(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366223
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】半導体チップのピックアップ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20180723BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
H01L21/68 E
H01L21/52 F
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-34344(P2013-34344)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-165302(P2014-165302A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月25日
【審判番号】不服2017-6848(P2017-6848/J1)
【審判請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝美
【合議体】
【審判長】
深沢 正志
【審判官】
河合 俊英
【審判官】
小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−353710(JP,A)
【文献】
特開2010−212509(JP,A)
【文献】
特開2009−188157(JP,A)
【文献】
特開2005−11836(JP,A)
【文献】
特開2010−129588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートに貼り付けられた半導体チップを粘着シートから取り外す半導体チップのピックアップ装置であって、
半導体チップの上面を吸着保持するコレットと、
粘着シートの半導体チップの貼り付けられている面と反対側の面に密着するステージと、
ステージの裏面から粘着シートを吸引する吸引手段と、から構成され、
前記ステージが、半導体チップを粘着シートと接触して支持し、粘着シートを吸引しながら半導体チップとの隙間を可変させる複数の支持ブロックと、粘着シートを吸引する複数の吸引孔を有した吸引面と、から構成され、
前記複数の支持ブロックが並んで配置され、一端の支持ブロックから他端の支持ブロックまで、順次、支持ブロックを連続的に下げる機能を有している半導体チップのピックアップ装置。
【請求項2】
複数の前記支持ブロックに粘着シートを吸着する吸着穴を有した請求項1に記載の半導体チップのピックアップ装置。
【請求項3】
前記コレットが多孔質体からなる請求項2に記載の半導体チップのピックアップ装置。
【請求項4】
複数の前記支持ブロックの周囲に粘着シートを吸引する開口部を有する請求項1に記載の半導体チップのピックアップ装置。
【請求項5】
複数の前記支持ブロックの上面が前記ステージ面よりも高い位置に保持されている請求項1に記載の半導体チップのピックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに貼られた半導体チップを粘着シートから取り外す半導体チップのピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは粘着シートに貼り付けられた状態で、格子状に切断(ダイシング)されている。切断された個片は粘着シートに張り付いた状態で半導体チップとして半導体チップの実装工程に供給されている。実装工程では、まず、半導体チップを粘着シートからはがすために、半導体チップを吸着して粘着シートから引きはがすピックアップ方法が行われている(特許文献1)。また、半導体チップを粘着シートから爪で剥離させながらピックアップして吸引ノズルで保持するものなどがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−118862号公報
【特許文献1】特開2005−197368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、半導体チップの薄板化が進んでおり、欠けや割れが起きやすい薄板化された半導体チップに、過度のストレスを加えることなく粘着シートから取り外すことが求められている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、粘着シートに貼り付けられた半導体チップにダメージを与えず、確実に粘着シートから取り外すことが出来る半導体チップのピックアップ装置を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
粘着シートに貼り付けられた半導体チップを粘着シートから取り外す半導体チップのピックアップ装置であって、
半導体チップの上面を吸着保持するコレットと、
粘着シートの半導体チップの貼り付けられている面と反対側の面に密着するステージと、
ステージの裏面から粘着シートを吸引する吸引手段と、から構成され、
前記ステージが、半導体チップを粘着シートと接触して支持し、粘着シートを吸引しながら半導体チップとの隙間を可変させる複数の支持ブロックと、粘着シートを吸引する複数の吸引孔を有した吸引面と、から構成され
、
前記複数の支持ブロックが並んで配置され、一端の支持ブロックから他端の支持ブロックまで、順次、支持ブロックを連続的に下げる機能を有している半導体チップのピックアップ装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
複数の前記支持ブロックに粘着シートを吸着する吸着穴を有した請求項1に記載の半導体チップのピックアップ装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
前
記コレットが多孔質体からなる請求項2に記載の半導体チップのピックアップ装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、
複数の前記支持ブロックの周囲に粘着シートを吸引する開口部を有する請求項1に記載の半導体チップのピックアップ装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
複数の前記支持ブロックの上面が前記ステージ面よりも高い位置に保持されている請求項1に記載の半導体チップのピックアップ装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、半導体チップがコレットに吸着保持される。ステージが半導体チップの貼り付けられている粘着シートに密着している。ステージの半導体チップを支持している複数の支持ブロックが、粘着シートを吸引しながら半導体チップとの間隔を可変させる。そのため、半導体チップの裏面と粘着シートの間に空隙が発生し、粘着シートに貼り付けられた半導体チップにダメージを与えず、確実に粘着シートから取り外すことが出来る。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、複数の支持ブロックに粘着シートを吸着する吸着穴を有しているので、粘着シートに貼り付けられた半導体チップにダメージを与えず、確実に粘着シートから取り外すことが出来る。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば
、コレットが多孔質体であるので、半導体チップを全面吸着することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、複数の支持ブロックの周囲に粘着シートを吸引する開口部を有しているので、粘着シートを剥離するきっかけを作ることが出来る。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、複数の前記支持ブロックの上面が前記ステージ面よりも高い位置に保持されているので、粘着シートに貼り付けられた半導体チップにダメージを与えず、確実に粘着シートから取り外すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】半導体チップを粘着シートから取り外す動作を説明する側面図である。
【
図5】半導体チップを粘着シートから取り外す動作を説明する側面図である。
【
図6】半導体チップを粘着シートから取り外す動作を説明する側面図である。
【
図7】半導体チップを粘着シートから取り外す動作を説明する側面図である。
【
図8】半導体チップを粘着シートから取り外す動作を説明する側面図である。
【
図9】貫通電極が設けられ半導体チップを粘着シートから取り外す動作を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明のピックアップ装置1の側面図である。
図1において、左右方向をX軸、前後方向をY軸、X軸とY軸で構成されるXY平面に直交する軸をZ軸(上下方向)、Z軸周りをθ軸とする。
【0018】
ピックアップ装置1は、筐体2と、ステージ6と、コレット20とから構成されている。筐体2は、略円筒形の中空形状をしており、内部が吸引ポンプなどの吸引手段3により真空吸引されている。ステージ6は、吸引面4と支持ブロック5とから構成されている。ステージ6は、筐体2の上部に位置し、半導体チップ10が貼り付けられた粘着シート11を下側から支持している。
【0019】
図2にステージ6の平面図を示す。半導体チップ10の外形も合わせて記載する。複数の半導体チップ10を
図2の様に配置し、引き剥がし対象となる半導体チップ1
0を中央に位置したとき、引き剥がし対象となる半導体チップ10の外周の粘着シート11は吸引面4に支持されている。吸引面4には、複数の吸引孔15が設けられている。個々の吸引孔15は略円形の穴で筐体2の内部を真空引きした際に、真空吸引孔として動作する。吸引面4の中央部には、引き剥がし対象となる半導体チップ10を粘着シート11を介して支持する支持ブロック5が複数列に設けられている。支持ブロック5の配置領域は半導体チップ10の輪郭線に対して約0.5mm内側に入った領域となっている。支持ブロック5と吸引面4との隙間は、開口部5aが形成されている。
【0020】
図3に筐体2のステージ6部分の側面図を示す。吸引面4の内側に位置する支持ブロック5は、上下に移動可能な角形の吸引筒で構成され。支持ブロック5の粘着シート11と接触する面は、筐体2の内部が真空吸引する際に粘着シート11の吸着穴として動作するようになっている。支持ブロック5が下降することにより、粘着シート11が引っ張られるようになっている。
【0021】
なお支持ブロック5の上面をステージ6の上面よりも高い位置に保持されることで、粘着シート11に貼り付けられた半導体チップ10にダメージを与えず、確実に粘着シート11から取り外すことが出来る。
【0022】
次に、半導体チップ10を粘着シート11から取り外す動作を、
図4〜
図8を用いて説明する。
図4は、X軸方向(側面側)から半導体チップ10、粘着シート11,筐体2,ステージ6を参照した図である。以降、
図5〜8の参照方向は同様とする。
【0023】
まず、
図4に示すように、引き剥がし対象となる半導体チップ10の下側にピックアップ装置1を配置する。コレット20が下降し半導体チップ10を吸着する。コレット20は、多孔質の材料で構成されており半導体チップ10を全面吸着出来るようになっている。
【0024】
次に、吸引手段3が動作し
図5に示すように、筐体2の内部が真空引きされる。粘着シート11が吸引面4に密着する。吸引面4と支持ブロック5との間に設けられている開口部5aは、隣り合う半導体チップ10同士の隙間10aと位置が一致している。筐体2の内部が真空引きされることにより、開口部5aからの吸引が開始され半導体チップ10の外周の粘着シート11が筐体2の内部に引っ張られ、半導体チップ10から粘着シート11が剥離するきっかけを作ることになる。
【0025】
次に、
図6に示すように半導体チップ10の端部に位置する支持ブロック5を下降させる。支持ブロック5が粘着シート11を吸着しながら下降し、半導体チップ1から粘着シート11を剥離していく。半導体チップ10はコレット20で吸着されているので、半導体チップ10の高さを保持したまま粘着シート11が剥離されていく。そのため、半導体チップ10への応力が剥離方向のみとなり半導体チップ10へダメージを与えることが無い。特に、半導体チップ10に貫通電極25が設けられている場合、貫通電極25に伴う電極にダメージを与えることが無い。具体的には、
図9に示すように、貫通電極25が設けられた半導体チップ10を、スライダ27を水平移動することによって粘着シート11から剥離させると、スライダ27のエッジ部分27aで、貫通電極25の先端に応力を掛けてしまい、貫通電極25の変形やキズを付けてしまう問題がある。本発明のように、スライダ27を用いること無く粘着シート11を剥離しているので貫通電極25にダメージを与えることが無い。
【0026】
次に、
図7に示すように下降が完了した支持ブロック5の隣の支持ブロック5を下降させる。順次、支持ブロック5を下降させる。支持面5に吸着している粘着シート11が半導体チップ10から剥離していく。
【0027】
次に、
図8に示すようにコレット20を上昇させ半導体チップ10を移載する。
【0028】
以上の動作で、粘着シート11に貼り付けられた半導体チップ10にダメージを与えず、確実に粘着シート11から取り外すことが出来る。
【符号の説明】
【0029】
1 ピックアップ装置
2 筐体
3 吸引手段
4 吸引面
5 支持ブロック
6 ステージ
10 半導体チップ
11 粘着シート
15 吸引孔
20 コレット
25 貫通電極
27 スライダ
5a 開口部
10a 隙間
27a エッジ部分