特許第6366144号(P6366144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366144八角パイプのスエージ加工方法、及び八角パイプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366144
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】八角パイプのスエージ加工方法、及び八角パイプ
(51)【国際特許分類】
   B21D 41/04 20060101AFI20180730BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B21D41/04 C
   A01G9/14 C
   A01G9/14 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-232881(P2015-232881)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-100141(P2017-100141A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】599078738
【氏名又は名称】株式会社新三興鋼管
(74)【代理人】
【識別番号】100090549
【弁理士】
【氏名又は名称】加川 征彦
(72)【発明者】
【氏名】財津 秀幸
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−190614(JP,A)
【文献】 実開昭60−128965(JP,U)
【文献】 特開昭56−148426(JP,A)
【文献】 特開2015−039358(JP,A)
【文献】 特開2007−181865(JP,A)
【文献】 特開平06−246370(JP,A)
【文献】 特開2004−290982(JP,A)
【文献】 米国特許第05311661(US,A)
【文献】 特開平04−218358(JP,A)
【文献】 特開2001−165497(JP,A)
【文献】 特開平6−312226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 41/04
A01G 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の八角パイプをスエージ加工する八角パイプのスエージ加工方法であって、
入口側において各辺が平坦な八角断面で、出口側において小径の八角形の8つの各辺の中央部に、入口側から出口側に向かって漸次突出量が増す態様でダイス中心側に突出する突出部を有するテーパ異形筒状内面のダイスに相対的に八角パイプを押し込んで、八角形の8つの各辺のそれぞれ中央部が内側に凹んだ異形八角断面形状に縮径加工することを特徴とする八角パイプのスエージ加工方法。
【請求項2】
前記テーパ異形筒状内面における8つの辺のうちの直角二方向の4つの辺の前記突出部の突出高さを他の4つの辺の前記突出部の突出高さより高くしたダイスに相対的に八角パイプを押し込んで、縮径加工することを特徴とする請求項1記載の八角パイプのスエージ加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2のスエージ加工法により製造された八角パイプであって、長い八角パイプの先端部がスエージ加工されて、先端部のみが八角形の8つの各辺のそれぞれ中央部に内側に凹んだ異形八角断面形状であることを特徴とする八角パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、八角パイプをスエージ加工するスエージ加工方法、及びこの加工方法により製造された八角パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば農業用ハウスの骨組み等として、鋼パイプが広く採用されている。この種の農業用ハウスの骨組みは、例えば図7に簡略化して示した農業用ハウス骨組み10のように、ハウス長手方向に間隔をおいて複数設置したアーチ状パイプ11と、ハウス長手方向に水平に配され前記各アーチ状パイプ11と交差する部分で図示せぬ固定手段によりアーチ状パイプ11に固定されて、各アーチ状パイプ11間の間隔を保持する複数の水平パイプ12とで組み立てることが広く行われている。
このハウス骨組みの特に水平パイプ12は、ハウス奥行の長さであり長尺となるので、通常複数の直状パイプを連結して用いる。また、アーチ状パイプについても通常、パイプ同士を連結する部分がある。
【0003】
上記水平パイプ12におけるパイプ同士の連結、あるいはアーチ状パイプ11におけるパイプ同士の連結は、連結すべき個々のパイプについて、その一端側をスエージ加工により縮径して先細り状にし、この一端側の先細り部を他端側の縮径されていない通常パイプ断面部に差し込むことで行うのが一般的である(特許文献1の図7)。
なお、先端部を先細り状にする場合、先細り部の全体をテーパ状にする場合と、先細り部の先端側に所定長さの均一細径部を設け通常パイプ断面に移行するテーパ状部分を短くする場合とがある。
【0004】
ところで、農業用ハウスの骨組みのパイプとして、一般には丸パイプが用いられるが、八角パイプ(八角形断面のパイプ)を用いる場合もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−77
【特許文献2】特開2015−39358
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
丸パイプであれば、縮径して先細り状にするスエージ加工も容易であるが、八角パイプの場合は断面が整った先細り状にスエージ加工することは必ずしも簡単でない。
本願発明者は、通常の発想で、すなわち、八角パイプをダイス内面の断面形状がパイプ長手方向に八角形の相似形のままテーパ状に小さくなるダイスを用いて先細り状にスエージ加工する実験を行ったが、各辺が座屈して平坦な辺からなる縮径八角断面とならず、しかも、各辺が不揃いに座屈して周方向に均等な断面形状(各辺が均等な形状)とならず、良好な外観の先細り八角パイプが得られなかった。
また、縮径加工部が周方向に不均等な断面形状のまま縮径されていない通常八角パイプ断面に移行する先細り八角パイプでは、一方の八角パイプの先細り部を、他方の八角パイプの端部の縮径されていない通常八角パイプ断面部に差し込んで連結する際に、円滑な差込み連結ができない場合がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、八角パイプをスエージ加工により縮径加工する場合に、周方向に均等な断面形状で良好な外観の縮径八角断面を得ることができる八角パイプのスエージ加工方法、及びこの加工方法により製造された八角パイプ、特に先細りの八角パイプを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1の発明は、金属製の八角パイプをスエージ加工する八角パイプのスエージ加工方法であって、
入口側において各辺が平坦な八角断面で、出口側において小径の八角形の8つの各辺の中央部に、入口側から出口側に向かって漸次突出量が増す態様でダイス中心側に突出する突出部を有するテーパ異形筒状内面のダイスに相対的に八角パイプを押し込んで、八角形の8つの各辺のそれぞれ中央部が内側に凹んだ異形八角断面形状に縮径加工することを特徴とする。
【0009】
請求項2は、請求項1の八角パイプのスエージ加工方法において、前記テーパ異形筒状内面における8つの辺のうちの直角二方向の4つの辺の前記突出部の突出高さを他の4つの辺の前記突出部の突出高さより高くしたダイスに相対的に八角パイプを押し込んで、縮径加工することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の八角パイプは、
請求項1又は2のスエージ加工法により製造された八角パイプであって、長い八角パイプの先端部がスエージ加工されて、先端部のみが八角形の8つの各辺のそれぞれ中央部に内側に凹んだ異形八角断面形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明のスエージ加工方法によれば、周方向に均等な断面形状(各辺のパイプ中心に対する形状・距離が均等)で良好な外観の縮径八角断面(縮径された異形八角断面)を得ることができる。
したがって、このスエージ加工方法で、長い八角パイプの先端部を縮径八角断面とした先細りの八角パイプ(請求項4の八角パイプ)を製造した場合、この先細り八角パイプは、例えば農業用ハウスのパイプ骨組み用として用いて好適である。この場合、先細り部の縮径八角断面が周方向に均等な断面形状なので、一方の八角パイプの先細り部を、他方の八角パイプの端部の縮径されていない八角断面部に差し込んで連結する際に、円滑な差込み連結を行うことができる。
【0013】
また、八角断面を維持したまま縮径された相似形八角断面にスエージ加工する場合の加工度と本発明加工方法により縮径された異形八角断面にスエージ加工する場合の加工度とを、それぞれ八角パイプとしての径(対向辺間の距離)を同一にして(素材八角パイプの径が同一かつ縮径された八角パイプの径も同一として)比較すると、本発明による異形八角断面の周長(板厚中心線に沿う周長)は相似形八角断面の周長より長いので、本発明加工方法によるスエージ加工の加工度の方が小さい。したがって、加工度が小さく済む本発明の加工方法は、主に加工設備の面に関して有利であると言える。
【0014】
請求項2のように、テーパ異形筒状内面における8つの辺のうちの直角二方向の4つの辺の前記突出部の突出高さを他の4つの辺の前記突出部の突出高さより高くしたダイスを用いることで、さらに周方向に均等な断面形状で良好な外観の縮径八角断面を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例のスエージ加工方法で用いるダイスを示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は(イ)の断面図でありA−A断面、B-B断図、C−C断面を共に示した図、(ハ)は実施例でスエージ加工の対象とする八角パイプの断面図である。
図2】(イ)〜(ニ)は図1のダイスを用いて八角パイプのスエージ加工をする加工工程を説明する図、(ホ)は(ニ)のE−E断面図である。
図3】(イ)は図2(ニ)におけるD-D拡大断面図、(ロ)は図2(ニ)におけるE−E拡大断面図(図2(ホ)を拡大したもの)である。
図4】上記スエージ加工方法により加工された先端部縮径八角パイプの先端近傍の斜視図である。
図5】それぞれ一端側に先細り部を形成した2つの先端部縮径八角パイプどうしを連結する場合の連結状態を説明する図である。
図6】両端部に先細り部を形成した短尺の先端部縮径八角パイプの両側に、先細りのない通常八角パイプの端部を連結する場合を説明する図である。
図7】上記先端部縮径八角パイプを用いて組立てようとする農業用ハウスのパイプ骨組みの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の八角パイプのスエージ加工方法、及び八角パイプを実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の一実施例のスエージ加工方法で用いるダイス1を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は(イ)の断面図であり、A−A断面、B-B断図、C−C断面を共に示した図(それぞれA−A、B−B、C−Cで示す)、(ハ)は実施例でスエージ加工対象とする八角パイプ2の断面図である。
図2図1のダイス1を用いて八角パイプ2のスエージ加工をする加工工程を説明する図であり、(イ)〜(ニ)の順に加工される。
図3(イ)は図2(ニ)におけるD-D拡大断面図、(ロ)は図2(ニ)におけるE−E拡大断面図(図2(ホ)を拡大したもの)、(ハ)は先細り部の断面図(ハッチングは省略)である。
【0018】
図示例でスエージ加工の対象とする八角パイプ2は、板厚t=1.6mm、外径42.7mmの素管(丸パイプ)をロール成形機で八角管に整形したもので、対角線間距離hが約39.5mmである。
図示例のダイス1は、入口側の開口位置(図1(ロ)で右側端部)の円形内面(断面内面)から図中の概ねF−F断面位置までの間に八角内面(素材の八角パイプ2の外面形状に対応)に漸変する導入内面Sを有し、前記概ねF−F断面位置の八角内面から出口側の最終絞り位置の異形八角内面3(図1(ロ)参照)まで径がテーパ状に縮小するテーパ異形筒状内面Sを有する。
実施例では、A−A断面の内面間距離a=30.5mm、B−B断面の内面間距離b=34.0mm、C−C断面の内面間距離c38.47mmである。また、ダイス1の外径Dは70mm、幅Wは40mmである。
【0019】
図1(イ)に示すように、前記異形八角内面3は、A−A断面位置とこれと直交する方向との4辺の中央部にダイス中心側に突出する突出部3aを有し、B-B断面とこれと直交する方向との4辺の中央部にダイス中心側に突出する突出部3bを有し、前記2つの突出部3a、3bの中間部(C−C断面位置)に位置する8カ所に凹所3cを有する。すなわち、前記異形八角内面3は、入口側において各辺が平坦な八角断面で、出口側において小径の八角形の8つの各辺の中央部に、入口側から出口側に向かって漸次突出量が増す態様でイス中心側に突出する突出部3a、3bを有している。前記突出部3aは前記突出部3bの高さより高くしている(a寸法とb寸法との差)。
8つの各辺の突出部の突出高さを同じにしてもよいが、直角二方向の4つの辺の突出部3aの突出高さを他の4つの辺の突出部3bの突出高さより高くすることで、すなわち交互に隣接する辺の突出部の突出高さを異ならせることで、各辺が変形がそれぞれ安定して行われ易くなる。
【0020】
上記のダイス1を用いて対象とする八角パイプ2のスエージ加工を行う場合、例えば図2(イ)〜(ニ)のように、八角パイプ2をクランプ5で固定的に把持し、ダイス1を八角パイプ2の先端部に押し込むと、八角パイプ2の先端部がダイス1の前記導入内面Sで案内された後、前記テーパ異形筒状内面Sの形状に沿って絞られて、図3(ロ)(図2(ホ)も同じ)、(ハ)に示すように、先端部の先細り部2aが、八角形の8つの各辺のそれぞれ中央部に内側に凹んだ凹部p、qを有する縮径された異形八角断面(縮径八角断面)となる。4つの辺の凹部pはダイス内面の突出部3aに対応し、他の4つの辺の凹部qはダイス内面の突出部3bに対応し、凹部pの深さは凹部qより深い。
これにより、図4に斜視図でも示すように、先端側の先細り部2aにおける平行縮径部2aからテーパ状縮径部分2aを経て縮径されていない八角パイプ部分2bに移行する先細り八角パイプ2’が得られる。
なお、ダイス1を、その出口端が八角パイプ2の先端に達した時点で止めると、全体が
テーパ状縮径部分である先細り八角パイプが得られる。
なお、図示例では八角パイプ2を固定しダイス1を移動させたが、ダイス1を固定し八角パイプ2を移動させてスエージ加工してもよい。すなわち、ダイスと八角パイプとが相対的に接近する動作であればよい。
【0021】
上記の先細り八角パイプ2’を例えば図7の農業用ハウスの骨組み材として用いて、ハウス骨組みを組み立てる場合、主として、ハウス奥行分の長尺の水平パイプ12を構成する個別パイプとして用いる。
この場合、先細り八角パイプ2’同士の連結は、図5に示すように、連結すべき一方の先細り八角パイプ2’(2’)の一端側の先細り部2aを、他方の先細り八角パイプ2’(2’)の他端側の縮径されていない通常八角パイプ断面部2bに差し込むことで行う。
この場合、先細り部2aの縮径八角断面の各辺が周方向に均等な断面形状(各辺のパイプ中心に対する形状・距離が均等)なので、一方の八角パイプ2’(2’)の先細り部2aを、他方の八角パイプ2’(2’)の端部の縮径されていない八角断面部2bに差し込んで連結する際に、円滑な差込み連結を行うことができる。
【0022】
また、八角断面を維持したまま縮径された相似形八角断面にスエージ加工する場合の加工度と本発明加工方法により縮小された異形八角断面にスエージ加工する場合の加工度とを、それぞれ八角パイプとしての径(対向辺間の距離)を同一にして(素材八角パイプの径が同一かつ縮径された八角パイプの径も同一として)比較すると、本発明による異形八角断面の周長(板厚中心線に沿う周長)は相似形八角断面の周長より長いので、本発明加工方法によるスエージ加工の加工度の方が小さい。したがって、加工度が小さく済む本発明の加工方法は、主に加工設備の面に関して有利であると言える。
【0023】
アーチ状パイプ11においても、1本のパイプをアーチ状にするのでなく、例えば2本の半アーチ状パイプを頂部で連結してアーチ状にする場合には、例えば片側の半アーチ状パイプの端部にスエージ加工による先細り部2aを形成することで、アーチ頂部において、図5に示したような差込み連結をすることができる。
なお、図6に簡略化して示すように両端部に先細り部2aを形成した短尺の両側先細り八角パイプ2”を用いる場合には、先細り部を持たない通常八角パイプによる2つの半アーチ状パイプを前記両側先細り八角パイプ2”を介在させて連結することができる。
【実施例2】
【0024】
上述の実施例では、農業用ハウスの骨組み材として用いる場合について説明したが、それに限らず、種々の用途の八角パイプに適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ダイス
2 (スエージ加工する対象の)八角パイプ
2’(スエージ加工された)先細り八角パイプ
2a (八角パイプの)先細り部(縮径部)
2a (先細り部の)平行縮径部
2a (先細り部プの)テーパ状縮径部
2b (八角パイプの縮径されていない)通常八角パイプ断面部
3 (ダイス出口側の最終絞り位置の)異形八角内面
3a (ダイス内面の)突出部
3b (ダイス内面の)突出部
3c (ダイス内面の)凹部
5 クランプ
(ダイスの)導入内面
(ダイスの)テーパ異形筒状内面
10 農業用ハウス骨組み
11 水平パイプ
12 アーチ状パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7