特許第6366105号(P6366105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366105気圧値又は高度を用いて建物毎の階高を推定する管理装置、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366105
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】気圧値又は高度を用いて建物毎の階高を推定する管理装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 5/06 20060101AFI20180723BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20180723BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20180723BHJP
   H04M 3/42 20060101ALI20180723BHJP
   H04M 3/487 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G01C5/06
   G01C15/00 102C
   G01C21/26 Z
   H04M3/42 U
   H04M3/487
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-23830(P2015-23830)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-148519(P2016-148519A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】泉川 晴紀
【審査官】 池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−216984(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/002898(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0006100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00− 1/14
5/00−15/14
21/00−21/36
23/00−25/00
G01S 5/00− 5/14
19/00−19/55
H04M 3/00
3/16− 3/20
3/38− 3/58
7/00− 7/16
11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の携帯端末から気圧値又は高度を含むログを収集する管理装置であって、
所定地域範囲毎に、多数のログの気圧値又は高度から、度数分布(気圧値又は高度毎のログ数)又は確率分布(気圧値又は高度毎のログ発生確率)を算出する分布算出手段と、
前記度数分布又は確率分布に対して中心差分法に基づく差分値を算出し、該差分値の分布から床面(フロアレベル)の気圧値又は高度を推定する床面推定手段と、
推定された2つ以上の床面の気圧値又は高度の差分間隔に基づいて、階高を推定する階高推定手段と
を有することを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記床面推定手段の前記中心差分法は、2階中心差分法である
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記ログが気圧値を含む場合、
前記床面推定手段は、気圧値の度数分布又は確率分布における各差分値について、第1の所定値以上であり、且つ、当該差分値の前方(前進)差分値が第2の所定値以下である気圧値を、床面の気圧値として推定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記ログが高度を含む場合、
前記床面推定手段は、高度の度数分布又は確率分布における各差分値について、第1の所定値以上であり、且つ、当該差分値の後方(後進)差分値が第2の所定値以下である高度を、床面の高度として推定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の管理装置。
【請求項5】
前記床面推定手段は、前方差分値又は後方差分値を第2の所定値と比較する場合、当該差分値を絶対値とする
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記床面推定手段は、度数分布又は確率分布に対して、中心差分法によって検出された気圧値又は高度について、当該気圧値又は高度の度数又は度数割合が第3の所定値以下となる気圧値又は高度を、床面の気圧値又は高度として推定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項7】
3つ以上の階高が検出された際に、1つの階高が他の階高のほぼ2倍となる場合に、当該階高を2分割する階高補間手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
前記ログには、測位情報が更に含まれており、
地図上の建物の所定地域範囲を記憶した地図情報記憶手段を更に有し、
前記分布算出手段は、前記測位情報が一致する所定地域範囲毎に、度数分布又は確率分布を算出する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項9】
前記ログには、測位情報として、当該携帯端末が無線で接続する1つ以上の基地局の識別子が更に含まれており、
地図上の建物毎に、そこに位置する携帯端末が無線で接続する1つ以上の基地局の識別子を対応付けて記憶した地図情報記憶手段を更に有し、
前記分布算出手段は、前記基地局の識別子が一致又は所定数類似する所定地域範囲毎に、度数分布又は確率分布を算出する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項10】
2つ以上の階高が検出された際に、気圧値が高い順に又は高度が低い順に、当該気圧値又は高度に階数を対応付けて記憶する階別階高記憶手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項11】
前記携帯端末からクエリとして気圧値又は高度及び測位情報を受信し、前記階別階高記憶手段を用いて前記測位情報に対応する地域範囲について、受信した気圧値又は高度から前記階数を特定し、該階数を前記携帯端末へ返信する階数特定手段を更に有する
ことを特徴とする請求項10に記載の管理装置。
【請求項12】
多数の携帯端末から気圧値又は高度を含むログを収集する管理装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
所定地域範囲毎に、多数のログの気圧値又は高度から、度数分布(気圧値又は高度毎のログ数)又は確率分布(気圧値又は高度毎のログ発生確率)を算出する分布算出手段と、
前記度数分布又は確率分布に対して差分法に基づく差分値を算出し、該差分値の分布から床面(フロアレベル)の気圧値又は高度を推定する床面推定手段と、
推定された2つ以上の床面の気圧値又は高度の差分間隔に基づいて、階高を推定する階高推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
多数の携帯端末から気圧値又は高度を含むログを収集する装置の階高推定方法であって、
所定地域範囲毎に、多数のログの気圧値又は高度から、度数分布(気圧値又は高度毎のログ数)又は確率分布(気圧値又は高度毎のログ発生確率)を算出する第1のステップと、
前記度数分布又は確率分布に対して差分法に基づく差分値を算出し、該差分値の分布から床面(フロアレベル)の気圧値又は高度を推定する第2のステップと、
推定された2つ以上の床面の気圧値又は高度の差分間隔に基づいて、階高を推定する第3のステップと
を有することを特徴とする階高推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気圧センサを搭載した携帯端末から収集した気圧値(又は高度)を用いて、建物における当該携帯端末の位置する階数を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサの小型化及び高精度化に伴って、携帯電話機やスマートフォンのような携帯端末に、種々のセンサが内蔵されてきている。特に、GPS(Global Positioning System)センサは一般的であって、衛星からの測位電波を受信することによって、その携帯端末の現在位置及び高さを測位することができる。これによって、現在位置を精度高く特定することができ、周辺地域情報を様々な観点から検索することができる。但し、GPSセンサは、衛星からの測位電波を受信する必要があるために、主に屋外での測位に限られる。
【0003】
一方で、屋内では、無線LANやセルラ通信ネットワークを介して、以下の3つの方式が主に用いられている(例えば特許文献11参照)。
「複数基地局測位方式」:複数の隣接基地局からの通信電波によって測位する
「ハイブリッド測位方式」:GPS測位方式+複数基地局測位方式
「セルベース測位方式」:接続先基地局の位置を、当該携帯端末の現在位置とする
屋内で測位可能なこれら測位方式によれば、緯度及び経度を推定することができるものの、高度までは十分に推定できない。
【0004】
高度を推定するために、GPSセンサの他に、「気圧センサ」を用いる方法がある。高度が既知である基準用無線センサ端末の気圧値を基準とし、気圧センサを搭載した携帯端末の高度を推定する技術もある(例えば特許文献1、2、7、8参照)。この技術によれば、地上高が既知の基準用無線センサ端末を配置して、当該端末の気圧値を基準として参照することによって、地上高が未知の携帯端末の地上高を推定することができる。
【0005】
また、天候等の気圧変化による推定高度の誤差を減少させる技術もある(例えば特許文献3参照)。この技術によれば、加速度センサの検出値の遷移に基づいてユーザの行動状態を判別し、移動している場合、又は、静止しているが急激に気圧変化が観測された場合にのみ、気圧の変化量から高度変化を推定する。
【0006】
更に、複層構造の道路のように同一地点に複数の高度の候補がある場合に、その高度を補正する技術もある(例えば特許文献4参照)。この技術によれば、気圧センサから算出した高度と、移動手段に基づく地図データの高度とを比較して高度補正値を算出し、計測された気圧センサの高度を補正する。
【0007】
更に、携帯端末について、気圧値と高度の換算テーブルを定期的に補正することによって、天候による気圧変動が、高度の算出に与える影響を減らす技術もある(例えば特許文献5参照)。この技術によれば、GPSに基づく現在位置情報と、気圧センサによって計測された気圧に基づく標高情報とを算出する。また、携帯端末は、サーバ装置から現在位置情報に基づく標高データを受信する。そして、携帯端末は、算出した標高情報と、受信した標高データとを比較して、換算テーブルを補正する。
【0008】
更に、携帯端末について、天候による気圧変動が大きくならない限り、建物屋内外の標高を高精度に計測する技術もある(例えば特許文献6参照)。この技術によれば、最初に、現在位置情報と、気圧センサにより計測された気圧に基づく標高情報とを算出する。次に、サーバ装置から、現在位置情報に基づく地図データ及び標高データを受信する。ここで、現在位置情報が地図データ上の建物や施設の内側にある場合には、算出した標高情報を現在の標高値とする。また、現在位置情報がその外側にある場合には、受信した標高データに合わせて校正し直した標高情報を、現在の標高値とする。これによって、携帯端末が、屋内に位置する際に、誤って標高データに基づく標高値を適用することを防ぐことができる。
【0009】
更に、気圧センサを搭載した携帯端末について、標高が既知である基準装置と同じ標高で携帯端末の気圧センサの出力差を補正する技術もある(例えば非特許文献3参照)。この技術によれば、当該基準装置の気圧値と標高値とに基づいて、携帯端末の補正後の気圧値から携帯端末の標高を算出する。
【0010】
更に、携帯端末が、事前に建物毎の階高(1フロア毎の高さ)情報又は各階の高度情報を予め記憶しておき、気圧値から推定された高度に照らして、その階数を推定する技術もある(例えば特許文献7、8、9、10、11及び非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−002933号公報
【特許文献2】特開2013−221887号公報
【特許文献3】特開2013−200156号公報
【特許文献4】特開2014−021036号公報
【特許文献5】特開2006−145340号公報
【特許文献6】特開2013−231634号公報
【特許文献7】特開2014−119995号公報
【特許文献8】特開2014−228329号公報
【特許文献9】特開2014−164623号公報
【特許文献10】特開2014−157103号公報
【特許文献11】特開2014−041046号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】服部武、藤岡雅宣編著「ワイヤレス・ブロードバンド教科書−3.5G/次世代モバイル編−」、インプレスR&D、2007年7月21日、第1版第3冊発行、p.56〜61
【非特許文献2】Sirin Tekinay、「Next generation wireless networks」、p.143〜
【非特許文献3】富上徹也ら、「気圧情報を利用した在階推定方法の提案と評価実験」、情報処理学会研究報告/研究報告高度交通システム(ITS)、2014年2月27日、{online]、[平成27年2月3日検索]、インターネット<URL: https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?active_action=repository_view_main_item_snippet&page_id=13&block_id=8&all=shigenori&pn=1&st=1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、現実的には、高層ビルが建ち並ぶ都会のような場所で必要となる位置サービスとしては、ユーザが屋内に位置する階数を特定できることが重要となる。しかしながら、携帯端末に搭載された気圧センサから高度を計測することができたとしても、ビル毎に階高が異なるために、当該携帯端末が位置する階数を特定することができない。即ち、滞在位置の高度のみでは、滞在位置の階数まで特定することができない。
【0014】
これに対し、特許文献1〜6に記載の技術によれば、携帯端末の滞在する高度を推定することはできても、携帯端末の滞在する階数を推定することは難しい。また、特許文献7〜12及び非特許文献3に記載の技術によれば、携帯端末の滞在する階数を推定することはできるが、建物毎の階高情報や各階の高度情報を事前に記憶しておくことが必要となる。勿論、特定の建物のみが対象であれば、階高情報を事前に調査することは可能であるが、汎用利用の位置サービスの場合、全ての建物の階高を事前に調査する必要があり、現実的ではない。
【0015】
そこで、本発明は、多数の携帯端末によって観測された気圧値又は高度を用いて、建物毎の階高を推定する管理装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、多数の携帯端末から気圧値又は高度を含むログを収集する管理装置であって、
所定地域範囲毎に、多数のログの気圧値又は高度から、度数分布(気圧値又は高度毎のログ数)又は確率分布(気圧値又は高度毎のログ発生確率)を算出する分布算出手段と、
度数分布又は確率分布に対して中心差分法に基づく差分値を算出し、該差分値の分布から床面(フロアレベル)の気圧値又は高度を推定する床面推定手段と、
推定された2つ以上の床面の気圧値又は高度の差分間隔に基づいて、階高を推定する階高推定手段と
を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
床面推定手段の中心差分法は、2階中心差分法であることも好ましい。
【0018】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
ログが気圧値を含む場合、
床面推定手段は、気圧値の度数分布又は確率分布における各差分値について、第1の所定値以上であり、且つ、当該差分値の前方(前進)差分値が第2の所定値以下である気圧値を、床面の気圧値として推定することも好ましい。
【0019】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
ログが高度を含む場合、
床面推定手段は、高度の度数分布又は確率分布における各差分値について、第1の所定値以上であり、且つ、当該差分値の後方(後進)差分値が第2の所定値以下である高度を、床面の高度として推定することも好ましい。
【0020】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
床面推定手段は、前方差分値又は後方差分値を第2の所定値と比較する場合、当該差分値を絶対値とすることも好ましい。
【0021】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
床面推定手段は、度数分布又は確率分布に対して、中心差分法によって検出された気圧値又は高度について、当該気圧値又は高度の度数又は度数割合が第3の所定値以下となる気圧値又は高度を、床面の気圧値又は高度として推定することも好ましい。
【0022】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
3つ以上の階高が検出された際に、1つの階高が他の階高のほぼ2倍となる場合に、当該階高を2分割する階高補間手段を更に有することも好ましい。
【0023】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
ログには、測位情報が更に含まれており、
地図上の建物の所定地域範囲を記憶した地図情報記憶手段を更に有し、
分布算出手段は、測位情報が一致する所定地域範囲毎に、度数分布又は確率分布を算出することも好ましい。
【0024】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
ログには、測位情報として、当該携帯端末が無線で接続する1つ以上の基地局の識別子が更に含まれており、
地図上の建物毎に、そこに位置する携帯端末が無線で接続する1つ以上の基地局の識別子を対応付けて記憶した地図情報記憶手段を更に有し、
分布算出手段は、基地局の識別子が一致又は所定数類似する所定地域範囲毎に、度数分布又は確率分布を算出することも好ましい。
【0025】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
2つ以上の階高が検出された際に、気圧値が高い順に又は高度が低い順に、当該気圧値又は高度に階数を対応付けて記憶する階別階高記憶手段を更に有することも好ましい。
【0026】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
携帯端末からクエリとして気圧値又は高度及び測位情報を受信し、階別階高記憶手段を用いて測位情報に対応する地域範囲について、受信した気圧値又は高度から階数を特定し、該階数を携帯端末へ返信する階数特定手段を更に有する
ことも好ましい。
【0027】
本発明によれば、多数の携帯端末から気圧値又は高度を含むログを収集する管理装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
所定地域範囲毎に、多数のログの気圧値又は高度から、度数分布(気圧値又は高度毎のログ数)又は確率分布(気圧値又は高度毎のログ発生確率)を算出する分布算出手段と、
度数分布又は確率分布に対して差分法に基づく差分値を算出し、該差分値の分布から床面(フロアレベル)の気圧値又は高度を推定する床面推定手段と、
推定された2つ以上の床面の気圧値又は高度の差分間隔に基づいて、階高を推定する階高推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、多数の携帯端末から気圧値又は高度を含むログを収集する装置の階高推定方法であって、
所定地域範囲毎に、多数のログの気圧値又は高度から、度数分布(気圧値又は高度毎のログ数)又は確率分布(気圧値又は高度毎のログ発生確率)を算出する第1のステップと、
度数分布又は確率分布に対して差分法に基づく差分値を算出し、該差分値の分布から床面(フロアレベル)の気圧値又は高度を推定する第2のステップと、
推定された2つ以上の床面の気圧値又は高度の差分間隔に基づいて、階高を推定する第3のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の管理装置、プログラム及び方法によれば、多数の携帯端末によって観測された気圧値又は高度を用いて、建物毎の階高を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】気圧値に対する建物の階数を表す説明図である。
図2】本発明における管理装置及び携帯端末の機能構成図である。
図3】高度に対する度数分布及び確率分布を表すヒストグラムである。
図4】気圧値に対する度数分布及び確率分布を表すヒストグラムである。
図5図3の高度に対する差分値及び床面を表すヒストグラムである。
図6図4の気圧値に対する差分値及び床面を表すヒストグラムである。
図7】度数が多い気圧値に対する度数分布を表すヒストグラムである。
図8図7の気圧値に対する差分値及び床面を表すヒストグラムである。
図9図7の気圧値に対する差分値及び床面を表すヒストグラムである。
図10】階高及び基準気圧値を用いてユーザの気圧値に基づく階数を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
図1は、気圧値に対する建物の階数を表す説明図である。
【0033】
図1によれば、携帯端末を所持した多数のユーザが、ビルの各階(フロア)に位置している。スマートフォンのような携帯端末によれば一般的に、GPSセンサや基地局測位によって自らの現在位置を測位すると共に、気圧センサによって気圧値を計測することもできる。但し、携帯端末は、ビルのような屋内に位置する場合、携帯電話網の基地局とは通信可能であるが、GPS衛星からの測位電波を受信することはできない。
【0034】
携帯端末に搭載された気圧センサは、例えば所定単位時間毎に、その高度に応じた気圧値を電力値として出力する。高度が低いほど、気圧値は高く、逆に、高度が高いほど、気圧値は低い。そのために、同一ビル内にあっても、そのユーザが位置する階数によっては、気圧センサによって観測される気圧値は異なる。ビルの1階で観測される気圧値は高く、ビルの高層階で観測させる気圧値は低い。
【0035】
本願発明者らは、複数のユーザに携帯端末を所持させたフィールドトライアルを実験した。その結果、収集された多数の気圧値(又はその気圧値から算出された高度)は、同一階に滞在していても、ユーザの身長や端末所持位置によって、ある程度の幅でばらつくことが検出された。一方で、携帯端末は通常、床面よりも低いところで使用されることは極めて少ない。その結果、人が携帯端末を所持する高度のログ数と、床面以下の高度のログ数との間に、かなりギャップがあることが観測された。本発明によれば、その度数(又は確率)のギャップを検出することによって、各階の床面を検出し、その階高を推定しようとする。
【0036】
建物毎の各階の「階高」を推定することができた場合、その建物の地上の基準気圧値と、そのビルに滞在するユーザの気圧値との気圧差から、そのユーザの位置する「階数」を特定することができる。
具体的には、ユーザが所持する端末によって取得された気圧値から、基準気圧値をベースとした当該端末が存在する階数を推定する。階数は、地上からの高度h(m:メートル)を用いて、例えば以下の式によって算出することができる。
h:地上からの高度
Pb:基準気圧値
Temp:気温
h=(((Pb/P)(1/5.257)−1)×(Temp+273.15))/0.0065
階数=h/階高
【0037】
図2は、本発明における管理装置及び携帯端末の機能構成図である。
【0038】
<管理装置1>
管理装置1は、気圧センサを搭載した多数の携帯端末から、「気圧値」を含むログ(ログデータ)を収集する。また、携帯端末が、高度を計測できる場合、ログに「高度」を含むものであってもよい。
【0039】
図2によれば、管理装置1は、ログ収集部11と、地図情報記憶部12と、分布算出部13と、床面推定部14と、階高推定部15と、階高補間部16と、階別階高記憶部17と、階数特定部18とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、階高推定方法としても理解できる。
【0040】
[ログ収集部11]
ログ収集部11は、ネットワークを介して、多数の携帯端末2から「ログ」を収集する。ログには、「気圧値」又は「高度」を含むと共に、例えば、GPSセンサの測位情報や、気温センサの気温情報を更に含むことも好ましい。
尚、管理装置1は、携帯端末2から逐次にログを受信するものであってもよいし、多数のログを携帯端末から予め収集した別のサーバから受信するものであってもよい。
【0041】
「高度」は、気圧センサによって取得された気圧値から算出されるが、GPSセンサによって計測されたものであってもよい。また、携帯端末2における高度算出部で算出されたものであってもよいし、多数のログを携帯端末から予め収集する別のサーバによって算出されたものであってもよい。勿論、携帯端末によって取得可能であって且つ基準が統一されていれば、海抜を基準としたものであってもよいし、その建物の地上周辺を基準としたものであってもよい。
【0042】
「測位情報」とは、携帯端末のGPSセンサに基づく緯度・経度情報であってもよいし、ホームロケーションレジスタ等ネットワーク側の設備で推定される携帯端末の緯度、経度情報であってもよい。
また、測位情報は、広域通信システムである携帯電話の基地局(セル)識別子や狭域通信システムである無線LAN・Bluetooth(登録商標)のアクセスポイント識別子(MACアドレス等)を以て位置情報としてもよい。これら情報により絶対的な位置の推定は難しくとも、相対的にその建物(ビル)周辺に位置すると判断することができる。
【0043】
[地図情報記憶部12]
地図情報記憶部12は、地図上の所定地域範囲を予め記憶する。所定地域範囲は、具体的には、建物毎の位置及び建築範囲である。
また、建物単位でなくても、緯度経度に基づく地域メッシュ(例えば1/10地域メッシュ)で区分けされた地域範囲であってもよい。
更に、所定地域範囲は、その位置で受信可能な基地局やアクセスポイントの識別子群を、地域範囲とするものであってもよい。
【0044】
[分布算出部13]
分布算出部13は、所定地域範囲毎に、多数のログの気圧値又は高度から、「度数分布(気圧値又は高度毎のログ数)」又は「確率分布(気圧値又は高度毎のログ発生確率)」を算出する。算出された度数分布又は確率分布は、床面推定部14へ出力される。
【0045】
図3は、高度に対する度数分布及び確率分布を表すヒストグラムである。
図3(a)によれば、高度に対する度数分布を表しており、図3(b)によれば、高度に対する確率分布を表している。
【0046】
図4は、気圧値に対する度数分布及び確率分布を表すヒストグラムである。
図4(a)によれば、気圧値に対する度数分布を表しており、図4(b)によれば、気圧値に対する確率分布を表している。
気圧値は、高所ほど低くなるため、図4の気圧値のヒストグラムは、図3の高度のヒストグラムと比較して、増分方向が左右入れ替わりとなる。
【0047】
図3及び図4からも明らかなとおり、携帯端末は通常、床面よりも低いところでは使用されないために、その高度では、度数や確率がほぼ0に近くなる。図3及び図4によれば、5つの床面があると推定することができる。
【0048】
図3及び図4におけるヒストグラムは、地図情報記憶部12に予め記憶された地図上の所定地域範囲毎に作成される。
(ログに、携帯端末の測位情報が含まれている場合)
分布算出部13は、地図情報記憶部12に記憶された所定地域範囲(例えば建築物)毎に、そこに属する測位情報のログのみを用いて度数分布又は確率分布を算出する。
(ログに、携帯端末が無線で接続する接続/周辺基地局の識別子が含まれている場合)
分布算出部13は、地図情報記憶部12に記憶された所定地域範囲(例えばそこで接続可能な基地局の識別子群)毎に、基地局の識別子が一致又は所定数類似するログのみを用いて度数分布又は確率分布を算出する。
このように、分布算出部13は、気圧値又は高度をまとめた所定地域範囲毎に、度数分布又は確率分布を算出する。
【0049】
[床面推定部14]
床面推定部14は、度数分布又は確率分布に対して「差分法」に基づく差分値を算出し、その差分値の分布から床面(フロアレベル)の気圧値又は高度を推定する。推定された1つ以上の床面の気圧値又は高度は、階高推定部15へ出力される。
【0050】
図5は、図3の高度に対する差分値及び床面を表すヒストグラムである。
図5(a)によれば、高度に対する差分値の分布を表しており、図5(b)によれば、高度に対して推定された床面の分布を表している。
【0051】
図6は、図4の気圧値に対する差分値及び床面を表すヒストグラムである。
図6(a)によれば、気圧値に対する差分値の分布を表しており、図6(b)によれば、気圧値に対して推定された床面の分布を表している。
【0052】
<差分法について>
ここで、「差分法(difference method)」とは、微分方程式を解く数値解析における離散化手法である。関数が2つの変数値に対してとる値の間の有限な差を、「差分(difference)」という。この差分を、変数値の差で割って得られる商を差分商(difference quotient)という。これは、微分を差分商で近似することによって、微分方程式を解く方法である。
【0053】
床面推定部14の差分法は、「中心差分法」であってもよい。
高度nと高度n+1との間で微分をとる前方差分△u(x)は、以下の式で表される。
△u(x)=u(x+h)−u(x)=un+1−un (h:差分間隔)
高度nと高度n-1との間で微分をとる後方差分▽u(x)は、以下の式で表される。
▽u(x)=u(x)−u(x-h)=un−un-1
そして、nに対して、n+1とn-1との間で差分をとる中心差分δu(x)は、以下の式で表される。即ち、中心差分δu(x)は、前方差分△u(x)と後方差分▽u(x)とを平均したものである。
δu(x)=u(x+1/2h)−u(x-1/2h)
=(△u(x)+▽u(x))/2
=(u(x+h)−u(x-h))/2
=(un+1−un-1)/2
【0054】
また、床面推定部14の中心差分法は、「2階中心差分法」であってもよい。
2階微分の近似としては、2階中心差分法(2nd difference method)を用いる。これは差分の差分に当たる。
δ2u(x)=(un+1−un)−(un−un-1)
=un+1−2un−un-1
2階中心差分法は、nを中心にして、n+1とn-1との間で差分をとる方法である。具体的には、[1, -2, 1]の2次微分フィルタである。
【0055】
<床面推定について>
(ログが気圧値を含む場合)
床面推定部14は、気圧値の度数分布又は確率分布における各差分値について、第1の所定値以上であり、且つ、当該差分値の前方(前進)差分値が第2の所定値以下である気圧値(若しくはその気圧値の後方の気圧値)を、床面の気圧値として推定する。
例えば気圧Pnの差分値Dnについて、当該値(Pn)が第1の所定値(例えば10)以上であり、且つ、その前方(Pn+1,Pn+2)の差分値(Dn+1,Dn+2)が第2の所定値(例えば5)以下である気圧値Pnを、床面の気圧と推定する。
尚、前述した条件を満たす気圧値Pnの後方気圧値Pn+1を、床面の気圧と推定してもよい。以下の例では、前述した条件を満たす気圧値Pnを、床面の気圧として推定するものとする。
【0056】
(ログが高度を含む場合)
床面推定部14は、高度の度数分布又は確率分布における各差分値について、第1の所定値以上であり、且つ、当該差分値の後方(後進)差分値が第2の所定値以下である高度(若しくはその高度の前方の高度)を、床面の高度として推定する。
例えば高度Hnの差分値Dnについて、当該値(Dn)が第1の所定値(例えば10)以上であり、且つ、その後方(Hn-1,Hn-2)の差分値(Dn-1,Dn-2)が第2の所定値(例ば5)以下である高度Hnを、床面の高度と推定する。
尚、前述した条件を満たす高度Hnの前方高度Hn+1を、床面の高度と推定してもよい。以下の例では、前述した条件を満たす高度Hnを、床面の高度として推定するものとする。
【0057】
また、床面推定部14は、前方差分値又は後方差分値を第2の所定値と比較する場合、当該差分値を絶対値としてもよい。
【0058】
[階高推定部15]
階高推定部15は、推定された2つ以上の床面の気圧値又は高度の差分間隔に基づいて、「階高」を推定する。推定された1つ以上の階高は、階別階高記憶部17へ出力されるが、オプション的に階高補間部16へ出力されるものであってもよい。そして、推定された階高は、所望のアプリケーションへ出力される。
図5(b)によれば、以下の高度が床面として推定されている。
推定された床面の高度: 1.5m 5.5m 9.5m 17.2m
高度の差分間隔: (4.0m) (4.0m) (7.07m)
図6(b)によれば、以下の気圧値が床面として推定されている。
推定された床面の高度:1009.5hPa 1010.42hPa 1010.9hPa 1011.38hPa
高度の差分間隔: (0.92hPa) (0.48hPa) (0.48hPa)
尚、階高推定部15は、所定の換算式、例えば1hPa=8.3mを用いて、階高を算出することもできる。
【0059】
[階高補間部16]
階高補間部16は、3つ以上の階高が検出された際に、1つの階高が他の階高のほぼ2倍(例えば1.8倍〜2.2倍)となる場合に、当該階高を2分割する。
【0060】
図5(b)の場合、差分間隔4mとなる階高が2つあるのに対し、1つが7.7mとなっている。この場合、7.7mを2分割する。
1階:4.0m
2階:4.0m
3階:3.9m
4階:3.9m
図5(b)の破線によって、補間された床面が表示されている。
【0061】
図6(b)の場合、差分間隔0.48hPaとなる階高が2つあるのに対し、1つが0.92hPaとなっている。この場合、0.92hPaを2分割する。
1階:0.46hPa
2階:0.46hPa
3階:0.48hPa
4階:0.48hPa
図6(b)の破線によって、補間された床面が表示されている。
【0062】
尚、階高補間部16は、複数の階高の平均値を算出することも好ましい。ビルの階高は一般的に、同一である場合が多いためである。
【0063】
階高補間の可否を判断する他の実施形態として、多数決方式を用いることも好ましい。例えば、4mとなる階高が1つある一方で、7.7mとなる階高が3つある場合、7.7mとなる階高の方が多いため、前述したような分割をしない。
【0064】
尚、従来的思考としては、例えば図3及び図4について、度数又は確率のピークの差を求める方法も考えられる。しかし、携帯端末の利用高度はユーザによって様々であって、そのピークにブレが生じる。例えば図3におけるピークの差は、それぞれ5.0m、3.3m、4.3m、3.0mとバラバラになることが分かる。そのために、本発明によれば、差分法を用いた差分値の分布から、階高を導出しようとしている。
【0065】
図7は、度数が多い気圧値に対する度数分布を表すヒストグラムである。
図8は、図7の気圧値に対する差分値及び床面を表すヒストグラムである。
【0066】
図8(a)は、2次微分フィルタを適用した場合の差分値の分布を表す。
図8(b)は、図8(a)から抽出された床面の分布を表す。
【0067】
図7の4階部分について、気圧値の分布が連続しており、図8(b)ようにその途中で床面が抽出されている。これは、全体の度数が多いために、比較的に度数が少ない高度を「床面」と判定したことに基づく。
このようなことを防止するため、床面推定部14は、度数分布又は確率分布に対して、中心差分法によって検出された気圧値又は高度について、当該気圧値又は高度の度数又は度数割合(若しくはそれらの前後方の値(n-1又はn+1の値))が第3の所定値以下となる気圧値又は高度を、床面の気圧値又は高度として推定する。具体的に図7によれば、度数が第3の所定値(例えば40)以下となる気圧値又は高度のみを用いて推定することによって、図8(b)の床面を排除することができる。
【0068】
図9は、図7の気圧値に対する差分値及び床面を表すヒストグラムである。
【0069】
図8は、2次微分フィルタを用いているのに対し、図9は、1次微分フィルタを用いている。
図9(a)は、図3(a)の分布に対して、[-2, 0, 2]のフィルタを適用したものである。
図9(b)は、図8(a)から抽出された3つの床面の高度の分布を表したものである。
【0070】
[階別階高記憶部17]
階別階高記憶部は、地域範囲毎に、階別の階高を記憶する。具体的には、階高補間部16(又は階高推定部15)から出力された、階別の階高を記憶する。2つ以上の階高が検出された際に、気圧値が高い順に又は高度が低い順に、当該気圧値又は高度に階数を対応付けて記憶する。
【0071】
[階数特定部18]
階数特定部18は、携帯端末2からクエリとして気圧値又は高度及び測位情報を受信する。そして、階数特定部18は、階別階高記憶部17を用いて測位情報に対応する地域範囲について、受信した気圧値又は高度から階数を特定し、その階数を携帯端末2へ返信する。
【0072】
図10は、階高及び基準気圧値を用いてユーザの気圧値に基づく階数を表す説明図である。
【0073】
図10によれば、所定地域範囲(建物)毎の基準気圧値と、ユーザの携帯端末に計測された気圧値との気圧差を、階高で除算することによって、そのユーザの滞在階数を特定することができる。
【0074】
尚、気圧値は同じ場所であっても、日々刻々と変動する。そのため、例えば標準大気圧(海面上で1013.25 hPa)を基準にした、携帯端末で気圧値が取得された日時における海抜気圧値を用いて、携帯端末によって取得された気圧値を補正することも好ましい。ここで、気候データベースから、その所定地域範囲の気温を取得することもできる。また、携帯端末が気温センサを搭載している場合、その携帯端末から受信するログに含まれる気温を用いてもよい。気温を取得できない場合、季節に応じて予め設定した所定気温(例えば5月であれば15度)を用いてもよい。
【0075】
<携帯端末2>
図2によれば、携帯端末2は、気圧センサやGPSセンサを備えたものである。携帯端末は、主にユーザに所持されており、ユーザの行動と共に移動する。携帯端末は、例えば携帯電話機やスマートフォンであって、いずれかの基地局と無線を介して接続している。
【0076】
ログ送信部21は、気圧センサやGPSセンサ(又は気温センサ)によって観測された環境情報を含むログを、管理装置1へ送信する。ログには、少なくとも当該携帯端末自身の測位情報も含む。この測位情報は、当該携帯端末の地域範囲を特定できればよく、GPSの緯度経度に限られず、複数基地局測位情報等であってもよいし、接続先基地局及び/又は周辺基地局の識別子を位置情報としてもよい。
【0077】
携帯端末2は、送信したログに対して、管理装置1から階数(又は階高)を受信することもできる。携帯端末2は、受信した階数(又は階高)をアプリケーションへ出力し、その階数に応じたサービスをユーザに提供することができる。
【0078】
以上、詳細に説明したように、本発明の管理装置、プログラム及び方法によれば、多数の携帯端末によって観測された気圧値又は高度を用いて、建物毎の階高を推定することができる。階高を推定することによって、各携帯端末の気圧値又は高度から、その建物における階数を推定することができる。特に、専用装置を各階に配置することなく、ユーザの滞在階数を推定することができ、そのフロアレベルに応じた位置サービスをユーザに提供することができる。
【0079】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0080】
1 管理装置
11 ログ収集部
12 地図情報記憶部
13 分布算出部
14 床面推定部
15 階高推定部
16 階高補間部
17 階別階高記憶部
18 階数特定部
2 携帯端末
3 気候データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10