(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366202
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】小道具
(51)【国際特許分類】
A41D 27/08 20060101AFI20180723BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20180723BHJP
A41D 27/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
A41D27/08 C
A41D1/02 Z
A41D27/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-172346(P2016-172346)
(22)【出願日】2016年9月3日
(65)【公開番号】特開2018-35483(P2018-35483A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2016年9月26日
【審判番号】不服2017-13620(P2017-13620/J1)
【審判請求日】2017年9月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509216267
【氏名又は名称】株式会社エース・マーチャンダイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 竜次
【合議体】
【審判長】
黒瀬 雅一
【審判官】
藤本 義仁
【審判官】
吉村 尚
(56)【参考文献】
【文献】
吉田照美 飛べ!サルバドール 第740回 2月1日、[online]、株式会社文化放送、2016年 2月 1日、吉田照美 飛べ!サルバドール、[2017年2月2日検索]、URL:http://www.joqr.co.jp/saru/2016/02/post−1425.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63J 7/00,21/00
A41B 1/00-7/12
A41D 1/00,1/18-1/22,27/00-27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルオーバー型の上衣の前身頃の裏地に人物の顔をかたどった像が前記上衣の上下方向に対して倒立状態で設けられ、前記前身頃の表地に、前記像が有する目の位置を示す目印が設けられ、
前記目印は前記像の目の並び方向に延び、且つ前記像の目の並びの位置と合致した位置に設けられており、前記目印の両端はそれぞれ前記像の輪郭と対応する位置にあることを特徴とする小道具。
【請求項2】
前記像は絵又は写真から成ることを特徴とする請求項1に記載の小道具。
【請求項3】
前記上衣がTシャツ、トレーナー、スウェット及びセーターのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の小道具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬時に顔を別人の顔に変化させて観衆を笑わせ或いは驚かせる小道具に関する。
【背景技術】
【0002】
観衆に対して芸を行う者等が、自分の顔を瞬時に別人の顔等に変えることで観衆を笑わせ或いは驚かせる芸を披露する場合がある。この場合には、従来、他人の顔等をかたどった絵や写真等から作成したお面(例えば、特許文献1)を用意しておき、これを予め手に持っていたり近くにおいておいたりして、必要なときに取り出すようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−139593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記お面のような小道具を手にすることなく顔を変化させることができれば、観衆に更に意外性を感じさせて、より一層興趣を高めることができる。
【0005】
そこで本発明は、自分の顔を瞬時に別人の顔に変えてみせるにおいて、観衆の興趣をより一層高めることができる小道具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の小道具では、プルオーバー型の上衣の前身頃の裏地に人物の顔をかたどった像が前記上衣の上下方向に対して倒立状態で設けられ、前記前身頃の表地に、前記像が有する目の位置を示す目印が設けられ、前記目印は前記像の目の並び方向に延び
、且つ前記像の目の並びの位置と合致した位置に設けられており、前記目印の両端はそれぞれ前記像の輪郭と対応する位置にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自分の顔を瞬時に別人の顔に変えてみせるにおいて、観衆の興趣をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態における小道具の正面図
【
図2】本発明の一実施の形態における小道具の上衣の前身頃を(a)表地側から見た図(b)裏地側から見た図
【
図3】本発明の一実施の形態における小道具を使用者が着用している状態の正面図
【
図4】本発明の一実施の形態における小道具の使用状態を示す正面図
【
図5】本発明の一実施の形態における小道具の背面図
【
図6】本発明の一実施の形態における小道具を使用者が着用している状態の背面図
【
図7】本発明の一実施の形態における小道具の使用状態を示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態における小道具1を示している。小道具1は、人が通常において着用するプルオーバー型(いわゆるかぶり型)の上衣10をベースとしている。上衣10は前身頃11、後身頃12、襟部13等を有していればよいが、更に左右の長袖部14,14を備えた長袖型の上衣であってもよい。本実施の形態では、上衣10が長袖型の上衣の一例であるトレーナーであるとして説明する。
【0010】
図1及び
図2(a),(b)において、小道具1は、上衣10の前身頃11の裏地(前身頃裏地11Bと称する)に、人物の顔の正面の像(正面像21と称する)を上衣10の上下方向に対して倒立状態で備えている。ここで、
図2(b)は、上衣10の前身頃11を裏地(前身頃裏地11B側)から見た図であり、表裏をそっくり裏返した上衣10の前身頃11を正面から見た図に相当する。
【0011】
正面像21は絵や写真等から成るものとし、上衣10の前身頃裏地11Bに直接描かれ、貼り付けられ、プリントされ、或いは縫い付けられている。正面像21を描き、貼り付け、プリントし、或いは縫い付けた布地等が前身頃裏地11Bに貼り付けられ、縫い付けられたりしているのであってもよい。正面像21が設けられる具体的な位置としては、例えば、前身頃裏地11Bのうち、上衣10に形成された左右の腕を通すための孔の下端、すなわち、上衣10の左右の袖ぐりの下端14G同士を結ぶラインLを上衣10の上下に跨ぐ(跨いで広がった)位置とする(
図1)。
【0012】
図1において、上衣10の前身頃11の表地(前身頃表地11Aと称する)には、正面像21が有する左右の目21Eの位置を示す目印Mkが設けられている。ここでは
図1に示すように、目印Mkとして複数の星が横一列に並んで描かれており、この星の横一列の並びが、正面像21が有する左右の目21Eの並びの位置を表すものとなっている(
図2(a),(b))。目印Mkは、前身頃表地11Aの、正面像21が有する左右の目21Eの並びの位置と合致した位置に設けられていることが好ましいが、目印Mkは正面像21が有する目21Eの位置が分かればよく、必ずしも左右の目21Eの並びの位置に正確に合致するように設けられていなくてもよい。
【0013】
図3に示すように、小道具1を使用する者(以下、使用者30と称する)は、上衣10の襟部13に頭部31及び頸部32を通すとともに左右の長袖部14,14に左右の腕33,33を通すことによって、上衣10を着用する。使用者30が上衣10を着用すると、使用者30の胴部34の前方に前身頃11が位置し、胴部34の後方に後身頃12が位置する。そして、この状態から、使用者30が左右の手35,35で前身頃11の裾部11sをつかみ、そのうえで、前身頃表地11Aに設けられた目印Mkを自分の目に合わせるように裾部11sを勢いよく引き上げて左右の腋36,36を露出させるようにすると(
図4)、前身頃11と後身頃12はそれぞれ裏返って、使用者30の頭部31が上衣10により覆われるとともに、胴部34が露出した状態となる。この一連の動作は、人が通常、着用していた上衣を脱ぐ際の動作と同じである。
【0014】
上記のように、使用者30が上衣10の裾部11sを引き上げて左右の腋36,36が露出し、前身頃11及び後身頃12がそれぞれ裏返ると、前身頃裏地11Bに備えられた正面像21が、使用者30の頭部31の前方の位置(使用者30の顔の前)に、使用者30から見た正立状態で現れる(
図4)。このため、使用者30が上記一連の動作を行うと、使用者30の顔が瞬時に別人の顔に変化したように見え、観衆は面白味や驚きを感じて興趣を覚える。
【0015】
ここで、上衣10は、通常において人が身に着けるものであるから、これを着て観衆の前に現れても不自然でないうえ、使用者30が上衣10を脱ぐ動作を始めたとしても、観衆はその行為が顔を他人の顔に変えてみせる行為とは思わない。このため、観衆は意表をつかれ、意外性を感じて、より興趣を覚える。
【0016】
上記の一連の動作において、使用者30からすれば前身頃裏地11Bに設けられた正面像21は一切見えないのであるが、使用者30から見ることのできる前身頃表地11Aには、正面像21が有する目21Eの位置を示す目印Mkが設けられているので、使用者30は目印Mkを自分の目に当てる感覚で裾部11sを引き上げることで、正面像21を自分の胴部34に対する自然な位置(使用者30の顔と置き換わった位置)に位置させることができる。
【0017】
また、本実施の形態における小道具1では、更に、
図5及び
図6に示すように、後身頃12の裏地(後身頃裏地12Bと称する)に、正面像21に描かれた人物の後頭部をかたどった絵又は写真から成る像(背面像22と称する)が上衣10の上下方向に対して倒立状態で設けられていてもよい。具体的には、背面像22は、正面像21の位置に対応させて、上衣10の左右の袖ぐりの下端14G同士を結ぶラインLを上衣10の上下に跨ぐ位置に設けられるようにする(
図5)。
【0018】
このようにすれば、使用者30が裾部11sを引き上げて左右の腋36,36を露出させると(
図7)、前身頃11が使用者30の頭部31の前方に位置するとともに後身頃12が使用者30の頭部31の後方に位置し、後身頃裏地12Bに備えらえた背面像22が、使用者30の頭部31の後方に、使用者30から見た正立状態で現れる。この状態では、使用者30の前方に正面像21が現れるとともに、頭部31の後方に背面像22が現れるので、使用者30が正面側だけでなく背面側も観衆に見せれば、観衆の興趣は更に高められる。
【0019】
以上説明したように、本実施の形態における小道具1では、プルオーバー型の上衣10の前身頃裏地11Bに人物の顔をかたどった絵又は写真から成る正面像21が上衣10の上下方向に対して倒立状態で設けられるとともに、前身頃表地11Aに、正面像21が有する目21Eの位置を示す目印Mkが設けられており、使用者30が、目印Mkを自分の目に合わせるように裾部11sを引き上げて左右の腋36,36を露出させる動作(上衣10を脱ぐ動作)を行うと、上衣10の前身頃11が裏返った状態で使用者30の頭部31の前方に位置し、使用者30の顔の前に、使用者30とは別人の顔等の正面像21が現れる。このため観衆は、使用者30の顔が突然他人の顔に変化したことに対して興趣を覚えるうえ、上衣10を脱ぐという行為から顔の変化が生じることにも意外性を感じて更なる興趣を覚える。このように本実施の形態における小道具1によれば、自分の顔を瞬時に別人の顔に変えてみせるにおいて、観衆の興趣をより一層高めることができる。
【0020】
これまで本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態では、上衣10がトレーナーであるとして説明したが、上衣10はプルオーバー型の上衣であればよい。従って、長袖部14,14を有する他の上衣10、例えばスウェットやセーター等であってもよいし、長袖部14,14の代わりに半袖部を有したTシャツや、袖のないタンクトップシャツ等であってもよい。但し、使用者30が上衣10を着用した状態において、上衣10の裏地側に何か(ここでは正面像21や背面像22)が備えられていることが観衆から見えることは好ましくないため、上衣10には裏側が透けて見えない生地のものを採用するようにする。或いは上衣10の表地に別途布地等を縫い付けておいたり(この場合は布地等の表面に目印Mkを設けるようにする)、正面像21や背面像22とは全く無関係の図柄や写真等をプリントしておいたりしてもよい。
【0021】
また、上述の実施の形態では、正面像21に描かれるのは人物の顔であるとしていたが、その他、動物やキャラクター等の顔とすることもできる。すなわち小道具1は、プルオーバー型の上衣10の前身頃裏地11Bに、人物、動物及びキャラクターのうちのいずれかの顔をかたどった像(正面像21)が上衣10の上下方向に対して倒立状態で設けられていればよい。
【0022】
また、上述の実施の形態では、上衣10の前身頃裏地11B(及び後身頃裏地12B)のうち左右の袖ぐりの下端14G同士を結ぶラインLを跨ぐ位置に正面像21(及び背面像22)が設けられるようになっていたが、正面像21は前身頃裏地11Bに(背面像22は後身頃裏地12Bに)設けられていればよく、その位置は特に限定されない。
【0023】
また、上述の実施の形態では、目印Mkとして複数の星が横一列に並んだデザインとなっていたが、これは一例に過ぎない。すなわち、目印Mkの星の数は幾つでもよく、更には星でなくてもよく、他の図形や文字当であっても構わない。横方向延びた直線や枠の図形等であってもよい。目印Mkは前身頃11を前身頃表地側から見たときにデザイン感があるものであってもよいし、さりげなく配置されていて特にデザイン感を感じさせないものであってもよい。
【0024】
なお、本発明における上衣の表地及び裏地は相対的なものである。よって、本発明の小道具を販売するとき等において、人物、動物及びキャラクターのうちのいずれかの顔をかたどった像が表地に設けられていたとしても、その上衣の裏表を反転させたときに、その像が、上衣の前身頃の裏地に設けられた状態となるのであれば、その小道具は本発明の範囲に含まれる。
【0025】
また、本発明の小道具は見掛け上、Tシャツ、トレーナー、スウェット及びセーター等の上衣にも見え、また実際、そのような上衣として使用することが可能である。よって、本発明の小道具をTシャツ、トレーナー、スウェット及びセーター等の上衣として販売したとしても、本発明の構成を備えているものは、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
自分の顔を瞬時に別人の顔に変えてみせるにおいて、観衆の興趣をより一層高めることができる小道具を提供する。
【符号の説明】
【0027】
1 小道具
10 上衣
11 前身頃
11A 前身頃表地(表地)
11B 前身頃裏地(裏地)
21 正面像(像)
21E 目
Mk 目印