(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366290
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】飼育用ケージの蓋
(51)【国際特許分類】
A01K 1/03 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
A01K1/03 Z
A01K1/03 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-22941(P2014-22941)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-146790(P2015-146790A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】310016991
【氏名又は名称】株式会社アイ・シー・エム
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 誠人
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−286479(JP,A)
【文献】
米国特許第02988044(US,A)
【文献】
特開平09−238589(JP,A)
【文献】
特公昭37−000638(JP,B1)
【文献】
特開2003−018932(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3171922(JP,U)
【文献】
特開平11−059760(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/012779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小動物を飼育する上面が開口した飼育用ケージの上部縁に嵌められるプラスチック製のディスポーザブルな蓋であって、
平坦部と、前記平坦の外周に位置し前記平坦より上に凸で下に溝を備え前記飼育用ケージの上部縁に嵌められる外枠部と、前記外枠部の内側に位置し前記平坦部から上に凸に隆起し下にスペースを備えた補強部と、前記補強部に連設され前記外枠部から隆起して前記飼育用ケージの上部縁部との間に隙間を形成する通気部とからなり、
前記補強部のスペースと前記通気部の隙間とが連通し前記飼育用ケージ内と外部を連絡する通気路を形成することを特徴とする飼育用ケージの蓋。
【請求項2】
前記補強部が格子状で、前記通気部が前記外周の四方に位置することを特徴とする請求項1に記載の飼育用ケージの蓋。
【請求項3】
少なくとも、前記外枠部の対向する二辺に端部に回動可能に設けられ、前記飼育用ケージの上部縁の底部に折返し、係止される左右片を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の飼育用ケージの蓋。
【請求項4】
前記平坦部に、小動物が飲用する水を溜める給水ボトルを係止するための穴を穿設し、その周りを前記平坦部より隆起させたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の飼育用ケージの蓋。
【請求項5】
前記平坦部に、線状の通気孔を穿設したことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の飼育用ケージの蓋。
【請求項6】
前記通気孔に、フィルターを貼付したことを特徴とする請求項5に記載の飼育用ケージの蓋。
【請求項7】
前記通気部内の通気路上に、第二フィルターを備えることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の飼育用ケージの蓋。
【請求項8】
小動物を飼育する上面が開口した飼育用ケージと、前記飼育用ケージの上部縁に嵌められる請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の飼育用ケージの蓋と、からなることを特徴とする飼育装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研究用マウス等の小動物を運搬、飼育するための飼育用ケージ用の蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
動物飼育ケージとして特許文献1が公開されている。従来の飼育用ケージの蓋は、特許文献1の
図1に開示されているように、小動物の動きによる破損を防ぎ、通気を確保するため、線状の金属棒を渡した金網11が一般的あった。そのため、飼育用ケージの蓋を使用するごとに、洗浄・殺菌しなければならず、その作業は繁雑であった。特許文献2の使用状態を表す参考図の飼育箱1の蓋3も参考になる。
【0003】
他方、通気性の確保と強度の問題から、ディスポーザブルなプラスチック製の飼育ケージ用の蓋は知られていない。ケージの開口部にプラスチック製の蓋を単に被せただけでは、小動物の呼吸に必要な酸素が欠乏してしまい、長期の運搬、飼育はできない。また、プラスチック製の蓋に、単に通気孔を設けると、ケージ内を動き回る小動物の衝撃、噛み動作等で破損してしまい、小動物がケージ内から逃げ出してしまうことになる。
【0004】
研究用の小動物は、げっ歯類が一般で、鋭い歯を備え、至る所を噛む。即ち、単なるプラスチック製の蓋では、通気性確保と強度維持を共存させることが困難だったため、開発されていないものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−18932号公報
【特許文献2】意匠登録第1408683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、通気性と強度を兼ね備えたプラスチック製の飼育ケージ用の蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、
(1)
小動物を飼育する上面が開口した飼育用ケージの上部縁に嵌められるプラスチック製のディスポーザブルな蓋であって、
平坦部と、前記平坦の外周に位置し前記平坦より上に凸で下に溝を備え前記飼育用ケージの上部縁に嵌められる外枠部と、前記外枠部の内側に位置し前記平坦部から上に凸に隆起し下にスペースを備えた補強部と、前記補強部に連設され前記外枠部から隆起して前記飼育用ケージの上部縁部との間に隙間を形成する通気部とからなり、前記補強部のスペースと前記通気部の隙間とが連通し前記飼育用ケージ内と外部を連絡する通気路を形成することを特徴とする飼育用ケージの蓋の構成とした。
(2)
前記補強部が格子状で、前記通気部が前記外周の四方に位置することを特徴とする(1)に記載の飼育用ケージの蓋の構成とした。
(3)
少なくとも、前記外枠部の対向する二辺に端部に回動可能に設けられ、前記飼育用ケージの上部縁の底部に折返し、係止される左右片を備えることを特徴とする(1)又は(2)に記載の飼育用ケージの蓋の構成とした。
(4)
前記平坦部に、小動物が飲用する水を溜める給水ボトルを係止するための穴を穿設し、その周りを前記
平坦部より隆起させたことを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の飼育用ケージの蓋の構成とした。
(5)
前記平坦部に、線状の通気孔を穿設したことを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の飼育用ケージの蓋の構成とした。
(6)
前記通気孔に、フィルターを貼付したことを特徴とする(5)に記載の飼育用ケージの蓋の構成とした。
(7)
前記通気部内の通気路上に、第二フィルターを備えることを特徴とする(1)〜(6)の何れかに記載の飼育用ケージの蓋の構成とした。
(8)
小動物を飼育する上面が開口した飼育用ケージと、前記飼育用ケージの上部縁に嵌められる(1)〜(7)の何れかに記載の飼育用ケージの蓋と、からなることを特徴とする飼育装置の構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記構成であるので、ディスポーザブルな使用ができ、蓋の繰り返し使用ごとに洗浄・殺菌作業を要しない。また、使い捨てであるため、衛生的であり、小動物、人間共に病原菌等の罹患のリスクを軽減することができる。
【0009】
プラスチック製の飼育用ケージの蓋1に、補強部7を備えることで、運搬時の衝撃、小動物10の衝突、破損行動に対し、プラスチック製の飼育用ケージの蓋1であっても、十分な強度を発現し、小動物の輸送、飼育を可能にする。
【0010】
また、補強部7の底部のスペース7gと、通気部8の底部と飼育用ケージ2の上部縁2aとの隙間2bによって通気路を形成することで、飼育用ケージ2の内部の酸素量を十分確保することができる。さらに、補強部7を格子状とし、通気部8を外枠部6に複数設けることで、飼育用ケージ2の内部の酸素量を一層安定的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態の正面図である。
【
図3】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態の側面図である。
【
図4】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態の平面図である。
【
図5】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態の底面図である。
【
図6】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態のA-A‘断面図である。
【
図7】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態のB-B‘断面図である。
【
図8】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態の使用部分断面図である。
【
図9】本発明である飼育用ケージの蓋の第一の実施形態の使用断面図(蓋A-A’位置)である。
【
図11】本発明である飼育用ケージの蓋の第二の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明について詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1〜
図10に示すように、本発明である飼育用ケージの蓋1は、平坦部5と、外枠部6と、補強部7と、通気部8とからなり、小動物10を飼育する上面が開口した飼育用ケージ2の上部縁2aに嵌められるプラスチック製のディスポーザブルな蓋である。なお、飼育用ケージ2と、飼育用ケージの蓋1とで、
図8、9に示すように、飼育装置4を構成する。
【0014】
飼育用ケージ2は、
図5等に示すように、上部が開口し、内部に小動物10を収納する空間を備えれば、形状、素材は特に限定されない。ディスポーザブルとする場合には、プラスチック製のケージが低コストで望ましい。プラスチック製の飼育用ケージ2としては、例えば、特許文献2の飼育容器2などが例示できる。
【0015】
平坦部5には、必要に応じて、穴7cを穿設する。穴7cに、給水ボトル3が嵌着する。穴7cの側面7eは、凹部7fを設け、下端部方向が狭い環状で、本体3a上部の径よりやや小さい径で、給水ボトル3を嵌着させ、飼育装置4が転倒しても、給水ボトル3は脱落しない。
【0016】
また、穴7c周囲は、平坦部5より隆起させた環状補強部7dとする。このような穴7cであれば、小動物用の補給水を確保しつつ、平坦部5の強度を保つこともできる。
【0017】
給水ボトル3は、本体3aと、給水口3bと、キャップ3dからなり、小動物10が飲用する水11を溜める。
【0018】
本体3aは、穴7cに嵌着する。穴7cの側面7eは、嵌着する給水ボトル3の側面には、縦条3cが突設され、穴7cの凹部7fに嵌挿させることにより、本体3aの回転を防止する。
【0019】
給水口3bは、本体3aの底部に設けられ、小動物10が口で銜え又は噛む或いは押すことで本体3a内部の水11が流れ落ちる構造である。例えば、本体3aの内部に通じる穴に棒が揺動可能に嵌挿されており、動物が棒に接触し、棒が揺動することで、水11が給水口3bから流れ落ちる。キャップ3dは、本体3aの上部に嵌められる。小動物10は、給水口3bから水を飲むことができる。
【0020】
また、平坦部5には、必要に応じて線状の通気孔5aが複数穿設されている。通気孔5aが設けられることで、通気性を上げることができ、小動物10が多頭の場合には、より多くの空気を確保できる。
【0021】
外枠部6は、平坦部5の最外周に位置し平坦部5より上に凸で下に溝6cを備え、溝6cに飼育用ケージ2の上部縁2aを嵌める。外枠部6の外側の側面には、内側に窪む凹部6aが複数設けられる。凹部6aは、
図10に示すように、飼育用ケージの蓋1を飼育用ケージ2に被せたとき、飼育用ケージ2の鍔2cの下に位置し、飼育用ケージの蓋1を飼育用ケージ2に係止させる。また、外枠部6の端部には、つば6bが略水平に突出し、外枠部6に強度を付与するとともに、飼育用ケージの蓋1の着脱時の取っ手となる。
【0022】
また、外枠部6の左右辺には、対向して端部に回動可能に左右片1a、1bが設けられている。左右片1a、1bは、
図10に示すように、飼育用ケージの蓋1を飼育用ケージ2に嵌めた後、点線で示した左片1aの位置から飼育用ケージ2の上部縁2aの底部に折返され、係止される。
【0023】
そのようにすることで、飼育用ケージの蓋1をより強固に飼育用ケージ2に嵌着させ、飼育用ケージ2から飼育用ケージの蓋1の脱落を防止する。凹部6aの飼育用ケージ2の鍔2cによる係止だけでは飼育用ケージの蓋1の飼育用ケージへの嵌着が不十分なときに用いるとよい。
【0024】
左片1a、右片1bを備えているため、小動物10が動き回ったり、飼育装置4が転倒したりしても、簡単に飼育用ケージの蓋1が飼育用ケージ2から脱落せず、小動物10が逃げ出すことがない。試験用小動物10は、病気、細菌・ウィルスを保有しており、危険であるため、脱走等を防ぐ処置はきわめて重要である。
【0025】
補強部7は、外枠部6の内側に位置し平坦部5から上に凸に隆起し下にスペース7gを備えている。ここでは、縦補強部7aと横補強部7bからなる格子状で、通気部8が外枠部6の四方に位置する形状である。具体的には
図1に示すように、縦補強部7aが2本、横補強部7bは縦補強部7aに直交するように2本形設されている。
【0026】
通気部8は、補強部7に連設され外枠部6から隆起して飼育用ケージ2の上部縁2aとの間に隙間2bを形成する。
【0027】
このようにしてなる飼育用ケージの蓋1は、飼育用ケージ2に嵌められても、補強部7のスペース7gと通気部8の隙間2bとが連通し、飼育用ケージ2内と外部を連絡する通気路を形成する。
【実施例2】
【0028】
図11に示すように、本発明の第二の実施形態である飼育用ケージの蓋1cは、実施例1の飼育用ケージの蓋1と、フィルター9とからなる。
【0029】
フィルター9は、ゴミ及び微生物を濾過して通さない膜であり、平坦部5に穿設された複数の線状の通気孔5aを覆うように貼付される。貼付に際しては、接着剤、両面テープなどが例示できる。
【0030】
ここでは、通気孔5aは、2箇所の平坦部5に3本ずつ穿設されているが、それぞれの平坦部5に1枚のフィルター9を備える。フィルター9を備えることで、飼育用ケージ2の内部へゴミ、微生物の落下を阻止し、飼育用ケージ2内のそれらによる汚染を低減することができる。
【0031】
加えて、通気部8内の通気路上に、ゴミ、微生物を濾過し遠さない第二フィルターを設けることで、一層、飼育用ケージ2の内部の汚染を低減させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 飼育用ケージの蓋
1a 左片
1b 右片
1c 飼育用ケージの蓋
2 飼育用ケージ
2a 縁
2b 隙間
2c 鍔
3 給水ボトル
3a 本体
3b 給水口
3c 縦条
3d キャップ
4 飼育装置
5 平坦部
5a 通気孔
6 外枠部
6a 凹部
6b つば
6c 溝
7 補強部
7a 縦補強部
7b 横補強部
7c 穴
7d 環状補強部
7e 側面
7f 凹部
7g スペース
8 通気部
9 フィルター
10 小動物
11 水