(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一方が透明である可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材間に、少なくとも一方が透明である1対の電極層と、該1対の電極層に挟持される有機エレクトロルミネッセンスを含む有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明パネルであって、前記可撓性フィルム基材上に積層される一方の前記電極層上に、前記有機層及び他方の前記電極層を貫通して設けられる複数のスペーサーを有し、該スペーサーの先端は前記可撓性フィルム封止材に接触しておらず、前記有機層の面方向に平行な断面における前記スペーサーの密度が、100個/cm2以上、200個/cm2以下の範囲で、前記有機層の面方向に平行な断面に占める一つの前記スペーサーの断面積が、平均直径5μm以上、50μm以下の円の面積に相当することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス照明パネル。
少なくとも一方が透明である可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材間に、少なくとも一方が透明である1対の電極層と、該1対の電極層に挟持される有機エレクトロルミネッセンスを含む有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明パネルであって、前記可撓性フィルム封止材上に、前記電極層に対向し、且つ、前記有機層の上方に配置されて設けられる複数のスペーサーを有し、該スペーサーは、前記1対の電極層の前記可撓性フィルム封止材側の一方の前記電極層と前記有機層に設けた挿入孔に挿入され、該スペーサーの先端は前記一対の電極層の他方に接触しておらず、前記有機層の面方向に平行な断面における前記スペーサーの密度が、100個/cm2以上、400個/cm2以下の範囲であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス照明パネル。
前記可撓性フィルム基材と前記可撓性フィルム封止材との間に、不活性ガス又は捕水剤を含有するシリコーンが充填されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス照明パネル。
少なくとも一方が透明である可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材間に、少なくとも一方が透明である1対の電極層と、該1対の電極層に挟持される有機エレクトロルミネッセンスを含む有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明パネルの製造方法であって、
前記可撓性フィルム基材上に積層した前記電極層上に、フォトレジスト膜を積層し、該フォトレジスト膜をフォトリソグラフィーによりパターニングして、前記有機層及び他方の前記電極層を貫通し、その先端が他方の前記電極層から突出した位置に達する高さを有するスペーサーを形成する工程と、前記有機層及び他方の前記電極層を、前記スペーサーを形成した前記電極層上に順次形成する工程と、シール部材を介して前記可撓性フィルム封止材を前記スペーサーの先端と接触しないように設ける工程と、を含み、前記スペーサーを形成する工程は、前記有機層の面方向に平行な断面における前記スペーサーの密度が、100個/cm2以上、200個/cm2以下の範囲で、前記有機層の面方向に平行な断面に占める一つの前記スペーサーの断面積が、平均直径5μm以上、50μm以下の円の面積に相当するように行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス照明パネルの製造方法。
少なくとも一方が透明である可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材間に、少なくとも一方が透明である1対の電極層と、該1対の電極層に挟持される有機エレクトロルミネッセンスを含む有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明パネルの製造方法であって、
前記可撓性フィルム基材上に積層した前記電極層上に、スペーサー材料を、ディスペンス塗布、インクジェット塗布、又はスクリーン・フレキソ・グラビアにより印刷して、前記有機層及び他方の前記電極層を貫通し、その先端が他方の前記電極層から突出した位置に達する高さを有するスペーサーを形成する工程と、前記有機層及び他方の前記電極層を、前記スペーサーを形成した前記電極層上に順次形成する工程と、シール部材を介して前記可撓性フィルム封止材を前記スペーサーの先端と接触しないように設ける工程と、を含み、前記スペーサーを形成する工程は、前記有機層の面方向に平行な断面における前記スペーサーの密度が、100個/cm2以上、200個/cm2以下の範囲で、前記有機層の面方向に平行な断面に占める一つの前記スペーサーの断面積が、平均直径5μm以上、50μm以下の円の面積に相当するように行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス照明パネルの製造方法。
少なくとも一方が透明である可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材間に、少なくとも一方が透明である1対の電極層と、該1対の電極層に挟持される有機エレクトロルミネッセンスを含む有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明パネルの製造方法であって、
前記可撓性フィルム基材上に積層した前記電極層上に前記有機層及び他方の前記電極層を順次形成する工程と、前記可撓性フィルム封止材上に、フォトレジスト膜を積層し、フォトレジスト膜をフォトリソグラフィーによりパターニングして、前記有機層の面方向に平行な断面における前記スペーサーの密度が、100個/cm2以上、400個/cm2以下の範囲となるように複数のスペーサーを形成する工程と、前記スペーサーを挿入する挿入孔を他方の前記電極層及び前記有機層に形成する工程と、シール部材を介して前記可撓性フィルム封止材を、前記スペーサーを前記挿入孔に挿入し、前記スペーサーの先端と前記可撓性フィルム基材上に積層した前記電極層とが接触しないように設ける工程と、を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス照明パネルの製造方法。
少なくとも一方が透明である可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材間に、少なくとも一方が透明である1対の電極層と、該1対の電極層に挟持される有機エレクトロルミネッセンスを含む有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明パネルの製造方法であって
前記可撓性フィルム基材上に積層した前記電極層上に前記有機層及び他方の前記電極層を順次形成する工程と、前記可撓性フィルム封止材上に、スペーサー材料を、ディスペンス塗布、インクジェット塗布、又はスクリーン・フレキソ・グラビアにより印刷して、前記有機層の面方向に平行な断面における前記スペーサーの密度が、100個/cm2以上、400個/cm2以下の範囲となるように複数のスペーサーを形成する工程と、前記スペーサーを挿入する挿入孔を他方の前記電極層及び前記有機層に形成する工程と、シール部材を介して前記可撓性フィルム封止材を、前記スペーサーを前記挿入孔に挿入し、前記スペーサーの先端と前記可撓性フィルム基材上に積層した前記電極層とが接触しないように設ける工程と、を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス照明パネルの製造方法。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)の発光を利用した有機EL照明パネルは、透明な基板上に、透明電極層、有機EL層、電極層を順次積層し、これを封止材で封止して形成される。有機EL照明パネルに用いられる基板は、有機ELからの発光の透過率が高く透明であり、剛性を有することが要請されるところ、ガラス製基板が適用されていた。しかしながら、ガラス基板は脆く、取扱いは容易ではなく、薄膜状の厚さのガラス基板を製造するのは容易ではない。有機EL照明パネルにおいて、小型化、薄型、軽量化、更に、可撓性が求められていることから、透明で可撓性を有する樹脂製フィルムは、ロール状に巻回でき、取扱いが容易であり、有機ELを効率よく製造することができ、意匠性も向上させることができ、安価であり、ガラス基板に代わるものとして注目されている。
【0003】
有機EL照明パネルは、
図7に示すように、透明基板11上に透明電極層12、有機層13、電極層14を順次積層し、透明基板11にシール部16の接着剤17を介して封止材15を固定した構造を有し、その厚さは全体で数mm程度である。可撓性の有機EL照明パネルを得るためには、透明基板11に可撓性を有する透明の樹脂製フィルムを用いると共に、封止材15にも基板と同様の可撓性を有するものを使用し、基板と封止材の曲げ性や延性を一致させる必要がある。しかしながら、有機EL照明パネルが曲げられたとき、
図8に示すように、nmオーダー厚の超薄膜の有機層13や、電極層14が封止材15に接触、押圧され、損傷を受けやすい。
【0004】
このような有機EL素子として、基板上の電極層が形成されていない領域にスペーサ層を設け、これにより隙間を充填し、その上に有機材料層を設け、隙間への空気の侵入を抑制し、空気中に含まれる水分による有機EL素子の劣化や、有機材料層の折曲による損傷が起因となる発光輝度の低下を抑制した有機EL素子(特許文献1)や、配線間の立体交差がある領域にはスペーサーがない封止材を用いることにより、封止圧が過剰であっても、スペーサーが減り込んで上部配線と下部配線とが接触して導通することを抑制した有機EL素子パネル(特許文献2)が報告されている。
【0005】
その他、画素電極と対向電極間に有機発光層を有する有機EL素子の画素電極を囲って設けられた隔壁上にマスクスペーサーを設け、隔壁とマスクスペーサーと対向電極との上に無機膜を設け、補助対向電極を蒸着して設ける際、構成材料がマスクに付着して剥離し、発光欠陥が生じるのを抑制した有機EL装置(特許文献3、4)等が報告されている。
【0006】
このような有機EL照明パネルにおいては、可撓性を有する基板を用いて形成された有機EL照明パネルに屈曲力が負荷されても、基板と封止材間に封止される有機ELを含む有機層や、電極層に欠損が生じるのを抑制できる有機EL照明パネルが要請されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス照明パネルは、少なくとも一方が透明である可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材間に、少なくとも一方が透明である1対の電極層と、該1対の電極層に挟持される有機エレクトロルミネッセンスを含む有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明パネルであって、
前記可撓性フィルム基材上に積層される一方の前記電極層上に、前記有機層及び他方の前記電極層を貫通して設けられる複数のスペーサーを有することを特徴とする。
【0017】
上記有機エレクトロルミネッセンス照明パネルに用いる可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材(これらを可撓性フィルムともいう。)は、少なくとも一方が透明であれば、他方の透明性は問われない。具体的には、透明の可撓性フィルム基材と、透明性を有しない可撓性フィルム封止材とすることができる。
【0018】
可撓性フィルム基材又は可撓性フィルム封止材の透明とは、有機層に含まれる有機ELの発光を透過させ、有機EL照明パネルとして機能させ得るものであり、透過率が高いものが好ましく、例えば、有機ELの発光の透過率が全光線透過率で80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材は必ずしも同一の材質でなくてもよいが、曲げ応力が類似するものであることが好ましい。可撓性フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリ炭酸エステル(PC)等であることが好ましい。これらの厚さは、例えば、可撓性フィルム基材としては、20〜300μmを挙げることができ、可撓性フィルム封止材としては、50〜200μmを挙げることができる。
【0019】
これらの可撓性フィルムには、水等の気体の透過を抑制するガスバリア層を有していてもよい。ガスバリア層としては、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化ケイ素等を含む無機層や、これと共にオレフィン樹脂等の疎水性樹脂層や、アクリル系樹脂等の親水性樹脂層を有する透明性のものが好ましい。
【0020】
可撓性フィルム基材上に1対の電極層の一方が設けられる。可撓性フィルム基材が透明であれば、透明な電極層が形成され、透明電極層が有機層に含まれる有機ELの発光を透過させ、有機EL照明パネルとして機能させる。透明電極層は有機ELの発光の透過率が高いものが好ましく、例えば、有機ELの発光の透過率が全光線透過率で89%以上であることが好ましい。透明電極層は、正孔又は電子のいずれのキャリアを供給するものであってもよいが、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透光性電極材料で形成され、正孔を供給する正極とすることができる。透明電極層は、例えば、100〜300nm等の厚さに形成することができる。
【0021】
上記透明電極層と対をなす電極層は、透光性を問われるものでなく、透明電極層が上記透光性電極材料で形成される正極である場合、電子を供給する遮光性の負極とすることができる。具体的には、例えば、アルミニウム、銀等の金属薄膜の負極として遮光性の電極層とすることにより、有機層の発光を透光性電極層側へ反射し、有機EL照明パネルの発光面からの放出光量の減少を抑制するようにしてもよい。電極層の厚さは、配線抵抗による電圧降下を考慮すると厚い方が好ましく、例えば、50〜300nmとすることができる。また、透光性負極電極材料で形成した透明性電極層としてもよく、可撓性フィルム基材及び可撓性フィルム封止材を透明性を有するものとして、透明の有機EL照明パネルを作製することができる。電極層と配線部材とを接続するため、電極層の一端を延長して接続部を形成することが好ましい。
【0022】
上記可撓性フィルム基材上の電極層上に、複数のスペーサーが設けられる。スペーサーの形状は、円柱や六角柱等の柱状、球状等が好ましい。線状や大きな面積を有するスペーサーを設けた場合には、有機EL照明パネルに剛性を付与する傾向が高く、可撓性を維持することが困難となるが、柱状や、球状等のスペーサーでは、可撓フィルムとの接触面積が小さく、有機EL照明パネルの可撓性を維持することができる。一つのスペーサーが有機層の面方向に平行な断面に占める断面積は、可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材との接触を抑制するスペーサーの機能からは有機層に占める断面積は大きい程よいが、有機層中に有機ELを含有しないスペーサーが存在しても、視覚上発光しない部分として認識されるのを回避するためには小さい程よいことを勘案して選択することが好ましい。スペーサーが有機層の面方向に平行な断面に占める断面積は、平均直径5μm以上、50μm以下の円の面積に相当することが好ましく、より好ましくは、平均直径8μm以上、20μm以下の円の面積に相当することである。スペーサーの断面積が平均直径5μm以上の円の面積に相当するものであれば、スペーサーをフォトリソグラフィーにより作製する際、より安定してスペーサーを形成することができ、平均直径50μm以下の円の面積に相当するものであれば、視覚上認識されにくい傾向が高く、高開口率化、即ち、有機層の発光面積を広くすることができる。
【0023】
複数のスペーサーを設ける密度としては、可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材が非接触を保ち、且つ、有機層の発光面積を広く維持するため、有機層において100個/cm
2以上、400個/cm
2以下であることが好ましく、より好ましくは、100個/cm
2以上、200個/cm
2以下である。スペーサーの密度が上記範囲であれば、有機EL照明パネルが屈曲された場合でも、可撓性フィルムの間隔を維持し、有機層や電極層に欠損が生じるのを抑制することができる。
【0024】
スペーサーの高さは、有機層及び他方の電極層を貫通して設けられ、その先端が他方の電極層から突出した位置に達する高さを有する。具体的には、他方の電極層の上面より先端が平均0.2μm以上、100μm以下の範囲で突出していることが好ましく、より好ましくは、平均1μm以上、30μm以下の範囲で突出している高さである。
【0025】
スペーサーの材質は、樹脂製であっても、無機化合物であってもよく、電極層間の短絡が生じない非導電体であればよい。具体的には、可撓性フィルムと同じ材質、また、電極層をフォトリソグラフィーで形成する際に使用するレジスト等であってもよい。これらのうち、有機EL照明パネルが屈曲されたとき、可撓性フィルム間の間隔を維持する強度を有するものが好ましく、密度、製造効率等との関連において、スペーサーの材質を選択することが好ましい。
【0026】
有機層は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、有機ELを含む発光層、電子輸送層、電子注入層が、順次積層された構造を有するものを挙げることができる。また、発光に寄与しない正孔や電子が発光層から移動するのを抑制し、発光効率を高めるために、キャリアブロック層を複数層設けることもできる。
【0027】
正孔注入層は、透明電極層から有機層へ注入される正孔に対する注入障壁の高さを下げると共に、正極と正孔輸送層とのエネルギーレベルの相違を緩和し、正極から注入される正孔が正孔輸送層へ容易に注入されるように設けられるものである。正孔注入層を形成する正孔注入層材料として、例えば、銅フタロシアニンやスターバースト型芳香族アミンのようなアリールアミン誘導体等や、これらに五酸化バナジウムや三酸化モリブデン等の無機物や、F4-TCNQ等の有機物を化学ドーピングすることにより、更に注入障壁を下げ、駆動電圧を低下させたものを挙げることができる。
【0028】
正孔輸送層は、発光層への正孔の移動率を高めるために設けられる。正孔輸送層を形成する正孔輸送層材料は、適度なイオン化ポテンシャルを有し、同時に、発光層から電子の漏洩を阻止する電子親和力を有するものが好ましい。正孔輸送層材料として、例えば、ビス(ジ(p−トリル)アミノフェニル)−1,1−シクロヘキサン、TPD、N,N’−ジフェニル−N−N−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(α−NPD)等のトリフェニルジアミン類や、スターバースト型芳香族アミン等を用いることができる。
【0029】
発光層は、電極から注入された電子と正孔を再結合させ、蛍光、燐光を発光させる層である。発光層を形成する発光材料としては、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq3)、ビスジフェニルビニルビフェニル(BDPVBi)、1,3−ビス(p−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾールイル)フェニル(OXD−7)、N,N' −ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(BPPC)、1,4ビス(N−p−トリル−N−4−(4−メチルスチリル)フェニルアミノ)ナフタレン等の低分子化合物、ポリフェニレンビニレン系ポリマー等の高分子化合物を用いることができる。
【0030】
また、発光材料として、ホストとドーパントの二成分系からなり、ホスト分子で生成した励起状態のエネルギーがドーパント分子へ移動してドーパント分子が発光するものを用いることができる。二成分系の発光材料として、上記発光材料や、電子輸送性材料、正孔輸送性材料を用いることができる。例えば、ホストのAlq3等のキノリノール金属錯体に、ドーパントの4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、2,3−キナクリドン等のキナクリドン誘導体や、3−(2' −ベンゾチアゾール)−7−ジエチルアミノクマリン等のクマリン誘導体をドープしたもの、ホストの電子輸送性材料のビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)−4−フェニルフェノール−アルミニウム錯体に、ドーパントのペリレン等の縮合多環芳香族をドープしたもの、あるいはホストの正孔輸送性材料の4,4' −ビス(m−トリルフェニルアミノ)ビフェニル(TPD)にドーパントのルブレン等をドープしたもの、ホストの4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)、4,4´−ビス(9−カルバゾリル)−2,2’−ジメチルビフェニル(CDBP)等のカルバゾール化合物にドーパントの白金錯体やトリス−(2フェリニルピリジン)イリジウム錯体(Ir(ppy)3)、(ビス(4,6-ジ-フルオロフェニル)-ピリジネート-N,C2’)ピコリネートイリジウム錯体(FIr(pic))、(ビス(2−(2’−ベンゾ(4,5- α)チエニル)ピリジネート-N,C2’)(アセチルアセトネート)イリジウム錯体(Btp2Ir(acac))、Ir(pic)3、Bt2Ir(acac)等のイリジウム錯体をドープしたもの等を用いることができる。
【0031】
これらの発光材料は、有機EL照明装置の目的とする発光色によって選択することができる。具体的には、緑色発光の場合はAlq3、ドーパントにキナクドリンやクマリン、Ir(ppy)3等、青色発光の場合はDPVBi、ドーパントにペリレンやジスチリルアリーレン誘導体、FIr(pic)等、緑〜青緑色発光の場合はOXD−7等、赤〜オレンジ色発光の場合は、ドーパントにDCM、DCJTB、Ir(pic)3等、黄色発光の場合は、ドーパントにルブレン、Bt2Ir(acac)等を用いることができる。また、白色発光を得るために、発光材料としてホストにAlq3等、ゲストにDCM(橙色)等を組み合わせて使用することができる。
【0032】
白色発光の発光層としては、赤色、緑色、青色を発光する発光材料をそれぞれ含有する三層積層構造、或いは、青色と黄色等、補色を発光する発光材料をそれぞれ含有する二層積層構造としたり、これら各色の発光材料を多元共蒸着等で形成することによりこれらの発光材料が混在する一層構造とすることもできる。更に、上記三層や二層の積層構造における各色層を構成する発光材料を、順次、赤色、青色、緑色等の微細な画素を平面的に配列した発光層とすることもできる。
【0033】
発光層上にキャリアブロック層として正孔ブロック層を設けることができる。正孔ブロック層は発光層内で発光に寄与しないで通過する正孔をブロックし、発光層内で電子との再結合確率を高めるために、設けられる。正孔ブロック層を形成する材料として、2,9‐ジメチル‐4,7‐ジフェニル‐1,10‐フェナントロリン(BCP)、トリフェニルジアミン誘導体、トリアゾール誘導体等を用いることができる。
【0034】
電子輸送層は、発光層への電子の移動率を高めるために設けられ、適度なイオン化ポテンシャルを有し、同時に、発光層から正孔が漏洩するのを阻止できる電子親和力を有する電子輸送層材料で形成することが好ましい。電子輸送層を形成する電子輸送層材料として、例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(Bu−PBD)、OXD−7等のオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キノリノール系の金属錯体等の有機物質や、これらの有機材料にリチウム等アルカリ金属のような電子供与性物質を化学ドーピングしたものを用いることができる。
【0035】
電子注入層は、負極である電極層の形成に用いられるアルミニウム等金属材料の仕事関数と、電子輸送層の電子親和力(LUMO準位)のエネルギー差が大きいことに起因して、電極層から電子輸送層への電子の注入が困難になるのを緩和するために設けられる。電子注入層を形成する電子注入層材料としては、リチウムやセシウム等のアルカリ金属、若しくは、カルシウム等のアルカリ土類金属のフッ化物や酸化物、又は、マグネシウム銀やリチウムアルミニウム合金等から選択される仕事関数の小さい物質を用いることができる。
【0036】
上記電極層間に設けられる有機層の厚さは、例えば、各層を1〜500nm、合計100〜1000nmを挙げることができる。
【0037】
また、有機EL照明パネルの可撓性フィルム基材と可撓性フィルム封止材とがシール部を介して接合されて形成される封止空間には、可撓性フィルム封止材と電極層との接触を抑制する充填材が充填されていることが好ましい。充填材としては、不活性ガス又は捕水剤を含むシリコーン等を用いることができる。シリコーンはオルガノポリシロキサンのうち、高粘度の液状のジメチルポリシロキサンであることが好ましい。捕水剤としては、酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0038】
有機EL照明パネルの一例として、
図1の構成図に示すものを挙げることができる。
図1におけるA−A´線における断面を
図2に、
図1におけるB−B´線における断面を
図3に示す。
図1〜3に示す有機EL照明パネルは、透明の可撓性フィルム基材1上に、透明の電極層である正極2、有機層3、電極層である負極4が順次積層され、可撓性フィルム封止材5がシール部6を介して可撓性フィルム基材1に接着され、封止空間7を形成するようになっている。透明の電極層上には、複数のスペーサー8が、その先端が電極層の負極の上面より上に位置するように、有機層及び電極層を貫通して設けられている。図においては、スペーサーの先端は、封止材に接触していないが、封止材に接触するように設けられていてもよい。
【0039】
このような有機EL照明パネルの製造方法の一例を説明する。
【0040】
透明の可撓性フィルム基材に、透明電極層を形成する。透明電極の形成には、シャドーマスクを介して、上記透明電極層材料を、スパッタ、蒸着、CVD等により成膜して形成することができる。また、透明電極層材料を一様に成膜した透光性電極膜を、フォトリソグラフィーによりパターニングして形成することができる。透明電極層の一端に配線部材との接続部を形成するため、一端を延長して設けることが好ましい。
【0041】
透明の可撓性フィルム基材上に積層した透明電極層上にスペーサーを形成する。スペーサーの形成は、スペーサー材料をスパッタ、蒸着等で成膜し、フォトリソグラフィーでパターンに形成したり、シャドーマスクを介してスパッタ、蒸着等で形成することもできる。また、ディスペンス塗布、インクジェット塗布、スクリーン・フレキソ・グラビア等の印刷により形成することもできる。
【0042】
フォトリソグラフィーによりスペーサーを形成する場合は、電極層を形成した後、電極層上にフォトレジストを成膜し、フォトレジスト膜をフォトリソグラフィーによりパターニングして形成することができる。フォトレジストとしては、ネガ型、ポジ型いずれであってもよく、例えば、アクリル系樹脂、ノボラック、ポリイミド等のネガ型を用いることができる。フォトリソグラフィーによれば、10μm程度の微細なパターンの形成が可能であり、レジストとして透明のアクリル系樹脂を用いることにより、有機ELからの光を遮断することがなく好ましい。
【0043】
印刷によりスペーサーを形成する場合は、スペーサーが所定の高さになるように、複数回反復することもできる。印刷により形成したスペーサーは、フォトリソグラフィーによる場合より、サイズが大きくなるが、高さも高くすることができ、材料の選択幅が広く、製造工程も簡略であり、製造装置も簡便であり、製造効率が上昇され、安価に製造することができる。このようなスペーサーは、可撓性フィルム基材上の有機層が積層されない部分に形成することもできる。
【0044】
また、
図4に示すように、スペーサー8を形成するフォトレジスト膜のパターニング時に、負極の電極取り出し部となるパネル外周部に、絶縁部9を形成することができる。スペーサー8を形成するフォトレジスト膜のパターニングに使用するマスク材をハーフトーンマスクやグレートーンマスクを使用することにより、スペーサーとはその高さを異なるものに形成することができる。絶縁部9は、種々の発光形状の有機EL照明パネルの作製を可能とし、且つ、下層の透明電極層は一様に成膜した状態でよく、透明電極層のパターニングの工程を省略することができる。
【0045】
その後、有機層を形成する。電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、正孔ブロック層は上記材料を用いて、抵抗加熱による真空蒸着法、MBE法、レーザーアブレーション法等でシャドーマスクを介して所望の形状に成膜して形成することができる。また、これらの層の形成に高分子材料を用いる場合、高分子材料を液状にしてインクジェット等の印刷により所望の形状に形成して各層を形成することもでき、また、感光性塗布液にしてスピンコートやスリットコートし、フォトリソグラフィーにより所望の形状に形成して各層を形成することもできる。
【0046】
透明電極層と対をなす他方の電極層は、有機層上に真空蒸着法やスパッタ法等により形成することができる。また、電極層の一端に、電極層を延長して配線部材との接続部を形成することが好ましい。
【0047】
その後、有機層及び電極層を形成した透明の可撓性フィルム基材上にシール部を介して、可撓性フィルム封止材を接着又は融着し、封止空間に有機層及び電極層を封止する。シール部材としては、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の紫外線硬化型又は熱硬化型接着剤を用いることができる。可撓性フィルム基材と可撓性封止材の接着面は、局所常圧プラズマ処理やカップリング処理による表面改質処理を施し、シール部の接着性を高めてもよく、また、ラミネート法を適用してもよい。このとき、窒素等の不活性ガス環境下で行い、封止空間に不活性ガスを封止し、有機EL照明パネルを得ることができる。
【0048】
また、有機層及び電極層を封止した後、封止空間にシリコーンに酸化カルシウム等の捕水剤を混練したものを充填することもできる。これにより、内圧が一定に保持され、スペーサーと相俟って、電極層や有機層と、封止材との接触が抑制され、屈曲による電極層や有機層の損傷を抑制することができる。
【0049】
また、本発明の有機EL照明パネルとして、スペーサーが可撓性フィルム封止材上に電極層に対向し、且つ、有機層の上方に配置されたものであってもよい。
図5の断面を示す図に示すように、可撓性フィルム封止材5bに、スペーサーを設ける。図中、
図1と同符号で示すものは、
図1の有機EL照明パネルにおける各部材と同様のものを示す。可撓性フルム封止材5bに設けられるスペーサー8bは
図1に示す有機EL照明装置におけるスペーサー8と同様の形状、材質、密度、有機層に対して占める面積も同様に形成することができる。電極層4及び有機層3には、スペーサー8bに対向する部分に、スペーサー8bを挿入させ、透明電極2に達する挿入孔8cが設けられる。
【0050】
このような可撓性フィルム封止材に形成されるスペーサー8bの高さとしては、その先端が透明電極層2に接触する高さとしてもよいが、曲げられたときの基板間の距離の変動を考慮し、非接触とする高さであることが好ましい。具体的には、封止空間の高さにもよるが、50μm以上、500μm以下であることが好ましい。
【0051】
このようなスペーサー8bは、可撓性フィルム封止材上に、上記スペーサー8と同様の方法で形成することができる。電極層4及び有機層3に設けるスペーサー8bの挿入孔8cを形成するには、有機層、電極層の成膜時にシャドーマスクを用いて成膜させないことにより形成することができる。
【0052】
上記有機EL照明パネルにおいては、
図6に示すように、スペーサー8、8bによって電極層4と可撓性フィルム封止材5間に間隔を維持することができ、有機EL照明パネルを屈曲したときでも、封止材としての可撓性フィルムと電極層が接触するのを抑制し、電極層や有機層の損傷を抑制することができる。
【0053】
また、この有機EL照明パネルを適用した有機EL照明装置としては、上記透明電極層及びこれと対をなす電極層の一端を延設して形成した接続部に、接続される配線を介して接続される点灯回路、点灯回路の制御回路等が設けられる。これらを介して透明電極層及び電極層に外部電源の供給を可能とする。配線は、接続部の抵抗の上昇を抑制するために、電極の一端の幅の全体に亘る幅を有するものを用いることができる。配線として、銅ポリイミド等の可撓性を有するフィルムを適用することもできる。有機EL照明装置は、液晶ディスプレイ等のバックライト等に適用することができる。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明のリチウムイオン二次電池を詳細に説明する。
[実施例1]
厚さ200μmのポリエチレンナフタレート基材フィルム上に、酸化インジウムスズ(ITO)の透明導電膜を、シャドーマスクを介してスパッタにより成膜・パターニングを行い、透明電極層を形成した。透明電極層上にフォトレジストとしてネガ型感光性アクリル樹脂液を塗布、加熱後、フォトリソグラフィー法により、口径15μm、高さ5μmのスペーサーを、透明電極層上に100個/cm
2の密度で形成した。その後、正孔注入材料にCu−Pc(銅フタロシアニン)、正孔輸送材料にα−NPD(N,N’−ジフェニル−N−N−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン)、発光材料としてCBP(4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル)に、Ir(ppy)
3 (トリス−(2フェリニルピリジン)イリジウム錯体)、Btp
2Ir(acac) (ビス(2−(2’−ベンゾ(4,5- α)チエニル)ピリジネート-N,C2’)(アセチルアセトネート)イリジウム錯体)をドーピング、さらにCBPに、FIr(pic) ((ビス(4,6-ジ-フルオロフェニル)-ピリジネート-N,C2’)ピコリネートイリジウム錯体)をドーピングし、正孔ブロック層にBCP (2,9‐ジメチル‐4,7‐ジフェニル‐1,10‐フェナントロリン)、電子輸送層にAlq
3、電子注入材料にLiFを用い、マスクを介して順次真空(加熱)蒸着し、有機層を形成した。有機層上にアルミニウムを用いて真空(加熱)蒸着し、負極を形成した。有機EL素子部(電極層及びこれに挟持された有機層)の膜厚は、有機層と負極層を合せて285nmであった。スペーサーは負極の上面から4.7μm突出していた。その後、可撓性フィルム基材と同じ材質で厚さ100μmのフィルムを、窒素雰囲気下で、エポキシ系接着剤を用いて有機EL素子部を形成した可撓性フィルム基材と接着し、有機EL照明パネルを作製した。このとき、可撓性フィルム基材の接着面は常圧プラズマを用いて表面処理を施し、接着性を高めたものを用いた。
【0055】
駆動電流を25A/m
2の定電流とし点灯させたところ、駆動電圧は4.6V、輝度は980cd/m
2であった。
【0056】
[振動試験]
有機EL照明パネルを固定冶具に固定し、振動周波数5〜100Hz、加速度1.2Gの負荷をx、y、z方向にそれぞれ1分間加え、これを10回反復し、その後点灯させた。試験を行ったパネル10中、総てのパネルが点灯した。
【0057】
[衝撃試験]
有機EL照明パネルを固定冶具に固定し、加速度30Gの負荷をx、y、z方向にそれぞれ10msec加え、これを3回反復し、その後点灯させた。試験を行ったパネル10中、総てのパネルが点灯した。
【0058】
[屈曲性試験]
有機EL照明パネルの中心に対し左右辺をそれぞれ60度曲げ、これを30回反復し、その後点灯させた。試験を行ったパネル10中、総てのパネルが点灯した。
【0059】
[比較例]
スペーサーを設けない他は、実施例1と同様に有機EL照明パネルを作製し、試験を行った。振動試験では、試験を行ったパネル10中、8パネルが点灯しなかった。衝撃試験では、試験を行ったパネル10中、総てが点灯しなかった。屈曲試験では、試験を行ったパネル10中、9パネルが点灯しなかった。
【0060】
これらの結果から、スペーサーを設けない有機EL照明パネルにおいては、ショートやリークが発生するのに対し、本発明の有機EL照明パネルは、屈曲、振動、衝撃により有機層や電極層における損傷の発生が抑制されることが分かった。
【0061】
本願は、2012年3月30日出願の特願2012−079905に記載した総ての事項を、その内容として含むものである。