(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、ギヤ抜け防止の形状を有し、かつ軸線方向の長さが短いトルク断続装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための発明の構成上の特徴は、拡径方向に突出するハブ外周歯を有するハブクラッチと、
前記拡径方向に突出するギヤ外周歯を有し、前記ハブクラッチと相対回転可能なギヤピースと、
傾斜面を有し前記ギヤ外周歯に噛合し縮径方向に突出するギヤ内周歯と、
前記縮径方向に突出し回転方向の一方の歯面
が軸線方向に対して平行に延びるように直線状をな
し前記
回転方向の一方の歯面が前記ハブ外周歯
のみに噛合
し前記回転方向の他方の歯面
が前記軸線方向に対して傾斜する傾斜面を有
し前記
回転方向の他方の歯面が前記ギヤ外周歯に噛合する混合内周歯と
、を有し、前記ギヤピースと相対回転可能、かつ
前記軸線方向に相対移動して前記ギヤ外周歯と係脱することで前記ハブクラッチおよび前記ギヤピース間のトルクの断続をするスリーブと、を備え、
前記ギヤ外周歯は
前記軸線方向の前記ハブクラッチ側の端部が
前記軸線方向で前記スリーブに向かうほど歯厚が徐々に大きくなり、
前記ギヤ内周歯
の前記傾斜面および前記混合内周歯の前記
回転方向の他方
の歯面の前記傾斜面は、
前記軸線方向の端部が
前記軸線方向で端部に向かうほど歯厚が徐々に大きくな
るように傾斜しており、
前記混合内周歯
の前記回転方向の一方の歯面は、前記ハブクラッチと前記スリーブとの相対移動を
前記軸線方向にガイドする形状であり、
直線状をなす前記
回転方向の一方の歯面が対向するように配置された2つの前記混合内周歯を1対とする混合内周歯組が周方向に複数備えられ、
前記複数の混合内周歯組の間に前記ギヤ内周歯が位置し、
前記混合内周歯の傾斜面に対向する側に前記ギヤ内周歯の傾斜面が位置することである。
【0008】
ここで、ガイドする形状とは、少なくとも2点以上あるいは合計長さがある程度以上になるストレート部分で、ハブクラッチとスリーブとが当接することができる形状である。
【0010】
上記(1)の発明は以下に記す(
2)または(
3)の構成のうちの
どちらかを任意に加えて採用で
きる。
【0011】
(2)前記ハブクラッチと前記スリーブとは、
前記軸線方向に略平行なストレート部で噛合し、前記ストレート部の合計長さは
、前記スリーブが前記ハブクラッチおよび前記ギヤピースと噛合している状態において、前記ハブクラッチと前記スリーブとが噛合している噛み合い長さ以上である。
【0012】
(3)前記混合内周歯の前記
回転方向の一方
の歯面側は、前記
回転方向の他方の
歯面側の形状を歯厚が小さくなるように削り取った形状である。
【発明の効果】
【0013】
(1)の発明は、ハブクラッチとギヤピースとに係合するスリーブが回転方向の一方がハブ外周歯と噛合し、回転方向の他方がギヤ外周歯と噛合する混合内周歯を有する。そして、ギヤ外周歯は軸線方向端部が軸線方向で係合するスリーブ側に向かって回転方向の歯厚が徐々に大きくなり、ギヤ外周歯と噛合するスリーブのギヤ内周歯と混合内周歯は、軸線方向端部が端部に向かって歯厚が徐々に大きくなり、噛合すると噛合が外れにくい形状である。また、混合内周歯の一方は他方と軸線に対して非対称で、ハブクラッチとスリーブとの相対移動を軸線方向にガイドする形状である。したがって、(1)の発明は軸線方向に延長することなく、ギヤ抜け防止の機能有しており、ハブクラッチとは軸線方向にスムーズに相対移動できる。
【0015】
(
2)の発明によれば、ハブクラッチとスリーブとが噛み合うのに必要は噛み合い長さを有するストレート部を有するため、ハブクラッチとスリーブとが十分なトルク伝達を行うことができる。
【0016】
(
3)の発明によれば、混合内周歯の一方が他方の形状から歯厚が小さくなるようにした形状であるため、スリーブの歯の加工が容易である。また、一方の形状が他方の形状が一部残っている場合は、一方の歯面とギヤピースのギヤ外周歯の歯面とが当接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1のトルク断続装置のハブクラッチの構成図ある。
【
図2】実施形態1のトルク断続装置のギヤピースの構成図ある。
【
図3】実施形態1のトルク断続装置のスリーブの構成図ある。
【
図4】実施形態1のトルク断続装置のニュートラル状態を示す、
図1のI−I断面図、
図2のII−II断面図および
図3のIII−III断面図を合わせた構成図である。
【
図5】実施形態1のトルク断続装置の係合状態を示す、
図1のI−I断面図、
図2のII−II断面図および
図3のIII−III断面図を合わせた構成図である。
【
図6】実施形態1のトルク断続装置のニュートラル状態を示す、
図2のII−II断面図および
図3のIII−III断面図を合わせた構成図である。
【
図7】実施形態1のトルク断続装置の係合状態を示す、
図2のII−II断面図および
図3のIII−III断面図を合わせた構成図である。
【
図8】実施形態1のトルク断続装置のスリーブの構成図ある。
【
図9】シンクロナイザリングを有するトルク断続装置のハブクラッチの歯とスリーブの歯とが噛合している状態を示す説明図である。
【
図10】変形形態1のトルク断続装置のスリーブの混合内周歯の回転方向垂直断面図である。
【
図11】実施形態2のトルク断続装置のニュートラル状態を示す、回転方向垂直断面図である。
【
図12】実施形態2のトルク断続装置の係合状態を示す、回転方向垂直断面図である。
【
図13】変形形態2のトルク断続装置のニュートラル状態を示す、回転方向垂直断面図である。
【
図14】変形形態2のトルク断続装置の係合状態を示す、回転方向垂直断面図である。
【
図15】実施形態3のトルク断続装置のギヤピースの構成図ある。
【
図16】実施形態3のトルク断続装置のスリーブの構成図ある。
【
図19】実施形態4のトルク断続装置のギヤピースの構成図ある。
【
図21】実施形態5のトルク断続装置のハブクラッチの構成図ある。
【
図22】実施形態5のトルク断続装置のギヤピースの構成図ある。
【
図23】実施形態5のトルク断続装置のスリーブの構成図ある。
【
図24】実施形態5のトルク断続装置のニュートラル状態を示す、
図21のVII−VII断面図、
図22のVIII−VIII断面図および
図23のIX−IX断面図を合わせた構成図である。
【
図25】実施形態5のトルク断続装置のニュートラル状態を示す、
図21のVII−VII断面図、
図22のVIII−VIII断面図および
図23のX−X断面図を合わせた構成図である。
【
図26】実施形態5のトルク断続装置の係合状態を示す、
図21のVII−VII断面図、
図22のVIII−VIII断面図および
図23のIX−IX断面図を合わせた構成図である。
【
図27】実施形態5のトルク断続装置の係合状態を示す、
図21のVII−VII断面図、
図22のVIII−VIII断面図および
図23のX−X断面図を合わせた構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の代表的な実施形態を
図1〜
図27を参照して説明する。なお図は、説明および特徴を見やすくするために、寸法、縮尺、傾斜などが強調されて描かれている。
【0019】
(実施形態1)
本実施形態1のトルク断続装置は、ハブクラッチ1(
図1)とギヤピース2(
図2)とスリーブ3(
図3)とを有する。
【0020】
ハブクラッチ1は、拡径方向に突出するハブ外周歯11を3つ有する。ギヤピース2は、拡径方向に突出するギヤ外周歯21を9つ有する。スリーブ3は、縮径方向に突出しており、ギヤピース2のギヤ外周歯21に噛合するギヤ内周歯31を3つ、縮径方向に突出しており、回転方向Aの一方がハブ外周歯11に噛合し回転方向Aの他方がギヤ外周歯21に噛合する混合内周歯32を6つ有する。
【0021】
ハブ外周歯11は、
図4および
図5に示すように、歯厚(回転方向A)が軸線方向Bで一定である。ギヤ外周歯21は、歯厚が軸線方向Bでハブクラッチ1またはスリーブ3に向かうほど徐々に大きくなる逆テーパ形状である。スリーブ3のギヤ内周歯31は、軸線方向B中央に軸線に略平行な部分を有する。そして、軸線方向Bで中央から端部に向かって、歯厚(回転方向A)が一端徐々に減り、再び歯厚が徐々に増える形状である。スリーブ3の混合内周歯32は、回転方向Aの一方と他方とで歯面の形状が異なり、ギヤ内周歯31のように軸線で線対称ではない。混合内周歯32は、回転方向Aで混合内周歯32が隣接する側がハブ噛合面321、ギヤ内周歯31が隣接する側がギヤ噛合面322である。ハブ噛合面321は、軸線方向Bに略平行で真っ平らな面である。そして、ギヤ噛合面322は、回転方向Aで隣接するギヤ内周歯31の歯面と軸線で線対称な形状である。つまり、軸線方向Bの中央部分に軸線に平行な部分があり、端部に向かって一端徐々に歯厚が減り、徐々に歯厚が増える。スリーブ3は、回転方向Aで混合内周歯32のハブ噛合面321とハブ噛合面321とが対向し、混合内周歯32のギヤ噛合面322がギヤ内周歯31の歯面に対向する。
【0022】
本実施形態のトルク断続装置は、ハブクラッチ1とスリーブ3とが一体回転し、スリーブ3が軸線方向Bで移動することで、ギヤピース2がハブクラッチ1(スリーブ3)と一体回転したり、相対回転したりする。ハブクラッチ1とギヤピース2との間でトルクが伝達されないニュートラル状態では、
図4に示すように、スリーブ3はハブクラッチ1の外周側に位置し、ギヤピース2の外周側に位置しない。ハブクラッチ1とギヤピース2との間でトルクが伝達される係合状態では、
図5に示しように、スリーブ3はハブクラッチ1およびギヤピース2の外周側に位置する。
【0023】
ハブクラッチ1とスリーブ3とは、
図4に示すように、回転方向Aでスリーブ3の混合内周歯32間にハブクラッチ1のハブ外周歯11が結合するように、噛合している。
図1および
図3に示すように、ハブクラッチ1のハブ外周歯11は3つで、スリーブ3の混合内周歯32は6つで、回転方向Aで混合内周歯32が隣接する間にハブ外周歯11が噛合する。スリーブ3は、ハブクラッチ1と噛合した(一体回転)状態で軸線方向Bに移動するので噛合位置が変わることはない。
【0024】
本実施形態のトルク断続装置は、スリーブ3が軸線方向Bでギヤピース2側に移動し、内周歯31,32の間にギヤピース2のギヤ外周歯21が入り込み、内周歯31,32と噛合して係合状態になる。このとき、
図5に示すように、スリーブ3の混合内周歯32のハブ噛合面321は、ギヤピース2のギヤ外周歯21の歯面に当接しない。混合内周歯32のギヤ噛合面322かギヤ内周歯31の歯面がギヤ外周歯21の歯面に当接する。これは、
図6〜
図8に示すように、混合内周歯32がギヤ内周歯31の回転方向Aの一方の歯面を真っ平らになるように、歯厚が減らされているからである。破線が減らした部分に相当し、減らす前の状態の混合内周歯32はギヤ内周歯31と同じ形状である。スリーブ3が全てギヤ内周歯31の状態で、各歯は回転方向Aで等間隔で配置されている。そして、スリーブ3の歯31,32と噛合するギヤピース2のギヤ外周歯21も回転方向Aで等間隔で配置されている。そのため、ハブクラッチ1のハブ外周歯11と噛合するスリーブ3の混合内周歯32の一方面を歯厚が狭くなるように減らすことで、ハブ噛合面321はギヤピース2のギヤ外周歯21に当接しない。なお、
図6および
図7では図がみやすいように、ハブクラッチ1のハブ外周歯11の図示が省略されている。ここで、混合内周歯32のギヤ噛合面322のギヤ抜け防止の角度は、ギヤ内周歯31の歯面のギヤ抜け防止の角度と必ずしも同じである必要はなく、ギヤ噛合面322のギヤ抜け防止の角度とハブ噛合面321に歯厚が減らされる前のギヤ抜け防止の角度とも必ずしも同じである必要はない。
【0025】
また、混合内周歯32のギヤ噛合面322、ギヤ内周歯31およびギヤ外周歯21は軸線方向Bで噛合する側に向かって徐々に歯厚が大きくなっており、噛合後ギヤ抜けしにくいギヤ抜け防止の形状をしている。一方、ハブクラッチ1のハブ外周歯11の歯面および混合内周歯32のハブ噛合面321は軸線方向Bに対して略平行な真っ平らな面で、スリーブ3の軸線方向Bの摺動がスムーズに行え、かつハブクラッチ1とスリーブ3との噛合が十分出来るだけの軸線方向の長さがある。
【0026】
ここで、
図9にシンクロナイザリング(SNR)を使用してハブクラッチ91(スリーブ93も一体回転)とギヤピースとの回転を同期し、スリーブ93とギヤピースとが噛合する場合のハブクラッチ91のハブ外周歯911とスリーブ93の内周歯931とが図示されている。スリーブ93の内周歯931の軸線方向B中央部分には、SNRを押し付けるキースプリングなどを配置するためのディテント溝932がある。そのため、ハブクラッチ91とスリーブ93とがスムーズに摺動し、かつ噛み合うための噛み合い長さdは十分にある。
【0027】
本発明に係るトルク断続装置は、
図9に係るトルク断続装置とは異なり、SNRを使用しないドグクラッチによる噛み合いクラッチのため、ディテント溝932が必要ない。軸線方向Bでディテント溝932を縮めたような形状が本実施形態のトルク断続装置のスリーブ3のような形状になる(
図4および
図5参照)。しかし、本実施形態のトルク断続装置のスリーブ3は、ハブ噛合面321とギヤ噛合面322とを備える混合内周歯32とギヤ噛合面322と同歯面のギヤ内周歯31とで構成することで、ハブクラッチ1と噛合する歯とギヤピース2に噛合する歯とを分離している。これにより、スリーブ3とハブクラッチ1とではスリーブ1の軸線方向Bのスムーズな摺動のためのストレートな部分とその長さ(噛み合い長さm、
図4参照)、スリーブ3とギヤピース2とではギヤ抜け防止の逆テーパ形状を備えかつトルク伝達に必要な軸線方向Bの噛み合い長さn(
図5参照)、を軸線方向Bに延長することなく確保することができる。
【0028】
(変形形態1)
本変形形態1のトルク断続装置は、実施形態1のトルク断続装置と基本的な構成および作用効果を有する。以下では、異なる構成を中心に説明していく。本変形形態のトルク断続装置のスリーブ3は、
図10に示すように、混合外周歯33のハブ噛合面331が軸線方向Bに略平行で真っ直ぐな面ではない。ハブ噛合面331は、混合外周歯33のギヤ噛合面332を軸線方向Bで全面が真っ平らにならない程度に、回転方向Aに削ったような形状である。つまり、軸線方向Bの略平行ではない傾斜した面が残っている。ハブクラッチ1の歯面と当接して、スリーブ3の軸線方向Bの摺動のためのストレートな部分と、ハブクラッチ1とのトルク伝達に必要な噛み合い長さ(m1+m2+m3)を確保できれば、ハブ噛合面331が全面が真っ平らな面でなくてもよい。
【0029】
(実施形態2)
本実施形態2のトルク断続装置は、実施形態1のトルク断続装置と同じ基本的な構成および作用効果を有する。以下では、異なる構成を中心に説明していく。
【0030】
本実施形態のトルク断続装置のスリーブ3は、
図11および
図12に示すように、ギヤ内周歯34と混合内周歯35とを有する。ギヤ内周歯34は、軸線方向Bで両端から中央に向かうほど歯厚が徐々に小さくなる逆テーパが合わさった形状である。混合内周歯35は、回転方向Aの一方と他方とで歯面の形状が異なり、ギヤ内周歯34のように軸線で線対称ではない。混合内周歯35は、回転方向Aで混合内周歯35が隣接する側がハブ噛合面351、ギヤ内周歯34が隣接する側がギヤ噛合面352である。ハブ噛合面351は、軸線方向Bに略平行で真っ平らな面である。そして、ギヤ噛合面352は、軸線方向Bで中央に向かうほど徐々に歯厚が小さくなる。スリーブ3は、回転方向Aで混合内周歯35のハブ噛合面351が対向し、混合内周歯35のギヤ噛合面352がギヤ内周歯34の歯面に対向する。
【0031】
スリーブ3のギヤ内周歯34および混合内周歯35は、ハブクラッチ1と噛み合わない歯面にストレートな部分がない。そのため、ギヤ抜け防止の逆テーパを転造によって両面同時に加工することができる。そして、混合内周歯35のハブ噛合面351を減厚することで、コスト低減が可能である。また、スリーブ3のその他の加工方法としては、ブローチで形成したのち、転造でギヤ噛合面352(ギヤ抜け防止の逆テーパ形状)を加工してもよい。ハブ噛合面351はブローチ加工する際に大きく削る。
【0032】
(変形形態2)
本変形形態2のトルク断続装置は、実施形態2のトルク断続装置と同じ基本的な構成および作用効果を有する。以下では、異なる構成を中心に説明していく。本変形形態のトルク断続装置のスリーブ3は、
図13および
図14に示すように、混合外周歯36のハブ噛合面361が軸線方向Bに略平行で真っ平らな面ではない。ハブ噛合面361は、混合外周歯36のギヤ噛合面362を軸線方向Bで全面が真っ平らにならない程度に、回転方向Aに削ったような形状である。つまり、軸線方向Bの中央に逆テーパが一部残っている。ハブ噛合面36は、ハブクラッチ1の歯面と当接し、スリーブ3の軸線方向Bの摺動のためのストレートな部分と、ハブクラッチ1との噛み合いに必要な噛み合い長さ(m4+m5)を確保できれば、全面が続いた真っ平らな面でなくてもよい。
【0033】
(実施形態3)
本実施形態3のトルク断続装置は、実施形態1または実施形態2のトルク断続装置と同じ基本的な構成および作用効果を有する。以下では、異なる構成を中心に説明していく。
【0034】
本実施形態3のトルク断続装置は、
図2に示すハブクラッチ1と
図15に示すギヤピース4と
図16に示すスリーブ5とを有する。ギヤピース4は、
図17および
図18に示すように、歯丈(径方向)Cと軸線方向Bの歯厚の異なる2種類のギヤ外周歯の高歯41と低歯42とを有する。高歯41は低歯42よりも歯丈Cが高く歯厚Bが狭い。低歯42は高歯41よりも歯丈Cが低く、軸線方向Bで噛合するスリーブ5側に飛び出すように歯厚が広く形成されている。
【0035】
スリーブ5は、歯丈Cがギヤ内周歯51と低い混合内周歯52とを有する。ギヤ内周歯51は、実施形態1のトルク断続装置のスリーブ3のギヤ内周歯31(
図4他参照)または実施形態2のトルク断続装置のスリーブ3のギヤ内周歯34(
図12他参照)の形状を採用することができる。混合外周歯52は、歯丈Cが異なる以外は実施形態1、変形形態1、実施形態2、変形形態2のトルク断続装置のスリーブ3の混合内周歯32、33、35、36(
図4他参照)の何れかの形状を採用することができる。混合外周歯52と、ギヤピース4の低歯42とは、互いの歯丈が当接しない高さである。
【0036】
ハブクラッチ1は、スリーブ5の混合外周歯52と混合外周歯52との間にハブ外周歯11が噛合し、スリーブ5と一体回転する。ギヤピース4は、スリーブ5と係合していないニュートラル状態では、ハブクラッチ1およびスリーブ5と相対回転している。スリーブ5が軸線方向Bで摺動してギヤピース4に近づくと、高歯42よりもスリーブ5側に飛び出している低歯42は、歯丈の低い混合外周歯52に当接せず、ギヤ内周歯51に当接する。ギヤ内周歯51に当接した低歯42は、ギヤ内周歯51と混合内周歯52との間に入り込み、高歯41がギヤ内周歯51と混合内周歯52との間に入り込んで回転方向で歯面が当接し、噛合が完了し、係合状態となる。
【0037】
本実施形態3のトルク断続装置は、スリーブ5が歯丈の異なるギヤ内周歯51、混合52を有し、ギヤピースが歯丈Cおよび軸線方向Bの厚さの異なる高歯41、低歯42とを有することで、上記した実施形態の効果に加えて、噛合がしやすい。また、噛合がしやすいため、歯と歯との間を狭くすることもできるため、噛合の際の歯打ち音も抑制することができる。
【0038】
(実施形態4)
本実施形態4のトルク断続装置は、実施形態3のトルク断続装置と同じ基本的な構成および作用効果を有する。以下では、異なる構成を中心に説明していく。本実施形態4のトルク断続装置は、
図19に示すように、高歯61と階段歯62とを備えるギヤピース6を有する。高歯61は、実施形態3のトルク断続装置のギヤピース4の高歯41と同じ形状である。階段歯62は、
図20に示すように、回転方向Aに対する垂直断面形状が二段の階段状になっている。軸線方向Bでスリーブ5側に突出し歯丈Cの低いのが飛び出し部621で、飛び出し部621よりも歯丈Cの高いのが噛み合い部622である。
【0039】
本実施形態4のトルク断続装置によれば、係合状態の際、スリーブ5のギヤ内周歯51とギヤピース6の階段歯62との噛み合いがギヤ内周歯51の歯先側に加えて歯元でも噛合することができる。そのため、階段歯62ではなく低歯51の場合に比べて、噛み合い強度が高い。
【0040】
(実施形態5)
本実施形態5のトルク断続装置は、ハブクラッチ1(
図21)とギヤピース2(
図22)とスリーブ7(
図23)とを有する。
【0041】
ハブクラッチ1は、拡径方向に突出するハブ外周歯12を3つ有する。ギヤピース2は、拡径方向に突出するギヤ外周歯22を9つ有する。スリーブ7は、縮径方向に突出し、歯先711が歯元712よりも歯厚(回転方向A)が小さい、回転方向Aに階段状になった階段内周歯71を9つ有する。階段内周歯71は、歯先711がハブクラッチ1のハブ外周歯12と噛合し、歯元712がギヤピースのギヤ外周歯22の歯先と噛合する。
【0042】
ハブ外周歯12は、
図24に示すように、歯厚が軸線方向Bで一定である。ギヤ外周歯22は、軸線方向B端部の歯厚が軸線方向Bでハブクラッチ1またはスリーブ3に向かうほど徐々に大きくなる逆テーパ形状である。スリーブ7の階段内周歯71は、ハブ外周歯12と噛合する歯先711が軸線方向Bで一定である。階段内周歯71の歯元712は、
図25に示すように、軸線方向B中央に軸線方向に略平行な部分を有し、中央から端部に向かって、歯厚が一端徐々に減り、端部に向かって徐々に増える形状である。つまり、階段内周歯71は、歯先711と歯元712とで歯厚の形状が異なる。
【0043】
本実施形態のトルク断続装置は、ハブクラッチ1とスリーブ7とが一体回転し、スリーブ7が軸線方向Bで移動することで、ギヤピース2がハブクラッチ1(スリーブ7)と一体回転したり、相対回転したりする。ハブクラッチ1とギヤピース2との間でトルクが伝達されないニュートラル状態(
図24および
図25参照)では、スリーブ7はハブクラッチ1の外周側に位置し、ギヤピース2の外周側に位置しない。そして、ハブクラッチ1とギヤピース2との間でトルクが伝達される係合状態(
図26および
図27参照)では、スリーブ3はハブクラッチ1およびギヤピース2の外周側に位置し、両方と噛合する。
【0044】
係合状態では、階段内周歯71の歯先711側は、
図26に示すように、ギヤピース2のギヤ外周歯22に当接していない。しかし、
図27に示すように歯元712側がギヤ内周歯22に当接して噛合する。
【0045】
本実施形態5のトルク断続装置は、ハブクラッチ1とギヤピース2とに係合するスリーブ7の階段内周歯71の歯先711がハブクラッチ1のハブ外周歯12と噛合し、歯元712が歯先711と噛合しないギヤピース2のギヤ外周歯22と噛合する。そして、ギヤ外周歯22は軸線方向B端部が軸線方向Bで係合するスリーブ7側に向かって歯厚が徐々に大きくなり、ギヤ外周歯22と噛合する階段内周歯7の歯元712は軸線方向B端部が端部に向かって歯厚が徐々に大きくなり、噛合すると噛合が外れにくい形状である。したがって、本実施形態5のトルク断続装置によれば、スリーブが径方向で係合する対象が分離されているため、ギヤ抜け防止の機能も有しており、噛合に必要な軸線方向Bの噛み合い長さ(m6(
図24参照)、n1(
図27参照))を軸線方向Bに延長することなくも確保することができる。
【0046】
(変形形態3)
本変形形態3のトルク断続装置は、実施形態5のトルク断続装置と同じ基本的な構成および作用効果を有する。以下では、異なる構成を中心に説明していく。
【0047】
ハブクラッチのハブ外周歯は、実施形態5のトルク断続装置で用いられるハブクラッチ1のハブ外周歯12よりも歯丈が高く歯厚が小さい。そして、ハブ外周歯はスリーブの階段内周歯7歯元に噛合する。次に、ギヤピースのギヤ外周歯は、実施形態5のトルク断続装置で用いられるギヤピース2のギヤ外周歯22よりも歯丈が低く歯厚が大きい。そして、ギヤ外周歯はスリーブの階段内周歯の歯先に噛合する。
【0048】
ハブ外周歯は歯厚が軸線方向で一定である。ギヤ外周歯は、軸線方向端部の歯厚が軸線方向でハブクラッチまたはスリーブに向かうほど徐々に大きくなる逆テーパ形状である。スリーブの階段内周歯は、ハブ外周歯と噛合する歯先が軸線方向Bで一定である。階段内周歯の歯元は、軸線方向中央に軸線方向に略平行な部分を有し、中央から端部に向かって、歯厚が一端徐々に減り、端部に向かって徐々に増える形状である。つまり、階段内周歯は歯先と歯元とで歯厚の形状が異なり、実施形態5のトルク断続装置の階段内周歯71の歯先711と歯元712の形状と逆になっている。
【0049】
本変形形態のトルク断続装置の係合状態では、階段内周歯は歯先がギヤピースのギヤ外周歯と噛合し、歯元がハブクラッチのハブ外周歯と噛合する。
【0050】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ハブクラッチ1、ギヤピース2,4,6、スリーブ3,5,7は、それぞれ歯数、歯の配置は、上記した条件で噛み合うことができれば、上記に限定されない。また、実施形態5のハブクラッチ1のハブ外周歯13は3つに限定されず、スリーブ7の階段内周歯71間の数以下が採用可能である。
【0051】
また、請求項1に係る発明と請求項2に係る発明とを合わせた構成も採用できる。例えば、歯の半分が請求項1に係る発明、残り半分が請求項2に係る発明で、それらが交互に配置されている構成も可能である。