【実施例1】
【0017】
図1は本発明の一実施例のスエージ加工方法で用いるダイス1を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は(イ)の断面図であり、A−A断面、B-B断図、C−C断面を共に示した図(それぞれA−A、B−B、C−Cで示す)、(ハ)は実施例でスエージ加工対象とする八角パイプ2の断面図である。
図2は
図1のダイス1を用いて八角パイプ2のスエージ加工をする加工工程を説明する図であり、(イ)〜(ニ)の順に加工される。
図3(イ)は
図2(ニ)におけるD-D拡大断面図、(ロ)は
図2(ニ)におけるE−E拡大断面図(
図2(ホ)を拡大したもの)、(ハ)は先細り部の断面図(ハッチングは省略)である。
【0018】
図示例でスエージ加工の対象とする八角パイプ2は、板厚t=1.6mm、外径42.7mmの素管(丸パイプ)をロール成形機で八角管に整形したもので、対角線間距離hが約39.5mmである。
図示例のダイス1は、入口側の開口位置(
図1(ロ)で右側端部)の円形内面(断面内面)から図中の概ねF−F断面位置までの間に八角内面(素材の八角パイプ2の外面形状に対応)に漸変する導入内面S
1を有し、前記概ねF−F断面位置の八角内面から出口側の最終絞り位置の異形八角内面3(
図1(ロ)参照)まで径がテーパ状に縮小するテーパ異形筒状内面S
2を有する。
実施例では、A−A断面の内面間距離a=30.5mm、B−B断面の内面間距離b=34.0mm、C−C断面の内面間距離c38.47mmである。また、ダイス1の外径Dは70mm、幅Wは40mmである。
【0019】
図1(イ)に示すように、前記異形八角内面3は、A−A断面位置とこれと直交する方向との4辺の中央部にダイス中心側に突出する突出部3aを有し、B-B断面とこれと直交する方向との4辺の中央部にダイス中心側に突出する突出部3bを有し、前記2つの突出部3a、3bの中間部(C−C断面位置)に位置する8カ所に凹所3cを有する。
すなわち、前記異形八角内面3は、入口側において各辺が平坦な八角断面で、出口側において小径の八角形の8つの各辺の中央部に、入口側から出口側に向かって漸次突出量が増す態様でダ
イス中心側に突出する突出部3a、3bを有している。前記突出部3aは前記突出部3bの高さより高くしている(a寸法とb寸法との差)。
8つの各辺の突出部の突出高さを同じにしてもよいが、直角二方向の4つの辺の突出部3aの突出高さを他の4つの辺の突出部3bの突出高さより高くすることで、すなわち交互に隣接する辺の突出部の突出高さを異ならせることで、各辺が変形がそれぞれ安定して行われ易くなる。
【0020】
上記のダイス1を用いて対象とする八角パイプ2のスエージ加工を行う場合、例えば
図2(イ)〜(ニ)のように、八角パイプ2をクランプ5で固定的に把持し、ダイス1を八角パイプ2の先端部に押し込むと、八角パイプ2の先端部がダイス1の前記導入内面S
1で案内された後、前記テーパ異形筒状内面S
2の形状に沿って絞られて、
図3(ロ)(
図2(ホ)も同じ)、(ハ)に示すように、先端部の先細り部2aが、八角形の8つの各辺のそれぞれ中央部に内側に凹んだ凹部p、qを有する縮径された異形八角断面(縮径八角断面)となる。4つの辺の凹部pはダイス内面の突出部3aに対応し、他の4つの辺の凹部qはダイス内面の突出部3bに対応し、凹部pの深さは凹部qより深い。
これにより、
図4に斜視図でも示すように、先端側の先細り部2aにおける平行縮径部2a
1からテーパ状縮径部分2a
2を経て縮径されていない八角パイプ部分2bに移行する先細り八角パイプ2’が得られる。
なお、ダイス1を、その出口端が八角パイプ2の先端に達した時点で止めると、全体が
テーパ状縮径部分である先細り八角パイプが得られる。
なお、図示例では八角パイプ2を固定しダイス1を移動させたが、ダイス1を固定し八角パイプ2を移動させてスエージ加工してもよい。すなわち、ダイスと八角パイプとが相対的に接近する動作であればよい。
【0021】
上記の先細り八角パイプ2’を例えば
図7の農業用ハウスの骨組み材として用いて、ハウス骨組みを組み立てる場合、主として、ハウス奥行分の長尺の水平パイプ12を構成する個別パイプとして用いる。
この場合、先細り八角パイプ2’同士の連結は、
図5に示すように、連結すべき一方の先細り八角パイプ2’(2
1’)の一端側の先細り部2aを、他方の先細り八角パイプ2’(2
2’)の他端側の縮径されていない通常八角パイプ断面部2bに差し込むことで行う。
この場合、先細り部2aの縮径八角断面の各辺が周方向に均等な断面形状(各辺のパイプ中心に対する形状・距離が均等)なので、一方の八角パイプ2’(2
1’)の先細り部2aを、他方の八角パイプ2’(2
2’)の端部の縮径されていない八角断面部2bに差し込んで連結する際に、円滑な差込み連結を行うことができる。
【0022】
また、八角断面を維持したまま縮径された相似形八角断面にスエージ加工する場合の加工度と本発明加工方法により縮小された異形八角断面にスエージ加工する場合の加工度とを、それぞれ八角パイプとしての径(対向辺間の距離)を同一にして(素材八角パイプの径が同一かつ縮径された八角パイプの径も同一として)比較すると、本発明による異形八角断面の周長(板厚中心線に沿う周長)は相似形八角断面の周長より長いので、本発明加工方法によるスエージ加工の加工度の方が小さい。したがって、加工度が小さく済む本発明の加工方法は、主に加工設備の面に関して有利であると言える。
【0023】
アーチ状パイプ11においても、1本のパイプをアーチ状にするのでなく、例えば2本の半アーチ状パイプを頂部で連結してアーチ状にする場合には、例えば片側の半アーチ状パイプの端部にスエージ加工による先細り部2aを形成することで、アーチ頂部において、
図5に示したような差込み連結をすることができる。
なお、
図6に簡略化して示すように両端部に先細り部2aを形成した短尺の両側先細り八角パイプ2”を用いる場合には、先細り部を持たない通常八角パイプによる2つの半アーチ状パイプを前記両側先細り八角パイプ2”を介在させて連結することができる。