(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水分散性サイズ剤は、(A)ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アルカリ金属塩(A1)若しくはナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アンモニウム塩(A2)及び/又はリグニンスルホン酸アルカリ金属塩(A3)若しくはリグニンスルホン酸アンモニウム塩(A4)と
(B)置換コハク酸無水物を含み、
抄紙系内におけるイオン性がアニオン性を示す。
【0013】
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アルカリ金属塩は、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物であって、ナフタレン核に結合するスルホン酸がアルカリ金属で塩となっている重縮合体である。
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アルカリ金属塩(A1)として、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物カリウム塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アンモニウムなどを挙げることができる。ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アルカリ金属塩が好ましく、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アルカリ金属塩の中でも特にナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウムが好ましい。ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アルカリ金属塩若しくはナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アンモニウム塩(A2)は、例えば、特開2007−099719号公報等に記載されているような公知の方法で得ることができる。
【0014】
リグニンスルホン酸アルカリ金属塩(A3)若しくはリグニンスルホン酸アンモニウム塩(A4)としては、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム、リグニンスルホン酸アンモニウム等を挙げることができ、リグニンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
(C)アクリルアミド系ポリマーとしては、(メタ)アクリルアミド(この表記はメタアクリルアミド及びアクリルアミドを意味する。以下、同様である。)のホモポリマー又は、(メタ)アクリルアミドが主成分となるように前記(メタ)アクリルアミドとその他のビニルモノマーとを共重合したコポリマーを挙げることができる。前記コポリマーは、用いる他のビニルモノマーの種類により、イオン性が、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性を示す。アクリルアミド系ポリマーを用いることで分散性が更に向上するため好ましい。
【0016】
前記のその他のビニル系モノマーとしては、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、ノニオン性モノマーを挙げることができる。その中でもアニオン性モノマーが好ましい。
【0017】
前記アニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸類のほか、スルホン酸基及び/又はリン酸基を有する公知の各種重合性モノマー類等を挙げることができる。これらの中でもα,β−不飽和カルボン酸類が好ましく、特に(メタ)アクリル酸(アクリル酸及びメタクリル酸を意味する。以下、同様である。)が好ましい。
【0018】
前記カチオン性モノマーとしては、モノ−或いはジ−アルキルアミノアルキルアクリレート、モノ−或いはジ−アルキルアミノアルキルメタアクリレート、モノ−或いはジ−アルキルアミノアルキルアクリルアミド、モノ−或いはジ−アルキルアミノアルキルメタアクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、モノ−或いはジ−アリールアミン及びそれらの混合物、更にそれらの第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0019】
ノニオン性モノマーとしては、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、N−メチロールアクリルアミド、メチレン(ビス)アクリルアミド、2官能性モノマー、3官能性モノマー、4官能性モノマーなどの架橋性ビニルモノマーなどを挙げることができる。
【0020】
ビニルモノマーの使用する割合は、通常、(メタ)アクリルアミドにつき50〜100質量%、それ以外のモノマーにつき0〜50質量%である。それ以外のモノマーについて、好ましくはアニオン性モノマーにつき40〜50質量%、それ以外のモノマーにつき0〜10質量%である。
【0021】
本発明で用いるアクリルアミド系ポリマーの製造法としては、従来公知の各種方法により行うことができる。例えば、攪拌機、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に構成成分である本発明に用いるビニルモノマーと水とを仕込み、重合開始剤として過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、アンモニウムハイドロパーオキサイドなどの過酸化物、或はこれらの過酸化物と重亜硫酸ソーダなどの還元剤との組み合わせからなる任意のレドックス開始剤、更には2,2’−アゾビス(アミジノプロパン)塩酸類のような水溶性アゾ系開始剤などを使用し、反応温度40〜80℃で1〜5時間反応させてアクリルアミド系ポリマーを得ることができる。
【0022】
置換コハク酸無水物とは、具体的にはヘキサデシルコハク酸無水物、オクタデシルコハク酸無水物等のアルキルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物等のアルケニルコハク酸無水物、及びヘキサデシルグルタル酸無水物、オクタデシルグルタル酸無水物、ヘキサデセニルグルタル酸無水物、オクタデセニルグルタル酸無水物等のアルキルグルタル酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、アルケニルコハク酸無水物が好ましい。
【0023】
水分散性サイズ剤は、少なくとも分散剤(A)としてナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アルカリ金属塩(A1)若しくはナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アンモニウム塩(A2)及び/又はリグニンスルホン酸アルカリ金属塩(A3)若しくはリグニンスルホン酸アンモニウム塩(A4)と
(B)置換コハク酸無水物と
必要に応じて用いられる(C)アクリルアミド系ポリマーなどを乳化装置にて分散することで得ることができる。
乳化分散をするに際し、前記分散剤(A)の配合量は、(B)置換コハク酸無水物に対して通常、0.1〜30質量%であり、好ましくは1〜20質量%である。前記分散剤(A)の配合量が前記範囲内にあると、填料などを含有した希釈液に対する分散安定性が特に優れる点で好ましい。乳化分散をするに際して必要に応じて配合される(C)アクリルアミド系ポリマーの配合量は、(B)置換コハク酸無水物に対して通常、0.1〜50質量%であり、好ましくは2〜40質量%である。(C)アクリルアミド系ポリマーの配合量が前記範囲内にあると、填料などを含有した希釈液に対する分散安定性が特に優れる点で好ましい。
【0024】
乳化装置としては本発明における分散剤(A)と(B)アルケニルコハク酸無水物と必要に応じて用いられる各種水溶性高分子分散剤例えば(C)アクリルアミド系ポリマーと、さらに必要に応じて配合される2−オキセタノン化合物、エステル化合物、界面活性剤と水とからサイズ剤組成物の分散液を調製することが可能であれば特に制限はなく、スタティックミキサー、ベンチュリーミキサー、ブレンダー、ホモミキサー、高圧・高速吐出ホモジナイザー、超音波乳化機、高せん断型回転乳化機等の各種乳化機乃至乳化装置が使用できる。
【0025】
抄紙系内における水分散性サイズ剤のイオン性は、簡易的に、置換コハク酸無水物成分が0.01質量%になるように水分散性サイズ剤を0.007質量%塩化カリウム水溶液で希釈し、得られる希釈後の水分散性サイズ剤のpHを水酸化ナトリウムで8に調整し、ゼータ電位測定装置(LASER ZEE Model501、野崎産業株式会社製)を用いて希釈後の水分散性サイズ剤のゼータ電位に基づいて判定することにより決定することができる。上記の簡易判断方法は、実際に抄紙系で確認した場合との相関があり、アニオン性を示さないと置換コハク酸無水物系のサイズ剤に由来する抄紙系内での汚れを低減することができない。
【0026】
本発明の水分散性サイズ剤のパルプ固形分あたりの添加率はASA成分で0.03〜1質量%、好ましくは0.05〜0.3質量%である。前記の範囲より少ない場合はサイズ効果が不十分となる場合があり、前記の範囲を越えて使用した場合、効果が頭打ちとなるばかりでなく、操業トラブル(発泡等)が起こる可能性がある。
【0027】
本発明における抄紙系とは、パルプ、填料、染料、サイズ剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、ピッチコントロール剤、希釈水等が含まれ、混合されて成るパルプスラリーである。
【0028】
パルプとしては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、上白古紙、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプのいずれも使用することができ、古紙パルプを50質量%以上使用することが好ましい。なお、古紙パルプには、インキや背糊などの回収された古紙に由来するピッチ成分が含まれている。また、前記パルプとしては、前記パルプと、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等との混合物も使用することができる。これらは希釈水などを用いて予めスラリー状に使用して使用することが多い。
【0029】
填料としては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、クレー、タルク、チョーク、酸化チタン、ホワイトカーボンなどを挙げることができる。
【0030】
サイズ剤としては、本発明の水分散性サイズ剤の効果を害さない範囲で2−オキセタノンサイズ剤、ロジン系サイズ剤、カチオン性合成サイズ剤などを必要に応じて併用することもできる。この中でもカチオン性合成サイズ剤が好ましい。
【0031】
乾燥紙力向上剤としては、アクリルアミド系ポリマー、澱粉類、ポリビニルアルコール類、セルロース類などを挙げることができる。これらの中でも、アクリルアミド系ポリマー及び/又は澱粉類を用いることが好ましい。アクリルアミド系ポリマーの中でも特に両性アクリルアミド系ポリマー類が好ましい。
【0032】
湿潤紙力向上剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などを挙げることができる。
【0033】
歩留り向上剤としては有機系歩留り剤、無機系歩留り剤を挙げることができる。歩留り向上剤のパルプ固形分あたりの添加率は0.005〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。
【0034】
ピッチコントロール剤としては有機系ピッチコントロール剤と無機系ピッチコントロール剤が挙げられる。前記有機系ピッチコントロール剤として少なくとも1種以上のカチオン性モノマーを含んで重合することにより得られるカチオン性重合物、アミン−エピハロヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン変性物、ポリビニルアミン等のカチオン性化合物、ノニオン性分散剤、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0035】
無機系ピッチコントロール剤としてポリ塩化アルミニウム、ポリアルミニウムシリケートサルフェート、ポリ水酸化アルミニウム等のポリアルミニウム化合物、ポリ硫酸鉄、炭酸ジルコニウム、ベントナイト、タルク(微粉末)が挙げられる。
【0036】
ピッチコントロール剤のパルプ固形分あたりの添加率は、好ましくは0.005〜1質量%、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。添加率0.005質量%未満では汚れ防止効果が不良となる場合があり、1質量%を超える添加率では紙力剤等の定着が低下する場合がある。
【0037】
薬品などを含有するパルプスラリーのpHとしては、pH6.3〜9.0が好ましく、更に好ましくは、6.5〜8.5が好ましい。本発明でいうpHは、25℃の条件で測定した値をいう。前記pHにするためにpH調節剤、たとえば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ物質や硫酸等の酸性物質を使用することができる。
【0038】
薬品などを含有するパルプスラリーの電導度は、好ましくは50〜200mS/m、更に好ましくは、50〜150mS/mである。ここで電導度は、25℃の条件で測定した値をいう。なお、パルプスラリーの電導度は希釈用水を多量に用いるため、ほとんど希釈用水の電導度と同じである。
【0039】
上記のような薬品などを含有するパルプスラリーを脱水、乾燥することで紙を製造することができる。
【0040】
本発明の水分散性サイズ剤を適用する紙は、特に制限されないが、各種の紙、板紙が挙げられる。前記各種の紙としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)が挙げられる。板紙としては、ライナー原紙、中芯原紙、紙管原紙、石膏ボード原紙、コート白板、ノーコート白板、マニラボール、白ボール、チップボール等を挙げることができる。この中でも中芯原紙、ライナー原紙が好ましく、特にライナー原紙であることが好ましい。板紙は多層抄きの場合もあるが、この場合、少なくとも一層が該当する場合も本発明では含まれる。
前記板紙を製造する場合のパルプスラリーは、そのpHが6.5〜8.5の範囲内にあり、アルカリ度が50〜400ppmの範囲内にあり、電導度が50〜250mS/mの範囲内にあるときには、従来の水分散性サイズ剤ではサイズ効果を十分に発現させることが困難であったが、本発明に係る水分散性サイズ剤は十分なサイズ効果を発揮することができる。
本発明におけるパルプスラリーのpH、アルカリ度、電導度の値は、シートを形成する直前のパルプスラリーについて測定することにより得られる。具体的には、本発明におけるパルプスラリーで規定されるpH、アルカリ度、電導度は、例えば、ウルトラフォーマや長網のインレット中のパルプスラリーや丸網のバット中のパルプスラリーについての測定値である。
本発明におけるパルプスラリーのpHとしては、pH6.5〜8.5が好ましく、更には、6.7〜8.0が好ましい。本発明でいうpHは、25℃の条件で測定した値である。前記pHにするために、電導度やアルカリ度を前記範囲から逸脱しないように、pH調節剤、たとえば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ物質や硫酸等の酸性物質を使用することができる。
本発明におけるパルプスラリーのアルカリ度は、50〜400ppmが好ましく、更に好ましくは80〜300ppmである。本発明でいうアルカリ度は抄紙直前のパルプスラリーの一部を、No.5A濾紙(東洋濾紙株式会社製)にて吸引濾過して得られたろ液にメチルレッドとブロムクレゾールグリーンとが混合されているエタノール溶媒の指示薬を加え、その液を緩やかに攪拌しながら、ろ液の色が青色から赤色に変わるまで1/50N硫酸を用いて滴定し、ろ液中にあるアルカリ成分量を炭酸カルシウム換算してアルカリ度(mg CaCO
3/l)(本発明においてはこの値をppmで表示した。)=滴定量(ml)×1000/ろ液(ml)の式により求めた値をいう。アルカリ度の調整には、pHやアルカリ度が前記範囲を逸脱しないように、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩等が使用される。
抄紙するパルプスラリーの電導度は、50〜250mS/m、更に好ましくは、50〜150mS/mである。本発明でいう電導度は、25℃の条件で測定した値である。
【0041】
以上のようにして紙を製造した後に必要に応じて、塗工液を紙の表面に塗工することもできる。
【0042】
塗工液に含まれる表面紙力剤の塗工量は、通常は固形分で0.05〜5g/m
2、好ましくは0.1〜2g/m
2である。また、塗工液に含まれる表面サイズ剤の塗工量は、通常は固形分で0.001〜1g/m
2、好ましくは0.005〜0.1g/m
2である。
【0043】
塗工液は、公知の方法により紙に塗工することができ、例えば、サイズプレス、フィルムプレス、ゲートロールコーター、ブレードコーター、キャレンダー、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーターを用いて塗工することが可能である。また、スプレー塗工を行うこともできる。
【0044】
塗工液は、表面紙力剤、表面サイズ剤、防滑剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、防錆剤、離型剤、難燃剤、染料、撥水剤、罫割防止剤等の添加剤を含有し、表面紙力剤及び/又は表面サイズ剤をさらに含有していることが好ましい。なお、本発明の水分散性サイズ剤が塗工液に含まれていてもよい。
【0045】
上記の表面紙力剤としてはアクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアルコール類などの合成高分子、澱粉類、セルロース類、キトサン、アルギン酸、カラギーナン等多糖類の天然高分子を挙げることができる。これらの中でもアクリルアミド系ポリマーが好ましい。なお、上記の表面紙力剤を塗工する際の塗工液濃度は0.1〜15質量%で行われるのが好ましい。
【0046】
上記の表面サイズ剤としては、公知のAKDサイズ剤、アニオン性表面サイズ剤あるいはカチオン性表面サイズ剤を使用することができる。上記の表面サイズ剤を塗工する際に使用する塗工液中の表面サイズ剤濃度は、通常、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。
【0047】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、特にことわりがない場合は質量基準である。
【実施例】
【0048】
(実施例1〜4、比較例1〜6)
(合成例1)
40質量%濃度のアクリルアミド水溶液275質量部、40質量%アクリル酸水溶液25質量部、水595質量部の混合物を窒素雰囲気下に調製し、次いで前記混合物に温度50℃で2質量%過硫酸アンモニウム水溶液5質量部、及び2質量%重亜硫酸ソーダ水溶液5質量部を添加して、80℃で3時間かけて前記アクリルアミド及びアクリル酸を共重合反応させた後、得られた反応生成液に40質量%ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩水溶液(Demol−NL、花王株式会社)75質量部を添加し、かくして得られた混合物を水で希釈し、固形分濃度10質量%の分散剤1を得た。
【0049】
(合成例2)
40質量%濃度のアクリルアミド水溶液275質量部、40質量%アクリル酸水溶液25質量部、水595質量部の混合物を窒素雰囲気下に調製する代わりに、40質量%濃度のアクリルアミド水溶液264質量部、40質量%アクリル酸水溶液25質量部、40質量%ジメチルアミノプロピルアクリルアミド水溶液11質量部、及び水595質量部の混合物を窒素雰囲気下に調製した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10質量%の分散剤2を得た。
【0050】
(合成例3)
40質量%濃度のアクリルアミド水溶液275質量部、40質量%アクリル酸水溶液25質量部、水595質量部の混合物を窒素雰囲気下に調製する代わりに、40質量%濃度のアクリルアミド水溶液255質量部、40質量%アクリル酸水溶液24質量部、40質量%ジメチルアミノプロピルアクリルアミド水溶液21質量部、及び水595質量部の混合物を窒素雰囲気下に調製した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10質量%の分散剤3を得た。
【0051】
(合成例4)
40質量%ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩水溶液(Demol−NL、花王株式会社)75質量部を添加する代わりにリグニンスルホン酸ナトリウム(ニューカルゲンRX−B、竹本油脂株式会社)30質量部を添加した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10質量%の分散剤4を得た。
【0052】
(比較合成例1)
40質量%ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩水溶液(Demol−NL、花王株式会社)75質量部を添加する代わりに35質量%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩水溶液(ペレックスNBL、花王株式会社)86質量部を添加した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10質量%の分散剤5を得た。
【0053】
(比較合成例2)
40質量%ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩水溶液(Demol−NL、花王株式会社)75質量部を添加する代わりに、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルスルフェート(ハイテノールN−08、第一工業製薬株式会社)30質量部を添加した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10質量%の分散剤6を得た。
【0054】
(比較合成例3)
40質量%ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩水溶液(Demol−NL、花王株式会社)75質量部を添加する代わりに、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルスルフェート(ハイテノールN−08、第一工業製薬株式会社)6質量部を添加した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10質量%の分散剤7を得た。
【0055】
(比較合成例4)
40質量%ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩水溶液(Demol−NL、花王株式会社)75質量部を添加する代わりに、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ニューコール2502−A、日本乳化剤薬株式会社)30質量部を添加した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10%の分散剤8を得た。
【0056】
(比較合成例5)
40質量%ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩水溶液(Demol−NL、花王株式会社)75質量部を添加する代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩(ニューコール210、日本乳化剤薬株式会社)30質量部を添加した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10%の分散剤9を得た。
【0057】
(比較合成例6)
40質量%濃度のアクリルアミド水溶液275質量部、40質量%アクリル酸水溶液25質量部、水595質量部の混合物を窒素雰囲気下に調製する代わりに、40質量%濃度のアクリルアミド水溶液250質量部、40質量%ジメチルアミノプロピルアクリルアミド水溶液50質量部、水595部の混合物を窒素雰囲気下に調製した外は前記合成例1と同様にして、固形分濃度10%の分散剤10を得た。
【0058】
<水分散性サイズ剤の調製(実施例1〜4、比較例1〜6)>
合成例1〜4、比較合成例1〜6で得た分散剤51gとAS1533(星光PMC株式会社製、アルケニルコハク酸無水物)15gを混合し、得られた混合物にユニバーサルホモジナイザー(日本静機製作所製)を用いて10000rpmで60秒間乳化操作を行い、さらに水を加えて、置換コハク酸無水物成分1%、粒子径0.8μmの水分散性サイズ剤(サイズ剤1〜4、比較例用サイズ剤1〜6)を得た。
【0059】
<水分散性サイズ剤のイオン性>
サイズ剤1〜4、比較例用サイズ剤1〜6を、置換コハク酸無水物成分が0.01%になるように、0.007質量%塩化カリウム水溶液で希釈し、希釈液のpHが8.0となるように、水酸化ナトリウムで前記希釈液を、調整し、LASER ZEE Model501(野崎産業株式会社製)を用いてゼータ電位を測定し、イオン性を確認した。結果を表1に示す。
【0060】
<填料存在下での安定性>
サイズ剤1〜4、比較例用サイズ剤1〜6を、置換コハク酸無水物成分の濃度が0.1%になるように、1質量%の填料スラリーで希釈し、得られる希釈液にユニバーサルホモジナイザー(日本静機製作所製)を用いて10000rpmで30秒間撹拌操作を行った後、粒子の状態を顕微鏡により観察した。結果を表1に示す。表1において、○は粒子状態が良好であることを示し、△は粒子が一部凝集していることを示し、×は粒子が全て凝集して不安定な状態であることを示す。前記填料は(1)軽質炭酸カルシウム、(2)軽質炭酸カルシウムとタルクとの質量比率が1対1である混合物、及び(3)軽質炭酸カルシウムとクレーとの質量比率が1対1である混合物の3種類を用いた。
【0061】
<希釈安定性(100mS/m)>
硫酸カルシウムで電導度100mS/mに調整したpH8の硬水を用いて、前記のようにして得られた水分散性サイズ剤(サイズ剤1〜4、比較例用サイズ剤1〜6)を0.1%濃度に希釈した後、得られた希釈液を40℃で24時間静置した後の、エマルションの粒子状態を顕微鏡により観察した。結果を表2に示す。表2において、○は24時間後にも粒子状態が良好であることを示し、△は粒子が一部凝集していることを示し、×は粒子が全て凝集して不安定な状態であることを示す。
【0062】
<希釈安定性(1000mS/m)>
硫酸カルシウムで電導度150mS/mに調整し、次いで硫酸ナトリウムで電導度1000mS/mに調整したpH8の硬水を用いて、前記のようにして得られた水分散性サイズ剤サイズ剤1〜4、比較例用サイズ剤1〜6)を0.1%濃度に希釈した後、得られた希釈液を40℃で24時間、静置した後の、エマルションの粒子状態を顕微鏡により観察した。結果を表2に示す。表2において、○は24時間後にも粒子状態が良好であることを示し、△は粒子が一部凝集していることを示し、×は粒子が全て凝集して不安定な状態であることを示す。
【0063】
【表1】
【0064】
<ステキヒトサイズ度(サイズ評価)>
晒クラフトパルプ(針葉樹対広葉樹のパルプ比が1対9である混合パルプ)をパルプ濃度が2.5%になるように電導度100mS/mの希釈用水で希釈し、ビーターを用いてカナディアンスタンダードフリーネス400まで叩解した。次いで、得られたパルプスラリー1.2リットルを離解機に秤取し、攪拌下、軽質炭酸カルシウム(タマパール121、奥多摩工業株式会社製)を対パルプ5質量%加え、硫酸バンドを対パルプ1質量%、カチオン性澱粉Cato304(日本エヌエスシー株式会社製)を対パルプ0.5質量%添加した後、サイズ剤1〜4、比較例用サイズ剤1〜6を対パルプ0.15質量%の割合になるように添加した。その後pH7.5、及び電導度100mS/mの希釈水でこの得られたパルプスラリーを濃度0.8%まで希釈し、上記軽質炭酸カルシウムをさらに対パルプ20%の割合になるように、さらにカチオン性歩留剤(ハイモ株式会社製、歩留剤NR12MLS)を対パルプ0.01%の割合になるように添加し、抄紙系のpH8、電導度100mS/mとしてノーブルアンドウッド製シートマシンで坪量65g/m
2となるよう手抄きを行い、ドラムドライヤー100℃、80秒の条件で乾燥した。得られた紙を23℃、50RH%の恒温恒湿室中で24時間調湿した後、ステキヒトサイズ度をJISP−8122に準じて測定することによりサイズ性能を評価した。この測定値が大きいほどサイズ性が優れることを意味する。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表1及び表2の結果から、実施例1〜4の水分散性サイズ剤は比較例1〜6の水分散性サイズ剤に比べ、填料などを含有した希釈液に対する分散安定性が優れ、抄紙系での汚れを低減できるとともにサイズ効果の優れることがわかる。
【0067】
(実施例5)
カナディアンスタンダードフリーネス333、灰分15%に調整した段ボール古紙パルプを用い、パルプに対して、サイズ剤1を0.15質量%、AC7314(ピッチコントロール剤、星光PMC株式会社製)を0.05質量%添加し、電導度100mS/mの用水で0.8%に希釈した後、NR12MLS(高分子歩留まり剤、ハイモ社製)を0.02質量%添加してパルプスラリーを得た。このパルプスラリーを用いて、ノーブルアンドウッド製シートマシンで坪量80g/m
2となるよう手抄きを行い、ドラムドライヤー100℃、80秒の条件で乾燥して板紙を得た。得られた板紙を23℃、50%RHの恒温恒湿室中で24時間調湿した後、120秒のコブ(Cobb)サイズ度を測定した(コブサイズ測定は、JIS P 8140に準じて測定した。以下、同様にして測定した)。なお、得られたパルプスラリーの一部を、No.5A濾紙(東洋濾紙株式会社製)にて吸引濾過して得られたろ液にメチルレッドとブロムクレゾールグリーンが混合されているエタノール溶媒の指示薬を加え、その液を緩やかに攪拌しながら、ろ液の色が青色から赤色に変わるまで1/50N硫酸を用いて滴定し、ろ液中のアルカリ成分量を炭酸カルシウム換算してアルカリ度(mg CaCO
3/l)(以下、この値をppmで表示した)=滴定量(ml)×1000/ろ液(ml)の式によりアルカリ度を求めた(以下同様にしてアルカリ度を求めた)。結果を表3に示す。
【0068】
(実施例6〜8、比較例6〜11)
実施例5のサイズ剤1を表3に記載のサイズ剤に代えた外は、実施例5と同様にして板紙を得た。得られた板紙を23℃、50%RHの恒温恒湿室中で24時間調湿した後、120秒のコブ(Cobb)サイズ度を測定した。また、アルカリ度を求めた。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
(実施例9)
カナディアンスタンダードフリーネス309、灰分15質量%に調整した段ボール古紙パルプを用い、パルプに対して、サイズ剤1を0.15質量%添加し、電導度100mS/mの用水で0.8質量%に希釈した後、NR12MLS(高分子歩留まり剤、ハイモ社製)を0.02質量%添加してパルプスラリーを得た。このパルプスラリーを用いて、ノーブルアンドウッド製シートマシンで坪量80g/m
2となるよう手抄きを行い、ドラムドライヤー100℃、80秒の条件で乾燥して板紙を得た。得られた板紙を23℃、50%RHの恒温恒湿室中で24時間調湿した後、120秒のコブ(Cobb)サイズ度を測定した。また、アルカリ度を求めた。結果を表4に示す。
【0071】
(実施例10)
カナディアンスタンダードフリーネス309、灰分15質量%に調整した段ボール古紙パルプを用い、パルプに対して、AC7314(ピッチコントロール剤、星光PMC株式会社製)を0.05質量%、サイズ剤1を0.15質量%添加し、電導度100mS/mの用水で0.8質量%に希釈してパルプスラリーを得た後、NR12MLS(高分子歩留まり剤、ハイモ社製)を0.02質量%添加した。このパルプスラリーを用いて、ノーブルアンドウッド製シートマシンで坪量80g/m
2となるよう手抄きを行い、ドラムドライヤー100℃、80秒の条件で乾燥して板紙を得た。得られた板紙を23℃、50%RHの恒温恒湿室中で24時間調湿した後、120秒のコブ(Cobb)サイズ度を測定した。また、アルカリ度を求めた。結果を表4に示す。
【0072】
(実施例11〜15)
実施例10のAC7314に代えて表4に記載の薬品を用いた以外は実施例10と同様にして板紙を得た。得られた板紙を23℃、50%RHの恒温恒湿室中で24時間調湿した後、120秒のコブ(Cobb)サイズ度を測定した。また、アルカリ度を求めた。結果を表4に示す。
【0073】
(比較例12)
実施例10のサイズ剤1に代えて比較例用サイズ剤1を用いた以外は実施例10と同様にして板紙を得た。得られた板紙を23℃、50%RHの恒温恒湿室中で24時間調湿した後、120秒のコブ(Cobb)サイズ度を測定した。また、アルカリ度を求めた。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4中の略号の説明
AC7314:星光PMC株式会社製 有機系カチオン性ピッチコントロール剤
DS4416:星光PMC株式会社製 両性アクリルアミド系ポリマー紙力剤
DH4162:星光PMC株式会社製 ホフマン変性アクリルアミド系ポリマー紙力剤
Cato304:日本NSC株式会社製 カチオン化澱粉をクッキングして糊状にして使用
Cato3210:日本NSC株式会社製 両性澱粉をクッキングして糊状にして使用
【0076】
表3の結果から、実施例5〜8で得られた板紙は、比較例6〜11で得られた板紙に比べ、サイズ効果が優れることがわかる。
【0077】
表4の結果から、実施例9〜15で得られた板紙は、比較例12で得られた板紙に比べ、サイズ効果が優れることがわかる。また、表4の実施例9と実施例10及び15との対比、実施例9と実施例11〜15との対比から、さらにピッチコントロール剤や紙力剤をパルプスラリーに添加するとサイズ効果が優れることがわかる。