特許第6366165号(P6366165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366165走行制御装置、車両、交通システム、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366165
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】走行制御装置、車両、交通システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/40 20060101AFI20180723BHJP
   B60L 3/08 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60L15/40 G
   B60L3/08 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-10399(P2014-10399)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-139314(P2015-139314A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】518018986
【氏名又は名称】三菱重工エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼井 法貴
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 裕
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−082240(JP,A)
【文献】 特開2011−116212(JP,A)
【文献】 特開2012−105438(JP,A)
【文献】 特開2013−172475(JP,A)
【文献】 特開昭62−007308(JP,A)
【文献】 特開2011−217564(JP,A)
【文献】 特開平09−076914(JP,A)
【文献】 特開平09−193805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/40
B60L 3/08
B61L 3/12
B60L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の位置に応じた走行速度を設定して前記車両を走行させる走行制御装置であって、
制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための複数の位置での制限速度を設定する車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得する制限情報取得部と、
車両の現在位置を地上に設置されているATP装置から取得する現在位置取得部と、
車両の現在速度を前記ATP装置から取得する現在速度取得部と、
前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成する走行曲線生成部と、
前記走行曲線生成部が生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する速度指令部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記制限情報取得部は、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報を配列として含む前記制限情報を取得し、
前記走行曲線生成部は、当該制限情報に基づいて走行曲線を生成する
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記制限情報取得部は、現在位置から前方位置までの相対位置の配列のうち代表的な速度に対する配列のみを含む制限情報を取得し、
前記走行曲線生成部は、当該制限情報に基づいて走行曲線を生成する
請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記制限情報取得部は、現在位置から減速完了位置までの相対位置と、速度と、保証減速度とを含む制限情報を取得し、
前記走行曲線生成部は、当該制限情報に基づいて走行曲線を生成する
請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項5】
制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する車両速度制限部と、
前記車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得する制限情報取得部と、
地上に設置されているATP装置から車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記ATP装置から車両の現在速度を取得する現在速度取得部と、
前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成する走行曲線生成部と、
前記走行曲線生成部が生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する速度指令部と、
を備える車両。
【請求項6】
制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する車両速度制限部と、
前記車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得する制限情報取得部と、
地上に設置されているATP装置から車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記ATP装置から車両の現在速度を取得する現在速度取得部と、
前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成する走行曲線生成部と、
前記走行曲線生成部が生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する速度指令部と、
を備える車両と、
を備える交通システム。
【請求項7】
車両に搭載され、前記車両の位置に応じた走行速度を設定して前記車両を走行させる走行制御装置の制御方法であって、
前記走行制御装置の制限情報取得部が、制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する前記走行制御装置の車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得し、
前記走行制御装置の現在位置取得部が、地上に設置されているATP装置から車両の現在位置を取得し、
前記走行制御装置の現在速度取得部が、前記ATP装置から車両の現在速度を取得し、
前記走行制御装置の走行曲線生成部が、前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成し、
前記走行制御装置の速度指令部が、前記走行曲線生成部が生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する制御方法。
【請求項8】
車両に搭載され、前記車両の位置に応じた走行速度を設定して前記車両を走行させる走行制御装置のコンピュータを、
制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得する制限情報取得手段と、
車両の現在位置を地上に設置されているATP装置から取得する現在位置取得手段と、
車両の現在速度を前記ATP装置から取得する現在速度取得手段と、
前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成する走行曲線生成手段と、
前記走行曲線生成手段によって生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する速度指令手段
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置、車両、交通システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道システムの中には、列車を安全運転させるために、列車が所定の速度を超えると自動的にブレーキを作動させるATP(Automatic Train Protection)装置を備えているものがある。また、鉄道システムの中には、列車の自動運転化や列車の運転の省エネルギ化を目的としたATO(Auto Train Operation)装置を備えているものもある。
特許文献1には、関連する技術として、ATP装置とATO装置の両方を備え、列車を安全に停止させると共に、運行遅れを生じない列車の自動運転を実現する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−28926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄道システムにおいて、ATPとATOは独立した機能であり、一般的に、ATP装置とATO装置はハードウェアとして分離されている。そのため、ATP装置とATO装置の両方を備える鉄道システムでは、ATP装置の認識位置誤差とATO装置の認識位置誤差の最大値の合計をマージンとして持つように設計されている。また、特許文献1に記載の技術を用いた鉄道システムにおいても、ATP装置とATO装置のそれぞれが位置を演算しているため、それぞれの認識位置誤差の最大値の合計をマージンとする設計がされている。その結果、車両が自動運転を行う際に、マージンを認識位置誤差の最大値の合計よりも小さくすることができず、走行距離に対する列車の走行時間が長くなってしまう可能性がある。
【0005】
そこでこの発明は、上記の課題を解決することのできる走行制御装置、車両、交通システム、制御方法、及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、走行制御装置は、車両に搭載され、前記車両の位置に応じた走行速度を設定して前記車両を走行させる走行制御装置であって、制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための複数の位置での制限速度を設定する車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得する制限情報取得部と、車両の現在位置を地上に設置されているATP装置から取得する現在位置取得部と、車両の現在速度を前記ATP装置から取得する現在速度取得部と、前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成する走行曲線生成部と、前記走行曲線生成部が生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する速度指令部と、を備える
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様における走行制御装置において、前記制限情報取得部は、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報を配列として含む前記制限情報を取得し、前記走行曲線生成部は、当該制限情報に基づいて走行曲線を生成するものであってもよい
【0008】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様または第2の態様における走行制御装置において、前記制限情報取得部は、現在位置から前方位置までの相対位置の配列のうち代表的な速度に対する配列のみを含む制限情報を取得し、前記走行曲線生成部は、当該制限情報に基づいて走行曲線を生成するものであってもよい
【0009】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様または第2の態様における走行制御装置において、前記制限情報取得部は、現在位置から減速完了位置までの相対位置と、速度と、保証減速度とを含む制限情報を取得し、前記走行曲線生成部は、当該制限情報に基づいて走行曲線を生成するものであってもよい
【0010】
本発明の第5の態様によれば、車両は、制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する車両速度制限部と、前記車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得する制限情報取得部と、地上に設置されているATP装置から車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、前記ATP装置から車両の現在速度を取得する現在速度取得部と、前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成する走行曲線生成部と、前記走行曲線生成部が生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する速度指令部と、を備える
【0011】
本発明の第6の態様によれば、交通システムは、制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する車両速度制限部と、前記車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得する制限情報取得部と、地上に設置されているATP装置から車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、前記ATP装置から車両の現在速度を取得する現在速度取得部と、前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成する走行曲線生成部と、前記走行曲線生成部が生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する速度指令部と、を備える車両と、を備える
【0012】
本発明の第7の態様によれば、制御方法は、車両に搭載され、前記車両の位置に応じた走行速度を設定して前記車両を走行させる走行制御装置の制御方法であって、前記走行制御装置の制限情報取得部が、制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する前記走行制御装置の車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得し、前記走行制御装置の現在位置取得部が、地上に設置されているATP装置から車両の現在位置を取得し、前記走行制御装置の現在速度取得部が、前記ATP装置から車両の現在速度を取得し、前記走行制御装置の走行曲線生成部が、前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成し、前記走行制御装置の速度指令部が、前記走行曲線生成部が生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する
【0013】
本発明の第8の態様によれば、プログラムは、車両に搭載され、前記車両の位置に応じた走行速度を設定して前記車両を走行させる走行制御装置のコンピュータを、制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する車両速度制限部から、現在位置を基準とした前方位置までの複数の相対位置と当該複数の相対位置それぞれが示す前方位置における各制限速度情報とを示す制限情報を取得する制限情報取得手段と、車両の現在位置を地上に設置されているATP装置から取得する現在位置取得手段と、車両の現在速度を前記ATP装置から取得する現在速度取得手段と、前記制限情報と、前記現在位置と、前記現在速度とに基づいて、前記各相対位置に対して前記車両速度制限部の認識位置誤差分のマージンをとり、当該マージンをとった各位置に対して前記制限速度を超えない目標速度を対応付けて走行曲線を生成する走行曲線生成手段と、前記走行曲線生成手段によって生成した走行曲線と、前記現在位置とに基づいて速度指令を生成する速度指令手段として機能させる
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態による走行制御装置によれば、車両が走行制御装置による自動運転を行う際に、走行距離に対する列車の走行時間が短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の一例を示す図である。
図2】第一の実施形態による制限情報取得部101が車両速度制限部100から取得する制限情報の一例を示す図である。
図3】第一の実施形態による走行制御装置3が生成する走行曲線の一例を示す図である。
図4】本発明の第一の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理フローの一例を示す図である。
図5】本発明の第二の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理フローの一例を示す図である。
図6】第二の実施形態による走行制御装置3が生成する走行曲線の一例を示す図である。
図7】本発明の第三の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の一例を示す図である。
図1で示すように、第一の実施形態による交通システム1は、車両2と、地上ATP(Automatic Train Protection)装置200とを備える。
車両2は、第一の実施形態による走行制御装置3と、車両速度制限部100とを備える。
走行制御装置3は、ATO(Auto Train Operation)装置であり、制限情報取得部101と、現在位置取得部102と、現在速度取得部103と、走行曲線生成部104と、速度指令部105とを備える。また、車両速度制限部100は、車上ATP装置である。
【0017】
地上ATP装置200は、地上に設けられ、制限速度開始位置と、制限情報とを車両速度制限部100に送信する。制限情報は、制限速度情報と当該制限速度と対応する位置情報とを含む。
車両速度制限部100は、制限速度開始位置と、制限情報とを地上ATP装置200から取得する。また、車両速度制限部100は、車両2の現在速度を車両2が備える速度計から取得する。車両速度制限部100は、取得した制限速度開始位置に基づいて、当該制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための複数の位置のそれぞれに制限速度を設定する。車両速度制限部100は、取得した制限情報を制限情報取得部101に出力する。
【0018】
制限情報取得部101は、車両速度制限部100から、制限速度情報と当該制限速度と対応する位置情報とからなる制限情報を取得する。制限情報取得部101は、取得した制限情報を走行曲線生成部104に出力する。
現在速度取得部103は、車両2が備える速度計から車両2の現在速度を取得する。現在速度取得部103は、取得した現在速度を現在位置取得部102と走行曲線生成部104に出力する。
現在位置取得部102は、地上ATP装置200から制限速度開始位置を取得する。現在位置取得部102は、取得した制限速度開始位置と現在速度取得部103から入力する現在速度の積算値とに基づいて、現在位置を算出する。現在位置取得部102は、算出した現在位置を走行曲線生成部104と、速度指令部105とに出力する。
【0019】
走行曲線生成部104は、入力した制限情報と、現在位置と、現在速度とに基づいて、制限情報から得られる各位置における制限速度を満たす走行曲線を生成する。走行曲線とは、速度と距離の関係を示す曲線である。走行曲線生成部104は、生成した走行曲線を速度指令部105に出力する。
速度指令部105は、入力した走行曲線と、現在位置とに基づいて速度指令を生成する。速度指令部105は、速度指令を車両2の速度を制御する制御部に出力する。
【0020】
図2は、第一の実施形態による制限情報取得部101が車両速度制限部100から取得する制限情報の一例を示す図である。
車両速度制限部100は、制限情報が示す速度と距離の関係を示す制限速度曲線の状態を現在位置からの相対位置の配列として制限情報取得部101に出力する。また、このとき、車両速度制限部100は、認識している現在位置に対して最大位置誤差分のマージンを持たせた位置を現在位置として現在位置取得部102に出力する。
【0021】
なお、一般的に、制限速度曲線は、空走時間(車両速度制限部100が速度超過を察知してからブレーキが効き始めるまでの時間)Tdと、ワーストケースでも列車の減速が保証される保証減速度βを用いて、式(1)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
この式(1)は、停止位置または制限速度開始位置xと、減速完了速度vとが与えられたときの速度vに対する制限速度位置xatp(v)を示している。
車両速度制限部100は、地上ATP装置200から取得した制限速度開始位置と式(1)とに基づいて、制限速度曲線を設定する。
【0024】
図3は、第一の実施形態による走行制御装置3が生成する走行曲線の一例を示す図である。
走行制御装置3が備える制限情報取得部101は、車両速度制限部100が認識している現在位置に対して最大位置誤差分のマージンを持たせた位置を現在位置とした相対位置の配列を含む制限情報を車両速度制限部100から入力する。制限情報取得部101は、入力した制限情報を走行曲線生成部104に出力する。
【0025】
走行曲線生成部104は、制限情報取得部101から取得した制限情報と、現在位置取得部102から取得した現在位置と、現在速度取得部103から取得した現在速度とに基づいて、制限情報から得られる各位置における制限速度を満たす走行曲線を生成する。
車上ATP装置である車両速度制限部100とATO装置が備える現在位置取得部102とは同一の地上ATP装置200から取得する制限速度開始位置に基づいて現在位置を認識している。そのため、走行曲線生成部104は、現在位置取得部102から取得した現在位置に対して、地上ATP装置200から車両速度制限部100までの信号の伝送時間と、地上AP装置200から現在位置取得部102までの信号の伝送時間との伝送時間差に起因する認識位置誤差のみをマージンとして持っていれば良い。その結果、走行曲線生成部104は、ATP装置の認識位置誤差と伝送時間差に起因する認識位置誤差の最大値の合計をマージンとして持つことになる。通常、伝送時間差に起因する認識位置誤差はATP装置の認識位置誤差に比べてほぼ無視できる程度に小さいため、走行曲線生成部104は、ATO装置の認識位置誤差の分のマージンを低減することができる。走行曲線生成部104は、現在位置に対する相対位置の配列を含む制限情報を制限情報取得部101から入力する。走行曲線生成部104が制限情報取得部101から入力する制限情報に含まれる各相対位置の精度を高めたい場合、走行曲線生成部104は、各配列の間の値を例えば線形補間して制限速度曲線を生成する。そして、走行曲線生成部104は、制限速度曲線に対して例えば5キロメートル毎時のマージンを持たせた曲線を目標の走行曲線として生成する。
【0026】
図4は、本発明の第一の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理フローの一例を示す図である。
次に、第一の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理について説明する。
なお、第一の実施形態による交通システム1が備える車両2は、式(1)における保証減速度βなどの走行条件が地上ATP装置200の設置位置毎に変化する路面を走行するものとする。また、車両速度制限部100は、走行条件が変化する毎に地上ATP装置200から制限速度開始位置と、制限情報と、車両の現在位置とを取得するものとする。またこのとき、現在位置取得部102は、地上ATP装置200から制限速度開始位置を取得するものとする。
【0027】
交通システム1において、車両2の走行中に、車両2が備える車両速度制限部100は、地上ATP装置200と無線通信を行う。そして、車両速度制限部100は、地上ATP装置200から制限速度開始位置と、制限情報と、車両2の現在位置と、車両2の現在速度とを取得する(ステップS1)。
車両速度制限部100は、地上ATP装置200から取得した制限速度開始位置と式(1)とに基づいて、当該制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度、すなわち制限速度曲線を設定する(ステップS2)。
【0028】
車両速度制限部100は、制限速度開始位置と式(1)とに基づいて取得した制限速度曲線の状態を現在位置からの相対位置の配列を含む制限情報として走行制御装置3が備える制限情報取得部101に出力する(ステップS3)。
制限情報取得部101は、車両速度制限部100から現在位置からの相対位置の配列を含む制限情報を入力すると、入力した制限情報を走行曲線生成部104に出力する。
また、現在速度取得部103は、車両2が備える速度計から車両2の現在速度を取得する(ステップS4)。現在速度取得部103は、取得した現在速度を現在位置取得部102と走行曲線生成部104に出力する。
現在位置取得部102は、現在速度取得部103から現在速度を入力すると、地上ATP装置200から取得した制限速度開始位置と入力した現在速度の積算値とに基づいて、現在位置を算出する(ステップS5)。現在位置取得部102は、算出した現在位置を走行曲線生成部104に出力する。
【0029】
走行曲線生成部104は、制限情報取得部101から制限情報を入力する。走行曲線生成部104は、現在速度取得部103から現在速度を入力する。また、走行曲線生成部104は、現在位置取得部102から現在位置を入力する。すると、入力した制限情報と、現在位置と、現在速度とに基づいて、制限情報から得られる各位置における制限速度を満たす走行曲線を生成する(ステップS6)。例えば、走行曲線生成部104は、図3で示したように、現在位置と現在速度とに基づいて走行制御装置3の認識位置である現在位置を求め、その現在位置と制限情報に含まれる現在位置からの相対位置の配列とにより制限速度曲線を求める。そして、走行曲線生成部104は、求めた制限速度曲線に対して制限速度の誤差分のマージンを持たせた目標走行曲線を生成する。走行曲線生成部104は、例えば5キロメートル毎時のマージンを持たせた曲線を目標走行曲線として生成する。
【0030】
走行曲線生成部104は、生成した走行曲線を速度指令部105に出力する。
速度指令部105は、入力した走行曲線と、現在位置とに基づいて速度指令を生成する(ステップS7)。速度指令部105は、速度指令を車両2の速度を制御する制御部に出力する(ステップS8)。
【0031】
以上、本発明の第一の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理フローについて説明した。上述の交通システム1が備える走行制御装置3により、地上ATP装置200から取得した制限速度開始位置に基づいて、当該制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する。走行制御装置3は、制限速度情報と当該制限速度と対応する位置情報とからなる制限情報を取得する。走行制御装置3は、車両2の現在位置を取得し、車両2の現在速度を取得し、取得した制限情報と、現在位置と、現在速度とに基づいて、制限情報から得られる各位置における制限速度を満たす走行曲線を生成する。走行制御装置3は、生成した走行曲線と、現在位置とに基づいて速度指令を生成する。
このようにすれば、車両2が走行制御装置3による自動運転を行う際に、走行距離に対する列車の走行時間が短くなる。
【0032】
<第二の実施形態>
図5は、本発明の第二の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理フローの一例を示す図である。
また、図6は、第二の実施形態による走行制御装置3が生成する走行曲線の一例を示す図である。
次に、図5図6を用いて、第二の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理について説明する。
なお、第二の実施形態による交通システム1が備える車両2は、勾配などが変化し、式(1)で示した保証減速度βなどの走行条件が変化する路面を走行するものとする。また、走行制御装置3は、後述する式(2)〜式(4)を保持しているものとする。
また、ここでは第一の実施形態と異なる処理ステップのみ詳しく説明する。
【0033】
ステップS1とステップS2の処理を行い、第二の実施形態による車両速度制限部100は、第一の実施形態と同様に、現在位置からの相対位置の配列を生成した後、現在位置からの相対位置の配列のうち代表的な2つの速度に対する配列のみを含む制限情報を走行制御装置3に出力する(ステップS9)。例えば現在速度の小数点以下を切り捨てた速度vと、速度vにおける現在位置からの相対距離xと、vよりも1キロメートル毎時遅い速度vと、速度vにおける現在位置からの相対距離xとを含む制限情報を走行制御装置3に出力する。そして、ステップS4とステップS5の処理を行う。
【0034】
走行制御装置3が備える制限情報取得部101は、車両速度制限部100から、現在位置からの相対位置の配列のうち代表的な2つの速度に対する配列のみを含む制限情報を入力する。制限情報取得部101は、車両速度制限部100から入力した制限情報を走行曲線生成部104に出力する。
現在位置取得部102は、車両速度制限部100から現在位置を入力する。現在位置取得部102は、車両速度制限部100から入力した現在位置を走行曲線生成部104に出力する。
現在速度取得部103は、車両速度制限部100から現在速度を入力する。現在速度取得部103は、車両速度制限部100から入力した現在速度を走行曲線生成部104に出力する。
【0035】
走行曲線生成部104は、制限情報取得部101と現在位置取得部102と現在速度取得部103のそれぞれから制限情報と現在位置と現在速度を入力する。そして、走行曲線生成部104は、保持している以下に示す式(2)に、入力した制限情報を代入して、保証減速度βと原則完了位置の相対位置dを算出する。
【0036】
【数2】
【0037】
次に、走行曲線生成部104は、保持している以下に示す式(3)に、車両速度制限部100から入力した現在位置と、現在速度と、算出した保証減速度βと、相対位置dとを代入する。そして、走行曲線生成部104は、図6で示す制限速度曲線を生成する(ステップS10)。
【0038】
【数3】
【0039】
そして、走行曲線生成部104は、式(3)に基づいて生成した制限速度曲線に対して、例えば5キロメートル毎時のマージンを持たせた以下で示す式(4)を走行曲線として生成する(ステップS11)。そして、ステップS7とステップS8の処理を行う。
【0040】
【数4】
【0041】
以上、本発明の第二の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理フローについて説明した。上述の交通システム1が備える走行制御装置3により、地上ATP装置200から取得した制限速度開始位置に基づいて、当該制限速度開始位置で所定の減速完了速度とするための各位置での制限速度を設定する。走行制御装置3は、代表的な2つの制限速度情報と当該制限速度と対応する位置情報とからなる制限情報を取得する。走行制御装置3は、車両2の現在位置を取得し、車両2の現在速度を取得し、取得した制限情報と、現在位置と、現在速度とに基づいて、走行曲線を生成する。走行制御装置3は、生成した走行曲線と、現在位置とに基づいて速度指令を生成する。
このようにすれば、車両2が走行制御装置3による自動運転を行う際に、走行距離に対する列車の走行時間が短くなる。
また、車両速度制限部100から走行制御装置3へ出力する情報量が少なくなり、走行制御装置3が行う通信量が低減し伝送遅延が低減する。その結果、走行制御装置3の製造コストを削減することができる。
【0042】
<第三の実施形態>
図7は、本発明の第三の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1の処理フローの一例を示す図である。
次に、本発明の第三の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1について説明する。
なお、第三の実施形態による車両速度制限部100は、地上ATP装置200から取得した制限速度開始位置と保証減速度βを一定とみなした式(1)とに基づいて、制限速度曲線を設定するものとする。また、走行制御装置3は、次に示す式(5)を保持しているものとする。
【0043】
【数5】
【0044】
ステップS1とステップS2の処理を行う。その後、車両速度制限部100は、図6で示した速度がゼロになる、すなわち減速完了位置までの相対位置dbと、速度vbと、保証減速度βとを含む制限情報を走行制御装置3に出力する(ステップS12)。
【0045】
走行制御装置3が備える制限情報取得部101は、車両速度制限部100から、減速完了位置までの相対位置dbと、速度vbと、保証減速度βとを含む制限情報を入力する。制限情報取得部101は、車両速度制限部100から入力した制限情報を走行曲線生成部104に出力する。
現在位置取得部102は、車両速度制限部100から現在位置を入力する。現在位置取得部102は、車両速度制限部100から入力した現在位置を走行曲線生成部104に出力する。
現在速度取得部103は、すなわち車両速度制限部100から現在速度を入力する。現在速度取得部103は、車両速度制限部100から入力した現在速度を走行曲線生成部104に出力する。
【0046】
走行曲線生成部104は、制限情報取得部101と現在位置取得部102と現在速度取得部103のそれぞれから制限情報と現在位置と現在速度を入力する。そして、走行曲線生成部104は、走行制御装置3が保持している式(5)に、入力した制限情報と現在位置と現在速度を代入して、制限速度曲線を生成する(ステップS13)。そして、ステップS11、ステップS7、ステップS8の処理を行う。
【0047】
このようにすれば、車両2が走行制御装置3による自動運転を行う際に、走行距離に対する列車の走行時間が短くなる。
また、車両速度制限部100から走行制御装置3へ出力する情報量が少なくなり、走行制御装置3が行う演算量が低減する。その結果、走行制御装置3の製造コストを削減することができる。
【0048】
なお、第二の実施形態や第三の実施形態における走行曲線生成部104が制限速度曲線から走行曲線を生成する際に、車両2の速度が高速になるほどより大きな速度マージンを取って走行曲線を生成してもよい。
例えば、走行曲線生成部104は、xato(v)=x’ato(v−2)−0.2v−0.01vのように、伝送遅延を補正する“−0.2v”の項や、回生ブレーキの効きの悪さを補正する“−0.01v”の項を追加してもよい。
このようにすれば、車両2の走行速度が高速領域であるほど制限速度曲線に接近してブレーキが作動してしまうリスクを低減することができる。
また、本発明の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1に対して説明した制御は、図2で示した減速完了要求位置までの位置の制御に限定するものではない。本発明の実施形態による走行制御装置3を備える交通システム1に対して説明した制御は、車両2の停止限界(速度0の制限速度)までの減速制御にも同様に適用できる。
【0049】
なお本発明の実施形態について説明したが、上述の走行制御装置3、車両速度制限部100、地上ATP装置200は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0050】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0052】
1・・・交通システム
2・・・車両
3・・・走行制御装置
100・・・車両速度制限部
101・・・制限情報取得部
102・・・現在位置取得部
103・・・現在速度取得部
104・・・走行曲線生成部
105・・・速度指令部
200・・・地上ATP装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7