(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パルス波の波形が、矩形波(方形波)、逆鋸波、鋸波(ランプ波)、三角波、Sin波(正弦波)、台形波、ガウスパルス波、及び階段状正弦波からなる群から選択される少なくとも一つの波形である請求項1記載の有機EL素子のリペア方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のリペア方法及び製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、以下の
図1から
図15において、同一部分には、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は、適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。
【0013】
[実施形態1]
本実施形態において、発光装置として有機EL照明装置を本発明のリペア方法に適用した場合の一例を示す。
【0014】
(有機EL照明装置)
図1(A)に、本実施形態においてリペアされる有機EL照明装置100の構成図を示す。本実施形態における有機EL照明装置100は、同図(A)に示すように、電気的に直列接続された3つの有機ELパネル10と、駆動手段20と、を含む。同図(A)に示す3つの有機ELパネル10は、同一構成である。同図(A)に示す有機ELパネル10における「+」で示した端部には、陽極端子が設けられており、「−」で示した端部には、陰極端子が設けられている。
【0015】
尚、同図(A)では、有機ELパネルの数は、3枚であるが、これに限定されず、1枚であっても良いし、複数であっても良い。
【0016】
尚、本実施形態において、複数の有機ELパネル10は、並列に接続されていても良いが、同図(A)に示すように、直列に接続されていることが好ましい。複数の有機ELパネル10が並列に接続されている場合、一つのパネル10にショート(短絡)が発生した場合、そこに電流が集中し、全てのパネルが、非点灯になるという問題がある。これに対し、複数の有機ELパネル10が電気的に直列接続されている場合、一つのパネル10にショートが発生しても、そのパネルだけが非点灯となり、その他のパネルは点灯し続けることができるので好ましい。
【0017】
(有機ELパネル)
同図(B)に、本実施形態においてリペアされる有機ELパネル10の断面図を示す。同図(B)に示す有機ELパネル10は、透明基板1と、透明基板1の一方の面上に設けられた面発光素子である有機EL素子2とから構成される。有機EL素子2は、例えば、同図(B)に示すように、透明基板1の一方の面上に、陽極(透明電極)21、正孔注入層22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25、電子注入層26、及び陰極(金属電極)27が順に積層された積層体で構成される。透明基板1は、例えば、ガラス等が挙げられ、陽極21は、例えば、透明導電膜(例えば、酸化インジウムスズ(ITO))等が挙げられ、陰極27は、例えば、アルミニウム等の金属薄膜が挙げられる。発光層24は、有機材料等を含む。
【0018】
尚、同図(B)に示す有機ELパネル10は、発光層24が、1ユニットで構成されているが、本実施形態においてリペアされる有機ELパネル10は、これに限定されず、例えば、上記有機EL素子を1ユニットとしたときに、2段、3段と重ねて2ユニット構成、3ユニット構成としてもよい。
【0019】
(駆動手段)
駆動手段20は、陽極21及び陰極27に電圧を印加する手段を備えていれば、特に制限されず、一般的な手法に準じても良い。本実施形態において、点灯時に前記駆動手段20により有機ELパネル10を駆動した場合のフレーム周波数Fは、特に制限されないが、例えば、60Hz以上であることが好ましい。これにより、フリッカーを防止することができる。
【0020】
(リペア工程)
以下、本実施形態の有機EL照明装置100のリペア工程について説明する。まず、駆動手段20により、パルス波の電圧を有機ELパネル10に対して印加する。前記電圧印加時間(オン期間)は、前記有機EL素子の素子容量Cと素子を含む配線抵抗Rの積である時定数T以上とする。次に、前記電圧印加を一定期間オフにする。そして、前記電圧印加期間(オン期間)と前記オフ期間とを一周期(1サイクル)とし、繰り返し印加する。
【0021】
本実施形態において、前記有機層における有機発光材料として長波長側の材料を使用する場合、短波長側の光で励起され、光リーク電流が発生し、リペア条件が変動する可能性があるため、暗環境下で行うことが好ましい。
【0022】
本実施形態において、前記パルス波の電圧は、順方向電圧又は逆方向電圧である。前記順方向電圧とは、陽極21の電位が陰極27の電位よりも高くなるように、有機ELパネル10に印加される電圧をいう。また、逆方向電圧とは、陽極21の電位が陰極27の電位よりも低くなるように、有機ELパネル10に印加される電圧をいう。この場合、陰極27は、接地電位又はフレームグランドとしてもよい。
【0023】
本実施形態において、前記パルス波の電圧の値は、特に制限されないが、例えば、本実施形態の有機ELパネル10のように、発光層24が、1段(1ユニット)構成であれば、有機ELパネルの閾値電圧以上としてもよく、好ましくは、閾値電圧以上〜閾値電圧+3Vとすることができる。また、発光層24が、2段(2ユニット)、3段(3ユニット)構成であれば、前記電圧の値は、前記閾値電圧から増加しても良いし、閾値に加える印加電圧は倍増しても良く、例えば3段(3ユニット)構成のとき、具体的な値としては、前記閾値電圧に3V〜6Vを加えた値とすることができる。ここで、閾値電圧を超えることにより、充電が完了し(突入電流が流れず)、注入が始まり、発光が始まる。
【0024】
本実施形態において、前記繰り返し毎に印加する電圧の値は、特に制限されず、例えば、
図2のパルス波形図に示すように、一定としても良い。また、前記繰り返し毎に印加する電圧の値は、
図3のパルス波形図に示すように、段階的に上昇させても良い。これにより、例えば、最も内部欠陥の大きい箇所又は最もショートしやすい箇所から順次リペアする場合に効率良くリペアする事が出来る。この時、低い電圧のときにはパルス波として長い時間を、高い電圧のときは、パルス波として短い時間を印加するとリペアの効果が向上する。一例として、電圧と時間を乗じた値が一定となることを挙げることができる。また、前記繰り返し毎に印加する電圧の値は、
図4のパルス波形図に示すように、段階的に減少させても良い。これにより、例えば、発光効率を重視し、より薄膜となる素子とした場合において、連続的に繰り返し高電圧・高電流を掛けることにより有機EL素子がダメージを受ける可能性を低減することが出来る。この時、高い電圧のときにはパルス波として短い時間を、低い電圧のときは、パルス波として長い時間を印加するとリペアの効果が向上する。すなわち、上記の各場合において、それぞれリペアに最適な電圧と印加方法が存在することを示している。
【0025】
また、前記矩形波に対し、有機EL素子のコンデンサ成分による電圧の立ち上がりのなまりを防ぐため、印加開始時に、設定電圧に対し、設定電圧以上のブート電圧(ブートストラップ、チャージポンプ)を印加してもよい。これにより、より確実にリペアを行うことができる。
【0026】
前記入力する前記パルス波形は、特に制限されず、例えば、矩形波(方形波)、逆鋸波、鋸波(ランプ波)、三角波、Sin波(正弦波)、台形波、ガウスパルス波、及び階段状正弦波からなる群から選択される少なくとも一つのパルス波形が挙げられる。前記群から選択されるパルス波形は、離散的なパルス波、又はPWM(Pulse width modulation)若しくはPAM(Pulse−amplitude modulation)等であっても良い。これにより、瞬時に電圧を印加することができる。さらに、前記入力する前記パルス波形は、
図3、
図4の矩形波、逆鋸波、鋸波、三角波、及びSin波からなる群から選択される少なくとも一つのパルス波形であればより好ましい。
図5のパルス波形図に示すように、前記パルス波形が、逆鋸波であれば、有機EL素子(有機ELパネル)へのリペア電圧印加時に突入電流が流れやすくなりリペアが容易に行われ、また時間とともに電圧が低くなるので、リペア直後の箇所に継続的に電圧が掛かることがなくなるのでリペア痕が広がる・大きくなることを防ぐことができる。一般的に、発光効率を重視した素子構成の場合、電界によるキャリアの注入効率の向上と、駆動電圧低減のため有機EL素子の膜厚をより薄くすることになるが、より薄膜化した有機EL素子において急激な高電圧が印加されると、正常な素子の箇所へもダメージを与える可能性が高くなる。パルス波形が鋸波であれば、より薄膜となる有機EL素子とした場合においても、素子へのダメージを低減でき、本来正常な箇所を破壊してしまうことを避けることができる。三角波、Sin波は前記現象をバランスよく防ぎ、効率よくリペアすることができることとなる。何れにしても、有機EL素子に用いる材料、素子の構成により、適時選択することができる。
【0027】
前記繰り返し印加する時間は、特に制限されず、例えば、1秒〜5分、好ましくは、10秒〜2分である。前記繰り返し印加する時間が、30秒〜1分であれば、有機EL素子のいかなる材料やデバイス構成の変化にも対応でき、且つ本リペア工程に掛かる時間が生産スループットへ影響を与えることがない点で好ましい。
【0028】
本実施形態において、前記電圧印加時間(オン時間)は、前述の通り、前記有機EL素子の素子容量と前記素子を含む配線抵抗の積である時定数以上である。これにより、ジュール熱による欠陥箇所のオープン化・絶縁化のための十分な電流を流すことが出来る。
【0029】
本実施形態のリペア方法であれば、非常に時間の掛かるレーザー光を用いてのリペア工程によらず、パネル作製後、検査工程時に電気的にリペアを行うことができる。これにより、リペア工程の生産タクトタイムが短縮され、例えば、1日あたりの生産数量が向上するので、生産タクトタイムが短縮できる。
【0030】
また、一般的にレーザーリペア工程は、エージングを行い、時間とともに発現してきたショート等の欠陥箇所を対症療法的に焼き切るものである。前記エージングは永遠にできず、エージングが終了した後も、発現しなかったショート等の欠陥の元(原因)は残ったままとなる。その結果、前記レーザーリペア工程により、リペアした面発光装置は、出荷後に不具合となる可能性がある。これに対し、本発明は、検出困難なショート等欠陥の元を電気的に、短時間で洩れなくリペアできるので、出荷後の市場での前記面発光装置の不具合を著しく低減できる。
【0031】
本実施形態において、前記パルス波の電圧の値は、前述の通り、前記発光層24が、1段(1ユニット)構成であれば、使用する材料、素子構成により異なるが、下限は降伏電圧以上〜0V、上限は閾値電圧以上〜閾値電圧+3Vとすることが好ましい。これにより、閾値電圧以下で、2〜3Vを中心に±1V付近でリーク電流又は微小漏れ電流によるバンプの発生をリペアする事が出来る。
【0032】
すなわち、まず、本発明者は、発光層が1ユニット構成である白色有機ELパネルを詳細に解析したところ、
図14に示すように、閾値電圧以下で、2〜3Vを中心に±1V付近でリーク電流または微小漏れ電流によるバンプの発生が集中している問題点を見出した。
【0033】
また、本発明者は、前記問題点の原因が以下に述べる点に起因する事を見出した。すなわち、まず、陽極として有機層の下地に用いる酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電膜に生じるグレインやスパイクなど表面段差等が挙げられる。これにより、ITO上の有機膜に欠損が生じ、又は有機層の膜厚が薄くなるため、陽極−陰極間距離が短くなる。そして、局所的に電界が高くなった箇所にリーク電流が流れる、またはショートとなる。また、陰極に用いるアルミニウム等の金属層も、成膜時に下地の有機層の表面形状をトレースするので、有機層の膜厚ムラやピンホール等に陰極層が入り込み(ひげ等が発生し)前記と同様にリーク・ショートとなる。そして、本発明者は、前記表面段差が、有機層を真空蒸着法により製膜する時に、材料の突沸などスプラッシュ等による凝集、膜質不均一、又は膜厚ムラが発生することに起因することを見出した。
【0034】
また、本発明者は、ITO成膜時のゴミ若しくは異物の混入、又はソーダガラス等フロート法により作製した透明基板表面を研磨するときに用いるCeの残差が、ITOの下地であり、バリア膜(バッファ層)となるSiO
2の成膜時に混入することより前記問題点が発生することを見出した。
【0035】
本発明者は、前記問題点の原因を踏まえて鋭意検討した結果、前記ショート等欠陥の要因のうち、異物や、ゴミ、スプラッシュや、Ceの残差等は、前記電圧が、閾値電圧〜閾値電圧+3Vの範囲であることにより、効率よくリペアされることを見出した。
【0036】
本実施形態では、リペアされる発光パネルとして有機ELパネルを使用する。有機ELパネルは、発光ダイオードであると同時に、構造的に大きな平行平板を備えたコンデンサとなっている。そのため、初期通電(電圧印加)を行うと、まずそれらのコンデンサの充電を行わなければならないため、突入電流が発生する。本実施形態では、前記突入電流を利用する事により、将来ショートとなる可能性のある欠陥箇所をジュール熱または局在的な放電エネルギーにより効率よく電気的にリペアする。これにより、前記パルス波の電圧を長時間印加する必要が無い。
【0037】
尚、本実施形態では、発光装置として、有機EL照明装置を例示したが、これに限定されず、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、サイネージなどの表示灯、イルミネーションなどの装飾灯具等であっても良い。
【0038】
[実施形態2]
本実施形態においてリペアされる有機EL照明装置は、特に制限されず、例えば、実施形態1と同様であっても良い。以下、本実施形態のリペア方法を、実施形態1と同様に、
図1の有機EL照明装置100に適用した場合について説明する。
【0039】
本実施形態のリペア方法は、
図6及び7のパルス波形図に示すように、前記印加する電圧が、順方向電圧であり、かつ前記オフの期間中に逆方向バイアスを印加すること以外は、実施形態1のリペア方法と同様に行う。
図6では、パルス波形として矩形波の場合を、
図7では、パルス波形として逆鋸波である場合を示す。
【0040】
前記「逆方向バイアスを印加する」とは、陰極に対して、陽極に逆バイアスを印加することをいう。この場合、陰極は、接地電位又はフレームグランドとしても良い。
【0041】
前記逆方向バイアスの値は、特に制限されないが、例えば、降伏電圧の絶対値より小さい(降伏電圧に達していない)値とする。また、本実施形態のように、発光層が1ユニット構成の場合は、前記電圧の値は、絶対値で5V以下とし、発光層が、2ユニット構成若しくは3ユニット構成の場合は、例えば、さらに前記電圧の値を増加、段数倍する。
【0042】
一般的に、前記パルス波の順方向電圧を印加時に、前記周期が短い場合、前の周期の蓄積電荷が残っており、次の周期(サイクル)時にその影響により電圧が印加されにくくなる。本実施形態のリペア方法を使用すれば、順方向電圧を印加する前記周期(サイクル)のオフ期間に、逆方向バイアスを印加することで蓄積電荷を抑えることが出来るため、次の周期(サイクル)の印加をより確実にすることが出来る。
【0043】
本実施形態において、前述の通り、前記周期(1サイクル)毎の前記オフの期間中に逆バイアスを印加する。但し、本発明は、これに限定されず、例えば、2サイクル毎、3サイクル毎のように、複数の周期毎に逆バイアスを印加しても良い。
【0044】
[実施形態3]
本実施形態においてリペアされる有機EL照明装置は、特に制限されず、例えば、実施形態1と同様であっても良い。以下、本実施形態のリペア方法を、実施形態1と同様に、
図1の有機EL照明装置100に適用した場合について説明する。
【0045】
以下、本実施形態の有機ELパネル10のリペア工程について説明する。まず、前記駆動手段20により、パルス波の電圧を有機ELパネル10に対して印加する。前記印加する電圧の値は、
図8のパルス波形図で示すように、閾値電圧の1/2電位(Va)を中心として最大±1.5Vの範囲である。その印加電圧は、一般的に閾値電圧以下となる。そして、同図のパルス波形図で示すように、前記電圧の値を低電圧側から高電圧側へリニアにスイープし、繰り返し印加する。
【0046】
本実施形態において、前記パルス波の電圧は、順方向電圧及び逆方向電圧の一方である。
【0047】
本実施形態において、前記入力する前記パルス波形は、特に制限されず、実施形態1における前記パルス波形と同一であっても良い。
【0048】
本実施形態において、前記スイープさせる1周期の時間は、特に制限されないが、例えば、5秒〜30秒、好ましくは、10秒〜20秒である。また、全体の時間は、特に制限されないが、例えば、3〜10分、好ましくは、3〜5分である。
【0049】
本実施形態のリペア方法であれば、レーザー光を用いてリペアを行うのではなく、パネル作製後、検査工程時に電気的にリペアを行うことができるので、生産タクトタイムが短縮する事が可能となる。
【0050】
さらに、本実施形態のリペア方法であれば、閾値電圧以下で、2〜3Vを中心に±1V付近でリーク電流又は微小漏れ電流によるバンプの発生をより確実にリペアする事が出来る。
【0051】
本発明者は、閾値電圧以下に見られる前記バンプの発生の要因は、前述の異物やゴミ等に加えて、有機EL素子の材料、構成にも大きく起因していることを見出した。すなわち陽極等に用いる透明電極層、有機層、陰極等に用いる金属層の各材料の禁制帯(バンドギャップ)のエネルギーが(0Vから)有機EL素子の閾値電圧まで辺りに存在するため、素子の構成・条件・状態等により、前記電圧を印加した時にリーク電流が発生しやすくなるためである。具体的には、低電圧側から金属(陰極)、有機層、透明電極の順番となる。
【0052】
本発明者は、前記有機EL素子の材料、構成による前記要因について鋭意検討した結果、閾値電圧以下の方法で効率よくリペアされ、且つ過剰なリペア電圧を印加しないことによりリペアの形状(リペア痕)を最小とできると同時にリペア後の絶縁部も最小に止めることを見出した。
【0053】
本発明者らは、さらに、鋭意検討した結果、前記範囲の電圧(閾値電圧の1/2電位を中心として最大で±1.5V程度となる)を、低電圧側から高電圧側へスイープして繰り返し印加する方法が有効であることを見出した。前記印加電圧は、一般的に閾値電圧以下で、有機EL素子の充電が完了しない電圧においてもマイルド(リペア部を最小限)にリペアすることができる。
図15は、本実施形態におけるリペア方法を用いてリペアした後の有機ELパネルのI−V特性図を示す。同図に示すように、閾値電圧以下で、2〜3Vを中心に±1V付近でリーク電流又は微小漏れ電流によるバンプの発生をより確実にリペアする結果を得ている。
【0054】
本実施形態において、例えば、
図9のパルス波形図に示すように、前記低電圧側から高電圧側へスイープした後にさらに前記高電圧側から低電圧側へスイープして、繰り返し印加しても良い。前記有機EL素子の材料・構成起因のリーク・ショートは、例えば、材料のもつ禁制帯のエネルギーを利用して自己修復を行うので急激な電圧変動、印加を行なわなくてもよい。
図9のパルス波を印加することにより、低電圧側から高電圧側へスイープ時と同時に高電圧側から低電圧側へスイープ時にもリペアを行うことができ、また、最小のエネルギーで欠陥箇所をリペアできるので、リペアの形状(リペア痕)を最小とできると同時にリペア後の絶縁部(素子構成の絶縁破壊部)も最小に止めることができる。これにより、見た目もよいと同時に、絶縁部が不均一になることによる、以降の再ショート等の継続的な欠陥も防ぐことができる。
【0055】
本実施形態において、例えば、
図10及び11のパルス波形図に示すように、前記繰り返し毎の周期内にオフ時間を有しても良い。すなわち、
図10のパルス波形図に示すように、前記低電圧側から高電圧側へスイープした後にオフ時間を有してもよいし、
図11のパルス波形図に示すように、前記低電圧側から高電圧側へスイープした後、さらに前記高電圧側から低電圧側へスイープした後にオフ時間を有してもよい。これにより、例えば、常時順方向電圧印加による蓄積電荷をおさえることができ、次の周期(サイクル)の印加をより確実にすることができると同時に、高電圧側から低電圧側へスイープ時にもリペアを行うことができ、また、最小のエネルギーで欠陥箇所をリペアできるので、リペア痕を最小とできると同時にリペア後の絶縁部(素子構成の絶縁破壊部)も最小に止めることができる。これにより、見た目もよいと同時に、以降の再ショート等の継続的な欠陥も防ぐことができる。また、本実施形態において、例えば、
図12及び13のパルス波形図に示すように、段階ごとに前記電圧を上昇または減少する毎に前記オフ時間を有しても良い。
【0056】
尚、本実施形態のリペア工程は単独で行ってもよいが、実施形態1若しくは2のリペア工程の前、又は後に行ってもよく、実施形態1若しくは2のリペア工程の前に行うことが好ましい。これにより、将来に亘って短絡の発生しない信頼性の高い有機EL照明装置とすることができる。
【0057】
[実施形態4]
本実施形態において、以下、有機ELパネルの製造方法について説明する。
【0058】
本実施形態において、面発光装置の製造方法は、少なくとも、基材上に、第一電極層、有機発光層、及び第二電極層を前記順序で積層して面発光装置を形成する工程と、前記面発光装置をリペアする工程と、を含む。本実施形態の製造方法は、前記リペア工程が、実施形態1〜3のリペア方法により実施することを特徴とし、前記形成工程については、特に制限されず、一般的な手法に準じて行うことが出来る。
【0059】
[実施形態5]
本実施形態において、以下、有機EL照明装置について説明する。
【0060】
本実施形態において、有機EL照明装置は、実施形態4により製造された有機ELパネルと、前記有機ELパネルの第一電極層及び第二電極層に電圧を印加する駆動手段とを含む。前記駆動手段は、特に制限されず、例えば、実施形態1記載の駆動手段であっても良い。
【0061】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。