【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る流体識別装置は、
超音波を送信する送信用探触子と、
前記送信用探触子から送信された超音波のうち、管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、前記管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波を受信する受信用探触子と、
前記管状部材の表面に設けられ、前記送信用探触子から送信される超音波を前記管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で、前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる送信側斜角装着部材と、
前記管状部材の表面に設けられ、前記送信用探触子から送信された超音波を前記管状部材の表面から斜角受信させる状態で、前記受信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる受信側斜角装着部材と、
前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材とを、前記管状部材の軸芯に沿う方向において相互に対向する位置に位置決めした状態で一体化自在な一体化部材と、
少なくとも前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材との間における前記管状部材の表面を被覆し、前記本体内伝搬波を減衰させる減衰部材と、
前記送信用探触子で超音波が送信されてから前記受信用探触子で前記透過伝搬波が受信されるまでの時間差に基づいて、前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度を算出する音速算出部と、
前記音速算出部により算出された前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度に基づいて、前記管状部材の内部に存在する流体の種別を識別する流体種別識別部と、を備える
流体識別装置であって、
前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々が、各装着部材内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部を備え、
前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々が、中実部材により構成されるとともに、前記送信用探触子及び前記受信用探触子と前記一体化部材とを位置決めする位置決め具を貫通自在な前記減衰部としての貫通孔を備えている点にある。
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る流体識別方法は、
送信用探触子から送信される超音波を管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で、前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる
、中実部材により構成される送信側斜角装着部材と、前記送信用探触子から送信された超音波のうち、前記管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、前記管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波を前記管状部材の表面から受信用探触子に斜角受信させる状態で、前記受信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる
、中実部材により構成される受信側斜角装着部材とを、前記管状部材の軸芯に沿う方向で相互に対向する位置に位置決めした状態で
、前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々に各装着部材内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部として設けられた貫通孔に位置決め具を貫通させて、一体化部材により一体化するステップと、
少なくとも前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材との間における前記管状部材の表面を、前記本体内伝搬波を減衰させる減衰部材により被覆した状態で、前記送信用探触子から超音波を送信し、前記受信用探触子により前記透過伝搬波及び前記本体内伝搬波を受信するステップと、
前記送信用探触子で超音波が送信されてから前記受信用探触子で前記透過伝搬波が受信されるまでの時間差に基づいて、前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度を算出するステップと、
算出された前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度に基づいて前記管状部材の内部に存在する流体の種別を識別するステップと、を備える点にある。
【0013】
上記両構成によれば、管状部材の表面に設けられる送信側斜角装着部材により、送信用探触子が、当該送信用探触子から送信される超音波を管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で管状部材の表面に装着されるとともに、管状部材の表面に設けられる受信側斜角装着部材により、受信用探触子が、送信用探触子から送信された超音波を管状部材の表面から斜角受信させる状態で管状部材の表面に装着される。
このため、送信用探触子が超音波を管状部材の表面から斜角入射し、受信用探触子が、当該受信用探触子に到達する超音波を斜角受信する。この受信用探触子が受信した超音波には、主として管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波が含まれている。従って、本体内伝搬波と透過伝搬波との伝搬距離が比較的長くなるため、本体内伝搬波と透過伝搬波とが受信用探触子に到達する時間差を比較的大きくでき、本体内伝搬波の方が透過伝搬波よりも速く受信用探触子に到達する特性を利用した本体内伝搬波と透過伝搬波との判別を精度良く行うことができる。
【0014】
そして、送信用探触子で超音波が送信されてから受信用探触子で透過伝搬波が受信されるまでの時間差に基づいて、音速算出部により管状部材の内部での超音波の伝搬速度が算出される。
また、管状部材の内部での超音波の伝搬速度は媒質となる流体の種別により異なることから、流体種別識別部は、上記のように算出された伝搬速度に基づいて、管状部材の内部に存在する流体の種別を識別することができる。
【0015】
この際、少なくとも送信側斜角装着部材と受信側斜角装着部材との間における管状部材の表面には、本体内伝搬波を減衰させる減衰部材が被覆されているので、送信用探触子から送信された超音波のうち管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波(ノイズ波)を、送信用探触子から受信用探触子に伝搬する際に減衰部材により吸音し、減衰することができる。これにより、本体内伝搬波(ノイズ波)の影響を低減した状態で、透過伝搬波をより正確に判別することができ、S/N比を向上させることができる。
【0016】
特に、管状部材の表面に対して送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を一体化部材により一体化自在に構成されているので、これら部材を所期の相対位置関係に簡便且つ容易に位置決めすることができる。
具体的には、送信用探触子から送信される超音波を管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で、送信用探触子を管状部材の表面に装着させる送信側斜角装着部材と、送信用探触子から送信された超音波のうち、管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波を管状部材の表面から受信用探触子に斜角受信させる状態で、受信用探触子を管状部材の表面に装着させる受信側斜角装着部材とを、管状部材の軸芯に沿う方向で相互に対向する位置に位置決めした状態で一体化部材により一体化することができる。
これにより、管状部材の表面において、送信用探触子及び受信用探触子を、管状部材の軸芯に沿う方向で相互に対向する位置に配置された送信用探触子から超音波を斜角入射し且つ当該超音波を受信用探触子にて確実に斜角受信することができる位置に、確実に配置することができ、受信用探触子にて斜角受信された超音波のうち透過伝搬波を確実に受信することができる。即ち、管状部材の表面に対して、送信用探触子、受信用探触子、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を所期の相対位置関係に位置決めする労力を、確実に低減しながら、受信用探触子における斜角受信を確実に行い得る構成とすることができる。
よって、管状部材の内部に存在する流体の種別の識別を、簡便且つ容易な構成で精度良く行うことができる。
【0018】
ここで、上述のように、送信用探触子から送信された超音波は送信側斜角装着部材を介して管状部材に斜角入射するが、この斜角入射の際、当該超音波のうち一部は送信側斜角装着部材の内部側に反射し当該内部を乱反射する。同様に、送信用探触子から送信された超音波は受信側斜角装着部材を介して受信用探触子に斜角入射するが、この斜角入射の際、当該超音波のうち一部は受信側斜角装着部材の内部側に反射し当該内部を乱反射する。これら乱反射した超音波の一部は、反射を繰り返して受信用探触子に入射する場合があり、本体内伝搬波(ノイズ波)となる可能性がある。このような本体内伝搬波(ノイズ波)は、乱反射を繰り返すうちに時間が経過し、透過伝搬波と同時或いは近似した時間範囲内に受信用探触子に到達する可能性があり、このような場合、本体内伝搬波(ノイズ波)と透過伝搬波とを区別することが困難となり、透過伝搬波に基づいて管状部材の内部での超音波の伝搬速度を算出することが困難となる。
しかしながら、このような場合であっても、上記構成によれば、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の夫々が、各装着部材内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部を備えるので、各装着部材に入射した超音波のうち、各装着部材内で反射して伝搬する本体内伝搬波を当該減衰部にて減衰することができる。
よって、簡便且つ容易な構成であるにも拘らず、本体内伝搬波の影響を一層低減した状態で、受信用探触子にて受信される透過伝搬波を一層正確に判別することができ、S/N比を一層向上させることができる。
【0020】
上記構成によれば、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の夫々が中実部材により構成されているので、両部材の材質を適切に選択することで、送信用探触子から送信された超音波を送信側斜角装着部材から管状部材の本体内に斜角入射する入射角を調整することができる。これにより、管状部材の本体内を伝搬する本体内伝搬波、及び、管状部材の内部を透過する透過伝搬波の伝搬距離を調整することができる。
また、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の夫々が、一体化部材と位置決めするための位置決め具を貫通自在な貫通孔を備えているので、各貫通孔に位置決め具を貫通させて、一体化部材と送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材とを一体化することができる。これにより、管状部材の表面において送信用探触子、受信用探触子、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を、所期の相対位置関係に、より簡便且つより容易に位置決めすることができる。
【0021】
特に、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の夫々に形成された貫通孔が減衰部としても機能するので、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の内部を乱反射する超音波は、反射を繰り返すにつれて、これら貫通孔内を透過したり貫通孔の内面により反射等することで拡散され減衰することとなる。
これにより、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材と一体化部材とを一体化させ位置決めするために用いられる各貫通孔を、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の内部を乱反射する超音波を減衰させるために利用することができる。
よって、簡便且つ容易な構成であるにも拘らず、本体内伝搬波の影響をより一層低減した状態で、受信用探触子にて受信される透過伝搬波をより一層正確に判別することができ、S/N比をより一層向上させることができる。
【0022】
本発明に係る流体識別装置の更なる特徴構成は、前記管状部材が鋼管により構成され、前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材がアクリル樹脂により構成されるとともに、
前記送信用探触子により送信された超音波が前記送信側斜角装着部材のアクリル樹脂に入射された後、当該アクリル樹脂から前記鋼管へ入射する際の入射角が57度となるように、前記送信側斜角装着部材が前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着する点にある。
【0023】
上記構成によれば、管状部材を鋼管により構成し、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材をアクリル樹脂により構成して、送信側斜角装着部材により送信用探触子を管状部材の表面に装着することで、送信用探触子により送信された超音波を送信側斜角装着部材のアクリル樹脂に入射した後、当該アクリル樹脂から鋼管へ入射する際の入射角を57度に設定する。なお、この入射角57度は、上述の構成を採用した場合において、当該超音波を管状部材の表面において全反射させずに確実に入射でき、しかも、受信用探触子にて受信されるまでの伝搬距離(伝搬時間)をできるだけ長くすることのできる角度である。ここで、当該入射角が57度を超えると送信用探触子から送信された超音波は送信側斜角装着部材を介して管状部材に入射する際に全反射して、管状部材の内部を透過する透過伝搬波として受信用探触子に到達せずに、本体内伝搬波として受信用探触子に到達する可能性が高くなる。また、入射角が57度未満となると、送信用探触子から送信された超音波は送信側斜角装着部材を介して管状部材に入射できるものの、受信用探触子に到達するまでの伝搬距離(伝搬時間)が短くなり、透過伝搬波と本体内伝搬波との判別が困難となる可能性があるため好ましくない。
【0024】
これにより、送信用探触子により送信された超音波が鋼管の軸芯方向に沿って伝搬する際の伝搬距離に関して、送信側斜角装着部材(アクリル樹脂)から鋼管に入射して鋼管から受信側斜角装着部材(アクリル樹脂)に入射するまでの伝搬距離をできるだけ大きく確保することができ、送信用探触子から送信されて受信用探触子に到達する時間が異なる透過伝搬波と本体内伝搬波との到達時間差をより大きくすることができる。
この際、透過伝搬波が、送信側斜角装着部材、管状部材の本体部、管状部材の内部に存在する流体の順に伝搬して、管状部材の内面で反射後、管状部材の内部に存在する流体、管状部材の本体部、受信側斜角装着部材、受信用探触子の順に伝搬する超音波であると、より強度の強い透過伝搬波を受信用探触子で受信することができ、好ましい構成となる。
従って、より精度良く透過伝搬波を判別でき、精度良く識別された透過伝搬波に基づいて精度良く鋼管の内部での超音波の伝搬速度を算出し、鋼管の内部に存在する流体の種別をより精度良く識別することができる。
【0025】
本発明に係る流体識別装置の更なる特徴構成は、前記一体化部材が長手部材により構成され、少なくとも前記長手部材の両端部は横断面視で概略コ字形状に形成されるとともに、当該両端部の夫々には、短手方向に貫通形成される一対の貫通穴が形成され、
前記一体化部材を、前記管状部材の軸芯方向に沿わせた状態で、前記送信側斜角装着部材の外面側と前記受信側斜角装着部材の外面側とに亘って装着し、前記長手部材の一端部に形成された一対の貫通穴と前記送信側斜角装着部材に形成された前記減衰部としての貫通孔とに亘って前記位置決め具が貫通されるとともに、前記長手部材の他端部に形成された一対の貫通穴と前記受信側斜角装着部材に形成された前記減衰部としての貫通孔とに亘って前記位置決め具が貫通されて、前記一体化部材と前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材とが一体化されている点にある。
【0026】
上記構成によれば、長手部材からなる一体化部材を、管状部材の軸芯方向に沿わせた状態で、中実部材からなる送信側斜角装着部材の外面側及び受信側斜角装着部材の外面側の夫々に亘って装着するので、両装着部材を管状部材の軸芯に沿う方向において相互に対向する位置に位置決めした状態で一体化することができる。
そして、この位置決めは、長手部材において横断面視で概略コ字形状の一端部に形成された一対の貫通穴と送信側斜角装着部材における減衰部としての貫通孔とに亘って位置決め具を貫通させるとともに、長手部材において横断面視で概略コ字形状の他端部に形成された一対の貫通穴と受信側斜角装着部材における減衰部としての貫通孔とに亘って位置決め具を貫通させることで容易に行うことができる。
これにより、管状部材の表面において送信用探触子、受信用探触子、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を、所期の相対位置関係に、より簡便且つより容易に位置決めすることができる。