特許第6366092号(P6366092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366092消防司令システム、消防指令方法および消防指令プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366092
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】消防司令システム、消防指令方法および消防指令プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20180723BHJP
【FI】
   G06Q50/26
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-126354(P2014-126354)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-4530(P2016-4530A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直樹
【審査官】 藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−128212(JP,A)
【文献】 特開2005−309810(JP,A)
【文献】 特開2002−156902(JP,A)
【文献】 特開2007−241502(JP,A)
【文献】 特開2001−184596(JP,A)
【文献】 特開2013−030046(JP,A)
【文献】 特開2011−204099(JP,A)
【文献】 特開2013−041088(JP,A)
【文献】 特開2012−108638(JP,A)
【文献】 特開2013−104953(JP,A)
【文献】 特開2006−153911(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0103294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
119番緊急通報を受け付けた際に、緊急に対処すべき現在の事案に対する出動指令書に関する情報を少なくとも画面に表示して、緊急出動を指令する消防司令システムにおいて、過去に発生した過去事案の災害点と該過去事案を一意に特定可能な事案番号とを地図上に表示可能な地図情報として少なくとも保存する災害点位置記憶手段を司令室内に備え、前記現在の事案に対する出動指令時に、前記災害点位置記憶手段にアクセスすることにより、前記現在の事案の出動に当たって参考になる可能性が高い情報を有する1ないし複数の過去事案の災害点を抽出して、抽出した前記過去事案の災害点の位置を示すマーク記号を当該過去事案の事案番号とともに、前記現在の事案の災害点の位置を示すマーク記号が表示されている地図上に追加して画面表示し、該地図上に追加して画面表示されたいずれかの前記マーク記号が選択された際に、選択された前記マーク記号に該当する前記過去案件の情報を、過去に発生した各過去事案の活動結果に関する情報を保存している過去事案記憶装置から読み出して画面表示することを特徴とする消防指令システム。
【請求項2】
過去に発生した前記過去事案に関する情報の分析結果から、以降の出動時において注意すべき注意情報が検出された場合、検出された該注意情報を出動注記情報として該当する前記過去事案ごとに保存する出動注記情報記憶手段を司令室内にさらに備え、前記現在の事案に対する出動指令時に、前記災害点位置記憶手段へのアクセス結果から抽出された前記過去事案に関する前記出動注記情報が、前記出動注記情報記憶手段に保存されていた場合は、当該過去事案に関する前記出動注記情報を読み出して画面表示することを特徴とする請求項1に記載の消防指令システム。
【請求項3】
前記災害点位置記憶手段へのアクセス結果から抽出された前記過去事案の活動結果に関する情報を参照して、前記過去事案ごとに、各出動車両の出動から災害点の現場に到着するまでに要した到着所要時間の全出動車両分の平均値を算出して、算出した前記到着所要時間の全出動車両分の平均値を追加して画面表示することを特徴とする請求項1または2に記載の消防指令システム。
【請求項4】
前記災害点位置記憶手段へのアクセス結果から抽出される前記過去事案は、前記現在の事案の災害点との間の距離が近隣範囲としてあらかじめ定めた範囲内に災害点が存在する近隣の過去事案であるか、または、前記近隣の過去事案でありかつ前記現在の事案と同一の災害種別の過去事案であるか、または、前記近隣の過去事案でありかつ前記現在の事案と同一の災害種別の過去事案でありかつ有効期間として現時点からあらかじめ定めた期間まで遡った範囲内に収まっている過去事案であるか、または、前記近隣の過去事案でありかつ前記現在の事案と同一の災害種別の過去事案でありかつ現在の事案と同一季節に発生した過去事案であるか、のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の消防指令システム。
【請求項5】
前記災害点位置記憶手段へのアクセス結果から抽出された前記過去事案に関する情報として画面表示された情報を、前記出動指令書に関する情報に含めて紙に印刷することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の消防指令システム。
【請求項6】
119番緊急通報を受け付けた際に、緊急に対処すべき現在の事案に対する出動指令書に関する情報を画面表示および紙に印刷して、緊急出動を指令する消防司令方法であって、過去に発生した過去事案の災害点と該過去事案を一意に特定可能な事案番号とを地図上に表示可能な地図情報として少なくとも保存するために司令室内に備えられた災害点位置記憶手段に、前記現在の事案に対する出動指令時にアクセスすることにより、前記現在の事案の出動に当たって参考になる可能性が高い情報を有する1ないし複数の過去事案の災害点を抽出して、抽出した前記過去事案の災害点の位置を示すマーク記号を当該過去事案の事案番号とともに、前記現在の事案の災害点の位置を示すマーク記号が表示されている地図上に追加して画面表示し、該地図上に追加して画面表示されたいずれかの前記マーク記号が選択された際に、選択された前記マーク記号に該当する前記過去案件の情報を、過去に発生した各過去事案の活動結果に関する情報を保存している過去事案記憶装置から読み出して画面表示することを特徴とする消防指令方法。
【請求項7】
過去に発生した前記過去事案に関する情報の分析結果から以降の出動時において注意すべき注意情報が検出された場合に検出された該注意情報を出動注記情報として該当する前記過去事案ごとに保存するために司令室内にさらに備えられた出動注記情報記憶手段に、前記現在の事案に対する出動指令時にアクセスすることにより、前記災害点位置記憶手段へのアクセス結果から抽出された前記過去事案に関する前記出動注記情報が、前記出動注記情報記憶手段に保存されていた場合は、当該過去事案に関する前記出動注記情報を読み出して画面表示することを特徴とする請求項6に記載の消防指令方法。
【請求項8】
前記災害点位置記憶手段へのアクセス結果から抽出された前記過去事案の活動結果に関する情報を参照して、前記過去事案ごとに、各出動車両の出動から災害点の現場に到着するまでに要した到着所要時間の全出動車両分の平均値を算出して、算出した前記到着所要時間の全出動車両分の平均値を追加して画面表示することを特徴とする請求項6または7に記載の消防指令方法。
【請求項9】
前記災害点位置記憶手段へのアクセス結果から抽出される前記過去事案は、前記現在の事案の災害点との間の距離が近隣か範囲としてあらかじめ定めた範囲内に災害点が存在する近隣の過去事案であるか、または、前記近隣の過去事案でありかつ前記現在の事案と同一の災害種別の過去事案であるか、または、前記近隣の過去事案でありかつ前記現在の事案と同一の災害種別の過去事案でありかつ有効期間として現時点からあらかじめ定めた期間まで遡った範囲内に収まっている過去事案であるか、または、前記近隣の過去事案でありかつ前記現在の事案と同一の災害種別の過去事案でありかつ現在の事案と同一季節に発生した過去事案であるか、のいずれかであることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の消防指令方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかの記載の消防指令方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする消防指令プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防司令システム、消防指令方法および消防指令プログラムに関し、特に、過去の出動内容の詳細を保持する事案情報を地図情報として保持し、表示することを可能にし、さらに、該事案情報を出動指令書に付記して出力することにより、消防活動を効率的に行うことを可能にする消防司令システム、消防指令方法および消防指令プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火災や災害等の緊急事態の発生の連絡や救急要請に基づいて緊急車両を出動させる指示を行うための消防指令システムが各種提案されている。例えば、特許文献1の特許第4760721号公報「通信指令システム」は、発生した事案に対して出動指令書によらないで出動した人員と車両とに関しても、過去事案の記録として、当該事案に自動的に取り込むか、又は、指令員が選択した事案に自動的に取り込むことを可能にする仕組みを提案している。
【0003】
すなわち、該特許文献1には、指令外出動車両に関する隊編成をデータベースサーバに保存し、前記指令外出動車両に関する隊編成を、出動指示で指令された隊編成に取り込むことを可能にするシステムが記載されている。さらに、特許文献1のシステムでは、出動指示による隊編成や指令外出動車両がそれぞれ1つだけの場合には、隊編成に自動的に取込み、一方、出動指示による隊編成や指令外出動車両が複数存在する場合には、指令員からの選択指示にしたがって隊編成に自動的に取り込むようにする。また、特許文献1のシステムは、出動車両取込機能の対象となる指令外出動車両をあらかじめ設定しておき、対象となる指令外出動車両の不必要な取込みを防止するようにしている。
【0004】
また、特許文献2の特許第4766020号公報「通信指令システムおよび通信指令プログラム」においては、自動出動編成に関して、出動指令書の通りに出動できなかった車両については、過去事案の記録において、事案から自動的に削除するか、又は、指令員が事案や車両を選択して事案から自動的に削除することを可能にする仕組みを提案している。
【0005】
すなわち、該特許文献2においては、出動指令が発行されてから、指定された許容時間例えば10分以内に出動できなかった未出動車両について、出動編成テーブルから自動的に削除する処理を行う。該処理は、未出動車両が1台だけの場合はそのまま自動的に削除し、一方、未出動車両やこれを含む該当事案が複数存在する場合には、指令員からの選択指示にしたがって削除するようにする。また、自動削除の対象となる車両の動態の種類をあらかじめ設定しておき、削除対象となる車両を確実に抽出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4760721号公報(第10−12頁)
【特許文献2】特許第4766020号公報(第10−12頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1や前記特許文献2に記載されたような従来の消防指令システムにおいては、次のような問題がある。
【0008】
第1の問題点は、記録された過去事案の情報を次回以降の活動に十分に反映することができないことにある。すなわち、消防業務においては、実際の出動による緊急活動以外に、警防業務における消防の管轄する範囲として、道路状況、水利の状況、また、世帯主の情報などの調査が行われ、調査結果の情報が収集されている。かくのごとき調査結果の情報について、例えば、新しい道路が建設された情報が含まれていた場合等においては、地図検索装置に利用される地図情報のメンテナンスが行われ、新しい道路の図形情報を登録するなど、逐次新しい情報として登録される。また、例えば、緊急活動の結果に関する情報が含まれていた場合においては、過去の事案として管理され、これら過去事案の情報を次回以降の活動に活かすことによって、より効率的な活動が可能になる。しかし、事案の情報が緊急出動活動に活かされるか否かは、対応する消防隊員の経験や知識に依存しており、さらには、従来の消防司令システムにおいては、過去事案の情報を次回以降の活動にリアルタイムにフィードバックしていないという課題がある。
【0009】
その理由は、従来の消防司令システムや消防OAと称されるシステムにおいては、過去事案に関する事案情報を管理しているものの、管理されている事案情報は、最終的に事案報告書として監督官庁へ届け出ることを主たる目的としており、次回の出動時に、過去の活動結果を消防指令システムとして提示して活用するという機能を有していないためである。
【0010】
第2の問題点は、災害点に近い過去の事案の情報を次回以降の活動に活かすことができないことにある。すなわち、従来の消防指令システムにおいては、災害点の位置が近い過去の事案が存在している場合、過去の活動経緯から、交通の状況、付近の消火活動等に問題を生じる障害物の情報など、次回以降の活動に活かすことのできる有効な情報(すなわち出動に当たって注意すべき出動注記情報)がたとえ存在していたとしても、かくのごとき情報を消防指令システムとして実際の緊急活動時にリアルタイムに提示・表示することができないために、次回以降の活動に活用されることがないという課題がある。
【0011】
その理由は、従来の消防司令システムにおいては、緊急活動における出動時に使用される出動指令書には、過去の事案を基にする情報を印刷することがなされておらず、あくまでも、現在発生している事案として、119番緊急通報のあった事案の災害点の地図や住所、人名などの情報を送信して出動指令書に印刷することが主体となっているためである。
【0012】
第3の問題点は、災害点の位置情報に即した過去の事案分析がなされていないことにある。
【0013】
その理由は、過去事案として従来から管理されている事案情報には、災害が発生した住所等の文字情報は存在するものの、該文字情報は出動指令書として利用可能な地図情報と結び付いたものではないために、地理的条件を勘案して、現在の事案の災害点の近傍に発生した過去の他の事案情報との比較・分析を行うことを可能にするシステムとして運用されないためである。
[発明の目的]
【0014】
(本発明の目的)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、過去事案に関する情報を有効に活用して、119番緊急通報時の消防司令活動における活動の精度向上を可能とする消防司令システム、消防指令方法および消防指令プログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するため、本発明による消防司令システム、消防指令方法および消防指令プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0016】
(1)本発明による消防司令システムは、119番緊急通報を受け付けた際に、緊急に対処すべき現在の事案に対する出動指令書に関する情報を少なくとも画面に表示して、緊急出動を指令する消防司令システムにおいて、過去に発生した過去事案の災害点と該過去事案を一意に特定可能な事案番号とを地図上に表示可能な地図情報として少なくとも保存する災害点位置記憶手段を司令室内に備え、前記現在の事案に対する出動指令時に、前記災害点位置記憶手段にアクセスすることにより、前記現在の事案の出動に当たって参考になる可能性が高い情報を有する1ないし複数の過去事案の災害点を抽出して、抽出した前記過去事案の災害点の位置を示すマーク記号を当該過去事案の事案番号とともに、前記現在の事案の災害点の位置を示すマーク記号が表示されている地図上に追加して画面表示し、該地図上に追加して画面表示されたいずれかの前記マーク記号が選択された際に、選択された前記マーク記号に該当する前記過去案件の情報を、過去に発生した各過去事案の活動結果に関する情報を保存している過去事案記憶装置から読み出して画面表示することを特徴とする。
【0017】
(2)本発明による消防指令方法は、119番緊急通報を受け付けた際に、緊急に対処すべき現在の事案に対する出動指令書に関する情報を少なくとも画面に表示して、緊急出動を指令する消防司令方法であって、過去に発生した過去事案の災害点と該過去事案を一意に特定可能な事案番号とを地図上に表示可能な地図情報として少なくとも保存するために司令室内に備えられた災害点位置記憶手段に、前記現在の事案に対する出動指令時にアクセスすることにより、前記現在の事案の出動に当たって参考になる可能性が高い情報を有する1ないし複数の過去事案の災害点を抽出して、抽出した前記過去事案の災害点の位置を示すマーク記号を当該過去事案の事案番号とともに、前記現在の事案の災害点の位置を示すマーク記号が表示されている地図上に追加して画面表示し、該地図上に追加して画面表示されたいずれかの前記マーク記号が選択された際に、選択された前記マーク記号に該当する前記過去案件の情報を、過去に発生した各過去事案の活動結果に関する情報を保存している過去事案記憶装置から読み出して画面表示することを特徴とする。
【0018】
(3)本発明による消防指令プログラムは、少なくとも前記(2)に記載の消防指令方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の消防司令システム、消防指令方法および消防指令プログラムによれば、以下のような効果を奏することができる。
【0020】
119番緊急通報があった現在の事案に対する出動指令時に、現在の事案に関する情報のみならず、現在の事案の出動に当たって参考になる可能性が高い情報を有する過去事案を抽出し、抽出した過去事案に関する各種の情報を、過去事案の出動注記情報(過去事案の分析結果として得られる、出動時に当たって注意すべき情報)を含め、リアルタイムに画面表示することができ、過去事案の情報を参考にして、効果的な出動指令を指令室から行うことができることにある。その理由は、司令室には、過去事案の情報を地図情報として保存しており、現在の事案の参考になる過去事案の情報を、出動注記情報を含め、リアルタイムに検索することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態における消防司令システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
図2図1の消防指令システムの地図検索装置内の近隣過去事案検索手段における動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図3図2のフローチャートに示す近隣過去事案検索手段の動作結果として得られる地図検索装置の地図表示の一例を示すイメージ図である。
図4図2のフローチャートに示す近隣過去事案検索手段の動作結果として得られた近隣の過去事案に関する出動注記情報が記載された出動指令書の出力例を示す模式図である。
図5図1の消防指令システムの地図検索装置内の近隣過去事案検索手段における動作の変形例を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態における消防司令システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
図7図6の消防指令システムの地図検索装置内の災害点到着時間表示手段における動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図8図7のフローチャートに示す災害点到着時間表示手段の動作結果として得られる地図検索装置の地図表示の一例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による消防司令システム、消防指令方法および消防指令プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による消防司令システムおよび消防指令方法について説明するが、かかる消防指令方法をコンピュータにより実行可能な消防指令プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、消防指令プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
【0023】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、過去事案に関する情報を有効に活用して、119番緊急通報時の消防司令活動における活動の精度向上を可能にする消防指令システムを実現していることを主要な特徴としており、その内容は、以下の通りである。
【0024】
本発明においては、従来の消防指令システムにおいては地図情報として保持されていなかった過去事案に関する情報を、地図検索装置に過去事案の災害点を示す位置情報とともに保持することにより、出動指令時にリアルタイムに該過去事案に関する情報を位置情報とともに地図検索装置に表示し、また、該過去事案に関する情報については、出動時の指令情報が記載された出動指令書にも記述して印刷することにより、出動指令時だけではなく、出動後の活動においても利用することができるようにしていることを主要な特徴の一つとしている。
【0025】
また、本発明においては、自動出動指令装置に保持された過去事案に関する情報を、出動指令時に画面表示される地図上および出動指令書に記載して印刷される地図上に、過去事案の災害点を示すマーク記号とともに該マーク記号と関連付けて適宜表示することができ、かつ、出動指令における出動から災害点に到着までの到着所要時間を視覚的に表示することも可能にしている。而して、現在の事案の災害点の周辺地域である特定地域において、各事案の災害点への到着に要する平均的な時間を分析することもできるし、あるいは、特定の出動において災害点への到着が遅延した場合などの分析にも利用することができる。
【0026】
より具体的には、本発明による消防司令システムは、前述の課題を解決するための手段として、少なくとも、次の5つの仕組みを備えている。
【0027】
第1の仕組みにおいては、119番緊急通報を受け付けた際に、該緊急通報としての事案を特定するための一意の番号が事案番号として最初に払い出され、さらに、出動指令を行う際に、該事案の災害点が地図検索装置にて決定される。しかる後、当該災害点の位置情報および前記事案番号は、司令室内に配置されているデータベース等に記録される。なお、既存の消防司令システムにおいても実施されているように、火災の消火や救急活動の完了後の当該事案に関する各種の情報については、自動出動指令装置に過去事案に関する情報として保存される。
【0028】
第2の仕組みにおいては、前記第1の仕組みにおいて過去事案に関する情報として保存された情報を、地図検索装置に画面表示することを可能にしている。最初に画面表示される情報は、過去事案に関する災害点の地図上の位置をあらかじめ定めたマーク記号としてディスプレイ上に画面表示し、さらに、該災害点を示すマーク記号をマウス等のデバイスを用いて選択することによって、選択したマーク記号に該当する過去事案に関する情報を画面表示して閲覧することができる。このとき、地図検索装置に保持している事案番号を基にして、自動出動指令装置に過去事案に関する情報として保存されていた事案の情報を検索することにより、画面表示を実現する。
【0029】
過去事案に関する情報については、災害点を示す情報となる住所、目標物、気象情報、各出動車両の動態(出動時刻や到着時刻)およびその移動時間等が記録されており、画面表示された該過去事案に関する情報を閲覧することができる。また、地図検索装置において、過去事案に関する付加情報も表示することができる。該付加情報としては、例えば、災害点まで移動するルートの道路状況や災害点周辺の水利の状況、災害点における世帯主に関する情報などに代表される情報であり、出動時において注意すべき情報すなわち出動注記情報として追加入力して保存しておくことにより、画面表示することを可能にしている。
【0030】
第3の仕組みは、地図検索装置において、現在の事案の近隣に発生していた各過去事案について、それぞれの災害点に到着するまでの到着所要時間に関する情報を、当該過去事案の災害点を示すマーク記号の近傍に地図に重ね合わせる形で画面表示する。各過去事案における前記到着所要時間については、地図検索装置に保存された各過去事案に関する事案番号からそれぞれの過去事案の情報を検索し、過去事案ごとに、各出動車両の出動から現場への到着までに要した時間を求めた後に、全出動車両分の平均の到着所要時間を算出することにより過去事案ごとに決定される。また、各過去事案における前記到着所要時間については、該当する過去事案の災害点を示すマーク記号の近傍に地図に重ね合わせる形で画面表示するので、地理的な位置における到着所要時間を視覚的に把握することが可能である。
【0031】
また、複数の過去事案それぞれの到着所要時間については、地図情報として事前に比較して、到着所要時間が短い場合や長い場合は、例えば、道路の混雑状況、迂回路使用、通行の妨げになる障害物等の特性を分析して、該当する過去事案に関する出動注記情報として事前に追記して登録しておく。そして、現在の事案の出動指令を行う際に、出動に当たって注意すべき情報として過去事案に関する出動注記情報を、出動指令書の一つの情報として、リアルタイムに画面表示したり、紙に印刷したりして閲覧することができる。
【0032】
第4の仕組みにおいては、119番緊急通報時の現在の事案に関する災害点を地図検索装置において決定した際に、該災害点に近い近隣の過去事案を検索する。この時、前記第1の仕組みにおいて保存しておいた過去事案の災害点の位置情報と、現在の事案において決定した災害点との間の距離を比較し、近隣範囲としてあらかじめ定めた一定距離の範囲内(例えば50m以内の範囲など)に災害点が存在している過去事案を検索して抽出した後、さらに、抽出した過去事案の事案番号を検索キーとして自動出動指令装置に保管された当該過去事案に関する情報を検索する。
【0033】
このとき、前記第2の仕組みにおいて追加入力して保存しておいた出動注記情報も取得する。現在の事案に関する出動指令が行われると、地図検索装置から出動指令書の情報が、出動する各分署に送信されるが、送信される出動指令書の情報には、検索された近隣の過去事案の災害点位置を示す情報および取得された当該過去事案に付随する出動注記情報も含んで送信される。
【0034】
第5の仕組みにおいては、送信されてきた出動指令書の情報を各分署にて受信した際に、該出動指令書が印刷デバイスに印刷される。このとき、従来の出動指令書にも記載されている現在の事案に関する災害点の地図、住所、目標物、気象情報等の情報のみならず、前述のように、さらに、出動指令書の情報に含まれている近隣の過去事案の災害点位置を示す情報および当該過去事案に付随する出動注記情報も追加して印刷される。
【0035】
印刷された出動指令書は、緊急車両の出動とともに携行され、分析して付加されていた各過去事案の出動注記情報も参照しながら、現場に急行することができ、最適な径路による移動や、あるいは、最適な方法による消防活動を行うことが可能になる。
【0036】
(第1の実施形態の構成例)
次に、本発明の第1の実施形態における消防司令システムの構成例について、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における消防司令システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図であり、現在の事案の災害点の近隣の位置に災害点がある近隣の過去事案に関する出動注記情報を現在の事案に参考になる情報として取得して、現在の事案に対する出動指令書の情報とともに出力する際の構成例を示している。
【0037】
図1に示す消防司令システムは、地図検索装置100と自動出動指令装置200とを少なくとも含んで構成されており、地図検索装置100に関連する装置として、入力装置101、指令書送信装置107および指令書出力装置108の各手段を少なくとも備え、自動出動指令装置200に関連する装置として、入力手段(通報)201および出動指令出力装置207の各手段を少なくとも備えている。
【0038】
また、地図検索装置100は、地図表示手段102、災害点位置決定手段103、災害点位置記録手段104、指令書情報送信手段105、近隣過去事案検索手段106、災害点位置/事案番号記憶装置(災害点位置記憶手段)109および出動注記情報/事案番号記憶装置(出動注記情報記憶手段)110の各手段を少なくとも含んで構成される。一方、自動出動指令装置200は、事案番号発番手段202、災害点決定手段203、出動計画取得手段204、出動指令手段205、事案記録手段206および過去事案/事案番号記憶装置(過去事案記憶手段)208の各手段を少なくとも含んで構成される。
【0039】
図1に示した各手段は、概略、次のように動作する。自動出動指令装置200は、入力手段201より緊急通報を受令すると、自動出動指令装置200の事案番号発番手段202の実行により、当該緊急通報に関する事案を一意に特定することが可能な事案番号が発番される。次に、地図検索装置100は、入力装置101から地図表示を行う操作が行われると、地図検索装置100の地図表示手段102の実行により、入力装置101から指定された特定地域の地図が画面表示される。
【0040】
ここで、自動出動指令装置200の事案番号発番手段202の実行によって一意に特定された事案番号に関する現在事案の災害点に関して、地図上で災害点を直接決定する場合は、地図検索装置100の災害点位置決定手段103の実行によって、入力装置101により入力された特定地域の地図上の位置に基づいて災害点が決定されるか、あるいは、入力された通報時の住所、目標物、世帯主といった情報に基づいて災害点が決定される。また、地図検索装置100ではなく、自動出動指令装置200にて災害点を決定する場合は、自動出動指令装置200の災害点決定手段203の実行によって災害点が決定される。
【0041】
現在事案の災害点が決定されると、自動出動指令装置200の出動計画取得手段204および出動指令手段205が実行され、出動指令出力装置207に対して出動指令書が出力される。なお、現在事案に関する消防活動が終了した後は、事案記録手段206の実行により、当該現在事案の内容が、過去事案として事案番号とともに過去事案/事案番号記憶装置208に保存される。
【0042】
一方、地図検索装置100においては、災害点位置決定手段103の実行により災害点が決定されると、災害点位置記録手段104の実行によって、現在事案の災害点の位置が事案番号とともに災害点位置/事案番号記憶装置109に保存される。さらに、指令書情報送信手段105の実行によって出動指令書の情報が生成されて画面表示されるとともに、出動対象の各分署に送信するために指令書送信装置107に出力する。ただし、この時、事前に、現在の事案の出動に当たって参考になる可能性が高い情報を有する1ないし複数の過去事案を取得するために、近隣過去事案検索手段106の実行により、災害点位置/事案番号記憶装置109に保存されている過去事案の災害点と事案番号とを検索し、決定した現在事案の災害点との間の距離が近隣範囲としてあらかじめ定めた一定距離の範囲内に災害点が存在する過去事案を近隣の過去事案として抽出する。
【0043】
さらに、近隣過去事案検索手段106の実行により、出動注記情報/事案番号記憶装置110を検索して、先に抽出された近隣の過去事案に該当する出動注記情報を検索し、当該過去事案の災害点位置を示す地図上のマーク記号および当該過去事案の事案番号の他に、さらに、検索された当該過去事案の出動注記情報を画面表示するとともに、指令書情報送信手段105の実行により生成された出動指令書の情報に含めて、指令書送信装置107に対して送信する。なお、出動注記情報とは、前述したように、出動に当たって注意すべき情報であり、例えば、災害点まで移動するルートの道路状況や災害点近傍で使用可能な大口径の水利の有無の情報、通報者や災害点における世帯主の情報などに関する情報である。
【0044】
指令書送信装置107においては、指令書情報送信手段105の実行により出力されてきた出動指令書の情報を、指令書出力装置108に送信する。指令書出力装置108は、指令書送信装置107から送られてきた出動指令書の情報を受信すると、指令書情報送信手段105の実行により生成された出動指令書の情報に含まれている地図、災害点の住所、目標物、世帯主、気象等の情報とともに、近隣過去事案検索手段106の実行により検索された出動注記情報も合わせて、出動指令書として、印刷する。
【0045】
なお、図1に示す災害点位置/事案番号記憶装置109は、前述のように、災害点位置記録手段104の実行により、事案の災害点の位置を、地図上に重ねて表示可能な地図情報として、当該事案を一意に特定可能な事案番号とともに保存する記憶装置であり、近隣過去事案検索手段106により現在の事案の災害点の近隣に災害点が存在する過去事案を迅速に検索することが可能なように、過去事案/事案番号記憶装置208とは別個に、司令室内に配置される地図検索装置100内に備えられている。
【0046】
また、出動注記情報/事案番号記憶装置110は、近隣過去事案検索手段106の実行による過去事案の情報の分析結果から、または、過去事案の出動結果から、出動に当たって注意すべき情報が存在していた場合には、出動注記情報として、当該過去事案を一意に特定可能な事案番号とともに保存する記憶装置であり、近隣過去事案検索手段106により現在の事案の出動に当たって参考にすべき有効な過去事案の出動注記情報を迅速に抽出することが可能なように、災害点位置/事案番号記憶装置109と同様、過去事案/事案番号記憶装置208とは別個に、司令室内に配置される地図検索装置100内に備えられている。
【0047】
(第1の実施形態の動作の説明)
次に、図1に示した消防指令システムの動作について、地図検索装置100内の近隣過去事案検索手段106の動作例を、図2のフローチャートを用いて詳細に説明する。図2は、図1の消防指令システムの地図検索装置100内の近隣過去事案検索手段106における動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0048】
図2のフローチャートにおいて、地図検索装置100内の近隣過去事案検索手段106が起動されると(ステップA1)、まず、災害点位置/事案番号記憶装置109にアクセスして、過去に発生した事案の災害点位置と事案番号とを取得する(ステップA2)。しかる後、過去に発生した事案(過去事案)として災害点位置/事案番号記憶装置109から取得した件数を確認して、過去に発生した事案ごとの処理を行うために、ループ処理を設定する(ステップA3)。
【0049】
最初のループ処理においては、過去に発生した事案(過去事案)のうち、最初の過去事案を取り出して、該過去事案の災害点の位置と現在の事案によって決定されている災害点の位置との間の距離を算出する(ステップA4)。次いで、算出した距離が、近隣範囲(すなわち近隣過去事案として現在の事案において参照すべき事案となる可能性があると判断される距離)としてあらかじめ定めた一定の距離(例えば50m)の範囲内に収まっているか否かを確認する(ステップA5)。
【0050】
算出した距離が前記近隣範囲の範囲内に収まっていなかった場合は(ステップA5のno)、取り出した過去事案は、現在の事案によって決定されている災害点の近隣に災害点がある近隣過去事案ではなく、現在の事案には参考にならない過去事案であるので、何も処理を行うことなく、次の過去事案を調べるために、ステップA7に移行する。
【0051】
一方、算出した距離が前記近隣範囲の範囲内に収まっていた場合は(ステップA5のyes)、取り出した過去事案は、現在の事案によって決定されている災害点の近隣に災害点がある近隣過去事案であり、現在の事案の参考になる可能性がある過去事案であるので、当該過去事案の事案番号を用いて、出動注記情報/事案番号記憶装置110を検索して、該事案番号に該当する出動注記情報を読み出す(ステップA6)。しかる後、次の過去事案を調べるために、ステップA7に移行する。
【0052】
ステップA7においては、災害点位置/事案番号記憶装置109から取り出したすべての過去事案の処理が終了したか否かを確認し(ステップA7)、まだ、処理していない過去事案が存在している場合は(ステップA7のno)、次の過去案件を調べるために、ステップA3に戻って、ループ処理を繰り返す。
【0053】
一方、すべての過去事案の処理が終了した場合は(ステップA7のyes)、現在の事案によって決定されている災害点の近隣に災害点がある近隣過去事案として、現在の事案の参考になる可能性がある情報を有するすべての過去事案に関する出動注記情報を取得することができたので、取得したすべての過去事案に関する出動注記情報を画面表示するとともに、指令書情報送信手段105において先に生成されていた出動指令書の情報に織り込むために、指令書送信装置107に対して送信して、近隣過去事案検索手段106の動作を終了する(ステップA8)。
【0054】
次に、図2のフローチャートに示したような近隣過去事案検索手段106の動作を行った結果として得られる地図検索装置100の地図表示結果について、図3にその一例を示す。図3は、図2のフローチャートに示す近隣過去事案検索手段106の動作結果として得られる地図検索装置100の地図表示の一例を示すイメージ図であり、現在の事案として決定された災害点を示すマーク記号の他、近隣過去事案検索手段106の動作により抽出された、現在の災害点の近隣に災害点が存在する近隣過去事案の災害点を示すマーク記号も少なくとも含めて、地図上に表示している例を示している。
【0055】
図3のイメージ図において、△△ビル内に付されている黒丸(●)のマーク記号は、現在の事案として決定された災害点を示し、△×ビルおよび○○商店内のそれぞれに付されている黒星(★)のマーク記号は、近隣過去事案検索手段106の動作結果として地図上に表示される災害点を示すマーク記号であり、現在の事案の災害点から前記近隣範囲としてあらかじめ定めた一定の距離(図3の場合は50m)の範囲内に災害点が存在している近隣の過去事案の災害点を示している。一方、○×ビル内に付されている白抜きの星(☆)のマーク記号は、過去事案の災害点ではあるが、近隣過去事案検索手段106の動作結果として、現在の事案の災害点の前記近隣範囲の外に災害点が存在している過去事案であり、現在の事案の参考になる可能性がある情報を有する近隣過去事案には該当していない検索対象外の過去事案の災害点である。したがって、白抜きの星(☆)のマーク記号については、場合によっては、実際の地図上には表示しないようにしても構わない。
【0056】
なお、図3のイメージ図に示すように、近隣の過去事案の災害点(黒星(★)のマーク記号)には、それぞれの過去事案の事案番号も、黒星(★)のマーク記号と合わせて表示する。図3においては、△×ビル内が災害点の過去事案の事案番号は‘00001’であり、○○商店内が災害点の過去事案の事案番号は‘00002’である。なお、前記近隣範囲外の○×ビル内が災害点(白抜きの星(☆)のマーク記号)の過去事案の事案番号は‘00003’であり、当該過去事案についても、事案番号‘00003’を、白抜きの星(☆)のマーク記号とともに表示している。
【0057】
図2のフローチャートのステップA6に示したように、現在の事案の災害点の近隣に位置し、黒星(★)のマーク記号として地図上に表示されている災害点の近隣過去事案は、現在の事案への対応に当たって参考になる可能性がある情報を有する過去事案として、それぞれの事案番号に該当する出動注記情報を、出動注記情報/事案番号記憶装置110から読み出すことになる。読み出した近隣過去事案の出動注記情報は、それぞれの過去事案の災害点の位置を示す黒星(★)のマーク記号を付した地図とともに、画面表示されると同時に、出動指令書の情報として記載されて、指令書出力装置108によって印刷される。さらに、該出動指令書の情報は、指令書送信装置107を介して、出動対象の各分署に設置されている指令書出力装置108においても印刷される。
【0058】
なお、図3のイメージ図において、地図上に表示されている災害点を示すマーク記号(現在の事案の災害点を示す黒丸(●)のマーク記号、近隣過去事案の災害点を示す黒星(★)のマーク記号、近隣以外の過去事案の災害点を示す白抜きの星(☆)のマーク記号)のうち、いずれかの災害点のマーク記号をマウス等によって選択すると、自動出動指令装置200内の過去事案/事案番号記憶装置208から、選択した災害点の事案に関する各種の情報を読み出して画面表示することにより、閲覧することが可能になる。また、地図上に表示されたいずれかの災害点の事案に関する分析結果として、今後の出動時において参考になる可能性が高い注意すべき情報があった場合には、当該災害点のマーク記号をマウス等によって選択して、当該災害点の事案に関する出動注記情報を記載して、次回以降の出動時に参考にすべき情報として出動注記情報/事案番号記憶装置110に登録することも可能である。
【0059】
次に、図4に示す模式図は、図2のフローチャートに示す近隣過去事案検索手段106の動作結果として得られた近隣の過去事案に関する出動注記情報が記載された出動指令書の出力例を示す模式図である。図4に示すように、出動指令書は、現在の事案に関する出動情報等を記載した出動指令記載部501、現在の事案の災害点、近隣および検索対象外の過去事案の災害点を地図上に重ね合わせて記載した地図記載部502、地図上に記載された過去事案のうち近隣過去事案に関する出動注記情報を記載した出動注記情報記載部503から構成される。
【0060】
図4に示すように、出動指令記載部501には、通常の出動指令書の場合と同様の情報(覚知時刻、受付時刻、災害種別、災害住所番地、管轄署所、目標物、目標物の電話番号、平均風向、最大風速、出動車両、など)が記載される。また、地図記載部502は、現在の事案の災害点の位置が表示可能な特定地域の地図を記載する部位であり、前述のように、現在の事案の災害点(黒丸(●)のマーク記号)のみならず、近隣の過去事案の災害点(黒星(★)のマーク記号)、検索対象外の過去事案の災害点(白抜きの星(☆)のマーク記号)および各過去事案の事案番号も追記された地図が記載される。
【0061】
また、出動注記情報記載部503には、近隣過去事案検索手段106の動作結果として得られた近隣の過去事案に関する出動注記情報が転記して記載され、近隣の過去事案の出動注記情報が、現在の事案の出動時に参考になる可能性がある有効な情報として、それぞれの事案番号ごとに記載されている。例えば、近隣の過去事案のうち、△×ビル内が災害点の事案番号‘00001’の過去事案の場合、「周囲に大口径の水利なしのため注意」という出動上の注意事項が記載されている。
【0062】
かくのごとき出動指令書に基づいて、現在の事案の災害点の近隣に災害点が存在している各近隣過去事案に関する出動注記情報を視覚的に閲覧して分析することにより、出動に当たって注意すべき事項を的確かつ迅速に把握することができる。さらに、分析結果として、以降の活動において出動指令時に使用すべき情報があった場合には、該事案の災害点に対して、各事案に関する出動注記情報としての情報を付加することができる。
【0063】
(第1の実施形態の動作の変形例)
図2のフローチャートに示した動作例においては、近隣過去事案検索手段106は、現在の事案の出動に当たって参考になる可能性が高い情報を有する1ないし複数の過去事案を取得するための条件として、図2のステップA5に示したように、現在の事案の災害点として決定されている地点と過去事案の災害点との間の距離が、前記近隣範囲(例えば50m)の範囲内に収まっているか否かという条件のみを判定の基準として用いていた。
【0064】
しかし、本発明においては、かくのごとき条件のみに限るものではなく、例えば、現在の事案の災害点の前記近隣範囲内に発生した過去事案という条件のみならず、さらに、現在の事案の災害種別(例えば、火災、救急、救助など)と過去事案の災害種別とを比較して、現在の災害種別と同一の災害種別の過去事案を抽出するという条件の双方を付与するようにしても良い。つまり、現在の事案の出動に当たって参考になる可能性が高い情報を有する過去事案として、近隣に災害点がある過去事案であり、かつ、現在の事案と同一災害種別である過去事案を抽出することにより、現在の事案として発生している実際の災害に対応するための、より有効な過去の事案に関する情報を抽出することができる。
【0065】
図5は、図1の消防指令システムの地図検索装置100内の近隣過去事案検索手段106における動作の変形例を説明するためのフローチャートである。図5のフローチャートは、ステップA5aの処理が、図2のフローチャートにおけるステップA5の処理と異なるのみであり、ステップA5a以外の各ステップにおける処理は、図2のフローチャートにおける各ステップの処理と全く同一であり、それぞれには同一のステップ番号を付している。以下の説明においては、図2と同一のステップについての重複する説明は割愛して、ステップA5aの処理についてのみ説明する。
【0066】
図5のフローチャートにおいては、図2のフローチャートのステップA5の処理を変更して、現在の事案の参考になる可能性がある情報を有する過去事案を検索するための条件として、ステップA4にて算出した距離(現在の事案の災害点と過去事案の災害点との間の距離)が前記近隣範囲としてあらかじめ定めた一定の距離(例えば50m)の範囲内に収まっていて、かつ、現在の事案の災害種別と過去事案の災害種別とが一致しているか否かを比較する処理を行っている(ステップA5a)。
【0067】
算出した距離が前記近隣範囲の範囲を超えているか、あるいは、同一の災害種別でなかった場合は(ステップA5aのno)、取り出した過去事案は、現在の事案の対応に当たって参考にすべき情報が存在していない過去案件と判断して、何も処理を行うことなく、次の過去事案を調べるためにステップA7に移行する。
【0068】
一方、算出した距離が前記近隣範囲の範囲内に収まっていて、かつ、同一の災害種別であった場合は(ステップA5aのyes)、取り出した過去事案は、該過去事案の災害点が現在の事案の災害点の近隣にあり、かつ、同一の災害種別の過去事案として、現在の事案の対応に当たって大いに参考にすべき情報が存在する可能性が高い事案であるので、当該過去事案の出動注記情報を読み出すために、ステップA6に移行し、以降、図2の場合と同様の処理を行う。
【0069】
かくのごとき過去事案を抽出する条件の変形例については、さらに、別の要素を追加して用いるようにしても良く、例えば、過去事案の時期的な要素や季節的な要素や気象的な要素もさらに追加して用いるようにしても良い。つまり、現在の事案の災害点との地理的な近隣範囲にあり、かつ、現在の事案と同一の災害種別であり、かつ、参考に値する有効期間として現時点からあらかじめ定めた期間まで遡った範囲内に収まっている過去事案を抽出するようにしても良いし、あるいは、現在の事案の災害点との地理的な近隣範囲にあり、かつ、現在の事案と同一の災害種別であり、かつ、現在の事案と同一季節に発生した過去事案を抽出するようにしても良い。あるいは、現在の事案の災害点との地理的な近隣範囲にあり、かつ、現在の事案と同一の災害種別であり、かつ、現在の事案と同一の気象状態(降雨や積雪や暴風等)に発生した過去事案を抽出するようにしても良い。
【0070】
(第2の実施形態の構成例)
次に、本発明の第2の実施形態における消防司令システムの構成例について、図6を参照しながら詳細に説明する。図6は、本発明の第2の実施形態における消防司令システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図であり、過去事案において出動車両の災害点までの到着所要時間を算出して分析を行う際の構成例を示している。
【0071】
図6に示す消防司令システムは、第1の実施形態における図1に示した消防司令システムの場合と同様に、地図検索装置300と自動出動指令装置400とを少なくとも含んで構成されており、地図検索装置300に関連する装置として、入力装置301およびディスプレイ出力装置306の各手段を少なくとも備えている。
【0072】
また、地図検索装置300は、地図表示手段302、事案出力手段303、災害点到着時間表示手段304、出動注記情報登録手段305、災害点位置/事案番号記憶装置(災害点位置記憶手段)307および出動注記情報/事案番号記憶装置(出動注記情報記憶手段)308の各手段を少なくとも含んで構成される。また、自動出動指令装置400は、過去事案/事案番号記憶装置401の手段を少なくとも含んで構成され、地図検索装置300から、自動出動指令装置400内の過去事案/事案番号記憶装置(過去事案記憶手段)401に記憶されている過去事案に関する情報を検索することが可能な構成としている。
【0073】
図6に示した各手段は、概略、次のように動作する。地図検索装置300は、入力装置301から地図表示を行う操作が行われると、地図表示手段302の実行により、入力装置301から指定された特定地域の地図がディスプレイ出力装置306に画面表示される。このとき、災害点位置/事案番号記憶装置307に保持されている1ないし複数の過去事案の災害点位置を読み出して、ディスプレイ出力装置306の画面上に、住宅地図や道路地図の上に重ね合わせて、読み出した各過去事案の災害点の位置を示すマーク記号(第1の実施形態における図3と同様のマーク記号)を画面表示する。なお、表示される地図上には、現在の事案に関して決定された災害点のマーク記号も表示されている。
【0074】
ディスプレイ出力装置306の画面上に画面表示された過去事案のマーク記号のいずれかについて入力装置301により選択されると、事案出力手段303の実行により、自動出動指令装置400の過去事案/事案番号記憶装置401に記憶されている過去事案に関する情報のうち、選択されたマーク記号に該当する過去事案に関する情報を読み出して地図上に表示することができる。
【0075】
また、入力装置301の操作により、災害点到着時間表示手段304の実行も可能であり、災害点到着時間表示手段304の実行により、ディスプレイ出力装置306に画面表示された地図上のマーク記号表示の近傍に、各事案の災害点到着時間をさらに画面表示することができる。
【0076】
ディスプレイ出力装置306に画面表示された地図上に表示される前述のような各種の情報に基づいて、地図上の各位置に応じて、各事案が適切に処理されているか否かを分析し、実際の指令時において周知しておくべき注意情報がある場合には、該当する事案のマーク記号を入力装置301により選択して、出動注記情報登録手段305を実行することにより、出動注記情報として、事案番号とともに出動注記情報/事案番号記憶装置308に追加登録する。
【0077】
(第2の実施形態の動作の説明)
次に、図6に示した消防指令システムの動作について、地図検索装置300内の災害点到着時間表示手段304の動作例を、図7のフローチャートを用いて詳細に説明する。図7は、図6の消防指令システムの地図検索装置300内の災害点到着時間表示手段304における動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0078】
図7のフローチャートにおいて、地図検索装置300内の災害点到着時間表示手段304が起動されると(ステップB1)、まず、災害点位置/事案番号記憶装置307にアクセスして、地図上の表示対象となる過去事案の災害点位置および事案番号を読み出す(ステップB2)。ここで、災害点到着時間表示手段304によって到着所要時間を算出して表示しようとする表示対象の過去事案の災害点については、地図の表示範囲に依存して、表示対象の件数が決定される。決定した表示対象の各過去事案の災害点位置は、ディスプレイ出力装置306に画面表示された地図上にマーク記号を付した形で表示されることになる。しかる後、表示対象の過去事案として取得した件数を確認して、表示対象の過去事案の災害点位置ごとの処理を行うために、ループ処理を設定する(ステップB3)。
【0079】
最初のループ処理においては、表示対象の過去事案の災害点のうち、最初の過去事案の事案番号を取り出して、該過去事案の事案番号を基にして、自動出動指令装置400内の過去事案/事案番号記憶装置401を検索することにより、当該過去事案として記録されている出動車両を関する情報を取得する(ステップB4)。しかる後、取得した当該過去事案における出動車両の台数を確認して、当該過去事案における出動車両ごとの到着所要時間を算出し、さらに、全出動車両の到着所要時間の累積値を求めるために、ループ処理を設定するとともに、到着所要時間の累積値を設定するための変数Tを初期値‘0’に初期設定する(ステップB5)。
【0080】
次に、最初のループ処理においては、当該過去事案における出動車両のうち、最初の出動車両の出動時刻と現地到着時刻とを取り出して、当該出動車両の現地到着までの所要時間(=現地到着時刻−出動時刻)を算出して、算出した到着所要時間を、累積値を設定するための変数Tに加算する(ステップB6)。
【0081】
次いで、当該過去事案におけるすべての出動車両についての処理が終了したか否かを確認し(ステップB7)、まだ、処理していない出動車両が存在している場合は(ステップB7のno)、次の出動車両の到着所要時間を累積処理するために、ステップB5に戻って、ループ処理を繰り返す。
【0082】
一方、当該過去事案におけるすべての出動車両についての処理が終了した場合は(ステップB7のyes)、ステップB8に移行して、変数Tに設定されている到着所要時間の累積値を当該過去事案における出動車両の台数によって除算することにより、当該過去事案における全出動車両分の平均到着所要時間を算出する(ステップB8)。しかる後、算出した当該過去事案における全出動車両分の平均到着所要時間を、当該過去事案の災害点位置のマーク記号表示と合わせて、ディスプレイ出力装置306に画面表示された地図上に表示する(ステップB9)。しかる後、次の表示対象の過去事案の災害点を調べるために、ステップB10に移行する。
【0083】
ステップB10においては、表示対象のすべての過去事案の災害点の処理が終了したか否かを確認し(ステップB10)、まだ、処理していない過去事案の災害点が存在している場合は(ステップB10のno)、次の過去案件の災害点を調べるために、ステップB3に戻って、ループ処理を繰り返す。
【0084】
一方、すべての過去事案の災害点の処理が終了した場合は(ステップB10のyes)、表示対象のすべての過去事案の災害点それぞれについて全出動車両分の平均到着所要時刻が地図上に災害点を示すマーク記号に重ね合わせた形式で画面表示された状態になるので、災害点到着時間表示手段304の動作を終了する(ステップB11)。
【0085】
次に、図7のフローチャートに示したような災害点到着時間表示手段304の動作を行った結果として得られる地図検索装置300の地図表示結果について、図8にその一例を示す。災害点到着時間表示手段304の動作は図7のフローチャートに示したが、図8は、その図7のフローチャートに示す動作の結果として得られる地図検索装置300の地図表示の一例を示すイメージ図である。
【0086】
図8のイメージ図において、各災害点のマーク記号は、第1の実施形態における図3のイメージ図の場合と同様であり、△△ビル内に付されている黒丸(●)のマーク記号は、現在の事案として決定された災害点を示し、△×ビルおよび○○商店内のそれぞれに付されている黒星(★)のマーク記号は、現在の事案の災害点の近隣範囲内に災害点が存在する近隣過去事案の災害点を示している。一方、○×ビル内に付されている白抜きの星(☆)のマーク記号は、過去事案の災害点ではあるが、現在の事案の災害点の近隣範囲外に災害点が存在する過去事案の災害点を示している。つまり、図1に示した近隣過去事案検索手段106と同一の手段が図6の地図検索装置300内に備えられていて、現在の事案の災害点からの距離が近隣範囲としてあらかじめ定めた一定の範囲内に過去事案の災害点が存在しているか否かに応じて、黒星(★)のマーク記号と白抜きの星(☆)のマーク記号とのいずれかを表示する場合を示している。
【0087】
図8のイメージ図に示すように、図7のフローチャートに示した災害点到着時間表示手段304の動作結果として得られる各過去事案の災害点までの出動車両の到着所要時間(すなわち全出動車両分の平均到着所要時間)は、地図上の各過去事案の災害点の近傍に、事案番号とともに、表示される。例えば、△×ビル内が災害点となった過去事案(事案番号‘00001’)の災害点までの出動車両の到着所要時間は、‘到着時間:5分30秒’と表示される。なお、図8のイメージ図においては、過去事案の災害点までの到着所要時間の表示について、現在の事案の災害点の近隣範囲外に災害点が存在する白抜きの星(☆)のマーク記号の過去事案(事案番号‘00003’)の災害点も含め、地図上に表示されるすべての過去事案の災害点それぞれに表示される例を示している。
【0088】
かくのごとく、地図上に表示された近隣の各過去事案の災害点までの到着所要時間を基にして、現在の事案の災害点に関し、出動から到着までに長い時間を要するルート、あるいは、短時間に到着することができるルートが存在することを視覚的に分析することができ、現在の事案の災害点までの移動ルートを的確かつ迅速に把握することができる。さらに、分析結果として、以降の活動において、出動指令時に参考情報として使用する可能性が高い情報があった場合には、該当する事案に関する出動注記情報として、該参考情報を付加して出動注記情報/事案番号記憶装置308に保存することができる。
【0089】
また、本第2の実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に、地図検索装置300内に図1に示した近隣過去事案検索手段106と同様の手段が備えられていて、現在の事案の災害点の近隣範囲内に災害点が存在する近隣過去事案に関する出動注記情報を取得して地図上に表示するようにしても良い。
【0090】
つまり、第1の実施形態においては、近隣過去事案に関する出動注記情報は、図4に示した出動指令書の最下段の出動注記情報記載部503に記載される場合を例示したが、本第2の実施形態においては、図8に示すように、近隣過去事案に関する出動注記情報を、当該過去事案の災害点を示す黒星(★)のマーク記号の近傍に、事案番号、到着所要時間とともに、地図上に表示している例を示している。例えば、地図上に、黒星(★)のマーク記号にて災害点が表示される近隣過去事案の事案番号‘00001’については、該災害点を示す黒星(★)のマーク記号の近傍に、事案番号、到着所要時間とともに、「出動注記情報:周囲に大口径の水利なしのため注意」という当該近隣過去事案(事案番号‘00001’)に関する出動注記情報が表示されている。
【0091】
なお、図8のイメージ図においても、第1の実施形態の図3の場合と同様に、地図上に表示されている災害点を示すマーク記号(現在の事案の災害点を示す黒丸(●)のマーク記号、近隣過去事案の災害点を示す黒星(★)のマーク記号、近隣以外の過去事案の災害点を示す白抜きの星(☆)のマーク記号)のうち、いずれかの災害点のマーク記号をマウス等によって選択すると、自動出動指令装置400内の過去事案/事案番号記憶装置401から、選択した災害点の事案に関する各種の情報を読み出して画面表示することにより、閲覧することが可能になる。また、地図上に表示されたいずれかの災害点の事案に関する分析結果として、今後の出動時において参考になる可能性が高い注意すべき情報があった場合には、当該災害点のマーク記号をマウス等によって選択して、当該災害点の事案に関する出動注記情報を記載して、次回以降の出動時に参考にすべき情報として出動注記情報/事案番号記憶装置308に登録することも可能である。
【0092】
第2の実施形態として以上に説明したような情報は、第1の実施形態において図4に示した出動指令時の出動指令書にも反映させて印刷されることは言うまでもない。
【0093】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、第1、第2の実施形態においては、以下のような効果を奏することができる。
【0094】
第1の効果は、119番緊急通報があった現在の事案に対する出動指令時に、現在の事案に関する情報のみならず、過去事案に関する各種の情報を、過去事案の出動注記情報(過去事案の分析結果として得られる、出動時に当たって注意すべき情報)を含め、司令室内の地図検索装置100、300にリアルタイムに画面表示することができ、過去事案の情報を参考にして、効果的な指令を指令室から行うことができることにある。その理由は、司令室内の地図検索装置100、300には、過去事案の情報を地図情報として保存しており、現在の事案の参考になる過去事案の情報を、出動注記情報を含め、リアルタイムに検索することができるからである。
【0095】
第2の効果は、 過去事案の出動注記情報を含む各種の情報から過去の災害点の位置および各災害点の現場への到着所要時間を地図検索装置100、300に画面表示することができ、かつ、出動時のルート、交通状況も分析することができ、分析した結果を、将来の消防活動において利用することが可能になることにある。その理由は、地図検索装置100、300を利用して、過去事案の情報を地図情報として保存しており、各車両の動態情報および出動時刻・到着時刻の情報から、到着所要時間を計算によって求めることができるからである。また、分析の結果から得られる出動注記情報を過去事案に関連付けて保存しておくことにより、以降の出動指令時においても有効に利用することができるからである。
【0096】
第3の効果は、過去事案からの知見である出動注記情報を参照しつつ、出動から現場到着までの移動、あるいは、災害点における消防活動に関する経験を有効に活かして、現在の事案に対する活動を効果的に行うことができることにある。その理由は、指令室内の地図検索装置100、300に保存されている情報は、過去事案に関連する出動注記情報を含めて、出動指令時にリアルタイムで参照できるのみならず、出動時に携行する出動指令書には、現在の事案の災害点の付近で発生した過去事案の情報が出動注記情報も含む形式で印刷されているので、出動指令後においても、有効な情報を参照することができるからである。
【0097】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0098】
100 地図検索装置
101 入力装置
102 地図表示手段
103 災害点位置決定手段
104 災害点位置記録手段
105 指令書情報送信手段
106 近隣過去事案検索手段
107 指令書送信装置
108 指令書出力装置
109 災害点位置/事案番号記憶装置
110 出動注記情報/事案番号記憶装置
200 自動出動指令装置
201 入力手段(通報)
202 事案番号発番手段
203 災害点決定手段
204 出動計画取得手段
205 出動指令手段
206 事案記録手段
207 出動指令出力装置
208 過去事案/事案番号記憶装置
300 地図検索装置
301 入力装置
302 地図表示手段
303 事案出力手段
304 災害点到着時間表示手段
305 出動注記情報登録手段
306 ディスプレイ出力装置
307 災害点位置/事案番号記憶装置
308 出動注記情報/事案番号記憶装置
400 自動出動指令装置
401 過去事案/事案番号記憶装置
501 動指令記載部
502 地図記載部
503 出動注記情報記載部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8