特許第6366313号(P6366313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366313
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】流体識別装置及び流体識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/02 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G01N29/02
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-56791(P2014-56791)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-179027(P2015-179027A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山口 尚二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−025821(JP,A)
【文献】 特開2012−042298(JP,A)
【文献】 特開2010−145357(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0123666(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3066748(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0148856(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0277549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信する送信用探触子と、
前記送信用探触子から送信された超音波のうち、管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、前記管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波を受信する受信用探触子と、
前記管状部材の表面に設けられ、前記送信用探触子から送信される超音波を前記管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で、前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる送信側斜角装着部材と、
前記管状部材の表面に設けられ、前記送信用探触子から送信された超音波を前記管状部材の表面から斜角受信させる状態で、前記受信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる受信側斜角装着部材と、
前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材とを、前記管状部材の軸芯に沿う方向において相互に対向する位置に位置決めした状態で一体化自在な一体化部材と、
少なくとも前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材との間における前記管状部材の表面を被覆し、前記本体内伝搬波を減衰させる減衰部材と、
前記送信用探触子で超音波が送信されてから前記受信用探触子で前記透過伝搬波が受信されるまでの時間差に基づいて、前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度を算出する音速算出部と、
前記音速算出部により算出された前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度に基づいて、前記管状部材の内部に存在する流体の種別を識別する流体種別識別部と、を備える流体識別装置であって、
前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々が、各装着部材内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部を備え、
前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々が、中実部材により構成されるとともに、前記送信用探触子及び前記受信用探触子と前記一体化部材とを位置決めする位置決め具を貫通自在な前記減衰部としての貫通孔を備えている流体識別装置
【請求項2】
前記管状部材が鋼管により構成され、前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材がアクリル樹脂により構成されるとともに、
前記送信用探触子により送信された超音波が前記送信側斜角装着部材のアクリル樹脂に入射された後、当該アクリル樹脂から前記鋼管へ入射する際の入射角が57度となるように、前記送信側斜角装着部材が前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着する請求項に記載の流体識別装置。
【請求項3】
前記一体化部材が長手部材により構成され、少なくとも前記長手部材の両端部は横断面視で概略コ字形状に形成されるとともに、当該両端部の夫々には、短手方向に貫通形成される一対の貫通穴が形成され、
前記一体化部材を、前記管状部材の軸芯方向に沿わせた状態で、前記送信側斜角装着部材の外面側と前記受信側斜角装着部材の外面側とに亘って装着し、前記長手部材の一端部に形成された一対の貫通穴と前記送信側斜角装着部材に形成された前記減衰部としての貫通孔とに亘って前記位置決め具が貫通されるとともに、前記長手部材の他端部に形成された一対の貫通穴と前記受信側斜角装着部材に形成された前記減衰部としての貫通孔とに亘って前記位置決め具が貫通されて、前記一体化部材と前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材とが一体化されている請求項又はに記載の流体識別装置。
【請求項4】
送信用探触子から送信される超音波を管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で、前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる、中実部材により構成される送信側斜角装着部材と、前記送信用探触子から送信された超音波のうち、前記管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、前記管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波を前記管状部材の表面から受信用探触子に斜角受信させる状態で、前記受信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる、中実部材により構成される受信側斜角装着部材とを、前記管状部材の軸芯に沿う方向で相互に対向する位置に位置決めした状態で、前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々に各装着部材内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部として設けられた貫通孔に位置決め具を貫通させて、一体化部材により一体化するステップと、
少なくとも前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材との間における前記管状部材の表面を、前記本体内伝搬波を減衰させる減衰部材により被覆した状態で、前記送信用探触子から超音波を送信し、前記受信用探触子により前記透過伝搬波及び前記本体内伝搬波を受信するステップと、
前記送信用探触子で超音波が送信されてから前記受信用探触子で前記透過伝搬波が受信されるまでの時間差に基づいて、前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度を算出するステップと、
算出された前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度に基づいて前記管状部材の内部に存在する流体の種別を識別するステップと、を備える流体識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状部材の内部に存在する流体の種別を識別する流体識別装置及び流体識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌の掘削作業を行う際には、都市ガスを供給するためのガス管や上水を供給するための上水道管等の管状部材が露出する場合がある。このような場合、管状部材の内部を流れる流体の種別に応じて適切な保安処置を採る必要があるため、露出した管状部材が有効に使用されているものであるか否か、また、有効に使用されている場合には、その内部を流れる流体(例えば、都市ガスや水等)の種別を識別することが必要となる。
【0003】
管状部材の内部に存在する流体の種別を識別する手法としては、従来、穿孔による方法、中性子水分計を用いる方法が利用されてきた。しかし、穿孔による方法では、管状部材が穿孔作業により一旦破壊される上に、流体の種別の識別後に管状部材の復旧作業が必要となるので非効率であり、中性子水分計を用いる方法では、管状部材の内部に水分が存在するか否かを識別するだけであって水分以外の流体の識別はできない。
【0004】
一方で、管状部材の内部に存在する流体の種別を識別する手法として、管状部材の表面に超音波の送信用探触子と受信用探触子とを配置するクランプオン式の流体識別装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この流体識別装置では、送信用探触子で超音波が送信されてから受信用探触子で超音波が受信されるまでの時間差に基づいて、管状部材の内部での超音波の伝搬速度(流体中の超音波の音速)を算出し、当該超音波の伝搬速度から流体の種別を識別する構成とされており、管状部材の内部に存在する流体の種別を非破壊で識別できるとされている。
【0005】
また、管状部材の表面に超音波の送信用探触子と受信用探触子とを配置するクランプオン式という点で、上記流体識別装置に関連する技術である超音波流量計が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この超音波流量計では、管状部材の内部の流体に、その流れに沿う方向とその流れに逆行する方向とに超音波を送信用探触子により斜角入射し、それぞれの方向での超音波を受信用探触子にて斜角受信する構成とされ、それぞれの方向での超音波の両伝播時間を算出し、当該両伝播時間の差から流体の流速を求め、さらにその流速と管状部材の流路断面積とから流量を求める構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−185083号公報
【特許文献2】特開2002−250644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記流体識別装置及び超音波流量計のいずれの場合でも、超音波の送受信を管状部材の表面から行うクランプオン式を採用すると、受信される超音波には、管状部材の表面への超音波の入射時に発生する表面波や板波、さらには管の表面と内面との間で反射を繰り返す反射波である、管状部材の管本体部内(管自体)を伝搬する本体内伝搬波(周回波であるノイズ波)と、管状部材の内面から流体内へ入射され、流体内を通過(透過)して、反対側の管の内面に入射或いは当該内面で反射される透過伝搬波とが含まれる。
【0008】
上記特許文献1に開示の流体識別装置では、受信用探触子にて受信される超音波のうち本体内伝搬波に対して透過伝搬波をより明確に判別し、S/N比を向上させるために、送信用探触子及び受信用探触子とは別に、当該本体内伝搬波を打ち消すキャンセル波を送信するキャンセル用探触子を、管状部材の外周面に配置する構成とされており、装置構成の簡略化という観点から改善の余地があった。また、受信用探触子から管状部材の表面に入射される超音波は、当該表面に対して直交する方向から入射される構成であり、送信用探触子から送信された超音波のうち本体内伝搬波と透過伝搬波との伝搬距離が比較的短いため、本体内伝搬波と透過伝搬波とが受信用探触子に到達する時間差が比較的小さくなる傾向にあり、本体内伝搬波と透過伝搬波との判別という観点から改善の余地があった。
【0009】
また、上記特許文献2の超音波流量計では、送信用探触子を管状部材の表面に装着する際には、送信用探触子を管状部材の表面に装着させる送信側斜角装着部材を、送信用探触子から送信される超音波が管状部材の表面に対して斜角入射可能な状態で、管状部材の表面に対して位置決めする必要がある。同様に、受信用探触子を管状部材の表面に装着する場合も、受信用探触子を管状部材の表面に装着させる受信側斜角装着部材を、送信用探触子から送信された超音波を管状部材の表面から斜角受信可能な状態で、管状部材の表面に対して位置決めする必要がある。即ち、このように送信用探触子から送信される超音波を管状部材の表面に対して斜角入射すると、本体内伝搬波と透過伝搬波との伝搬距離が比較的長くなるため、本体内伝搬波と透過伝搬波とが受信用探触子に到達する時間差を比較的大きくできるものの、管状部材の表面において、送信用探触子、受信用探触子、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を、適切な相対位置関係を維持するように適宜位置決めする必要が生じるのである。
このような各探触子及び各斜角装着部材の位置決めは非常に労力の掛かる作業であり、また、位置決めが確実になされていないと超音波の送受信を正確に行うことができず、管状部材の内部の流体の識別を精度良く行うことができない虞がある。
【0010】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、管状部材の内部に存在する流体の種別の識別を、簡便且つ容易な構成で精度良く行うことのできる流体識別装置及び流体識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る流体識別装置は、
超音波を送信する送信用探触子と、
前記送信用探触子から送信された超音波のうち、管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、前記管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波を受信する受信用探触子と、
前記管状部材の表面に設けられ、前記送信用探触子から送信される超音波を前記管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で、前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる送信側斜角装着部材と、
前記管状部材の表面に設けられ、前記送信用探触子から送信された超音波を前記管状部材の表面から斜角受信させる状態で、前記受信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる受信側斜角装着部材と、
前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材とを、前記管状部材の軸芯に沿う方向において相互に対向する位置に位置決めした状態で一体化自在な一体化部材と、
少なくとも前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材との間における前記管状部材の表面を被覆し、前記本体内伝搬波を減衰させる減衰部材と、
前記送信用探触子で超音波が送信されてから前記受信用探触子で前記透過伝搬波が受信されるまでの時間差に基づいて、前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度を算出する音速算出部と、
前記音速算出部により算出された前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度に基づいて、前記管状部材の内部に存在する流体の種別を識別する流体種別識別部と、を備える流体識別装置であって、
前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々が、各装着部材内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部を備え、
前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々が、中実部材により構成されるとともに、前記送信用探触子及び前記受信用探触子と前記一体化部材とを位置決めする位置決め具を貫通自在な前記減衰部としての貫通孔を備えている点にある。
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る流体識別方法は、
送信用探触子から送信される超音波を管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で、前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる、中実部材により構成される送信側斜角装着部材と、前記送信用探触子から送信された超音波のうち、前記管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、前記管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波を前記管状部材の表面から受信用探触子に斜角受信させる状態で、前記受信用探触子を前記管状部材の表面に装着させる、中実部材により構成される受信側斜角装着部材とを、前記管状部材の軸芯に沿う方向で相互に対向する位置に位置決めした状態で、前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材の夫々に各装着部材内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部として設けられた貫通孔に位置決め具を貫通させて、一体化部材により一体化するステップと、
少なくとも前記送信側斜角装着部材と前記受信側斜角装着部材との間における前記管状部材の表面を、前記本体内伝搬波を減衰させる減衰部材により被覆した状態で、前記送信用探触子から超音波を送信し、前記受信用探触子により前記透過伝搬波及び前記本体内伝搬波を受信するステップと、
前記送信用探触子で超音波が送信されてから前記受信用探触子で前記透過伝搬波が受信されるまでの時間差に基づいて、前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度を算出するステップと、
算出された前記管状部材の内部での超音波の伝搬速度に基づいて前記管状部材の内部に存在する流体の種別を識別するステップと、を備える点にある。
【0013】
上記両構成によれば、管状部材の表面に設けられる送信側斜角装着部材により、送信用探触子が、当該送信用探触子から送信される超音波を管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で管状部材の表面に装着されるとともに、管状部材の表面に設けられる受信側斜角装着部材により、受信用探触子が、送信用探触子から送信された超音波を管状部材の表面から斜角受信させる状態で管状部材の表面に装着される。
このため、送信用探触子が超音波を管状部材の表面から斜角入射し、受信用探触子が、当該受信用探触子に到達する超音波を斜角受信する。この受信用探触子が受信した超音波には、主として管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波が含まれている。従って、本体内伝搬波と透過伝搬波との伝搬距離が比較的長くなるため、本体内伝搬波と透過伝搬波とが受信用探触子に到達する時間差を比較的大きくでき、本体内伝搬波の方が透過伝搬波よりも速く受信用探触子に到達する特性を利用した本体内伝搬波と透過伝搬波との判別を精度良く行うことができる。
【0014】
そして、送信用探触子で超音波が送信されてから受信用探触子で透過伝搬波が受信されるまでの時間差に基づいて、音速算出部により管状部材の内部での超音波の伝搬速度が算出される。
また、管状部材の内部での超音波の伝搬速度は媒質となる流体の種別により異なることから、流体種別識別部は、上記のように算出された伝搬速度に基づいて、管状部材の内部に存在する流体の種別を識別することができる。
【0015】
この際、少なくとも送信側斜角装着部材と受信側斜角装着部材との間における管状部材の表面には、本体内伝搬波を減衰させる減衰部材が被覆されているので、送信用探触子から送信された超音波のうち管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波(ノイズ波)を、送信用探触子から受信用探触子に伝搬する際に減衰部材により吸音し、減衰することができる。これにより、本体内伝搬波(ノイズ波)の影響を低減した状態で、透過伝搬波をより正確に判別することができ、S/N比を向上させることができる。
【0016】
特に、管状部材の表面に対して送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を一体化部材により一体化自在に構成されているので、これら部材を所期の相対位置関係に簡便且つ容易に位置決めすることができる。
具体的には、送信用探触子から送信される超音波を管状部材の表面に対して斜角入射させる状態で、送信用探触子を管状部材の表面に装着させる送信側斜角装着部材と、送信用探触子から送信された超音波のうち、管状部材を透過して管内を伝搬する透過伝搬波、及び、管状部材の本体部内を伝搬する本体内伝搬波を管状部材の表面から受信用探触子に斜角受信させる状態で、受信用探触子を管状部材の表面に装着させる受信側斜角装着部材とを、管状部材の軸芯に沿う方向で相互に対向する位置に位置決めした状態で一体化部材により一体化することができる。
これにより、管状部材の表面において、送信用探触子及び受信用探触子を、管状部材の軸芯に沿う方向で相互に対向する位置に配置された送信用探触子から超音波を斜角入射し且つ当該超音波を受信用探触子にて確実に斜角受信することができる位置に、確実に配置することができ、受信用探触子にて斜角受信された超音波のうち透過伝搬波を確実に受信することができる。即ち、管状部材の表面に対して、送信用探触子、受信用探触子、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を所期の相対位置関係に位置決めする労力を、確実に低減しながら、受信用探触子における斜角受信を確実に行い得る構成とすることができる。
よって、管状部材の内部に存在する流体の種別の識別を、簡便且つ容易な構成で精度良く行うことができる。
【0018】
ここで、上述のように、送信用探触子から送信された超音波は送信側斜角装着部材を介して管状部材に斜角入射するが、この斜角入射の際、当該超音波のうち一部は送信側斜角装着部材の内部側に反射し当該内部を乱反射する。同様に、送信用探触子から送信された超音波は受信側斜角装着部材を介して受信用探触子に斜角入射するが、この斜角入射の際、当該超音波のうち一部は受信側斜角装着部材の内部側に反射し当該内部を乱反射する。これら乱反射した超音波の一部は、反射を繰り返して受信用探触子に入射する場合があり、本体内伝搬波(ノイズ波)となる可能性がある。このような本体内伝搬波(ノイズ波)は、乱反射を繰り返すうちに時間が経過し、透過伝搬波と同時或いは近似した時間範囲内に受信用探触子に到達する可能性があり、このような場合、本体内伝搬波(ノイズ波)と透過伝搬波とを区別することが困難となり、透過伝搬波に基づいて管状部材の内部での超音波の伝搬速度を算出することが困難となる。
しかしながら、このような場合であっても、上記構成によれば、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の夫々が、各装着部材内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部を備えるので、各装着部材に入射した超音波のうち、各装着部材内で反射して伝搬する本体内伝搬波を当該減衰部にて減衰することができる。
よって、簡便且つ容易な構成であるにも拘らず、本体内伝搬波の影響を一層低減した状態で、受信用探触子にて受信される透過伝搬波を一層正確に判別することができ、S/N比を一層向上させることができる。
【0020】
上記構成によれば、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の夫々が中実部材により構成されているので、両部材の材質を適切に選択することで、送信用探触子から送信された超音波を送信側斜角装着部材から管状部材の本体内に斜角入射する入射角を調整することができる。これにより、管状部材の本体内を伝搬する本体内伝搬波、及び、管状部材の内部を透過する透過伝搬波の伝搬距離を調整することができる。
また、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の夫々が、一体化部材と位置決めするための位置決め具を貫通自在な貫通孔を備えているので、各貫通孔に位置決め具を貫通させて、一体化部材と送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材とを一体化することができる。これにより、管状部材の表面において送信用探触子、受信用探触子、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を、所期の相対位置関係に、より簡便且つより容易に位置決めすることができる。
【0021】
特に、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の夫々に形成された貫通孔が減衰部としても機能するので、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の内部を乱反射する超音波は、反射を繰り返すにつれて、これら貫通孔内を透過したり貫通孔の内面により反射等することで拡散され減衰することとなる。
これにより、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材と一体化部材とを一体化させ位置決めするために用いられる各貫通孔を、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材の内部を乱反射する超音波を減衰させるために利用することができる。
よって、簡便且つ容易な構成であるにも拘らず、本体内伝搬波の影響をより一層低減した状態で、受信用探触子にて受信される透過伝搬波をより一層正確に判別することができ、S/N比をより一層向上させることができる。
【0022】
本発明に係る流体識別装置の更なる特徴構成は、前記管状部材が鋼管により構成され、前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材がアクリル樹脂により構成されるとともに、
前記送信用探触子により送信された超音波が前記送信側斜角装着部材のアクリル樹脂に入射された後、当該アクリル樹脂から前記鋼管へ入射する際の入射角が57度となるように、前記送信側斜角装着部材が前記送信用探触子を前記管状部材の表面に装着する点にある。
【0023】
上記構成によれば、管状部材を鋼管により構成し、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材をアクリル樹脂により構成して、送信側斜角装着部材により送信用探触子を管状部材の表面に装着することで、送信用探触子により送信された超音波を送信側斜角装着部材のアクリル樹脂に入射した後、当該アクリル樹脂から鋼管へ入射する際の入射角を57度に設定する。なお、この入射角57度は、上述の構成を採用した場合において、当該超音波を管状部材の表面において全反射させずに確実に入射でき、しかも、受信用探触子にて受信されるまでの伝搬距離(伝搬時間)をできるだけ長くすることのできる角度である。ここで、当該入射角が57度を超えると送信用探触子から送信された超音波は送信側斜角装着部材を介して管状部材に入射する際に全反射して、管状部材の内部を透過する透過伝搬波として受信用探触子に到達せずに、本体内伝搬波として受信用探触子に到達する可能性が高くなる。また、入射角が57度未満となると、送信用探触子から送信された超音波は送信側斜角装着部材を介して管状部材に入射できるものの、受信用探触子に到達するまでの伝搬距離(伝搬時間)が短くなり、透過伝搬波と本体内伝搬波との判別が困難となる可能性があるため好ましくない。
【0024】
これにより、送信用探触子により送信された超音波が鋼管の軸芯方向に沿って伝搬する際の伝搬距離に関して、送信側斜角装着部材(アクリル樹脂)から鋼管に入射して鋼管から受信側斜角装着部材(アクリル樹脂)に入射するまでの伝搬距離をできるだけ大きく確保することができ、送信用探触子から送信されて受信用探触子に到達する時間が異なる透過伝搬波と本体内伝搬波との到達時間差をより大きくすることができる。
この際、透過伝搬波が、送信側斜角装着部材、管状部材の本体部、管状部材の内部に存在する流体の順に伝搬して、管状部材の内面で反射後、管状部材の内部に存在する流体、管状部材の本体部、受信側斜角装着部材、受信用探触子の順に伝搬する超音波であると、より強度の強い透過伝搬波を受信用探触子で受信することができ、好ましい構成となる。
従って、より精度良く透過伝搬波を判別でき、精度良く識別された透過伝搬波に基づいて精度良く鋼管の内部での超音波の伝搬速度を算出し、鋼管の内部に存在する流体の種別をより精度良く識別することができる。
【0025】
本発明に係る流体識別装置の更なる特徴構成は、前記一体化部材が長手部材により構成され、少なくとも前記長手部材の両端部は横断面視で概略コ字形状に形成されるとともに、当該両端部の夫々には、短手方向に貫通形成される一対の貫通穴が形成され、
前記一体化部材を、前記管状部材の軸芯方向に沿わせた状態で、前記送信側斜角装着部材の外面側と前記受信側斜角装着部材の外面側とに亘って装着し、前記長手部材の一端部に形成された一対の貫通穴と前記送信側斜角装着部材に形成された前記減衰部としての貫通孔とに亘って前記位置決め具が貫通されるとともに、前記長手部材の他端部に形成された一対の貫通穴と前記受信側斜角装着部材に形成された前記減衰部としての貫通孔とに亘って前記位置決め具が貫通されて、前記一体化部材と前記送信側斜角装着部材及び前記受信側斜角装着部材とが一体化されている点にある。
【0026】
上記構成によれば、長手部材からなる一体化部材を、管状部材の軸芯方向に沿わせた状態で、中実部材からなる送信側斜角装着部材の外面側及び受信側斜角装着部材の外面側の夫々に亘って装着するので、両装着部材を管状部材の軸芯に沿う方向において相互に対向する位置に位置決めした状態で一体化することができる。
そして、この位置決めは、長手部材において横断面視で概略コ字形状の一端部に形成された一対の貫通穴と送信側斜角装着部材における減衰部としての貫通孔とに亘って位置決め具を貫通させるとともに、長手部材において横断面視で概略コ字形状の他端部に形成された一対の貫通穴と受信側斜角装着部材における減衰部としての貫通孔とに亘って位置決め具を貫通させることで容易に行うことができる。
これにより、管状部材の表面において送信用探触子、受信用探触子、送信側斜角装着部材及び受信側斜角装着部材を、所期の相対位置関係に、より簡便且つより容易に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】流体識別装置の基本的な構成を説明する概略縦断面図
図2】流体識別装置の基本的な構成を説明する概略横断面図
図3】送信された超音波の伝搬状態の一例を示す概略縦断面図
図4】送信された超音波の伝搬状態の一例を示す概略横断面図
図5】貫通孔がある場合の超音波受信信号の一例を示す概略波形図
図6】送信された超音波の伝搬状態の一例を示す概略縦断面図
図7】貫通孔が無い場合の超音波受信信号の一例を示す概略波形図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1図7に基づいて、本発明の実施形態に係る流体識別装置及び流体識別方法について説明する。
本実施形態に係る流体識別装置50は、鋼管からなるガス管等の管状部材1の内部に存在するガス(流体の一例)の種別を、非破壊的に(管状部材1を破壊することなく)識別するためのガス種識別装置である。
【0029】
図1及び図2に示すように、流体識別装置50は、超音波を送信する送信用探触子2と、送信用探触子2から送信された超音波を受信する受信用探触子3と、管状部材1の表面1aに設けられ、送信用探触子2から送信される超音波を管状部材1の表面1aに対して斜角入射させる状態で、送信用探触子2を管状部材1の表面1aに装着させる送信側斜角装着部材4と、管状部材1の表面1aに設けられ、送信用探触子2から送信された超音波を管状部材1の表面1aから斜角受信させる状態で、受信用探触子3を管状部材1の表面1aに装着させる受信側斜角装着部材5とを備えるとともに、送信側斜角装着部材4と受信側斜角装着部材5とを、管状部材1の軸芯Xに沿う方向において相互に対向する位置に位置決めした状態で一体化自在な一体化部材6を備えている。
【0030】
また、流体識別装置50は、管状部材1の内部での超音波の音速(伝搬速度)Vを算出する音速算出部23と、音速算出部23により算出された管状部材1の内部での超音波の音速(伝搬速度)Vに基づいて、管状部材1の内部に存在するガスの種別を識別する流体種別識別部24とを備える。さらに、流体識別装置50は、少なくとも送信側斜角装着部材4と受信側斜角装着部材5との間における管状部材1の表面1aを被覆する減衰部材7を備えている。
これにより、管状部材1の内部に存在するガスの種別の識別を、簡便且つ容易な構成で精度良く行うことができる。以下、本実施形態に係る流体識別装置50について、詳細に説明する。
【0031】
図1及び図2に示すように、流体識別装置50は、送信用探触子2、受信用探触子3、送信側斜角装着部材4、受信側斜角装着部材5、一体化部材6、減衰部材7及び制御装置20を主要な構成として備え、送信用探触子2及び受信用探触子3が管状部材1の表面1aに装着されるクランプオン式の超音波流体識別装置である。なお、送信用探触子2及び受信用探触子3は、制御装置20との間で情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。
【0032】
送信用探触子(送信用超音波プローブ)2は、電気と音響とを相互に変換する圧電素子(図示せず)を含むトランスデューサであり、超音波を送信する超音波送信機器である。送信用探触子2は、圧電素子の両端に電極が形成された振動子(図示せず)を備えており、制御装置20からの指令によりその振動子の電極間に電圧が印加されると、圧電素子が伸縮する。この伸縮により振動子から超音波が発生し、発生した超音波は送信側斜角入射部材4を介して管状部材1に向けて送信される。なお「超音波」は、気体、液体、固体等の音の媒質が発音体(上記の振動子)の振動を受けて生ずる弾性波のうち、人間の可聴周波数よりも高い周波数(例えば、20kHz以上)の弾性波である。
【0033】
図3及び図4(特に図4)に示すように、送信用探触子2から送信された超音波は、透過伝搬波Wt(例えば、図4で実線で示す)と本体内伝搬波Wb(例えば、図4で破線で示す)とに分かれてそれぞれの媒質中を伝搬する。
ここで、透過伝搬波Wtは、送信用探触子2から送信される超音波のうち、管状部材1を透過して管状部材1の内部に存在するガスを媒質として管内(管状部材1の内面で区画される空間内)を伝搬する超音波である。この透過伝搬波Wtについての詳細は、後述する。
一方、本体内伝搬波Wbは、送信用探触子2から送信される超音波のうち、管状部材1の本体部を構成する材料(例えば、鋼(炭素鋼)、ステンレス等)を媒質として管状部材1の本体部内を伝搬する超音波である。送信用探触子2から超音波が送信されたとき、その一部は管状部材1を透過することなく本体内伝搬波Wbとして管状部材1の本体部内を伝搬する。この本体内伝搬波Wbは、管状部材1の本体部内を、軸芯X方向や周方向、或いはこれら両方向成分を備えた方向に伝搬する。
【0034】
受信用探触子(受信用超音波プローブ)3は、送信用探触子2と同様の構成を有するトランスデューサであり、超音波を受信する超音波受信機器である。この受信用探触子3は、送信用探触子2から送信される超音波のうち、上述した透過伝搬波Wt及び本体内伝搬波Wbの双方を受信する。受信用探触子3が超音波を受信すると、受信用探触子3が有する圧電素子がその超音波の作用により物理的に伸縮する。この伸縮により振動子の電極間に電位差が発生する。発生した電位差に基づく電気信号は、受信信号として制御装置20に送られる。
【0035】
送信用探触子2及び受信用探触子3は、管状部材1の表面1aにおいて管状部材1の軸芯X方向で相互に対向する位置に配置され、送信用探触子2から送信される超音波を受信用探触子3にて受信するように構成される。即ち、送信用探触子2及び受信用探触子3は、管状部材1の表面1aにおいて周方向で同一位置(本実施形態では、管状部材1の上部)で、管状部材1の軸芯X方向に相互に離間した位置に配置される。
【0036】
送信側斜角装着部材4は、概略矩形状で中実部材のアクリル樹脂からなり、内面4a(管状部材1の径方向内方側)は、管状部材1の表面1aに直接的に面接触できるように曲面形状に形成され、外面4b(管状部材1の径方向外方側)及び両側面4c、4c(管状部材1の周方向における両側)の夫々は、一体化部材6の概略コ字形状の凹部6aに嵌合できるように平面形状に形成されている。また、送信側斜角装着部材4の一端面(管状部材1の軸芯X方向において受信用探触子3側とは反対側の面)は、内面4aから外面4b(管状部材1の径方向外方側)に向かうにつれて受信用探触子3側に近づく方向に傾斜する傾斜面4dとされている。当該傾斜面4dの傾斜角は、内面4aから外面4bに向かう方向(管状部材1の径方向)に対して33度傾斜する角度に設定されている。
これにより、送信用探触子2を当該傾斜面4dに装着固定した状態で、超音波を当該傾斜面4dに対して直交する方向に送信可能に構成されている。
【0037】
また、送信側斜角装着部材4には、両側面4c、4c(管状部材1の周方向における両側)に亘って貫通する貫通孔4Aが形成されている。この貫通孔4Aは、後述する位置決め具10のボルト10Aの軸部を挿通自在な内径を備えている。更に、貫通孔4Aは、内面4a側よりも外面4b側に偏倚した位置に形成される。そして、傾斜面4dに装着固定された送信用探触子2により送信され、初めて送信側斜角装着部材4に斜角入射して送信側斜角装着部材4内を伝搬する超音波の伝搬経路上には、当該貫通孔4Aが位置しないように形成されている。つまり、貫通孔4Aが、送信側斜角装着部材4内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部として機能する。
【0038】
受信側斜角装着部材5は、送信側斜角装着部材4と略同様の構成を有する概略矩形状で中実部材のアクリル樹脂であり、内面5a(管状部材1の径方向内方側)は、管状部材1の表面1aに直接的に面接触できるように曲面形状に形成され、外面5b(管状部材1の径方向外方側)及び両側面5c、5c(管状部材1の周方向における両側)の夫々は、一体化部材6の概略コ字形状の凹部6aに嵌合できるように平面形状に形成されている。また、受信側斜角装着部材5の一端面(管状部材1の軸芯X方向において送信用探触子2側とは反対側の面)は、内面5aから外面5b(管状部材1の径方向外方側)に向かうにつれて送信用探触子2側に近づく方向に傾斜する傾斜面5dとされている。当該傾斜面5dの傾斜角は、内面5aから外面5bに向かう方向(管状部材1の径方向)に対して33度傾斜する角度に設定されている。
これにより、受信用探触子3を当該傾斜面5dに装着固定した状態で、超音波を当該傾斜面5dに対して直交する方向から受信可能に構成されている。
【0039】
また、受信用斜角装着部材5には、両側面5c、5c(管状部材1の周方向における両側)に亘って貫通する貫通孔5Aが形成されている。この貫通孔5Aは、後述する位置決め具10のボルト10Aを挿通自在な内径を備えている。更に、貫通孔5Aは、内面5a側よりも外面5b側に偏倚した位置に形成される。そして、送信用探触子2から送信された超音波のうち透過伝搬波Wtが、管状部材1から受信側斜角装着部材5に斜角入射され、受信側斜角装着部材5から受信用探触子3に斜角受信される際に伝搬する当該受信側斜角装着部材5内の伝搬経路上には、当該貫通孔5Aが位置しないように形成されている。つまり、貫通孔5Aが、受信側斜角装着部材5内を反射伝搬する反射波を減衰する減衰部として機能する。
【0040】
図1及び図2に示すように、一体化部材6は、管状部材1の軸芯X方向に延びる長手部材6Aにより構成されている。長手部材6Aのうち少なくとも一端部及び他端部(両端部)の夫々は、横断面視で概略コ字形状に形成され、内面側には概略コ字形状の凹部6aが形成されている。各凹部6aは、送信側斜角装着部材4の外面4a及び受信側斜角装着部材5の外面5aの夫々に外嵌自在な形状に形成されている。また、長手部材6Aの一端部と他端部の夫々には、短手方向(管状部材1の略周方向)に沿って貫通する一対の貫通穴6b、6bが形成されている。一対の貫通穴6b、6bは、後述する位置決め具10のボルト10Aを挿通自在な内径に形成されている。なお、図3及び図4では、超音波の伝搬状態を示すため、一体化部材6及び位置決め具10の記載は省略している。
【0041】
管状部材1の軸芯X方向における、長手部材6Aの長さ、及び、一端部及び他端部に夫々形成された貫通穴6b同士の間隔は、管状部材1の材質、肉厚、内径、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の材質、送信用探触子2から斜角送信される超音波の管状部材1への入射角、受信用探触子に斜角受信される超音波の管状部材1から受信側斜角装着部材5への入射角等の条件に基づいて、適切な距離に設定される。
【0042】
本実施形態では、管状部材1を鋼管(25Aの鋼管で、外径が34mm、内径φが27.6mm、肉厚が3.2mm)とし、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の材質を中実のアクリル樹脂とし、送信用探触子2から送信側斜角装着部材4を介して管状部材1へ入射する入射角を(管状部材1の径方向に対して)57度に設定し、受信用探触子3に斜角受信される超音波(透過伝搬波Wt)の管状部材1から受信側斜角装着部材5への入射角を(管状部材1の径方向に対して)57度に設定した(図3及び図4参照)。そして、送信用探触子2から送信側斜角装着部材4を介して管状部材1へ入射する位置と、受信用探触子3に斜角受信される超音波(透過伝搬波Wt)の管状部材1から受信側斜角装着部材5へ入射する位置との、管状部材1の軸芯X方向における距離を、110mmに設定した。従って、両入射位置間の距離が110mmとなるように、管状部材1の軸芯X方向における、長手部材6Aの長さを102mmとするとともに、一端部及び他端部に夫々形成された貫通穴6b同士の間隔を94mmに形成した。
【0043】
ここで、送信用探触子2から送信された超音波が送信側斜角装着部材4を介して管状部材1に入射する際の入射角(57度)は、上述の構成を採用した場合において、当該超音波を管状部材1の表面1aにおいて全反射させずに確実に入射でき、しかも、受信用探触子3にて受信されるまでの伝搬距離(伝搬時間)をできるだけ長くすることのできる角度である。ここで、当該入射角が57度を超えると送信用探触子2から送信された超音波は送信側斜角装着部材4を介して管状部材1に入射する際に全反射して、管状部材1の内部を透過する透過伝搬波Wtとして受信用探触子3に到達せずに、本体内伝搬波Wbとして受信用探触子3に到達する可能性が高くなる。また、入射角が57度未満となると、送信用探触子2から送信された超音波は送信側斜角装着部材4を介して管状部材1に入射できるものの、受信用探触子3に到達するまでの伝搬距離(伝搬時間)が短くなり、透過伝搬波Wtと本体内伝搬波Wbとの判別が困難となる可能性があるため好ましくない。
【0044】
減衰部材7は、送信用探触子2から送信された超音波のうち少なくとも本体内伝搬波Wbを減衰させる油粘土(粘性材料の一例)により形成され、厚さ数mmで数十cm幅程度のシート状に加工され、管状部材1の表面1aに隙間なく巻き付けられている。なお、減衰部材7には、送信側斜角装着部材4の内面及び受信側斜角装着部材5の内面を管状部材1の表面1aに直接接触できるように、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の装着予定部位に開口部8が設けられている。
この減衰部材7の材料は、管状部材1から減衰部材7に本体内透過波Wbを効率よく入射させるために、管状部材1の音響インピーダンスにできるだけ近いものが選ばれる。また、管状部材1の表面1aの曲率に一致する屈曲性を持つ程度の粘性を有することが好ましい。このような減衰部材7としては、油粘土の他、パテ、ゴムシート、プラスティックシート(PPシート)、不織布等を例示することができる。
【0045】
また、減衰部材7は、管状部材1の表面1aに巻き付けられた状態で、締付ユニット(図示せず)により管状部材1の表面1aに対して全面的に押し付けられるように構成されている。具体的には、締付ユニットは、減衰部材7の外面を囲繞する帯状体と、当該帯状体の自由端同士を引っ張り合わせて、帯状体に張力を与える締付ボルトとを備えている。これにより、締付ボルトを締め込むことで帯状体の張力を増大させ、その径方向内方側への力によって減衰部材7を締め付けるように構成されている。なお、帯状体にも、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5と干渉しないように開口部が形成されている。
【0046】
図1に示すように、流体識別装置50に備えられる制御装置20は、発信制御部21、受信信号処理部22、音速算出部23及び流体種別識別部24を備えている。これらは、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。なお、図1には、代表的な情報の伝達方向を矢印「→」で示している。
また、上述した送信用探触子2、受信用探触子3、送信側斜角装着部材4、受信側斜角装着部材5、一体化部材6、減衰部材7、及び、以下に説明する制御装置20の各機能部とが有機的に連携して協働することにより、本発明に係る流体識別方法が実行される。
【0047】
発信制御部21は、送信用探触子2からの超音波の送信(超音波発信)を制御する機能部である。発信制御部21は、所定の振幅、及び、主に管状部材1の厚さ(管厚)に応じて決まる管状部材1の共振周波数のバースト波状の電気信号(電圧信号)を生成する。なお、管状部材1の共振周波数は、管状部材1の管厚に基づいて算出することができる。生成した電気信号は、送信用探触子2に送られる。送信用探触子2は、その受け取ったバースト波状の電気信号を超音波に変換して、管状部材1に向けて超音波パルスを送信する。
【0048】
受信信号処理部22は、受信用探触子3で受信される超音波に基づく電気信号(受信信号)を受け取り、その受信信号を処理する機能部である。受信信号処理部22は、フィルタ等を介して特定の周波数成分の超音波に基づく電気信号を除去する。また、受信信号処理部22は、アナログデジタル変換回路(A/D変換回路)等を介してアナログ受信信号をデジタル受信信号に変換する。受信信号処理部22は、所定周波数域のデジタル受信信号を音速算出部23及び表示装置30(モニタ等)に出力する。表示装置30には、受け取った受信信号が受信波形として可視化されて表示される。
【0049】
音速算出部23は、管状部材1の内部での超音波の音速(以下、単に「管内音速」という場合がある)Vを算出する機能部である。音速算出部23は、受信信号処理部22からの受信信号を受け取り、この受信信号を解析することによって管内音速Vを算出する。上記のとおり、送信用探触子2から送信される超音波には、透過伝搬波Wtと本体内伝搬波Wbとが含まれる。ここで、管状部材1の内部に存在するガスと管状部材1の本体部を構成する材料との間での音響インピーダンスの差により、透過伝搬波Wtは、本体内伝搬波Wbよりもかなり遅れて受信用探触子3に到達する。音速算出部23は、送信用探触子2で超音波が送信されてから、それらのうち透過伝搬波Wtが受信用探触子3で受信されるまでの時間差ΔTに基づいて、管内音速Vを算出する。
【0050】
より具体的には、制御装置20内ではクロックパルス発生回路等によりクロックパルスが生成されており、音速算出部23は、送信用探触子2で超音波が送信されてから受信用探触子3で透過伝搬波Wtが受信されたことが検出されるまでのクロックパルス数をカウントすることにより、それらの間の時間差ΔTを計測する。音速算出部23は、計測された時間差ΔTの情報と、既知の管状部材1の内径φの情報とに基づいて、管内音速Vを算出する。すなわち、音速算出部23は、管状部材1の内径φを時間差ΔTで除算することにより管内音速Vを算出する(V=φ/ΔT)。音速算出部23は、算出された管内音速Vの情報を流体種別識別部24に出力する。
【0051】
流体種別識別部24は、算出された管内音速Vに基づいて管状部材1の内部に存在するガスの種別を識別する機能部である。超音波の音速は、媒質となる流体の種別に応じて異なる。本実施形態では、流体の種別(例えば、水、油、空気、メタンガス等)に応じた超音波の音速(理論上の音速)の情報が、音速データ41としてRAMやROM等の記録装置40に予め記録されている。なお、超音波の実際の音速は媒質の状態によっても変化し得るため、音速データ41として、媒質の温度、密度、及び圧力の1つ以上に応じて更に細分化された音速の情報が記録されている構成とすると好適である。流体種別識別部24は、算出された管内音速Vと音速データ41とを比較して、算出された管内音速Vに一致する(完全に一致するものがない場合には最も近い)音速に対応付けられた流体の情報を音速データ41から読み出す。
【0052】
以上のようにして、流体識別装置50は、管状部材1の内部に存在するガスの種別を非破壊的に識別することができる。
【0053】
次に、上記構成の流体識別装置50を用いて管状部材1の内部の超音波の管内音速V及び当該内部に存在するガスのガス種を識別する流体識別方法について説明する。
【0054】
まず、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の夫々を、減衰部材7が被覆された管状部材1の表面1aにおいて当該減衰部材7が被覆されていない各開口部8に装着する。この状態では、送信側斜角装着部材4の内面4a及び受信側斜角装着部材5の内面5aの夫々が、管状部材1の表面に直接接触している。また、送信側斜角装着部材4と受信側斜角装着部材5は、管状部材1の表面1aにおいて周方向で同一位置(管状部材1の上部)で、管状部材1の軸芯X方向に相互に離間した位置に位置している。
なお、送信用探触子2は予め送信側斜角装着部材4の傾斜面4dに装着固定され、受信用探触子3も予め受信側斜角装着部材5の傾斜面5dに装着固定されている。
【0055】
次に、図1及び図2に示すように、管状部材1の軸芯X方向に沿って、送信側斜角装着部材4と受信側斜角装着部材5とに亘って一体化部材6の長手部材6Aを装着する。
具体的には、長手部材6Aの一端部に形成された凹部6aを送信側斜角装着部材4の外面4b及び両側面4c、4cに外嵌させるとともに、他端部に形成された凹部6aを受信側斜角装着部材5の外面5b及び両側面5c、5cに外嵌させる。
そして、長手部材6Aの一端部に形成された一対の貫通穴6bと送信側斜角装着部材4に形成された貫通孔4Aとを位置合わせして、一対の貫通穴6b及び貫通孔4Aに亘ってボルト10Aを挿通し、同様に、長手部材6Aの他端部に形成された一対の貫通穴6bと受信側斜角装着部材5に形成された貫通孔5Aとを位置合わせして、一対の貫通穴6b及び貫通孔5Aに亘ってボルト10Aを挿通して、両ボルト10Aにナット10Bを螺合させて締付ける。なお、このように締め付けても、送信用探触子2や受信用探触子3の振動が一体化部材6や位置決め具10に伝搬しないように(或いは、振動の強度を低減できるように)構成されている。
これにより、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5を一体化部材6により一体化することができ、これら部材を所期の相対位置関係に簡便且つ容易に位置決めすることができる。
【0056】
具体的には、送信用探触子2から送信される超音波を送信側斜角装着部材4を介して管状部材の表面に対して57度の入射角で斜角入射させる状態で、送信用探触子2を管状部材1の表面1aに位置決めすることができる。また、送信用探触子2から送信された超音波のうち、管状部材1を透過して管内を伝搬する透過伝搬波Wtを管状部材1の表面1aから受信側斜角装着部材5に57度の入射角で斜角受信させる状態で、受信用探触子3を管状部材1の表面1aに位置決めすることができる。さらに、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の相対位置関係を管状部材1の軸芯X方向及び周方向において所期の位置関係に確実に位置決めすることができる。
なお、一体化部材6を、予め送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の一方又は両方と一体化した状態で、管状部材1の表面1aに取付けるように構成してもよい。
【0057】
その後、送信用探触子2から超音波を送信し、受信用探触子3に到達した超音波を受信する。この受信用探触子3にて受信された超音波には、例えば、主として管状部材1を透過して管内を伝搬する透過伝搬波Wt、及び、管状部材1の本体部内を伝搬する本体内伝搬波Wbが含まれている。
【0058】
透過伝搬波Wtとしては、図3及び図4に示すように、送信用探触子2で送信されて、送信側斜角装着部材4、管状部材1の外面1a、管状部材1の本体部、管状部材1の内面(上面)1b、管状部材1の内部(ガス)の順に伝搬して、管状部材1の内面(下面)1bで反射後、管状部材1の内部(ガス)、管状部材1の内面(上面)1b、管状部材1の本体部、管状部材1の外面1a、受信側斜角装着部材5、受信用探触子3の順に伝搬する超音波であると、管状部材1の内部を1往復して到達した、より強度の強い透過伝搬波Wtを受信用探触子3で受信することができ、透過伝搬波Wtをより正確に判別することができ、S/N比を向上させることができる。
【0059】
また、送信側斜角装着部材4と受信側斜角装着部材5との間における管状部材1の表面1aには、本体内伝搬波Wbを減衰させる減衰部材7が被覆されているので、送信用探触子2から送信された超音波のうち管状部材1の本体部内を伝搬する本体内伝搬波Wb(ノイズ波)を、送信用探触子2から受信用探触子3に伝搬する際に減衰部材7により吸音し、減衰することができる。これにより、本体内伝搬波(ノイズ波)の影響を低減した状態で、透過伝搬波をより正確に判別することができ、S/N比を向上させることができる。
【0060】
ここで、上述のように、送信用探触子2から送信された超音波は中実部材である送信側斜角装着部材4を介して管状部材1に斜角入射するが、この斜角入射の際、当該超音波のうち一部は送信側斜角装着部材4の内部側に反射し当該内部を乱反射する(図3の破線参照)。同様に、送信用探触子2から送信された超音波は中実部材である受信側斜角装着部材5を介して受信用探触子3に斜角入射するが、この斜角入射の際、当該超音波のうち一部は受信側斜角装着部材5の内部側に反射し当該内部を乱反射する。これら乱反射した超音波の一部は、反射を繰り返して受信用探触子3に入射する場合があり、本体内伝搬波Wb(ノイズ波)となる可能性がある。このような本体内伝搬波Wb(ノイズ波)は、乱反射を繰り返すうちに時間が経過し、透過伝搬波Wtと同時或いは近似した時間範囲内に受信用探触子3に到達する可能性があり、このような場合、本体内伝搬波Wb(ノイズ波)と透過伝搬波Wtとを区別することが困難となり、透過伝搬波Wtに基づいて管状部材1の内部での管内音速Vを算出することが困難となる。
しかしながら、このような場合であっても、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の夫々には、一体化部材6と一体化して位置決めするための位置決め具10を貫通自在な貫通孔4A、5Aが形成されているので、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の内部を乱反射する超音波は、反射を繰り返すにつれて、これら貫通孔4A、5A内を透過したり貫通孔4A、5Aの内面により反射等することで拡散され減衰することとなる。
これにより、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5と一体化部材6とを一体化させ位置決めするために用いられる各貫通孔4A、5Aを、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の内部を乱反射する超音波を減衰させるために利用することができる。
よって、簡便且つ容易な構成であるにも拘らず、本体内伝搬波Wbの影響をより一層低減した状態で、受信用探触子3にて受信される透過伝搬波Wtをより一層正確に判別することができ、S/N比をより一層向上させることができる。
【0061】
このように、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の夫々に貫通孔4A、5Aを設けた場合において、受信用探触子3で受信された超音波受信信号の波形を、図5に示す。
一方で、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5のいずれにも、貫通孔4A、5Aを設けない場合(図6の構成を参照)において、受信用探触子3で受信された超音波受信信号の波形を、図7に示す。
これら超音波受信信号の波形には、透過伝搬波Wt及び本体内伝搬波Wbの各受信信号が混在している状態である。
【0062】
図5及び図7の超音波受信信号を比較すると、送信用探触子2から超音波が送信されてから受信用探触子3に透過伝搬波Wtが到達する前(200μsec程度よりも前)における本体内伝搬波受信時間域では、図5の超音波受信信号の強度は図7の超音波受信信号の強度よりも低下しており、透過伝搬波Wtと考えられる時間帯(200μsec程度以降)では、図5の超音波受信信号の強度は図7の超音波受信信号強度と同程度となっている。
【0063】
従って、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5の夫々に貫通孔4A、5Aを設けることで、本体内伝搬波受信時間域における本体内伝搬波Wbの信号強度を低下させながら、透過伝搬波Wtの信号強度は低下させないようにできることがわかる。即ち、貫通孔4A、5Aの存在により受信用探触子3に到達する本体内伝搬波Wbの信号強度を低下させることができ、しかも、貫通孔4A、5Aが存在しても透過伝搬波Wtの信号強度は低下させないようにすること可能となる。
これにより、受信用探触子3が受信した超音波受信信号から透過伝搬波Wtの判別を精度良く容易に行うことができるとともに、透過伝搬波WtのS/N比を向上させることが確認された。
よって、送信用探触子2から超音波が送信されてから受信用探触子3に透過伝搬波Wtが到達するまでの時間差ΔTをより精度良く得ることができ、管内音速V及びガスの種別の識別を精度良く行うことができる。
【0064】
そして、音速算出部23が、送信用探触子2で超音波が送信されてから受信用探触子3で透過伝搬波Wtが受信されるまでの時間差ΔTに基づいて、管状部材1の内部での管内音速Vを算出する。
具体的には、音速算出部23は、計測された時間差ΔTの情報と、既知の管状部材1の内径φの情報とに基づいて、管内音速Vを算出する。すなわち、音速算出部23は、管状部材1の内径φを時間差ΔTで除算することにより管内音速Vを算出する(V=φ/ΔT)。
【0065】
次に、流体種別識別部24が、音速算出部23にて算出された管状部材1の内部での管内音速Vに基づいて管状部材1の内部に存在するガスの種別を識別する。
具体的には、流体種別識別部24は、算出された管内音速Vと音速データ41とを比較して、算出された管内音速Vに一致する(完全に一致するものがない場合には最も近い)音速に対応付けられた流体の情報を音速データ41から読み出す。
【0066】
以上のようにして、流体識別方法は、管状部材1の内部に存在するガスの種別を非破壊的に識別することができる。
【0067】
[別実施形態]
(1)上記実施形態では、管状部材1を鋼管とし、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5を中実部材からなるアクリル樹脂とし、送信用探触子2により送信された超音波が送信側斜角装着部材4から管状部材1に入射する入射角度を57度に設定した。
しかしながら、当該入射角度は、管状部材1に確実に入射できる角度であれば、57度未満の角度とすることもできる。
また、これら部材の構成は、上記構成に限定されるものではなく、管状部材1をステンレス管等のその他の金属や樹脂等とすることもでき、また、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5を中空部材(中空部分に超音波を伝搬可能な気体や液体が存在する部材)としたり、アクリル樹脂以外の樹脂や金属等その他の超音波を伝搬可能な部材とすることもできる。この場合、送信側斜角装着部材4から管状部材1に入射する入射角度は、管状部材1に確実に入射できる適宜角度に設定することができる。
【0068】
(2)上記実施形態では、送信側斜角装着部材4に減衰部としての貫通孔4Aを設け、受信側斜角装着部材5に減衰部としての貫通孔5Aを設ける構成としたが、図6に示すように、これら貫通孔4A及び貫通孔5Aの一方又は両方を省略する構成とすることもできる。
例えば、図6に示すように、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5から貫通孔4A、5Aを省略した構成とすることもできる。この場合、上述の図7に関する説明のとおり、貫通孔4A、5Aが存在することによる本体内伝搬波Wbの信号強度の低減は期待できない。しかしながら、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5を、一体化部材6により一体化することにより、管状部材1の表面1aに対して、送信用探触子2、受信用探触子3、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5を所期の相対位置関係に位置決めする労力を、確実に低減しながら、受信用探触子3における斜角受信を確実に行い得る構成とすることができる点で利点がある。
また、これら減衰部としての貫通孔4A及び貫通孔5Aを設ける場合であっても、貫通孔4A及び貫通孔5Aの設置位置及び設置数は、送信用探触子2から送信された超音波及び当該超音波のうちの受信用探触子3に到達する透過伝搬波Wtの拡散を発生させない(減衰させない)限りにおいて、適宜変更することができる。
【0069】
(3)上記実施形態では、減衰部材7を管状部材1の表面1aの前面に被覆する構成としたが、管状部材1の軸芯X方向において、少なくとも送信側斜角装着部材3と受信側斜角装着部材4との間の表面1aを被覆する構成であればよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、一体化部材6を長手部材6Aにより構成し、長手部材6Aの一端部に形成された一対の貫通穴6b及び送信側斜角装着部材4の貫通孔4Aにボルト10Aを挿通し、他端部に形成された一対の貫通穴6b及び受信側斜角装着部材5の貫通孔5Aにボルト10Aを挿通することで、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5を一体化させたが、一体化部材6としてはその他の構成を採用することができる。例えば、一体化部材6において一対の貫通穴6bを省略し、別途、送信側斜角装着部材4及び受信側斜角装着部材5を挟持する挟持機構を採用して一体化する構成とすることもできる。
【0071】
(5)上記実施形態では、音速算出部23が、管内音速Vの算出に当たり、送信用探触子2から送信された超音波が管状部材1の内部に存在する流体を斜めに1往復横断してから受信用探触子3にて受信される透過伝搬波Wtを用いたが、これに限らず、当該伝搬波Wtが、管状部材1の内部に存在する流体を斜めに2往復以上横断してから受信用探触子3にて受信される透過伝搬波Wtを用いて管内音速Vを算出することもできる。
【0072】
(6)上記実施形態では、流体としてガス(気体)を例に説明したが、水等の液体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、管状部材の内部に存在する流体の種別の識別を、簡便且つ容易な構成で精度良く行うことのできる流体識別装置及び流体識別方法に適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 管状部材
1a 表面
2 送信用探触子
3 受信用探触子
4 送信側斜角装着部材
4A 貫通孔(減衰部)
5 受信側斜角装着部材
5A 貫通孔(減衰部)
6 一体化部材
6b 貫通穴
6A 長手部材(一体化部材)
7 減衰部材
10 位置決め具
20 制御装置
50 流体識別装置
Wt 透過伝搬波
Wb 本体内伝搬波
X 軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7