特許第6366277号(P6366277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366277調光装置、調光窓、及び調光装置用の光学積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366277
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】調光装置、調光窓、及び調光装置用の光学積層体
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/24 20060101AFI20180723BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180723BHJP
   G02B 26/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   E06B9/24 E
   G02B5/30
   G02B26/02 G
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-3743(P2014-3743)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-132093(P2015-132093A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】麻野井 祥明
(72)【発明者】
【氏名】松田 祥一
(72)【発明者】
【氏名】武本 博之
(72)【発明者】
【氏名】亀山 忠幸
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−293889(JP,A)
【文献】 特開2013−231761(JP,A)
【文献】 特開2011−090042(JP,A)
【文献】 特開2010−244681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/24
G02B 5/30
G02B 26/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収軸方向が異なる複数の偏光領域を有する第1のパターニング偏光板と、前記第1のパターニング偏光板と同じ偏光領域を有する第2のパターニング偏光板と、位相差板と、を有し、
前記第1及び第2のパターニング偏光板のうち少なくとも何れか一方が面方向にスライド可能に設けられており、
前記位相差板が、23℃で波長590nmにおける面内位相差値が100nm以上の1/4波長板若しくは3/4波長板、又は、23℃で波長590nmにおける面内位相差値が4000nm以上の超高位相差板である、調光装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のパターニング偏光板の各々が、少なくとも第1偏光領域と第2偏光領域を有し、
前記第1偏光領域の吸収軸方向と前記第2偏光領域の吸収軸方向が直交している請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記位相差板が、前記第1及び第2のパターニング偏光板の外側に設けられている請求項1又は2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記位相差板の遅相軸方向が、前記第1及び第2のパターニング偏光板が有する複数の偏光領域の全ての吸収軸方向と非平行である請求項1〜3の何れか一項に記載の調光装置。
【請求項5】
前記位相差板の遅相軸方向と前記複数の偏光領域の吸収軸方向との成す角度が、10°〜80°の範囲内にある請求項4に記載の調光装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の調光装置と、前記調光装置の調光対象である透光板と、を有する調光窓。
【請求項7】
前記透光板が、光学的に等方性を有する請求項6に記載の調光窓。
【請求項8】
前記透光板が、窓ガラスである請求項6又は7に記載の調光窓。
【請求項9】
前記透光板が、前記調光装置の外側に配置されている請求項6〜8の何れか一項に記載の調光窓。
【請求項10】
吸収軸方向が異なる複数の偏光領域を有するパターニング偏光板と、位相差板と、を有し、
前記位相差板が、23℃で波長590nmにおける面内位相差値が100nm以上の1/4波長板若しくは3/4波長板、又は、23℃で波長590nmにおける面内位相差値が4000nm以上の超高位相差板である、調光装置用の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過量を調整可能な調光装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収軸方向が異なる複数の偏光領域を有するパターニング偏光板が知られており、この偏光板を2枚用いることにより調光装置を構成できることが知られている(例えば、特許文献1)。
具体的には、パターニング偏光板は、ある方向に吸収軸を有する第1偏光領域と、前記第1偏光領域の吸収軸方向に直交する方向に吸収軸を有する第2偏光領域と、を有し、第1偏光領域と第2偏光領域が面内に交互に配設されている。そして、2枚の前記偏光板が対面するように並設することで調光装置を構成することができる。
調光装置は、2枚の偏光板を面方向にスライドさせることができる。そのため、2枚の偏光板の第1偏光領域同士及び第2偏光領域同士を重ならせ、或いは、一方の偏光板の第1偏光領域と他方の偏光板の第2偏光領域とを重ならせることにより、調光装置から出る光の明るさを調節できる。
【0003】
つまり、第1偏光領域と第2偏光領域とが重なった状態(遮光状態)では、第1偏光領域の吸収軸方向と第2偏光領域の吸収軸方向が直交する。そのため、理論上、調光装置の反視認側から入射した光の全てが調光装置によって遮られ、その視認側には光が到達しなくなる。つまり、調光装置の反視認側から入射した光は、反視認側に位置する偏光板によって特定の直線偏光に変換される(入射光から特定の直線偏光が抽出される)。この直線偏光は、視認側に位置する偏光板を透過しない。従って、調光装置の視認側に光が到達しない。
他方、2枚の偏光板の第1偏光領域同士及び第2偏光領域同士が重なった状態(透光状態)では、吸収軸方向は互いに平行である。この場合、調光装置の反視認側から入射した光は、反視認側に位置する偏光板によって特定の直線偏光に変換され、この直線偏光は視認側に位置する偏光板を透過する。従って、調光装置の視認側に光が到達する。
この調光装置を、調光を必要とする透光板(例えば、窓ガラス)に適用することで調光窓を構成することができる。この調光窓は、調光装置を備えているため、透光状態と遮光状態を切り替えることができる。そのため、調光窓の視認側(例えば、室内)に入る光の量を適度に調整することができる。
【0004】
上述のように、透光状態では、特定の直線偏光が調光装置や調光窓を透過するため、その視認側に光が到達することができる。しかしながら、視認側において透光状態の調光装置や調光窓を観察した場合、第1偏光領域と第2偏光領域との間に色むら(濃淡差)が生じる場合がある。この色むらは、第1及び第2偏光領域の領域形状に対応して発生する。そのため、例えば、第1及び第2偏光領域が帯状に交互に設けられていた場合、ストライプ状のパターン模様が浮かび上がる。このような色むら、及び色むらに起因するパターン模様の発生は、調光装置や調光窓の美感を損ねるという問題がある。特に、前記色むらは、調光装置や調光窓を視認側斜め方向から観察した際に顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−310567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、色むらが生じ難い調光装置、及び調光窓を提供することであり、さらに、調光装置に適した光学積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、色むらの発生原因について鋭意研究したところ、その一因は、複数の偏光領域間における透過率差であることを発見し、この透過率差を小さくすることで色むらが発生し難くなることを見出した。
【0008】
本発明の調光装置は、吸収軸方向が異なる複数の偏光領域を有する第1のパターニング偏光板と、前記第1のパターニング偏光板と同じ偏光領域を有する第2のパターニング偏光板と、位相差板と、を有し、前記第1及び第2のパターニング偏光板のうち少なくとも何れか一方が面方向にスライド可能に設けられており、前記位相差板が、23℃で波長590nmにおける面内位相差値が100nm以上の1/4波長板若しくは3/4波長板、又は、23℃で波長590nmにおける面内位相差値が4000nm以上の超高位相差板である
【0009】
本発明の好ましい調光装置は、前記第1及び第2のパターニング偏光板の各々が、少なくとも第1偏光領域と第2偏光領域を有し、前記第1偏光領域の吸収軸方向と前記第2偏光領域の吸収軸方向が直交している。
また、好ましくは、前記位相差板は、前記第1及び第2のパターニング偏光板の外側に設けられている
【0010】
本発明の好ましい調光装置は、前記位相差板の遅相軸方向が、前記第1及び第2のパターニング偏光板が有する複数の偏光領域の全ての吸収軸方向と非平行である。また、好ましくは、前記位相差板の遅相軸方向と前記複数の偏光領域の吸収軸方向との成す角度が、10°〜80°の範囲内にある。
【0011】
本発明の別の局面によれば、調光窓を提供する。本発明の調光窓は、前記調光装置と、前記調光装置の調光対象である透光板と、を有する。
また、本発明の好ましい調光窓は、前記透光板が、光学的に等方性を有する。また、好ましくは、前記透光板が、窓ガラスである。また、好ましくは、前記透光板は、前記調光装置の位相差板よりも外側に配置されている。
【0012】
本発明の別の局面によれば、調光装置用の光学積層体を提供する。本発明の調光装置用の光学積層体は、吸収軸方向が異なる複数の偏光領域を有するパターニング偏光板と、位相差板と、を有し、前記位相差板が、23℃で波長590nmにおける面内位相差値が100nm以上の1/4波長板若しくは3/4波長板、又は、23℃で波長590nmにおける面内位相差値が4000nm以上の超高位相差板である
【発明の効果】
【0013】
本発明の調光装置は、位相差板を有するため、複数の偏光領域間における透過率差が少なくなり、その結果、調光装置の視認側に色むらが発生することを効果的に防止できる。
また、本発明の調光装置用の光学積層体を用いることにより、前記調光装置を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】1つの実施形態に係る調光装置を模式的に表した斜視図。
図2】1つの実施形態に係るパターニング偏光板を模式的に表した平面図。
図3図2のIII−III線で切断した拡大断面図。
図4】他の実施形態に係るパターニング偏光板を模式的に表した平面図。
図5】遅相軸と吸収軸との関係を示すため、1つの実施形態に係る調光装置を模式的に表した斜視図(但し、第1のパターニング偏光板を省略している)。
図6】透光状態と遮光状態の切り替え方法を説明するため、1つの実施形態に係る調光装置を模式的に表した斜視図(但し、位相差板を省略している)。
図7】1つの実施形態に係る調光窓を模式的に表した斜視図。
図8】他の実施形態に係る調光窓を模式的に表した斜視図。
図9】実施例及び比較例で用いた偏光フィルム片の作製方法を表した参考図。同図の破線は切り取り線を意味する。
図10】実施例及び比較例の光学積層体の全光線透過率の測定角度(極角)を表した参考図。
図11】実施例及び比較例の光学積層体の透過率の変化(極角0°〜80°まで)をプロットしたグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
本明細書において、用語の前に、「第1」や「第2」などを付す場合があるが、この第1などは、用語を区別するために付加されたものであり、用語の優劣や順序などを意味しない。また、角度及びその関係(例えば、直交、平行、45°など)は、本発明の属する技術分野において許容される誤差範囲を含むものとする。例えば、平行などは、厳密な角度±5°の範囲内であることを意味し、好ましくは、±3°の範囲内である。
本明細書において、「PPP〜QQQ」という記載は、「PPP以上QQQ以下」を意味する。
【0016】
[調光装置の概要]
図1に示すように、本発明の調光装置1Aは、第1のパターニング偏光板21と、第2のパターニング偏光板22と、位相差板3と、を有する。第1のパターニング偏光板21は、その面内に、吸収軸方向が異なる複数の偏光領域を有し、第2のパターニング偏光板22は第1のパターニング偏光板21と同じ偏光領域を有する。第1及び第2のパターニング偏光板21,22のうち少なくとも何れか一方を面方向にスライドさせることで、調光装置1Aの透光状態と遮光状態を切り替えることができる。
第1及び第2のパターニング偏光板21,22並びに位相差板3の位置関係は特に限定されず、透光・遮光対象となる光を発する光源の位置によって適宜変更することができる。もっとも、位相差板3は、第1及び第2のパターニング偏光板21,22の外側に配置されることが好ましい。つまり、位相差板3は、第1のパターニング偏光板21と第2のパターニング偏光板の間(第1及び第2のパターニング偏光板21,22の内側)に配置されていないことが好ましい。
図1に示す実施形態では、調光装置1Aの一方外側(視認側)から他方外側(反視認側)にかけて第1のパターニング偏光板21、第2のパターニング偏光板22、及び位相差板3がこの順に配置されている。
なお、反視認側とは、調光装置の遮光・透光対象となる光を発する光源が存在する側であり、視認側とは、調光装置1Aを隔てた反視認側とは反対の側である。
調光装置1Aを第1及び第2のパターニング偏光板21,22の両側から視認するのであれば(調光装置1Aの両側に光源があるのであれば)、両パターニング偏光板21,22の外側であって、第1のパターニング偏光板側(即ち、一方外側)及び第2のパターニング偏光板側(即ち、他方外側)の両方に位相差板3を設けることもできる。この場合、少なくとも2枚の位相差板3,3が使用される。2枚の位相差板3,3は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
本発明の調光装置1Aは、他の層をさらに有していてもよい。もっとも、第1のパターニング偏光板21と第2のパターニング偏光板22の間には、他の層を介在させない、又は、光学的等方性を有する層(光学的異方性を有さない層)のみを介在させることが好ましい。第1のパターニング偏光板21と第2のパターニング偏光板22との間に光学的異方性を有する他の層を介在させると、この他の層によって第2のパターニング偏光板22を透過した直線偏光の方向性が乱され、第1のパターニング偏光板21によって調光装置1Aの透光状態と遮光状態を切り替え難くなる虞があるためである。
例えば、位相差板3の反視認側には、公知の保護層や反射防止層などを設けてもよく、第1のパターニング偏光板21の視認側には、さらに別の位相差板などを設けてもよい。
【0018】
本発明の調光装置は、単独で用いることもできるし、調光対象となる透光板に適用することで、調光窓を構成することもできる。調光窓の具体的な構成については後述する。
以下、本発明の調光装置の各部材について説明する。
【0019】
[パターニング偏光板]
パターニング偏光板は、その面内に、吸収軸方向が異なる複数の偏光領域を有する部材である。複数の偏光領域は、パターニング偏光板の面内に、規則的に設けられていてもよいし、或いは、不規則に設けられていてもよいが、複数の偏光領域は、規則的に設けられていることが好ましい。また、好ましくは、複数の偏光領域は、一方向に並んで設けられる。
偏光領域は、自然光又は各種偏光を直線偏光に変換するという光学特性を有する領域である。つまり、偏光領域は、自然光又は各種偏光が当たった際に、特定の直線偏光を透過するという光学特性を有する領域である。
複数の偏光領域のそれぞれの単体透過率は、特に限定されないが、例えば、10%〜90%の範囲である。
【0020】
パターニング偏光板は、複数の偏光領域を有しておれば特に限定されず、1層構造であってもよいし、2層以上の層を有する多層構造であってもよい。
例えば、図3に示すように、パターニング偏光板21(22)は、基材4と、基材4の表面に積層された配向層5と、配向層5の表面に積層されたパターニング偏光層6と、を有する。
基材は、例えば、平面視長方形状に形成されている。もっとも、基材の形状は、これに限定されず、長尺状(長手方向が非常に長い長方形状)、その他、任意の形状に形成されていてもよい。基材の厚みは、特に限定されないが、例えば、20μm〜200μmであり、好ましくは、30μm〜100μmである。
【0021】
図2及び図3に示すように、パターニング偏光層6は、吸収軸方向の異なる少なくとも2つの偏光領域を有する。以下、これらの偏光領域を、第1偏光領域61及び第2偏光領域62と記す。
第1偏光領域61の厚みと第2偏光領域62の厚みは、異なっていてもよいが、好ましくは、図3に示すように同じである。第1偏光領域61及び第2偏光領域62の各厚みは、例えば、それぞれ独立して0.01μm〜10μmであり、好ましくは0.1μm〜5μmであり、特により好ましくは0.1μm〜1μmである。
第1偏光領域61及び第2偏光領域62は、それぞれ面内に吸収軸を有する。図2では、第1偏光領域61及び第2偏光領域62は、基材4の長手方向に交互に配置されている。第1偏光領域61及び第2偏光領域62は、何れも基材4の短手方向に延びる平面視帯状である。なお、基材4の短手方向は、基材4の面内において基材4の長手方向と直交する方向である。
もっとも、本発明のパターニング偏光板は、図2に示した実施形態に限定されず、図4に示すような形態であってもよい。図4では、第1偏光領域61及び第2偏光領域62は、基材4の短手方向に交互に配置されている。第1偏光領域61及び第2偏光領域62は、何れも基材の長手方向に延びる平面視帯状である。
【0022】
第1偏光領域61の吸収軸方向と第2偏光領域62の吸収軸方向は、互いに異なっていればその方向性は特に限定されないが、第1偏光領域61の吸収軸方向が、第2偏光領域62の吸収軸方向に対して直交していることが好ましい。図2及び図4では、第1偏光領域61の吸収軸方向は、基材4の長手方向に対して平行であり、第2偏光領域62の吸収軸方向は、基材4の長手方向に対して直交(即ち、短手方向に対して平行)している。
なお、各平面図中の太白矢印は、各偏光領域の吸収軸の方向を表す(以下、同様)。また、各偏光領域の透過軸は、偏光領域の面内で前記吸収軸と直交する方向に生じる。
【0023】
前記第1偏光領域と第2偏光領域は、同じ材料で形成されていてもよいし、或いは、互いに異なる形成材料で形成されていてもよい。好ましくは、第1偏光領域と第2偏光領域の透過率差を少なくするため、第1偏光領域と第2偏光領域は、同じ形成材料で形成される。また、第1偏光領域と第2偏光領域は、それぞれ2以上の層の積層物から構成されていてもよい。
図3では、第1偏光領域61及び第2偏光領域62は、同じ材料で形成された単一層からなる。同じ材料から形成された第1偏光領域61及び第2偏光領域62は、吸収軸の方向が異なっていることを除いて、連続した1つの層からなる。前記連続した1つの層は、図3に示すように、複数の偏光領域61,62の境界に、構造上の界面が認められないことをいう。複数の偏光領域61,62が連続した1つの層から構成されていることにより、偏光領域間の境界に応力が生じないので、各偏光領域61,62の寸法安定性が向上する。
【0024】
第1偏光領域61の幅と第2偏光領域62の幅は、同じである。好ましくは、第1偏光領域61と第2偏光領域62は、同形同大である。各偏光領域61,62の幅の具体的寸法は、適宜設定でき、例えば、数mm〜10cmである。
前記第1偏光領域61及び第2偏光領域62の幅は、図2の場合には、紙面を基準にして、それらの領域の縦方向の長さであり、図4の場合には、横方向の長さである。
【0025】
第1偏光領域61及び第2偏光領域62が設けられている図示例にあっては、配向層5は、2種類設けられている。1つの配向層51(第1配向層51)は、第1偏光領域61に対応して、基材4と第1偏光領域61の間に介在されており、もう1つの配向層52(第2配向層52)は、第2偏光領域62に対応して、基材4と第2偏光領域62との間に介在されている。
第1配向層51は、偏光領域の形成材料を所定の方向に配向させ、上記吸収軸方向の第1偏光領域61を形成する機能を有し、第2配向層52は、偏光領域の形成材料を所定の方向に配向させ、上記吸収軸方向の第2偏光領域62を形成する機能を有する。
第1配向層51及び第2配向層52は、同じ材料で形成されていてもよいし、或いは、互いに異なる材料で形成されていてもよい。また、第1配向層51及び第2配向層52は、互いに厚みが異なっていてもよいし、或いは、同じ厚みでもよいが、同じ厚みであることが好ましい。前記第1配向層51及び第2配向層52の各厚みは、例えば、それぞれ独立して0.1μm〜10μmである。また、第1配向層51の幅と第2配向層52の幅は、同じである。
以下、パターニング偏光板の各部について詳述する。
【0026】
(基材及び配向層)
基材は、パターニング偏光層を支持できるものであれば特に限定されない。基材としては、例えば、柔軟性のあるポリマーフィルム、柔軟性のある金属薄板などが挙げられる。また、基材の表面に、コロナ処理などの親水化処理が施されていてもよい。
好ましくは、基材として、ポリマーフィルムが用いられ、好ましくは透明性に優れたポリマーフィルム(例えば、ヘイズ値3%以下)が用いられる。
上記ポリマーフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系;トリアセチルセルロース等のセルロース系;ポリカーボネート系;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系;ポリスチレン等のスチレン系;ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン等のオレフィン系;などが挙げられる。前記二色性液晶化合物を良好に配向させるために、ノルボルネン系フィルムを用いることが好ましい。
基材の厚みは、特に限定されないが、例えば、ポリマーフィルムを用いる場合には、20μm〜100μmである。
【0027】
また、基材の表面に、配向処理が施されていることが好ましい。配向処理を施すことにより、基材上に配向規制力が付与されるため、基材上にパターニング偏光層を良好に形成することができる。配向規制力の付与方法としては、例えば、(1)基材の表面をラビング処理すること;(2)基材の表面にポリイミドなどの膜を形成し、その膜の表面をラビング処理することにより、基材の表面に配向層を形成すること;(3)基材の表面に光反応性化合物からなる膜を形成し、その膜に光照射することにより、基材の表面に配向層を形成すること;(4)基材の表面に磁場などを作用させること;などが挙げられる。
図3に示す実施形態では、基材上に配向層を形成すること(上記(2)及び(3)の方法)によって基材に配向規制力が付与されている。
【0028】
前記配向処理の配向方向は、特に限定されず、パターニング偏光層の偏光領域の吸収軸を発現させたい方向を考慮して適宜設定される。
例えば、任意の方向に配向した第1配向層及びこれと直交する方向に配向した第2配向層を、それぞれ基材の表面に形成することにより、図2及び図4に示すような、吸収軸が互いに直交する方向に生じる2つの偏光領域を有するパターニング偏光層を基材上に形成できる。
配向層の形成方法は、特に限定されず、従来公知な方法を採用でき、例えば、光配向層の形成が好ましい。前記配向層の形成材料及び形成方法としては、特開2007−133184号及び特開2000−226448号などに詳しく開示されている。これらの公報の配向層の形成材料及び形成方法を本明細書に記載したものとして、それらの記載を省略するが、必要に応じて、配向層に関する記載をそのまま本明細書に取り込むことができるものとする。
【0029】
(パターニング偏光層)
パターニング偏光層の形成方法は、偏光領域を形成できるものであれば特に限定されない。偏光領域は、例えば、既存の偏光フィルム(例えば、PVAフィルムにヨウ素などの二色性色素を吸着させ、延伸したフィルム)を基材上に貼り合わすことでも形成できるし、基材上に形成材料が配向するように塗布・乾燥することでも形成できる。
本発明のパターニング偏光層の形成材料としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、イミダゾール系、インジゴイド系、オキサジン系、フタロシアニン系、トリフェニルメタン系、ピラゾロン系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、ナフトキノン系、メロシアニン系、キノフタロン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、及びニトロソ系の化合物等を例示できる。これらは1種単独で、又は2種以上を併用できる。
【0030】
好ましくは、パターニング偏光層の形成材料としては、二色性液晶化合物が用いられ、より好ましくは、リオトロピック液晶性を有する二色性液晶化合物が用いられる。二色性液晶化合物を用いることにより、配向処理が施された基材上に、二色性液晶化合物を含む塗布液を塗布するだけで、所定方向に吸収軸を有する複数の偏光領域を簡易に形成できる。また、前記二色性液晶化合物は、少なくとも可視光領域(波長380nm〜780nm)で吸収を示す化合物が好ましい。
【0031】
前記リオトロピック液晶性は、溶媒に溶解させた溶液状態で、溶液の温度や濃度などを変化させることにより、等方相−液晶相の相転移を起こす性質である。
前記等方相は、巨視的な光学的性質が方向により異ならない(光学的異方性を示さない)状態の相である。
前記リオトロピック液晶性を有する化合物は、溶液状態で液晶相を示し、超分子を形成する性質を有する。前記超分子の構造は、特に限定されず、球状構造、柱状構造、管状構造のようなミセル構造;ラメラ構造;などが挙げられる。前記液晶相は、偏光顕微鏡で観察される光学模様によって、確認、識別できる。
【0032】
例えば、本発明のパターニング偏光層の形成材料として、下記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物が用いられる。このジスアゾ化合物は、リオトロピック液晶性を有し、可視光領域に吸収を示す二色性液晶化合物である。
【0033】
【化1】
【0034】
一般式(1)において、Q及びQは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表す。
前記置換若しくは無置換のアリール基は、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているアリール基を含む。前記置換若しくは無置換のアリーレン基も同様に、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているアリーレン基を含む。
なお、本明細書において、「置換若しくは無置換」とは、「置換基を有する又は置換基を有さない」という意味である。
【0035】
前記Q及びQで表されるアリール基としては、フェニル基の他、ナフチル基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基などが挙げられる。前記Q及びQで表されるアリール基が置換基を有する場合、その置換基は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のチオアルキル基、ジヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数6〜20のフェニルアミノ基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、アセトアミド基、リン酸基、−OH基、−SOM基、−COOM基、−NHR基、−CONHR基などである。ただし、前記Mは、対イオンを表す。前記−NHR基のRは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、置換若しくは無置換のフェニル基などが挙げられる。
前記Q及びQで表されるアリール基が置換基を有する場合、前記置換基は、それぞれ1つでもよいし、それぞれ2つ以上でもよい。
【0036】
前記Qは、好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているフェニル基を含む)又は置換若しくは無置換のナフチル基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているナフチル基を含む)であり、より好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基であり、特に好ましくは置換基を有するフェニル基である。
前記Qは、好ましくは置換若しくは無置換のナフチル基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているナフチル基を含む)であり、より好ましくは置換基を有するナフチル基であり、特に好ましくは置換基として極性基を有するナフチル基である。前記極性基としては、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、ニトロ基、アセトアミド基、リン酸基、−OH基、−SOM基、−COOM基、−NHR基、−CONHR基が挙げられる。前記極性基は、好ましくは−OH基、−SOM基、及び−NHR基である。
【0037】
前記Qで表されるアリーレン基としては、フェニレン基の他、ナフチレン基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基などが挙げられる。前記Qで表されるアリーレン基が置換基を有する場合、その置換基としては、上述したような基が挙げられる。
前記Qで表されるアリール基が置換基を有する場合、前記置換基は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。
前記Qは、好ましくは置換若しくは無置換のナフチレン基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているナフチレン基を含む)であり、より好ましくは極性基を有するナフチレン基であり、特に好ましくは−SOM基を有するナフチレン基である。
【0038】
上記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物の中で、好ましいジスアゾ化合物を、下記一般式(2)で表し、より好ましいジスアゾ化合物を一般式(3)で表す。
【0039】
【化2】
【0040】
【化3】
【0041】
一般式(2)において、Q及びQは、一般式(1)と同様である。一般式(2)及び(3)において、Rは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、lは、−NHR基の置換数である0〜2の整数を表し、Mは、対イオンを表し、mは、−SOM基の置換数である0〜6の整数を表す。ただし、0≦l+m≦6である。一般式(3)において、nは、−SOM基の置換数である0〜4の整数を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−OH基、炭素数1〜4のアルコキシ基、−SOM基、−COOM基、−NHR基、又は−CONHR基を表す。前記Xにおいて、M及びRは、前記と同様である。
ただし、m及びnのうち少なくとも何れか一方は、1以上の整数である。l、m及びnが2以上である場合、それぞれ置換基は同一でもよいし、又は異なっていてもよい。
【0042】
前記M(対イオン)としては、水素イオン;Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属イオン;Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属イオン;その他の金属イオン;アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムイオン;有機アミン由来の陽イオンなどが挙げられる。有機アミンとしては、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシル基を有する炭素数1〜6の低級アルキルアミンなどが挙げられる。各一般式において、Mが2価以上の陽イオンである場合、そのMは、他の陰イオンと静電的に結合して安定化しているか、或いは、そのMは他のジスアゾ化合物と共有されて安定化している。
【0043】
上記一般式(1)乃至(3)で表されるジスアゾ化合物は、例えば、細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行、135頁〜152頁)に従って合成できる。
例えば、置換基を有するアニリン化合物をジアゾニウム塩化し、これをアミノナフタレンスルホン酸化合物とカップリング反応させることにより、モノアゾアニリン化合物を得る。このモノアゾアニリン化合物を、ジアゾニウム塩化した後、これをアニリノ−ヒドロキシナフタレンジスルホン酸と弱アルカリ性下においてカップリング反応させることにより、上記ジスアゾ化合物を得ることができる。
【0044】
パターニング偏光層中の二色性液晶化合物の含有量は特に限定されない。例えば、パターニング偏光層中における二色性液晶化合物の含有量は、50質量%〜100質量%であり、好ましくは80質量%〜100質量%である。
また、前記パターニング偏光層には、二色性液晶化合物以外に、他の成分が含まれていてもよい。前記他の成分としては、二色性を有さない液晶化合物、ポリマー、及び添加剤などが挙げられる。前記添加剤としては、相溶化剤、界面活性剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。
前記他の成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、0質量%を超え50質量%以下であり、好ましくは0質量%を超え20質量%以下である。
【0045】
(パターニング偏光板の製造方法)
本発明のパターニング偏光板の製造方法の一例について説明する。本製造方法は、上記二色性液晶化合物と溶媒とを含む塗布液を基材の上に塗布する工程を有する。ここで、塗布とは、塗布液を基材の表面に付着させて塗膜を形成することを意味する。
本発明のパターニング偏光板の製造方法は、前記塗布工程以外の工程を有していてもよい。例えば、前記製造方法は、前記塗布工程によって得られた塗膜を乾燥する工程を有していてもよい。前記基材は、上述のように配向規制力が付与された基材である。
【0046】
(1)塗布液の調製
前記塗布液は、二色性液晶化合物と、その二色性液晶化合物を溶解又は分散させる溶媒と、を含む。使用する二色性液晶化合物は、上述した中から選ばれる1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
塗布液は、水系溶媒などの溶媒に、前記二色性液晶化合物を溶解又は分散させることによって得られる。なお、必要に応じて、前記二色性液晶化合物以外に、上述した他の成分を前記溶媒に添加してもよい。
【0047】
前記溶媒は、特に限定されず、従来公知の溶媒を用いることができるが、水系溶媒が好ましい。水系溶媒としては、水、親水性溶媒、水と親水性溶媒の混合溶媒などが挙げられる。前記親水性溶媒は、水に略均一に溶解する溶媒である。親水性溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;酢酸エチルなどのエステル類;などが挙げられる。上記水系溶媒は、好ましくは、水、又は、水と親水性溶媒の混合溶媒が用いられる。
【0048】
上記塗布液は、液温や二色性液晶化合物の濃度などを変化させることにより、液晶相を示す。
塗布液中における二色性液晶化合物の濃度は、特に限定されないが、二色性液晶化合物が析出しない濃度であることが好ましい。また、前記液中において二色性液晶化合物が液晶相を示す濃度でもよいし、液晶を示さない濃度であってもよい。前記塗布液中における二色性液晶化合物の濃度は、好ましくは0.05質量%〜50質量%であり、より好ましくは0.5質量%〜40質量%であり、特に好ましくは2質量%〜30質量%である。
【0049】
また、前記塗布液は、適切なpHに調整される。塗布液のpHは、好ましくはpH2〜10程度、より好ましくはpH6〜8程度である。
さらに、前記塗布液の温度は、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜30℃に調整される。
前記塗布液は、適切な粘度に調整される。塗布液の粘度(23℃)は、好ましくは1mPa・s〜500mPa・sである。
【0050】
(2)塗布液の塗布
上記塗布液を、配向層などの配向処理が成された基材上に塗布し、塗膜を形成する。
塗布液は、各種のコーターを用いて塗布できる。前記コーターとしては、特に限定されず、例えば、バーコーター、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどが挙げられる。
【0051】
塗布液を塗布する基材は、上述したような配向層などの配向処理が施されたものが好ましい。前記配向層などの配向方向、配向層などの形成領域及びその領域の配置などは、形成したいパターニング偏光層を考慮して適宜設定すればよい。配向処理が成された基材としては、例えば、その長手方向に延びる帯状の第1配向層及び第2配向層を、幅方向に交互に配置したものが挙げられる。
また、基材の平面形状は、枚葉状でもよいし、長尺状でもよい。長尺状の基材を用いることにより、ロールツーロール方式で、パターニング偏光板を連続的に製造することもできる。
【0052】
配向層の表面に塗布液をベタ状に塗布することにより、均一な塗膜を形成できる。
塗布液を配向層の表面に塗布すると、配向層の配向規制力の方向に従い、塗膜中の二色性液晶化合物が配向する。
なお、二色性液晶化合物の配向を高めるため、必要に応じて、前記塗膜を形成した後、磁場又は電場などを印加してもよい。
【0053】
(3)塗膜の乾燥
塗布後の塗膜(未硬化の塗膜)を乾燥することにより、配向された二色性液晶化合物が固定される。このようにして、基材上にパターニング偏光層が形成された、パターニング偏光板が得られる(硬化後の塗膜が、パターニング偏光層となる)。
前記未硬化の塗膜の乾燥は、自然乾燥、又は強制的な乾燥などで実施できる。強制的な乾燥としては、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。
なお、上記硬化後の塗膜の表面に、公知の耐水化処理を行ってもよい。
【0054】
<位相差板>
位相差板を設けることにより、視認側における調光装置の面内に色むらが発生することを効果的に抑制できる。位相差板の配置は、調光装置を第1のパターニング偏光板側から視認するのか、第2のパターニング偏光板側から視認するのかによって適宜変更できる。即ち、透光・遮光対象となる光を発する光源の位置によって位相差板の配置を適宜変更することができる。例えば、調光装置を第2のパターニング偏光板側から視認するのであれば、位相差板は調光装置の一方外側(第1のパターニング偏光板側)に設けられることが好ましい。また、調光装置を第1のパターニング偏光板側から視認するのであれば、位相差板は調光装置の他方外側(第2のパターニング偏光板側)に設けられることが好ましい。
さらに、調光装置を第1及び第2のパターニング偏光板の両側から視認するのであれば(調光装置の両側に光源があるのであれば)、調光装置の一方外側及び他方外側の両方に位相差板を設けることもできる。この場合、少なくとも2枚の位相差板が使用される。
【0055】
位相差板を設けることにより色むらの発生が抑制できる理由は明確ではないが、本発明者らは以下の様に推測している。
つまり、調光装置に入射する光(自然光など)は、偏光板へ入射する光の入射面に対し法線方向に光の電場が振動している偏光成分(s波成分)と、s波成分の電場振動方向と直交する方向に電場が振動している偏光成分(p波成分)と、を有している。
s波成分が、パターニング偏光板の第1偏光領域を透過する成分である場合、s波成分は第2偏光領域(第1偏光領域の吸収軸と直交する方向に吸収軸を有する)を透過しない。この場合、p波成分は、パターニング偏光板の第2偏光領域を透過するが第1偏光領域を透過しない。
ここで、入射光のs波成分とp波成分が等量で、且つ、s波成分とp波成分の光学的性質(振動方向を除く)が同じであれば、第1偏光領域の透過率と第2偏光領域の透過率は等しくなるため、両領域間に透過率差が発生せず、色むらも発生しないと言える。
しかしながら、光は、その性質上、反射などによりs波成分の方がp波成分に比して多くなる。そのため、調光装置に入射する光(例えば、自然光)のs波成分とp波成分の量を比較すると、s波成分の方が多い。また、浅い角度で光が偏光板へ入射した際、s波成分の方がp波成分に比して偏光板を透過し難い(即ち、反射し易い)という光学的特性がある。
そのため、s波成分とp波成分の量及び光学的性質の違いに起因して、第1偏光領域と第2偏光領域との間に透過率差が発生し、その結果、色むらが生じると考えられる。特に、s波成分とp波成分の量の相違が、色むらの発生に大きな影響を与えていると考えられる。
そこで、入射光がパターニング偏光板に入射する前に、位相差板を用い、調光装置に対する入射光の偏光状態を乱すことで、パターニング偏光板に入射するs波成分及びp波成分は略等量になると考えられる。従って、パターニング偏光板の第1及び第2偏光領域の透過率差が小さくなり、その結果、色むらの発生を抑制することができると考えられる。
【0056】
位相差板は、第2のパターニング偏光板に貼り合わされていてもよく、貼り合わされていなくてもよい。前者の場合、位相差板は、第2のパターニング偏光板の表面に接着剤や粘着剤を用いて直接的に貼り合わされていてもよく、第2のパターニング偏光板の表面に、位相差板以外の他の層を介して間接的に貼り合わされていてもよい。
好ましくは、位相差板は、第2のパターニング偏光板に直接的に貼り合わされている。
【0057】
本発明の位相差板は、直線偏光を円偏光又は楕円偏光に変換できるものであれば特に限定されず、例えば、1/4波長板(λ/4板ともいう)、3/4波長板、面内位相差値が4000nm以上である超高位相差板などを用いることができる。
【0058】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶モノマーを配向させた後、架橋、重合させた配向フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持した積層体などがあげられる。延伸処理は、例えばロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法などにより行うことができる。延伸倍率は、一軸延伸の場合には1.1〜6倍程度が一般的である。位相差板の厚みは特に制限されないが、一般的には10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0059】
前記高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0060】
前記液晶モノマーとしては、リオトロピック性、サーモトロピック性のいずれのものも用いることができるが、成形性の観点からサーモトロピック性のものが好適であり、例えば、アクリロイル基、ビニル基やエポキシ基等の官能基を導入したビフェニル誘導体、フェニルベンゾエート誘導体、スチルベン誘導体などを基本骨格としたもの等が挙げられる。このような液晶モノマーは、例えば、熱や光による方法、基材上をラビングする方法、配向補助剤を添加する方法等、適宜公知の方法を用いて配向させることができる。その後、この配向を維持した状態で、光、熱、電子線等により架橋および重合させることにより配向を固定化することができる。
【0061】
前記液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型のポリマーが例示できる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部にメソゲン基が結合した構造を有するポリマー、例えば、ネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマー、コレステリックポリマーなどがあげられる。
【0062】
位相差板の面内位相差値(Re[590])は特に限定されないが、好ましくは100nm以上である。位相差板が1/4波長板である場合、その面内位相差値(Re[590])は、好ましくは100〜200nmであり、より好ましくは120〜160nmである。位相差板が3/4波長板である場合、その面内位相差値(Re[590])は、好ましくは370〜470nmであり、より好ましくは400〜440nmである。位相差板が超高位相差板である場合、その面内位相差値(Re[590])は4000nm以上であり、好ましくは6000nm〜15000nmである。
なお、面内位相差値(Re[590])とは、23℃で波長590nmにおける面内位相差値をいう。Re[590]は、測定対象の厚みをd(nm)としたとき、Re[590]=(nx−ny)×dによって求めることができる。ここで、「nx」は、測定対象(ここでは、位相差板)の面内において屈折率が最大となる方向(通常、X軸方向という)の屈折率を示し、nyは、面内において前記X軸方向と直交する方向(通常、Y軸方向という)の屈折率を示す。
【0063】
好ましくは、位相差板として、面内位相差値(Re[590])が100nm以上の1/4波長板若しくは3/4波長板、又は、面内位相差値(Re[590])が4000nm以上の超高位相差板が用いられる。
これらの位相差板を用いることで、パターニング偏光板の複数の偏光領域間の透過率差をより小さくすることができ、色むらの発生をより効果的に防止することができる。
【0064】
また、位相差板の遅相軸方向は、第1及び第2のパターニング偏光板に含まれる複数の偏光領域の全ての吸収軸方向と非平行であることが好ましい。
図5は、本発明の一実施形態に係る調光装置1Aを模式的に表した斜視図であるが、便宜上、第1のパターニング偏光板21を省略している。また、図5中の太黒矢印は、位相差板3の遅相軸の方向を表す。
本実施例では、第2のパターニング偏光板22は、その長手方向に亘って交互に形成された第1偏光領域61及び第2偏光領域62を有する。第1偏光領域61の吸収軸方向は第2のパターニング偏光板22の長手方向に対して平行であり、第2偏光領域62の吸収軸方向は第2のパターニング偏光板22の短手方向に対して平行(即ち、第1偏光領域61の吸収軸と直交する)である。そして、第2のパターニング偏光板22の反視認側に配置された位相差板3は、その遅相軸方向が第1偏光領域61の吸収軸方向及び第2偏光領域62の吸収軸方向と45°に交わるように配置されている。
このように、位相差板3の遅相軸方向とパターニング偏光板21(22)の全ての吸収軸方向が非平行であれば、効果的に色むらの発生を抑制することができる。
なお、位相差板3の遅相軸方向と、パターニング偏光板21(22)の吸収軸方向との成す角度は特に限定されないが、好ましくは10°〜80°の範囲内であり、より好ましくは20°〜70°の範囲内であり、特に好ましくは40°〜50°の範囲内である。
図5では、遅相軸方向と第1偏光領域61の吸収軸方向の成す角度と、遅相軸方向と第2偏光領域62の吸収軸方向の成す角度とは等しい(共に45°である)。しかし、必ずしも両角度が同じである必要はなく、それぞれの角度が上記範囲内にあればよい。
【0065】
<調光装置の調光方法>
図6を参照しつつ本発明の調光装置の調光方法について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る調光装置1Aを模式的に表した斜視図であるが、便宜上、位相差板3を省略している。
本発明の調光装置1Aでは、第1のパターニング偏光板21及び第2のパターニング偏光板22のうち少なくとも何れか一方が面方向にスライド可能である。図6に示す例では、第1のパターニング偏光板21と第2のパターニング偏光板22は、共に、その長手方向に平行な吸収軸を有する第1偏光領域61と、第1偏光領域61の吸収軸と直交する方向に吸収軸を有する第2偏光領域62を有する。図6では、第1偏光領域61と第2偏光領域62は、パターニング偏光板21(22)の長手方向に交互に配設され、且つ、その短手方向に延びる帯状に設けられている。
【0066】
2枚のパターニング偏光板21(22)の何れか一方又は双方を長手方向一方側にスライドさせると、第1のパターニング偏光板21の第1偏光領域61が第2のパターニング偏光板22の第1偏光領域61に重なり、且つ、第1のパターニング偏光板21の第2偏光領域62が第2のパターニング偏光板22の第2偏光領域62に重なる。即ち、吸収軸方向が同じ偏光領域同士がパターニング偏光板21(22)のスライドによって重なり合う。この場合、第2のパターニング偏光板22を透過した直線偏光は、第1のパターニング偏光板21によって吸収されることなく第1のパターニング偏光板21の視認側へ透過する。即ち、調光装置1Aが透光状態となる。
他方、2枚のパターニング偏光板21(22)の何れか一方又は双方を長手方向他方側にスライドさせると、第1のパターニング偏光板21の第1偏光領域61が第2のパターニング偏光板22の第2偏光領域62に重なり、且つ、第1のパターニング偏光板21の第2偏光領域62が第2のパターニング偏光板22の第1偏光領域61に重なる。即ち、吸収軸方向が直交する偏光領域同士がパターニング偏光板21(22)のスライドによって重なり合う。この場合、第2のパターニング偏光板22を透過した直線偏光は、第1のパターニング偏光板21によって吸収され、第1のパターニング偏光板21の視認側へ透過しない。即ち、調光装置1Aが遮光状態となる。
【0067】
なお、図6では、第1及び第2偏光領域61,62がパターニング偏光板21(22)の長手方向に亘って交互に配設されているため、調光装置1Aの透光状態と遮光状態を切り替えるためにパターニング偏光板21(22)をその長手方向にスライドさせる必要がある。しかし、本発明はこの実施態様に限定されず、偏光領域の配設パターンに合わせて、スライド方向を適宜変更することができる。
例えば、図4に示すようなパターニング偏光板21(22)を2枚用いた調光装置の場合、パターニング偏光板21(22)をその短手方向にスライドさせることで透光状態と遮光状態を切り替えることが可能である。
【0068】
<本発明の調光装置の用途>
本発明の調光装置の用途は特に限定されない。本発明の調光装置は、それ単独で用いることもできるが、調光を必要とする既存の部材に適用することも可能である。好ましくは、調光装置は調光窓の部材として用いられる。調光窓は、調光装置と、調光対象となる透光板と、を有する。つまり、透光板に本発明の調光装置を適用することで、透光板に調光機能が付与された調光窓を構成することができる。
【0069】
図7は、本発明の調光窓1Bの一実施態様を模式的に表した斜視図である。図7では、透光板7が調光装置1Aの外側(反視認側)に配置されている。上述のように、調光装置1Aは、光の透過量を調整することが可能である。従って、調光窓1Bの反視認側から透光板7に入射した光が、その反対側(視認側)へ透過するまでに、調光装置1Aによってその光量が調整される。
なお、調光装置1Aの透光板7に対する取り付け位置は上記の実施形態に限定されない。例えば、透光板7が調光装置1Aの外側(視認側)に配置されていてもよく、透光板7が調光装置1Aの内側に配置されていてもよい。透光板7が調光装置1Aの内側に配置されているとは、例えば、透光板7が、位相差板3と第2のパターニング偏光板22の間に配置されている場合や、第2のパターニング偏光板22と第1のパターニング偏光板21の間に配置されている場合などである。
もっとも、透光板7が光学的異方性を有する場合、第1のパターニング偏光板21と第2のパターニング偏光板22の間に透光板7を配置しないことが好ましい。光学的異方性を有する透光板7によって第2のパターニング偏光板22を透過した直線偏光の方向性が乱され、調光装置1Aによって調光窓1Bの透光状態と遮光状態を切り替え難くなる虞があるためである。
【0070】
屋外と屋内の境界に調光窓1Bを設ける場合、透光板7よりも外側(視認側)に調光装置1Aを配置することで、風雨により調光装置1Aが劣化することを防止することができる。他方、透光板の耐久性が低い場合には、透光板7よりも外側(反視認側)に調光装置1Aを配置することで、透光板を風雨から保護することもできる。後者の場合、位相差板3の反視認側には位相差板3を保護する保護層を設けることが好ましい。
また、当然に、透光板7が調光装置7の内側に配置されている場合も、透光板7を風雨から保護することができる。
【0071】
また、図8は、他の実施形態に係る調光窓1Bを模式的に表した斜視図である。同図の調光窓1Bは、2枚の透光板7,7を有する。透光板7には、位相差板3及びパターニング偏光板21(22)が積層されており、光学積層体を構成している。
本調光窓1Bでは、2枚の光学積層体が、そのパターニング偏光板21(22)同士が対面するように配置されている。そして、両光学積層体のうち少なくとも一方を面方向にスライドさせることにより調光が可能となる。
本実施形態では、調光窓の両側に透光・遮光対象となる光を発する光源がある場合でも、その両側で色むらが発生することを効果的に抑制できる。
【0072】
透光板は、本発明の調光装置が取り付けられる透明な部材である。ここで、透明とは、可視光を透過する性質を有することを意味する。透明は、実質的に可視光を吸収せず、可視光域の全ての波長の光を透過する場合(以下、無色透明という)、及び、可視光域の一部の波長の光を吸収し、且つその波長以外の光を透過する場合(以下、有色透明という)を含む。透光板の全光線透過率は、好ましくは、70%以上である。なお、全光線透過率はJIS K7375に準じて測定される値である。
【0073】
透光板は、光学的異方性を有していてもよいが、好ましくは、光学的異方性を有さない(即ち、光学的等方性を有する)。上述のように、透光板が光学的異方性を有する場合、透光板と調光装置の配置を考慮しなければならない。他方、光学的等方性を有する透光板は、第1のパターニング偏光板と第2のパターニング偏光板の間に配置しても調光装置の調光機能を阻害せず、好適に色むらの発生を抑制することができる。
ここで、「透光板が光学的等方性を有する」とは、透光板の屈折率楕円体が、nx=nz=nyである場合だけでなく、nx≒nz≒nyである場合を含む。具体的には、透光板の面内複屈折率Δnxy(nx−ny)の絶対値、及び厚み方向複屈折率Δnxz(nx−nz)の絶対値が、0.0005以下である場合を含み、好ましくは0.0001以下であり、より好ましくは0.00005以下である。
なお、「nx」及び「ny」の定義は、上記位相差板の欄で述べたものと同じである。また、「nz」は、測定対象(ここでは、透光板)を23℃で波長590nmで測定した際における厚み方向の屈折率(測定対象のX軸方向及びY軸方向に直交する方向)を表す。
【0074】
透光板は、透明であれば特に限定されず、例えば、ガラス板や合成樹脂板などが用いられる。ガラス板は、化学的安定性が高く、表面の耐擦傷性が大きく、経年劣化が少ないという利点を有する反面、重量が大きく、衝撃に弱く、破損した場合にはその破片による負傷の可能性があるなどの欠点を有する。これに対して、合成樹脂板は、ガラス板と比較して、軽量で、衝撃に強く、破損した場合の負傷の可能性が低いという利点を有する反面、化学的安定性が低く、表面の耐擦傷性が低く、経年劣化が多いなどの欠点を有する。透光板は、ガラス板と合成樹脂板の上記特性を考慮して、用途に応じて適当なものを選択することができる。なお、ガラス板と合成樹脂板を重ね合わせた積層板を用いることもできる。
また、透光板の厚みは特に限定されないが、好ましくは、1mm〜30mmであり、より好ましくは1mm〜15mmである。
【0075】
本発明の調光装置の機能を鑑みると、調光装置は窓ガラスに適用されることが好ましい。この場合、窓ガラスと調光装置を有する調光窓は、室外(反視認側)から室内(視認側)へ入射する光の量を調光装置によって調整することができる。
調光窓は、屋内において一室と他室の間に設けられていてもよく、屋内と屋外との間に設けられていてもよい。前者の場合、調光窓に入射する光の大部分は、屋内に設置された蛍光灯などから発せられた光であり、後者の場合、調光窓に入射する光の大部分は、太陽から発せられた自然光である。どちらの場合でも、反視認側に光源が位置するように調光窓を設けることにより、視認側から調光窓を見た際に、その面内に色むらが観察され難くなる。
【0076】
<調光装置用の光学積層体>
また、上述したパターニング偏光板に位相差板を積層することにより、調光装置用の光学積層体を形成することができる。この光学積層体を用いることで、調光装置の視認側において効果的に色むらの発生を抑制することができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに説明する。ただし、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
<実施例1>
(偏光フィルム片の用意)
まず、図9に示すような長方形状の偏光フィルム(日東電工(株)製、製品名「SEG1425DU」)を用意した。この偏光フィルムは、同図に示すように、吸収軸をフィルムの長手方向と平行な方向に有する。この、偏光フィルムを、その短手方向と平行な方向に切り取ることで、幅25mmの第1偏光フィルム片を複数得た。なお、図9において、破線部は偏光フィルム片の切り取り線である。
次に、同偏光フィルムを、その長手方向と平行な方向に切り取ることで、幅25mmの第2偏光フィルム片を複数得た。
【0079】
(パターニング偏光板の作製)
厚み200μmの非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂(株)製、製品名「ノバクリアSG−007」)をテンター延伸機を用いて87℃で4.0倍延伸して位相差板を作製した。得られた位相差板の厚みは52μmであり、その面内位相差値(Re[590])は、4450nmであった。
次に、縦165mm×横65mm×厚み1.3mmの矩形状のガラス板(松浪硝子工業(株)社製、製品名「S200423」)を用意し、その表面に前記位相差板を粘着剤を用いて貼り合わせた。なお、位相差板は、その遅相軸が、後述する第1偏光領域の吸収軸方向と第2偏光領域の吸収軸方向と45°で交叉するように貼り合わされた。
次に、位相差板の表面に、第1偏光フィルム片及び第2偏光フィルム片を接着した。第1偏光フィルム片と第2偏光フィルム片は、ガラス板の縦方向(長手方向)に交互に配置するように接着された。
このようにして、ガラス板の長手方向に平行な吸収軸を有する第1偏光領域(第1偏光フィルム片が接着された領域)と、ガラス板の長手方向と直交する方向(短手方向)に平行な吸収軸を有する第2偏光領域(第2偏光フィルム片が接着された領域)を有するパターニング偏光板を得た。
【0080】
(光学積層体の作製)
次に、上記の工程で得られたパターニング偏光板を2枚用意し、互いのパターニング偏光層(偏光フィルム片)同士が対面するように重ね合わせることで光学積層体を得た。なお、パターニング偏光板の重ね合わせは、一方の偏光板の第1(2)偏光領域と他方の偏光板の第1(2)領域とが重なるように行った。
即ち、2枚のパターニング偏光板を積層し、光学積層体を形成することで、透光状態にある調光装置を再現した(図10参照)。
【0081】
(透過率の測定)
得られた光学積層体の第1偏光領域の波長550nmにおける透過率及び第2偏光領域の波長550nmにおける透過率を、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、製品名「M−2000VI」)を用いて測定した。なお、透過率は、波長550nmを基準にして測定し、透過率の測定は、極角0°(偏光領域(光学積層体の表面)に対して垂直な方向)から、極角90°(偏光領域(光学積層体の表面)に対して平行な方向)まで段階的に測定した(図10参照)。
さらに、極角0°〜80°の間における第1及び第2偏光領域の透過率の変化をグラフにプロットした。その結果を図11(a)に示す。また、極角60°における第1偏光領域と第2偏光領域の透過率差(ΔT)を算出した。その結果を、以下の表1に示す。
【0082】
(色むらの評価)
得られた光学積層体を、位相差板が積層された側とは反対側(視認側)から斜め方向(極角45°)に観察した。その結果、実用上気にならない程度の薄いパターン模様(ストライプ状模様)が観察された。
【0083】
<実施例2>
厚み100μmのシクロオレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製、製品名「ZF14−100」)をテンター延伸機を用いて、145℃で1.4倍に延伸して位相差板(1/4波長板)を作製した。この位相差板の厚みは88μmであり、その面内位相差値(Re[590])は、141nmであった。
このようにして得られた1/4波長板を位相差板として用いたこと以外は実施例1と同様に光学積層体を作製し、その透過率を測定した。その結果を、図11(b)及び表1に示す。
また、得られた光学積層体を実施例1と同様に観察した結果、実用上気にならない程度の薄いパターン模様(ストライプ状模様)が観察された。
【0084】
<比較例1>
位相差板の代わりに、厚み40μmで実質的に光学的等方性を有するトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ(株)社製、製品名「KC4UY」)を用いたこと以外は実施例1と同様に光学積層体を作製し、その透過率を測定した。その結果を、図11(c)及び表1に示す。
また、得られた光学積層体を実施例1と同様に観察した結果、明瞭なパターン模様(ストライプ状模様)が観察された。
【0085】
【表1】
【0086】
[評価]
図11から、位相差板を有する実施例1及び2の光学積層体は、極角0°〜80°に亘って、第1偏光領域の透過率と第2偏光領域の透過率の差(ΔT)が比較的小さい。他方、比較例1では、ΔTが極角0°〜80°に亘って比較的大きい。
このように、実施例1及び2は、比較例1に比してΔTが小さいため、色むらが観察され難く、特に斜め方向から観察した際の色むらが抑制されていることが分かる。
【符号の説明】
【0087】
1A…調光装置、1B…調光窓、21…第1のパターニング偏光板、22…第2のパターニング偏光板、3…位相差板、4…基材、5…配向層、51…第1配向層、52…第2配向層、6…パターニング配向層、61…第1偏光領域、62…第2偏光領域、7…透光板
図1
図2
図3
図4
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図10
図11