特許第6366172号(P6366172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366172微小気泡を用いた流場計測方法及び水槽用流場計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366172
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】微小気泡を用いた流場計測方法及び水槽用流場計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 13/00 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G01P13/00 E
   G01P13/00 D
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-107253(P2014-107253)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-222231(P2015-222231A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100111006
【弁理士】
【氏名又は名称】藤江 和典
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】大場 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】辻本 勝
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−220891(JP,A)
【文献】 特開昭63−103941(JP,A)
【文献】 実開昭57−186840(JP,U)
【文献】 仏国特許出願公開第02697085(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/20
G01P 13/00
G01M 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を動く対象物の周囲の流場を計測する流場計測方法であって、前記対象物の前方に微小気泡を吹き出す気泡吹出手段を設け、前記気泡吹出手段を前記対象物と等速で同一方向に動かし、前記気泡吹出手段から吹き出す前記微小気泡を、前記気泡吹出手段に対し相対的に初速度を有して吹き出し、前記気泡吹出手段から吹き出されて前記対象物の周囲を流れる前記微小気泡の動きに基づいて前記流場を計測し、前記流場の計測結果を前記初速度に基づいて補正することを特徴とする微小気泡を用いた流場計測方法。
【請求項2】
前記初速度を水深方向に異ならせ、水深の深いところの前記初速度を水深の浅いところの前記初速度よりも遅くしたことを特徴とする請求項に記載の微小気泡を用いた流場計測方法。
【請求項3】
前記初速度を調整する初速度調整手段により前記初速度を制御したことを特徴とする請求項又は請求項に記載の微小気泡を用いた流場計測方法。
【請求項4】
前記微小気泡の気泡直径を5μmから100μmの範囲としたことを特徴とする請求項1から請求項のうちの1項に記載の微小気泡を用いた流場計測方法。
【請求項5】
水に前記微小気泡を予め混ぜて前記気泡吹出手段に供給し、前記気泡吹出手段から前記微小気泡を前記水とともに吹き出すことを特徴とする請求項1から請求項のうちの1項に記載の微小気泡を用いた流場計測方法。
【請求項6】
前記気泡吹出手段から前記対象物の幅方向にも前記微小気泡を吹き出すことを特徴とする請求項1から請求項のうちの1項に記載の微小気泡を用いた流場計測方法。
【請求項7】
前記対象物と等速で同一方向に動くシート光を、シート光照射手段から前記対象物の近傍に照射して前記流場を計測することを特徴とする請求項1から請求項のうちの1項に記載の微小気泡を用いた流場計測方法。
【請求項8】
前記シート光を前記対象物の動く方向と平行に照射したことを特徴とする請求項に記載の微小気泡を用いた流場計測方法。
【請求項9】
水槽中の対象物を曳引する曳引手段と、前記対象物の前方に微小気泡を吹き出す気泡吹出手段と、前記気泡吹出手段に前記微小気泡を供給する気泡供給手段と、前記気泡吹出手段から吹き出されて前記対象物の周囲を流れる前記微小気泡の動きに基づいて流場を計測する計測手段と、前記気泡吹出手段から吹き出す前記微小気泡を、前記気泡吹出手段に対し相対的に初速度を有して吹き出し、前記流場の計測結果を前記初速度に基づいて補正するための初速度調整手段とを備え、前記気泡吹出手段と前記計測手段とを前記曳引手段に取り付けたことを特徴とする微小気泡を用いた水槽用流場計測装置。
【請求項10】
前記気泡吹出手段を、水深方向に伸びる管状構成とし、前記水深方向に複数の気泡吹出孔を有したことを特徴とする請求項に記載の微小気泡を用いた水槽用流場計測装置。
【請求項11】
前記気泡供給手段から供給される前記微小気泡の量を調整する気泡量調整手段を備えたことを特徴とする請求項又は請求項10に記載の微小気泡を用いた水槽用流場計測装置。
【請求項12】
前記微小気泡の気泡直径が5μmから100μmの範囲となるように前記気泡供給手段を制御したことを特徴とする請求項から請求項11のうちの1項に記載の微小気泡を用いた水槽用流場計測装置。
【請求項13】
前記気泡供給手段が、前記微小気泡を水に混ぜて供給することを特徴とする請求項から請求項12のうちの1項に記載の微小気泡を用いた水槽用流場計測装置。
【請求項14】
前記気泡吹出手段が、前記対象物の幅方向にも前記微小気泡を吹き出すことを特徴とする請求項から請求項13のうちの1項に記載の微小気泡を用いた水槽用流場計測装置。
【請求項15】
シート光を前記対象物の近傍に照射するシート光照射手段を、前記曳引手段に取り付けたことを特徴とする請求項から請求項14のうちの1項に記載の微小気泡を用いた水槽用流場計測装置。
【請求項16】
前記シート光を前記対象物の動く方向と平行に照射したことを特徴とする請求項15に記載の微小気泡を用いた水槽用流場計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小気泡を用いた流場計測方法及び水槽用流場計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の水槽試験では抵抗試験や自航試験により実船の抵抗や推進性能を予測する試験が多く行われているが、近年はより正確な推進性能評価や、船型改良のためにPIV(Particle Image Velocimetry)による流場計測が盛んに行われている。曳航水槽や回流水槽へのPIV適用は既に一般的となり、様々な計測事例が報告されている。船舶の船尾流れ(流場)は複雑な3次元的な流れも多く、この流場を計測するためにカメラを2台以上使用した複眼立体視によるSPIV(Stereo PIV)や3DPTV(3 Dimensional Particle Tracking Velocimetry)を用いた計測が行われ、水槽試験における流場計測手法として利用されている。
PIVやPTVの計測にはトレーサが必要不可欠であり、一般的には銀コート中空ガラスビーズやナイロンパウダー等の水の比重に近い固体粒子を用いることが多い。しかし、供給した固体粒子の回収はほぼ不可能であり、水槽施設の保守及び精度管理の観点から固体粒子の水槽水への散布に問題がある。
一方、固体粒子と異なり水槽中に残留することのない微小気泡をトレーサとして使用した流場計測も行われているが、これらは自由表面を持たない流場を対象としている。
そこで、水槽中に残留することのない微小気泡をトレーサとして使用することで、自由表面を持つ流場の計測が可能な観測、特に船舶試験水槽での平水中及び波浪中における模型船の船尾流れの観測が求められている。
ここで、特許文献1は、可視粒子を用いて機器内部の流場の解析や流速の測定を行うことが可能な可視化用粒子発生装置に関し、可視粒子として気泡を用いている。
また、特許文献2は、気泡を利用して流れを可視化する装置を提案している。
また、特許文献3には、PIV計測やレーザシート光を用いることが記載されている。
また、特許文献4及び特許文献5には、PIVやレーザシート光を用いて複雑な流場における流体の流動を計測することが記載されている。
また、特許文献6には、トレーサとして第1流体をノズル孔から第2流体の流場内に供給し、流場内を横切るようにレーザ光を照射し、流場内を通過したレーザ光を受光し、受光したレーザ光のスキャン強度信号を用いて、第1流体がレーザ光を横切る位置を求めることにより、第2流体の流れを可視化できる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−148216号公報
【特許文献2】特開平9−288122号公報
【特許文献3】特開2013−29423号公報
【特許文献4】特開2002−22759号公報
【特許文献5】特開2004−20385号公報
【特許文献6】特開2012−103041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、水中を動く対象物の周囲の流場を計測するものではなく、流場そのものを計測するものであり、可視粒子が流場に注入されるときの初速度が流場を乱す問題を解消するため、前段の注入路中に、可視粒子が初速度を持たないように減速され負圧によって流場に注入される可視粒子初速度減速機構を設けたものである。
また、特許文献2は、気泡を鉱物油内に存在させかつ崩壊させ、外部から識別可能な物質として煙状物質等を鉱物油内に析出または発生させることで流れを可視化するものであり、水中を動く対象物の周囲の流場を計測するものではない。
また、特許文献3は、測定対象物内を流れる粒子の流速及び粒径を算出するものである。
また、特許文献4は、外界と環境を異にする閉空間内の流場の流体の流速や流れ方向を計測するものであり、流場内で対象物が動くことに関する記載は無い。
また、特許文献5は、テストセクションのパイプ内の粒子を撮影し、2枚の画像から速度ベクトルを算出し空間の時系列流体速度を計測するものであり、水中を動く対象物の周囲の流場を計測するものではない。
特許文献6は、空気が一定速度で流れる空気の流場を風洞で形成し、この風洞中に物体を置き、トレーサとして二酸化炭素ガスを複数のノズル孔から流体の流場に供給するものであり、対象物である物体は固定されており、対象物が動くときの周囲の流場を計測するものではない。
【0005】
本発明は、例えば、船舶試験水槽での平水中又は波浪中における模型船の船尾流れ等の水中を動く対象物の周囲の流場を、水中に残留することのない微小気泡をトレーサとして使用することで、高い精度で計測が行える微小気泡を用いた流場計測方法及び水槽用流場計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に対応した微小気泡を用いた流場計測方法においては、水中を動く対象物の周囲の流場を計測する流場計測方法であって、対象物の前方に微小気泡を吹き出す気泡吹出手段を設け、気泡吹出手段を対象物と等速で同一方向に動かし、気泡吹出手段から吹き出す微小気泡を、気泡吹出手段に対し相対的に初速度を有して吹き出し、気泡吹出手段から吹き出されて対象物の周囲を流れる微小気泡の動きに基づいて流場を計測し、流場の計測結果を初速度に基づいて補正することを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、対象物の前方に設けた対象物と等速で同一方向に動く気泡吹出手段から微小気泡を吹き出すため、対象物の周囲のみにタイミングよく微小気泡を供給でき、対象物の周囲の流場が的確に計測できる。また、計測が完了する前に微小気泡が消失してしまうことがないので精度の高い流場の計測結果を得ることができる。また、計測設備中に残留することがない微小気泡をトレーサとして使用するので、固体粒子をトレーサとして使用する場合と比べて計測設備の保守及び精度管理が容易となる。また、微小気泡が初速度を持たないようにする手段が不要となり、また、流場の計測結果を初速度に基づいて補正するので、初速度の影響を取り除いた結果を得ることができる。
【0007】
請求項記載の本発明は、初速度を水深方向に異ならせ、水深の深いところの初速度を水深の浅いところの初速度よりも遅くしたことを特徴とする。請求項に記載の本発明によれば、気泡吹出手段を簡単な構成で実現できる。
【0008】
請求項記載の本発明は、初速度を調整する初速度調整手段により初速度を制御したことを特徴とする。請求項に記載の本発明によれば、微小気泡の初速度を任意に調整することで、計測に最適な状態で微小気泡を供給することができる。
【0009】
請求項記載の本発明は、微小気泡の気泡直径を5μmから100μmの範囲としたことを特徴とする。請求項に記載の本発明によれば、この気泡直径範囲の微小気泡は気泡同士の結合が行われないため上昇速度を抑えることができ、計測が完了する前に対象物の周囲の流場から微小気泡が浮上して消失してしまうことがなく流場の計測が高い精度で行える。
【0010】
請求項記載の本発明は、水に微小気泡を予め混ぜて気泡吹出手段に供給し、気泡吹出手段から微小気泡を水とともに吹き出すことを特徴とする。請求項に記載の本発明によれば、微小気泡を気泡吹出手段に水とともに連続的に供給することができ、流場への微小気泡拡散が均一化できる。
【0011】
請求項記載の本発明は、気泡吹出手段から対象物の幅方向にも微小気泡を吹き出すことを特徴とする。請求項に記載の本発明によれば、微小気泡を幅方向に拡散させ、より流場の計測範囲を広げ、3次元的な流場の計測も可能とすることができる。
【0012】
請求項記載の本発明は、対象物と等速で同一方向に動くシート光を、シート光照射手段から対象物の近傍に照射して流場を計測することを特徴とする。請求項に記載の本発明によれば、対象物の周囲を動く微小気泡を捉えて流場の計測を良好に行うことができる。
【0013】
請求項記載の本発明は、シート光を対象物の動く方向と平行に照射したことを特徴とする。請求項に記載の本発明によれば、対象物と同一方向の微小気泡の動きから対象物の前後方向の流場が計測でき、また前後方向に一定の幅をもって流場の計測を行うことができる。
【0014】
請求項記載の本発明に対応した微小気泡を用いた水槽用流場計測装置においては、水槽中の対象物を曳引する曳引手段と、対象物の前方に微小気泡を吹き出す気泡吹出手段と、気泡吹出手段に微小気泡を供給する気泡供給手段と、気泡吹出手段から吹き出されて対象物の周囲を流れる微小気泡の動きに基づいて流場を計測する計測手段と、気泡吹出手段から吹き出す微小気泡を、気泡吹出手段に対し相対的に初速度を有して吹き出し、流場の計測結果を初速度に基づいて補正するための初速度調整手段とを備え、気泡吹出手段と計測手段とを曳引手段に取り付けたことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、対象物の前方に設けた対象物と等速で同一方向に動く気泡吹出手段から微小気泡を吹き出すため、対象物の周囲のみにタイミングよく微小気泡を供給でき、対象物の周囲の流場が的確に計測できるとともに気泡吹出手段も小規模なもので済む。また、計測が完了する前に微小気泡が消失してしまうことがないので精度の高い流場の計測結果を得ることができる。また、水槽中に残留することがない微小気泡をトレーサとして使用するので、固体粒子をトレーサとして使用する場合と比べて水槽設備の保守及び精度管理が容易となる。また、気泡吹出手段と計測手段は曳引手段に取り付けるので、気泡吹出手段や計測手段を水槽底面等など、曳引手段とは別に設ける必要が無い。また、微小気泡が初速度を持たないようにする手段が不要となり、また、流場の計測結果を初速度に基づいて補正するので、初速度の影響を取り除いた結果を得ることができる。
【0015】
請求項10記載の本発明は、気泡吹出手段を、水深方向に伸びる管状構成とし、水深方向に複数の気泡吹出孔を有したことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、水深方向に存在する対象物に対し簡単な構成で多くの微小気泡を吹き出すことができる。
【0016】
請求項11記載の本発明は、気泡供給手段から供給される微小気泡の量を調整する気泡量調整手段を備えたことを特徴とする。請求項11に記載の本発明によれば、微小気泡の量を任意に調整することで、計測に最適な流場とすることができる。
【0017】
請求項12記載の本発明は、微小気泡の気泡直径が5μmから100μmの範囲となるように気泡供給手段を制御したことを特徴とする。請求項12に記載の本発明によれば、この気泡直径範囲の微小気泡は気泡同士の結合が行われないため上昇速度を抑えることができ、計測が完了する前に対象物の周囲の流場から微小気泡が浮上して消失してしまうことがなく流場の計測が高い精度で行える。
【0018】
請求項13記載の本発明は、気泡供給手段が、微小気泡を水に混ぜて供給することを特徴とする。請求項13に記載の本発明によれば、微小気泡を気泡吹出手段に水とともに連続的に供給することができ、流場への微小気泡の拡散が均一化できる。
【0019】
請求項14記載の本発明は、気泡吹出手段が、対象物の幅方向にも微小気泡を吹き出すことを特徴とする。請求項14に記載の本発明によれば、微小気泡を幅方向に拡散させ、より流場の計測範囲を広げ、3次元的な流場の計測も可能とすることができる。
【0020】
請求項15記載の本発明は、シート光を対象物の近傍に照射するシート光照射手段を、曳引手段に取り付けたことを特徴とする。請求項15に記載の本発明によれば、シート光照射手段を対象物と等速で動かし流場の計測を良好に行うことができる。
【0021】
請求項16記載の本発明は、シート光を対象物の動く方向と平行に照射したことを特徴とする。請求項16に記載の本発明によれば、対象物と同一方向の微小気泡の動きから対象物の前後方向の流場が計測でき、また前後方向に一定の幅をもって流場の計測を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の微小気泡を用いた流場計測方法によれば、対象物の前方に設けた対象物と等速で同一方向に動く気泡吹出手段から微小気泡を吹き出すため、対象物の周囲のみにタイミングよく微小気泡を供給でき、対象物の周囲の流場が的確に計測できる。また、計測が完了する前に微小気泡が消失してしまうことがないので、精度の高い流場の計測結果を得ることができる。また、計測設備中に残留することがない微小気泡をトレーサとして使用するので、固体粒子をトレーサとして使用する場合と比べて計測設備の保守及び精度管理が容易となる。また、微小気泡が初速度を持たないようにする手段が不要となり、また、流場の計測結果を初速度に基づいて補正するので、初速度の影響を取り除いた結果を得ることができる。
【0023】
また、初速度を水深方向に異ならせ、水深の深いところの初速度を水深の浅いところの初速度よりも遅くした場合には、気泡吹出手段を簡単な構成で実現できる。
【0024】
また、初速度を調整する初速度調整手段により初速度を制御した場合には、微小気泡の初速度を任意に調整することで、計測に最適な状態で微小気泡を供給することができる。
【0025】
また、微小気泡の気泡直径を5μmから100μmの範囲とした場合には、微小気泡の気泡同士の結合を防いで上昇速度を抑えることができ、計測が完了する前に対象物の周囲の流場から微小気泡が浮上して消失してしまうことがなく流場の計測が高い精度で行える。
【0026】
また、水に微小気泡を予め混ぜて気泡吹出手段に供給し、気泡吹出手段から微小気泡を水とともに吹き出す場合には、微小気泡を気泡吹出手段に水とともに連続的に供給することができ、流場への微小気泡拡散が均一化できる。
【0027】
また、気泡吹出手段から対象物の幅方向にも微小気泡を吹き出す場合には、微小気泡を幅方向に拡散させ、より流場の計測範囲を広げ、3次元的な流場の計測も可能とすることができる。
【0028】
また、対象物と等速で同一方向に動くシート光を、シート光照射手段から対象物の近傍に照射して流場を計測する場合には、対象物の周囲を動く微小気泡を捉えて流場の計測を良好に行うことができる。
【0029】
また、シート光を対象物の動く方向と平行に照射した場合には、対象物と同一方向の微小気泡の動きから対象物の前後方向の流場が計測でき、また前後方向に一定の幅をもって流場の計測を行うことができる。
【0030】
また、本発明の微小気泡を用いた水槽用流場計測装置によれば、対象物の前方に設けた対象物と等速で同一方向に動く気泡吹出手段から微小気泡を吹き出すため、対象物の周囲のみにタイミングよく微小気泡を供給でき、対象物の周囲の流場が的確に計測できるとともに気泡吹出手段も小規模なもので済む。また、計測が完了する前に微小気泡が消失してしまうことがないので精度の高い流場の計測結果を得ることができる。また、水槽中に残留することがない微小気泡をトレーサとして使用するので、固体粒子をトレーサとして使用する場合と比べて水槽設備の保守及び精度管理が容易となる。また、気泡吹出手段と計測手段は曳引手段に取り付けるので、気泡吹出手段や計測手段を水槽底面等など、曳引手段とは別に設ける必要が無い。また、微小気泡が初速度を持たないようにする手段が不要となり、また、流場の計測結果を初速度に基づいて補正するので、初速度の影響を取り除いた結果を得ることができる。
【0031】
また、気泡吹出手段を、水深方向に伸びる管状構成とし、水深方向に複数の気泡吹出孔を有した場合には、水深方向に存在する対象物に対し簡単な構成で多くの微小気泡を吹き出すことができる。
【0032】
また、気泡供給手段から供給される微小気泡の量を調整する気泡量調整手段を備えた場合には、微小気泡の量を任意に調整することで、計測に最適な流場とすることができる。
【0033】
また、微小気泡の気泡直径が5μmから100μmの範囲となるように気泡供給手段を制御した場合には、微小気泡の気泡同士の結合を防いで微小気泡の上昇速度を抑えることができ、計測が完了する前に対象物の周囲の流場から微小気泡が浮上して消失してしまうことがなく流場の計測が高い精度で行える。
【0034】
また、気泡供給手段が、微小気泡を水に混ぜて供給する場合には、微小気泡を水とともに気泡吹出手段に連続的に供給することができ、流場への微小気泡拡散が均一化できる。
【0035】
また、気泡吹出手段が、対象物の幅方向にも微小気泡を吹き出す場合には、微小気泡を幅方向に拡散させ、より流場の計測範囲を広げ、3次元的な流場の計測も可能とすることができる。
【0036】
また、シート光を対象物の近傍に照射するシート光照射手段を、曳引手段に取り付けた場合には、シート光照射手段を対象物と等速で動かし流場の計測を良好に行うことができる。
【0037】
また、シート光を対象物の動く方向と平行に照射した場合には、対象物と同一方向の微小気泡の動きから対象物の前後方向の流場が計測でき、また前後方向に一定の幅をもって流場の計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態による微小気泡を用いた水槽用流場計測装置の全体構成を示す構成図
図2】同装置の計測手段を示す構成図
図3】同装置で生成した気泡直径の分布図
図4】同装置の気泡吹出手段を示す構成図
図5】同装置による一様流中の流場計測の撮影画像を示す図
図6】同装置による一様流中の流場計測の解析結果を示す図
図7】同装置による一様流中の流場計測の主流方向の速度の乱れ度を示す図
図8】同装置による一様流中の流場計測のPIVで計測した主流方向の平均速度(E(Vx))とピトー管で計測した主流方向の平均速度(E(Vxp))の相関を示す図
図9】同装置による規則波中の流場計測の撮影画像を示す図
図10】同装置による規則波中の流場計測の解析結果を示す図
図11】同装置による規則波中の流場計測のz=−0.187mでの主流方向の速度Vxと上下方向の速度Vzを時系列で示す図
図12】同装置による規則波中の流場計測のz=−0.224mでの主流方向の速度Vxと上下方向の速度Vzを時系列で示す図
図13】同装置による規則波中の流場計測のz=−0.261mでの主流方向の速度Vxと上下方向の速度Vzを時系列で示す図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明の実施形態による微小気泡を用いた水槽用流場計測装置について説明する。
【0040】
図1は本発明の一実施形態による微小気泡を用いた水槽用流場計測装置の全体構成を示す構成図、図2は同装置の計測手段を示す構成図である。
本実施形態による微小気泡を用いた水槽用流場計測装置は、水槽10中の対象物(模型船)20を曳引する曳引手段30を有し、曳引手段30には、気泡吹出手段40と計測手段50とを取り付けている。
従って、模型船20と気泡吹出手段40と計測手段50とは、曳引手段30によって等速で同一方向に水槽10中で動かされる。
気泡吹出手段40は、水中で模型船20の前方に微小気泡を吹き出す。気泡吹出手段40には、気泡供給手段60から微小気泡を供給する。
計測手段50は、気泡吹出手段40から吹き出されて模型船20の周囲を流れる微小気泡の動きに基づいて流場を計測する。
【0041】
気泡吹出手段40は、水槽10内で水深方向に伸びる管状の管部材41で構成され、管部材41には、水深方向に複数の気泡吹出孔42を有している。水深方向に複数の気泡吹出孔42を有することで、水深方向に存在する模型船20の船体に対し簡単な構成で多くの微小気泡を吹き出すことができる。
気泡吹出手段40は、模型船20の幅方向にも微小気泡を吹き出す。複数の管部材41を模型船20の幅方向に配置することで、模型船20の幅方向に微小気泡を吹き出すことができる。幅方向に吹き出すことで、計測を安定的に行うことを実現するとともに、目的によっては3次元的な計測も可能となる。
また、単一の管部材41で、気泡吹出孔42の吹き出し方向をそれぞれ異ならせて幅方向に微小気泡を吹き出してもよい。また、管部材41を平面視した状態で、気泡吹出孔42の吹き出し方向を横方向、前方向等任意の方向に設定することも可能である。
気泡吹出手段40が、模型船20の幅方向にも微小気泡を吹き出すことで、微小気泡を拡散させ、より流場の計測範囲を広げることができる。
気泡吹出手段40から吹き出す、すなわち気泡吹出孔42から吹き出す微小気泡は、気泡吹出手段40に対し相対的に初速度を有して吹き出される。気泡吹出孔42から吹き出す微小気泡は、水深の深いところの初速度が水深の浅いところの初速度よりも遅く、初速度を水深方向に異ならせている。このため、気泡吹出孔42からの吹き出し初速度を揃えるための複雑な機構や構造を必要とすることなく、管部材41を簡単な構成とすることができる。
【0042】
本実施形態による微小気泡を用いた水槽用流場計測装置は、初速度を調整する初速度調整手段71と、微小気泡の量を調整する気泡量調整手段72とを備えている。
初速度調整手段71は、気泡吹出孔42から吹き出す微小気泡の初速度を制御する。気泡量調整手段72は、気泡供給手段60から供給される微小気泡の量を調整する。
本実施形態では、気泡供給手段60と気泡吹出手段40とを接続する供給配管81の流路を絞る第1制御弁を初速度調整手段71としている。初速度調整手段71である第1制御弁を絞ることで、初速度を遅くすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、管部材41の下端側に設けた第2制御弁を気泡量調整手段72としている。気泡量調整手段72である第2制御弁より下部には気泡逃がし部43を有し、第2制御弁を開くことで気泡逃がし部43からの気泡放出量が増加し、気泡吹出孔42から吹き出す微小気泡の量が減少する。
なお、第1制御弁によっても微小気泡の量を調整でき、第2制御弁によっても初速度を制御できる。また、微小気泡の量は、気泡供給手段60で制御することもできる
【0044】
微小気泡の初速度や量を任意に調整することで、計測に最適な流場とすることができる。
気泡吹出孔42から吹き出す微小気泡は、気泡直径を5μmから100μmの範囲、好ましくは20μmから60μmの範囲、更に好ましくは30μから40μmの範囲とする。このような気泡直径とすることで、微小気泡同士が結合することを抑制し、あるいは防止し、微小気泡の上昇速度を抑えることができ、計測が完了する前に模型船20の周囲の流場から微小気泡が浮上して消失してしまうことがない。
気泡供給手段60は、大気から空気を吸い込み、水槽10から水を吸い込む。吸い込み管82は模型船20の周囲の流場を乱さないように模型船20の後方に距離を置いて設けられており、水槽10から吸い込んだ水を気泡供給手段60に送る。気泡供給手段60では、大気から吸い込んだ空気を微小化し、微小気泡を水に混ぜて供給する。微小気泡を水に混ぜて供給し、気泡吹出手段40から微小気泡を水とともに吹き出すことで、微小気泡を気泡吹出手段40に連続的に供給することができ、流場への微小気泡の拡散を均一化できる。なお、気泡供給手段60では、気泡を水と混ぜて供給し、気泡吹出手段40で気泡を微小化して微小気泡として吹き出すこともできる。また、空気を貯えるタンクを装備して圧力のかかった空気を供給し、気泡吹出手段40で微小気泡として噴出させることも可能である。
【0045】
図2に示すように、計測手段50は、曳引手段30に取り付けられ、シート光を照射するシート光照射手段51と、照射された微小気泡を撮像する撮像手段52とで構成される。シート光照射手段51及び撮像手段52を、曳引手段30に取り付けたことで、模型船20と等速で同一方向に動くシート光を、シート光照射手段51から模型船20の近傍に照射して計測するので、流場の計測を良好に行うことができる。
シート光照射手段51は、シート光を模型船20の近傍に照射する。シート光を模型船20の動く方向と平行に照射することで、模型船20と同一方向に動く微小気泡の動きから模型船20の前後方向の流場が計測でき、また前後方向に一定の幅をもって流場の計測を行うことができる。
本実施形態によるシート光照射手段51は、ミラー53を用いて水中から模型船20の近傍に照射する。シート光照射手段51は、計測手段50の一部として曳引手段30により曳引され模型船20とともに水中を動くので、簡単な手段として実現できる。
なお、光ファイバやシート光照射手段51を防水型として水中から模型船20の近傍を照射しても良い。
【0046】
本実施形態による微小気泡を用いた流場計測方法は、気泡吹出手段40から吹き出す微小気泡を、気泡吹出手段40に対し相対的に初速度を有して吹き出すとともに、流場の計測結果を初速度に基づいて補正する。流場の計測結果を初速度に基づいて補正することで、初速度の影響を取り除いた結果を得ることができる。
V0を真の速度、VPIVをPIV(Particle Image Velocimetry)で解析される速度、ΔVwを気泡吹出手段40による流速の変化、Vsを初速度、ΔVerrを計測誤差とすると、真の速度V0は次式で表される。
V0=VPIV−ΔVw−Vs−ΔVerr
【0047】
ΔVwは、ピトー管などの別の計測装置を用い、気泡吹出手段40がない状態と気泡吹出手段40がある状態で比較し、次式により求める。
ΔVw=Vw−Vw0
ここで、Vwは気泡吹出手段40あり、Vw0は気泡吹出手段40なしの状態での速度である。
Vsは、平水中ではピトー管などの別の計測装置を用いて計測し、波浪中では、止まった状態で造波を行い、流速変化の時系列データから平均値を求める。
流場の計測結果を初速度に基づいて補正することにより、微小気泡が初速度を持たないようにする手段が不要となり、水深方向に伸びる管部材41のような簡単な構成で計測が可能となる。
【0048】
以下に本発明による微小気泡を用いた流場計測方法の実験結果を示す。
同流場計測方法では、図1及び図2に示す装置を用い、レーザシート光の前方の気泡吹出孔42から微小気泡を吹き出し、その後方にあるレーザシート光により微小気泡を照明し、微小気泡の動きを2台の撮像手段(高速度カメラ)52により連続的にステレオ撮影した。
【0049】
本実験では、気泡供給手段(気泡発生装置)60として気液剪断方式とキャビテーション方式を組み合わせたものを用いた。
トレーサとして用いる気泡の基本的な性状を調べるため、気泡発生装置60で生成した気泡直径を計測し、気泡の上昇速度を検討した。気泡直径の計測は、微小気泡を混入した透明な容器にレーザシート光を照射し、マイクロスコープにより計測した。なお、マイクロスコープの解像度は720×480pixであり、撮影範囲は6.5×4.3mm、1pixあたり9.1μmである。
【0050】
撮影画像から気泡のピクセル数を計測し、気泡直径分布を求めた結果を図3に示す。
図3から気泡発生装置60で発生した気泡直径は10〜60μm(平均31μm)の範囲であることがわかる。微小気泡の上昇速度(Vr)は、次式のStokesの法則に従い、気泡直径の2乗に比例する。
Vr=gd/18ν
ここで、gは重力加速度、dは気泡直径、νは水の動粘性係数である。
水の動粘性係数は温度により変化する。実験時の水温(15℃)において平均気泡直径での上昇速度は0.47mm/sと求められる。
【0051】
また、今回はこの微小気泡をトレーサとして吹き出す際、図4に示すように、管部材(塩化ビニールパイプ)41に複数の気泡吹出孔42を空けた気泡吹出手段40を使用した。最終的には船尾での流場を計測することを目的としているため、気泡吹出手段40を2本使用し、広い範囲に拡散させるようにしている。そして、整流するためにパイプ41を翼型に成形している。
【0052】
気泡発生装置60には、図2に示す計測手段(PIVシステム)50を用いた。
PIVシステム50に使用した高速度カメラ52は、VGAサイズ(640×480pix)の画像を毎秒200フレームで撮影することができ、最低被写体照度は10lux(F値1.4時)である。レンズには焦点距離12mm、F値1.2のものを使用した。高速度カメラ52の撮影範囲は250mm×190mm程度であり、1pixあたりおよそ0.4mmである。
レーザ光学系の光源には、出力4Wのグリーン光(532nm)の連続発振レーザを用いた。レーザ光源を2つのミラー53を介して水中まで導き、レーザ光源をシリンドリカルレンズ54により扇形に拡散させてシート状に成形し、最後にミラー55を介して鉛直上方にレーザシート光を照射する。水槽用流場計測装置は模型船20での計測を考え、船幅方向に移動させるためのトラバース装置90を有する。これにより計測する断面を変更し、三次元的な計測をすることが可能である。
なお、検査領域は、64×64pix、オーバーラップ50%にてFFT相互相関法により解析した。
【0053】
微小気泡をトレーサとしたPIV計測の精度検証のため、海上技術安全研究所の動揺試験水槽(長さ=50m、幅=8m、深さ=4.5m)で一様流及び規則波の流場計測を行った。一様流の計測時には水槽10のセンターラインに設置した。以下で使用する座標系はx軸を主流方向、y軸を計測画面の遠方から近方、z軸を鉛直上方とする右手系である。
この装置の精度検証のため、本研究では一様流中の流場計測を行った。曳航速度(V)は0.4m/s、0.6m/s、0.8m/sの3種類とし、それぞれ5回ずつ計測を行った。2本の塩化ビニールパイプ41からなる気泡吹出手段40の後方にPIVシステム50の計測断面、ピトー管を設置して同時に計測し、両者の計測値を比較した。
図5及び図6にV=0.4m/sでの撮影画像と解析結果の一例を示す。
【0054】
主流方向の速度の乱れ度(Ivx)を次式で定義する。V=0.4m/sの場合を例として図7に示す。
Ivx=σvx/E(Vx)
ここで、E(Vx)は、PIVシステム50で計測した主流方向の速度の平均値、σvxは、PIVシステム50で計測した主流方向の速度の標準偏差である。
計測範囲の大部分で3%以内の乱れ度であることがわかる。
また、乱れ度の小さい範囲の中心が計測範囲の中心よりずれているのは、左右の高速度カメラ52の角度のズレによって撮影画像の中心が左右で違うためである。計測範囲の外側に向かうにつれて乱れ度が大きくなるのは、レンズの収差によるものと考えられる。
【0055】
PIVシステム50で計測した画像中心部の主流方向の平均速度(E(Vx))とピトー管で計測した主流方向の平均速度(E(Vxp))の相関を図8に示す。
両者の相関係数は0.99以上であり、高い相関を持つことを確認した。
【0056】
一様流中の流場計測による検証に続いて、規則波中の流場計測を行った。実験状態は波高Hw=0.050m、波周期T=1s、2sとして試験速度V=0m/sの停止状態で行った。
図9にT=2sでの撮影画像の一例を示す。
【0057】
図10にT=2sにおけるPIV解析結果の速度ベクトルを示す。なお、時間t=0〜1.5sまでの速度ベクトルである。波浪中水粒子速度を捉えているため、速度ベクトルの方向が時間的に変化していることがわかる。
【0058】
図11図12図13に、それぞれz=−0.187m、−0.224m、−0.261mでの主流方向の速度Vx、上下方向の速度Vzの時系列データを示す。
図中の実線が微小振幅波理論により求められた計算値であり、点は計測値である。
z=−0.224m、−0.261mではVx、Vz共に理論値と計測値がほぼ一致していることがわかる。なお、z=−0.187mではVzについてはほぼ一致しているが、Vxについては全体的に増速側にシフトしている。これは微小気泡を水槽10中に吹き出すときの速度によるものと考えられる。水深が浅くなるにつれてVxの一致が悪くなるのは水面に近い部分において微小気泡を吹き出す速度が速く、水面から遠くなるにつれて速度が遅くなるためと考えられる。
【0059】
本試験結果より、一様流の計測では、ピトー管の計測値と比較して高い相関関係があることが確認され、規則波中の流場計測では微小振幅波理論により求めた理論値と比較した結果、高い一致性を示した。
【0060】
以上のように本実施形態による微小気泡を用いた流場計測方法においては、対象物(模型船)20の前方に微小気泡を吹き出す気泡吹出手段40を設け、気泡吹出手段40を模型船20と等速で同一方向に動かし、気泡吹出手段40から吹き出されて模型船20の周囲を流れる微小気泡の動きに基づいて流場を計測することで、模型船20の周囲のみにタイミングよく微小気泡を供給でき、対象物の周囲の流場が的確に計測できる。
また、計測が完了する前に微小気泡が浮上して消失してしまうことがない。また、水槽10中に残留することがない微小気泡をトレーサとして使用するので、固体粒子をトレーサとして使用する場合と比べて水槽設備の保守及び精度管理が容易となる。
特に、曳引手段30により曳引されて水中を動く模型船20とともに、同じく曳引手段30に取り付けた気泡吹出手段40と計測手段50が等速で動くため、模型船20の周囲の流場だけに微小気泡を供給し、また模型船20の周囲のみに焦点を当てて計測を行い精度の高い計測結果を得ることができる。
このため、水槽10全体に気泡を連続拡散させたり、模型船20が近づいたら領域ごとに気泡を吹き出す固定的な方式と比較し、気泡吹出手段40を小規模で簡単な構成とすることができる。また、模型船20の周囲の計測をしたい流場だけを対象に微小気泡を供給できるため、微小気泡の量は非常に少なくて済み、更に気泡吹出手段40を小規模で簡単な構成とすることができる。模型船20を直進させるだけでなく、蛇行やジグザグ運転等の平面的な運動を伴う試験を行う場合、気泡吹出手段40が模型船20と同一方向に動くため、この効果は顕著となる。
また、水槽10全体にシート光照射手段や撮像手段を配置したり、シート光照射手段と撮像手段のどちらかを水槽10全体に配置する方式と比較して、シート光照射手段や撮像手段の数を減らし、簡単な設備で実現することができる。また、気泡吹出手段40の場合と同様に、模型船20を直進だけさせるのではなく平面的な運動を伴う試験の場合、計測手段50が模型船20と同一方向に動くため、この効果は顕著となる。
なお、気泡吹出手段40と計測手段50の双方、又は一方、又は構成要素の一部は、曳航手段30以外の等速で動く手段により動かすことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の微小気泡を用いた流場計測方法及び水槽用流場計測装置によれば、例えば、船舶試験水槽での平水中又は波浪中における模型船の船尾流れの観測を高い精度で行える。
なお、上記の実施の形態では対象物を模型船として説明したが、本発明は、浮体や水中航行体の模型などが対象物の場合にも適用することができる。また、水槽は開放型の水槽以外に密閉された水槽にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 水槽
20 対象物
30 曳引手段
40 気泡吹出手段
41 管部材
42 気泡吹出孔
43 気泡逃がし部
50 計測手段
51 シート光照射手段
52 撮像手段
53 ミラー
54 シリンドリカルレンズ
55 ミラー
60 気泡供給手段
71 初速度調整手段
72 気泡量調整手段
81 供給配管
82 吸い込み管
90 トラバース装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13