特許第6366072号(P6366072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366072
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20180723BHJP
   F25D 17/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F25D23/00 302D
   F25D23/00 302M
   F25D17/06 312
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-248456(P2015-248456)
(22)【出願日】2015年12月21日
(62)【分割の表示】特願2014-120534(P2014-120534)の分割
【原出願日】2009年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-40516(P2016-40516A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2015年12月21日
【審判番号】不服2017-9882(P2017-9882/J1)
【審判請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹木 宏格
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 莊司 英史
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−287349(JP,A)
【文献】 特開2006−57999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D23/00,17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室及び野菜室を有する冷蔵庫本体と、
この冷蔵庫本体に設けられ前記冷蔵室及び野菜室を冷却するための冷却器と、
この冷却器により生成された冷気を前記冷蔵室及び野菜室内に循環供給するための送風ファンと、
前記野菜室から前記冷蔵室につながる吸込みダクトと、
脱臭除菌成分を発生する静電霧化装置とを備え、
前記静電霧化装置により発生した脱臭除菌成分を、前記冷却器を通さずに前記野菜室に供給すると共に、
前記冷蔵室には、前記送風ファンを回転させることにより、前記脱臭除菌成分を前記吸込みダクトを介して供給し、
前記冷蔵室及び野菜室内の貯蔵物の鮮度を保持することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
通常の冷却運転中よりも前記冷蔵室又は野菜室の温度の上昇が見込まれる制御状態で、前記静電霧化装置により発生した脱臭除菌成分を、前記冷蔵室及び野菜室に供給することを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記静電霧化装置による前記冷蔵室及び野菜室に対する脱臭除菌成分の供給がオン・オフされることを特徴とする請求項1又は2記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水部を有し該貯水部内の水をミスト化して放出するミスト放出手段を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用の冷蔵庫にあっては、貯蔵室内を衛生的に保ち、また、食品の鮮度を保持するために、例えば冷蔵室と野菜室とを上下に区画する仕切壁部分に、微細ミストを発生するミスト発生装置を設けることが考えられている(例えば、特許文献1参照)。前記ミスト発生装置は、ユーザによる着脱が可能に設けられた貯水ケースを備え、静電霧化方式或いは超音波方式により、貯水ケースに貯留されている水をミスト化し、放出するように構成されている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、ミスト発生装置を継続的に動作させるためには、ユーザが、貯水ケースに対して定期的な水の補給作業を行わなければならない不具合があった。また、ミスト発生装置(貯水ケース)がユーザから見える位置に配置されているため、見た目が良くない不具合もあった。そこで、別の例として、特許文献2には、冷却器から生ずる除霜水を用いて、ミスト発生装置に対して水を自動で供給するようにした冷蔵庫が開示されている。
【0004】
この特許文献2の冷蔵庫では、冷蔵室及びその下部の野菜室の背面側に冷気循環用のダクトが設けられ、前記ダクトの上部に設置された冷蔵用の冷却器の下部に、除霜水を貯留するドレンパンを設け、前記ダクト内の下部(野菜室の背面側)に超音波霧化ユニットを設け、この超音波霧化ユニットの水タンクに対し、ドレンパンからの除霜水を、給水パイプを通して給水するように構成されている。これにより、超音波霧化ユニットの水タンクに対する、ユーザによる給水の作業を不要とすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−57999号公報
【特許文献2】特開2006−145080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の構成においても、次のような欠点があった。即ち、特許文献2の冷蔵庫では、前記冷蔵用冷却器の上部に配置された送風ファンの駆動により、冷却器により生成された冷気が、ダクトの上部から冷蔵室に供給され、さらに野菜室に供給された後、ダクトの下部に戻り、超音波霧化ユニット部分を通った上で、冷却器部分に戻るという循環を行うようになっている。
【0007】
このとき、超音波霧化ユニットにて発生したミストが、冷気の循環と共に冷蔵室及び野菜室に供給されるのであるが、冷気の流れで見ると、超音波霧化ユニットが冷却器の上流に位置しているため、発生したミストの大部分が冷却器を通る際の低温にて結露(凝集)して冷却器に付着する事態が起こる。このため、超音波霧化ユニットにおける発生量に見合った十分な量のミストを、冷蔵室及び野菜室に供給できなくなる不具合があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、冷蔵庫本体に静電霧化装置を備えたものにあって、静電霧化装置により発生した脱臭除菌成分を効果的に冷蔵室及び野菜室に供給することができる冷蔵庫を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の冷蔵庫は、冷蔵室及び野菜室を有する冷蔵庫本体と、この冷蔵庫本体に設けられ前記冷蔵室及び野菜室を冷却するための冷却器と、この冷却器により生成された冷気を前記冷蔵室及び野菜室内に循環供給するための送風ファンと、前記野菜室から前記冷蔵室につながる吸込みダクトと、脱臭除菌成分を発生する静電霧化装置とを備え、前記静電霧化装置により発生した脱臭除菌成分を、前記冷却器を通さずに前記野菜室に供給すると共に、前記冷蔵室には、前記送風ファンを回転させることにより、前記脱臭除菌成分を前記吸込みダクトを介して供給し、前記冷蔵室及び野菜室内の貯蔵物の鮮度を保持するところに特徴を有する。
【0010】
本発明においては、静電霧化装置によって、冷蔵室及び野菜室内にミストを供給することができ、冷蔵室及び野菜室内の除菌や脱臭、貯蔵物の鮮度保持などを図ることができる
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷蔵庫によれば、冷蔵庫本体にミスト放出手段を備えたものにあって、冷蔵庫本体に静電霧化装置を備えたものにあって、静電霧化装置により発生した脱臭除菌成分を効果的に冷蔵室及び野菜室に供給することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例を示すもので、冷蔵庫本体の概略的な縦断右側面図
図2】静電霧化装置部分の拡大縦断右側面図
図3】静電霧化装置部分の概略的な正面図
図4】他の実施例を示す図2相当図
図5】異なる他の実施例を示す冷蔵庫本体の上半部の概略的な縦断右側面
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例について、図1ないし図3を参照しながら説明する。まず、図1は、本実施例に係る冷蔵庫の本体1の構成を概略的に示している。この冷蔵庫本体1は、前面が開口した縦長矩形箱状の断熱箱体2内に、複数の貯蔵室を設けて構成されている。具体的には、断熱箱体2内には、上段から順に、冷蔵室3、野菜室4、製氷室5、冷凍室6が設けられている。尚、図示はしないが、断熱箱体2のうち前記製氷室5が設けられる部分は左右2室に仕切られており、左側に製氷室5が設けられ、右側に第2冷凍室(切替室)が設けられている。製氷室5内には、周知の自動製氷装置7が設けられている。
【0015】
前記冷蔵室3及び野菜室4は、いずれも冷蔵温度帯(例えば1〜4℃)の貯蔵室であり、それらの間は、プラスチック製の仕切壁8により上下に仕切られている。前記冷蔵室3の前面部には、ヒンジ開閉式の断熱扉9が設けられ、前記野菜室4の前面には引出し式の断熱扉10が設けられる。この断熱扉10の背面部には、貯蔵容器11が連結されている。前記冷蔵室3内は、棚板12(一部のみ図示)により上下に複数段に区切られると共に、その最下部(前記仕切壁8の上部)にチルド室13が設けられている。冷蔵室3内の天井部には、庫内灯14が設けられている。
【0016】
また、前記製氷室5及び冷凍室6(並びに第2冷凍室)は、いずれも冷凍温度帯(例えば−10〜−20℃)の貯蔵室であり、前記野菜室4と製氷室5(及び第2冷凍室)との間は、断熱仕切壁15により上下に仕切られている。製氷室5の前面部には、引出し式の断熱扉16が設けられており、その断熱扉16の背面部に貯氷容器17が連結されている。冷凍室6の前面部にも、貯蔵容器19が連結された引出し式の断熱扉18が設けられている。
【0017】
この冷蔵庫本体1内には、全体として詳しく図示はしないが、前記冷蔵室3及び野菜室4を冷却するための冷蔵室用冷却器20と、前記製氷室5及び冷凍室6を冷却するための冷凍室用冷却器21との2つの冷却器を備える冷凍サイクルが組込まれる。冷蔵庫本体1の下端部背面側には、機械室22が設けられ、詳しく図示はしないが、この機械室22内に、冷凍サイクルを構成する圧縮機23及び凝縮器などが配設されていると共に、それらを冷却するための冷却ファンや除霜水蒸発皿24等が配設されている。冷蔵庫本体1の背面下部寄り部分には、全体を制御するマイコン等を実装した制御装置25が設けられている。
【0018】
冷蔵庫本体1内の前記冷凍室6の背壁部には、冷凍室用冷却器室26が設けられている。この冷凍室用冷却器室26内に、下部に位置して前記冷凍室用冷却器21や除霜用ヒータ(図示せず)等が配設されていると共に、上部に位置して冷凍用送風ファン27が配設されている。冷凍室用冷却器室26の前面の中間部には、冷気吹出口26aが設けられ、下端部には、戻り口26bが設けられている。
【0019】
これにて、冷凍用送風ファン27が駆動されると、冷凍室用冷却器21により生成された冷気が、前記冷気吹出口26aから製氷室5及び冷凍室6内に供給された後、前記戻り口26bから冷凍室用冷却器室26内に戻されるといった循環を行うようになっている。尚、冷凍室用冷却器21の下方部には、除霜水を受ける水受部28が設けられ、その水受部28に受けられた除霜水は、前記機械室22内の除霜水蒸発皿24に導かれ、蒸発するようになっている。
【0020】
そして、冷蔵庫本体1の背壁部には、前記冷蔵室用冷却器20や、この冷蔵室用冷却器20により生成された冷気を前記冷蔵室3(及び野菜室4)内に供給するための吹出しダクト29、前記冷気を循環させるための送風ファン30等が、以下のようにして配設される。即ち、冷蔵庫本体1の背壁部には、前記冷蔵室3の最下段のチルド室13の後方に位置して、冷蔵室用冷却器室31が設けられ、この冷蔵室用冷却器室31内に冷蔵室用冷却器20が配設されている。
【0021】
この冷蔵室用冷却器室31の前壁部31a(チルド室13の後壁部)は、断熱性を有したものとされている。前記冷蔵室用冷却器室31の上端部は、冷蔵室3の背壁部を一定の幅で上方に延びるように設けられた吹出しダクト29の下端部につながっている。この吹出しダクト29には、冷蔵室3内で開口する複数個の吹出口29aが設けられている。
【0022】
また、冷蔵室用冷却器室31内の底部には、冷蔵室用冷却器20の下方に位置して、該冷蔵室用冷却器20からの除霜水を受ける水受部32が設けられている。後述するように、この水受部32は、静電霧化装置の貯水部を兼用するようになっている。このとき、断熱箱体2内の背壁部には、仕切壁8の後方に位置して、横長に延び前方に凸となる梁状をなす凸壁部33が設けられており、前記水受部32はその凸壁部33の上面部に設けられている。この凸壁部33の内部には、断熱材(絶縁材)が充填されている。
前記野菜室4の後方には、送風ファン30が配設されていると共に、送風ダクト34及び吸込みダクト35が設けられている。そのうち送風ダクト34は、野菜室4の背面側に位置して、上端部が前記凸壁部33(水受部32)を迂回するように冷蔵室用冷却器室31の下端部前面側に連通するように、前記吹出しダクト29と同等の幅で上下方向に延びて設けられている。
【0023】
この送風ダクト34の下端部前面側には、左右方向中央部に位置してベルマウス34aが設けられ、このベルマウス34a内に送風羽根が位置するように、前記送風ファン30が設けられている。この送風ファン30は、この場合、正逆転可能なプロペラファンからなり、正回転により、前方から空気を吸って後方に吐出し、逆回転により、後方から空気を吸って前方に吐出するように構成されている。後述するように、この送風ファン30は、制御装置25により制御される。
【0024】
前記送風ダクト34は、側方から見て、ほぼ真直ぐに上方に延びた後、上端が若干量だけ折曲がって冷蔵室用冷却器室31の下端部前面側につながっている。本実施例では、詳しくは後述するように、送風ダクト34内には、ミスト放出手段たる静電霧化装置36が設けられる。更に、前記送風ダクト34の前面側に、前後に二重に重なるように、吸込みダクト35が設けられている。
【0025】
この吸込みダクト35は、やはり前記吹出しダクト29と同等の幅で、野菜室4の天井部から送風ファン30よりもやや下方まで延びて設けられている。このとき、吸込みダクト35の上端部は、冷蔵室3(チルド室13)の底部の背面側に横長状に形成された吸込口37に連通している。また、吸込みダクト35の底部には、開口部35aが設けられている。尚、冷蔵室3と野菜室4とを区画する仕切壁8部分には、冷蔵室3からの冷気の一部を野菜室4内に導くための冷気供給ダクト8aが設けられている。
【0026】
さて、本実施例では、上記のように、前記送風ダクト34内には、除菌や脱臭の作用を呈するミストを発生させて前記冷蔵室3及び野菜室4に供給するための、ミスト放出手段たる静電霧化装置36が設けられる。この静電霧化装置36について、図2及び図3も参照して詳述する。この静電霧化装置36は、水を溜める貯水部と、この貯水部の水を吸上げてミスト化するミスト発生ユニット38と、このミスト発生ユニット38のミスト放出ピン39(後述)に高電圧を印加するための高圧電源装置40(図2参照)とを備えて構成される。
【0027】
上記したように、本実施例では、前記水受部32が静電霧化装置36の貯水部を兼用しており、以下、水受部32と称して説明を進める。貯水部としての水受部32は、この場合、図3に示すように、上面が開放した横長な矩形容器状に構成され、冷蔵室用冷却器20の下方に配置されている。除霜運転時には、冷蔵室用冷却器20の表面に付着していた霜などが、結露(凝集)して水となり、この水受部32に落下して溜められる。このとき、水受部32内には、スポンジからなる水保持部材41が設けられている。
【0028】
図2図3に示すように、前記ミスト発生ユニット38は、水受部32の前面側の、正面から見て右側に位置して、支持部材46(図3参照)を介して取付けられている。このミスト発生ユニット38は、薄型円筒状をなす絶縁材製のケース42に、複数本例えば8本のミスト放出ピン39、導電シート43、保水材44、吸水ピン45、電極ピン(図示せず)等を備えて構成される。
【0029】
前記ミスト放出ピン39は、例えば、ポリエステル繊維と、導電性物質としてのカーボン繊維を混ぜて撚り合せてピン状(棒状)に形成したもので、保水性及び吸い上げ特性を有すると共に、導電性を有している。各ミスト放出ピン39には、白金ナノコロイドを担持させている。白金ナノコロイドは、例えば、当該白金ナノコロイドを含む処理液にミスト放出ピン39を浸漬して、これを焼成することによって担持させることができる。詳しく図示はしないが、これら各ミスト放出ピン39は、前記ケース42の周壁に等間隔に形成された8個の穴を夫々通して、先端側がほぼ同一平面を外周方向に延びるようにして、放射状に配設されている。
【0030】
前記導電シート43は、例えば、ポリエステル繊維と、導電性物質としてのカーボン繊維を混ぜて不織布状に形成したもので、保水性及び導電性を有している。図3に示すように、この導電シート43は、前記ケース42の内周壁に沿う円環状に配設され、前記各ミスト放出ピン39の基端部側に接触する(電気的に接続される)ように設けられている。また、図示はしないが、この導電シート43に前記電極ピンの先端が電気的に接続されるようになっている。
【0031】
前記保水材44は、例えば保水性及び水分の吸い上げ特性に優れたウレタンスポンジから円形に構成され、ケース42内の前記導電シート43の内側に密に収容されている。前記吸水ピン45は、例えば、ポリエステル繊維を撚り合せて棒状に形成したもので、保水性と、水分の吸い上げ特性に優れている。この吸水ピン45は、図2にも示すように、一端が前記ケース42内の保水材44に接触し、他端が前記水受部32の水保持部材41に接触している。これにて、水受部32に貯留され水保持部材41に保持されている水が、吸水ピン45により吸上げられて保水材44に保持され、この保水材44から各ミスト放出ピン39に供給されるようになっている。
【0032】
このとき、ミスト発生ユニット38(ケース42)は、送風ダクト34内に位置して、各ミスト放出ピン39を冷気の循環経路中に露出した状態に設けられている。また、各ミスト放出ピン39は、送風ダクト34の内壁に平行に指向するように配置されている。つまり、各ミスト放出ピン39が送風ダクト34内の冷気の流れ方向に平行な平面に沿うように設けられている。
【0033】
前記高圧電源装置40は、周知のように、高周波電源(交流電源)を直流に変換する高圧トランスを含む整流回路や、昇圧回路等を備え、それらを絶縁材にてモールドして構成されている。この高圧電源装置40は、図2に示すように、前記凸壁部33の絶縁材中に埋込まれるようにして配設されており、負の高電圧(例えば−6kV)を発生させ、出力端子を介して電極ピンに出力するようになっている。
【0034】
これにより、高圧電源装置40からの負の高電圧が、電極ピン及び導電シート43を介して各ミスト放出ピン39に印加され、各ミスト放出ピン39が負に帯電するようになっている。また、この場合、冷蔵庫本体1の外箱は、アース線(図示せず)などを介して接地されるようになっており、このように接地された外箱が、負に帯電したミスト放出ピン39に対応する対極として機能するように構成されている。
【0035】
このように構成された静電霧化装置36においては、水受部32の水が吸上げられて各ミスト放出ピン39に供給された状態で、各ミスト放出ピン39に、高圧電源装置40からの負の高電圧が印加される。このとき、各ミスト放出ピン39の先端部に電荷が集中し、当該先端部に含まれる水に表面張力を超えるエネルギーが与えられる。これにより、各ミスト放出ピン39の先端部の水が分裂(レイリー分裂)して、先端部からミスト状に放出されるようになる(静電霧化現象)。ここで、ミスト状に放出された水粒子は、負に帯電しており、そのエネルギーによって生成したヒドロキシラジカルを含んでいる。
【0036】
従って、強い酸化作用を有するヒドロキシラジカルが各ミスト放出ピン39からミストとともに放出されるようになり、当該ヒドロキシラジカルの作用によって除菌や脱臭が可能となる。この場合、負に帯電したミスト放出ピン39に対応する対極を、当該ミスト放出ピン39の近傍に設けていない。そのため、ミスト放出ピン39からの放電自体が非常に穏やかになり、放電電極と対極との間でコロナ放電が発生することなく、有害ガス(オゾンや、当該オゾンが空気中の窒素を酸化することによって発生する窒素酸化物、亜硝酸、硝酸など)の発生を抑えることができる。
【0037】
そして、本実施例では、前記制御装置25は、そのソフトウエア的構成により、冷凍サイクルや送風ファン30、静電霧化装置36(高圧電源装置40)を制御し、冷却運転や除霜運転を実行する。このとき、次の作用説明でも述べるように、通常の冷却運転中には、前記静電霧化装置36がオフされると共に、前記送風ファン30を正回転させて、前記冷蔵室用冷却器20により生成された冷気を、冷蔵室3、野菜室4の順に循環供給させるようになっている。
【0038】
また、本実施例では、前記冷蔵室用冷却器20に対する除霜運転が、例えば定期的に(1時間に1回で数分程度)実行される。この除霜運転は、冷蔵室用冷却器20に対する冷媒の供給が停止された状態で、静電霧化装置36がオンされると共に、前記送風ファン30が逆回転されるようになっている。これにより、前記冷蔵室用冷却器20から前記静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)に向う経路で冷気が循環されるように構成されている。つまり、このときには、静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)が、冷気の循環経路中において、冷蔵室用冷却器20よりも下流側に位置して設けられていることになるのである。
【0039】
次に、上記構成の作用について述べる。上記したように、冷蔵室3及び野菜室4に対する通常の冷却運転時には、前記送風ファン30が正回転で駆動される。すると、図1に白抜きの矢印で示すように、冷蔵室3内の空気が吸込口37から吸込みダクト35内に吸込まれると共に、野菜室4内の空気が開口部35aを通して吸込みダクト35内に吸込まれ、送風ダクト34を通って冷蔵室用冷却器室31内に導かれる。
【0040】
そして、冷蔵室用冷却器20により冷気が生成され、その冷気が吹出しダクト29を通して各吹出口29aから冷蔵室3内に供給される。冷蔵室3内に供給された冷気は、収納物(食品)の冷却に寄与した後、一部が吸込口37から吸込みダクト35内に吸込まれ、残りが冷気供給ダクト8aを通って野菜室4内に供給され、収納物(野菜など)の冷却に寄与した後、開口部35aから吸込みダクト35内に吸込まれるという循環を繰返すのである。
【0041】
このときには、送風ファン30、冷蔵室用冷却器20、冷蔵室3、野菜室4、送風ファン30の順に冷気の循環経路が形成され、より低温の冷気を冷蔵室3側に供給でき、貯蔵温度帯に応じた、適切な冷気供給を行うことができる。そしてこの冷却運転中は、静電霧化装置36はオフされており、ミストの発生はない。尚、ミスト発生ユニット38が、送風ダクト34内に位置しているが、薄型であって、冷気の流れに平行に配置されているので、送風ダクト34内の冷気の流通の妨げとなることはなく、送風ダクト34が大型化することなく十分な送風量を確保できる。
【0042】
冷却運転が長時間継続すると、冷蔵室用冷却器20に着霜や結露が生じ、冷却効率の低下を招いてしまう。そこで、本実施例では、定期的に(1時間に1回程度)、冷蔵室用冷却器20に対する冷媒の供給を停止し、除霜運転が実行される。この除霜運転では、静電霧化装置36がオンされると共に、送風ファン30が逆回転される。この除霜運転によって、冷蔵室用冷却器20に付着していた霜が溶けて水となり、落下して水受部32に溜められるようになる。
【0043】
そして、静電霧化装置36のオンにより、水受部32内の水が、吸水ピン45により吸上げられて保水材44を介して各ミスト放出ピン39に供給される。これと共に、各ミスト放出ピン39に、高圧電源装置40からの負の高電圧が、電極ピン及び導電シート43を介して印加され、各ミスト放出ピン39の先端からヒドロキシラジカルを含んだ微細なミストが放出されるようになる。
【0044】
このとき、送風ファン30が逆回転されることにより、上記した白抜きの矢印とは逆に、冷蔵室用冷却器20を通った空気は、送風ダクト34内の各ミスト放出ピン39部分を通り、送風ファン30を通して前方に吹出され、その一部が、開口部35aから野菜室4内に供給され、残りの一部が吸込みダクト35を通って吸込口37から冷蔵室3に供給される。野菜室4内の空気も、冷気供給ダクト8aを通って冷蔵室3に流れ、冷蔵室3内の空気は、各吹出口29aから吹出しダクト29を通して冷蔵室用冷却器20部分に戻されるという循環が行われる。
【0045】
この除霜運転時には、冷蔵室用冷却器20から、静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)、送風ファン30、野菜室4及び冷蔵室3の順に、循環風が流れ、この際、ミスト放出ピン39から放出したミストが、循環空気に乗って野菜室4及び冷蔵室3に供給される。これにより、野菜室4内及び冷蔵室3内の除菌や脱臭が図られると共に、貯蔵物(野菜等)の鮮度保持等も期待できる。
【0046】
この場合、冷蔵室用冷却器20からの除霜水が、静電霧化装置36の貯水部である水受部32にいわば自動で供給されるようになるので、静電霧化装置36に対するユーザの給水の作業を不要とすることができる。また、静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)が放出したミストを、冷蔵室用冷却器20を通さずに(冷蔵室用冷却器20に付着(凝集)させることなく)、野菜室4及び冷蔵室3に対し、十分な量のミストを効果的に供給することができる。
【0047】
しかも、ミスト発生ユニット38は、送風ダクト30内に位置して、複数本のミスト放出ピン39を冷気の循環経路中に露出した状態で放射状に有して構成されているので、各ミスト放出ピン39の先端部同士の間隔を広くして各ミスト放出ピン39からミストを出やすくし、且つ、送風ファン30により生成される循環風に乗せて、全体としてミストを広範囲に供給することが可能となる。
【0048】
このような本実施例によれば、次の効果を得ることができる。即ち、冷蔵庫本体1内に、水をミスト化して放出する静電霧化装置36を設けるようにしたので、冷蔵室3及び野菜室4内に、ミストを供給することができ、冷蔵室3及び野菜室4内の除菌や脱臭、貯蔵物の鮮度保持などを図ることができる。
【0049】
このとき、冷蔵室用冷却器20から生ずる除霜水が、静電霧化装置36の貯水部として機能する水受部32にいわば自動で供給されるようになるので、静電霧化装置36に対するユーザの給水の作業を不要とすることができる。また、別途の貯水部を設ける必要がなくなるので、静電霧化装置36の構成の簡単化、小型化を図ることができることは勿論である。静電霧化装置36を、ユーザにとって見えない位置である送風ダクト34内に設けたことにより、外観も良好となる。
【0050】
そして、静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)は、該静電霧化装置36の駆動時の冷気の循環経路中における、冷蔵室用冷却器20よりも下流側に位置して設けられているので、静電霧化装置36により発生したミストを、冷蔵室用冷却器20部分を通さずに冷蔵室3及び野菜室4に供給することができ、ミストが結露(凝集)して冷蔵室用冷却器20に付着する事態の発生を抑制することができ、ミストを効果的に冷蔵室3及び野菜室4に供給することができる。
【0051】
特に本実施例では、送風ファン30を正逆回転可能に構成して、通常の冷却運転時と、静電霧化装置36を駆動させる除霜運転時とで、循環風の流れが逆になるように構成した。これにより、冷却運転中には、ミストの無駄や冷蔵室用冷却器20への付着もなく、冷蔵室3及び野菜室4の貯蔵温度帯に応じた、適切な冷気の流れを得ることができる。一方、除霜運転中は、循環風の流れを逆としつつ静電霧化装置36がオンされるので、放出したミストが冷蔵室用冷却器20を通ることなく(付着させることなく)、野菜室4及び冷蔵室3に対し十分な量のミストを効果的に供給することができる。
【0052】
本実施例では、ミスト放出手段として、電圧が印加されることによってミストを放出するミスト放出ピン39を有する静電霧化装置36を採用したので、強い酸化作用を有するヒドロキシラジカルを生成して、除菌や脱臭などを効果的に行うことができる。また、静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)の構成としても、水受部32に水保持部材41を設けるようにし、吸水ピン45により水を吸上げてミスト放出ピン39に供給するようにしたので、水受部32内に溜められた水が比較的少量であっても、その水を良好にミスト放出ピン39に供給することが可能となり、オン時に速やかにミストを発生させることができる。
【0053】
さらには、ミスト発生ユニット38を薄型にしながら、複数本のミスト放出ピン39を放射状に備えて構成したので、十分なミスト発生量を得ることができながらも、小さなスペースにミスト発生ユニット38を配設することが可能となり、送風ダクト35の大型化を招くことなく送風ダクト35内に容易に配設することができた。しかも、ミスト放出ピン39を冷気の循環経路中に露出した状態に備えているので、発生したミストを野菜室4及び冷蔵室3の広い範囲に供給することが可能である。
【0054】
図4は、本発明の他の実施例を示すもので、上記実施例と異なるところは、貯水部としての水受部48の構成にある。即ち、この水受部48は、やはり冷蔵室用冷却器20の下方に位置して除霜水を受けるように構成されているのであるが、その底部に、更に窪んだ凹部48aを有している。ここでは、水保持部材41を省略している。そして、上記実施例と同等の構成の静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)が設けられ、その吸水ピン45の端部が、凹部48a内に位置している。
【0055】
この構成においては、冷蔵室用冷却器20から生ずる除霜水が、静電霧化装置36の貯水部として機能する水受部48にいわば自動で供給され、凹部48a内に溜まるようになる。そして、水受部48に貯留されている水が、凹部48aから吸水ピン45により吸上げられてミスト発生ユニット38の保水材44に保持され、この保水材44から各ミスト放出ピン39に供給される。従って、水受部48に貯留されている水が少量であっても、吸水ピン45を介してミスト発生ユニット38に効率的に供給することができ、この実施例においても、上記実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0056】
図5は、本発明の更に異なる他の実施例を示すもので、冷蔵庫本体51の構成が上記実施例と相違している。即ち、図5は、冷蔵庫本体51の冷凍室部分を除く上半部を示しており、貯蔵室としての冷蔵室52及び野菜室53が上下に設けられている。冷蔵室52の背壁部に、冷蔵室用冷却器54を収容した冷却器室55が設けられていると共に、その冷却器室54の上部に、冷気を冷蔵室52及び野菜室53に循環供給するための送風ファン56が設けられている。
【0057】
図示はしないが、冷蔵庫本体51の背壁部には、送風ファン56部分から二股に分かれて下方に延びるように、冷却器室55の左右部に位置して冷気供給ダクトが設けられている。この冷気供給ダクトには、冷蔵室52及び野菜室53内で開口する複数個の吹出口が設けられている。更に、冷蔵庫本体51の背壁部には、下端が野菜室53で開口し前記冷却器室55に向けて上方に延びる吸込みダクト57が設けられている。
【0058】
そして、冷却器室55内には、冷蔵室用冷却器54の下方に位置して、除霜水を受ける水受部58が設けられていると共に、上記一実施例と同様に、この水受部58を貯水部とするミスト放出手段としての静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)が設けられている。この構成においても、冷却運転中には、静電霧化装置36がオフされると共に、前記送風ファン56が正回転される。これにて、野菜室53内の空気が吸込みダクト57の下部から吸込まれ、冷却器室55内の冷蔵室用冷却器54により冷却され、その冷気が冷気供給ダクトを通って吹出口から冷蔵室52内さらには野菜室53内に供給される循環を繰返す。
【0059】
これに対し、除霜運転時には、静電霧化装置36がオンされると共に、前記送風ファン56が逆回転される。これにより、冷蔵室52内の空気が冷気供給ダクトから吸込まれ、前記冷蔵室用冷却器54を通って静電霧化装置36(ミスト発生ユニット38)に向い、吸込みダクト57を通して野菜室53内に供給される循環経路が構成される。このとき、ミスト放出ピン39から放出したミストが、冷蔵室用冷却器54を通ることなく、野菜室53及び冷蔵室52に供給されるのである。従って、この実施例においても、上記一実施例と同様の作用・効果を得ることができるのである。
【0060】
尚、本発明は、上述した各実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。即ち、ミスト放出手段の構成としては、種々変形が可能である。例えば、複数のミスト放出ピンを同方向に延びて並列に備えた静電霧化装置であっても良く、また、ミスト放出ピンの材質としても、多孔質のセラミック材料や、多孔質の金属材料などを用いてもよい。ミスト放出ピンを先端部が尖った形状に構成しても良い。静電霧化を用いずに、超音波振動を用いる構成のミスト放出手段を採用することもできる。
【0061】
また、上記各実施例では、冷蔵室用冷却器20,54と冷凍室用冷却器21との2つの冷却器を備えた冷蔵庫に本発明を適用したが、冷蔵庫本体内に1個の冷却器を備え、ダンパ装置等により各室への冷気流通の制御を行うタイプの冷蔵庫にも本発明を適用することができる。その他、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば冷蔵庫本体内の各室の構成(配置)や、冷却器等を設ける位置、ダクト構成等についても種々の変形が可能であるなど、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0062】
図面中、1,51は冷蔵庫本体、3,52は冷蔵室(貯蔵室)、4,53は野菜室(貯蔵室)、20,54は冷蔵室用冷却器、25は制御装置、29は吹出しダクト、30,56は送風ファン、32,48,58は水受部(貯水部)、33は凸壁部、34は送風ダクト、35は吸込みダクト、36は静電霧化装置(ミスト放出手段)、38はミスト発生ユニット、39はミスト放出ピン、40は高圧電源装置、41は水保持部材、42はケース、43は導電シート、44は保水材、45は吸水ピン、48aは凹部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5