【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0029】
(実施例1)
厚み35mm、幅910mm、長さ2700mmの建築パネルを形成する。この建築パネルは二枚の金属外皮がそれぞれ厚み0.5mmの亜鉛めっき鋼板で形成されている。芯材は厚み34mmのウレタンフォーム(1種)で形成されている。各金属外皮と芯材とはウレタンフォームを形成する樹脂材料の自己接着力により接着されている。建築パネルには複数の潜熱蓄熱部材が内蔵されている。
【0030】
潜熱蓄熱部材は袋体に多数の粒状の蓄熱材を封入して形成されている、袋体は厚み0.01mmのアルミニウム箔で形成されている。蓄熱材(JSR株式会社製の「CALGRIP」)は融点が25℃に設計されたパラフィンで形成されている。蓄熱材の形状は矩形状の板状である。一つの潜熱蓄熱部材には500gの蓄熱材が封入されている。潜熱蓄熱部材は蓄熱材が完全に融解した状態(ゲル状態)で厚み15mm、幅280mm、長さ180mmに形成される。蓄熱材が完全に凝固した状態では潜熱蓄熱部材は厚み12mm、幅280mm、長さ180mmに形成される。
【0031】
潜熱蓄熱部材はその片面が一方の金属外皮の芯材側の面にウレタン系接着剤(二液タイプ)で接着されている。潜熱蓄熱部材の他の片面には石油ナフサを含有する剥離剤が2〜3g/m
2で塗布されている。潜熱蓄熱部材は金属外皮の長手方向に7個、金属外皮の短手方向に2個並べて設けている。金属外皮の長手方向で隣り合っている潜熱蓄熱部材の端部間の間隔は180mmとし、金属外皮の短手方向で隣り合っている潜熱蓄熱部材の端部間の間隔は150mmとしている。そして、潜熱蓄熱部材を設けた一方の金属外皮と潜熱蓄熱部材を設けていない他方の金属外皮とを対向配置し、二枚の金属外皮の間に液状の樹脂材料を供給し、この樹脂材料を発泡させることにより、芯材を形成する。芯材の形成時には、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態であることが必要であるため、蓄熱材が完全に融解した状態となる温度で樹脂材料を発泡させる。具体的には、樹脂材料の発泡効率等も考慮して、温度約35℃で樹脂材料を発泡させる。
【0032】
このようにして14個の潜熱蓄熱部材を内蔵した建築パネルが形成される。この建築パネルでは、芯材の潜熱蓄熱部材が設けられている部分が凹所となり、金属外皮と凹部とで囲まれる空間が収容空間として形成される。そして、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態で芯材が形成されるため、収容空間は最も体積が増加した状態の潜熱蓄熱部材が収容可能な大きさに形成されている。また、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態から収縮する場合、潜熱蓄熱部材が金属外皮に接着され、芯材とは剥離剤により接着されていないので、潜熱蓄熱部材は厚み方向に収縮しながら芯材と離れるようになっている。
【0033】
(実施例2)
実施例1と同様の金属外皮と芯材と潜熱蓄熱部材とを用いて建築パネルを形成する。潜熱蓄熱部材はその片面が一方の金属外皮の芯材側の面に接触して配置されているが、接着されていない。潜熱蓄熱部材の他の片面には剥離剤が塗布されていない。潜熱蓄熱部材は実施例1と同様の個数と間隔で金属外皮に設けられている。そして、潜熱蓄熱部材を設けた一方の金属外皮と潜熱蓄熱部材を設けていない他方の金属外皮とを対向配置し、二枚の金属外皮の間に液状の樹脂材料を供給し、この樹脂材料を実施例1と同様の条件で発泡させることにより、芯材を形成する。
【0034】
このようにして14個の潜熱蓄熱部材を内蔵した建築パネルが形成される。この建築パネルでは、芯材の潜熱蓄熱部材が設けられている部分が凹所となり、金属外皮と凹部とで囲まれる空間が収容空間として形成される。そして、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態で芯材が形成されるため、収容空間は最も体積が増加した状態の潜熱蓄熱部材が収容可能な大きさに形成されている。また、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態から収縮する場合、潜熱蓄熱部材が金属外皮に接着されず、芯材とは樹脂材料の自己接着力により接着されるので、潜熱蓄熱部材は厚み方向に収縮しながら金属外皮と離れるようになっている。
【0035】
(実施例3)
厚み35mm、幅910mm、長さ2700mmの建築パネルを形成する。この建築パネルは二枚の金属外皮がそれぞれ厚み0.5mmの亜鉛めっき鋼板で形成されている。金属外皮には幅280mmで建築パネルの長手方向の全長にわたって突出部が形成されている。突出部の幅(280mm)は、蓄熱材が完全に融解した状態(ゲル状態)の潜熱蓄熱部材が収容可能に形成されており、厚み(深さ)15mm、幅280mm、長さ2700mmに形成される。芯材は厚み34mmのウレタンフォーム(1種)で形成されている。各金属外皮と芯材とはウレタンフォームを形成する樹脂材料の自己接着力により接着されている。建築パネルには複数の潜熱蓄熱部材が突出部に配置されて内蔵されている。
【0036】
潜熱蓄熱部材は実施例1と同様のものを用いる。
【0037】
潜熱蓄熱部材はその片面が一方の金属外皮に形成した突出部の芯材側の面にウレタン系接着剤(二液タイプ)で接着されている。潜熱蓄熱部材の他の片面には実施例1と同様に剥離剤が塗布されている。潜熱蓄熱部材は実施例1と同様の個数と間隔で金属外皮に設けられている。そして、潜熱蓄熱部材を設けた一方の金属外皮と潜熱蓄熱部材を設けていない他方の金属外皮とを対向配置し、二枚の金属外皮の間に液状の樹脂材料を供給し、この樹脂材料を実施例1と同様の条件で発泡させることにより、芯材を形成する。
【0038】
このようにして14個の潜熱蓄熱部材を内蔵した建築パネルが形成される。この建築パネルでは、芯材と突出部とで囲まれる空間が収容空間として形成される。そして、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態で芯材が形成されるため、収容空間は最も体積が増加した状態の潜熱蓄熱部材が収容可能な大きさに形成されている。また、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態から収縮する場合、潜熱蓄熱部材が金属外皮に接着され、芯材とは剥離剤により接着されていないので、潜熱蓄熱部材は厚み方向に収縮しながら芯材と離れるようになっている。
【0039】
(実施例4)
実施例3と同様の金属外皮と芯材と潜熱蓄熱部材とを用いて建築パネルを形成する。潜熱蓄熱部材はその片面が一方の金属外皮に形成した突出部の芯材側の面に接触して配置されているが、接着されていない。潜熱蓄熱部材の他の片面には剥離剤が塗布されていない。潜熱蓄熱部材は建築パネルの内部において突出部の内側に収容されている。潜熱蓄熱部材は実施例1と同様の個数と間隔で金属外皮に設けられている。そして、潜熱蓄熱部材を設けた一方の金属外皮と潜熱蓄熱部材を設けていない他方の金属外皮とを対向配置し、二枚の金属外皮の間に液状の樹脂材料を供給し、この樹脂材料を実施例1と同様の条件で発泡させることにより、芯材を形成する。
【0040】
このようにして14個の潜熱蓄熱部材を内蔵した建築パネルが形成される。この建築パネルでは、芯材と突出部とで囲まれる空間が収容空間として形成される。そして、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態で芯材が形成されるため、収容空間は最も体積が増加した状態の潜熱蓄熱部材が収容可能な大きさに形成されている。また、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態から収縮する場合、潜熱蓄熱部材が金属外皮に接着されず、芯材とは樹脂材料の自己接着力により接着されるので、潜熱蓄熱部材は厚み方向に収縮しながら金属外皮と離れるようになっている。
【0041】
(比較例1)
実施例1と同様の金属外皮と芯材とを用い、潜熱蓄熱部材を用いずに建築パネルを形成する。すなわち、潜熱蓄熱部材を設けていない二枚の金属外皮を対向配置し、二枚の金属外皮の間に液状の樹脂材料を供給し、この樹脂材料を実施例1と同様の条件で発泡させることにより、芯材を形成する。このようにして形成される建築パネルでは、芯材には凹所が形成されず、金属外皮と芯材とが略全面にわたって接着される。
【0042】
(比較例2)
実施例1と同様の金属外皮と芯材と潜熱蓄熱部材を用いて建築パネルを形成する。潜熱蓄熱部材はその片面が一方の金属外皮の芯材側の面にウレタン系接着剤(二液タイプ)で接着されている。潜熱蓄熱部材の他の片面には剥離剤が塗布されていない。潜熱蓄熱部材は実施例1と同様の個数と間隔で金属外皮に設けられている。そして、潜熱蓄熱部材を設けた一方の金属外皮と潜熱蓄熱部材を設けていない他方の金属外皮とを対向配置し、二枚の金属外皮の間に液状の樹脂材料を供給し、この樹脂材料を実施例1と同様の条件で発泡させることにより、芯材を形成する。
【0043】
このようにして14個の潜熱蓄熱部材を内蔵した建築パネルが形成される。この建築パネルでは、芯材の潜熱蓄熱部材が設けられている部分が凹所となり、金属外皮と凹部とで囲まれる空間が収容空間として形成される。そして、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態で芯材が形成されるため、収容空間は最も体積が増加した状態の潜熱蓄熱部材が収容可能な大きさに形成されている。また、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態から収縮する場合、潜熱蓄熱部材が金属外皮と芯材の両方に接着されているので、潜熱蓄熱部材は金属外皮と芯材から離れずに厚み方向に収縮しようとする。
【0044】
(比較例3)
実施例3と同様の金属外皮と芯材と潜熱蓄熱部材を用いて建築パネルを形成する。潜熱蓄熱部材はその片面が一方の金属外皮の芯材側の面にウレタン系接着剤(二液タイプ)で接着されている。潜熱蓄熱部材の他の片面には剥離剤が塗布されていない。潜熱蓄熱部材は建築パネルの内部において突出部の内側に収容されている。潜熱蓄熱部材は実施例1と同様の個数と間隔で金属外皮に設けられている。そして、潜熱蓄熱部材を設けた一方の金属外皮と潜熱蓄熱部材を設けていない他方の金属外皮とを対向配置し、二枚の金属外皮の間に液状の樹脂材料を供給し、この樹脂材料を実施例1と同様の条件で発泡させることにより、芯材を形成する。
【0045】
このようにして14個の潜熱蓄熱部材を内蔵した建築パネルが形成される。この建築パネルでは、芯材と突出部とで囲まれる空間が収容空間として形成される。そして、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態で芯材が形成されるため、収容空間は最も体積が増加した状態の潜熱蓄熱部材が収容可能な大きさに形成されている。また、潜熱蓄熱部材が最も体積が増加した状態から収縮する場合、潜熱蓄熱部材が金属外皮と芯材の両方に接着されているので、潜熱蓄熱部材は金属外皮と芯材から離れずに厚み方向に収縮しようとする。
【0046】
[許容曲げ応力度]
3等分2線集中荷重載荷試験を行った。この場合、建築パネルを長手方向の両端部で水平に支持し(支持スパンは2500mm)、建築パネルの各支持位置から833mmの位置に上から均等な荷重を付加し、建築パネルの中央部の変位を測定した。そして、この試験による破壊荷重を測定し、断面係数及び断面二次モーメントを用いて最大曲げ応力度を計算し、さらに安全率を2として許容曲げ応力度を計算した。
【0047】
実施例1及び2の建築パネルは、許容曲げ応力度が370〜380kg/cm
2であり、比較例1の建築パネルの許容曲げ応力度560kg/cm
2よりもやや低下する傾向にある。しかしながら、人が全力で建築パネルに寄りかかった時の曲げ応力度は約650kg/cm
2であるため、実施例1及び2の建築パネルであっても、実用上、問題とならない曲げ強度を有するものである。実施例3及び4は許容曲げ応力度が800〜830kg/cm
2であり、比較例1の建築パネル及び比較例2の建築パネル(許容曲げ応力度が375kg/cm
2)よりも曲げ強度が高くなり、比較例3の建築パネル(許容曲げ応力度が835kg/cm
2)に比べても、遜色のない曲げ強度を有する。
【0048】
[温度調節機能]
図6のような測定ユニット20を形成した。測定ユニット20は上板21と下板22と一対の短い側板23と一対の長い側板24とを組合せた箱で形成されている。上板21の下面には蛍光灯25が設けられている。下板22の上面には扇風機26が設けられている。上板21と下板22と一対の短い側板23は比較例1の建築パネルで形成されている。そして、一対の長い側板24を実施例1〜4及び比較例1〜3のそれぞれを用いて形成することにより、複数の測定ユニット20を形成した。尚、測定ユニット20の大きさは、高さ900mm、短手寸法570mm、長手寸法1350mmであった。また、長い側板24は実施例1〜4及び比較例1〜3の建築パネルを切断して形成され、10個の潜熱蓄熱部材5が内蔵されている。
【0049】
そして、温度調節機能の測定は以下のようにして行った。まず、上板21の無い状態の測定ユニット20を入れた恒温恒湿試験機内を10℃で保管(約36時間)し、蓄熱材(パラフィン)を確実に固体化させた。次に、恒温恒湿試験機を10℃から14℃に昇温し、この温度が14℃で安定したら、上板21を取り付けて測定ユニット20内を密閉し、同時に蛍光灯25をONにして点灯させた。また、恒温恒湿試験機の温度(測定ユニット20の外部雰囲気温度)を14℃から27℃に昇温した。この後、ユニット内部の温度を継続的(1分間隔)に測定した。そして、約7.5時間後に蛍光灯25をOFFにして消灯した後、恒温恒湿試験機の温度は27℃で維持した状態で、30分間継続して測定ユニット20内の温度を測定した。尚、測定ユニット20内の温度の測定は、
図6(a)のように、測定ユニット20の長手方向と短手方向の略中央部で、上板21の下面から450mmの位置(1)と、上板21の下面から255mmの位置(2)とで測定した。また、長い側板24の内側表面の温度も上の位置(3)、真ん中の位置(5)、下の位置(4)で測定した。さらに
図6(b)及び
図6(c)のように、潜熱蓄熱部材5の芯材側の表面の位置(6)と潜熱蓄熱部材5の内部の位置(7)の温度も測定した。結果を
図7〜9に示す。
【0050】
図7のグラフから、蛍光灯25の発熱により測定ユニット20の内部の位置(1)及び(2)では徐々に温度上昇するが、実施例1を用いた測定ユニット20は温度上昇が緩やかであった。また実施例1を用いた測定ユニット20は最高到達温度が31.5℃で、比較例1を用いた測定ユニット20は最高到達温度が42.8℃であった。すなわち、最高到達温度の差が11.3℃あり、実施例1では潜熱蓄熱部材5の温度調節機能の効果が見られた。
【0051】
また実施例2を用いた測定ユニット20は温度上昇も緩やかであった。実施例2を用いた測定ユニット20は最高到達温度が32.3℃で、比較例1を用いた測定ユニット20は最高到達温度が42.8℃であった。すなわち、最高到達温度の差が10.5℃あり、実施例2でも潜熱蓄熱部材5の温度調節機能の効果が見られた。また実施例3を用いた測定ユニット20は温度上昇も緩やかであった。また実施例3を用いた測定ユニット20は最高到達温度が30.3℃で、比較例3を用いた測定ユニット20は最高到達温度が41.5℃であった。すなわち、最高到達温度の差が11.2℃あり、実施例3でも潜熱蓄熱部材5の温度調節機能の効果が見られた。また実施例4を用いた測定ユニット20は温度上昇も緩やかであった。また実施例4を用いた測定ユニット20は最高到達温度が31.9℃で、比較例3を用いた測定ユニット20は最高到達温度が41.5℃であった。すなわち、最高到達温度の差が9.6℃あり、実施例4でも潜熱蓄熱部材5の温度調節機能の効果が見られた。
【0052】
図8のグラフから、測定ユニット20の位置(3)〜(5)の温度変化も位置(1)及び(2)と同様の傾向を示しており、実施例1では潜熱蓄熱部材5の温度調節機能の効果が見られた。実施例1では潜熱蓄熱部材5がない箇所(位置(5))も温度上昇が抑制されている。蛍光灯25から遠い位置(4)は比較的温度が低くなった。また実施例2〜4、比較例2、3でも同様の結果であった。
【0053】
図9のグラフから、蛍光灯25の点灯から1.5時間程度で、位置(6)(7)の温度が蓄熱材の融点20℃を超え、蛍光灯25を消灯した後も25℃付近まで上昇した。
【0054】
[金属外皮の凹み発生の有無]
上記の[温度調節機能]において、測定ユニット20の内部の温度変化を測定した後、恒温恒湿試験機の温度を10℃にし、36時間経過後に長い側板24の金属外皮に凹みが生じているか否かを目視で確認した。
【0055】
実施例1〜4では、長い側板24の金属外皮に凹みが生じなかったが、比較例2,3では長い側板24の金属外皮に凹みが生じた。