(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の分電盤1のキャビネット2は、
図1ないし
図3に示すように、ボックス3と、保護板4と、土台5とを備えている。
【0017】
ボックス3は、前面が開口面31として開口した直方体状に形成され、内部に配線用遮断器6が配置される内器スペース32を設けてある。保護板4は、ボックス3に支持されボックス3の開口面31を覆う位置と開放する位置との間で移動する。土台5は、ボックス3の下方に配置されてボックス3を支持する。
【0018】
ボックス3は、下面33(
図9参照)に開口する第1の通線口34を有している。
【0019】
土台5は、第2の通線口52(
図9参照)と、第3の通線口54とを有している。第2の通線口52は、ボックス3の下面33に対向する載置面51のうち第1の通線口34に対向する位置に開口する。第3の通線口54は、載置面51に直交する複数の側面53(531〜534)のうち開口面31と同じ向きを向いた第1の側面531に開口する。
【0020】
土台5には、第2の通線口52と第3の通線口54とを結ぶ通線孔55が形成されている。
【0021】
ボックス3には、第1の通線口34と開口面31とを隔てる第1の前枠11が取り外し可能に取り付けられている。
【0022】
土台5は、載置面51と第1の側面531とに跨って開口した開口窓58(
図4参照)が形成され、開口窓58が第2の通線口52および第3の通線口54を形成している。
【0023】
この構成によれば、ボックス3の下面33に開口する第1の通線口34は、土台5の第2の通線口52および通線孔55を通して、土台5の第3の通線口54につながっている。そのため、ボックス3内の配線用遮断器6に接続される電線7(
図9参照)は、土台5の第1の側面531に開口した第3の通線口54からキャビネット2内に引き込まれる。この電線7は、土台5の内側を通して、ボックス3の下面33に開口した第1の通線口34からボックス3内に引き込まれる。言い換えれば、ボックス3は、土台5の分だけ床等の設置面8(
図9参照)から持ち上げられるので、第3の通線口54からキャビネット2内に引き込まれた電線7は、ボックス3と設置面8との間にできた隙間を通してボックス3の下面33から引き込まれる。
【0024】
しかも、第1の前枠11が取り外し可能であるから、第1の前枠11を取り外した状態において、電線7を第1の通線口34の前方から第1の通線口34に導入することができる。さらに、載置面51と第1の側面531とに跨って開口した開口窓58が第2の通線口52および第3の通線口54を形成しているので、電線7を第2の通線口52の前方から第2の通線口52および第3の通線口54に導入することができる。すなわち、第1の通線口34、第2の通線口52、第3の通線口54に電線7をくぐらせることなく前方から容易に導入することができる。
【0025】
したがって、本実施形態の分電盤1のキャビネット2は、キャビネット2の下部から電線7を分電盤1内に容易に引き込むことが可能であって、電線7の引き込み作業について作業性の更なる向上が可能である。
【0026】
また、本実施形態に係る分電盤1は、上記のキャビネット2と、内器スペース32に配線用遮断器6として取り付けられた主幹ブレーカ61および複数の分岐ブレーカ62,62…とを備える。
【0027】
以下、本実施形態に係る分電盤1のキャビネット2、分電盤1の構成について詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0028】
本実施形態に係る分電盤1は、住宅(戸建住宅や集合住宅の各住戸)内に設置される住宅用分電盤ではなく、たとえば集合住宅の電気室やビル、工場などに設置される業務用(非住宅用)分電盤であって、電気室等の設置スペースの床に設置される。つまり、本実施形態に係る分電盤1は、壁掛け型ではなく床置き型の自立式分電盤を想定している。また、以下では、床に置かれた状態の分電盤1を前方から見た上下左右を上下左右として説明する。ただし、これらの設定は、本発明に係る分電盤1の用途や設置形態、向きを特に限定する趣旨ではなく、たとえば分電盤1は壁掛け型であってもよい。
【0029】
(キャビネットの構造)
まず、分電盤1のキャビネット2について説明する。キャビネット2は、上述したようにボックス3と保護板4と土台5とを備えている。
【0030】
ボックス3は、
図1に示すように、正面視が上下方向に長い長方形状となり前面が開口面31として開口した直方体状の箱体であって、土台5を介して床等の設置面8(
図9参照)に設置して使用される。ボックス3は、その内部に少なくとも配線用遮断器6としての主幹ブレーカ61および複数の分岐ブレーカ62,62…を収納する内器スペース32を有している。
【0031】
具体的には、ボックス3は、矩形板状の背板301と、背板301の左端縁から前方に突出した左側板302と、背板301の右端縁から前方に突出した右側板303とを有している。さらに、ボックス3は、左側板302と右側板303の上端縁同士を連結する上板304と、左側板302と右側板303の下端縁同士を連結する下板305とを有している。言い換えれば、左側板302と右側板303と上板304と下板305とが矩形状の枠体を構成し、その枠体の背面が背板301によって塞がれており、枠体の前面は開口部となる。これら背板301と左側板302と右側板303と上板304と下板305とで囲まれた空間が、内器スペース32を構成する。
【0032】
なお、ボックス3の形状についても適宜変更可能であって、ボックス3は、上下方向に長い縦長形状に限らず、たとえば正面視が正方形状となる形状や、左右方向に長い横長形状であってもよい。
【0033】
本実施形態に係る分電盤1のキャビネット2は、内器スペース32として、主幹ブレーカ61を収納する第1スペース321、および複数の分岐ブレーカ62,62…を収納する第2スペース322の他、第3スペース323を有している。第3スペース323は、後述するリモコンブレーカやリモコンリレーなどの開閉器63を収納するためのスペースである。本実施形態では、これらの内器スペース32は、ボックス3内において上から第1スペース321、第2スペース322、第3スペース323の順に並んで配置されている。
【0034】
さらに詳しく説明すると、第1スペース321は、背板301の左右方向のほぼ中央部であって、上下方向の中心よりも上寄りの位置に設けられている。ボックス3は、第1スペース321の上方、下方、左方、右方には、それぞれ十分なスペースを確保している。
【0035】
第2スペース322は、第1スペース321の下側に設けられている。詳しくは後述するが、複数の分岐ブレーカ62,62…は導電バー(図示せず)の左側と右側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ上下方向に並ぶように配置される。そのため、複数の分岐ブレーカ62,62…を取り付けるための第2スペース322は、キャビネット2における第1スペース321の下側であって、導電バーの左側と右側とにそれぞれ設けられている。
【0036】
第3スペース323は、第2スペース322の下方において、第2スペース322と同様に導電バーの左側と右側とにそれぞれ設けられている。ただし、これらの内器スペース32の配置は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
【0037】
保護板4は、ボックス3の開口面31を塞ぐように、ボックス3の開口面31に合わせた寸法、形状の矩形板状に形成されている。保護板4は、ボックス3の開口面31の右端部を回転軸として開閉するように、後述する第1の前枠11および第2の前枠12、あるいは右側板303によって保持されている。これにより、保護板4は、ボックス3の開口面31を覆う位置(
図2に示す位置)と開放する位置(
図1に示す位置)との間で移動することになる。なお、保護板4は、ボックス3に直接支持される構成に限らず、ボックス3内に収納されるフレーム部材(図示せず)などに支持されることにより、間接的にボックス3に支持される構成であってもよい。ここでいうフレーム部材は、複数の分岐ブレーカ62,62…が取り付けられた基板を取り付けるための部材である。
【0038】
保護板4には、表示窓41が形成されている。表示窓41は、
図2に示すように保護板4を閉じた状態(保護板4が開口面31を覆う位置にある状態)で、内器スペース32に対応する位置に形成されている。これにより、保護板4を閉じた状態で、利用者は、表示窓41を通して内器(配線用遮断器6)の動作状態を視認可能である。ここでは、表示窓41は第1スペース321および第2スペース322に対応した位置に設けられている。
【0039】
保護板4の左端部には、保護板4を開く際に操作するハンドル42が設けられている。
【0040】
土台5は、ボックス3の重量を支えるように、ボックス3の下面33に取り付けられている。土台5は、上方から見た投影図において、その外周形状がボックス3と略同一に形成されている。土台5の上下方向の寸法(高さ寸法)は、土台5の左右方向の寸法、並びに土台5の奥行方向(前後方向)の寸法に比べて小さく設定されている。
【0041】
土台5は、
図3に示すように、矩形板状の底板56と、底板56の上面の外周部から上方に突出するように設けられた支持枠57とを備えている。支持枠57は、上面視で前方に開放された略C字状となるように、底板56の前端部を除き底板56の外周に沿って設けられている。これにより、土台5は、ボックス3の下面33に対向する載置面(天面)51のうち支持枠57で囲まれた領域に、第2の通線口52が開口する。さらに、土台5は、載置面51に直交する複数の側面53(第1の側面531〜第4の側面534)のうち、ボックス3の開口面31と同じ向きを向いた第1の側面(前面)531には、左右方向に対向する支持枠57の一対の端面間に第3の通線口54が開口する。そして、底板56と支持枠57とで囲まれた空洞部分が、第2の通線口52と第3の通線口54とを結ぶ通線孔55(
図9参照)となる。
【0042】
本実施形態では、土台5は、
図4に示すように、載置面51と第1の側面531とに跨って開口した開口窓58が形成されている。土台5には、
図3に示すように、第1の側面531における開口窓58の上部を覆う化粧板9が取り外し可能に取り付けられている。これにより、開口窓58は、化粧板9を挟んで第2の通線口52と第3の通線口54とに分割されている。
【0043】
すなわち、土台5には載置面51と第1の側面531とに跨るように元々1つの開口窓58が形成されており、この開口窓58が化粧板9によって2分割され、第2の通線口52と第3の通線口54とを形成(構成)している。
【0044】
化粧板9は、
図3に示すように、土台5の第1の側面531に沿って取り付けられる縦板91と、土台5の載置面51に沿って取り付けられる横板92とで略L字状に形成されている。縦板91は、左右方向の寸法が土台5と略同じで、上下方向の寸法が土台5の半分程度に形成されており、第1の側面531における開口窓58の上半分を覆うように取り付けられる。横板92は、左右方向の寸法が第1の側面531における開口窓58と略同じで、奥行方向(前後方向)の寸法が支持枠57の幅寸法と略同じに形成されている。
【0045】
化粧板9は、縦板91の左右方向の両端部が、複数の取付ねじ93,93…によって土台5の支持枠57に固定される。このとき、化粧板9は横板92の上面が土台5の載置面51と面一になるように、土台5に取り付けられる。
【0046】
なお、支持枠57の上面には、ボックス3を固定するための複数の取付穴571,571…が形成されている。ボックス3は、支持枠57の上に置かれた状態で、これら取付穴571,571…を用いて土台5と機械的に結合される。また、底板56の上面における支持枠57で囲まれた領域のうち左右方向の両端部には、支持枠57に機械的に結合された一対の板材59,59が設けられている。
【0047】
また、保護板4の手前には、図示しない扉(ドア)が設けられる。扉は、保護板4を覆う位置と開放する位置との間で移動する。
【0048】
ところで、本実施形態に係る分電盤1のキャビネット2は、
図5に示すようにボックス3の下板305に矩形状の孔が形成されることにより、ボックス3の下面33に開口する第1の通線口34が形成されている。第1の通線口34は、ボックス3が土台5に取り付けられた状態で、土台5の第2の通線口52に対向する。そのため、第1の通線口34は、土台5の第2の通線口52および通線孔55を通して、土台5の第3の通線口54につながることになる。
【0049】
ここで、ボックス3には、第1の通線口34と開口面31とを隔てる第1の前枠11が取り外し可能に取り付けられている。言い換えれば、第1の通線口34は前方に開放されており、第1の前枠11がボックス3に取り付けられた状態では、第1の通線口34の開放部位が第1の前枠11によって塞がれる。第1の前枠11が取り外された状態では、
図6に示すように第1の通線口34は開口面31と連続することになる。
【0050】
具体的には、
図6に示すように、下板305は上面視で前方に開放されたC字状に形成されており、その開放部位を塞ぐように第1の前枠11がボックス3に取り付けられる。これにより、下板305と第1の前枠11とで第1の通線口34の四方を囲む枠体が構成されることになる。この枠体のうち第1の通線口34の前方を塞ぐ第1の前枠11が取り外し可能であるから、キャビネット2は、第1の通線口34が前方に開放されて開口面31につながった状態と、第1の通線口34の開放部位が塞がった状態とを切替可能である。第1の前枠11は、下板305に固定されてもよいし、左側板302および右側板303に対して固定されてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、キャビネット2は、
図7に示すようにボックス3の上板304に矩形状の孔が形成されることにより、ボックス3の上面35に開口する第4の通線口36が形成されている。
【0052】
さらに、ボックス3には、第4の通線口36と開口面31とを隔てる第2の前枠12が取り外し可能に取り付けられている。言い換えれば、第4の通線口36は前方に開放されており、第2の前枠12がボックス3に取り付けられた状態では、第4の通線口36の開放部位が第2の前枠12によって塞がれる。第2の前枠12が取り外された状態では、
図8に示すように第4の通線口36は開口面31と連続することになる。
【0053】
具体的には、
図8に示すように、上板304は上面視で前方に開放されたC字状に形成されており、その開放部位を塞ぐように第2の前枠12がボックス3に取り付けられる。これにより、上板304と第2の前枠12とで第4の通線口36の四方を囲む枠体が構成されることになる。この枠体のうち第4の通線口36の前方を塞ぐ第2の前枠12が取り外し可能であるから、キャビネット2は、第4の通線口36が前方に開放されて開口面31につながった状態と、第4の通線口36の開放部位が塞がった状態とを切替可能である。第2の前枠12は、上板304に固定されてもよいし、左側板302および右側板303に対して固定されてもよい。
【0054】
なお、キャビネット2を構成するボックス3、保護板4、土台5、化粧板9、第1の前枠11、第2の前枠12は、本実施形態では金属材料を用いて構成されている。ただし、キャビネット2の各部は、金属材料以外の材料を用いて構成されていてもよく、また、金属材料と金属材料以外の材料とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0055】
(分電盤の構造)
次に、上述した構成のキャビネット2に内器が取り付けられてなる分電盤1について説明する。つまり、分電盤1は、キャビネット2と、キャビネット2に取り付けられる内器とを備えている。
【0056】
ここで、分電盤1の内器として最小限の構成は、
図1に示すように第1スペース321に取り付けられる主幹ブレーカ61や第2スペース322に取り付けられる複数の分岐ブレーカ62,62…のような配線用遮断器6である。ここでいう配線用遮断器6には、過電流や短絡電流が流れたときに電路を遮断する遮断器だけでなく、漏電の発生を検出して電路を遮断する漏電遮断器も含む。さらに、本実施形態に係る分電盤1は、上述したように第3スペース323をキャビネット2に備えることにより、主幹ブレーカ61および複数の分岐ブレーカ62,62…以外の種々の内器を必要に応じて取り付け(後付け)可能である。
【0057】
以下に、分電盤1の内器(キャビネット2に取付可能な内器)について説明する。
【0058】
主幹ブレーカ61は、その上部に一次側端子(図示せず)が設けられ、下部に二次側端子(図示せず)が設けられている。主幹ブレーカ61の一次側端子には、系統電源(商用電源)の単相三線式の引込線(図示せず)、たとえばキュービクルのような受電設備からの引込線が電気的に接続される。主幹ブレーカ61の二次側には、上下方向に長い長尺板状であって、導電部材からなる導電バー(図示せず)が電気的に接続される。
【0059】
ここでは、配電方式として単相三線式を想定しているので、導電バーとしては、中性極(N相)の導電バーと、第1の電圧極(L1相)の導電バーと、第2の電圧極(L2相)の導電バーとが設けられている。これら3本の導電バーは、主幹ブレーカ61の下方に配置され、キャビネット2に固定されている。
【0060】
複数の分岐ブレーカ62,62…は、キャビネット2の第2スペース322において、導電バーの左側と右側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ上下方向に並ぶように配置されている。
【0061】
各分岐ブレーカ62は、一次側端子(図示せず)と二次側端子(図示せず)とを有しており、一次側端子が導電バーに電気的に接続され、二次側端子には複数の電路(図示せず)の各々が接続される。各分岐ブレーカ62は、協約形寸法に形成されている。ここで、協約形寸法とは「JIS C 8201−2−1」に準拠した電灯分電盤用の回路遮断器の寸法(および形状)をいう。
【0062】
各分岐ブレーカ62は、導電バーが差し込まれる差込口(図示せず)を導電バーとの対向面に有している。差込口は、3本の導電バーの各々に対応するように、各分岐ブレーカ62に3個ずつ設けられており、一次側端子は、これら3個の差込口のうち2個の差込口内に露出するように設けられている。これにより、各分岐ブレーカ62は、キャビネット2に取り付けられた状態で、差込口に導電バーが差し込まれ、一次側端子が導電バーと電気的に接続される。
【0063】
中性極および第1の電圧極に接続される分岐ブレーカ62は、一次側端子が中性極の導電バーおよび第1の電圧極の導電バーに対応する各差込口内に露出するように設けられている。また、中性極および第2の電圧極に接続される分岐ブレーカ62は、一次側端子が中性極の導電バーおよび第2の電圧極の導電バーに対応する各差込口内に露出するように設けられている。第1の電圧極および第2の電圧極に接続される分岐ブレーカ62は、一次側端子が第1の電圧極の導電バーおよび第2の電圧極の導電バーに対応する各差込口内に露出するように設けられている。
【0064】
第3スペース323に取り付けられるリモコンブレーカやリモコンリレーなどの開閉器63は、外部からの制御信号を受けて電路の開閉を行うように構成されている。これらの開閉器63は、たとえば照明負荷への電力供給路に挿入され、照明負荷の点灯・消灯の制御に用いられる。
【0065】
(分電盤の製造方法)
以下では、本実施形態に係る分電盤1のキャビネット2を用いた分電盤1の製造方法(設置方法、施工方法)について説明する。
【0066】
この分電盤1の製造方法は、土台5を設置面8(
図9参照)に設置する第1の工程と、ボックス3を土台5に載せて固定する第2の工程と、ボックス3に第1の前枠11を取り付ける第3の工程とを有する。
【0067】
また、キャビネット2が上述したように化粧板9を有する構成においては、分電盤1の製造方法は、上記第1〜第3の工程に加えて、土台5に化粧板9を取り付ける第4の工程を有することが好ましい。
【0068】
すなわち、施工者が本実施形態に係る分電盤1を設置するに当たっては、施工者は、まずボックス3が取り付けられていない状態の土台5を床等の設置面8に設置する(第1の工程)。このとき、施工者は、土台5の底板56を設置面8にボルト等で固定することにより、土台5を設置面8に設置する。なお、この状態では土台5に化粧板9は取り付けられていない。
【0069】
その後、施工者は、土台5の上にボックス3を載せ置き、ボックス3を土台5に対して固定することにより、キャビネット2を設置面8上に自立させる(第2の工程)。この状態では、ボックス3に第1の前枠11は取り付けられていない。さらに、キャビネット2の上端部から電線7の引き込みを行う場合、ボックス3には第2の前枠12も取り付けられていない。ここで、キャビネット2が壁等に沿って設置される場合には、施工者は、ボックス3の背板301、左側板302、右側板303の少なくとも1つを壁に固定することが好ましい。
【0070】
施工者は、このように第1および第2の工程を経てキャビネット2を自立させた状態で、
図9に示すように、ボックス3内の内器(配線用遮断器6)に接続される電線7をキャビネット2の下端部(土台5)からキャビネット2内に引き込む。このとき、第1の前枠11および化粧板9が外されているので、第1の通線口34および第2の通線口52はいずれも前方に開放されている状態にある。したがって、施工者は、第1の通線口34および第2の通線口52に対して前方から電線7を導入することができ、通線口34、第2の通線口52、第3の通線口54に電線7をくぐらせる必要がない。
【0071】
また、施工者は、たとえば主幹ブレーカ61の一次側端子に接続される引込線のように、キャビネット2の上側から引き込まれる電線7についても、キャビネット2を自立させた状態で配線する。キャビネット2の上側から引き込まれる電線7は、第4の通線口36を通して、キャビネット2の上端部(上面35)からキャビネット2内に引き込まれる。この場合でも、第2の前枠12が外され、第4の通線口36は前方に開放されている状態にあるので、キャビネット2の下端部から引き込む場合と同様、施工者は、第4の通線口36に対して前方から電線7を導入することができる。
【0072】
その後、施工者は、ボックス3に対して前方から第1の前枠11を取り付け、第1の前枠11をボックス3に固定する(第3の工程)。これにより、第1の通線口34の開放部位(前部)が第1の前枠11によって塞がれることになり、第1の前枠11と下板305との間(第1の通線口34内)に電線7が拘束される。
【0073】
その後、施工者は、土台5に対して前方から化粧板9を取り付け、化粧板9を土台5に固定する(第4の工程)。これにより、前方から見て土台5の上半分が化粧板9によって覆われることになり、通線孔55を通る電線7が前方から視認されにくくなる。
【0074】
その後、施工者は、ボックス3に対して前方から第2の前枠12を取り付け、第2の前枠12をボックス3に固定する(第5の工程)。これにより、第4の通線口36の開放部位(前部)が第2の前枠12によって塞がれることになり、第2の前枠12と上板304との間(第4の通線口36内)に電線7が拘束される。
【0075】
なお、第3の工程、第4の工程、第5の工程の順序は入れ替わってもよく、たとえば化粧板9が取り付けられてから第1の前枠11、第2の前枠12が順に取り付けられてもよい。
【0076】
(効果)
以上説明した本実施形態に係る分電盤1のキャビネット2によれば、ボックス3内の配線用遮断器6に接続される電線7は、土台5の第1の側面531に開口した第3の通線口54からキャビネット2内に引き込まれる。この電線7は、土台5の内側を通して、ボックス3の下面33に開口した第1の通線口34からボックス3内に引き込まれる。
【0077】
しかも、第1の前枠11が取り外し可能であるから、第1の前枠11を取り外した状態で、電線7を第1の通線口34の前方から第1の通線口34に導入することができる。さらに、載置面51と第1の側面531とに跨って開口した開口窓58が第2の通線口52および第3の通線口54を形成しているので、電線7を第2の通線口52の前方から第2の通線口52および第3の通線口54に導入することができる。すなわち、第1の通線口34、第2の通線口52、第3の通線口54に電線7をくぐらせることなく前方から容易に導入することができる。
【0078】
したがって、このキャビネット2によれば、床等の設置面8に沿って配線された電線7をキャビネット2の下部から分電盤1内に容易に引き込むことが可能であって、電線7の引き込み作業について作業性の更なる向上を図ることができる。
【0079】
また、本実施形態のように、第3の通線口54は、複数の側面53(第1の側面531〜第4の側面534)のうち、ボックス3の開口面31と同じ向きを向いた第1の側面531に開口していることが好ましい。この構成によれば、ボックス3の下面33に開口した第1の通線口34からボックス3内に引き込まれる電線7は、土台5の前面となる第3の通線口54からキャビネット2内に引き込まれることになる。したがって、キャビネット2の左右両側および後方が壁等で塞がっている場合でも、第3の通線口54から電線7を引き込むことができる。
【0080】
また、本実施形態のように、土台5には、第1の側面531における開口窓58の上部を覆う化粧板9が取り外し可能に取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、化粧板9を外すことで第2の通線口52および第3の通線口54に電線7を通す作業を簡単にしながらも、化粧板9を取り付ければ通線孔55を通る電線7が前方から視認されにくくなるので見映えが良くなる。
【0081】
また、本実施形態のように、ボックス3は、上面35に開口する第4の通線口36をさらに有することが好ましい。この構成によれば、天井等に沿って配線された電線7を床側まで引き回すことなく分電盤1内に引き込むことが可能であって、電線7の引き込み作業について作業性の更なる向上を図ることができる。
【0082】
この場合において、ボックス3には、第4の通線口36と開口面31とを隔てる第2の前枠12が取り外し可能に取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、第2の前枠12を取り外した状態において、電線7を第4の通線口36の前方から第4の通線口36に導入することができる。すなわち、第4の通線口36に電線7をくぐらせることなく前方から容易に導入することができる。
【0083】
さらに、本実施形態に係る分電盤1は、上記のキャビネット2と、内器スペース32に配線用遮断器6として取り付けられた主幹ブレーカ61および複数の分岐ブレーカ62,62…とを備える。そのため、内器スペース32に取り付けられた主幹ブレーカ61および複数の分岐ブレーカ62,62…に接続される電線7の引き込み作業が簡単であり、分岐ブレーカ62,62…回路数が増えても効率的に施工可能である。
【0084】
また、本実施形態に係る分電盤1の製造方法によれば、施工者は、土台5を設置面8に固定した(第1の工程)上で、ボックス3を土台5に固定してキャビネット2を組み立てる(第2の工程)ことになる。その後、施工者は、ボックス3に対して前方から第1の前枠11を取り付けて固定する(第3の工程)ので、第3の工程前に電線7の引き込み作業を行うことにより、作業性が向上する。
【0085】
さらに、本実施形態のように、第1〜第3の工程に加えて第4の工程を有する分電盤1の製造方法によれば、第3および第4の工程前に電線7の引き込み作業を行うことにより、電線7を通す作業が簡単になる。
【0086】
なお、本実施形態では、ボックス3は、下板305を備えており、下板305に第1の通線口34が形成されているが、この構成に限らず、ボックス3の下面33に第1の通線口34が開口していればよく、たとえば下板305そのものが省略されていてもよい。同様に、本実施形態では、ボックス3は、上板304を備えており、上板304に第4の通線口36が形成されているが、この構成に限らず、上面35に第4の通線口36が開口していればよく、たとえば上板304そのものが省略されていてもよい。
【0087】
また、第4の通線口36は必須の構成ではなく適宜省略可能である。さらにまた、ボックス3の背板301、左側板302、右側板303に開口する通線口が適宜設けられていてもよい。