(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366153
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】シャッタ
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-539217(P2017-539217)
(86)(22)【出願日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】JP2016076463
(87)【国際公開番号】WO2017043579
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2017年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-179606(P2015-179606)
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 克彦
(72)【発明者】
【氏名】林 宣奎
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−193952(JP,A)
【文献】
特開2014−218150(JP,A)
【文献】
特開2013−147223(JP,A)
【文献】
特開昭54−73439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
B65D 43/20
E05C 21/00
E06B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動方向に湾曲可能に形成され、装置本体の開口及びシャッタ格納側の対向した両側に設けられて一部に湾曲部を有する対のガイド溝に沿って摺動されて前記開口を開閉するシャッタにおいて、
前記シャッタは、前記ガイド溝に対応部を嵌合した状態でガイド溝に沿って摺動されるシャッタ基材と、前記シャッタ基材の少なくとも外面を覆うよう配設されるヒンジ基材とを備えていると共に、前記ヒンジ基材が連続繊維強化プラスチックからなるシートであることを特徴とするシャッタ。
【請求項2】
前記連続繊維強化プラスチックからなるシートがプリプレグ材を用いて作製されたシートであることを特徴とする請求項1に記載のシャッタ。
【請求項3】
前記プリプレグ材の繊維は織物で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシャッタ。
【請求項4】
前記織物は前記シャッタ摺動方向の繊維数がシャッタ摺動方向に対し交差する方向の繊維数より少ないことを特徴とする請求項3に記載のシャッタ。
【請求項5】
前記プリプレグ材は繊維を一方向にそろえたUDテープからなることを特徴とする請求項2に記載のシャッタ。
【請求項6】
前記シャッタ基材及び前記ヒンジ基材は、前記ガイド溝にそれぞれ対応部を嵌合した状態で摺動可能となっていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のシャッタ。
【請求項7】
車両用小物入れの蓋であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のシャッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体の開口を開閉するシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
図9(a),(b)は特許文献1に開示のものである。このシャッタ(蓋)10は、摺動方向に間隔を保って並設された複数のロッド12、及び各ロッド12の上面を覆った状態でロッド同士の間を曲げ易く連結している緩衝シート14と、緩衝シート14に貼着された装飾フィルム16とで構成されて、ボックス20に設けられて湾曲部を有するガイド溝22に幅方向の両端部を嵌合した状態で摺動して開口部21を開閉する。以上のシャッタ構造は、湾曲部に馴染むようロッド12と装飾フィルム16との間に緩衝シート14を介在して局部的な折り曲がりを防ぐようにして、外観低下要因である局部荷重に起因した割れ白化等の損傷を生じ難くしている。ここで、構成部材の材質は、ロッド12が剛性・強度を確保可能な樹脂製、緩衝シート14が不織布やフェルト製、装飾フィルム12が模様を印刷したポリ塩化ビニル製とある。
【0003】
図10(a),(b)は特許文献2に開示のものである。このシャッタ15は、意匠性向上を目的とし、剛性・強度を付与する複数のシャッタ構成部材17を布テープ21に屈曲可能に連結した主シャッタ16と、主シャッタ16に連結されると共に主シャッタの外側に配置されて軟質部23、外面の表皮24、内面のシート25からなる可撓性の副シャッタ22とに分割され、また、形態変更部としてシャッタ構成部材17は幅方向で外側へ膨らむ湾曲面18を有している。本体11に設けられた一対のガイド溝部31は、主直線溝部33及び主湾曲溝部34を有した主ガイド溝32と、副直線溝部37及び副湾曲溝部38を有した副ガイド溝36とに分割され、また、形態変更部として主直線溝部33と副直線溝部37の間隔は狭く、主湾曲溝部34と副湾曲溝部38の間隔は広く設定されている。以上の副シャッタ22は、形態変更部により副直線溝部37による案内に際し、摺動方向には直線状をなし、幅方向には外側へ膨らむよう湾曲する第1の形態とされ、また、副湾曲溝部38による案内に際し、摺動方向には同溝部に沿って外側へ膨らむよう湾曲し、幅方向には平坦となる第2の形態とされる。ここで、構成部材の材質は、シャッタ構成部材17が硬質樹脂製、布テープ21が不織布製、軟質部23が軟質樹脂製、表皮24が伸縮性樹脂製、シート25がポリカーポネート製とある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−193952号公報
【特許文献2】特開2013−204256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のシャッタ構造では、装飾フィルムに施された模様が長期使用により次第に歪んで見栄えが悪くなることがある。主な原因は、ガイド溝の湾曲部で局部的な荷重を極力受け難くしたとしても、本発明のヒンジ基材に対応する緩衝シートが部分的にクリープ変形して元の形状に戻らなくなるからである。この対策としては、緩衝シートについて厚さ寸法を変えてクリープ変形を緩和しようとすると、例えば、厚く設定すると摺動時の操作力が高くなり、薄く設定するとガイド溝の湾曲部で受ける局部荷重等で曲げ線が見えて見栄えを損なう。以上のような問題は、特許文献2のシャッタ構造、つまり副シャッタを構成している軟質部(本発明のヒンジ基材に対応)の上面に模様を描いたり、表皮に代えて模様を印刷した装飾フィルムを設ける場合も同様におきる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、シャッタの構成部材のうち、ヒンジ基材に生じ易いクリープ変形に起因する外観低下をなくし、また、操作力調整の自由度に優れたシャッタを提供することにある。他の目的は、以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するためシャッタを構成しているヒンジ基材を対象とし、上記したクリープ変形に起因した外観低下を防ぐため、耐クリープ特性の高い材質や仕様を検討してきたが、従来採用の樹脂製、不織布やフェルト製ではどうしても満足できなかった。ところが、ヒンジ基材として、連続繊維強化プラスチックからなるシート、或いはプリプレグ材を用いて作製されたシートの場合は従来の樹脂成形品、不織布等に比べ強度、剛性、強靱性、耐熱性に優れると共に、厚さを薄くして湾曲可能にすることも容易なことを知見した。また、連続繊維強化プラスチックからなるシート、又は、プリプレグ材を用いて作製されたシートは耐クリープ特性に優れており、模様を印刷した装飾フィルムを貼着した仕様では、従来問題視された真夏の高温下使用においても熱的な変形が起こり難く、従来のごとくクリープ変形で元の形状に戻らなくなるという虞を解消できることが分かった。
【0008】
本発明に係るシャッタは、摺動方向に湾曲可能に形成され、装置本体の開口及びシャッタ格納側の対向した両側に設けられて一部に湾曲部を有する対のガイド溝に沿って摺動されて前記開口を開閉するシャッタにおいて、前記シャッタは、前記ガイド溝に対応部を嵌合した状態でガイド溝に沿って摺動されるシャッタ基材と、前記シャッタ基材の外面に配設されるヒンジ基材とを備えていると共に、前記ヒンジ基材が連続繊維強化プラスチックからなるシートであることを特徴としている。
本発明において、前記連続繊維強化プラスチックからなるシートは、プリプレグ材を用いて作製されたシートであってもよい。なお、以下の説明では、「プリプレグ材を用いて作製されたシート」を「プリプレグシート」と略称する。
【0009】
ここで、本発明において、ヒンジ基材としては、意匠面を形成している部材であり、少なくとも上面に木目等の模様を印刷した装飾フィルムを貼着する部材も含まれる。本発明において「ヒンジ基材が連続繊維強化プラスチックからなるシートである」との特定は、製造手順に関わらず材料の素材構成から特定したことに意義がある。本発明において「連続繊維強化プラスチックからなるシートがプリプレグ材を用いて作製されたシート」との特定は、繊維と樹脂を組み合わせた成形前の中間材料を用いる点で「前記ヒンジ基材が連続繊維強化プラスチックからなるシートである」場合と区別される。つまり、「連続繊維強化プラスチックからなるシートがプリプレグ材を用いて作製されたシート」場合は、中間材料を用いるという製造手順構成から特定したことに意義がある。付言すると、連続繊維強化プラスチックからなるシートとプリプレグシートは、材料の素材構成が強化繊維材にマトリックス用の樹脂材を含む点で同じである。但し、プリプレグシートの方は、中間材料であるプリプレグ材を用いることを必須とし、中間材料を用いるか否かを問わない連続繊維強化プラスチックからなるシートと区別される。
【0010】
詳述すると、連続繊維強化プラスチックとプリプレグ(Pre−preg)材は、強化繊維材として炭素繊維やガラス繊維等にマトリックス用樹脂材として熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を含む構成である。具体例としては、強化繊維材に樹脂フィルムをラミネートし加熱、加圧により含浸させたもの、強化繊維材に微細なプラスチック粒を絡ませたもの、強化繊維材とプラスチック製の繊維材とを混織したものなどを含む。マトリックス用の樹脂材は、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、又は、ポリアミド樹脂やポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂である。
【0011】
マトリックス用の樹脂材として、熱可塑性樹脂材を用いたものは、リサイクル性に優れ、また熱硬化性樹脂を含浸したり配合した材料に比べ接着性に優れている。熱硬化製樹脂材を用いたものは、熱可塑性樹脂を含浸したり配合した材料に比べ耐熱性や耐薬品性に優れ、また溶融状態での粘性が低く均一に配合可能なため外観特性に優れている。
【0012】
強化繊維材としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、黒鉛繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、スチール繊維、アモルファス繊維、有機繊維等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。繊維の形態は、例えば、連続繊維、長繊維、短繊維、これらを混ぜた複合繊維の何れでもよい。また、繊維方向や配置態様としては、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物状、組紐状の何れでもよい。また、以上の強化繊維材は、以下に挙げる構成から選択してよい。
【0013】
(ア)強化繊維材は連続した繊維で構成されていることである。この連続した繊維とは、短繊維又は長繊維がマトリックス用樹脂中にほぼ同じ向きに配置ないしは存在している態様であり、要は繊維の向きがランダムないしは不連続ではなくほぼそろっている態様である。この構成は、例えば、シャッタを摺動方向に湾曲可能にする上で、シャッタの曲がるポイントが明確であり、操作力の調整が容易で操作力を一定にできる。
【0014】
(イ)強化繊維材は織物で構成されていることである。この織物は、タテ糸とヨコ糸の組み合わせにより、平織、綾織、朱子織の何れでもよい。平織は、タテ糸とヨコ糸が交互に1本ずつ交差して組織した簡単で堅牢な織組織である。平織を用いたプリプレグシートはタテ・ヨコ方向に均一な引っ張り強さを持つ。綾織は、タテ糸やヨコ糸が2本又はそれ以上連続して織られる織組織である。綾織を用いたプリプレグシートは平織りよりもソフト感がある。朱子織は、タテ、ヨコ5本以上の糸から構成され、どちらかが表面に浮き出た織組織である。強化繊維として織物を用いたものは、強度や剛性を強くできる。
【0015】
(ウ)前記織物は前記シャッタ摺動方向の繊維数がシャッタ摺動方向に対し交差する方向の繊維数より少なくなっている構成である。この織物は、シャッタの摺動方向に配置された繊維数が摺動方向に対し交差する方向の繊維数より少なくなっていると、例えば、シャッタの強度を維持した状態で操作力を低めに調整可能となり、設計自由度を拡大できる。
【0016】
(エ)前記プリプレグ材は繊維を一方向にそろえたUD(Uni Direction)テープからなる構成である。このUDテープは、一方向連続繊維を用いたプリプレグ材であり、シャッタの曲がるポイントが明確であり、操作力の調整が容易で、操作力を一定にし易い。また、成形時の流動化が良好で、多少複雑な形状でも追従性に優れ、均質な積層構造を得ることができる。
【0017】
また、以上のシャッタ基材及びヒンジ基材は、本発明の第1形態に例示されるごとくシャッタ基材だけが対応部を前記ガイド溝に摺動可能に嵌合した構成、本発明の第2形態に例示されるごとくシャッタ基材及びヒンジ基材の各対応部が前記ガイド溝にそれぞれ嵌合した状態で摺動可能な構成、更に特許文献2のごとく両部材の各対応部を独立したガイド溝にそれぞれ摺動可能に嵌合した構成の何れでもよい。このうち、本発明の第2形態の場合は、本発明の第1形態に比べガイド溝の湾曲部で加わる応力をシャッタ基材及びヒンジ基材で分散してより安定した摺動状態を維持でき、特許文献2に比べ構成部材数が少なく、ガイド溝の数が少なくなる分だけ簡易で、また収納空間を広く確保し易い。
【0018】
また、以上のシャッタは車両用小物入れの蓋として適用できる。この車両用小物入れは、真夏の高温環境に晒されたり、見栄えが長期に渡って維持されることが強く望まれるからである。小物入れは、各形態のごとく開口が前後ないしは左右に長いタイプに限られず、上下に長いタイプ(例えば、特許第4680452号公報に例示されるような構成)でも差し支えない。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、シャッタを構成しているヒンジ基材が連続繊維強化プラスチックからなるシート、又は、プリプレグシートであり、従来の樹脂成形品、不織布等に比べ強度、剛性、強靱性を向上し、厚さを薄くして湾曲可能にすることも容易であり、しかも模様を印刷した装飾フィルムを連続繊維強化プラスチックからなるシート、或いはプリプレグシートに貼着した場合は熱的な変形が起こり難く耐クリープ特性に優れ、上記したようなクリープ変形に起因した外観低下の問題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1形態のシャッタを適用した小物入れ装置を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【
図2】
図1(a)のB−B線断面図であり、(a)はシャッタの閉状態、(b)はシャッタの開状態である。
【
図3】上記シャッタ(装飾フィルムを省略)を装置本体のガイド溝と共に示す概略斜視図である。
【
図4】
図3のシャッタ構成を示し、(a)は下側より見上げた状態での斜視図、(b)はシャッタ基材とヒンジ基材の関係を示す模式構成図である。
【
図5】本発明の第2形態のシャッタを適用した小物入れ装置を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【
図6】(a)は
図5(a)のD−D線に沿った拡大断面図、(b)は
図5(a)のE−E線に沿った拡大断面図である。
【
図7】上記シャッタを装置本体のガイド溝と共に示す概略分解斜視図である。
【
図8】
図5のシャッタ構成を示し、(a)は下側より見上げた状態での斜視図、(b)はシャッタ基材とヒンジ基材の関係を示す模式構成図である。
【
図9】特許文献1に開示されているシャッタ(蓋)要部を示す図である。
【
図10】特許文献2に開示されているシャッタ要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1(a)から
図4(b)は本発明の第1形態を示し、
図5(a)から
図8(b)は第2形態を示している。以下の説明では、第1形態により発明特徴を明らかにした後、第2形態の変更点に言及する。
【0022】
(第1形態)
図1(a)から
図4(b)に示す小物入れ装置1は、自動車のセンターコンソールに設けられる例であり、上側を開口した容器状の装置本体10と、装置本体10の両側に組付けられて前記開口の両側を区画している対の側板15と、両側板15に対向して設けられているガイド溝18と、摺動方向に湾曲可能に形成されてガイド溝18に沿って摺動されて前記開口を開閉するシャッタ2とを備えている。また、シャッタ2は、ガイド溝18に対応部(3a)を嵌合した状態でガイド溝18に沿って摺動されるシャッタ基材3と、シャッタ基材3の上面に配設された連続繊維強化プラスチックからなるシート又はプリプレグシートであるヒンジ基材4と、ヒンジ基材4の上面つまり外面に貼着された装飾フイルム5とからなる。以下、これらの細部を明らかにする。なお、ヒンジ基材4についてはプリプレグシートの例で説明するが、プリプレグ材のような中間材料を経ることなく原料の材料(強化繊維材にマトリックス用の樹脂材を含む素材)から直にシートを作製する構成でもよい。本発明による連続繊維強化プラスチックからなるシートは、製造手順を問わずあくまでも材料の素材構成から特定したものである。
【0023】
小物入れ装置1において、装置本体10及び各側板15は樹脂の射出成形品からなる。装置本体10は、底壁11、両側壁12,12、前壁13、後壁14とで前後に長い矩形容器状となっている。各側板15は、細長い直線板部16及び直線板部16の後側に設けられた幅広の格納板部17からなる。ガイド溝18は、側板同士の対向内面にあって、直線板部16に設けられて前後方向に延びる直線部18a及び格納板部17に設けられて上下円弧状に延びる湾曲部18bからなる。符号19は取付部であり、小物入れ装置1をコンソールボックスの設置部に固定するときに使用される。
【0024】
シャッタ2において、まず、シャッタ基材3は、PA(ポリアミド)やポリ塩化ビニルやABS(アクリル・ブタジェン・スチレン重合体)等の硬質樹脂製であり、
図3及び
図4に示されるごとく、摺動方向に間隔を保って並設される複数の片状骨材3Aと、前側(引出端側)に配置されて片状骨材3Aよりも板幅が広い1番目の板状骨材3Bとで構成されている。片状骨材3Aの両端には単一の突起3aが設けられ、板状骨材3Bの両端部には2つの突起3aが設けられている。各突起3aは、骨材3A,3Bの上面と段差状に設けられて、ガイド溝18に摺動可能に嵌合される。
【0025】
また、各骨材3Aは、突起3a同士の間にあって、上面が平坦面に形成され、下面が多数の逆凹状欠肉部の存在により凹凸状となっている。骨材3Bは、突起3a同士の間にあって、上面が平坦面に形成され、下面が浅い窪みに形成されている。また、骨材3Bには、突起3a同士の間にあって、上下に貫通された2つの貫通孔3bと、
図2(a)の拡大図に示されるごとく上面に突出された位置決め用突片3cとが設けられている。
【0026】
ヒンジ基材4は、シャッタ基材である各骨材3A,3Bの上面を覆った状態で、骨材3Aと骨材3Bの間、及び骨材3A同士の間に屈曲用の隙間を保って各骨材(の上面)を貼着し一体化する。つまり、シャッタ2は、ヒンジ基材4の下面に各骨材3A,3Bを所定間隔を保って貼着した構成であり、ヒンジ基材4がプリプレグシートからなる。このプリプレグシート(ヒンジ基材)4は、炭素繊維等の強化繊維材にマトリックス用の樹脂材を含浸ないしは配合させたプリプレグ材により作製される。
【0027】
ヒンジ基材4であるプリプレグシートは、長手方向に湾曲可能な厚さに設定されている。作製手順の一例は、第1に材料(プリプレグ材)を対象の製品形状に裁断する。第2に裁断した材料をヒータ等の加熱装置によりマトリックス用樹脂材の融点以上の温度に加熱する。第3に加熱装置から取り出した材料をプレス装置内の金型へ移動させ、加圧する。第4に加圧された成形体を冷却した後、金型から取り出すことになる。この例はスタンピング成形であり、加熱する工程と、プレス装置で加圧・冷却する工程とが分かれており、加熱する工程及び加圧・冷却する工程を連続して行う方法に比べてプレス装置の専有時間が短く、量産生産に適した方法である。
【0028】
また、ヒンジ基材4であるプリプレグシートには、骨材3Bの貫通孔3bに対応した箇所に位置した2つの貫通孔4aと、貫通孔4a同士の間に位置して位置決め用突片3cを挿通する貫通孔4bとが設けられる。各貫通孔4a,4bは、手加工で設けてもよいが、上記プリプレグ材からプリプレグシートを製作する過程で用いられるプレス装置を利用して設けることも可能である。
【0029】
一方、装飾フィルム5は、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム等であり、印刷面の上に保護層として透明クリア層がラミネート加工等で施されている。なお、図面上は、作図の制約から装飾フィルム5に印刷等で施される模様を省略している。模様としては、木目調以外に使用目的に応じた色々な模様を印刷可能である。以上の装飾フィルム5は、従来と同様な方法でヒンジ基材4の上面を覆うよう貼着される。この場合、装飾フィルム5は、上記プリプレグ材からプリプレグシートを製作する過程で用いられるプレス装置を利用して、上記プリプレグ材の加圧と同時又は加圧後に貼着することも可能である。その場合は、装飾フィルム5に上記各貫通孔4a,4bに対応した不図示の貫通孔が設けられる。
【0030】
以上のようにして作製されたシャッタ2には把手7が組付けられる。把手7は、樹脂成形品であり、骨材3Bの貫通孔3bに対応する2つの穴部7aと、突片3cと係合する係合穴7bとを有している。そして、この把手7は、ヒンジ基材4及び装飾フィルム5の貫通孔4b等から突出されている骨材3Bの突片3cを係合穴7bに挿入し係合した状態で、止め具である2本のネジ8がヒンジ基材4及び装飾フィルム5の貫通孔4a等から穴部7aに螺入される。これにより、把手7は、
図1(a)や
図3に示されるごとくシャッタ2の前上側に装着される。
【0031】
(作動)以上のシャッタ2は、装置本体1のガイド溝18に対し各突起3aを嵌合した状態に組み込まれて、装置本体1の開口を塞いだ
図2(a)の閉状態から、把手7を利用して
図2(b)の開方向つまりガイド溝18の直線部8aから湾曲部8bの方向へ摺動される。この構造において、摺動操作は、ガイド溝18の湾曲部18bが略小円形状に湾曲していても、シャッタ基材3が多数の骨材3A,3Bで構成され、また、ヒンジ基材4がプリプレグシートであり、従来の樹脂製、不織布製、フェルト製に比べ強度、剛性、強靱性を向上し、同時に、織物の組成を変えることで厚みと剛性を調整できると共に、厚さを薄くして湾曲可能にすることも容易なため、シャッタ2を開閉方向に摺動するときに従来の操作力に比べて弱い力で摺動操作可能となる。また、この構造では、模様を印刷した装飾フィルム5をヒンジ基材4であるプリプレグシートの意匠面つまり上面に貼着した場合、長期使用しても熱的な変形が起こり難く耐クリープ特性に優れているため、クリープ変形に起因した外観低下の問題を一掃できる。これらは、プリプレグ材を用いずに作製された連続繊維強化プラスチックからなるシートでも同じである。
【0032】
以上のプリプレグシート、又は、連続繊維強化プラスチックからなるシートを構成している強化繊維材は上記したように次のような点を考慮して選択することができる。
(ア)強化繊維材は、連続した繊維で構成されていると、例えば、シャッタを摺動方向に湾曲可能にする上で、シャッタの曲がるポイントが明確であり、操作力の調整が容易となる。なお、繊維の合わせ部を結ぶ線を曲がるポイントとして、曲がるポイントの線が、摺動方向に対して直行するようにする構成でもよい。
(イ)強化繊維材は、織物で構成されていると、特に強度や剛性を増大でき、それに比例してシート厚さを薄くできる。
(ウ)この場合、織物としては、シャッタの摺動方向に配置された繊維数が摺動方向に対し交差(垂直)する方向の繊維数より少なくなっていると、例えば、シャッタの強度を維持した状態で操作力を低めに調整可能となり、設計自由度を拡大できる。(エ)繊維を一方向にそろえたUD(Uni Direction)テープ、つまり一方向連続繊維を用いたプリプレグ材であると、シャッタの曲がるポイントが明確であり、操作力の調整が容易で、操作力を一定にし易い。
【0033】
(第2形態)この形態は、第1形態に比べてシャッタ2を構成しているシャッタ基材6と、シャッタ基材6とヒンジ基材4Aとの連結構成を変更した一例である。なお、この形態では、装飾フィルムを省略したが、必要に応じてヒンジ基材4Aに一体化してもよい。この説明では、
図5(a)乃至
図8(b)において、以上の第1形態と同一又は類似する箇所には同じ符号を付し、重複した記載を極力省くことにする。
【0034】
小物入れ装置1において、装置本体10及び側板15は第1形態と実質的に同じである。一方、シャッタ2において、シャッタ基材6は、PA(ポリアミド)やポリ塩化ビニルやABS(アクリル・ブタジェン・スチレン重合体)等の硬質樹脂製であり、
図7及び
図8(a)(b)に示されるごとく概略形状が細長い両刃のこぎり形状で、全寸がヒンジ基材4Aより少し短くなっている。
【0035】
すなわち、シャッタ基材6は、幅方向の中間にあって上面前後方向に延びた長溝60と、長溝60の溝内にあって所定間隔で設けられて上下貫通されている係合孔60aと、長溝60の両側にあって前側の一部(第1形態の骨材3Bに対応する部分)を除いてスリット状の切り溝62を等間隔に設けることで区画された複数の腕部61と、複数の腕部61のうち一つ間隔の腕部6に設けられて、腕部6の先端面に突出されてガイド溝18に嵌合する突起63と、前側(第1形態の骨材3Bに対応する部分)に設けられた両側の貫通孔6aと、貫通孔6a同士の間に設けられた係合孔6bとを有し、長手方向に湾曲可能となっている。なお、両側の切り溝62は、シャッタ基材6の下面において連続溝として形成されている。
【0036】
ヒンジ基材4Aは、プリプレグシートからなり、シャッタ基材6に対してシャッタ基材の上面を覆った状態で連結される。このヒンジ基材4Aは、第1形態と同様に炭素繊維等の強化繊維材にマトリックス用の樹脂材を含浸ないしは配合させたプリプレグ材により作製される。
【0037】
また、ヒンジ基材4Aであるプリプレグシート(又は連続繊維強化プラスチックからなるシート)は、上面の前側に設けられた突片40と、下面の両縁に沿って等間隔に設けられてガイド溝18に嵌合される略L形の複数の突起41と、下面の左右中間にあって長手方向に等間隔に設けられて係合孔60aに係合される複数の軸部43、及び係合孔6bに係合される軸部42と、軸部42の両側に設けられた貫通孔4aとを有している。突片40、突起41、軸部42、貫通孔4aは、ヒンジ基材4Aの対応部に手加工で設けるか、又は上記プリプレグ材からプリプレグシートを製作する過程で用いられるプレス装置等を利用して設けることも可能である。
【0038】
以上のヒンジ基材4は、各軸部43が対応する係合孔60aに係合し、軸部42が係合孔6bに係合した状態でシャッタ基材6に連結される。各軸部43は、係合孔60からの突出した軸回りに止め輪等の抜止部材9が装着されることで、シャッタ基材6に対し固定される。なお、シャッタ基材6の下面には、抜止部材9を収める窪みが設けられている。ヒンジ基材4をシャッタ基材6に連結した状態において、両側の各突起41は、シャッタ基材の突起63同士の間に配置されて、ガイド溝18に突起63と共に嵌合されることになる。
【0039】
また、以上のようにして作製されたシャッタ2には把手7が組付けられる。把手7は、樹脂成形品であり、各貫通孔4aに対応する2つの穴部7aと、突片40と係合する係合穴7bとを有している。そして、この把手7は、ヒンジ基材4Aの突片40を係合穴7bに挿入し係合した状態で、止め具である2本のピン8aがシャッタ基材6の貫通孔6a、ヒンジ基材4Aの貫通孔4aを通って穴部7aに係合される。これにより、把手7は、
図5に示されるごとくシャッタ2の前上側に装着される。
【0040】
以上のシャッタ2は、装置本体1のガイド溝18に対し各突起63及び突起41を嵌合した状態に組み込まれて、装置本体1の開口を塞いだ閉状態から、把手7を利用して開方向つまりガイド溝18の直線部8aから湾曲部8bの方向へ摺動される。この構造において、摺動操作は、ガイド溝18の湾曲部18bが略小円形状に湾曲していても、シャッタ基材6が多数の切り溝62などが設けられており、また、ヒンジ基材4Aがプリプレグシートであり、従来の樹脂成形品、不織布等に比べ強度、剛性、強靱性を向上し、同時に、厚さを薄くして湾曲可能にすることも容易なため、シャッタ2を開閉方向に摺動するときに従来の操作力に比べて弱い力で摺動操作可能となる。
【0041】
なお、本発明のシャッタは、独立請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は各形態を参考にして色々に変形したり展開可能なものである。ヒンジ基材である連続繊維強化プラスチックからなるシート又はプリプレグシートルは、装飾フィルムを貼着する構成に限られず、模様を上面の対応部に描くようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1・・・・小物入れ装置(10は装置本体、15は側板)
2・・・・シャッタ
3・・・・シャッタ基材(3aは突起、6aは突起)
4・・・・ヒンジ基材
4A・・・ヒンジ基材
5・・・・装飾フィルム
6・・・・シャッタ基材(6aは突起、6aは突起)
7・・・・把手
18・・・ガイド溝(18aは直線部、18bは湾曲部)
なお、2015年9月11日に出願された日本国特願2015−179606号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。