特許第6366305号(P6366305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366305
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】グラフェンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20180723BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20180723BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20180723BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20180723BHJP
【FI】
   C01B32/05
   H01L21/368 Z
   H01L21/20
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-47211(P2014-47211)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-193804(P2014-193804A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0025846
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】孫 寅赫
(72)【発明者】
【氏名】李 承宰
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/008789(WO,A2)
【文献】 特開2004−244309(JP,A)
【文献】 特開2008−069015(JP,A)
【文献】 特開2009−107921(JP,A)
【文献】 特開2009−143800(JP,A)
【文献】 特開2013−021149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
B82Y 30/00
B82Y 40/00
H01L 21/20
H01L 21/368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属触媒の上にCO、CHおよびHOを含むガスを提供し、加熱して反応させた後に冷却させるステップを含み、
前記CH、COおよびHOを含むガスは、1:0.20〜0.50:0.01〜1.45のモル比で提供される、グラフェンの製造方法。
【請求項2】
前記金属触媒は、Ni、Co、Cu、Fe、Rh、Ru、Pt、Au、Al、Cr、Mg、Mn、Mo、Si、Sn、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅、青銅、ステンレス鋼およびGeよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金を含むものである請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項3】
前記CH、COおよびHOを含むガスは、1:0.25〜0.45:0.10〜1.35のモル比で提供される請求項1または2に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項4】
前記CH、COおよびHOを含むガスは、1:0.30〜0.40:0.50〜1.0のモル比で提供される請求項1からのいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項5】
前記加熱は、400〜900℃で行われる請求項1からのいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項6】
前記冷却は、不活性ガスの存在下で所定の速度にて行われる請求項1からのいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項7】
前記金属触媒は、Al、SiO、ゼオライトまたはTiOである多孔性担体またはシリコンの上に担持されるものである請求項1からのいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項8】
前記金属触媒は、前記多孔性担体の上に複合体状に担持される請求項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項9】
前記金属触媒は、フィルム状または基板状に提供され、該フィルム状または基板状の金属触媒上の少なくとも一部に担体が提供される請求項1からのいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項10】
前記フィルム状または基板状の金属触媒は、NiフィルムまたはNi基板である請求項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項11】
前記フィルム状または基板状の金属触媒上の少なくとも一部に提供される担体は、Al、Si、またはTiのイオン状のものである請求項または10に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項12】
グラフェンが1層〜5層の範囲内で製造される請求項1から11のいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を含むパターン化したグラフェンの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載のパターン化したグラフェンの製造方法を含む半導体回路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(graphene)は、複数の炭素原子が2次元上で蜂の巣状に配列されたものであり、1原子の厚さを有する伝導性物質である。3次元に積み重なればグラファイト、1次元に巻かれればカーボンナノチューブ、球状になれば0次元構造であるフラーレンをなす物質であり、様々な低次元ナノ現象を研究するのに重要なモデルとなってきた。グラフェンは、構造的および化学的にも非常に安定しているだけではなく、非常に優れた伝導体であって、シリコンよりも約100倍ほど速やかに電子を移動させ、銅よりも約100倍ほど多くの電流を流すことができると見込まれる。2004年にグラファイトからグラフェンを分離する方法が見出されることに伴い、これまで予測されてきたグラフェンの特性が実験的に確認され、これは、去る数年間に亘って全世界の科学者たちを熱狂させた。
【0003】
グラフェンは、相対的に軽い元素である炭素のみから構成されるため1次元または2次元のナノパターンを加工することが非常に容易であるというメリットを有しており、これを活用すれば、半導体−導体の性質を調節することができるだけではなく、炭素が有する化学結合の多様性を用いて、センサー、メモリなど広範囲な機能性素子の製作も可能である。
【0004】
ところが、グラフェンを活用する技術が大きな注目を集めているにも拘わらず、これまでグラフェンを安価に、大面積にて、しかも再現性よく量産可能な方法が開発されていないのが現状である。
【0005】
グラフェンの製造方法は、大きく5種類に分類される。先ず、大きなグラファイトを細かく粉砕して単層にする機械的な剥離法または化学的な剥離法があるが、これらは、大面積のグラフェンを製造することが困難であるという欠点を有する。また、大面積のグラフェンを製造するために、高温下で基板に吸着または含有されていた炭素が表面上に再配列してグラフェンに成長するエピタキシャル合成法があるが、これは、基板素子が高価であり、しかも、相対的に電気特性が悪いという欠点を有する。さらに、テトラフェニルベンゼンを用いた有機合成法があるが、これもまた、大面積化させ難く、しかも、製造コストが高いという欠点を有する。最後に、炭素吸着能に優れた遷移金属(Ni、Cu)触媒層を基板に蒸着させ、高温(1,000℃)下でCHと水素との混合ガスを反応させて適量の炭素を触媒層に溶解または吸着させた後に、冷却に際して触媒と炭素との溶融温度差を用いてグラフェンを合成する化学気相蒸着法があるが、これは、触媒層とグラフェン層を分離する工程にかかるコストが高く、しかも、反応温度が高いという欠点を有する。なお、メタンと水素ガスの反応時間、冷却速度、反応ガスの濃度、触媒層の厚さなどを調節する工程が煩雑であり、しかも、連続工程が行い難いという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より低い反応温度下で、しかも、より高い効率にてグラフェンを製造する方法を提供するところにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、前記方法により製造されるグラフェンを含むナノ粒子を提供するところにある。
【0008】
さらに、本発明のさらに他の目的は、前記方法により製造されるパターン化したグラフェンまたはグラフェンシートを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、グラフェン成長用金属触媒の上に、CO、CHおよびHOを含むガスを提供し、加熱して反応させた後に冷却させるステップを含むグラフェンの製造方法を提供する。
【0010】
前記金属触媒は、Ni、Co、Cu、Fe、Rh、Ru、Pt、Au、Al、Cr、Mg、Mn、Mo、Si、Sn、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅、青銅、ステンレス鋼およびGeよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金を含むものであってもよい。
【0011】
前記CH、COおよびHOガスは、約1:0.20〜0.50:0.01〜1.45のモル比で提供されてもよく、より具体的には、約1:0.25〜0.45:0.10〜1.35のモル比で提供されてもよく、さらに具体的には、1:0.30〜0.40:0.50〜1.0のモル比で提供されてもよい。
【0012】
前記加熱は、約400〜約900℃で行われてもよく、より具体的には、約500〜約850℃で行われてもよく、さらに具体的には、約600〜約800℃で行われてもよい。
【0013】
前記冷却は、不活性ガス、例えば、窒素(N)、アルゴン(Ar)またはヘリウム(He)ガスの存在下で所定の速度にて行われてもよい。
【0014】
前記金属触媒は、担体、例えば、多孔性担体またはシリコンの上に担持されてもよい。前記多孔性担体は、Al、SiO、TiOまたはゼオライトなどの酸化物担体であってもよい。前記シリコンは、非晶質シリコンであってもよい。
【0015】
本発明の一態様において、前記金属触媒は、金属ナノ粒子状に前記多孔性担体の上に担持されてもよい。前記金属ナノ粒子状の触媒は、前記多孔性担体の上に複合体状に担持されてもよい。
【0016】
前記金属触媒は、前記担体に約1〜約50重量%の含量にて担持されてもよい。具体的には、前記触媒は、前記担体に約3〜約20重量%の含量にて、より具体的には、約5〜約12重量%の含量にて担持されてもよい。
【0017】
本発明の他の態様において、前記金属触媒は、フィルム状または基板状に提供されてもよく、前記フィルム状または基板状の金属触媒上の少なくとも一部に、前記触媒を担持する担体が提供されてもよい。前記金属触媒は、NiフィルムまたはNi基板であってもよい。
【0018】
前記フィルム状または基板状の金属触媒上の少なくとも一部に提供される担体は、Al、SiまたはTiのイオン状のものであってもよい。
【0019】
前記フィルム状または基板状の金属触媒上の少なくとも一部に提供される担体は、パターン化されて提供されてもよい。
【0020】
本発明の一態様によれば、前記フィルム状または基板状の金属触媒の上にパターン化した担体を提供することを含む半導体回路の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の他の態様によれば、前記製造方法によって製造されるグラフェンを含むナノ粒子を提供する。
【0022】
具体的には、前記ナノ粒子は、前記グラフェンによってカプセル化した金属ナノ粒子であってもよい。
【0023】
前記金属ナノ粒子は、Ni、Co、Cu、Fe、Rh、Ru、Pt、Au、Al、Cr、Mg、Mn、Mo、Si、Sn、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅、青銅、ステンレス鋼およびGeよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金を含むものであってもよい。
【0024】
前記金属ナノ粒子の直径は、約1〜約50nm、具体的には、約5〜約40nmであってもよい。
【0025】
前記金属ナノ粒子は、球状、半球状、楕円形状、六角形状、正方形状または非対称六角柱形状であってもよい。
【0026】
前記グラフェンカプセル化した金属ナノ粒子は、ディスプレイ、電池または太陽電池の電極物質および生体内の薬物伝達物質用の発光物質として用いられてもよい。
【0027】
本発明のさらに他の態様によれば、前記グラフェンによってカプセル化した金属ナノ粒子から製造される中空のグラフェンナノ粒子を提供する。
【0028】
前記本発明の態様による製造方法において、グラフェンは、1層〜5層に製造されてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、より低い反応温度下で、しかも、より高い歩留まりにてグラフェンを製造することができ、特に、地球温暖化の主犯であり、且つ、排出料金が課せられるCOを主原料として高付加価値のグラフェンを製造することができる。なお、前記方法によって製造されるグラフェンは、電子材料または薬学分野の材料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】グラフェン成長用触媒の担体への担持形態を示す模式図であって、左図は触媒金属粒子が担体に物理的に吸着された状態の断面を示すものであり、右図は担体と触媒金属粒子とが複合体状に結合された状態の断面を示す模式図である。
図2】(a)は触媒金属が多孔性担体に物理的に吸着されて担持された触媒を、(b)は担体と触媒金属とが複合体状に結合されて担持された触媒を示し、それぞれ一つの触媒金属粒子に対してその形状の特徴がよく現れるように誇張して示す拡大図である。
図3】従来の化学気相蒸着法によりグラフェンを製造するときに、触媒層内に吸収された炭素原子が冷却速度に応じて触媒層の表面に移動する状態を概略的に示す図である。
図4】触媒の表面における炭素原子供給源(COおよびCH)と水との相互作用、およびそれより余分の炭素原子と水がCOおよびHガスに転換されて蒸発される過程を概略的に示す図である。
図5】(a)は、本発明の一態様により、触媒の表面に余分の炭素原子が蓄積されることなく、触媒層に溶け込んだ炭素が触媒層内において触媒間質性膜を形成した状態を、(b)は、前記触媒間質性膜が冷却によって触媒層の表面に抜け出てグラフェンを形成した状態を概略的に示す図である。
図6】本発明の一態様により、Niフィルム上に形成されたAlイオンのパターンに応じてグラフェンが製造される過程を概略的に示す模式図である。製造されたパターン化したグラフェンを含むNiフィルムからNiフィルムを除去すれば、パターン化したグラフェンが得られる。
図7】製造例1に従い製造された、多孔性担体の上に担持されたグラフェン成長用金属触媒の3次元の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージである。
図8】製造例2に従い製造された、多孔性担体の上に担持されたグラフェン成長用金属触媒の3次元の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージである。
図9】製造例1に従い製造されたグラフェン成長用触媒上においてグラフェンの生成反応を行った後の触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
図10】製造例2に従い製造されたグラフェン成長用触媒上においてグラフェンの生成反応を行った後の触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
図11】それぞれ製造例1および製造例2に従い製造されたグラフェン成長用触媒上においてグラフェンの生成反応を行い、グラフェンが生成されたことを示すラマングラフである。
図12】それぞれ製造例1および製造例2に従い製造されたグラフェン成長用触媒上においてグラフェンの生成反応を行い、グラフェンが生成されたことを示すX線光電子分光(XPS)グラフである。
図13】製造例3に従い製造された、Niフィルムの上にAlイオンをコーティングした触媒上にグラフェンが生成されたことを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図14】製造例3に従い製造された、Niフィルムの上にAlイオンをコーティングした触媒上におけるAlイオンのコーティング部分にグラフェンが生成されたことを示すラマングラフである。
図15】製造例3に従い製造された、Niフィルムの上にAlイオンをコーティングした触媒上におけるAlイオンのコーティング部分にグラフェンが生成されたことを示すX線光電子分光(XPS)グラフである。
図16】製造例4に従い製造された、半導体ウェーハの上に蒸着されたNi触媒上にグラフェンが生成されたことを示すラマングラフである。
図17】製造例4に従い製造された、半導体ウェーハの上に蒸着されたNi触媒の上にグラフェンが生成されたことを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、(b)は、(a)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一態様は、グラフェン成長用金属触媒の上に、CO、CHおよびHOを含むガスを提供し、加熱して反応させた後に冷却させるステップを含むグラフェンの製造方法を提供する。
【0032】
前記金属触媒は、炭素との吸着性が高い遷移金属触媒、具体的には、Ni、Co、Fe、Pt、Au、Al、Cr、Cu、Mg、Mn、Mo、Rh、Ru、Si、Sn、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅、青銅、ステンレス鋼およびGeよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金を含むものであってもよく、より具体的には、Ni、Co、Cu、Feよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金を含むものであってもよく、さらに具体的には、前記金属触媒はNi触媒であってもよい。
【0033】
前記CH:CO:HOガスのモル比は、約1:0.20〜0.50:0.01〜1.45であってもよく、具体的には、約1:0.25〜0.45:0.10〜1.35であってもよく、さらに具体的には、約1:0.30〜0.40:0.50〜1.0であってもよい。
【0034】
前記反応比に示すように、水は少なくとも0.01以上含有されなければならない。しかし、水の含量が1.45以上であれば、炭素が触媒の上に堆積されることなく全てCOに転換されてしまい、且つ、Ni触媒が完全に酸化されて反応性が下がるためグラフェンが形成され難くなる。
【0035】
前記加熱は、約400〜約900℃で行われてもよく、具体的には、約500〜約850℃で行われてもよく、さらに具体的には、約600〜約800℃で行われてもよい。
【0036】
前記冷却は、不活性ガス、例えば、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)ガスの存在下で所定の速度にて行われてもよい。
【0037】
本発明の一態様において、前記金属触媒は、担体、例えば、多孔性担体またはシリコンの上に担持されてもよい。前記多孔性担体は、Al、SiO、ゼオライトまたはTiOなどの酸化物担体であってもよく、具体的には、前記担体は、Alであってもよい。前記シリコンは、非晶質シリコンであってもよく、具体的には、半導体ウェーハであってもよい。
【0038】
前記金属触媒は、球状のナノ粒子状に前記多孔性担体の上に吸着されて担持されてもよく、楕円形状または非対称の六角柱形状のナノ粒子として前記多孔性担体の上に複合体状に結合されて担持されてもよい。あるいは、前記金属触媒は、半導体ウェーハの上にCVD法(化学気相蒸着法)などによって金属を蒸着することにより担持されてもよい。
【0039】
以下に詳述するように、前記触媒金属粒子が前記多孔性担体と「複合体」状に結合するということは、図2(b)に誇張して示すように、それぞれの触媒金属粒子が、アルミナ担体との結合面に垂直な断面において直線によって切断された円形状または楕円形状を呈し、触媒粒子が担体にくっついて触媒粒子と担体との間の強い相互作用により結合を形成することを意味する。
【0040】
多孔性担体上への金属触媒の担持方法は、当該技術分野において既に公知である。例えば、多孔性担体上への金属触媒の担持方法として、熱蒸着装置(thermal‐evaporator)、電子ビーム蒸着装置(e−beam evaporator)、スパッタ(sputter)などを用いるか、または電気メッキ(electro−plating)法などを用いて、グラフェン成長用触媒として働くNi、Co、Fe、Pt、Au、Al、Cr、Cu、Mg、Mn、Mo、Rh、Ru、Si、Sn、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅、青銅、ステンレス鋼およびGeよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金を担体、具体的には、多孔性担体の上に堆積させる方法や、ウェット法を用いて前記グラフェン成長用金属触媒粒子を担体の上に物理的に吸着させる方法が挙げられる。
【0041】
例えば、ウェット法を用いて前記金属触媒粒子を多孔性担体に物理的に吸着させる方法は、簡単に説明すれば、金属触媒が溶け込んでいる水溶液に多孔性担体を含浸させ、これをオーブン中で加熱、乾燥した後に高温下で焼成し、焼成された触媒を所定の速度にて昇温しながら不活性ガス雰囲気で還元させ、その後に高温の水素雰囲気下で還元された触媒を保持して触媒を製造する方法である。この場合、製造された触媒は、図1の左側に示すように、略球状の金属触媒粒子が多孔性担体の上に物理的に吸着されて存在することが分かる。
【0042】
一方、前記金属触媒粒子が多孔性担体の上に球状を維持しながら単に物理的に吸着されているのではなく、上述したように、担体と金属触媒粒子とが互いに複合体状に強く結合されて存在してもよいが、この場合を示すものが図1の右図である。すなわち、図1の右側に示すように、前記金属触媒粒子が前記多孔性担体と複合体状に物理的且つ化学的により一層強く結合されている場合に、前記金属触媒粒子は、球状よりは、半球状、楕円形状または転覆したボート状に前記多孔性担体の表面により一層広く接触しながら強く結合されていることが分かる。
【0043】
図2(a)および図2(b)は、前記金属粒子が前記多孔性触媒と結合された状態を、その形状の特徴がよく現れるように触媒粒子のそれぞれを誇張して示す拡大図である。
【0044】
図2(a)に示すように、触媒金属粒子が多孔性担体に物理的に吸着されている場合に、触媒金属粒子の形状は球状であり、触媒金属粒子と多孔性担体との接触面積が相対的に狭いことが分かる。
【0045】
これに対し、図2(b)に示すように、触媒金属粒子が多孔性担体と複合体状に結合されている場合には、それぞれの触媒金属粒子の形状は半楕円形状または転覆したボート状であり、この場合、触媒金属粒子と多孔性担体との接触面積は図2(a)に比べて相対的に遥かに広いことが分かる。
【0046】
前記図2(b)に示すように、触媒金属粒子と多孔性担体を複合体状に結合させるために、前記触媒の製造過程のうちの最後の過程である水素雰囲気で昇温する前に、製造された触媒を含む反応器を約常温まで冷却させた後、少量の水を前記触媒に添加する過程を含んでいてもよい。すなわち、上述した通常のウェット法により多孔性担体の上に触媒が吸着された状態で、少量の水を触媒金属粒子の上に加えることにより、前記触媒金属粒子が前記水によって押し潰されてその形状が楕円形状になって前記多孔性担体の表面により一層強く結合されるのである。
【0047】
このように、触媒金属粒子が多孔性担体に複合体状に強く結合される場合に、触媒粒子と担体との間の接触界面の面積が広くなって高温でより安定的であり、しかも、以下に詳述するように、広くなった触媒と担体との間の接触界面を介して炭素原子がより容易に触媒層内に吸収され、また、この部分において余分の炭素が水と反応してCOとHガスを生成することにより、触媒表面における余分の炭素の蓄積による触媒のコーキングによる劣化も防ぐことができる。
【0048】
また、前記担体と触媒金属粒子との間の接触界面の面積が広くなるにつれて、この界面におけるCO改質反応の効率がさらに高くなる。このような原理を概略的に示すものが図5である。図5に示すように、前記本発明の一態様により、触媒金属粒子が多孔性担体と複合体状に結合される場合に、この触媒はより広くなった担体と触媒間の界面を介してCO改質反応が一層有効に行われる一方で、副反応である触媒粒子表面におけるカーボン浸漬による触媒のコーキングおよび劣化現象はなお一層低減される。それにより、触媒金属粒子と担体とが複合体状に結合されていない触媒を用いる場合よりも、触媒金属粒子と担体とが複合体状に結合された触媒を用いる場合に、グラフェンの生成率も著しく良くなる。具体的には、触媒金属粒子と担体とが複合体状に結合されていない触媒の場合に、当該触媒の表面に複数層のグラフェンが形成されるのに対し、触媒金属粒子と担体とが複合体状に結合されている触媒を用いる場合に、前記触媒の表面には1層または2〜3層のグラフェンが形成されてもよい。
【0049】
上述したように、本発明においては、触媒粒子の多孔性担体への結合形態として、前記触媒金属粒子と前記担体とが互いに複合体状に強く結合される場合を例示しているが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、通常の方法により様々な形状に担体の上に担持された触媒金属粒子の場合にも、前記本発明の態様によりグラフェンを製造することができる。
【0050】
前記金属粒子は、前記酸化物担体に約1〜約50重量%の含量にて担持されてもよく、具体的には、約3〜約20重量%の含量にて担持されてもよく、さらに具体的には、約5〜約12重量%の含量にて担持されてもよい。
【0051】
上述したように、従来の化学気相蒸着法においては、高温(1,000℃)でCHと水素との混合ガスを反応させて炭素を基板の上に蒸着された遷移金属(NiまたはCu)触媒層内に溶け込ませたり吸着させたりした後、これを冷却して触媒と炭素との間の溶融温度差によって触媒層の表面にグラフェンを形成していたが、この方法は、適量の炭素を触媒層内に溶け込ませる混合ガスの濃度、触媒層に溶け込んでいた炭素が触媒層の表面に抜け出てグラフェンを形成する冷却速度、触媒層の厚さなどを調節することによりグラフェンを製造することが非常に煩雑であった。例えば、図3に示すように、冷却速度の差によって炭素原子が触媒層から抜け出てグラフェンを形成する歩留まりに大きな差があった。具体的には、冷却速度が速過ぎる場合には炭素原子が触媒層の表面にまだ抜け出なかった状態で冷却が完了し、冷却速度が遅過ぎる場合には、触媒層の表面に抜け出た炭素原子がグラフェンを形成することなく飛散されてしまう。したがって、適正な中間速度の冷却によってのみグラフェンを形成することができるが、その調節が決して容易ではなかった。
【0052】
上述した本発明の一態様においては、炭素供給源として二酸化炭素(CO)とメタン(CH)ガスを用い、これと共に、水(HO)を必須反応物として反応させることにより、触媒層内に溶け込んだ炭素原子、または触媒層から抜け出る炭素原子のうちグラフェンを形成しない余剰の炭素原子が水(HO)の酸素(O)原子と反応して、それよりCOガスおよびHガスが形成され、その結果、前記触媒の上に余分の炭素原子が蓄積されてウィスカー状にコーキングされる現象が防止または低減される。これにより、前記触媒を用いたグラフェンの連続製造が可能になる。図4は、このような触媒表面における炭素原子供給源(COおよびCH)と水との相互作用、およびそれより余分の炭素原子と水がCOおよびHガスに転換されて触媒から蒸発する過程を概略的に示している。
【0053】
一方、上述したように、余分の炭素原子が触媒表面にコーキングされない代わりに、触媒層に溶け込んだ炭素は触媒層内において触媒間質性膜を形成すると考えられ、この膜が反応後に冷却によって触媒層の表面に抜け出てグラフェンを形成すると考えられる。これを概略的に示すものが図5である。
【0054】
上述した水と炭素原子供給源との間の反応は、前記CH:CO:HOガスのモル比により適切に達成可能であるが、本発明は必ずしも前記モル比に限定されるものではなく、余分の炭素原子が触媒層にコーキングされることを防ぐ範囲のモル比にてCH、COおよびHOガスを適切に提供することができる。
【0055】
一方、前記本発明の一態様においては、CHおよびCOガスとともに直接的にHOを注入することにより上記の効果が得られるが、必ずしも水(HO)を直接的に注入しなくても、反応中に水を生成する物質を一緒に添加することにより同じ効果が得られる。すなわち、CHおよびCOガスとともに、適量のアルコールを添加して反応させた場合に、これらの添加物を加熱することによりアルコールが分解されて水が形成されて同じ反応効果が得られる。したがって、前記反応物において、水の代わりに、水と同じ含量にて、前記反応物と共に加熱するときに水に転換可能なCで表される化合物を含めて反応を行ってもよい。
【0056】
上述したように、前記触媒金属粒子は、金属ナノ粒子状のものであってもよく、具体的には、球状、半球状、楕円形状または非対称の六角柱状に前記担体の上に担持されてもよい。
【0057】
上述したように、前記金属触媒粒子が前記担体の上に複合体状に結合される場合に、金属触媒粒子と多孔性担体との結合面積が一層広くなり、金属触媒粒子と担体との結合面積が広くなるほど、金属触媒粒子の表面上にグラフェンが生成される効率が一層高くなる。
【0058】
特定の理論に拘るものではないが、グラフェンは触媒金属粒子と担体との間の界面を介して触媒層内に溶け込む炭素によって形成されるものと考えられる。したがって、図2(a)に示すように、金属触媒粒子が担体の上に球状にそのまま吸着されている形態よりは、金属粒子が担体に複合体状に強く結合されることにより触媒金属粒子と担体との間の界面の面積が広くなる図2(b)の場合の方が、触媒表面におけるグラフェンの形成に一層有利な構造であると考えられる。また、この界面において余分の炭素と水との反応によってCOおよびHガスが生成されて蒸発されることにより、触媒の表面に炭素原子が蓄積されて触媒がコーキングされる現象もまた、図2(b)の場合にさらに有効に防がれるものと考えられる。
【0059】
本発明の他の態様において、前記触媒金属はフィルム状または基板状に提供されてもよく、前記フィルム状または基板状の触媒上の少なくとも一部に、前記触媒金属を担持する担体が提供されてもよい。
【0060】
前記触媒金属の上に提供される担体は、Al、SiまたはTiのイオン状に提供されてもよく、前記担体が前記触媒金属の基板またはフィルムの上に提供される部分において、前記CO、CHおよびHOガスの提供によってグラフェンが生成され得る。
【0061】
前記触媒金属の基板またはフィルムの上に担体イオンを提供する方法としては、触媒金属の基板またはフィルムの上にAl、SiまたはTiのイオンを含むガスをスパッタリングする方法や、前記担体イオンを含む水溶液を前記触媒金属の基板またはフィルムにコーティングする方法が挙げられる。具体的には、担体イオンを含む化合物を水に溶かして水溶液を製造し、この水溶液を触媒金属の基板にスピンコートした。上述したように、グラフェンは触媒金属と担体間の界面を介して触媒層内に溶け込む炭素によって形成されるものと考えられ、これにより、前記触媒金属からなる基板またはフィルム上において、単に前記Al、SiまたはTiイオンなどの担体が存在する部分にグラフェンが形成されてもよい。したがって、本発明の一態様において、前記触媒金属の基板またはフィルム上の一部にのみ担体イオンを提供する場合に、前記基板またはフィルム上の担体イオンが提供された一部にのみグラフェンが生成される。したがって、もし、前記担体を前記触媒金属の基板またはフィルムの上にパターン化させて提供すると、グラフェンは前記基板またはフィルムの上にパターン化した形状に生成される。本発明の他の態様において、前記担体を前記触媒金属の基板またはフィルムの全表面に亘って提供すると、グラフェンは前記基板またはフィルムの全表面に亘ってシート状に生成される。
【0062】
したがって、本発明の他の態様は、前記グラフェンの製造方法により提供されるグラフェンを含むナノ粒子、または金属触媒の基板またはフィルムの上にパターン化したグラフェンまたはグラフェンシートを提供する。
【0063】
具体的には、前記グラフェンを含むナノ粒子は、グラフェンによってカプセル化した金属ナノ粒子であってもよい。例えば、前記グラフェンによってカプセル化した金属ナノ粒子は、グラフェンによって全体的または部分的にカプセル化されてもよい。
前記グラフェンによって全体的または部分的にカプセル化した金属ナノ粒子は、触媒として金属ナノ粒子を多孔性担体上に担持して、前記本発明の態様の方法により前記金属ナノ粒子の表面にグラフェンを生成することによって製造することができる。前記生成されたグラフェンによって部分的または全体的にカプセル化した金属ナノ粒子は、当該技術分野において公知された方法、例えば、エッチングなどの方法で多孔性担体を除去することによって、多孔性担体から分離されてもよい。
【0064】
前記金属ナノ粒子は、Ni、Co、Cu、Fe、Rh、Ru、Pt、Au、Al、Cr、Mg、Mn、Mo、Si、Sn、Ta、Ti、W、U、V、Zr、黄銅、青銅、ステンレス鋼およびGeよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金、具体的には、Ni、Co、Cu、Feよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金のナノ粒子であってもよい。
【0065】
前記金属ナノ粒子は、球状、半球状、楕円形状または非対称の六角柱形状であってもよく、具体的には、前記金属ナノ粒子は、非対称の六角柱状であってもよい。また、前記金属ナノ粒子の直径は、約10〜約50nm、具体的には、約20〜約40nmであってもよく、前記楕円形状または非対称の六角柱形状である場合に、前記直径は、前記ナノ粒子の横断面のうち最も長い直径を基準として定められてもよい。
【0066】
前記グラフェンによってカプセル化した金属ナノ粒子は、ディスプレイ用発光体、バッテリーおよび太陽電池の電極素材などの様々な電子素材、または生体内薬物伝達体などのバイオ薬学分野の素材としても使用可能である。このとき、前記金属ナノ粒子は、特に、Fe、Co、Niよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属、もしくはこれらのうちの二種以上の金属の合金など磁性を帯びる金属ナノ粒子から構成されてもよい。
【0067】
一方、前記グラフェンがカプセル化した金属ナノ粒子を加熱して金属ナノ粒子のみを溶かし出すと、中空状のグラフェンナノ粒子が得られる。
【0068】
前記金属ナノ粒子は、例えば、塩化鉄(III)(FeCl)水溶液(1M)などの酸化エッチング液を用いて金属ナノ粒子のみをエッチングすることができる。しかしながら、本発明はこれに何ら制限されない。
【0069】
前記金属触媒の基板またはフィルムの上にパターン化したグラフェン、またはグラフェンシートは、前記金属触媒の基板またはフィルムの少なくとも一部にAl、SiまたはTiイオンを提供し、ここにCO、CHおよびHOガスを提供し、加熱して反応させた後に冷却させることにより、前記基板またはフィルム上における前記担体イオンが提供された部分にのみグラフェンが生成される。
【0070】
具体的には、前記金属触媒の基板またはフィルム上の一部にのみ前記担体イオンが提供される場合に、グラフェンは、前記触媒の基板またはフィルム上における担体イオンが提供された一部にのみ生成される。したがって、前記金属触媒の基板またはフィルム上の一部にパターン化した形で担体を提供すると、前記担体が提供された個所にグラフェンがパターン化した形で生成される。これを示すものが図6である。
【0071】
図6を参照すると、金属触媒であるNiフィルムの上に「SAIT」という文字状にAlイオンをコーティングし、ここにCO、CHおよびHOガスを提供し、加熱して反応させた後に冷却させると、前記Alイオンが提供された「SAIT」文字の部分にグラフェン膜が形成される。このとき、必要に応じて、エッチング液などを用いてNiフィルムのみを溶かし出すと、グラフェンにより形成された「SAIT」という文字のみが残る。
【0072】
前記本発明の一態様により製造されるパターン化したグラフェンは、電子回路または半導体材料として活用可能である。
【0073】
また、金属触媒であるNiフィルムまたは基板の全体にAlイオンなどの担体を提供し、ここにCO、CHおよびHOガスを提供し、加熱して反応させた後に冷却させると、前記Niフィルムまたは基板の全体にグラフェン膜が形成され、前記Niフィルムまたは基板を除去すると、グラフェンシートのみが残る。この方法によれば、2次元的に大面積化したグラフェンシートを容易に製造することができる。
【0074】
前記パターン化したグラフェンまたはグラフェンシートは、前記金属触媒の基板またはフィルムの上に提供される担体の濃度を調節することにより、その厚さと形状を容易に調節することができ、これにより製造されるグラフェンの特性も容易に調節することができる。
【0075】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて前記本発明の態様について説明する。これらの実施例および比較例は単に本発明を説明するためのものであり、これらによって本発明の範囲が限定されることはない。
【0076】
(実施例)
製造例1:グラフェン成長用触媒(7重量%Ni/γ−Al)の製造
γ−Alの上に7重量%の含量にて担持されたNi金属触媒からなるグラフェン成長用触媒を製造した。具体的には、アルミナ(150m/g、アルミナ粒子の直径:〜3mm、α‐アルミナ)をNi(NO・HO((株)サムジョン化学社製)水溶液に含浸させ、120℃のオーブン中で24時間乾燥した後、500℃且つ空気雰囲気で5時間焼成した。前記焼成された触媒を昇温させながら(10℃/分)窒素雰囲気で還元させ、次いで、850℃の水素雰囲気で1時間保持して7重量%のNi/γ−Al触媒を製造した。反応器を30℃に冷却させ、5mlの蒸溜水を前記触媒に添加した。次いで、昇温させながら(10℃/分)水素雰囲気で水を蒸発させ、850℃に1時間保持した。
【0077】
このようにして製造された触媒に対し、担持された触媒金属の形状を調べるために、3次元の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージを撮り、その断面を分析して、金属触媒が担体に担持された形状の断面を分析した。図7は、前記3次元の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージの断面である。触媒金属の結合断面が球状または楕円形状であり、担体との相互作用によって触媒粒子と担体とが複合体状に結合されていることが分かる。
【0078】
製造例2:グラフェン成長用触媒(7重量%のNi/γ−Al)の製造
7重量%のNi/γ−Al触媒を初期ウェット法により製造した。アルミナ(150m/g、アルミナ粒子の直径:〜3mm、α‐アルミナ)をNi(NO・HO((株)サムジョン化学社製)水溶液に含浸させ、120℃のオーブン中で24時間乾燥した後、500℃且つ空気雰囲気で5時間焼成した。前記焼成された触媒を昇温させながら(10℃/分)窒素雰囲気で還元させ、次いで、850℃の水素雰囲気で1時間保持して7重量%のNi/γ−Al触媒を製造した。
【0079】
このようにして製造された触媒に対し、担持された触媒金属の形状を調べるために、3次元の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージを撮り、その断面を分析して、金属触媒が担体に担持された形状の断面を分析した。図8は、前記3次元の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージの断面である。同図を参照すると、触媒金属が球状に存在していることが分かる。
【0080】
製造例3:グラフェン成長用触媒(Niフィルムの上にAlイオンがコーティングされた触媒)の製造
Al(NO)39H0化合物0.1gを水3mlに溶かし、この水溶液をNiフィルムの上に300rpmの速度にてスピンコートした後、これを80℃のオーブン中で600分間加熱して焼成することにより、Niフィルムの上にAlイオンがコーティングされた触媒を製造した。
【0081】
製造例4:グラフェン成長用触媒(シリコンウェーハの上にNiを蒸着した触媒)の製造
半導体シリコンウェーハの上にCVD法を用いてNiを300nmの厚さに蒸着してグラフェン成長用触媒を製造した。
【0082】
実施例1:グラフェンカプセル化したNiナノ粒子の製造
製造例1および製造例2に従い製造されたγ−Alの上に7重量%の含量にて担持されたNi金属触媒0.45gに対し、700℃且つ1気圧の窒素(N)条件下で、CH、COおよび水(HO)を約1:0.38:0.81の割合にてそれぞれ200sccm(立方センチメートル毎分)にて投入しながら、約10時間反応を行った(ガス空間速度(GHSV)=50,666kcc/g・hr)。
【0083】
図9は、製造例1に従い製造された触媒を用いて前記反応を行った後の前記触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、図10は、製造例2に従い製造された触媒を用いて前記反応を行った後の前記触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0084】
図9の写真から明らかなように、Ni金属触媒は六角形の断面形状を呈し、前記六角形の断面の外周縁に沿って白色の単層または2層に現れたものがグラフェンである。前記Ni粒子の直径は、約35〜40nmである。
【0085】
図10の写真からは、Niナノ粒子の上に多重のグラフェン層が形成されていることが確認できる。
【0086】
また、図11のラマンピークおよび図12のX線光電子分光(XPS)ピークからも、これらの触媒の上にそれぞれグラフェンが形成されていることが確認できる。
【0087】
図11より、製造例1に従い製造された触媒のD/Gピーク表面積がさらに低いことが分かり、これは、製造例1の触媒の上に、製造例2に従い製造された触媒よりも結晶性の遥かに高いグラフェン層が形成されていることを示唆する。
【0088】
図12の結果からも、製造例1に従い製造された触媒において、グラフェンの特性であるC−CピークまたはC=Cピークが一層鮮明に現れ、製造例2に従い製造された触媒の場合に、ウィスカー状のカーボンに起因した金属カーバイドピークが現れた。
【0089】
実施例2:パターン化したグラフェンの製造
製造例3に従い製造されたNiフィルムの上にAlイオンがコーティングされた膜に対し、700℃且つ1気圧の窒素(N)条件で、CH、COおよび水(HO)を約1:0.38:0.81の割合にてそれぞれ200sccm(立方センチメートル毎分)の速度にて投入しながら約2時間反応を行った(ガス空間速度(GHSV)=50,666kcc/g・hr)。
【0090】
図13は、前記反応後に、Niフィルムの上に形成されたグラフェン層の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。前記走査電子顕微鏡(SEM)写真から、Niフィルムの上におけるAlイオンがコーティングされた部分にグラフェンが形成されていることが分かる。
【0091】
図14は、前記Niフィルムの上にAlイオンがコーティングされた部分にグラフェンが形成されていることを示すラマンピークである。図14から、Niフィルム上におけるAlイオンがコーティングされた部分にグラフェンが高い結晶性をもって形成されていることが分かる。
【0092】
図15は、前記Niフィルム上におけるAlイオンがコーティングされた部分にグラフェンが形成されたことを示すX線光電子分光(XPS)グラフである。前記X線光電子分光(XPS)グラフは、Alの濃度に応じて、グラフェンが1層、2〜3層または多層に形成されることを示す。
【0093】
実施例3:パターン化したグラフェンの製造
製造例4に従い製造された、半導体ウェーハの上にCVD法を用いて300nmの厚さに蒸着したグラフェン成長用触媒(試片)を用いて、700℃且つ1気圧の窒素(N)条件下で、従来のグラフェン生成条件であるCHとHをそれぞれ100ccm:200ccm(立方センチメートル毎分)の速度にて投入しながら30分間反応させてグラフェンを形成した後、これをN雰囲気で冷却して、前記形成されたグラフェン層とガス上のCH:CO:HOをそれぞれ100ccm:100ccm:10sccmの割合にて反応させた後、前記表面に対するラマン分析を行った。
【0094】
分析の結果、図16に示すように、COおよびHOを添加することにより、損傷の少ない高結晶性のグラフェンが成長することが分かった。
【0095】
また、図17は、前記半導体ウェーハの上に蒸着されたNi触媒の上にグラフェンが生成されたことを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図17(b)は、図17(a)の拡大図である。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態について詳述したが、本発明の権利範囲はこれに何ら限定されるものではなく、下記の請求範囲において定義している本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形および改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17