(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2係数データ算出部は、前記第1係数データを固定した状態で前記規格化された歪みデータにおける前記グリッドの位置の歪みの深さを用いて前記第2係数データを算出することを特徴とする請求項2に記載の核燃料の軸方向出力分布の解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料集合体は、複数の燃料ペレットと、各燃料ペレットを覆う複数の被覆管と、複数の被覆管を束ねるグリッド(支持格子)とで構成されている。従来、核燃料の軸方向出力分布の解析を行う場合、燃料集合体のグリッドを減速材領域に均質化する取り扱いとしている。そのため、炉心内における燃料集合体の3次元出力分布を算出するとき、グリッドによる局所的な出力歪みの効果を考慮することができない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、グリッドによる局所的な出力歪みの効果を考慮することで高精度に核燃料の軸方向出力分布を求めることができる核燃料の軸方向出力分布の解析装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の核燃料の軸方向出力分布の解析装置は、複数の燃料棒が複数のグリッドにより格子状に束ねられて構成された核燃料における軸方向出力分布を解析する核燃料の軸方向出力分布の解析装置において、前記核燃料の出力実測値に基づいた前記核燃料の軸方向詳細出力分布と前記グリッドを均質化して作成した前記核燃料の軸方向ホモ出力分布に基づいて前記グリッドに対応した複数の歪みデータを切り出して規格化する歪みデータ規格化部と、前記規格化された複数の歪みデータに基づいて前記複数のグリッドごとのグリッド歪み形状表現の係数データを算出する係数データ算出部と、前記グリッドを均質化して作成した前記核燃料の軸方向ホモ出力分布と前記複数のグリッドごとの係数データに基づいて前記核燃料の軸方向出力分布を算出する軸方向出力分布算出部と、を有することを特徴とするものである。
【0007】
従って、核燃料の出力実測値に基づいた軸方向詳細出力分布と軸方向ホモ出力分布に基づいて複数の歪みデータを規格化し、複数の歪みデータに基づいてグリッド歪み形状表現の係数データを算出し、軸方向ホモ出力分布と係数データとから核燃料の軸方向出力分布を算出する。そのため、グリッドの影響を考慮した核燃料の軸方向出力分布を得ることができ、高精度な核燃料の軸方向出力分布を求めることができる。
【0008】
本発明の核燃料の軸方向出力分布の解析装置では、前記歪みデータ規格化部は、前記核燃料の出力実測値に基づいた前記核燃料の軸方向詳細出力分布を作成する軸方向詳細出力分布作成部と、前記グリッドを均質化して前記核燃料の軸方向ホモ出力分布を作成する軸方向ホモ出力分布作成部と、前記軸方向詳細出力分布と前記軸方向ホモ出力分布に基づいて規格化された軸方向出力分布から複数の歪みデータを切り出して集約する歪みデータ規格化集約部とを有することを特徴としている。
【0009】
従って、グリッドの影響を考慮した核燃料の軸方向出力分布を容易に得ることができる。
【0010】
本発明の核燃料の軸方向出力分布の解析装置では、前記歪みデータ規格化集約部は、前記軸方向ホモ出力分布を前記軸方向詳細出力分布により補正することで軸方向補正ホモ出力分布を作成し、前記軸方向詳細出力分布と前記軸方向補正ホモ出力分布に基づいて規格化された軸方向出力分布から複数の歪みデータを切り出して集約することを特徴としている。
【0011】
従って、軸方向ホモ出力分布を実測値に基づいて補正することで、高精度な軸方向補正ホモ出力分布を作成することができる。
【0012】
本発明の核燃料の軸方向出力分布の解析装置では、前記係数データ算出部は、所定のフォームファンクション基本式を用いて前記規格化された全ての歪みデータを一括でフィッティングしてグリッド歪み基本形状を表現するための第1係数データを算出する第1係数データ算出部と、所定のフォームファンクション基本式を用いて前記規格化された歪みデータを前記グリッドの位置ごとのグリッド歪み深さ形状を表現するための第2係数データを算出する第2係数データ算出部と、を有することを特徴としている。
【0013】
従って、グリッド歪み基本形状を表現するための第1係数データと、グリッド歪み深さ形状を表現するための第2係数データを算出することで、グリッドの影響を考慮した核燃料の軸方向出力分布を容易に得ることができる。
【0014】
本発明の核燃料の軸方向出力分布の解析装置では、前記第2係数データ算出部は、前記第1係数データを固定した状態で前記規格化された歪みデータにおける前記グリッドの位置の歪みの深さを用いて前記第2係数データを算出することを特徴としている。
【0015】
従って、高精度な第2係数データを算出することができる。
【0016】
また、本発明の核燃料の軸方向出力分布の解析方法は、複数の燃料棒が複数のグリッドにより格子状に束ねられて構成された核燃料における軸方向出力分布を解析する核燃料の軸方向出力分布の解析方法において、前記核燃料の出力実測値に基づいた前記核燃料の軸方向詳細出力分布と前記グリッドを均質化して作成した前記核燃料の軸方向ホモ出力分布に基づいて前記グリッドに対応した複数の歪みデータを切り出して規格化するステップと、前記規格化された複数の歪みデータに基づいて前記複数のグリッドごとのグリッド歪み形状表現の係数データを算出するステップと、前記グリッドを均質化して作成した前記核燃料の軸方向ホモ出力分布と前記複数のグリッドごとの係数データに基づいて前記核燃料の軸方向出力分布を算出するステップと、を有することを特徴とするものである。
【0017】
従って、グリッドの影響を考慮した核燃料の軸方向出力分布を得ることができ、高精度な核燃料の軸方向出力分布を求めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の核燃料の軸方向出力分布の解析装置及び方法によれば、核燃料の出力実測値に基づいた軸方向詳細出力分布と軸方向ホモ出力分布に基づいて複数の歪みデータを規格化し、複数の歪みデータに基づいてグリッド歪み形状表現の係数データを算出し、軸方向ホモ出力分布と係数データとから核燃料の軸方向出力分布を算出するので、グリッドによる局所的な出力歪みの効果を考慮することで高精度に核燃料の軸方向出力分布を求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る核燃料の軸方向出力分布の解析装置及び方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0021】
図6は、加圧水型原子炉を表す縦断面図、
図7は、燃料集合体を表す概略図である。
【0022】
本実施形態の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させる加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。そして、この加圧水型原子炉を有する原子力プラントは、原子炉で生成した蒸気をタービン発電機へ送って発電することができる。
【0023】
この加圧水型原子炉10において、
図6に示すように、原子炉容器11は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体12とその上部に装着される原子炉容器蓋(上鏡)13により構成されており、この原子炉容器本体12に対して原子炉容器蓋13が複数のスタッドボルト14及びナット15により開閉可能に固定されている。
【0024】
この原子炉容器本体12は、原子炉容器蓋13を取り外すことで上部が開口可能であり、下部が半球形状をなす下鏡16により閉塞された円筒形状をなしている。そして、原子炉容器本体12は、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する入口ノズル(入口管台)17と、軽水を排出する出口ノズル(出口管台)18が形成されている。また、原子炉容器本体12は、2ループのプラントの場合、入口ノズル17及び出口ノズル18とは別に、図示しない注水ノズル(注水管台)が形成されている。
【0025】
原子炉容器本体12は、内部にて、入口ノズル17及び出口ノズル18より上方に上部炉心支持板19が固定される一方、下方の下鏡16の近傍に位置して下部炉心支持板20が固定されている。この上部炉心支持板19及び下部炉心支持板20は、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成されている。そして、上部炉心支持板19は、複数の炉心支持ロッド21を介して下方に図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板22が連結されている。
【0026】
原子炉容器本体12は、内部に円筒形状をなす炉心槽23が内壁面と所定の隙間をもって配置されており、この炉心槽23は、上部が上部炉心板22に連結され、下部に円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板24が連結されている。そして、この下部炉心板24は、下部炉心支持板20に支持されている。即ち、炉心槽23は、原子炉容器本体12の下部炉心支持板20に吊り下げ支持されることとなる。
【0027】
炉心25は、上部炉心板22と炉心槽23と下部炉心板24により形成されており、この炉心25は、内部に多数の燃料集合体26が配置されている。この燃料集合体26は、後述する多数の燃料棒が束ねられて構成されている。また、炉心25は、内部に多数の制御棒27が配置されている。この多数の制御棒27は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ28となり、燃料集合体26内に挿入可能となっている。上部炉心支持板19は、この上部炉心支持板19を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管29が固定されており、各制御棒クラスタ案内管29は、下端部が燃料集合体26内の制御棒クラスタ28まで延出されている。
【0028】
原子炉容器11を構成する原子炉容器蓋13は、上部が半球形状をなして磁気式ジャッキの制御棒駆動装置30が設けられており、原子炉容器蓋13と一体をなすハウジング31内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管29は、上端部が制御棒駆動装置30まで延出され、この制御棒駆動装置30から延出されて制御棒クラスタ駆動軸32が、制御棒クラスタ案内管29内を通って燃料集合体26まで延出され、制御棒クラスタ28を把持可能となっている。
【0029】
この制御棒駆動装置30は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ28に連結されると共に、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸32を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
【0030】
また、原子炉容器本体12は、下鏡16を貫通する多数の計装管台33が設けられ、この各計装管台33は、炉内側の上端部に炉内計装案内管34が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ35が連結されている。各炉内計装案内管34は、上端部が下部炉心支持板20に連結されており、振動を抑制するための上下の連接板36,37が取付けられている。シンブルチューブ38は、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が装着されており、コンジットチューブ35から計装管台33及び炉内計装案内管34を通り、下部炉心板24を貫通して燃料集合体26まで挿入可能となっている。
【0031】
従って、制御棒駆動装置30により制御棒クラスタ駆動軸32を移動して燃料集合体26から制御棒27を所定量引き抜くことで、炉心25内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器11内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル18から排出され、蒸気発生器に送られる。即ち、燃料集合体26を構成する原子燃料が核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。一方、制御棒27を燃料集合体26に挿入することで、炉心25内で生成される中性子数を調整し、また、制御棒27を燃料集合体26に全て挿入することで、原子炉を緊急に停止することができる。
【0032】
また、原子炉容器11は、炉心25に対して、その上方に出口ノズル18に連通する上部プレナム39が形成されると共に、下方に下部プレナム40が形成されている。そして、原子炉容器11と炉心槽23との間に入口ノズル17及び下部プレナム40に連通するダウンカマー部41が形成されている。従って、軽水は、入口ノズル17から原子炉容器本体12内に流入し、ダウンカマー部41を下向きに流れ落ちて下部プレナム40に至り、この下部プレナム40の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心支持板20及び下部炉心板24を通過した後、炉心25に流入する。この炉心25に流入した軽水は、炉心25を構成する燃料集合体26から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体26を冷却する一方、高温となって上部炉心板22を通過して上部プレナム39まで上昇し、出口ノズル18を通って排出される。
【0033】
そして、燃料集合体26は、
図7に示すように、複数の燃料棒51が複数のグリッド(支持格子)52により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズル53が固定される一方、下端部に下部ノズル54が固定されている。また、燃料集合体26は、図示しないが、複数の燃料棒51に対して、制御棒27が挿入される複数の制御棒案内シンブルと、炉内計装用検出器が挿入される炉内計装用案内シンブルとが設けられている。そして、複数の制御棒27は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ28となる。
【0034】
本実施形態の核燃料の軸方向出力分布の解析装置及び方法は、炉心内の中性子束分布を解析するための炉心解析プログラムで使用されるものであり、炉心内の核反応を媒介する中性子の分布や挙動を予測、評価するときに用いられる。そして、この炉心解析プログラムによって得られた解析結果に基づいて炉心設計が行われる。
【0035】
この炉心解析プログラムは、ハードウェア上において実行可能なプログラムであり、炉心に装荷される燃料集合体(核燃料)26の核定数を算出する核定数計算コードと、算出された核定数に基づいて炉心25内の核特性を算出する炉心計算コードとを有している。
【0036】
核定数計算コードは、燃料集合体26を長手方向に直交する面で切った断面となる四角形の幾何形状を2次元の解析対象領域としており、この解析対象領域における核定数を算出可能なコードとなっている。なお、核定数は、炉心計算に用いられる入力データとなっており、核定数としては、拡散係数、吸収断面積、除去断面積および生成断面積などがある。つまり、核定数計算コードを用いて核定数計算を行うことにより、炉心計算用の入力データである核定数を生成している。
【0037】
炉心計算コードは、複数の燃料ノードに、算出された核定数をそれぞれ設定して炉心計算を行うことにより、臨界ホウ素濃度、出力分布、反応度係数等の炉心内の核特性を評価可能なコードとなっている。燃料ノードは、炉心25を複数に分割した直方体形状の小体積である。
【0038】
炉心解析プログラムをハードウェア上において実行させると、ハードウェアは、核定数計算コードを用いて、燃料集合体26の解析対象領域における核定数を算出し、炉心計算コードを用いて、算出された核定数を各燃料ノードに設定して炉心計算を行うことにより、炉心25の核特性を評価する。
【0039】
本実施形態の核燃料の軸方向出力分布の解析装置及び方法は、炉心計算コードが燃料集合体26の軸方向出力分布を評価するためのものである。即ち、燃料集合体26は、複数の燃料棒51が複数のグリッド52により格子状に束ねられて構成されている。このグリッド52は、インコネルやジルカロイなどの材料により製造されることから、燃料集合体26は、熱中性子吸収効果によりグリッド52の部分での出力が歪んでしまう。従来、燃料集合体26の軸方向出力分布を求めるとき、グリッド52による出力低下の影響が軸方向全体にわたって均質に考慮している。
【0040】
例えば、
図5に示すように、燃料集合体26の軸方向出力分布は、実測値Aと推定値(計算値)Bとで相違する。そのため、燃料集合体26の軸方向出力分布は、グリッド52の部分で過大に評価され、グリッド52がない部分で過小に評価されてしまい、計算値と実測値が相違してしまう。そこで、本実施形態の核燃料の軸方向出力分布の解析装置及び方法は、グリッド52による局所的な出力歪みの効果を考慮することで、高精度に燃料集合体26の軸方向出力分布を求めるものである。
【0041】
本実施形態の核燃料の軸方向出力分布の解析装置は、
図1に示すように、複数の燃料棒51が複数のグリッド52により格子状に束ねられて構成された燃料集合体26における軸方向出力分布を解析するものであって、歪みデータ規格化部101と、係数データ算出部102と、軸方向出力分布算出部103とを有している。
【0042】
歪みデータ規格化部101は、燃料集合体26の出力実測値に基づいた燃料集合体26の軸方向出力分布とグリッド52を均質化して作成した燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布に基づいてグリッド52に対応した複数の歪みデータを切り出して規格化するものである。係数データ算出部102は、規格化された複数の歪みデータに基づいて複数のグリッド52ごとのグリッド歪み形状表現の係数データを算出するものである。軸方向出力分布算出部103は、グリッド52を均質化して作成した燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布と複数のグリッド52ごとの係数データに基づいて燃料集合体26の軸方向出力分布を算出するものである。
【0043】
そして、歪みデータ規格化部101は、燃料集合体26の出力実測値に基づいた燃料集合体26の軸方向詳細出力分布を作成する軸方向詳細出力分布作成部111と、グリッド52を均質化して作成した燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布を作成する軸方向ホモ出力分布作成部112と、軸方向詳細出力分布と軸方向ホモ出力分布に基づいて規格化された軸方向出力分布から複数の歪みデータを切り出して集約する歪みデータ規格化集約部113と、複数の歪みデータを燃料集合体の26のタイプごとに格納する歪みデータ格納部114とを有している。
【0044】
そして、この歪みデータ規格化集約部113は、軸方向ホモ出力分布を軸方向詳細出力分布により補正することで軸方向補正ホモ出力分布を作成し、軸方向詳細出力分布と軸方向補正ホモ出力分布に基づいて規格化された軸方向出力分布から複数の歪みデータを切り出して集約する。
【0045】
係数データ算出部102は、所定のフォームファンクション基本式を用いて規格化された全ての歪みデータを一括でフィッティングしてグリッド歪み基本形状を表現するための第1係数データを算出する第1係数データ算出部121と、所定のフォームファンクション基本式を用いて規格化された歪みデータをグリッド52の位置ごとのグリッド歪み深さ形状を表現するための第2係数データを算出する第2係数データ算出部122と、第1係数データと第2係数データを格納する係数データ格納部123とを有している。そして、この第2係数データ算出部122は、第1係数データを固定した状態で規格化された歪みデータにおけるグリッド52の位置の歪みの深さを用いて第2係数データを算出するものである。
【0046】
また、核燃料の軸方向出力分布の解析方法は、燃料集合体26の出力実測値に基づいた燃料集合体26の軸方向出力分布とグリッド52を均質化して作成した燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布に基づいてグリッド52に対応した複数の歪みデータを切り出して規格化するステップと、規格化された複数の歪みデータに基づいて複数のグリッド52ごとのグリッド歪み形状表現の係数データを算出するステップと、グリッド52を均質化して作成した核燃料の軸方向ホモ出力分布と複数のグリッド52ごとの係数データに基づいて燃料集合体26の軸方向出力分布を算出するステップとを有している。
【0047】
以下、本実施形態の核燃料の軸方向出力分布の解析装置による解析方法について、
図2から
図4のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0048】
まず、歪みデータ規格化部101による処理において、
図1及び
図2に示すように、ステップS11にて、軸方向詳細出力分布作成部111は、検出器(中性子束検出器)が検出した燃料集合体26の出力実測値から燃料集合体26の軸方向詳細出力分布を作成する。この場合、複数の原子力発電プラントにおける加圧水型原子炉の燃料集合体26の出力実測値を用いる。そのため、作成される軸方向詳細出力分布は、多数のデータとなる。
【0049】
ステップS12にて、軸方向ホモ出力分布作成部112は、炉心計算コードによりグリッド52を均質化して燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布を作成する。この軸方向ホモ出力分布は、グリッド52による出力低下の影響を軸方向全体にわたって均質に考慮したものである。ステップS13にて、歪みデータ規格化集約部113は、軸方向ホモ出力分布を軸方向詳細出力分布により補正することで軸方向補正ホモ出力分布を作成する。
【0050】
即ち、下記数式1により軸方向アダプション手法を用いて軸方向補正ホモ出力分布AP(z)を算出する。
【数1】
【0051】
ステップS14にて、歪みデータ規格化集約部113は、軸方向詳細出力分布と軸方向補正ホモ出力分布に基づいて軸方向出力分布を規格化し、この規格化された軸方向出力分布から複数の歪みデータを切り出して集約する。即ち、軸方向詳細出力分布MP、軸方向ホモ出力分布APとするとき、軸方向詳細出力分布MP/軸方向ホモ出力分布APにより軸方向ホモ出力分布APで規格化された軸方向出力分布を求めることができる。そして、この軸方向出力分布(MP/AP)から各グリッドに対応した位置での軸方向出力分布における歪みデータGD(z
1)を下記数式2により算出する。
【0053】
そして、ステップS15にて、歪みデータ格納部114は、算出した複数の歪みデータを燃料集合体26のタイプ別に格納する。燃料集合体26のタイプとして、ウラン燃料、ガドリニア入りウラン燃料、MOX燃料などがあり、歪みデータ格納部114は、核燃料別に複数の歪みデータをデータベースに格納する。この場合、例えば、複数の歪みデータを平均値が一致するように規格化し、歪みが最も深い点を原点として集約することが望ましい。
【0054】
次に、係数データ算出部102による処理において、
図1及び
図3に示すように、ステップS21にて、第1係数データ算出部121は、歪みデータ規格化部101で規格化された全ての歪みデータを読み込む。ステップS22にて、第1係数データ算出部121は、所定のフォームファンクション基本式を用いて全ての歪みデータを一括でフィッティングすることで、グリッド歪み基本形状を表現するための第1係数Σ、wを算出する。
【0055】
グリッド52による出力降下は指数関数的な傾向を示すため、歪みデータをトレースする関数表現式を下記数式3で表す指数関数(グリッドフォームファンクション)で表現する。
【数3】
【0056】
ここで、軸方向座標(傾き)z=0とするため、下記数式4の条件を付与する。
【数4】
また、指数関数の重ね合わせを2項(n=1,2)まで考慮し、このとき、数式4は、下記数式5に書き換えられる。
【数5】
【0057】
複数の歪みデータを定量化するため、燃料タイプ別に対して全ての歪みデータを数式3でフィッティングすることで、第1係数FF
∞、Σ
n、w
nを算出する。
【0058】
ステップS23にて、第2係数データ算出部122は、歪みデータ規格化部101で規格化された全ての歪みデータから、燃料集合体26の燃焼度レベル別の歪みデータ、グリッド別の歪みデータを読み込む。ステップS24にて、所定のフォームファンクション基本式を用いて、燃焼度レベル別及びグリッド別の歪みデータの深さを算出する。
【0059】
燃料集合体26の燃焼の進行に伴う歪みの深さは、各グリッド52に対して燃料集合体燃焼度依存で与えられる係数vを用いて下記数式6で考慮することができる。
【数6】
【0060】
ここで、vは、グリッドによる出力歪みの深さを表す係数であり、第1係数Σ
n、w
nを固定した状態で、各燃焼範囲に属する歪みデータを数式6でフィッティングした結果、燃焼に伴って係数vが指数関数的に増加することがわかり、各数式7で表現される。
【数7】
【0061】
ステップS25にて、第2係数データ算出部122は、グリッド歪み降下をホモグリッド計算による軸方向出力分布に対して考慮する際は、規格化係数を排除し、各数式8で表現することができる。
【数8】
【0062】
このように第2係数データ算出部122は、第1係数Σ
n、w
nを固定した状態で、歪みデータにおけるグリッド52の位置の出力歪みの深さvを用いて第2係数ω、BU
0を算出することができる。そして、ステップS26にて、第1係数Σ
n、w
n及び第2係数ω、BU
0を係数データ格納部123に格納する。
【0063】
そして、軸方向出力分布算出部103による処理において、
図1及び
図4に示すように、ステップS31にて、軸方向出力分布算出部103は、グリッド52を均質化して燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布を算出する。即ち、軸方向出力分布算出部103は、ホモグリッド計算による軸方向ホモ出力分布を算出する。
【0064】
軸方向ノードk内の燃料集合体26の軸方向出力分布は、軸方向ホモ出力分布作成部112が、ステップS12にて、炉心計算コードによりグリッド52を均質化して求めた燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布であり、下記数式9で表すことができる。
【数9】
【0065】
ここで、数式9を絶対座標に変換すると、rとz(燃料有効長の下端からの距離Z
k≦z<z
k+1)の線形性を考慮すると、下記数式10を得ることができる。
【数10】
【0066】
ステップS32にて、軸方向出力分布算出部103は、ノード内出力モーメント(軸方向ホモ出力分布)と、グリッド歪み形状を表現するための係数データとを用いて、グリッド歪みを考慮した燃料集合体26の軸方向出力分布(軸方向ヘテロ出力分布)を算出する。
【0067】
軸方向ノードkの燃料集合体26の軸方向平均出力は、ノード内出力分布P
khom(z)とグリッドフォームファンクションΦ(第1係数Σ
n、w
n及び第2係数ω、BU
0)を用いて下記数式11により算出する。
【数11】
【0068】
最終的に算出する軸方向ノードkの軸方向出力分布(軸方向ヘテロ出力分布)P
khetは、ホモグリッド計算による軸方向平均出力を保存するように下記数式12により規格化され、ノード内出力モーメントP
khomとグリッドフォームファンクションΦは、下記数式13で表される。
【数12】
【数13】
【0069】
そして、数式11は、数式13を代入して整理することで、下記数式14となり、グリッドによる出力歪みの効果を考慮した軸方向ノードkの平均出力P
khetを求めることができる。
【数14】
【0070】
そして、数式14におけるI
kmnは、下記数式15で表される。
【数15】
【0071】
このように本実施形態の核燃料の軸方向出力分布の解析装置及び方法にあっては、燃料集合体26の出力実測値に基づいた軸方向詳細出力分布とグリッド52を均質化して作成した燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布に基づいてグリッド52に対応した複数の歪みデータを切り出して規格化する歪みデータ規格化部101と、規格化された複数の歪みデータに基づいて複数のグリッド52ごとのグリッド歪み形状表現の係数データを算出する係数データ算出部102と、グリッド52を均質化して作成した燃料集合体26の軸方向ホモ出力分布と複数のグリッド52ごとの係数データに基づいて燃料集合体26の軸方向出力分布を算出する軸方向出力分布算出部103とを設けている。
【0072】
従って、燃料集合体26の出力実測値に基づいた軸方向詳細出力分布と軸方向ホモ出力分布に基づいて複数の歪みデータを規格化し、複数の歪みデータに基づいてグリッド歪み形状表現の係数データを算出し、軸方向ホモ出力分布と係数データとから燃料集合体26の軸方向出力分布を算出する。そのため、グリッド52の影響を考慮した燃料集合体26の軸方向出力分布を得ることができ、高精度な燃料集合体26の軸方向出力分布を求めることができる。