(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽光発電システムには、電力系統と連系するために、インバータが用いられる。インバータは、太陽電池により発電された直流電力を電力系統に同期した交流電力に変換して、電力系統に供給する。
【0003】
例えば、出力電流が逆流するのを防止するために、系統電圧を検出し、検出した系統電圧よりも予め定めた電圧値だけ高い最適な昇圧電圧になるように、昇圧回路を制御する系統連系装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、太陽電池から出力される電力が最大となるように、インバータを最大電力点追従制御(MPPT, maximum power point tracking)する場合は、直流電圧の下限値が予め設定される。このため、運転中に、インバータが下限値よりも低い直流電圧で運転可能な状態になっても、インバータの制御装置は、予め設定された下限値よりも低い直流電圧で制御することはできない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る制御装置2を適用した太陽光発電システム10の構成を示す構成図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0011】
太陽光発電システム10は、インバータ1、制御装置2、太陽電池3、平滑コンデンサ4、交流フィルタ5、連系トランス6、電力系統7、直流電圧検出器11、直流電流検出器12、交流電流検出器13、及び交流電圧検出器14を備える。
【0012】
太陽電池3は、光(太陽光)により発電する電池である。太陽電池3は、発電した電力をインバータ1に供給する。太陽電池3は、チョッパなどの昇圧回路を介さずに、インバータ1の直流側に接続される。
【0013】
インバータ1は、太陽電池3から供給される直流電力を電力系統7と同期する三相交流電力に変換する。インバータ1は、連系トランス6を介して、変換した交流電力を電力系統7に供給する。インバータ1は、制御装置2から出力されるゲート信号Gtにより、パルス幅変調(PWM, pulse width modulation)で電力変換制御される。インバータ1は、例えば、PCS(power conditioning system)である。
【0014】
平滑コンデンサ4は、インバータ1の直流側(入力側)に設けられている。平滑コンデンサ4は、太陽電池3からインバータ1に供給される直流電圧を平滑化する。
【0015】
交流フィルタ5は、リアクトル51及びコンデンサ52を備えている。交流フィルタ5は、インバータ1から出力される高調波を抑制する。
【0016】
直流電圧検出器11は、インバータ1の直流側の電圧Vdc(平滑コンデンサ4の電圧)を計測するための検出器である。直流電圧検出器11は、検出した直流電圧Vdcを制御装置2に出力する。
【0017】
直流電流検出器12は、インバータ1の直流側に流れる電流Idcを計測するための検出器である。直流電流検出器12は、検出した直流電流Idcを制御装置2に出力する。
【0018】
交流電流検出器13は、インバータ1の交流側(出力側)の電流Iivを計測するための検出器である。交流電流検出器13は、検出した交流電流Iivを制御装置2に出力する。
【0019】
交流電圧検出器14は、電力系統7の系統電圧Vrを計測するための検出器である。交流電圧検出器14は、検出した系統電圧Vrを制御装置2に出力する。
【0020】
制御装置2は、インバータ1から出力される有効電力及び無効電力を制御する。制御装置2は、電力演算部21と、直流電圧下限値演算部22と、MPPT実行部23と、直流電圧制御部24、電力制御部25と、PWM制御部26とを備えている。
【0021】
電力演算部21は、直流電圧検出器11により検出された直流電圧Vdc及び直流電流検出器12により検出された直流電流Idcに基づいて、直流電力Pdcを演算する。電力演算部21は、演算した直流電力PdcをMPPT実行部23に出力する。
【0022】
直流電圧下限値演算部22は、交流電圧検出器14により検出された系統電圧Vrに基づいて、インバータ1の直流電圧Vdcの下限値VLを決定する。制御装置2は、決定された下限値VLを下回らない範囲で直流電圧Vdcを制御する。下限値VLは、検出された系統電圧Vrに対して、少なくともインバータ1の出力電流Iivが逆流しない値にする。なお、下限値VLは、出力電流Iivが逆流しないことに加え、出力電流Iivの波形が歪まないような値に決定することが望ましい。出力電流Iivの波形が歪まない値か否かは、各高調波の重畳率などから判断することができる。系統電圧Vrが下がると、下限値VLは下がる。直流電圧下限値演算部22は、系統電圧Vrが予め設定された閾値(例えば、定格電圧)以上であれば、予め設定された値を下限値VLとして決定する。系統電圧Vrが予め設定された閾値よりも低ければ、直流電圧下限値演算部22は、系統電圧Vrに基づいて、下限値VLを演算する。直流電圧下限値演算部22は、予め設定された下限値VL又は演算した下限値VLをMPPT実行部23に出力する。
【0023】
ここで、系統電圧Vrの低下時に直流電圧Vdcの下限値VLを演算する理由について説明する。インバータ1が運転可能な直流電圧Vdcの下限値VLは、インバータ1が出力する交流電圧によって決まる。系統電圧Vrが下がると、インバータ1が出力する無効電力は、誘導性(inductive)となる。誘導性の無効電力をインバータ1から出力する場合、インバータ1の出力電圧は低くなる。従って、インバータ1の直流電圧Vdcの下限値VLも、下げることができる。
【0024】
MPPT実行部23は、電力演算部21により演算された直流電力Pdc、直流電圧下限値演算部22により演算された下限値VL、及び予め設定された上限値VHに基づいて、直流電圧の増加又は減少させる電圧増減信号Vnを直流電圧制御部24に出力する。MPPT実行部23は、最大電力点追従制御により決定された電圧増減信号Vnを出力する。
【0025】
図2を参照して、MPPT実行部23による直流電圧Vdcの制御について説明する。
図2は、本実施形態に係る太陽電池3による発電電力の特性を示す特性図である。
【0026】
ここで、
図2の特性図では、最大電力点Pmppのときの電圧(最大電力点電圧)Vmppが下限値VLと上限値VHとの間にあるが、太陽電池3の発電状態によっては、最大電力点電圧Vmppが下限値VLと上限値VHとの間にない場合がある。
【0027】
直流電圧Vdcが下限値VLと上限値VHの間にあるとき、MPPT実行部23は、
図2に示す最大電力点電圧Vmppを追従する制御(最大電力点追従制御)を、次のように行う。
【0028】
まず、MPPT実行部23は、現在の直流電圧Vdcでの直流電力Pdcを計測する。
【0029】
次に、MPPT実行部23は、直流電圧Vdcを予め決められた1段階分の電圧を昇圧(又は降圧)させる電圧増減信号Vnを出力する。直流電圧Vdcの昇圧後(又は降圧後)、MPPT実行部23は、直流電力Pdcを計測する。MPPT実行部23は、前回計測した直流電力Pdcと今回新たに計測した直流電力Pdcを比較する。
【0030】
比較した結果、今回新たに計測した直流電力Pdcの方が大きい場合は、MPPT実行部23は、前回と同じ電圧増減信号Vnを出力する。即ち、前回の電圧増減信号Vnが昇圧させる信号であれば、今回も電圧増減信号Vnを昇圧させる信号として出力する。前回の電圧増減信号Vnが降圧させる信号であれば、今回も電圧増減信号Vnを降圧させる信号として出力する。一方、今回新たに計測した直流電力Pdcの方が小さい場合は、MPPT実行部23は、前回と反対の電圧増減信号Vnを出力する。
【0031】
上記の手順を繰り返すことにより、MPPT実行部23は、直流電圧Vdcが常に最大電力点電圧Vmppの近傍にあるように制御する。
【0032】
降圧する電圧増減信号Vnを出力すると、直流電圧Vdcが下限値VLを下回る場合、MPPT実行部23は、直流電力Pdcの計測結果に関係なく、昇圧する電圧増減信号Vnを出力する。また、昇圧する電圧増減信号Vnを出力すると、直流電圧Vdcが上限値VHを上回る場合、MPPT実行部23は、直流電力Pdcの計測結果に関係なく、降圧する電圧増減信号Vnを出力する。
【0033】
直流電圧制御部24には、直流電圧検出器11により検出された直流電圧Vdc及びMPPT実行部23により決定された電圧増減信号Vnが入力される。直流電圧制御部24は、直流電圧Vdc及び電圧増減信号Vnに基づいて、直流電圧Vdcを制御するための直流電圧指令値Vdcrを演算する。直流電圧制御部24は、演算した直流電圧指令値Vdcrを電力制御部25に出力する。
【0034】
電力制御部25には、交流電流検出器13により検出された出力電流Iiv、交流電圧検出器14により検出された電力系統7の系統電圧Vr、電力演算部21により演算された直流電力Pdc、及び直流電圧制御部24により演算された直流電圧指令値Vdcrが入力される。電力制御部25は、出力電流Iiv、直流電力Pdc、及び直流電圧指令値Vdcrに基づいて、インバータ1から出力する有効電力を制御するための有効電力指令値を演算する。また、電力制御部25は、系統電圧Vrに基づいて、インバータ1から出力する無効電力を制御するための無効電力指令値を演算する。電力制御部25は、演算した無効電力指令値及び有効電力指令値に基づいて、インバータ1から出力する三相交流電圧を制御するための電圧指令値Vivrを演算する。電力制御部25は、演算した電圧指令値VivrをPWM制御部26に出力する。
【0035】
PWM制御部26には、電力制御部25により演算された電圧指令値Vivrが入力される。PWM制御部26は、インバータ1の出力電圧を電圧指令値Vivrに追従させるように、インバータ1のスイッチング素子を駆動するゲート信号Gtを生成する。PWM制御部26は、生成したゲート信号Gtにより、インバータ1をPWM制御する。
【0036】
本実施形態によれば、系統電圧Vrが電圧降下している場合、MPPTを実行する直流電圧Vdcの範囲の下限値VLが下がるため、MPPTを実行する範囲を広くすることができる。従って、最大電力点電圧Vmppが下限値VLよりも低い場合、下限値VLが低くなることで、太陽電池3から出力される電力を高くすることができる。
【0037】
また、直流電圧Vdcの下限値VLを系統電圧Vrに基づいて演算することで、MPPTの実行範囲を現在の系統電圧Vrに応じて広げることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る制御装置2Aを適用した太陽光発電システム10Aの構成を示す構成図である。
【0039】
太陽光発電システム10Aは、
図1に示す第1の実施形態に係る太陽光発電システム10において、制御装置2を制御装置2Aに代えたものである。制御装置2Aは、第1の実施形態に係る制御装置2において、直流電圧下限値演算部22を直流電圧下限値選択部22Aに代えたものである。その他は、第1の実施形態と同様である。
【0040】
直流電圧下限値選択部22Aは、交流電圧検出器14により検出された系統電圧Vrに基づいて、インバータ1の直流電圧Vdcの下限値VLを決定する。直流電圧下限値選択部22Aには、系統電圧Vrのレベル毎に対応する下限値VLが予め設定されている。例えば、系統電圧Vrは、定格電圧以上とするレベルと、定格電圧未満で複数の電圧範囲に細分化された複数のレベルに分けられる。直流電圧下限値選択部22Aは、検出された系統電圧Vrがどのレベルの電圧範囲に属するかを判断する。直流電圧下限値選択部22Aは、判断したレベルに対応する下限値VLを予め設定された複数の下限値VLの中から選択する。直流電圧下限値選択部22Aは、選択した下限値VLをMPPT実行部23に出力する。その他は、直流電圧下限値選択部22Aは、第1の実施形態に係る直流電圧下限値演算部22と同様である。
【0041】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
また、予め設定された複数の下限値VLの中から、系統電圧Vrに基づいて1つの下限値VLを選択するように構成することで、制御装置2Aの運転中における演算負荷を第1の実施形態よりも軽減することができる。
【0043】
なお、各実施形態において、制御装置2Aは、無効電力制御を常に行う構成としたが、無効電力制御を止める機能が付いていてもよい。この場合、第1の実施形態に係る直流電圧下限値演算部22又は第2の実施形態に係る直流電圧下限値選択部22Aは、無効電力制御が実行されていることを示す信号を受信することを条件として、処理を実行するようにしてもよい。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。