(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管や潤滑装置等のオイル配管の途中にはメッシュフィルタが配置され、このメッシュフィルタで燃料やオイル等の流体中の異物を濾し取るようになっている。
【0003】
(第1従来例)
図7は、第1従来例のメッシュフィルタ100を示す図である。なお、
図7(a)は第1従来例のメッシュフィルタ100の平面図であり、
図7(b)は
図7(a)のA8−A8線に沿って切断して示すメッシュフィルタ100の断面図である。また、
図7(c)は第1従来例のメッシュフィルタ100の成形方法における第1段階を説明するための金型101の断面図であり、
図7(d)は第1従来例のメッシュフィルタ100の成形方法における第2段階を説明するための金型101の断面図であり、
図7(e)は
図7(a)のB6部の拡大図である。
【0004】
この
図7に示す第1従来例のメッシュフィルタ100は、オイルが通過でき、且つ、所定の大きさ(例えば、直径0.1mm)の異物(金属粉、塵埃等)を濾し取ることができる開口部102(例えば、0.1mm×0.1mmの四角形の開口部)が多数形成されたメッシュ部材103と、このメッシュ部材103の周縁に沿って取り付けられた樹脂製の枠部材104と、を有している(
図7(a)〜(b)参照)。このメッシュフィルタ100は、メッシュ部材103が枠部材104に張り渡された形状になっている(
図7(a)〜(b),(e)参照)。
【0005】
このような第1従来例のメッシュフィルタ100は、
図7(c)〜(d)に示すようにしてインサート成形される。先ず、第1金型105と第2金型106を型開きした状態において、第1金型105のキャビティ107内の台座部108上にメッシュ部材103を配置する(
図7(c))。次いで、第2金型106を第1金型105に押圧し(第1金型105と第2金型106とを型締めし)、第2金型106の押圧部110と第1金型105の台座部108との間にメッシュ部材103を挟持し、第1金型105と第2金型106の型合わせ面側に枠部材104を形作るためのキャビティ107を形成した後、このキャビティ107に図示しないゲートから溶融樹脂が射出されることにより(
図7(d)参照)、メッシュ部材103の周縁に樹脂製の枠部材104が一体に成形される(特許文献1,2参照)。
【0006】
しかしながら、このような第1従来例のメッシュフィルタ100は、インサート成形により製造されるものであるため、全体を射出成形によって一体成形する場合と比較し、メッシュ部材103をキャビティ107の所定位置に収容する工程が必要となる分だけ、製造工数が嵩んでいた。
【0007】
(第2従来技術)
図8は、第2従来例に係るメッシュフィルタ200を示す図であり、射出成形されたメッシュフィルタ200を示す図である。この
図8に示したメッシュフィルタ200は、枠体部201とフィルタ部202とが射出成形により一体として形成されるため、第1従来例のメッシュフィルタ100のような問題を生じない(特許文献3,4参照)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0015】
[第1実施形態]
図1乃至
図2は、本発明の第1実施形態に係るメッシュフィルタ1を示す図である。なお、
図1(a)はメッシュフィルタ1の正面図であり、
図1(b)はメッシュフィルタ1の側面図であり、
図1(c)はメッシュフィルタ1の背面図であり、
図1(d)は
図1(a)のA1−A1線に沿って切断して示すメッシュフィルタ1の断面図である。また、
図2(a)は
図1(a)のB1部の拡大図(メッシュフィルタ1の一部拡大図)であり、
図2(b)は
図2(a)のA2−A2線に沿って切断して示す断面図(メッシュフィルタ1の一部拡大断面図)であり、
図2(c)は
図2(a)のA3−A3線に沿って切断して示す断面図(メッシュフィルタ1の一部拡大断面図)であり、
図2(d)は
図1(c)のB2部の拡大図(メッシュフィルタ1の一部拡大図)である。
【0016】
これら
図1乃至
図2に示すように、メッシュフィルタ1は、円板状のゲート接続部2と、このゲート接続部2の中心軸5と同心で且つゲート接続部2を取り囲むように位置する円筒状の外筒3(外側の枠体)と、ゲート接続部2の外周面2aと外筒3の内周面3aとを径方向に沿って接続するフィルタ部4と、を一体に有している。そして、このメッシュフィルタ1は、全体が樹脂(POM(ポリアセタール、例えばM450−44)、66ナイロン等)によって一体に形成されている。なお、このようなメッシュフィルタ1は、例えば、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管に配置され、外筒3が燃料供給管路等にシール部材(図示せず)を介して取り付けられて、フィルタ部4を通過する燃料(流体)の漏洩が生じないように使用される。
【0017】
ゲート接続部2は、射出成形用のゲート6が開口する部分であり、外形寸法がゲート6の開口部の内径寸法以上の大きさに設定されている(
図1(c)のゲート痕6a、及び
図3(a)参照)。また、このゲート接続部2は、射出成形が終了し、製品としてのメッシュフィルタ1が金型7から取り出される前に、射出成形用のゲート6から切り離されるため、このゲート切り離し時に作用する力で破損しない肉厚寸法に設定されている(
図3参照)。なお、このゲート接続部2の表面2bは、フィルタ部4の表面4aから中心軸5に沿った方向(+Z軸方向)へ出っ張っている。また、ゲート接続部2の裏面2cは、フィルタ部4の裏面4bから中心軸5に沿った方向(−Z軸方向)へ出っ張っている。
【0018】
外筒3は、表面3bがゲート接続部2の表面2bよりも中心軸5に沿った方向(+Z軸方向)へ出っ張ると共に、裏面3cがゲート接続部2の裏面2cよりも中心軸5に沿った方向(−Z軸方向)へ出っ張っている。そして、この外筒3は、フィルタ部4及びゲート接続部2を径方向内方側に収容している。なお、外筒3の形状は、メッシュフィルタ1が取り付けられる相手部材(油圧制御装置の制御用オイルの供給管路等)の取付部構造に応じて適宜変形(例えば、二面幅形状、六角形状に変形)される。
【0019】
フィルタ部4は、ゲート接続部2の中心軸5に沿った方向に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成されている。このフィルタ部4の表面4a側には、X軸に直交し且つY軸に沿って延びる縦リブ8がY軸と平行に等間隔で複数形成されている。また、フィルタ部4の裏面4b側には、縦リブ8と直交し且つX軸に沿って延びる横リブ10がX軸と平行に等間隔で複数形成されている。そして、フィルタ部4を平面視した場合、フィルタ部4のうちのゲート接続部2との接続部分及び外筒3との接続部分以外の部分は、隣り合う縦リブ8,8と隣り合う横リブ10,10との間に正四角形の開口部11が形成されている。すなわち、開口部11は、隣り合う縦リブ8,8間の縦溝8aと隣合う横リブ10,10間の横溝10aとの交差部に形成されており、縦溝8aと横溝10aの交差部の数と同数(複数)形成されている。そして、縦リブ8のリブ幅L2及び横リブ10のリブ幅L3は、同一の寸法(L2=L3)に形成されている。また、縦溝8aの溝幅L4と横溝10aの溝幅L5は、同一寸法(L4=L5)に形成されている。したがって、複数の開口部11は、平面視した形状が同一の正四角形(開口面積が等しい正四角形)になる。
【0020】
なお、メッシュフィルタ1は、
図1(b)において、外筒3の幅方向中心線12に対して左右対称の形状になっているが、フィルタ部4及びゲート接続部2を幅方向中心線12に対して中心軸5に沿った方向(+Z軸方向、又は−Z軸方向)にずらしてもよい。また、メッシュフィルタ1は、
図1(b)において、フィルタ部4とゲート接続部2のいずれか一方を外筒3の幅方向中心線12に対して中心軸5に沿った方向(+Z軸方向、又は−Z軸方向)にずらしてもよい。また、フィルタ部4は、複数の縦リブ8を裏面4b側に形成し、複数の横リブ10を表面4a側に形成してもよい。
【0021】
(実施例)
次に、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の理解を容易にするため、メッシュフィルタ1の実施例を説明する。例えば、メッシュフィルタ1は、外筒3の外径D1が7.0mm、外筒3の幅(中心軸5に沿った方向の長さ)L1が2mm、外筒3の内径D2が4mm、ゲート接続部2の外径D3が1.5mm、ゲート接続部2の幅(中心軸5に沿った方向の長さ)L6が0.9mmに形成される。また、メッシュフィルタ1は、縦リブ8のリブ幅L2及び横リブ10のリブ幅L3が0.07mm、縦溝8aの溝幅L4及び横溝10aの溝幅L5が0.077mm、正四角形の開口部11の一辺が0.077mmに形成される。また、メッシュフィルタ1は、フィルタ部4の総肉厚寸法L7が0.3mm、縦リブ8の肉厚寸法(Z軸に沿った方向の寸法)L8が0.15mm、横リブ10の肉厚寸法(Z軸に沿った方向の寸法)L9が0.15mmに形成される。また、ゲート内径(ゲート痕6aの直径)は、0.8mmである。なお、このメッシュフィルタ1の実施例に示した数値は、上述のように、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の理解を容易にするためのものであり、本実施形態に係るメッシュフィルタ1を限定するものではなく、使用条件等に応じて適宜変更される。
【0022】
図3は、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の射出成形に使用される金型7を示す図である。なお、この
図3において、
図3(a)が金型7の縦断面図であり、
図3(b)が
図3(a)のB3部の拡大図(金型7の一部拡大断面図)であり、
図3(c)が
図3(b)のD1方向から見た第1金型13の一部平面図であり、
図3(d)が
図3(b)のD2方向から見た第2金型14の一部平面図である。
【0023】
図3(a)に示すように、金型7は、第1金型13と第2金型14の型合わせ面側に、メッシュフィルタ1を射出成形するためのキャビティ15が形成されている。キャビティ15は、メッシュフィルタ1のゲート接続部2を形作るための円板状の第1キャビティ部分16と、メッシュフィルタ1の外筒3を形作るための円筒状の第2キャビティ部分17と、メッシュフィルタ1のフィルタ部4を形作るための中空円板状の第3キャビティ部分18と、を有している。そして、第1金型13は、第1キャビティ部分16の中心軸20に沿った方向の一端面16a側に開口するゲート6が第1キャビティ部分16の中央に1箇所設けられている(
図1(c)のゲート痕6a参照)。また、第1金型13の第3キャビティ部分18を形作る部分は、横リブ10を形作るための横リブ溝21が等間隔で複数(横リブ10と同数)形成されている(
図3(b)〜(c)参照)。この横リブ溝21は、断面形状が矩形形状であり、X軸方向に沿って一定の溝幅となるように形成されている。そして、隣り合う横リブ溝21,21の間には、横溝10aを形作るための横リブ溝間突起22が形成されている。この横リブ溝間突起22は、断面形状が矩形形状になっており、X軸方向に沿って一定の突起幅L4となるように形成されている(
図3(b)〜(c)参照)。また、第2金型14の第3キャビティ部分18を形作る部分は、縦リブ8を形作るための縦リブ溝23が等間隔で複数(縦リブ8と同数)形成されている(
図3(b),(d)参照)。この縦リブ溝23は、断面形状が矩形形状であり、Y軸方向に沿って一定の溝幅(横リブ溝21の溝幅と同一の溝幅)となるように形成されている。そして、隣り合う縦リブ溝23,23の間には、縦溝8aを形作るための縦リブ溝間突起24が形成されている。この縦溝間突起24は、横溝間突起22の断面形状と同一寸法の矩形形状になっており、Y軸方向に沿って一定の突起幅L5(=L4)となるように形成されている。
【0024】
金型7は、第1金型13と第2金型14とが型締めされると、第1金型13の横リブ溝間突起22と第2金型14の縦リブ溝間突起24が十字状に交差するように突き当てられるため、キャビティ15内に溶融状態の樹脂が射出されたとしても、第1金型13の横リブ溝間突起22と第2金型14の縦リブ溝間突起24の重なり合う交差部に溶融状態の樹脂が充填されず、第1金型13の横リブ溝間突起22と第2金型14の縦リブ溝間突起24の重なり合う交差部が正方形の開口部11になる。したがって、正方形の開口部11の一辺は、横リブ溝間突起22の突起幅L4と縦リブ溝間突起24の突起幅L5(L4=L5)と同一寸法になる。なお、本実施形態において、キャビティ15に開口するゲート6は、第1キャビティ部分16の中央に1箇所だけ設置する態様を例示したが、これに限られず、第1キャビティ部分16の外径寸法等に応じて2箇所以上の複数箇所に設けてもよい。
【0025】
このような構造の金型7は、
図3(a)に示すように、第1金型13と第2金型14とを型締めした状態で、溶融状態の樹脂がゲート6からキャビティ15内に射出された後、キャビティ15内の圧力が所定圧に保持され、金型7が冷却される。その後、ゲート6がキャビティ15内の射出成形品(メッシュフィルタ1)から切り離され、第2金型14が第1金型13から−C方向へ離され(型開きされ)、キャビティ15内のメッシュフィルタ1が図示しないエジェクタピンでキャビティ15内から押し出され、射出成形品であるメッシュフィルタ1が金型7から取り出される(
図1及び
図2参照)。その後、この金型7は、型開きの状態にある第2金型14が+C方向(第1金型13に近づく方向)に移動させられ、第2金型14が第1金型13に押し付けられ、第1金型13と第2金型14とが型締めされる。このような本実施形態に係るメッシュフィルタ1の射出成形の1サイクルが、第1従来例に係るメッシュフィルタ100のインサート成形の1サイクルよりも短時間になる。その結果、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、第1従来例に係るメッシュフィルタ100よりも生産性が向上し、第1従来例に係るメッシュフィルタ100よりも製品価格が低廉化する。
【0026】
以上のような本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、全体(ゲート接続部2、外筒3、及びフィルタ部4)が一体に且つ高精度に射出成形されるため、第1従来例のインサート成形に係るメッシュフィルタ100と比較して、フィルタ性能が維持された状態で、生産性が向上し、製品価格が低廉化する。
【0027】
また、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、フィルタ部4の複数の開口部11が同一形状であるため、例えば、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管路に配置されることにより、開口部11の最大幅を超える大きさの燃料中の異物を確実に濾し取ることができ、且つ、異物が取り除かれた燃料を開口部11から円滑に流出させることができる。なお、第2従来例に係るメッシュフィルタ200であって、フィルタ部202の全域の開口部の面積を同一に形成しないメッシュフィルタ200は、フィルタ部202で濾し取ることができる異物の粒径の下限値にバラツキを生じ、フィルタ部202を通過させるべき異物を濾し取るか、又は、フィルタ部202で濾し取る必要のある異物の通過を許してしまう虞があり、フィルタ性能として不十分なものとなる。しかしながら、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、濾し取ることができる異物の粒径の下限値にバラツキを生じることがなく、開口部の面積にバラツキを生じる場合に比較して、フィルタ性能を向上させることができる。
【0028】
また、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、縦リブ8のリブ幅L2と横リブ10のリブ幅L3が同一(L2=L3)であるため、縦リブ203のリブ幅(W1)と横リブ204のリブ幅(W2)が2倍も異なる(例えば、W1/W2=2で、且つ、W2=L3である)第2従来例のメッシュフィルタ200と比較し、フィルタ部4における単位面積当たりの開口部11の数を増やすことができ、フィルタ部4の開口面積を大きくすることができる。その結果、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、縦リブ203のリブ幅(W1)と横リブ204のリブ幅(W2)が2倍も異なる第2従来例のメッシュフィルタ200と比較し、フィルタ部4における圧力損失を小さくすることができ、フィルタ性能を向上させることができる。
【0029】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係るメッシュフィルタ1を示す図である。なお、
図4(a)はメッシュフィルタ1の正面図であり、
図4(b)はメッシュフィルタ1の側面図であり、
図4(c)はメッシュフィルタ1の背面図であり、
図4(d)は
図4(a)のA4−A4線に沿って切断して示すメッシュフィルタ1の断面図である。また、
図4(e)は
図4(a)のB4部の拡大図(メッシュフィルタ1の一部拡大図)であり、
図4(f)は
図4(e)のA5−A5線に沿って切断して示す断面図(メッシュフィルタ1の一部拡大断面図)であり、
図4(g)は
図4(e)のA6−A6線に沿って切断して示す断面図(メッシュフィルタ1の一部拡大断面図)である。
【0030】
この
図4に示すように、メッシュフィルタ1は、円板状のゲート接続部2と、このゲート接続部2の中心軸5と同心で且つゲート接続部2を取り囲むように位置する円筒状の外筒3(外側の枠体)と、ゲート接続部2の外周面2aと外筒3の内周面3aとを径方向に沿って接続するフィルタ部4と、を一体に有している。そして、このメッシュフィルタ1は、全体が樹脂(POM(ポリアセタール、例えばM450−44)、66ナイロン等)によって一体に形成されている。なお、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、第1実施形態に係るメッシュフィルタ1と同様に、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管に配置され、外筒3が燃料供給管路等にシール部材(図示せず)を介して取り付けられて、フィルタ部4を通過する燃料(流体)の漏洩が生じないように使用される。
【0031】
ゲート接続部2は、射出成形用のゲート6が開口する部分であり、外形寸法がゲート6の開口部の内径寸法以上の大きさに設定されている(
図4(c)のゲート痕6a、及び
図5(a)参照)。また、このゲート接続部2は、射出成形が終了し、製品としてのメッシュフィルタ1が金型7から取り出される前に、射出成形用のゲート6から切り離されるため、このゲート切り離し時に作用する力で破損しない肉厚寸法に設定されている(
図5参照)。なお、このゲート接続部2の表面2bは、フィルタ部4の表面4aから中心軸5に沿った方向(+Z軸方向)へ出っ張っている。また、ゲート接続部2の裏面2cは、フィルタ部4の裏面4bから中心軸5に沿った方向(−Z軸方向)へ出っ張っている。
【0032】
外筒3は、表面3bがゲート接続部2の表面2bよりも中心軸5に沿った方向(+Z軸方向)へ出っ張ると共に、裏面3cがゲート接続部2の裏面2cよりも中心軸5に沿った方向(−Z軸方向)へ出っ張っている。そして、この外筒3は、フィルタ部4及びゲート接続部2を径方向内方側に収容している。なお、外筒3の形状は、メッシュフィルタ1が取り付けられる相手部材(油圧制御装置の制御用オイルの供給管路等)の取付部構造に応じて適宜変形(例えば、二面幅形状、六角形状に変形)される。
【0033】
フィルタ部4は、ゲート接続部2の中心軸5に沿った方向に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成されている。そして、フィルタ部4のうちのゲート接続部2と外筒3との接続部分以外の部分は、X軸に直交し且つY軸と平行に等間隔で複数形成された縦リブ8と、この縦リブ8と直交し且つX軸と平行に等間隔で複数形成された横リブ10と、によって四角形状の開口部11が複数形成されている。また、縦リブ8のリブ幅L2及び横リブ10のリブ幅L3は、同一の寸法(L2=L3)に形成されている。また、隣り合う縦リブ8,8間の幅寸法L4と隣り合う横リブ10,10間の幅寸法L5は、同一寸法(L4=L5)に形成されている。したがって、複数の開口部11は、平面視した形状が同一の正四角形(開口面積が等しい正四角形)になる。
【0034】
なお、メッシュフィルタ1は、
図4(b)において、外筒3の幅方向中心線12に対して左右対称の形状になっているが、フィルタ部4及びゲート接続部2を幅方向中心線12に対して中心軸5に沿った方向(+Z軸方向、又は−Z軸方向)にずらしてもよい。また、メッシュフィルタ1は、
図4(b)において、フィルタ部4とゲート接続部2のいずれか一方を外筒3の幅方向中心線12に対して中心軸5に沿った方向(+Z軸方向、又は−Z軸方向)にずらしてもよい。
【0035】
(実施例)
次に、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の理解を容易にするため、メッシュフィルタ1の実施例を説明する。例えば、メッシュフィルタ1は、外筒3の外径D1が7.0mm、外筒3の幅(中心軸5に沿った方向の長さ)L1が2mm、外筒3の内径D2が4mm、ゲート接続部2の外径D3が1.5mm、ゲート接続部2の幅(中心軸5に沿った方向の長さ)L6が0.9mmに形成される。また、メッシュフィルタ1は、縦リブ8のリブ幅L2及び横リブ10のリブ幅L3が0.07mm、正四角形の開口部11の一辺が0.077mmに形成される。また、メッシュフィルタ1は、フィルタ部4の肉厚寸法(Z軸に沿った方向の寸法)L7が0.2mmに形成される。また、ゲート内径(ゲート痕6aの直径)は、0.8mmである。なお、このメッシュフィルタ1の実施例に示した数値は、上述のように、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の理解を容易にするためのものであり、本実施形態に係るメッシュフィルタ1を限定するものではなく、使用条件等に応じて適宜変更される。
【0036】
図5は、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の射出成形に使用される金型7を示す図である。なお、この
図5において、
図5(a)が金型7の縦断面図であり、
図5(b)が
図5(a)のB5部の拡大図(金型7の一部拡大断面図)であり、
図5(c)が
図5(b)のD3方向から見た第1金型13の一部平面図である。
【0037】
図5(a)に示すように、金型7は、第1金型13と第2金型14の型合わせ面側に、メッシュフィルタ1を射出成形するためのキャビティ15が形成されている。キャビティ15は、メッシュフィルタ1のゲート接続部2を形作るための円板状の第1キャビティ部分16と、メッシュフィルタ1の外筒3を形作るための円筒状の第2キャビティ部分17と、メッシュフィルタ1のフィルタ部4を形作るための中空円板状の第3キャビティ部分18と、を有している。そして、第1金型13は、第1キャビティ部分16の中心軸20に沿った方向の一端面16a側に開口するゲート6が第1キャビティ部分16の中央に1箇所設けられている(
図4(c)のゲート痕6a参照)。また、第1金型13の第3キャビティ部分18を形作る部分は、開口部11を形作るための突起25が等間隔(L2=L3)で複数(開口部11と同数)形成されている(
図5(b)〜(c)参照)。この第1金型13の第3キャビティ部分18を形作る部分に形成された突起25は、平面視した形状(
図5(b)のD3方向から見た形状)が正四角形であり、正四角形の開口部11を形成できる寸法(L4=L5)に形成されている。また、第1金型13の第3キャビティ部分18を形作る部分に形成された突起25は、その高さ寸法(
図5(b)のZ軸方向に沿った寸法L7)が縦リブ8及び横リブ10の厚さ寸法L7となるように形成されている。なお、本実施形態において、キャビティ15に開口するゲート6は、第1キャビティ部分16の中央に1箇所だけ設置する態様を例示したが、これに限られず、第1キャビティ部分16の外径寸法等に応じて2箇所以上の複数箇所に設けてもよい。
【0038】
このような構造の金型7は、
図5(a)に示すように、第1金型13と第2金型14とを型締めした状態で、溶融状態の樹脂がゲート6からキャビティ15内に射出された後、キャビティ15内の圧力が所定圧に保持され、金型7が冷却される。その後、ゲート6がキャビティ15内の射出成形品(メッシュフィルタ1)から切り離され、第2金型14が第1金型13から−C方向へ離され(型開きされ)、キャビティ15内のメッシュフィルタ1が図示しないエジェクタピンでキャビティ15内から押し出され、射出成形品であるメッシュフィルタ1が金型7から取り出される(
図4参照)。その後、この金型7は、型開きの状態にある第2金型14が+C方向(第1金型13に近づく方向)に移動させられ、第2金型14が第1金型13に押し付けられ、第1金型13と第2金型14とが型締めされる。このような本実施形態に係るメッシュフィルタ1の射出成形の1サイクルが、第1従来例に係るメッシュフィルタ100のインサート成形の1サイクルよりも短時間になる。その結果、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、第1従来例に係るメッシュフィルタ100よりも生産性が向上し、第1従来例に係るメッシュフィルタ100よりも製品価格が低廉化する。
【0039】
図5(d)は、開口部11を形作るための突起25の第1変形例を示す図である。この
図5(d)に示すように、開口部11を形作るための突起25は、第1金型13の第3キャビティ部分18を形作る部分に形成せず、第2金型14の第3キャビティ部分18を形作る部分にのみ形成するようにしてもよい。
【0040】
図5(e)は、開口部11を形作るための突起25の第2変形例を示す図である。この
図5(e)に示すように、開口部11を形作るための突起25は、第1金型13の第3キャビティ部分18を形作る部分と、第2金型14の第3キャビティ部分18を形作る部分とに分けて形成するようにしてもよい。この第2変形例において、第1金型13と第2金型14の各々の突起25A,25Bの高さ寸法は、上記第2実施形態及び上記第1変形例における突起25の高さ寸法の1/2の高さ寸法に形成される。そして、第1金型13と第2金型14の型締め時において、突起25Aの頂面と突起25Bの頂面が突き合わされる。
【0041】
以上のような本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、第1実施形態に係るメッシュフィルタ1と同様に、全体(ゲート接続部2、外筒3、及びフィルタ部4)が一体に且つ高精度に射出成形されるため、第1従来例のインサート成形に係るメッシュフィルタ100と比較して、フィルタ性能が維持された状態で、生産性が向上し、製品価格が低廉化する。
【0042】
また、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、第1実施形態に係るメッシュフィルタ1と同様に、フィルタ部4の複数の開口部11が同一形状であるため、例えば、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管路に配置されることにより、開口部11の最大幅を超える大きさの燃料中の異物を確実に濾し取ることができ、且つ、異物が取り除かれた燃料を開口部11から円滑に流出させることができる。なお、第2従来例に係るメッシュフィルタ200であって、フィルタ部202の全域の開口部の面積を同一に形成しないメッシュフィルタ200は、フィルタ部202で濾し取ることができる異物の粒径の下限値にバラツキを生じ、フィルタ部202を通過させるべき異物を濾し取るか、又は、フィルタ部202で濾し取る必要のある異物の通過を許してしまう虞があり、フィルタ性能として不十分なものとなる。しかしながら、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、濾し取ることができる異物の粒径の下限値にバラツキを生じることがなく、開口部の面積にバラツキを生じる場合に比較して、フィルタ性能を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、第1実施形態に係るメッシュフィルタ1と同様に、縦リブ8のリブ幅L2と横リブ10のリブ幅L3が同一(L2=L3)であるため、縦リブ203のリブ幅(W1)と横リブ204のリブ幅(W2)が2倍も異なる(例えば、W1/W2=2で、且つ、W2=L3である)第2従来例のメッシュフィルタ200と比較し、フィルタ部4における単位面積当たりの開口部11の数を増やすことができ、フィルタ部4の開口面積を大きくすることができる。その結果、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、縦リブ203のリブ幅(W1)と横リブ204のリブ幅(W2)が2倍も異なる第2従来例のメッシュフィルタ200と比較し、フィルタ部4における圧力損失を小さくすることができ、フィルタ性能を向上させることができる。
【0044】
[その他の実施形態]
なお、上記第1乃至第2実施形態に係るメッシュフィルタ1は、ゲート接続部2を円板状に形成する態様を例示したが、これに限られず、
図6に示すように、ゲート接続部2を円筒状に形成してもよい。そして、
図6(c)に示すように、ゲート接続部2の裏面2cには、複数のゲート(ゲート痕6a参照)が形成される。
【0045】
また、本発明に係るメッシュフィルタ1は、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管に設置される態様を例示したが、もちろん、自動車の潤滑装置のオイル管路の途中や油圧制御装置の制御用オイルの供給管路等に設置してもよく、これに限られず、給水管や送風管の管路に設置し、流体(水等の液体や空気等の気体)に混ざった異物を取り除くために広範囲の技術分野で使用することができる。
【0046】
また、本発明に係るメッシュフィルタ1は、熱可塑性樹脂の射出成形品に限定されず、熱硬化性樹脂の射出成形品でもよく、使用用途等に応じて適宜材料が選択される。
【0047】
また、上記各実施形態に係るメッシュフィルタ1は、縦リブ8と横リブ10が直交する構成を例示したが、これに限られず、縦リブ8と横リブ10が斜めに交差する構成にしてもよい。
【0048】
また、上記各実施形態に係るメッシュフィルタ1は、ゲート接続部2の外周面2a及び外筒3の内周面3aの正面側形状が円形状であるが、これに限られず、射出成形時の溶融樹脂の流動等を考慮し、ゲート接続部2の外周面2aと外筒3の内周面3aのいずれか一方又は両方の正面側の形状を多角形形状(六角形)等に形成してもよい。
【0049】
また、上記各実施形態に係るメッシュフィルタ1において、縦リブ8の肉厚寸法L8、横リブ10の肉厚寸法L9、フィルタ部4の肉厚寸法L7は、ゲート接続部2の外周面2aから外筒3の内周面3aまで一定の肉厚寸法に形成されているが、これに限られず、射出成形時の溶融樹脂の流動等を考慮し、適宜肉厚寸法を変化させてもよい。