(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
[接着シート]
本発明の接着シートは、球状アルミナフィラーを含む。
【0028】
球状アルミナフィラーの平均粒径は2μm以上であり、好ましくは3μm以上である。2μm以上であるので、高温での流動性が良好に得られ、優れた埋め込み性が得られる。また、球状アルミナフィラーの平均粒径は9μm以下であり、好ましくは8μm以下である。9μm以下であるので、優れた耐湿リフロー性が得られる。
なお、球状アルミナフィラーの平均粒径は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0029】
球状アルミナフィラーの最大粒径は20μm以下が好ましい。20μm以下であると、接着シートの薄膜化が可能になり、放熱効果も高められる。
【0030】
球状アルミナフィラーの粒度分布において、ピークが2つ以上存在することが好ましい。具体的には、0.2〜0.8μmの粒径範囲に第1のピークが存在し、3〜15μmの粒径範囲に第2のピークが存在することが好ましい。これにより、第2のピークを形成する球状アルミナフィラーの間(隙間)に、第1のピークを形成する球状アルミナフィラーを充填できるため、球状アルミナフィラーを高充填できる。
【0031】
第1のピークの粒径が0.2μm未満であると、接着シートの粘度が高くなり過ぎ、被着体の凹凸に追従できない傾向がある。第1のピークの粒径が0.8μmを超えると、球状アルミナフィラーの高充填化が困難である。
また、第2のピークの粒径が3μm未満であると、球状アルミナフィラーの高充填化が困難である。また、接着シートの粘度が高くなり過ぎ、被着体の凹凸に追従できない傾向がある。第2のピークの粒径が15μmを超えると、接着シートの薄膜化が困難になる。
なお、球状アルミナフィラーの粒度分布は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0032】
第2のピークの粒径/第1のピークの粒径が7〜15であることが好ましい。第1のピークの粒径と第2のピークの粒径が近いと高充填効果が充分に得られないが、第2のピークの粒径/第1のピークの粒径の値が上記範囲であると、高充填効果が充分に得られる。また、接着シートの被着体への凹凸追従性が良好になる。
【0033】
なお、球状アルミナフィラーの粒度分布において、ピークを2つ以上存在させるには、平均粒径の異なる2種以上の球状アルミナフィラーを配合すればよい。
【0034】
球状アルミナフィラーの比表面積は0.8m
2/g以上であり、好ましくは0.9m
2/g以上である。0.8m
2/g以上であるので、良好な凹凸追従性が得られる。また、球状アルミナフィラーの比表面積は8.0m
2/g以下であり、好ましくは7.5m
2/g以下である。8.0m
2/g以下であるので、接着シートの薄膜化が可能になる。
なお、球状アルミナフィラーの比表面積は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0035】
球状アルミナフィラーは、シランカップリング剤により処理(前処理)されたものが好ましい。これにより、球状アルミナフィラーの分散性が良好になり、球状アルミナフィラーの高充填化が可能になる。
【0036】
シランカップリング剤としては特に限定されないが、球状アルミナフィラーを高充填化できるとともに、埋め込み性を一層高められるという理由から、エポキシシラン系シランカップリング剤、ジメチルシラン系シランカップリング剤、メチル系シランカップリング剤、フェニル系シランカップリング剤、フェニルアミン系シランカップリング剤、メタクリルシラン系シランカップリング剤を好適に使用できる。なかでも、球状アルミナフィラーの分散性を高められるとともに、接着シートの流動性を高められるという理由から、エポキシシラン系シランカップリング剤、メタクリルシラン系シランカップリング剤が好ましい。
【0037】
エポキシシラン系シランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。ジメチルシラン系シランカップリング剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが挙げられる。メチル系シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどが挙げられる。フェニル系シランカップリング剤としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
フェニルアミン系シランカップリング剤としては、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。メタクリルシラン系シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0038】
シランカップリング剤により球状アルミナフィラーを処理する方法としては特に限定されず、溶媒中で球状アルミナフィラーとシランカップリング剤を混合する湿式法、気相中で球状アルミナフィラーとシランカップリング剤を処理させる乾式法などが挙げられる。
【0039】
シランカップリング剤の処理量は特に限定されないが、球状アルミナフィラー100重量部に対して、シランカップリング剤を0.05〜5重量部処理することが好ましい。
【0040】
球状アルミナフィラーの含有量は、接着シート100重量部に対して、78重量部以上であり、好ましくは80重量部以上である。78重量部以上であるので、良好な熱伝導性が得られる。また、球状アルミナフィラーの含有量は、88重量部以下であり、好ましくは84重量部以下である。88重量部以下であるので、良好な埋め込み性が得られる。
【0041】
本発明の接着シートは、高分子量成分(A)及び低分子量成分(B)を含む樹脂成分を含む。
【0042】
高分子量成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10000以上であり、より好ましくは200000以上である。10000以上であると、可とう性が得られる。また、高分子量成分(A)の重量平均分子量は、好ましくは2000000以下であり、より好ましくは1500000以下、さらに好ましくは1000000以下である。2000000以下であると、接着シートを高温で低粘度化でき、良好な凹凸埋め込み性が得られる。
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。
【0043】
高分子量成分(A)としては特に限定されないが、ガラス転移温度の調整や、官能基のコントロールが容易であり、一般に広く使用されているという点から、アクリルゴムが好ましい。
【0044】
アクリルゴムとしては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基などが挙げられる。
【0045】
また、重合体(アクリル共重合体)を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸などの様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸などの様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどの様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などの様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0046】
高分子量成分(A)のガラス転移温度は、好ましくは0℃以下、より好ましくは−5℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。0℃以下であると、40〜70℃という比較的低温で被着体へ貼りつけでき、ウェハマウントを容易に行える。なお、高温で被着体へ貼りつける場合、ダイシングフィルムが熱で変形してしまうため、ウェハマウントが難しい。高分子量成分(A)のガラス転移温度は、例えば、−40℃以上である。
【0047】
高分子量成分(A)のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される最大熱吸収ピーク時の温度により得られる。具体的には、測定する試料を示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製の「Q−2000」)を用い、予測される試料のガラス転移温度(予測温度)より約50℃高い温度で10分加熱した後、予測温度より50℃低い温度まで冷却して前処理し、その後、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分にて昇温して吸熱開始点温度を測定し、これをガラス転移温度とする。
【0048】
低分子量成分(B)の重量平均分子量は、好ましくは5000以下であり、より好ましくは3000以下である。5000以下であると、高温で低粘度化し、良好な凹凸埋め込み性が得られる。低分子量成分(B)の重量平均分子量は、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上である。200以上であると、常温での安定性が得られる。
【0049】
低分子量成分(B)としては特に限定されず、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物などの含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてフェノール樹脂が好ましい。
【0050】
エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型などの二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型などのエポキシ樹脂が用いられる。なかでも、室温で液状であり可とう性を付与できるという理由から、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、多官能の硬化樹脂であり、硬化後の架橋密度が高く、接着シートに良好な耐リフロー性を付与できるという理由から、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0051】
液状のビスフェノール型エポキシ樹脂の重量/低分子量成分(B)の重量で表される重量比率は0.1以上が好ましい。0.1以上であると、ダイシング時やピックアップ時に接着シートが割れない程度の柔軟性を付与できる。また、優れた埋め込み性が得られる。また、当該重量比率は0.6以下が好ましい。0.6以下であると、接着シートをダイシングフィルムから良好に剥離でき、良好にピックアップできる。
【0052】
本明細書において、液状とは、25℃において粘度が5000Pa・s未満であることをいう。なお、粘度は、Thermo Scientific社製の型番HAAKE Roto VISCO1を用いて測定できる。
【0053】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレンなどが挙げられる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0054】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、例えば、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0055】
高分子量成分(A)の重量/高分子量成分(A)及び低分子量成分(B)の合計重量で表される重量比率が0.03以上である。0.03以上であるので、柔軟で割れにくい性質を付与できる。また、当該重量比率は、0.25以下であり、好ましくは0.22以下である。0.25以下であるので、高温での流動性が良好に得られ、優れた凹凸の埋め込み性が得られる。
【0056】
樹脂成分の含有量は、接着シート100重量部に対して、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは12重量部以上、さらに好ましくは16重量部以上である。10重量部以上であると、良好な接着シートの成形性、埋め込み性、リフロー信頼性が得られる。また、樹脂成分の含有量は、好ましくは22重量部以下であり、より好ましくは21重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。22重量部以下であると、相対的に球状アルミナフィラーの含有量が多くなり、高い熱伝導性が得られる。
【0057】
本発明の接着シートは硬化触媒を含むことが好ましい。これにより、エポキシ樹脂とフェノール樹脂等の硬化剤との熱硬化を促進できる。硬化触媒としては特に限定されないが、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(商品名;TPP−K)、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリボレート(商品名;TPP−MK)、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン(商品名;TPP−S)などのリン−ホウ素系硬化触媒が挙げられる(いずれも北興化学工業(株)製)。
【0058】
硬化触媒の含有量は適宜設定できるが、樹脂成分100重量部に対して、0.1〜3重量部が好ましい。
【0059】
本発明の接着シートは、前記成分以外にも、接着シート製造に一般に使用される配合剤、例えば、架橋剤などを適宜含有してよい。
【0060】
接着シートの製造方法は特に限定されないが、球状アルミナフィラーと、高分子量成分(A)及び低分子量成分(B)を含む樹脂成分と、必要に応じて他の配合剤とを含有する接着剤組成物溶液を作製する工程、接着剤組成物溶液をろ過して、ろ液を得る工程、及びろ液を基材セパレータ上に塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥させる工程を含む方法が好ましい。
【0061】
接着剤組成物溶液に用いる溶媒としては特に限定されないが、前記各成分を均一に溶解、混練又は分散できる有機溶媒が好ましい。例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0062】
ろ過に用いるろ材の目開きは20μm以下が好ましい。これにより、球状アルミナフィラーの最大粒径は20μm以下とすることができ、接着シートの厚みを30μm以下とすることができる。
【0063】
基材セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤などの剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙などが使用可能である。接着剤組成物溶液の塗布方法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工などが挙げられる。また、塗布膜の乾燥条件は特に限定されず、例えば、乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間で行うことができる。
【0064】
接着シートの厚みは特に限定されないが、5μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。5μm未満であると、反りが生じた半導体ウエハや半導体チップと接着しない箇所が発生し、接着面積が不安定となる場合がある。また、接着シートの厚みは100μm以下が好ましい。100μmを超えると、ダイアタッチの荷重によって接着シートが過度にはみ出し、パッドを汚染する場合がある。
【0065】
半導体装置の高集積化、及び放熱性向上の観点から、接着シートの厚みは薄い方が好ましい。具体的には、接着シートの厚みは30μm以下がより好ましく、20um以下が更に好ましい。
【0066】
本発明の接着シートにおいて、硬化前における130℃の溶融粘度は5Pa・s以上が好ましい。5Pa・s以上であると、熱硬化時の発泡を抑制できる。また、硬化前における130℃の溶融粘度は5000Pa・s以下が好ましい。5000Pa・s以下であると、良好な凹凸追従性が得られる。
【0067】
溶融粘度は以下の方法で測定できる。
すなわち、レオメーター(HAAKE社製、商品名;RS−1)を用いて、パラレルプレート法により、溶融粘度を測定する。具体的には、130℃になる様に加熱しているプレートに、0.1gの接着シートを仕込み、測定を開始する。測定開始から240秒後の値の平均値を溶融粘度とする。尚、プレート間のギャップは0.1mmとする。
【0068】
硬化前における引張試験時の破断伸び率は10%以上が好ましい。10%以上であると、良好な可とう性が得られ、接着シート使用時の割れや欠けを防止ができる。硬化前における引張試験時の破断伸び率は200%以下が好ましい。200%以下であると、接着シートをステルスダイシングプロセスに好適に使用できる。ステルスダイシングは、ダイシングテープ(ダイシングフィルム)と接着シートの積層物の接着シート側にウェハを貼り合わせ、レーザー照射でウェハ内部に欠陥を作り出し、ダイシングテープを引き延ばすことでウェハと接着シートをかつ断するプロセスである。破断伸び率が大きいと接着シートを上手くかつ断できない。
【0069】
破断伸び率は以下の方法で測定できる。
すなわち、接着シートを幅10mm、長さ30mm、厚さ40μmの短冊状にカッターナイフで切り出し、引張試験機(島津製作所製、商品名;テンシロン)を用いて、チャック間距離20mm、引張速度0.5m/minで引張試験を行う。そして、下記式により破断伸び率を求める。
破断伸び率(%)=(((破断時のチャック間距離(mm))−20)/20)×100
【0070】
本発明の接着シートにおいて、硬化後のガラス転移温度は100℃以上が好ましい。100℃以上であると、半導体装置の使用温度域での温度変化による応力や反りが抑えられるため、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。また、硬化後のガラス転移温度の上限は特に限定されず、例えば、200℃以下である。
【0071】
硬化後の260℃での引張貯蔵弾性率は10MPa以上が好ましい。10MPa以上であると、良好な耐リフロー性が得られる。また、硬化後の260℃での引張貯蔵弾性率は特に限定されず、例えば10000MPa以下である。
【0072】
ガラス転移温度及び引張貯蔵弾性率は以下の方法で測定できる。
すなわち、接着シートを175℃で1時間の加熱処理により熱硬化させ、その後厚さ200μm、長さ400mm(測定長さ)、幅10mmの短冊状にカッターナイフで切り出し、固体粘弾性測定装置(RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック(株)製)を用いて、−50〜300℃における貯蔵弾性率を測定する。測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10℃/minとする。更に、tanδ(G”(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率))の値を算出することによりガラス転移温度を得る。
【0073】
本発明の接着シートは、半導体装置の製造に使用できる。なかでも、被着体と半導体チップとを接着するダイボンディングフィルムとして好適に使用できる。被着体としては、リードフレーム、インターポーザ、半導体チップなどが挙げられる。
【0074】
本発明の接着シートは、ダイシングフィルムと一体的に使用することが好ましい。つまり、接着シート付きダイシングフィルム(ダイシング・ダイボンディングフィルム)の形態で使用することが好ましい。
【0075】
[ダイシング・ダイボンディングフィルム]
以下、本発明のダイシング・ダイボンディングフィルムについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るダイシング・ダイボンディングフィルムの断面模式図である。
図2は、本発明の他の実施形態に係るダイシング・ダイボンディングフィルムの断面模式図である。
【0076】
図1に示すように、ダイシング・ダイボンディングフィルム10は、ダイシングフィルム11上に接着シート3が積層された構成を有する。ダイシングフィルム11は基材1上に粘着剤層2を積層して構成されており、接着シート3はその粘着剤層2上に設けられている。また本発明は、
図2に示すダイシング・ダイボンディングフィルム12のように、ワーク(半導体ウエハなど)貼り付け部分にのみ接着シート3’を形成した構成であってもよい。
【0077】
基材1は、ダイシング・ダイボンディングフィルム10、12の強度母体となるものであり、紫外線透過性を有するものが好ましい。基材1としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙などが挙げられる。
【0078】
基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0079】
基材1の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0080】
粘着剤層2の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの一般的な感圧性接着剤を用いることができる。感圧性接着剤としては、半導体ウエハやガラスなどの汚染をきらう電子部品の超純水やアルコールなどの有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0081】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0082】
アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0083】
更に、アクリル系ポリマーは、架橋させる為、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性などの点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0084】
アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止などの点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、更に好ましくは40万〜300万程度である。
【0085】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーなどの数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤などのいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤などの添加剤を用いてもよい。
【0086】
粘着剤層2は放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線などの放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。
【0087】
図1に示す粘着剤層2のワーク貼り付け部分に対応する部分2aのみを放射線照射することにより他の部分2bとの粘着力の差を設けることができる。この場合、未硬化の放射線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bは接着シート3と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。
【0088】
また、
図2に示す接着シート3’に合わせて放射線硬化型の粘着剤層2を硬化させることにより、粘着力が著しく低下した前記部分2aを形成できる。この場合、未硬化の放射線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bにウエハリングを固定できる。
【0089】
つまり、粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、粘着剤層2における前記部分2aの粘着力<その他の部分2bの粘着力、となるように前記部分2aを放射線照射することが好ましい。
【0090】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合などの放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0091】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマーなどのベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0092】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分などを含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分などが粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0093】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0094】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0095】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などが挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物などを共重合したものが用いられる。
【0096】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分などは、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0097】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線などにより硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマーなどのベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0098】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシランなどの光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物などの光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤などが挙げられる。
【0099】
前記放射線硬化型の粘着剤層2中には、必要に応じて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。放射線照射により、着色する化合物を粘着剤層2に含ませることによって、放射線照射された部分のみを着色することができる。放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物であり、例えば、ロイコ染料などが挙げられる。放射線照射により着色する化合物の使用割合は、適宜設定できる。
【0100】
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性などの点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0101】
ダイシング・ダイボンディングフィルム10、12の接着シート3、3’は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまで接着シート3、3’を保護する保護材としての機能を有している。セパレータはダイシング・ダイボンディングフィルムの接着シート3、3’上にワークを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤などの剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙なども使用可能である。
【0102】
ダイシング・ダイボンディングフィルム10、12は、通常の方法で製造できる。例えば、ダイシングフィルム11の粘着剤層2と接着シート3、3’とを貼り合わせることで、ダイシング・ダイボンディングフィルム10、12を製造できる。
【0103】
[半導体装置の製造方法]
図3を参照しながら、ダイシング・ダイボンディングフィルム10を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
図3は、半導体装置の一製造工程を示す図である。
【0104】
先ず、ダイシング・ダイボンディングフィルム10における接着シート3の半導体ウエハ貼り付け部分3a上に半導体ウエハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(貼り付け工程)。本工程は、圧着ロールなどの押圧手段により押圧しながら行う。
【0105】
次に、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシング・ダイボンディングフィルム10まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式などを採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0106】
ダイシング・ダイボンディングフィルム10に接着固定された半導体チップ5を剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシング・ダイボンディングフィルム10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法などが挙げられる。
【0107】
ここでピックアップは、粘着剤層2が紫外線硬化型である場合、該粘着剤層2に紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層2の接着シート3に対する粘着力が低下し、半導体チップ5の剥離が容易になる。その結果、半導体チップ5を損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間などの条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。
【0108】
ピックアップした半導体チップ5は、接着シート3を介して被着体6に接着固定する(ダイボンディング)。ダイボンディング温度は、好ましくは80〜150℃である。
【0109】
続いて、接着シート3を加熱処理することにより、半導体チップ5と被着体6とを接着させる。加熱処理の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは170℃以上である。加熱処理の温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。加熱処理の温度が上記範囲であると、良好に接着できる。また、加熱処理の時間は、適宜設定できる。
【0110】
次に、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線などが用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは120℃以上であり、該温度は、好ましくは250℃以下、より好ましくは175℃以下である。また、その加熱時間は数秒〜数分間(例えば、1秒〜1分間)行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0111】
続いて、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する封止工程を行う。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、好ましくは165℃以上、より好ましくは170℃以上であり、該加熱温度は、好ましくは185℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0112】
必要に応じて、封止物を更に加熱をしてもよい(後硬化工程)。これにより、封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化できる。加熱温度は適宜設定できる。
【0113】
以上のとおり、ダイシング・ダイボンディングフィルムの接着シートと半導体ウエハを貼り合わせる工程(I)、半導体ウエハをダイシングして半導体チップを形成する工程(II)、工程(II)により形成された半導体チップを接着シートとともにピックアップする工程(III)、及び工程(III)によりピックアップした半導体チップを接着シートを介して被着体にダイボンディングする工程(IV)を含む方法により、半導体装置を製造できる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0115】
実施例で使用した成分について説明する。
アクリルゴム:ナガセケムテックス(株)製のテイサンレジンSG−790(アクリル酸エステル共重合体、Mw:50万、ガラス転移温度:−32℃)
固形エポキシ樹脂:日本化薬(株)製のKI−3000−4(o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂、Mw:1250)
フェノール樹脂:明和化成社製のMEH−7851H(フェノール樹脂、Mw:1580)
液状エポキシ樹脂:三菱化学(株)製のJER827(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、Mw:370)
触媒:北興化学工業(株)製のTPP−MK(テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート)
フィラー1:(株)アドマテックス製のAO802(球状アルミナフィラー、平均粒径:0.7μm、比表面積:7.5m
2/g)
フィラー2:電気化学工業(株)製のASFP−20(球状アルミナフィラー、平均粒径:0.3μm、比表面積:12.5m
2/g)
フィラー3:(株)アドマテックス製のAO809(球状アルミナフィラー、平均粒径:10μm、比表面積:1m
2/g)
フィラー4:電気化学工業(株)製のDAW−07(球状アルミナフィラー、平均粒径:8.1μm、比表面積:0.4m
2/g)
フィラー5:電気化学工業(株)製のDAW−03(球状アルミナフィラー、平均粒径:5.1μm、比表面積:0.5m
2/g)
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0116】
フィラーの表面処理方法について説明する。
フィラー1〜5を、シランカップリング剤で表面処理し、表面処理フィラー1〜5を得た。表面処理は乾式法で行い、下記式で表される量のシランカップリング剤で処理した。
【0117】
シランカップリング剤処理量=(フィラーの重量(g)×フィラーの比表面積(m
2/g))/シランカップリング剤の最小被覆面積(m
2/g)
シランカップリング剤の最小被覆面積(m
2/g)=6.02×10
23×13×10
−20/シランカップリング剤の分子量
【0118】
[実施例及び比較例]
接着シートの作製
表1及び表2に記載の配合比に従い、アクリルゴム、固形エポキシ樹脂、フェノール樹脂、液状エポキシ樹脂、触媒及び表面処理フィラーをメチルエチルケトン(MEK)に溶解、分散させ塗工に適した粘度の接着剤組成物溶液を得た。その後、635メッシュ(目開き20μm)の綾織のSUSメッシュを用いて接着剤組成物溶液をろ過し、ろ液をシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させて、接着シート(厚さ25μm)を得た。
【0119】
ダイシング・ダイボンディングフィルムの作製
接着シートを、ダイシングフィルム(日東電工(株)製のP2130G)の粘着剤層上に25℃で貼り付けて、ダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0120】
得られた接着シート及びダイシング・ダイボンディングフィルムを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
(フィラーの粒度分布及び平均粒径の測定)
接着シートをるつぼに入れ、大気雰囲気下、700℃で2時間強熱して灰化させた。得られた灰分を純水中に分散させて10分間超音波処理し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「LS 13 320」;湿式法)を用いて粒度分布(体積基準)及び平均粒径を求めた。なお、接着シートの組成としてフィラー以外は有機成分であり、上記の強熱処理により実質的に全ての有機成分が焼失することから、得られる灰分をフィラーとみなして測定を行った。
【0122】
(フィラーのBET比表面積の測定)
BET比表面積は、BET吸着法(多点法)により測定した。具体的には、Quantachrome製4連式比表面積・細孔分布測定装置「NOVA−4200e型」を用い、上記「フィラーの粒度分布及び平均粒径の測定」の項に従って得られる灰分を110℃6時間以上真空脱気した後に、窒素ガス中、77.35Kの温度下で測定した。
【0123】
(埋め込み性試験)
研削装置((株)DISCO製のDGP−8760)を用いて、シリコンベアウエハ(8インチ径、厚さ750μm)の裏面を研削し、厚さ100μmのシリコンウェハを得た。ダイシング・ダイボンディングフィルムの接着シート上に、シリコンウエハを貼り合わせた。貼り合わせ条件は、下記の通りである。
<貼り合わせ条件>
貼り付け装置:日東精機(株)製、DR−3000II
貼り付け速度計:100mm/min
貼り付け圧力:0.3MPa
貼り付け時のステージ温度:23℃
【0124】
次に、シリコンウェハをダイシングし半導体チップを形成した。ダイシングは10mm×10mm(10mm角)のチップサイズとなる様にダイシングを行った。ダイシング条件は下記の通りである。
<ダイシング条件>
ダイシングリング装置:DISCO(株)製、ダイサー(DFD6760)
カット方式:ステップカット
Z1ブレード:DISCO(株)製、203O‐SE 27HCDD
Z2ブレード:DISCO(株)製、203O-SE 27HCBB
Z1ブレードハイト:ウェハの半分まで切り込み
Z2ブレード:ダイシングフィルムに20μm切り込み
Z1ダイシング速度:30mm/sec
Z2ダイシング速度:30mm/sec
Z1回転数:40000rpm
Z2回転数:45000rpm
【0125】
接着シート(厚さ25μm)付き半導体チップ(10mm×10mm×厚さ100μm)を、新川(株)製のダイボンダーSPA−300を用いて130℃、1kg、1secの条件でAUS308のBGA基板上にダイボンドした。BGA基板として、ダイボンドする前に150℃で2時間加熱して水分を除去したものを用いた。その後、半導体チップをダイアタッチしたBGA基板を130℃で1時間加熱処理し、超音波顕微鏡(SAT試験)でボイドを観察し、ボイドの面積を求めた。ボイドの面積が20%以下の場合を○、20%を超える場合を×とした。
【0126】
(信頼性試験:耐湿リフロー性)
接着シート(厚さ20μm)をそれぞれ温度40℃の条件下で10mm角の半導体チップに貼り付けた後、接着シートを介して半導体チップをBGA基板にマウントした。マウント条件は、温度120℃、圧力0.1MPa、1secとした。次に、半導体チップがマウントされたBGA基板を、乾燥機にて130℃で1時間熱処理し、その後封止樹脂(日東電工(株)製、GE−100)でパッケージングした。封止条件は加熱温度175℃、90秒とした。その後、85℃、60%Rh、168時間の条件下で吸湿を行い、更に260℃以上で10秒間保持する様に設定したIRリフロー炉に、半導体パッケージを載置した。その後、半導体パッケージをガラスカッターで切断し、その断面を超音波顕微鏡で観察して、接着シートとBGA基板の境界における剥離の有無を確認した。確認は半導体チップ9個に対し行い、剥離が生じている半導体チップが0個の場合を○、1個以上の場合を×とした。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】