特許第6366233号(P6366233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366233
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 27/00 20060101AFI20180723BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20180723BHJP
   B21K 1/05 20060101ALI20180723BHJP
   B21J 5/10 20060101ALI20180723BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60B27/00 J
   B60B35/02 L
   B21K1/05
   B21J5/10 Z
   F16C19/18
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-145179(P2013-145179)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-16777(P2015-16777A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】平野 慎介
(72)【発明者】
【氏名】山本 一成
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−207298(JP,A)
【文献】 特開2007−145203(JP,A)
【文献】 特表2009−514741(JP,A)
【文献】 特開2011−252552(JP,A)
【文献】 特開2011−143733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 27/00
B21J 5/10
B21K 1/05
B60B 35/02
F16C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための円形状の車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合された少なくとも一つの内輪または等速自在継手の外側継手部材からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備え、
前記車輪取付フランジの周方向等配にハブボルトが圧入されるボルト挿入孔と、これらボルト挿入孔間に軽量化のための非円形形状の貫通孔が形成された車輪用軸受装置において、
前記貫通孔のアウター側の縁に面取り部が形成され、この面取り部と前記貫通孔が鍛造加工によって形成され、前記ボルト挿通孔と前記貫通孔とが設けられた前記車輪取付フランジのアウター側の側面が旋削加工され、当該アウター側の側面にブレーキロータが当接することを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記貫通孔が、径方向輪郭部分と周方向輪郭部分からなる形状に形成されると共に、これらの部分の隅部に円弧面が形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記貫通孔が、扇形形状、台形形状および三角形状のうちいずれかの形状である請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記隅部の円弧面の曲率半径がR2以上に設定されている請求項2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記面取り部の断面が円弧面とテーパ面とを備えている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記テーパ面の傾斜角が45°〜60°の範囲に設定されている請求項5に記載の車輪用軸受装置。
【請求項7】
前記貫通孔のアウター側の縁に研削砥石によって仕上げ加工が施されている請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置に関するもので、特に、軽量化と、鍛造投入重量と旋削量の削減による低コスト化を図った車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源あるいは公害等の面から燃費向上に対する要求は厳しいものがある。自動車部品において、中でも車輪軸受装置の軽量化はこうした要求に応える要因として注目され、強く望まれて久しい。特に、自動車等の車両の中でも軽四輪あるいはスモールカーをはじめとした軽車両においては、低コスト化は言うまでもなく、この軽量化に対する要求は益々増大してきている。
【0003】
従来から軽量化を図った車輪用軸受装置に関する提案は種々のものがあるが、それと共に車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置においては、この軽量化と一面では相反する信頼性と耐久性を向上させることも重要な要因となっている。
【0004】
図7に示す車輪用軸受装置はその代表的なものである。この車輪用軸受装置は、ハブ輪51の中心区域52が回転軸線53に対して円錐状に形成され、この中心区域52の直径は、径方向外方から軸受区域54の方へ減少している。中心区域52は、その直径が最大の周囲の所で、ハブ輪51のパイロット部55上へ嵌合される図示しないブレーキロータおよび車輪が取り付けられる車輪取付フランジ56へ移行している。ブレーキロータおよび車輪が締結されるハブボルト(図示せず)は、車輪取付フランジ56の円周等配位置に穿設されたボルト挿通孔57に固定される。
【0005】
また、車輪取付フランジ56には貫通孔58が穿設され、ボルト挿通孔57の間に同じように分布して設けられている。この貫通孔58は略台形の断面形状を有しており、貫通孔58の周囲に関して長い方の辺は、車輪取付フランジ56の径方向外方側に、また短い方の辺は車輪取付フランジ56の径方向内方側に形成されている。
【0006】
貫通孔58の各隅部は円弧状に形成されると共に、貫通孔58の縁には面取り部が形成されている。これにより、軽量化を図ることができると共に、ハブ輪51に生じる応力を緩和することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−520642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
然しながら、この従来のハブ輪51では、車輪取付フランジ56の側面において、ボルト挿通孔57や貫通孔58が形成された区域に円周方向の溝が形成されて、その円周方向溝の外径側と内径側に、ブレーキロータと接触する面が設けられている。これでは、ブレーキロータを当接する面が、円周方向溝の外径側と内径側の部位のみとなり、ホイールナットでボルト締結した際に負荷される軸力を受ける面が狭く、ブレーキロータとの当接面積が減少して面圧が上昇する。したがって、一般的には、この円周方向溝を廃止して、車輪取付フランジ全面がブレーキロータと当接する構造としているが、このような構造であると、車輪取付フランジ56の側面全体を旋削加工する際に、貫通孔58の径方向輪郭部分にバリが発生する恐れがある。特に、この貫通孔58がボルト挿通孔57のように円形形状の場合は、ドリル等の工具にて簡単にバリを除去することができるが、略台形等の非円形形状となると、バリが発生する箇所が軸心に向う直線部の2箇所となるが、このバリを除去するには、手作業によって除去するか、プログラムを組んだ機械加工をしなければならないため、作業工数やコストが嵩む。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、非円形形状の貫通孔の軽量化孔特有の問題に着目し、車輪取付フランジの側面の旋削時にバリが発生するのを防止すると共に、軽量化および鍛造投入重量と旋削量の削減による低コスト化を図った車輪用軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための円形状の車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合された少なくとも一つの内輪または等速自在継手の外側継手部材からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備え、前記車輪取付フランジの周方向等配にハブボルトが圧入されるボルト挿入孔と、これらボルト挿入孔間に軽量化のための非円形形状の貫通孔が形成された車輪用軸受装置において、前記貫通孔のアウター側の縁に面取り部が形成され、この面取り部と前記貫通孔が鍛造加工によって形成され、前記ボルト挿通孔と前記貫通孔とが設けられた前記車輪取付フランジのアウター側の側面が旋削加工され、当該アウター側の側面にブレーキロータが当接する。
【0011】
このように、ハブ輪の車輪取付フランジの周方向等配にハブボルトが圧入されるボルト挿入孔と、これらボルト挿入孔間に軽量化のための非円形形状の貫通孔が形成された車輪用軸受装置において、貫通孔のアウター側の縁に面取り部が形成され、この面取り部と貫通孔が鍛造加工によって形成され、ボルト挿通孔と貫通孔とが設けられた車輪取付フランジのアウター側の側面が旋削加工され、当該アウター側の側面にブレーキロータが当接するので、車輪取付フランジのアウター側の側面の旋削時にバリが発生するのを防止することができると共に、ハブ輪の軽量化と鍛造投入重量が削減でき、また、少なくとも車輪取付フランジのアウター側の側面の切削範囲が減少して切削量の削減が可能となり、低コスト化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明のように、前記貫通孔が、径方向輪郭部分と周方向輪郭部分からなる形状に形成されると共に、これらの部分の隅部に円弧面が形成されていれば、車輪取付フランジの強度・剛性を低下させることなく効果的に軽量化を図ることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明のように、前記貫通孔が、扇形形状、台形形状および三角形状のうちいずれかの形状であれば、円形形状に比べ、強度・剛性を確保しつつ効果的に軽量化を図ることができる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明のように、前記隅部の円弧面の曲率半径がR2以上に設定されていれば、車輪取付フランジに繰り返し負荷される荷重により発生する応力を緩和することができ、耐久性を確保することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明のように、前記面取り部の断面が円弧面とテーパ面とを備えていれば、貫通孔との繋ぎ部が滑らかになると共に、旋削加工の終点角度が一定となり、側面の旋削取り代にバラツキがあってもバリの発生を安定的に防止することができる。
【0016】
また、請求項6に記載の発明のように、前記テーパ面の傾斜角が45°〜60°の範囲に設定されていれば、バリの発生を抑えることができると共に、車輪取付フランジの側面の面積のバラツキを抑えることができ、ブレーキロータとの当接面積が減少して面圧が上昇するのを防止すると共に、車輪取付フランジの強度・剛性を確保することができる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明のように、前記貫通孔のアウター側の縁に研削砥石によって仕上げ加工が施されていれば、車輪取付フランジの側面の旋削加工時に発生したバリを確実に除去することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための円形状の車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合された少なくとも一つの内輪または等速自在継手の外側継手部材からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備え、前記車輪取付フランジの周方向等配にハブボルトが圧入されるボルト挿入孔と、これらボルト挿入孔間に軽量化のための非円形形状の貫通孔が形成された車輪用軸受装置において、前記貫通孔のアウター側の縁に面取り部が形成され、この面取り部と前記貫通孔が鍛造加工によって形成され、前記ボルト挿通孔と前記貫通孔とが設けられた前記車輪取付フランジのアウター側の側面が旋削加工され、当該アウター側の側面にブレーキロータが当接するので、車輪取付フランジのアウター側の側面の旋削時にバリが発生するのを防止することができると共に、ハブ輪の軽量化と鍛造投入重量が削減でき、また、少なくとも車輪取付フランジのアウター側の側面の切削範囲が減少して切削量の削減が可能となり、低コスト化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る車輪用軸受装置周りを示す縦断面図である。
図2図1の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
図3図2のハブ輪を示す正面図である。
図4】(a)は、図3の貫通孔を示す要部断面図、(b)は、(a)の部分拡大図である。
図5図4(b)の変形例を示す部分拡大図である。
図6図4(a)の変形例を示す要部断面図である。
図7】従来の車輪用軸受装置のハブ輪を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
外周に車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と外方部材間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体とを備え、前記車輪取付フランジの周方向等配にハブボルトが圧入されるボルト挿入孔と、これらボルト挿入孔間に軽量化のための非円形形状の貫通孔が形成され、当該車輪取付フランジのアウター側の側面が切削加工された車輪用軸受装置において、前記貫通孔が、径方向輪郭部分と周方向輪郭部分からなる扇形形状に形成され、これらの部分の隅部にR2以上の曲率半径からなる円弧面が形成されると共に、当該貫通孔のアウター側の縁に面取り部が形成され、この面取り部と前記貫通孔が鍛造加工によって形成されている。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置周りを示す縦断面図、図2は、図1の車輪用軸受装置を示す縦断面図、図3は、図2のハブ輪を示す正面図、図4(a)は、図3の貫通孔を示す要部断面図、(b)は、(a)の部分拡大図、図5は、図4(b)の変形例を示す部分拡大図、図6は、図4(a)の変形例を示す要部断面図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0022】
図1に示す車輪用軸受装置は、内方部材1と外方部材2と複列の転動体(ボール)3、3とを備えている。内方部材1は、アウター側の端部に車輪取付フランジ6を一体に有するハブ輪4と別体の内輪5とからなる。車輪取付フランジ6の周方向等配にはハブボルト6aが植設され、ブレーキロータRを介して車輪Wが取り付けられている。外方部材2は、外周に車体取付フランジ2bを一体に有し、ナックルKに内嵌されると共に、固定ボルトBを介して取り付けられている。
【0023】
この車輪用軸受装置は第3世代と呼称される従動輪用であって、図2に拡大して示すように、ハブ輪4は、外周に一方(アウター側)の内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に延びる小径段部4bが形成されている。
【0024】
内輪5は、外周に他方(インナー側)の内側転走面5aが形成され、ハブ輪4の小径段部4bに圧入されて背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受を構成すると共に、小径段部4bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部4cによって所定の軸受予圧が付与された状態で、ハブ輪4に対して軸方向に固定されている。なお、内輪5および転動体3はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0025】
ハブ輪4はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面4aをはじめ、車輪取付フランジ6のインナー側の基部6bから小径段部4bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理が施されている。なお、加締部4cは鍛造加工後の表面硬さのままの未焼入れ部とされている。これにより、車輪取付フランジ6に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、内輪5の嵌合部となる小径段部4bの耐フレッティング性が向上すると共に、微小なクラック等の発生がなく加締部4cの塑性加工をスムーズに行うことができる。
【0026】
一方、外方部材2は、内周に前記内方部材1の複列の内側転走面4a、5aに対向する複列の外側転走面2a、2aが一体に形成されている。これら両転走面間には保持器7で円周等配された複列の転動体3、3がそれぞれ転動自在に収容されている。
【0027】
外方部材2と内方部材1との間に形成される環状空間の開口部のうちアウター側の開口部にシール8が装着されると共に、インナー側の開口部にはキャップ9が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0028】
外方部材2はハブ輪4と同様、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面2a、2aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0029】
なお、ここでは、転動体3をボールとした複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず転動体3に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受で構成されたものであっても良い。また、従動輪側の第3世代の構造を例示したが、これに限らず、例えば、一対の内輪をハブ輪に圧入した第2世代の構造をはじめ第1世代〜第4世代の構造であっても良い。
【0030】
ここで、ハブ輪4の車輪取付フランジ6にハブボルト6aが圧入されるボルト挿通孔10が複数個(ここでは、5個)形成されると共に、これらボルト挿通孔10間に軽量化のための貫通孔11が形成されている。これらのボルト挿通孔10と貫通孔11はハブ輪4の鍛造工程において形成されている。
【0031】
貫通孔11は、径方向輪郭部分(直線部分)Aと周方向輪郭部分(円弧部分)B1、B2からなる扇形形状に形成されている。これにより、車輪取付フランジ6の強度・剛性を低下させることなく効果的に軽量化を図ることができる。そして、貫通孔11の各隅部は鍛造加工によって所定の曲率半径r1、r2からなる円弧面に形成されている。この隅部の曲率半径r1、r2はR2以上に設定されている。これにより、車輪取付フランジ6に繰り返し負荷される荷重により発生する応力を緩和することができ、耐久性を確保することができる。
【0032】
一方、貫通孔11のアウター側の縁には鍛造加工によって面取り部12が形成されている。この面取り部12は、図4(a)に拡大して示すように、所定の曲率半径r3からなる円弧面に形成されている。その後、車輪取付フランジ6の少なくともアウター側の側面6cが旋削(切削)加工(図中二点鎖線にて示す)によって所望の寸法・精度に形成される。本実施形態では、アウター側の側面6cが旋削加工された後も面取り部12が残るよう、予め貫通孔11の縁に鍛造加工によって面取り部12が形成されているので、車輪取付フランジ6のアウター側の側面6cの旋削時にバリが発生するのを防止することができると共に、ハブ輪4の軽量化と鍛造投入重量が削減でき、また、少なくとも車輪取付フランジ6のアウター側の側面6cの切削範囲が減少して切削量の削減が可能となり、低コスト化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【0033】
なお、貫通孔11は扇形形状を例示したが、これに限らず、台形形状や三角形状等の非円形形状であっても良い。これにより、円形形状に比べ、効果的に軽量化を図ることができる。また、ここでは、貫通孔11の縁全周に亙って面取り部12を形成したが、バリの発生は、旋削加工によって旋削チップがワークから離れる瞬間であるため、このバリが発生し易い箇所、すなわち、径方向輪郭部分A(図2参照)のみに面取り部12を形成しても良い。
【0034】
断面が円弧状の面取り部12の場合、図4(b)に示すように、旋削取り代Tのバラツキにより、面取り部12の接線角度αがバラツキ、例えば、旋削取り代Tが多いと、接線角度αが小さくなりバリが発生し易くなる。そのため、図5に示すように、面取り部13が所定の曲率半径r4からなる円弧面13aと傾斜角βからなるテーパ面13aとを備えていれば、貫通孔11との繋ぎ部が滑らかになると共に、旋削加工の終点角度が一定となり、側面6cの旋削取り代Tにバラツキがあってもバリの発生を安定的に防止することができる。
【0035】
ここで、面取り部13のテーパ面13bの傾斜角βは45°〜60°の範囲に設定されている。この傾斜角βが45°未満ではバリの発生を抑えることが難しく、また、60°を超えると側面6cの面積のバラツキが大きくなり、ブレーキロータ(図示せず)との当接面積が減少して面圧が上昇すると共に、車輪取付フランジ6の強度・剛性が低下して好ましくない。
【0036】
また、本実施形態のように貫通孔11が扇形形状の場合、市販のカッター等では面取り部12、13の加工ができないため、図6に示すように、貫通孔11のアウター側の縁をハンドグラインダーのような研削砥石14によって仕上げ加工を施しても良い。この場合、貫通孔11の縁に沿って径方向輪郭部分、周方向輪郭部分および隅部を容易に加工することができ、側面6cの旋削加工時に発生したバリを確実に除去することができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、車輪取付フランジを一体に有するハブ輪を備えた第1世代乃至第4世代構造の車輪用軸受装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 内方部材
2 外方部材
2a 外側転走面
2b 車体取付フランジ
3 転動体
4 ハブ輪
4a、5a 内側転走面
4b 小径段部
4c 加締部
5 内輪
6 車輪取付フランジ
6a ハブボルト
6b 車輪取付フランジのインナー側の基部
6c 車輪取付フランジのアウター側の側面
7 保持器
8 シール
9 キャップ
10 ボルト挿通孔
11 貫通孔
12、13 面取り部
13a 円弧面
13b テーパ面
14 砥石
51 ハブ輪
52 中心区域
53 回転軸線
54 軸受区域
55 パイロット部
56 車輪取付フランジ
57 ボルト挿通孔
58 貫通孔
A 径方向輪郭部分
B1、B2 周方向輪郭部分
B 固定ボルト
K ナックル
r1、r2 貫通孔の隅部の曲率半径
r3、r4 面取り部の曲率半径
R ブレーキロータ
T 旋削取り代
W 車輪
α 接線角度
β 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7