【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1見地においては、負荷を持ち上げるためのホイストと一緒に使用するためのホイスト装置であって、
このホイスト装置が、
長尺の負荷担持部材であるとともに、長手方向軸線を有し、さらに、この長手方向軸線に沿って互いに離間して配置された少なくとも2つの支持ポイントを備えた、負荷担持部材と;
中間支持部材であるとともに、この中間支持部材をホイストに対して連結するためのホイスト連結部材と、第1支持ポイント連結部材と、第2支持ポイント連結部材と、を備え、第1支持ポイント連結部材および第2支持ポイント連結部材の各々が、中間支持部材を、負荷担持部材の支持ポイントのうちのそれぞれ対応する支持ポイントに対して連結し、第1支持ポイント連結部材が、ホイスト連結部材から第1距離だけ離間しており、第2支持ポイント連結部材が、ホイスト連結部材から第2距離だけ離間している、中間支持部材と;
第1距離および第2距離の少なくとも一方を調節するための調節手段であるとともに、この調節により、負荷担持部材の長手方向軸線の、水平方向に対しての配向性を調節し得るものとされている、調節手段と;
を具備しているホイスト装置が提供される。
【0009】
第1距離および第2距離の少なくとも一方が調節可能とされ、これにより、使用時に、負荷担持部材の長手方向軸線の、水平方向に対しての配向性を調節し得るものとされているホイスト装置を設けることにより、ホイスト装置に負荷を担持させつつ、すなわち、負荷を持ち上げつつ、負荷担持部材の長手方向軸線の、水平方向に対しての配向性を調節することができる。これにより、ホイスト装置がホイストに対して取り付けられた状態で、負荷担持部材によって付帯された負荷のバランスをとるのに必要な時間を、低減することができる。
【0010】
負荷担持部材の長手方向軸線の配向性は、負荷担持部材の長手方向軸線が水平方向に対して平行であるように、調節することができる。また、負荷担持部材の長手方向軸線の配向性は、負荷担持部材の長手方向軸線の配向性が水平方向に対して角度をなすように、調節することができる。
【0011】
負荷担持部材は、負荷を担持し得る部材である。負荷担持部材は、例えば人や医療器具や他の器具や持ち上げおよび/または搬送を必要とする物品といったような負荷を支持するために使用することができる。そのような器具や物品は、持ち上げ時にあるいは搬送時に、水平方向のバランスをとる必要があることがある。それは、例えば、繊細な特性のためであり、あるいは、特定の配向性が必要とされるからである。負荷担持部材の長手方向軸線の配向性は、負荷担持部材によって担持される負荷の水平方向のバランスをとるように調節することができる。
【0012】
負荷担持部材は、中間支持部材に対して着脱可能なものとすることができる。この場合、負荷担持部材自体は、嵩高い調節機構を備える必要がなく、そのため、負荷担持部材を、より小さなものとし得るとともに、より軽量のものとすることができる。これにより、様々なタイプの負荷担持部材を、支持体上において、より容易に取り外すことができて、より容易に交換することができる。
【0013】
負荷担持部材は、実質的に平面状とすることができる。使用時には、負荷担持部材がなす平面が、負荷担持部材の長手方向軸線を包含することができる。
【0014】
負荷担持部材は、ストレッチャーフレームとすることができる。負荷担持部材は、ストレッチャーとすることができ、ストレッチャーは、ストレッチャーフレームと、このストレッチャーフレームに対して取り付けられるストレッチャーボディと、を備えている。使用時には、ストレッチャーは、例えば患者といったような負荷を支持することができる。ストレッチャーは、完全に寝た状態の患者を支持することができる。
【0015】
ストレッチャーボディは、ストレッチャースリングや、ストラップストレッチャーや、あるいは、スクープストレッチャー、とすることができる。「ストレッチャースリング」は、ストレッチャーフレームに対して取付可能なフレキシブルなスリング材料を備えることができる。「ストラップストレッチャー」は、ストレッチャーフレームに対して取付可能な複数のフレキシブルなストラップを備えることができる。「スクープストレッチャー」は、ストレッチャーフレームに対して取付可能な剛直な表面を備えることができる。すべての場合において、ストレッチャーは、フレームに対して連結されて、「ストレッチャーフレーム」と称される。ストレッチャーフレームは、負荷を分散させるものであり、持ち上げストラップに対して連結される。
【0016】
ストレッチャーボディとストレッチャーフレームとは、取付手段によって互いに取り付けることができる。取付手段は、例えば、ストレッチャーボディおよびストレッチャーフレームのうちの少なくとも一方に設けられたフック、および、ストレッチャーボディおよびストレッチャーフレームのうちの他方に設けられたループ、とすることができる。取付手段は、例えば、ストレッチャーボディおよびストレッチャーフレームのうちの少なくとも一方に設けられたラグ、および、ストレッチャーボディおよびストレッチャーフレームのうちの他方に設けられたクリップ、とすることができる。
【0017】
長尺の負荷担持部材は、単一のユニットとして構成することができる。また、負荷担持部材は、例えば2つのユニットといったような複数のユニットを備えることができる。複数のユニットの各々は、互いに個別的に、中間支持部材に対して取り付けることができる。負荷を支持して分散させるために、負荷担持部材は、例えばスチールやアルミニウムや複合材料といったような材料から構成することができる。そのような材料は、十分な硬さと十分な強度とを有するものであって、負荷担持部材上に支持された例えば患者といったような負荷を支持して分散させることができる。
【0018】
負荷担持部材の少なくとも2つの支持ポイントは、固定された取付手段を備えることができる。固定された取付手段は、例えば、フックや、ラグや、中間支持部材上に設けられたフックまたはラグに対して係合するレセプタ、とされる。負荷担持部材の少なくとも2つの支持ポイントは、フレキシブルな取付手段とすることができる。フレキシブルな取付手段は、例えば、ロープやリンクといったようなフレキシブルな連結部材とされる。
【0019】
中間支持部材は、少なくとも2つの連結部材を備えることができる。これら連結部材は、ホイスト連結部材を支持ポイント連結部材に対して直接的にまたは間接的に連結し、さらに、負荷担持部材上のそれぞれ対応する支持ポイントに対して連結する。中間支持部材は、複数の連結部材を備えることができる。これら連結部材は、ホイスト連結部材を支持ポイント連結部材に対して直接的にまたは間接的に連結し、さらに、負荷担持部材上のそれぞれ対応する支持ポイントに対して連結する。
【0020】
少なくとも1つの連結部材は、フレキシブルなものとすることができる。また、少なくとも1つの連結部材は、剛直なものとすることができる。
【0021】
連結部材の各々は、長さを有することができる。第1連結部材の長さは、第1支持ポイント連結部材とホイスト連結部材との間の距離である第1距離とすることができ、第2連結部材の長さは、第2支持ポイント連結部材とホイスト連結部材との間の距離である第2距離とすることができる。少なくとも一方の連結部材の長さは、調節手段により調節可能とされ、これにより、第1距離および第2距離の少なくとも一方が調節可能とされる。よって、連結部材の少なくとも一方の長さを調節することにより、負荷担持部材の長手方向軸線の、水平方向に対しての配向性を、調節することができる。
【0022】
中間支持部材は、少なくとも1つのフレーム部材を備えることができる。少なくとも1つのフレーム部材は、長手方向軸線を有し、中間支持部材の第1支持ポイント連結部材および第2支持ポイント連結部材は、長手方向軸線に沿って離間している。少なくとも1つのフレーム部材は、平面状とすることができ、少なくとも1つのフレーム部材がなす平面は、少なくとも1つのフレーム部材の長手方向軸線を包含する。第1フレーム部材は、第1支持ポイント連結部材と第2支持ポイント連結部材とのうちの少なくとも一方を備えることができる。第1支持ポイント連結部材と第2支持ポイント連結部材との各々は、中間支持部材を、負荷担持部材のそれぞれ対応する支持ポイントに対して連結する。
【0023】
連結部材の各々は、ホイスト連結部材を、第1フレーム部材に対して連結することができ、これにより、フレーム上に設けられた第1および第2の支持ポイント連結部材に対して連結することができ、さらに、負荷担持部材上に設けられたそれぞれ対応する支持ポイントに対して連結することができる。
【0024】
中間支持部材は、追加的に、第2フレーム部材を備えることができる。第2フレーム部材は、中間支持部材をホイスト部材に対して連結するためのホイスト連結部材を備えることができる。中間支持部材の第1フレーム部材および第2フレーム部材は、互いに対して回転可能に連結することができる。使用時には、第2フレーム部材は、ホイストから鉛直方向に懸架することができ、中間支持部材の第1フレーム部材は、第1部材から横方向に延在することができる。2つのフレーム部材どうしの間には、角度を形成することができる。2つのフレーム部材どうしの間の相対移動は、2つのフレーム部材どうしの間の角度を調節することができ、これにより、負荷担持部材の長手方向軸線の配向性を調節することができる。
【0025】
第1フレーム部材および第2フレーム部材の各々は、単一部材から、あるいは、複数の部材から、形成することができる。第1フレーム部材は、第1リムと第2リムとを有したU字形状のものとすることができる。第2フレーム部材は、第1リムと第2リムとを有したU字形状のものとすることができる。第1フレーム部材の第1リムは、第2フレーム部材の第1リムに対して、回転可能に連結することができる。第1フレーム部材の第2リムは、第2フレーム部材の第2リムに対して、回転可能に連結することができる。中間支持部材は、スプレッダバー(spreader bar)とすることができ、例えば、モータ駆動されるスプレッダバーとすることができる。公知のモータ駆動されるスプレッダバーは、ArjoHuntleigh 社による Power DPS (Dynamic Positioning System) である。
【0026】
中間支持部材の第1支持ポイント連結部材および第2支持ポイント連結部材は、固定された取付手段を備えることができる。固定された取付手段は、例えば、フックや、ラグや、負荷担持部材上のそれぞれ対応する支持ポイントに設けられたフックまたはラグに対して係合するレセプタ、とされる。中間支持部材の第1支持ポイント連結部材および第2支持ポイント連結部材は、フレキシブルな取付手段とすることができる。フレキシブルな取付手段は、例えば、ロープやリンクといったようなフレキシブルな連結部材とされる。
【0027】
負荷担持部材の少なくとも2つの支持ポイントの少なくとも一方、および、中間支持部材の少なくとも2つの支持ポイント連結部材のうちの対応するものには、例えばラッチといったようなフックを設けることができる。これにより、負荷担持部材と中間支持部材とを互いに固定することができる。そのようなロックは、フックをロック位置に向けて付勢するための第1機構を備えることができる。このようにして、ロックは、ロックを解除するための力をユーザーが印加しない限りは、ロック状態を維持することができる。第1機構は、圧縮スプリングと、引っ張りスプリングと、トーションスプリングと、錘と、のうちの少なくともいずれかを備えることができる。これに代えてあるいはこれに加えて、ロックは、例えばピンやフックといったような固定されたロックを備えることができる。
【0028】
負荷担持部材と中間支持部材とは、連結することができる。これにより、ホイスト装置が取り付けられているホイストの実効ストロークの低減を最小化することができる。負荷担持部材と中間支持部材の第1フレーム部材とは、負荷担持部材の長手方向軸線と第1フレーム部材の長手方向軸線とが位置合わせされるようにして、連結することができる。特に、長手方向軸線どうしは、実質的に同じ水平方向平面内に延在することができる。負荷担持部材と中間支持部材の第1フレーム部材とは、負荷担持部材がなす平面と第1フレーム部材がなす平面とが互いに位置合わせされるようにして、連結することができる。特に、それら平面どうしは、実質的に一致することができる。ホイストの実効ストロークの低減を最小化することにより、ホイストによって持ち上げられる負荷の可動範囲を最大化することができる。
【0029】
調節手段は、駆動手段を備えることができる。調節手段は、手動であるいは機械的に駆動することができる。好ましくは、調節手段は、機械的に駆動される。このようにして、装置を使用したヘルスケアスタッフによる物理的入力を低減することができる。
【0030】
調節手段は、モータユニットを備えることができる。モータ駆動される支持体のモータユニットは、例えば押しボタンやタッチスクリーンといったようなインターフェースを介して、駆動することができる。インターフェースは、モータユニットに対して、電気ワイヤによって、あるいは、赤外線やラジオ波や超音波といったような無線方式によって、接続される。
【0031】
調節手段は、リニアアクチュエータを備えることができる。リニアアクチュエータの第1端部は、ホイスト連結部材に対して連結され、リニアアクチュエータの第2端部は、支持ポイント連結部材に対して連結され、さらに、負荷担持部材の支持ポイントに対して連結される。リニアアクチュエータは、少なくとも2つの連結部材のうちの少なくとも一方に設けることができる。
【0032】
調節手段は、第1距離と第2距離との双方を調節することができ、これにより、使用時に、負荷担持部材の長手方向軸線の、水平方向に対しての配向性を調節することができる。
【0033】
中間支持部材が、第1フレーム部材と第2フレーム部材とを備えている場合には、リニアアクチュエータは、第1フレーム部材と第2フレーム部材とを連結することができ、リニアアクチュエータを駆動することにより、第1フレーム部材と第2フレーム部材との間の相対移動を調節することができる。
【0034】
調節手段は、連結部材のうちの少なくとも一方の長さを調節するためのウィンチを備えることができる。
【0035】
ホイスト装置は、角度センサを有した制御デバイスを具備することができる。角度センサは、負荷担持部材の長手方向軸線の、水平方向に対しての配向性を決定することができる。そのような角度センサには、例えば、加速度計や、傾斜センサや、カメラや、他の公知の角度センサ、がある。制御デバイスは、中央演算ユニット(CPU)とすることができる。CPUは、角度測定のために、設定値と実際値とを比較するためのソフトウェアを実行する。CPUは、一組をなす複数のルールを使用することにより、ホイスト装置を所望の位置とするためにどのような調整を行うべきかを決定する。
【0036】
負荷担持部材の配向性の調節は、制御デバイスによって自動的に制御することができる。自動的な移動調節は、ホイストが取り付けられた際に負荷担持部材の水平方向のバランスをとるように、設定することができる。
【0037】
負荷を持ち上げるためのホイストは、人を持ち上げるためのホイストとすることができる。このホイストは、持ち上げストラップを有したシーリングリフトとすることができる。ホイスト連結部材は、シーリングリフトの持ち上げストラップに対しての連結のためのものとすることができる。ホイストは、追加的には、持ち上げた負荷を搬送することができる。ホイストは、持ち上げアームを有したスリングリフトとすることができる。ホイスト連結部材は、スリングリフトの持ち上げアームに対しての連結のためのものとすることができる。
【0038】
ホイストの第2見地においては、ホイストに対してのストレッチャーフレームの配向性を調節するための方法が提供され、この方法においては、
ホイストを準備し;
ホイスト装置を準備し、この場合、このホイスト装置を、長尺の負荷担持部材であるとともに、長手方向軸線を有し、さらに、この長手方向軸線に沿って互いに離間して配置された少なくとも2つの支持ポイントを備えた、負荷担持部材と;中間支持部材であるとともに、この中間支持部材をホイストに対して連結するためのホイスト連結部材と、第1支持ポイント連結部材と、第2支持ポイント連結部材と、を備え、第1支持ポイント連結部材および第2支持ポイント連結部材の各々は、中間支持部材を、負荷担持部材の支持ポイントのうちのそれぞれ対応する支持ポイントに対して連結し、第1支持ポイント連結部材は、ホイスト連結部材から第1距離だけ離間しており、第2支持ポイント連結部材は、ホイスト連結部材から第2距離だけ離間している、中間支持部材と;第1距離および第2距離の少なくとも一方を調節するための調節手段であるとともに、この調節により、負荷担持部材の長手方向軸線の、水平方向に対しての配向性を調節し得るものとされている、調節手段と;を具備したものとし;
中間支持部材のホイスト連結部材を、ホイストに対して取り付け;
調節手段を駆動することにより、第1距離および第2距離の少なくとも一方を調節し、これにより、負荷担持部材の長手方向軸線の、水平方向に対しての配向性を調節する。
【0039】
この方法においては、追加的に、負荷担持部材上の負荷を支持することができ、さらに、調節手段を使用することによって、第1距離および第2距離の少なくとも一方を調節することができ、これにより、負荷を担持した負荷担持部材の水平方向のバランスをとることができる。
【0040】
以下においては、本発明につき、添付図面を参照して、単なる例示として説明する。