特許第6366182号(P6366182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366182
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】遠隔操縦システムと遠隔操縦方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20060101AFI20180723BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G05D1/00 B
   G05D1/02 J
   G05D1/02 L
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-209110(P2014-209110)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-81122(P2016-81122A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩明
【審査官】 大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−084375(JP,A)
【文献】 特開2004−312376(JP,A)
【文献】 特開2001−334893(JP,A)
【文献】 特開2007−201867(JP,A)
【文献】 特開平08−320365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−17/02
G01S 5/00− 5/14
G01S 19/00−19/55
G05D 1/00− 1/12
G08G 1/00−99/00
H03J 9/00− 9/06
H04B 1/60
H04B 3/46− 3/493
H04B 7/24− 7/26
H04B 17/00−17/40
H04Q 9/00− 9/16
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方車両とその後方を所定距離以上離れて走行する後方車両とからなり遠隔操縦される無人移動体と、
通信衛星を介して前記後方車両を遠隔操縦し、かつ後方車両を介して前記前方車両を間接的に遠隔操縦する遠隔操縦装置と、を備え、
前記前方車両と前記後方車両は、互いに制御信号を通信する無線通信装置と、位置補正用の静止衛星からの補正信号を受信して自己位置を検出するDGPS受信機とを有しており、
前記後方車両は、さらに前記通信衛星を介して前記遠隔操縦装置と前記制御信号を通信する衛星通信装置を有し、
前記遠隔操縦装置は、前記前方車両による前記補正信号の受信途絶により、後方車両と遠隔操縦装置との通信を維持したまま、前記後方車両による前記通信衛星との通信途絶位置を予測する予測装置を有する、ことを特徴とする遠隔操縦システム。
【請求項2】
前記位置補正用の静止衛星は、DGPSのSBAS方式であるMTSAT1衛星とMTSAT2衛星であり、
前記予測装置は、前記前方車両による前記MTSAT1衛星と前記MTSAT2衛星の受信途絶位置間の水平距離と、前記前方車両の進行方位とから、前記通信衛星との通信途絶位置を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操縦システム。
【請求項3】
前記後方車両は、前方車両による前記補正信号の受信が再確立された後、前記通信衛星との通信途絶位置から前記補正信号の受信の再確立位置までの前方車両の軌跡を辿って移動する軌跡追従機能を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操縦システム。
【請求項4】
前方車両とその後方を所定距離以上離れて走行する後方車両とからなり遠隔操縦される無人移動体と、
通信衛星を介して前記後方車両を遠隔操縦し、かつ後方車両を介して前記前方車両を間接的に遠隔操縦する遠隔操縦装置と、を準備し、
前記前方車両と前記後方車両は、互いに制御信号を通信する無線通信装置と、位置補正用の静止衛星からの補正信号を受信して自己位置を検出するDGPS受信機とを有しており、
前記後方車両は、さらに前記通信衛星を介して前記遠隔操縦装置と前記制御信号を通信する衛星通信装置を有し、
前記遠隔操縦装置により、前記前方車両による前記補正信号の受信途絶により、後方車両と遠隔操縦装置との通信を維持したまま、前記後方車両による前記通信衛星との通信途絶位置を予測する、ことを特徴とする遠隔操縦方法。
【請求項5】
前記位置補正用の静止衛星は、DGPSのSBAS方式であるMTSAT1衛星とMTSAT2衛星であり、
前記前方車両による前記MTSAT1衛星と前記MTSAT2衛星の受信途絶位置間の水平距離と、前記前方車両の進行方位とから、前記通信衛星との通信途絶位置を算出する、ことを特徴とする請求項4に記載の遠隔操縦方法。
【請求項6】
通信衛星と無線通信装置を介して前方車両を遠隔操縦し、
前記前方車両による前記補正信号の受信が再確立された後、前記通信衛星との通信途絶位置から前記補正信号の受信の再確立位置までの前方車両の軌跡を辿って後方車両を移動させる、ことを特徴とする請求項4に記載の遠隔操縦方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人移動体の遠隔操縦システムと遠隔操縦方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車両にレーザ装置(例えば、レーザレンジファインダ)を搭載し、前方の路面や障害物を検出して自律走行又は半自律走行を行う無人移動体が既に開示されている(例えば、特許文献1)。
また、特許文献2、3は、本発明に関連する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−106576号公報
【特許文献2】特許第4255777号公報
【特許文献3】特許第3567167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
山間部或いは被災地等、地上インフラを利用できない地域等における無人移動体の遠隔操縦は、衛星通信装置を用いて行う必要がある。
しかし、衛星通信装置を備えた無人移動体が遮蔽物(例えばビル等)による通信途絶箇所に入ると、衛星通信装置を用いた遠隔操縦は不可能となる。
【0005】
かかる通信途絶箇所がある場合に、無人移動体の遠隔操縦を継続させるためには、以下の3方式が考えられる。
(1)先導役としての前方車両と後方車両をペア構成とし、通信途絶が想定される箇所では、一方が衛星通信を維持した状態で、相互に電波を中継する。
(2)後方車両が常に前方車両の通信中継を行う。後方車両が通信途絶箇所を通過する際には、前方車両の軌跡を自律的に辿ることにより通過する。
(3)自ら搭載するセンサで通信途絶箇所を事前に予測し、通信途絶箇所を回避して通過しない。
【0006】
(1)の方式の場合、衛星通信装置を両車両に搭載する必要がある。しかし、衛星通信装置は、高価で重く大きいため、制約が大きい。
(2)の方式の場合は、通信途絶箇所が分からない後方車両の遠隔操縦が突然できなくなる。この場合、遠隔操縦ができない、無人移動体は自律走行可能でない限り、走行できなくなる。しかし、無人移動体の自律走行は、現時点で未だに確立されておらず、実用化までに多くの技術課題がある。
(3)の方式の場合、事前に通信途絶箇所を予測する手段として、車両に搭載したレーザセンサによる周囲の地形のモデル化と電波伝搬シミュレーションによる電波伝搬予測法が知られている(例えば、特許文献2)。
また、車両に搭載したカメラ画像の信号処理による衛星通信障害予測により通信途絶領域を推測する手段も知られている(例えば、特許文献3)。
しかし特許文献2、3の手段は、いずれも、車両搭載センサ(カメラやレーザ装置)による信号処理が、対象物(例えば障害物)までの距離、天候、昼夜等の影響を受けやすく、誤検知や信号処理の困難性により遠隔操縦不能となる。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、(1)高価で重く大きい衛星通信装置を全車両に搭載する必要がなく、(2)自律走行ができない無人移動体の遠隔操縦が可能であり、(3)対象物までの距離、天候、昼夜等の影響を受けることなく、通信途絶箇所を回避又は通過させることができる遠隔操縦システムと遠隔操縦方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、前方車両とその後方を所定距離以上離れて走行する後方車両とからなり遠隔操縦される無人移動体と、
通信衛星を介して前記後方車両を遠隔操縦し、かつ後方車両を介して前記前方車両を間接的に遠隔操縦する遠隔操縦装置と、を備え、
前記前方車両と前記後方車両は、互いに制御信号を通信する無線通信装置と、位置補正用の静止衛星からの補正信号を受信して自己位置を検出するDGPS受信機とを有しており、
前記後方車両は、さらに前記通信衛星を介して前記遠隔操縦装置と前記制御信号を通信する衛星通信装置を有し、
前記遠隔操縦装置は、前記前方車両による前記補正信号の受信途絶により、後方車両と遠隔操縦装置との通信を維持したまま、前記後方車両による前記通信衛星との通信途絶位置を予測する予測装置を有する、ことを特徴とする遠隔操縦システムが提供される。
【0009】
前記位置補正用の静止衛星は、DGPSのSBAS方式であるMTSAT1衛星とMTSAT2衛星であり、
前記予測装置は、前記前方車両による前記MTSAT1衛星と前記MTSAT2衛星の受信途絶位置間の水平距離と、前記前方車両の進行方位とから、前記通信衛星との通信途絶位置を算出する。
【0010】
前記後方車両は、前方車両による前記補正信号の受信が再確立された後、前記通信衛星との通信途絶位置から前記補正信号の受信の再確立位置までの前方車両の軌跡を辿って移動する軌跡追従機能を有する。
【0011】
また、本発明によれば、前方車両とその後方を所定距離以上離れて走行する後方車両とからなり遠隔操縦される無人移動体と、
通信衛星を介して前記後方車両を遠隔操縦し、かつ後方車両を介して前記前方車両を間接的に遠隔操縦する遠隔操縦装置と、を準備し、
前記前方車両と前記後方車両は、互いに制御信号を通信する無線通信装置と、位置補正用の静止衛星からの補正信号を受信して自己位置を検出するDGPS受信機とを有しており、
前記後方車両は、さらに前記通信衛星を介して前記遠隔操縦装置と前記制御信号を通信する衛星通信装置を有し、
前記遠隔操縦装置により、前記前方車両による前記補正信号の受信途絶により、後方車両と遠隔操縦装置との通信を維持したまま、前記後方車両による前記通信衛星との通信途絶位置を予測する、ことを特徴とする遠隔操縦方法が提供される。
【0012】
前記位置補正用の静止衛星は、DGPSのSBAS方式であるMTSAT1衛星とMTSAT2衛星であり、
前記前方車両による前記MTSAT1衛星と前記MTSAT2衛星の受信途絶位置間の水平距離と、前記前方車両の進行方位とから、前記通信衛星との通信途絶位置を算出する。
【0013】
通信衛星と無線通信装置を介して前方車両を遠隔操縦し、
前記前方車両による前記補正信号の受信が再確立された後、前記通信衛星との通信途絶位置から前記補正信号の受信の再確立位置までの前方車両の軌跡を辿って後方車両を移動させる。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明の装置と方法によれば、後方車両が、通信衛星を介して遠隔操縦装置と制御信号を通信する衛星通信装置を有しているので、遠隔操縦装置により、通信衛星を介して後方車両を遠隔操縦することができる。
また、前方車両と後方車両は、互いに制御信号を通信する無線通信装置を有しているので、遠隔操縦装置により、通信衛星と後方車両の無線通信装置を介して前方車両を遠隔操縦することができる。
従って、衛星通信装置を全車両に搭載する必要がなく、かつ遠隔操縦装置により、自律走行ができない2台の無人移動体(前方車両と後方車両)の遠隔操縦が可能である。
【0015】
また、前方車両は、位置補正用の静止衛星からの補正信号を受信して自己位置を検出するDGPS受信機を有しているので、この補正信号の受信途絶を検出し、無線通信装置を介して後方車両に補正信号の受信途絶を通信することができる。
また、前方車両が補正信号の受信途絶を検出しても、後方車両は、前方車両の後方を所定距離以上離れて走行するので、補正用の静止衛星からの補正信号を受信して自己位置を精度よく検出することができる。
【0016】
さらに、前方車両による補正信号の受信途絶の位置において、後方車両と遠隔操縦装置との通信衛星による通信は維持されているので、遠隔操縦装置は、後方車両と遠隔操縦装置との通信を維持したまま、後方車両による通信衛星との通信途絶位置を予測することができる。
【0017】
従って、通信衛星を介した衛星通信ができるかぎり、対象物までの距離、天候、昼夜等の影響を受けることなく、通信途絶箇所を予測し、前方車両と後方車両を遠隔制御してこの箇所を回避又は通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による遠隔操縦システムの全体構成図である。
図2】無人移動体の構成図である。
図3】無人移動体の制御機器のブロック図である。
図4】予測装置により通信途絶位置を予測する方法の説明図である。
図5】本発明による遠隔操縦方法を示す全体フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明による遠隔操縦システムの全体構成図である。
この図において、本発明の遠隔操縦システムは、前方車両100aと後方車両100bとからなり遠隔操縦される無人移動体100と、遠隔操縦装置120と、を備える。遠隔操縦装置120は、通信衛星Sを介して後方車両100bを遠隔操縦し、かつ後方車両100bを介して前記前方車両100aを間接的に遠隔操縦する。
後方車両100bは、前方車両100aの後方を所定距離以上離れて走行する。「所定距離」は、前方車両100aが位置補正用の静止衛星Tからの補正信号の受信途絶を検出した際に、後方車両100bが通信衛星Sを介して遠隔操縦装置120との通信を維持できる距離に設定する。
この距離は、例えば後述する水平距離Lであるが、これに限定されず任意に設定することができる。
後方車両100bの走行は、前方車両100aの軌跡を辿る追従であるのが好ましいが、これに限定されず任意に走行することができる。
【0021】
通信衛星Sは、好ましくはJCSAT(登録商標)等の静止衛星である。JCSATとは日本を通信範囲に含む通信衛星である。
【0022】
図1において、前方車両100aと後方車両100bは、互いに制御信号を通信する無線通信装置102と、位置補正用の静止衛星Tからの補正信号を受信して自己位置を検出するDGPS受信機104とを有している。
静止衛星Tからの補正信号とは、GPSの誤差補正データ(ディファレンシャル補正)である。
【0023】
位置補正用の静止衛星Tは、好ましくはDGPSのSBAS方式であるMTSAT1衛星とMTSAT2衛星である。
【0024】
MTSAT1衛星とMTSAT2衛星は、日本が打ち上げた運輸多目的静止衛星であり、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)による測位精度を補強するSBAS方式(Satellite Based Augmentation System)を用い、GPSの誤差補正データ(ディファレンシャル補正)を提供している。
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)は、米国が運用する衛星航法システムである。GPS受信機は、GPS衛星からの電波を使って、受信機とGPS衛星との間の距離を測定し、位置を計算する。
DGPS(ディファレンシャルGPS)は、MTSAT1衛星とMTSAT2衛星の誤差補正データ(ディファレンシャル補正)を用いて、GPS受信機の精度を高めたシステムである。
【0025】
後方車両100bは、さらに通信衛星Sを介して遠隔操縦装置120と制御信号を通信する衛星通信装置106を有する。
遠隔操縦装置120は、例えばコンピュータ(PC)であり、無人移動体100を遠隔操縦するための表示装置、キーボード、操舵レバー(ジョイスティック等)を有する。
遠隔操縦装置120は、さらに予測装置122を有する。予測装置122は前方車両100aによる補正信号(MTSAT1衛星とMTSAT2衛星の誤差補正データ)の受信途絶により、後方車両100bと遠隔操縦装置120との通信を維持したまま、後方車両100bによる通信衛星Sとの通信途絶位置Cを予測する。
【0026】
図2は、無人移動体100の構成図であり、図3は、無人移動体100の制御機器のブロック図である。図2図3において、破線で示すものは、後方車両100bのみが有する。その他は共通である。
以下、初めに前方車両100aと後方車両100bの共通部分を説明する。
【0027】
図2図3において、上述した無線通信装置102は、アンテナ12と無線LAN13からなり、前方車両100aと後方車両100bの間で互いに制御信号を通信する。なおこの制御信号は、通信衛星Sを介して後方車両100bと遠隔操縦装置120との間でも双方向に通信される。
【0028】
前方車両100aと後方車両100bは、さらに、車両制御用コンピュータ10、操縦用カメラ14、及び入出力回路15を有する。
【0029】
図3において、車両制御用コンピュータ10の入力側には、アンテナ12と接続する無線LAN13及び操縦用カメラ14が入出力回路15を介して接続されている。さらに、位置情報取得用のDGPS受信機104、衛星通信装置106、姿勢制御用のバーチカルジャイロ17、及び移動速度測定用の車速パルス18がシリアル回線を介して車両制御用コンピュータ10の入力側に接続されている。
【0030】
図3において、車両制御用コンピュータ10の出力側には、モータドライバ21を介して操舵用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23が接続されており、これらのアクチュエータ22,23と車輪とで駆動ユニット20を構成している。
【0031】
車両制御用コンピュータ10は、DGPS受信機104やバーチカルジャイロ17で取得した各種情報をLAN11、無線LAN13及びアンテナ12を介して遠隔操縦装置120に送信する機能を有している。
車両制御用コンピュータ10は、さらに遠隔操縦装置120から送信される操作情報に基づいて、モータドライバ21を介して操舵用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23を作動、停止させる機能を有している。
【0032】
図3において、前方車両100aと後方車両100bは、さらに、ステレオカメラ32とレーザセンサ34を有する。
ステレオカメラ32は、遠距離で且つ広角情報取得に適した例えば1対のカメラである。またレーザセンサ34は、近距離情報取得に適した例えばレーザレンジファインダである。ステレオカメラ32とレーザセンサ34は、LAN11を介して車両制御用コンピュータ10に接続されている。
【0033】
図2図3において、後方車両100bは、さらに破線で示す自律制御用コンピュータ30を備える。なお、前方車両100aも、自律制御用コンピュータ30を備えることが好ましい。
自律制御用コンピュータ30は、LAN11を介して車両制御用コンピュータ10に接続されている。
【0034】
自律制御用コンピュータ30は、ステレオカメラ32とレーザセンサ34により取得した近距離情報及び遠距離情報に基づいて、操舵用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23を作動させて可能な範囲で無人移動体100(前方車両100a又は後方車両100b)を自律走行させる。
【0035】
なお、自律制御用コンピュータ30による自律走行は、少なくとも軌跡追従機能を有する。すなわち、後方車両100bは、軌跡追従機能を有する。
この軌跡追従機能により、後方車両100bは、前方車両100aによる補正信号の受信が再確立された後、通信衛星Sとの通信途絶位置Cから補正信号の受信の再確立位置(図示せず)までの前方車両100aの軌跡を辿って移動する。
【0036】
図4は、予測装置122により通信途絶位置Cを予測する方法の説明図であり、2台の無人移動体100が走行する進行方向の平面図を示している。
この図に示すように、前方車両100aが先行し、後方車両100bは前方車両100aから所定距離以上離れて走行する。好ましくは、後方車両100bは、前方車両100aの走行軌跡を辿って追従する。
【0037】
図4において、前方車両100aの進行に伴い、DGPS状態としてMTSAT1衛星、MTSAT2衛星の信号が途絶えた地点(受信途絶位置)をそれぞれ地点B,Aとする。この両点間の水平距離Lと、既知である衛星の経度情報より、衛星通信を行う後方車両100bの衛星通信が途切れる通信途絶位置Cを数1の式(1)〜(5)により求める。
【0038】
【数1】
【0039】
ここでφAは、MTSAT1衛星の経度(真北からの角度)、φBは、MTSAT2衛星の経度(真北からの角度)、φCは、通信衛星(JCSAT等)の経度(真北からの角度)であり、いずれも既知の一定値である。
また、δは、前方車両100aの北方向(真北)に対する進行方位であり、DGPS受信機104からリアルタイムに得られる。
この図において、Oは衛星通信及びMTSAT1衛星、MTSAT2衛星に対する遮蔽点の平面位置である。
【0040】
数1において、aを角度AOB、bを角度BOC、pを点OA間の距離、qを点OB間の距離、rを点OC間の距離、Lを点AB間の水平距離、Xを点BC間の距離とする。
【0041】
正弦定理より、式(1)(2)が得られ、三角形の定理より、式(3)(4)が得られる。
また、式(1)〜(4)から、式(5)が導かれる。
【0042】
従って、予測装置122により、前方車両100aによるMTSAT1衛星とMTSAT2衛星の受信途絶位置間の水平距離Lと、前方車両100aの進行方位δとから、通信衛星Sとの通信途絶位置Cを算出することができる。
【0043】
なお、この図は、2台の無人移動体100が北方向に向かっている場合を示しているが、各点の位置関係は、北方向以外の場合でも同じである。
従って、前方車両100aと後方車両100bの間隔は、北方向に向かう場合は、上記距離L以上離れるのが好ましく、南方向に向かう場合は、距離L以下であってもよい。
実際問題としては、前方車両100aのDGPS状態が途絶える地点A,Bを知るだけでも、衛星通信途絶に備えた制御の準備を始められるため、実運用上のメリットは大きい。
【0044】
図5は、本発明による遠隔操縦方法を示す全体フロー図である。
この図において、本発明の遠隔操縦方法は、S1〜S6の各ステップからなる。
無人移動体100は、上述したように、前方車両100aとその後方を所定距離以上離れて走行する後方車両100bとからなり、遠隔操縦装置120により遠隔操縦される。
遠隔操縦装置120は、通信衛星Sを介して後方車両100bを遠隔操縦し、かつ後方車両100bを介して前記前方車両100aを間接的に遠隔操縦する。
【0045】
後方車両100bは、通信衛星Sを介して遠隔操縦装置120と制御信号を通信する衛星通信装置106を有しており、ステップS1において、遠隔操縦装置120により、通信衛星Sを介して後方車両100bを遠隔操縦する。
また、前方車両100aと後方車両100bは、互いに制御信号を通信する無線通信装置102を有しており、ステップS2において、遠隔操縦装置120により、通信衛星Sと無線通信装置102を介して前方車両100aを遠隔操縦する。
なお、ステップS1とステップS2の順序は逆でもよく、同時であってもよい。
【0046】
また、前方車両100aは、位置補正用の静止衛星Tからの補正信号を受信して自己位置を検出するDGPS受信機104を有しており、ステップS3において、前方車両100aは、補正信号の受信途絶位置A,Bを検出し、通信衛星Sと無線通信装置102を介して遠隔操縦装置120に通信する。
ステップS3における位置補正用の静止衛星Tは、DGPSのSBAS方式であるMTSAT1衛星とMTSAT2衛星である。従って、補正信号の受信途絶位置は、上述したA点とB点である。
【0047】
遠隔操縦装置120は、ステップS4において、前方車両100aによる補正信号の受信途絶により、後方車両100bと遠隔操縦装置120との通信を維持したまま、後方車両100bによる通信衛星Sとの通信途絶位置Cを予測する。
すなわち、ステップS4において、前方車両100aによるMTSAT1衛星とMTSAT2衛星の受信途絶位置A,Bの距離Lと、前方車両100aの進行方位δとから、上述した式(5)により、通信衛星Sとの通信途絶位置Cを算出する。
【0048】
ステップS5において、遠隔操縦装置120は、通信衛星Sと無線通信装置102を介して前方車両100aを遠隔操縦し、前方車両100aによる補正信号の受信が再確立される位置を探索する。
この探索は、通信衛星Sと無線通信装置102を介する遠隔操縦が可能な範囲で、元のコースを戻ってもよく、或いはそのまま前進してもよい。
【0049】
前方車両100aがそのまま前進し、補正信号の受信が再確立される位置を検出した場合には、ステップS6において、通信衛星Sとの通信途絶箇所(通信途絶位置から補正信号の受信の再確立位置まで)の前方車両100aの軌跡を辿って後方車両100bを移動させる。この際、後方車両100bが有する軌跡追従機能を用いる。
なお、後方車両100bの軌跡追従機能は、必須ではなく、これを用いずに、通信途絶箇所を回避してもよい。
以下、ステップS1に戻り、S1〜S6の各ステップを繰り返して走行する。
【0050】
上述した本発明の装置と方法によれば、後方車両100bが、通信衛星Sを介して遠隔操縦装置120と制御信号を通信する衛星通信装置106を有しているので、遠隔操縦装置120により、通信衛星Sを介して後方車両100bを遠隔操縦することができる。
また、前方車両100aと後方車両100bは、互いに制御信号を通信する無線通信装置102を有しているので、遠隔操縦装置120により、通信衛星Sと無線通信装置102を介して前方車両100aを遠隔操縦することができる。
従って、衛星通信装置106を全車両に搭載する必要がなく、かつ遠隔操縦装置120により、自律走行ができない2台の無人移動体100(前方車両100aと後方車両100b)の遠隔操縦が可能である。
【0051】
また、前方車両100aは、位置補正用の静止衛星Tからの補正信号を受信して自己位置を検出するDGPS受信機104を有しているので、この補正信号の受信途絶を検出し、無線通信装置102を介して後方車両100bに補正信号の受信途絶を通信することができる。
また、前方車両100aが補正信号の受信途絶を検出しても、後方車両100bは、前方車両100aの後方を所定距離以上離れて走行するので、補正用の静止衛星Tからの補正信号を受信して自己位置を精度よく検出することができる。
【0052】
さらに、前方車両100aによる補正信号の受信途絶の位置において、後方車両100bと遠隔操縦装置120との通信衛星Sによる通信は維持されているので、遠隔操縦装置120は、後方車両100bと遠隔操縦装置120との通信を維持したまま、通信衛星Sとの通信途絶位置Cを予測することができる。
【0053】
従って、通信衛星を介した衛星通信ができるかぎり、対象物までの距離、天候、昼夜等の影響を受けることなく、通信途絶箇所を予測し、前方車両100aと後方車両100bを遠隔制御してこの箇所を回避又は通過させることができる。
【0054】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
A MTSAT2衛星の信号が途絶えた地点(受信途絶位置)、
B MTSAT1衛星の信号が途絶えた地点(受信途絶位置)、
C 後方車両の衛星通信が途切れる地点(通信途絶位置)、
S 通信衛星、T 位置補正用の静止衛星、
φA MTSAT1衛星の経度、φB MTSAT2衛星の経度、
φC 通信衛星の経度、δ 前方車両の北に対する進行方位、
O 衛星通信及びMTSAT1衛星、MTSAT2衛星に対する遮蔽点の平面位置、
a 角度AOB、b 角度BOC、p 点OA間の距離、
q 点OB間の距離、r 点OC間の距離、L 点AB間の水平距離、
X 点BC間の距離、10 車両制御用コンピュータ、11 LAN、
12 アンテナ、13 無線LAN、14 操縦用カメラ、
15 入出力回路、17 バーチカルジャイロ、18 車速パルス、
20 駆動ユニット、21 モータドライバ、
22 操舵用アクチュエータ、
23 ブレーキ/アクセル用アクチュエータ、
30 自律制御用コンピュータ、32 ステレオカメラ、
34 レーザセンサ、100 無人移動体、100a 前方車両、
100b 後方車両、102 無線通信装置、104 DGPS受信機、
106 衛星通信装置、120 遠隔操縦装置、122 予測装置
図1
図2
図3
図4
図5