバー(コネクタ保持部材)と一体化した後、コネクタの端子を回路基板の一端部にはんだ付けする。次に、コネクタの嵌合部と反対側にあるカバーの内部に、ポリウレタン樹脂から成るシール材(充填材)を充填して、該シール材を硬化させ、コネクタの端子が貫通するカバーの孔などを封止する。そして、回路基板をケースの開口部から内部に収容して、カバーとコネクタとで開口部を閉塞する。ケースの内周面には、予めシール材を塗布しておき、該シール材でケースの内周面とカバーの外周面との間隙を封止する。
【0005】
また、特許文献2の第4図では、コネクタをカバーと一体化した後、コネクタの端子を回路基板の一端部にはんだ付けする。また、開口部を上向きにして、ケース内にシール材を適量注入する。次に、回路基板をケースの開口部から内部に収容して、カバーとコネクタとで開口部を閉塞する。そして、コネクタおよびカバーが下方に来るように、ケースを回転させて、シール材をカバー内やケースとカバーとコネクタの間隙に流入させ、該シール材を硬化させて、開口部を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4881894号公報
【特許文献2】特開2014−45213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、ケース内のほぼ全体にシール材を充填すると、シール材中に回路基板が埋まるが、シール材の使用量が多くなり、電子装置の重量が重くなる。また、特許文献1や特許文献2の第4図のように、シール材の注入前や注入後にケースを傾けたり回転させたりする場合は、製造工程数が増える。また、特許文献2の第2図のように、ケースとカバーの間隙と、カバーとコネクタの間隙とを、別々の工程で異なるシール材により封止する場合も、製造工程数が増える。さらに、特許文献2の第4図のように、ケース内にシール材を注入した後、ケースを回転させて、シール材を硬化させる場合は、シール材の漏出を防ぐため、ケースとカバーとの間に間隙が生じないように、ケースとカバーの寸法を厳しく管理しなければならない。
【0008】
本発明の課題は、軽量で製造し易く、ケース内に収容した回路基板を防水することができる電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電子装置は、電子部品が実装され電気回路が形成された回路基板と、回路基板の一端部に実装されたコネクタと、回路基板を収容し、コネクタ側に開口部を有するケースと、コネクタの嵌合部が回路基板と反対側へ露出するようにコネクタと一体化され、開口部を塞ぐようにケースに係合されるカバーと、開口部を封止するシール材とを備える。そして、カバーは、コネクタの嵌合部と反対側に、ケースの開口部側の端部を受けるトレー状の受部を有し、受部の内周面は、ケースの開口部側の端部の外周面と距離を隔てて、当該外周面よりも外側に位置し、受部の内周面とケースの開口部側の端部の外周面との間に形成される空間が、シール材を充填するための充填口を構成している。開口部と受部は、長方形に形成されており、ケースとカバーは、長方形の短辺側において係合している。ケースとカバーが係合した状態で、長方形の一方の長辺側に形成される充填口は、他方の長辺側に形成される充填口より広い幅を有している。
【0010】
上記によると、回路基板をケースの開口部から内部に収容した後、カバーをケースに係合して、ケースの開口部側の端部をカバーの受部で受けて、一体化されたカバーとコネクタによりケースの開口部を塞ぐことができる。そして、カバーの受部の内周面とケースの開口部側の端部の外周面との間に形成された充填口からシール材を充填することで、ケースの開口部が封止され、ケース内に収容した回路基板を防水することができる。また、シール材の充填前後にケースやカバーを傾斜させたり回転させたりする必要はなく、係合したケースとカバーを受部が上向きになるように配置して、充填口からシール材を充填する工程を1回行うことで、ケースの開口部を封止することができる。このため、製造工程数を減少させて、電子装置を製造し易くすることが可能となる。さらに、ケース内全体ではなく、カバーの受部内にシール材を適量充填すればよいので、シール材の使用量を減少させて、電子装置を軽量化することができる。
【0011】
本発明では、上記電子装置において、シール材は、充填口から受部内に充填されており、このシール材によってカバーとケースとコネクタのうち、少なくとも2つの間に存在する間隙または少なくとも1つに存在する間隙が封止されていてもよい。
【0012】
また、本発明では、上記電子装置において、カバーとコネクタのハウジング部は、同一部材から構成されてもよい。
【0013】
また、本発明では、上記電子装置において、カバーは、受部が上向きでコネクタの嵌合部が下向きになるように配置され、ケースは、開口部が下向きになるようにカバーの上側に配置され、回路基板は、両板面が上下方向に対して側方を向くようにケース内に収容されてもよい。
【0014】
また、本発明では、上記電子装置において、ケースの内面に、ケースの開口部から内奥へ向かって延びるリブが設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明では、上記電子装置において、ケースの開口部側の端部に鍔部が設けられ、鍔部の外周の長さは、受部の内周の長さより小さく、シール材は、鍔部より上方の位置まで充填されてもよい。
【0016】
また、本発明では、上記電子装置において、ケースの開口部側の端部の外周面に、ケースの外周方向に広がる溝部が設けられ、シール材は、溝部より上方の位置まで充填されてもよい。
【0017】
また、本発明では、上記電子装置において、ケースの開口部側の端部に、少なくとも4つの角近傍にあって受部の底に着地する複数の脚部と、隣り合う脚部の間にあって脚部より受部の底と反対側へ窪んだ複数の凹部とが設けられていてもよい。
【0018】
また、本発明では、上記電子装置において、前記凹部は、開口部の長辺方向へ広がるように形成された第1凹部と、開口部の短辺方向へ広がるように形成された第2凹部とから成り、第1凹部の前記長辺方向の幅は、第2凹部の前記短辺方向の幅より広く、第1凹部の深さは、第2凹部の深さより深くてもよい。
【0019】
さらに、本発明では、上記電子装置において、凹部の底は、受部の底側へ突出するようにV字形に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軽量で製造し易く、ケース内に収容した回路基板を防水することができる電子装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態による電子装置の正面図である。
図2図1の電子装置の側面図である。
図3図1の電子装置の一部を示した斜視図である。
図4図1のケースの斜視図である。
図5図2のA−A断面図である。
図6図1のB−B断面図である。
図7図1のC−C断面図である。
図8図7のD部の拡大図である。
図9図7のD部のシール材充填前の拡大図である。
図10】ケース内のリブの部分を拡大して示した斜視断面図である。
図11】他の実施形態による電子装置の断面図である。
図12】他の実施形態による電子装置の断面図である。
図13】他の実施形態による電子装置の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0023】
まず、本実施形態の電子装置100の構造を、図1図10を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、電子装置100の正面図である。図2は、電子装置100の側面図である。図3は、図1の電子装置100の一部を示した斜視図である。図4は、図1のケースの斜視図である。図5は、図2のA−A断面図である。図6は、図1のB−B断面図である。図7は、図1のC−C断面図である。図8は、図7のD部の拡大図である。図9は、図7のD部のシール材充填前の拡大図である。図10は、ケース内のリブの部分を拡大して示した斜視断面図である。
【0025】
電子装置100は、たとえば車両に搭載され、他の車載機器(図示省略)を制御するためのECU(電子制御装置)から成る。電子装置100には、図1図7などに示すように、ケース1、カバー2、コネクタ20、回路基板3、およびシール材4が備わっている。
【0026】
図3に示すように、回路基板3は、たとえばプリント基板から成り、ほぼ矩形状に形成されている。回路基板3には、コネクタ20などの電子部品が実装され、電気回路が形成されている。なお、回路基板3上のコネクタ20以外の電子部品と電気回路は、図示を省略している。
【0027】
コネクタ20は、外部にある車載機器と回路基板3とを電気的に接続するためのものである。コネクタ20の端子22は、回路基板3の一端部3aにはんだ付けされている。
【0028】
図4に示すように、ケース1は、合成樹脂製で、略直方体の箱状に形成されていて、単一の開口部1kを有している。回路基板3は、コネクタ20と反対側の端部3b(図3)より、ケース1の開口部1kから内部に収容される(図7)。その収容状態において、ケース1の開口部1kは、回路基板3上のコネクタ20側に位置する。また、コネクタ20の嵌合部21は、ケース1の開口部1kより外部へ突出する。
【0029】
図7に示すように、ケース1の内奥には、回路基板3の端部3bを一方の板面側から支持する支持突起1aが形成されている。また、回路基板3の他の端部3c、3d(図3)と対向するケース1の内側面には、端部3c、3dを両板面側から支持する支持溝1bが形成されている(図7図9)。これらの他にもケース1内には、収容した回路基板3のガタつきを防止する構造が設けられている(図示省略)。
【0030】
カバー2と、コネクタ20のハウジング部23とは、同一の合成樹脂製部材から構成されている。図3および図7に示すように、回路基板3にコネクタ20を実装した状態で、コネクタ20の嵌合部21が回路基板3と反対側へ露出するように、カバー2とコネクタ20とは一体化されている。言い換えると、カバー2の一部がコネクタ20の構成要素になっている。コネクタ20の端子22は、カバー2に設けられた端子孔2h(図3)を貫通して、ハウジング部23に保持されている。
【0031】
カバー2は、図1図2、および図5図7に示すように、コネクタ20と共に開口部1kを塞ぐようにケース1に係合される。
【0032】
図1図4、および図5に示すように、ケース1の1対の外側面には、係合突起1cが設けられている。図1図3、および図5に示すように、カバー2の両端部には、嵌合部21と反対側に突出する1対のアーム部2aが設けられている。各アーム部2aには、係合孔2bが設けられている。
【0033】
回路基板3をケース1内に収容して、ケース1の係合突起1cをカバー2の係合孔2bに嵌入させることで、ケース1とカバー2が係合され、カバー2とコネクタ20によりケース1の開口部1kが閉塞される(図1図2、および図5図7)。
【0034】
図3に示すように、カバー2は、嵌合部21と反対側に、側壁2dと底2eとからなるトレー状の受部30を有している。側壁2dは、底2eの周囲に設けられている。受部30の側壁2dの内周の長さは、ケース1の開口部1k側の端部1dの外周の長さより大きくなっている。すなわち、図5図7に示すように、受部30の側壁2dの内周面は、ケース1の端部1dの外周面と距離を隔てて、当該外周面よりも外側に位置している。また、受部30の側壁2dの上端は、ケース1の端部1dに設けられた溝部1g、1h、1j(後述)よりも上方に位置している。
【0035】
図7に示すように、コネクタ20の端子22の一端部は、カバー2の受部30からケース1内へ突出し、端子22の他端部は、嵌合部21内に突出している。嵌合部21には、外部の車載機器に接続されたハーネスのコネクタが嵌合される(図示省略)。
【0036】
図5および図6に示すように、ケース1とカバー2を係合した状態で、受部30はケース1の端部1dを受け止める。詳しくは、図4に示すように、ケース1の端部1dにおいて、少なくとも4つの角近傍には、脚部1eが設けられている。この複数(4つ)の脚部1eが、図5および図6に示すように、受部30の平坦な底2eに着地することで、ケース1の端部1dがカバー2の受部30で受け止められる。
【0037】
カバー2の受部30内には、図3に示すように、回路基板3側に突出する1対の凸部2tが設けられている。各凸部2tには、ねじ孔2sが設けられている。回路基板3のコネクタ20側の2つの角部を、各凸部2tに当接させて、図示しないねじを凸部2tと反対側から回路基板3を貫通させた後、各ねじ孔2sに螺合することで、回路基板3とカバー2とが固定される。
【0038】
図5図7などに示すシール材4は、たとえばポリウレタン樹脂から成る。シール材4は、ケース1内の回路基板3を防水するため、ケース1とカバー2との間の間隙と、コネクタ20の端子22と端子孔2hとの間の間隙にそれぞれ充填され、ケース1の開口部1kを封止する。
【0039】
図5図9などに示すように、カバー2の受部30(側壁2d)の内周面とケース1の端部1dの外周面との間に形成される空間は、シール材4を充填するための充填口5を構成している。シール材4は、この充填口5から受部30内に充填される。
【0040】
図4に示すように、ケース1の開口部1k側の端部1dには、開口部1kの周縁に沿って、鍔部1fが設けられている。鍔部1fの外周の長さは、受部30(側壁2d)の内周の長さより小さくなっている。図5図7に示すように、シール材4は、充填口5から、鍔部1fより上方の位置まで充填される。受部30の内周面とケース1の端部1dの外周面には、シール材4のフィレット4fが形成される(図5図8)。
【0041】
また、図4図6に示すように、ケース1の開口部1k側の端部1dには、上述した複数の脚部1eと、複数の凹部1g、1h、1jとが設けられている。各凹部1g、1h、1jは、隣り合う脚部1eの間にあって、脚部1eより受部30の底2eと反対側へ窪んでいる。
【0042】
ケース1の開口部1kは、図4に示すように長方形に形成されている。凹部1g、1hは、開口部1kの長辺方向へ広がるように形成され、凹部1jは、開口部1kの短辺方向へ広がるように形成されている。凹部1hは、凹部1gの両側に連続するように形成されている。凹部1g、1hは、本発明の「第1凹部」の一例であり、凹部1jは、本発明の「第2凹部」の一例である。
【0043】
凹部1gの幅(開口部1kの長辺方向の幅)は、凹部1jの幅(開口部1kの短辺方向の幅)より広くなっている。したがって、連続する凹部1g、1hの合計幅は、凹部1jの幅より広くなっている。また、凹部1gの深さは、凹部1jの深さより深くなっている。凹部1hの深さは、凹部1jの深さと同等になっている。
【0044】
充填口5から充填されたシール材4は、ケース1の各凹部1g、1h、1jを通って、ケース1内の開口部1k近傍に流入する(図7図8)。ケース1の開口部1k近傍の内面には、シール材4のフィレット4fが形成される。
【0045】
図4および図10に示すように、ケース1の内面には、ケース1の開口部1kから内奥へ向かって延びるように、リブ1Lが設けられている。リブ1Lは、ケース1の内面に内周方向へ所定の間隔で複数設けられている。図4では、ケース1の下側の内面にだけリブ1Lがあるが、ケース1の上側の内面にも同様にリブ1Lが形成されている。各リブ1Lの周囲にも、図10に示すように、シール材4のフィレット4fが形成される。
【0046】
次に、電子装置100の製造工程を、各図を参照しながら説明する。
【0047】
まず、図3に示すように、コネクタ20が一体化されたカバー2と回路基板3とを固定し、かつコネクタ20の端子22を回路基板3の一端部3aにはんだ付けする。次に、回路基板3を端部3b側より、ケース1の開口部1kから内部へ収容し(図7)、図1および図2に示すように、ケース1とカバー2とを開口部1k(図4)および受部30(図3)のなす長方形の短辺側において係合する。この状態では、図6図9に示されるように、長方形の一方の長辺側(図では左側)の充填口5は、他方の長辺側(図では右側)の充填口5より広い幅を有している。次に、図9などに示すように、カバー2の受部30が上向きで、ケース1の開口部1kとコネクタ20の嵌合部21とが下向きになるように、カバー2とケース1を配置する。このとき、回路基板3は、両板面が上下方向に対して側方を向く(受部30の底2eに対して垂直になる)ように、ケース1内に収容されている。
【0048】
そして、上向きに開口した充填口5から、軟化させたシール材4を受部30内に充填する。このとき、図5図8に示すように、シール材4の液面がケース1の鍔部1fより上方でかつカバー2の受部30(側壁2d)の上端より下方の位置に到るように、シール材4を適量充填する。この後は、図1図9のような姿勢に各部を保った状態で、シール材4を硬化させる。
【0049】
上記実施形態によると、回路基板3をケース1の開口部1kから内部に収容した後、カバー2をケース1に係合する。これにより、ケース1の開口部1k側の端部1dをカバー2の受部30で受けて、一体化されたカバー2とコネクタ20によりケース1の開口部1kを閉塞することができる。そして、カバー2の受部30の内周面とケース1の端部1dの外周面との間に形成された充填口5から、シール材4を受部30内に充填する。これにより、ケース1とカバー2の間隙およびコネクタ20の端子22と端子孔2hの間隙にシール材4が充填されて、ケース1の開口部1kが封止され、ケース1内に収容した回路基板3を防水することができる。
【0050】
また、シール材4の充填前後にケース1やカバー2を傾斜させたり回転させたりする必要がなく、係合したケース1とカバー2を受部30が上向きになるように配置して、充填口5からシール材4を充填する工程を1回行うことで、ケース1の開口部1kを封止することができる。このため、製造工程数を減少させて、電子装置100を製造し易くすることができる。さらに、ケース1内全体ではなく、カバー2の受部30内にシール材4を適量充填すればよいので、シール材4の使用量を減少させて、電子装置100を軽量化することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、カバー2とコネクタ20のハウジング部23とを、同一の合成樹脂製部材から構成している。このため、カバー2とコネクタ20の間に、端子22と端子孔2hの隙間以外の間隙が生じなくなり、防水性を向上させることができる。また、製造過程でカバー2とコネクタ20とを一部品として取り扱うことができるので、生産効率を向上させることができる。
【0052】
また、上記実施形態では、シール材4の充填時に、受部30が上向きで、コネクタ20の嵌合部21とケース1の開口部1kが下向きになるように、ケース1とカバー2を上下に配置している。このため、充填口5が上向きになり、充填口5からカバー2の受部30内とケース1内の開口部1k近傍にシール材4を充填して、カバー2とケース1の間隙とコネクタ20の端子22と端子孔2hの隙間とを封止することができる。
【0053】
また、電子装置100の使用時にも、上記のようにケース1とカバー2を上下に配置することで、水などの液体が上方からカバー2の受部30まで流れて来ても、受部30内に充填されたシール材4によって、該液体がケース1内に浸入するのを阻止することができる。また、コネクタ20の嵌合部21に入り込んだ液体が、毛細管現象により端子22を伝って端子孔2hからカバー2の受部30内に浸入するのを、シール材4により阻止することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、ケース1の端部1dに鍔部1fを設け、鍔部1fの外周の長さをカバー2の受部30の内周の長さより小さくし、シール材4を鍔部1fより上方の位置まで充填している(図8)。このため、鍔部1fの上側にシール材4の段差が生じ、カバー2とケース1の間に充填したシール材4とケース1との界面強度を高めて、防水性を向上させることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、ケース1の端部1dの4つの角近傍に脚部1eを設け、隣り合う脚部1eの間に凹部1g、1h、1jを設けている。このため、ケース1の各脚部1eをカバー2の受部30の底2eで受けて、ケース1とカバー2とを安定に係合することができる。また、充填口5から充填したシール材4を、凹部1g、1h、1jを通してケース1内に流入させて、ケース1内の開口部1k近傍の防水性を向上させることができる。
【0056】
然も、上記実施形態では、凹部1g、1h、1jのうち、ケース1の開口部1kの長辺方向に広がる凹部1g(または連続する凹部1g、1h)の幅を、開口部1kの短辺方向に広がる凹部1jの幅より広くし、かつ、凹部1gの深さを凹部1jの深さより深くしている。このため、充填口5から充填したシール材4を、凹部1g、1hを通してケース1内に円滑に流入させることができ、ケース1内の開口部1k近傍の防水性を一層向上させることが可能となる。
【0057】
さらに、上記実施形態では、ケース1の内面に、ケース1の開口部1kから内奥へ向かって延びるリブ1Lを設けている。このため、充填口5から凹部1g、1h、1jを通ってケース1内に浸入したシール材4が、ケース1の内面とリブ1Lの表面に接触して、ケース1の内面だけでなくリブ1Lの表面にも、表面張力によりシール材4のフィレット4fを形成することができる(図10)。そして、ケース1内においてケース1とシール材4との界面強度をより高めて、防水性を一層向上させることが可能となる。
【0058】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、図5および図6などに示したように、ケース1の開口部1k側の端部1dに鍔部1fを設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ代えて、たとえば図11および図12に示すように、ケース1の開口部1k側の端部1dの外周面に、ケース1の外周方向に連続する溝部1mを設けてもよい。この場合、シール材4をカバー2の受部30内の、溝部1mより上方の位置まで充填するとよい。これにより、溝部1mの上側にシール材4の段差が生じ、カバー2とケース1の間に充填したシール材4とケース1との界面強度を高めて、防水性を向上させることができる。他の例として、ケース1の開口部1k側の端部1dの外周面に、鍔部と溝部とを両方とも設けてもよい。
【0059】
また、以上の実施形態では、図5図9などに示したように、ケース1の凹部1g、1h、1jの底を、平坦面にした例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ代えて、たとえば図13に示すように、凹部1gの底1sを、コネクタ20の嵌合部21側へ突出するように、V字形に形成してもよい。また、図示していないが、他の凹部1h、1jの底も、同様にV字形に形成してもよい。これにより、凹部1gの底1sとシール材4との界面にかかる応力を緩和して、該界面の強度を高めて、防水性を一層向上させることができる。他の例として、凹部1g、1h、1jの底を単一の傾斜面にしたり、曲面にしたりしてもよい。
【0060】
また、以上の実施形態では、カバー2とコネクタ20のハウジング部23とを、同一の合成樹脂製部材から構成した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、カバー2とコネクタ20のハウジング部とを別部材にして、後で多重成形や、ねじや接着剤などを用いた組み立てなどにより、カバー2とコネクタ20のハウジング部(および端子22)とを一体化させてもよい。
【0061】
また、以上の実施形態では、ケース1とカバー2との間に存在する間隙と、コネクタ20自体に存在する間隙(端子22と端子孔2hとの間の間隙)に、シール材4を充填した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。たとえば、ケースとコネクタの二者間、カバーとコネクタの二者間、またはケースとカバーとコネクタの三者間に間隙が存在している場合は、当該間隙にシール材を充填してもよい。また、ケース自体またはカバー自体に間隙が存在している場合も、当該間隙にシール材を充填してもよい。つまり、ケースとカバーとコネクタのうち、少なくとも2つの間に存在する間隙または少なくとも1つに存在する間隙をシール材によって封止すればよい。
【0062】
さらに、以上の実施形態では、車両用のECUから成る電子装置100に、本発明を適用した例を挙げたが、他の電子装置に対しても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ケース
1d ケースの開口部側の端部
1e 脚部
1f 鍔部
1g、1h 凹部(第1凹部)
1j 凹部(第2凹部)
1k 開口部
1L リブ
1m 溝部
1s 凹部のV字形の底
2 カバー
2d 受部の側壁
2e 受部の底
3 回路基板
3a 回路基板の一端部
4 シール材
5 充填口
20 コネクタ
21 嵌合部
23 ハウジング部
30 受部
100 電子装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図13