(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
〔エチレン−ビニルアダマンタン共重合体〕
本実施形態のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう。)は、エチレン単位と、下記一般式[1]で表される1−ビニルアダマンタン誘導体の単位と、を有し、示差走査熱量計によって測定される融点が、130℃以下、又は実質的に観測されない。
【化3】
(一般式[1]中、Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、ビニル基、又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【0015】
本実施形態のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体は、1−ビニルアダマンタン誘導体の単位と、エチレン単位と、を有する。ここで、「単位」とは、共重合体を構成するモノマーに由来する繰り返し構造をいう。
【0016】
エチレン−ビニルアダマンタン共重合体中におけるビニルアダマンタン単位の含有量は、共重合体を構成する単量体単位の総量を100mol%として、好ましくは1〜45mol%であり、より好ましくは、5〜45mol%であり、さらに好ましくは5〜30mol%であり、特に好ましくは5〜20mol%である。1−ビニルアダマンタン誘導体の単位の含有量が45mol%以下であることにより、強度がより向上する傾向にある。また、1−ビニルアダマンタン誘導体の単位の含有量が1mol%以上であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。なお、1−ビニルアダマンタン誘導体の単位の含有量は、
13C−NMRスペクトルを用いる既知の方法により求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。また、1−ビニルアダマンタン誘導体の単位の含有量は、その製造方法において、エチレンとビニルアダマンタン誘導体の混合比率、重合温度、又は重合圧力を調整することにより、制御することができる。
【0017】
本実施形態のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、目的とする物性に応じて適宜調整することができる。例えば、強度がより向上する観点から、エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは100,000以上である。また、成形性がより向上する観点から、エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000,000以下である。
【0018】
本実施形態のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、成型方法や目的とする物性に応じて適宜調整することができる。例えば強度及び透明性がより向上する観点から、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜10.0であり、より好ましくは1.0〜5.0であり、さらに好ましくは1.5〜3.0である。
【0019】
本実施形態のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体は、必要に応じて、エチレン及びビニルアダマンタン以外のコモノマーに由来する単位を有してもよい。このような、コモノマー単位としては、特に限定されないが、例えば、炭素原子数3〜20のα−オレフィンのビニル化合物単位、ビニリデン化合物単位、及びポリエン化合物単位が挙げられる。
【0020】
これらのコモノマーは、必要な物性に応じて適宜選択されるが、代表的には下記のコモノマーが挙げられる。炭素原子数3〜20のα−オレフィンのビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、スチレン、3−フェニルプロペン等が挙げられる。
【0021】
ビニリデン化合物としては、特に限定されないが、例えば、イソブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0022】
ポリエン化合物としては、特に限定されないが、例えば、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0023】
(融点)
本実施形態のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体の融点は、130℃以下又は実質的に観測されず、好ましくは125℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の融点が130℃以下又は実質的に観測されないことにより、光学特性、耐候性、耐水性、耐熱性などの物性や成形加工性がより向上する。エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の融点は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の融点は、その製造方法において、エチレンとビニルアダマンタン誘導体の混合比率、重合温度、および/又は重合圧力を調整することにより、制御することができる。なお、ここで「実質的に観測されず」とは、融解の低下に伴って融解ピークがブロードになり、明確にピークと認められなくなることを指しており、一般的には融点が50℃程度まで低下するとピークが観測されなくなることを指している。
【0024】
〔エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の製造方法〕
本実施形態のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体の製造方法は、第4族ハーフメタロセン化合物(A)と、有機アルミニウム化合物(B)及び/又は有機ホウ素化合物(C)と、を含む重合用触媒の存在下、エチレンと、下記一般式[1]で表される1−ビニルアダマンタン誘導体と、を共重合する重合工程を有する。
【化4】
(一般式[1]中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ビニル基、又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【0025】
(1−ビニルアダマンタン誘導体)
一般式[1]中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ビニル基、又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。炭素数1〜6の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基;フェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状炭化水素基などが挙げられる。1−ビニルアダマンタン誘導体は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
(重合用触媒)
立体的に嵩高いビニルアダマンタン誘導体とエチレンとの共重合には共重合性の高い錯体触媒が適している。そこで、本実施形態で用いる重合用触媒は、第4族ハーフメタロセン化合物(A)と、有機アルミニウム化合物(B)及び/又は有機ホウ素化合物(C)と、を含む。
【0027】
(第4族ハーフメタロセン化合物(A))
第4族ハーフメタロセン化合物(A)としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムなどのハーフメタロセン錯体などが挙げられる。第4族ハーフメタロセン化合物(A)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。以下、それらの錯体の例を示す。
【0028】
第4族ハーフメタロセン化合物(A)としては、特に限定されないが、例えば、下記式[2]〜[7]で表される有機金属錯体が挙げられる。
【化5】
【0029】
上記式[2]〜[7]において、Mは、チタニウム原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子を表す。また、R
1及びR
2は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表す。置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基が挙げられる。このなかでも、R
1及びR
2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0030】
Lは、ハロゲン原子、R
3O−、R
3S−、(R
3)
2N−、(R
3)
2C=N−、ピリジル基、置換ピリジル基、キノリル基、置換キノリル基、フリル基、置換フリル基、チエニル基、又は置換チエニル基を表す。このなかでも、Lは、好ましくは、ハロゲン原子、R
3O−、R
3C=N−である。ここで、R
3はアルキル基、アリール基を表す。このなかでも、R
3は、好ましくは、ターシャリーブチル基、フェニル基(C
6H
5−)、2,6−ジメチルフェニル基(2,6−(CH
3)
2C
6H
3)、2,6−ジエチルフェニル基(2,6−(CH
3CH
2)
2C
6H
3)、2,6−ジイソプロピルフェニル基(2,6−((CH
3)
2CH)
2C
6H
3)、2−ターシャリーブチルフェニル基(2−((CH
3)
3C)C
6H
4)である。なお、R
3で表されるアリール基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、及び/又はアリール基で置換されていてもよい。
【0031】
Jは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−(R
4)
2Si−、−(R
4)
2C−などを表す。このなかでも、Jは、好ましくは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−(CH
3)
2Si−、−(CH
3)
2C−である。ここで、R
4は、各々独立して、水素原子;ハロゲン原子;メチル基、エチル基などのアルキル基;フェニル基、置換フェニル基などのアリール基を表す。このなかでも、R
4はメチル基、エチル基、フェニル基が好ましい。
【0032】
Yは、R
5O−、R
5S−、R
5N−、ピリジル基、置換ピリジル基、キノリル基、置換キノリル基、フリル基、置換フリル基、チエニル基、又は置換チエニル基を表す。ここで、R
5はアルキル基、置換アルキル基、フェニル基、置換フェニル基を表す。このなかでも、Yは、好ましくは、−C
6H
4O−、−(4,6−(CH
3)
2)C
6H
2O−、−(4,6−(CH
3CH
2)
2)C
6H
2O−、−(4,6−((CH
3)
2CH)
2)C
6H
2O−、−(4−((CH
3)
3C))C
6H
3O−、−(6−((CH
3)
3C))C
6H
3O−、−(4−((CH
3)
3C))(6−CH
3)C
6H
3O−、−(CH
3)N−、−(CH
3CH
2)N−、−((CH
3)
3C)N−、−(cyclo−C
6H
11)N―、−(cyclo−C
8H
15)N―、−(cyclo−C
12H
23)N―である。
【0033】
Xは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、置換フェニル基、アセチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、(R
6)
2N基、トリフルオロメチルスルホニル基を表す。ここで、R
6は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基を表す。このなかでも、Xは、好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、(CH
3CH
2)
2N基、トリフルオロメチルスルホニル基である。
【0034】
また、pは0〜5の整数であり、qは0〜4の整数であり、sは0〜2の整数である。
【0035】
(有機アルミニウム化合物(B))
有機アルミニウム化合物(B)としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、ジイソブチルオクチルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、イソブチルジオクチルアルミニウム、テトラメチルジアルミノキサン、テトラエチルジアミノキサン、テトラブチルジアルミノキサン、テトラヘキシルジアルミノキサン、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサン、これらの混合物、及びこれらのアミン類又はアルコール類変性物が挙げられる。有機アルミニウム化合物(B)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
(有機ホウ素化合物(C))
有機ホウ素化合物(C)としては、特に限定されないが、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。有機ホウ素化合物(C)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
重合方法としては、特に限定されないが、気相重合、スラリー重合、溶液重合が好ましく、特に溶液重合が好ましい。溶液重合においては、重合温度は、好ましくは20〜250℃であり、より好ましくは50〜200℃である。また、重合圧力は、好ましくは常圧〜3000気圧であり、より好ましくは1〜100気圧である。さらに、反応時間は、好ましくは1秒〜10時間であり、より好ましくは1秒〜5時間である。また、製造は連続重合プロセスを用いて実施することが望ましく、その場合には上記反応時間は平均滞留時間をいう。
【0038】
なお、共重合体の分子量調節を目的として、重合系に連鎖移動剤を添加してもよい。用いる連鎖移動剤は特に限定されないが、水素を用いることが好ましい。
【0039】
〔用途〕
本実施形態のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体は、アダマンタン構造を有することから、光学特性、耐候性、耐水性、耐熱性などの物性に優れる傾向にあり、主にフィルム、シート、レンズ、プリズム、光ファイバー、光記録媒体、並びに液晶表示素子などの光学製品に好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下に限定されない。得られた共重合体の性質は、下記の方法によって測定した。
【0041】
(1)融点
エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の融点は、示差走査熱量計(島津社製 DSC−60)を用いて、下記の状態調整後、次の条件で測定した。
【0042】
[測定条件]
状態調整:窒素気流下、室温から190℃まで10℃/分で昇温し、190℃に到達後直ちに190℃から室温まで10℃/分で降温した。
測定:状態調整後、窒素気流下で直ちに室温から190℃まで10℃/分で昇温し、このとき得られた融解ピークの頂点温度を融点とした。
【0043】
(2)1−ビニルアダマンタン誘導体の単位の含有量
エチレン−ビニルアダマンタン共重合体中の1−ビニルアダマンタン誘導体の単位の含有量は、下記式に従い核磁気共鳴吸収スペクトルの結果に基づいて求めた。
1−ビニルアダマンタン含有量(mol%)=100×{I(Cb)+I(Cd)}/3×{I(C1)+I(C2)+I(C3)+I(C4)+I(CM)}
(式中、I(C1)、I(C2)、I(C3)、I(C4)、I(CM)、I(Cb)、及びI(Cd)は、「(3)エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の同定方法」に示す共重合体のC1、C2、C3、C4、CM(C1〜4以外の主鎖炭素)、Cb、及びCdの13C−NMRの積分強度をそれぞれ示す。)
【0044】
[13C−NMR]
装置 BRUKER社製 AVANCE300
測定溶媒 オルトジクロロベンゼン−d
4(ロック溶媒:DMSO−d
6)
測定温度 120〜130℃
【0045】
(3)エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の同定方法
エチレン−ビニルアダマンタン共重合体の同定は、核磁気共鳴吸収スペクトルにより求めた。以下、ビニルアダマンタン単位付近の13C−NMRのピークを示す。なお、装置としては1−ビニルアダマンタン誘導体の単位の含有量を求める際に用いた装置と同様の装置を用いた。
[13C−NMR]
δ=29.6 (Cc),
30.4 (C3),
30.7 (C4),
36.4 (Ca),
38.0 (Cd),
37.6 (C2),
40.7 (Cb),
49.9 (C1).
【化6】
【0046】
[錯体の合成]
実施例及び比較例で行なった重合には以下の4種類の錯体を用いた。錯体AはSTREM Chemicalより入手した。錯体Bは文献(特開平11−12289号広報)、CおよびDは文献(K.Nomura, N. Naga, M. Miki, K. Yanagi、Macromolecules、31、7588−7597 (1998))に記載の方法により調製した。
【0047】
[第4族ハーフメタロセン化合物]
錯体A:エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド
Et(Ind)
2ZrCl
2
ここで、Etは、−CH
2CH
2―を表し、Indはインデニル基を表す。
【0048】
錯体B:ジメチルシリル(ターシャリーブチルアミド)(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド
η
5−C
5Me
4Si(Me)
2N(
tBu)TiCl
2
ここで、MeはCH
3−を、
tBuは(CH
3)
3C−を表す。
【0049】
錯体C:(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)チタニウムジクロライド
(η
5−C
5Me
5)(2,6−
iPrO)TiCl
2
ここで、MeはCH
3−を、
iPrは(CH
3)
2CH−を表す。
【0050】
錯体D:(ターシャリーブチルシクロペンタジエニル)(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)チタニウムジクロライド
(η
5−
tBuC
5H
4)(2,6−
iPrO)TiCl
2
ここで、
tBuは(CH
3)
3C−を、
iPrは(CH
3)
2CH−を表す。
【0051】
[1−ビニルアダマンタンの合成]
以下に、1−ビニルアダマンタンの合成経路を示す。具体的には、1−アセチルアダマンタン(東京化成株式会社製)を原料として、Chemische Berichte,(1960),vol.93, p2054−2057(著者:Stetter,H.; Rauscher,E)に従って1−アダマンチルエタノールを製造した。次いで、1−アダマンチルエタノールを原料として、米国特許3433844号に従って、ビニルアダマンタンを製造した。
【化7】
【0052】
[実施例1]
120℃の乾燥器で乾燥済みの30mLオートクレーブを乾燥窒素で十分に置換した。その後、オートクレーブに、上記のようにして得られた1−ビニルアダマンタンのトルエン溶液10mLを加えた。続いて東ソーファインケム製の修飾メチルアルモキサン(MMAO)のトルエン溶液と、第4族ハーフメタロセン化合物(錯体C)のトルエン溶液を加えた。オートクレーブ中の錯体Cの添加量は0.1μmolであり、MMAOの添加量は0.25mmolであり、1−ビニルアダマンタンの濃度は0.54であった。その後、オートクレーブを重合温度(60℃)に保った恒温槽中にセットし、内部をエチレンでパージした。パージ後、エチレン圧を重合圧力0.4MPa(ゲージ圧)にセットし、連続的にエチレンを供給しながら15分間、重合を行った。
【0053】
所定時間経過後、オートクレーブを氷浴で冷却し、内部のエチレンをパージした。パージ後、オートクレーブを解放し、エタノール(50mL程度)を加えて、触媒を失活させた。エタノール添加後、よく撹拌してから吸引濾過によりエチレン−ビニルアダマンタン共重合体を回収した。回収したエチレン−ビニルアダマンタン共重合体を、30℃のホットプレート上で一昼夜乾燥して溶媒を除去した後、収量を測定した。さらに、得られたポリマーをDSC、NMR、GPCにより解析した。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例2〜6、比較例1〜7]
第4族ハーフメタロセン化合物として用いる錯体及び錯体量、MMAO量、エチレン圧、1−ビニルアダマンタンの濃度、重合温度、重合時間を表1のように調整したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、共重合体を得た。得られたポリマーをDSC、NMR、GPCにより解析した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
なお、実施例4〜6においては、異なる融点を示すエチレン−ビニルアダマンタン共重合体が2種得られた。この理由は、活性化の際に共重合性の異なる2種類の活性種が生成したためと考えられる。具体的には、実施例4〜6のうち、高融点側のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体は錯体の分解(フェノキシ基の脱離)により生成した活性種、すなわちCp
*TiCl
3(Cp
*:η5-1,2,3,4,5-pentamethylcyclopentadienyl)から生成した活性種により生成した共重合体と考えられ、低融点側のエチレン−ビニルアダマンタン共重合体は用いた錯体活性種により生成した共重合体と考えられるが、これに限定されない。
【0057】
図1は、実施例5で得られたエチレン−ビニルアダマンタン共重合体の13C−NMRスペクトルであり、
図2は、実施例5で得られたエチレン−ビニルアダマンタン共重合体を加熱したキシレンに溶解させ、冷却後に析出する固体を除くことで得られた低結晶性成分の13C−NMRスペクトルである。