(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理液供給部は、モリブデン塩としてモリブデン酸塩の水溶液を供給するモリブデン酸塩水溶液タンクと、ジルコニウム塩として硝酸ジルコニウム水溶液を供給する硝酸ジルコニウム塩水溶液タンクとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の廃液処理システム。
前記処理液供給部は、モリブデン塩、ジルコニウム塩及び酸性溶液として、放射性物質の再処理施設から排出される高レベル廃液を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の廃液処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
まず、
図1及び
図2を用いて、本実施例の廃液処理システムで処理する対象の一つとなる廃液が発生する使用済核燃料の再処理施設及び再処理方法について説明する。なお、本実施例の廃液処理システムは、ジブチルリン酸が混入しているアルカリ廃液を好適に処理できるものであり、廃液を生成する施設、装置は、再処理施設に限定されない。つまり、廃液処理システムは、再処理施設で生じる廃液以外の廃液も処理することができる。
【0023】
本実施例に係る使用済核燃料の再処理施設は、複数種の異なる使用済核燃料に含まれるウラン(U)およびプルトニウム(Pu)等の核燃料物質を抽出して再処理することにより、新たな核燃料としてのU製品やU/Pu製品を生成するものである。
【0024】
図1は、実施例1に係る使用済核燃料の再処理施設の概略構成図である。再処理施設1は、複数種の異なる使用済核燃料を再処理可能な単一の施設となっている。複数種の異なる使用済核燃料としては、ウラン燃料を沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)で使用したBWR使用済核燃料、ウラン燃料を加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)で使用したPWR使用済核燃料、MOX燃料を沸騰水型原子炉で使用したB−MOX使用済核燃料、MOX燃料を加圧水型原子炉で使用したP−MOX使用済核燃料、ウラン燃料またはMOX燃料を高速増殖炉で使用したFBR使用済核燃料等がある。
【0025】
複数種の使用済核燃料は、使用済核燃料に含まれる核燃料物質の核分裂性の放射性同位体のフィッサイル率や、核燃料物質の富化度が異なっている。ここで、核燃料物質としては、ウランおよびプルトニウム等であり、核分裂性の放射性同位体としては、ウラン233、ウラン235、プルトニウム239、プルトニウム241およびアメリシウム241等である。以下の説明では、核燃料物質として、プルトニウムに適用した場合について説明する。
【0026】
使用済核燃料は、使用済核燃料中のプルトニウムのフィッサイル率(Puフィッサイル率)や、核燃料中のプルトニウムの富化度(Pu富化度)が異なっている。Puフィッサイル率とは、プルトニウムの全量に対する核分裂性の放射性同位体の割合を表す指標である。プルトニウムの核分裂性の放射性同位体としては、プルトニウム239(
239Pu)およびプルトニウム241(
241Pu)である。このため、Puフィッサイル率は、「(
239P+
241Pu)/Pu」で求められる。また、Pu富化度とは、ウランおよびプルトニウムの全量に対するプルトニウムの含有量の割合を表す指標である。このため、Pu富化度は、「Pu/(U+Pu)」で求められる。なお、Puフィッサイル率とPu富化度とを掛け合わせた指標がPuフィッサイル富化度であり、Puフィッサイル富化度は、「(
239P+
241Pu)/(U+Pu)」で求められる。
【0027】
ここで、再処理によって生成される新たな核燃料を用いて製造される装荷用燃料(例えば、MOX燃料)は、原子力発電施設側からの要求によって、MOX燃料のPuフィッサイル率を、目標Puフィッサイル率とする必要があり、また、MOX燃料のPu富化度を、目標Pu富化度とする必要がある。換言すれば、MOX燃料のPuフィッサイル富化度を、目標Puフィッサイル富化度とする必要がある。
【0028】
一方で、複数種の使用済核燃料は、Puフィッサイル率が異なっており、特に、B−MOX使用済核燃料は、Puフィッサイル率の最も低い使用済核燃料となっている。このため、例えば、B−MOX使用済核燃料を再処理して得られる新たな核燃料を用いて製造されるMOX燃料は、目標Puフィッサイル率とすると、Pu富化度が上限富化度を超え、再処理することが困難である。このため、実施例1の再処理施設1は、以下のような構成となっている。以下、
図1を参照して、上記した複数種の使用済核燃料を再処理する再処理施設1について説明する。
【0029】
図1に示すように、再処理施設1は、機械的処理装置(例えば、せん断装置)5と、溶解装置6と、清澄装置7と、計量装置8と、分離装置9と、精製装置10と、富化度調整装置11と、脱硝装置12と、燃料製造装置13と、を備えている。
【0030】
機械的処理装置5に供給される使用済核燃料は、その成分が予め推定されている。推定される使用済核燃料の成分は、使用前の成分および使用中における燃焼度等のデータに基づいて算出可能となっている。
【0031】
機械的処理装置5は、使用済みの燃料集合体に内包する使用済核燃料を、機械的処理によって暴露させている。このとき、機械的処理装置5により使用済核燃料を機械的処理すると廃ガスが発生するため、機械的処理装置5は、発生した廃ガスを図示しない廃ガス処理装置へ向けて送り出している。そして、機械的処理装置5は、機械的処理後の使用済核燃料を溶解装置6へ向けて供給する。
【0032】
溶解装置6は、硝酸を貯留した溶解槽に、機械的処理後の使用済核燃料を投入することで、使用済核燃料を溶解させる。硝酸に溶解した使用済核燃料は燃料溶解液となり、溶解装置6は、燃料溶解液を清澄装置7へ供給する。
【0033】
清澄装置7は、例えば、遠心分離機で構成されている。清澄装置7は、硝酸に溶解しない燃料溶解液に含まれる不溶解残渣を取り除き、不溶解残渣を除去した燃料溶解液を計量装置8へ供給する。取り除かれた不溶解残渣は、図示しない廃棄物貯蔵槽へ供給される。
【0034】
計量装置8は、燃料溶解液中の成分を計量するために燃料溶解液を受け入れている。燃料溶解液中の成分としては、例えば、硝酸濃度、ウランの量、ウラン中における同位体の割合、プルトニウムの量、プルトニウム中における同位体の割合等がある。そして、燃料溶解液中の成分から、実測値となるU富化度、Uフィッサイル率、Uフィッサイル富化度、Pu富化度、Puフィッサイル率、Puフィッサイル富化度等の指標を導出する。計量装置8は、計量後の燃料溶解液を分離装置9へ供給する。
【0035】
分離装置9は、燃料溶解液から、溶液として、ウラン溶液およびウラン/プルトニウム溶液を分離している。具体的に、分離装置9は、燃料溶解液に抽出溶媒を投入して、ウランおよびプルトニウムを含む抽出溶媒であるウラン/プルトニウム装荷溶媒を生成する。続いて、分離装置9は、ウラン/プルトニウム装荷溶媒にPu逆抽出溶媒を投入して、ウランおよびプルトニウムを含む溶液であるウラン/プルトニウム溶液(以下、U/Pu溶液という)を抽出する。この後、分離装置9は、プルトニウム抽出後のウラン/プルトニウム装荷溶媒であるウラン装荷溶媒にU逆抽出溶媒を投入して、ウランを含む溶液であるウラン溶液(以下、U溶液という)を抽出する。
【0036】
精製装置10は、U溶液およびU/Pu溶液を、硝酸ウラン溶液(以下、硝酸U溶液という)および硝酸ウラン/プルトニウム溶液(以下、硝酸U/Pu溶液という)に精製する。精製装置10は、精製した硝酸U溶液および硝酸U/Pu溶液を、富化度調整装置11へ向けて供給する。
【0037】
富化度調整装置11は、精製した硝酸U溶液および硝酸U/Pu溶液を加熱して濃縮した後の溶液を混合してPu富化度を調整する。具体的に、富化度調整装置11は、濃縮後の硝酸U/Pu溶液に、硝酸U溶液を混合させて、硝酸U/Pu溶液のPu富化度を調整する。富化度調整装置11は、硝酸U溶液および富化度調整後の硝酸U/Pu溶液を脱硝装置12へ向けて供給する。
【0038】
脱硝装置12は、硝酸U溶液および富化度調整後の硝酸U/Pu溶液を脱硝して、ウラン酸化物およびウラン/プルトニウム酸化物とする。そして、得られたウラン酸化物およびウラン/プルトニウム酸化物は、燃料製造装置13へ送られる。
【0039】
燃料製造装置13は、ウラン酸化物(U製品)およびウラン/プルトニウム酸化物(U/Pu製品)を貯蔵すると共に、貯蔵したウラン酸化物およびウラン/プルトニウム酸化物を適宜混合して、装荷用燃料を製造している。
【0040】
続いて、
図2を参照して、上記のように構成された使用済核燃料の再処理施設において行われる使用済核燃料の再処理方法に関する一連のフローについて説明する。
図2は、使用済核燃料の再処理方法に関するフローチャートである。
【0041】
予め成分が推定された使用済核燃料を内包する燃料集合体が、機械的処理装置5に供給されると、機械的処理装置5は、供給された燃料集合体に内包する使用済核燃料を、機械的処理によって暴露させる機械的処理工程S1を実行し、機械的処理後の使用済核燃料を溶解装置6へ向けて供給する。使用済核燃料が溶解装置6に供給されると、溶解装置6は、硝酸を用いて、供給された使用済核燃料を溶解する溶解工程S2を実行し、溶解後の使用済核燃料を燃料溶解液として清澄装置7へ向けて供給する。燃料溶解液が清澄装置7へ供給されると、清澄装置7は、燃料溶解液中に含まれる不溶解残渣を取り除く清澄工程S3を実行し、清澄後の燃料溶解液を計量装置8へ供給する。
【0042】
燃料溶解液が計量装置8へ供給されると、計量装置8は、燃料溶解液を計量槽に流入させ、計量槽に溜まった燃料溶解液の成分が計量される計量工程S4を実行する。これにより、計量前に推定された燃料溶解液の成分は、計量後の燃料溶解液の成分との誤差が修正される。計量後の燃料溶解液は、バッファ槽に供給される。この後、再処理する使用済核燃料の種類分だけ、S1からS4まで工程を繰り返し行う。これにより、複数のバッファ槽には、異なる種類の燃料溶解液が溜められる。
【0043】
異なる種類の燃料溶解液が溜められたら、混合工程S5を実行し、異なる種類の燃料溶解液を混合し、分離装置9へ送る。燃料溶解液が分離装置9へ供給されると、分離装置9は、燃料溶解液中のウランおよびプルトニウムを、U/Pu溶液およびU溶液として抽出する分離工程S6を実行する。U/Pu溶液およびU溶液を抽出すると、分離装置9は、U/Pu溶液およびU溶液を精製装置10へ向けて供給する。
【0044】
U/Pu溶液およびU溶液が精製装置10へ供給されると、精製装置10は、U溶液およびU/Pu溶液を、硝酸U溶液および硝酸U/Pu溶液に精製する精製工程S7を実行する。この後、精製装置10は、精製した硝酸U溶液および硝酸U/Pu溶液を富化度調整装置11へ向けて供給する。硝酸U溶液および硝酸U/Pu溶液が富化度調整装置11へ供給されると、富化度調整装置11は、硝酸U溶液および硝酸U/Pu溶液を加熱して濃縮した後の溶液を混合してPu富化度を調整する富化度調整工程S8を実行する。この後、富化度調整装置11は、硝酸U溶液および富化度調整後の硝酸U/Pu溶液を脱硝装置12へ向けて供給する。
【0045】
硝酸U溶液および富化度調整後の硝酸U/Pu溶液が脱硝装置12へ供給されると、脱硝装置12は、硝酸U溶液および硝酸U/Pu溶液を脱硝して、ウラン酸化物およびウラン/プルトニウム酸化物を生成する脱硝工程S9を実行する。この後、脱硝装置12は、ウラン酸化物およびウラン/プルトニウム酸化物を燃料製造装置13へ向けて供給する。ウラン酸化物およびウラン/プルトニウム酸化物が燃料製造装置13へ供給されると、燃料製造装置13は、ウラン酸化物およびウラン/プルトニウム酸化物を貯蔵容器に一旦貯蔵し、貯蔵したウラン酸化物およびウラン/プルトニウム酸化物を適宜混合した後、装荷用燃料を製造する燃料製造工程S10を実行する。
【0046】
次に、
図1に示すような再処理施設1での処理時に発生する、例えば清澄装置7での処理時に生じる廃液を処理する廃液処理システムについて説明する。
図3は、廃液処理システムの概略構成を示す模式図である。
【0047】
図3に示す廃液処理システム100は、廃液槽102と、混合槽104と、硝酸タンク106と、モリブデン酸塩水溶液タンク108と、硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109と、バッファ槽110と、ガラス溶融炉112と、ガラス貯蔵部114と、析出物除去装置116と、析出物貯蔵部117と、DBP(ジブチルリン酸)廃液タンク118と、アルカリ溶液タンク119と、制御装置120と、を有する。
【0048】
また、廃液処理システム100は、廃液や処理液が流れる各部が配管で接続されている。廃液槽102と混合槽104とを接続する廃液供給ラインL1と、混合槽104と硝酸タンク106とを接続する硝酸供給ラインL2と、混合槽104とモリブデン酸塩水溶液タンク108とを接続するモリブデン供給ラインL3と、混合槽104と硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109とを接続するジルコニウム供給ラインL4と、混合槽104とバッファ槽110とを接続する処理後廃液供給ラインL5と、バッファ槽110とガラス溶融炉112とを接続する処理後廃液供給ラインL6と、混合槽104とDBP廃液タンク118とを接続するDBP廃液供給ラインL7と、アルカリ溶液タンク119と混合槽104とを接続するアルカリ供給ラインL8と、を有する。また、廃液処理システム100は、バッファ層110に処理後廃液供給ラインL5a、L5bが接続されている。処理後廃液供給ラインL5a、L5bは、上流側に処理後廃液供給ラインL5の上流側と同様の構造が配置されている。
【0049】
廃液処理システム100は、廃液や処理液が流れる各部を接続する配管に配管を流れる廃液や処理液の流量を制御する制御弁132、134、136、137、138、139、150が設けられている。制御弁132は、硝酸供給ラインL2に設置されている。制御弁134は、モリブデン供給ラインL3に設置されている。制御弁136は、ジルコニウム供給ラインL4に設置されている。制御弁137は、処理後廃液供給ラインL5に設置されている。制御弁138は、処理後廃液供給ラインL6に設置されている。制御弁139は、DBP廃液供給ラインL7に設置されている。制御弁150は、アルカリ供給ラインL8に設置されている。
【0050】
廃液槽102は、処理対象のアルカリ廃液を貯留する。廃液層102は、廃液供給ラインL1を介してアルカリ廃液を混合槽104に供給する。混合槽104は、供給された液体を混合する。混合槽104は、廃液槽102から供給されたアルカリ廃液に硝酸タンク106、モリブデン酸塩水溶液タンク108、硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109から供給される処理液とを混合する。また、混合槽104は、所定の場合アルカリ溶液タンク119からアルカリ溶液が供給される。硝酸タンク106は、硝酸の水溶液を貯留する。硝酸タンク106は、硝酸供給ラインL2を介して混合槽104に硝酸の水溶液を供給する。モリブデン酸塩水溶液タンク108は、モリブデン酸塩水溶液を貯留する。モリブデン酸塩水溶液タンク108は、モリブデン供給ラインL3を介してモリブデン酸塩水溶液を混合槽104に供給する。硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109は、硝酸ジルコニウム塩水溶液を貯留する。硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109は、ジルコニウム供給ラインL4を介して、混合槽104に硝酸ジルコニウム塩水溶液を供給する。
【0051】
バッファ槽110は、混合槽104から処理後廃液供給ラインL5を介して供給される廃液、具体的には、混合槽104で処理が行われた廃液を一時的に貯留する。バッファ槽110は、処理後廃液供給ラインL5a、L5bを介した経路からも廃液が供給される。バッファ槽110は、貯留した廃液を処理後廃液供給ラインL6を介して、ガラス溶融炉112に供給する。
【0052】
ガラス溶融炉112は、バッファ槽110から処理後廃液供給ラインL6を介して供給される廃液にガラス粉末を混合し、加熱することで廃液中の不純物を固化する。ガラス貯蔵部114は、ガラス溶融炉112で溶融されたガラスが供給される。ガラス貯蔵部114は、供給されたガラスを貯蔵する。
【0053】
析出物除去装置116は、混合槽104に沈殿した析出物や、壁面に付着した析出物を機械的な機構で除去する装置である。析出物除去装置116は、析出物を搬送する機構も有することが好ましい。析出物貯蔵部117は、析出物除去装置116で除去した析出物を貯蔵する。DBP廃液タンク118は、DBP廃液供給ラインL7を介して混合槽104から供給されるジブチルリン酸を含有する水溶液を貯留する。アルカリ溶液タンク119は、アルカリ溶液を貯留している。アルカリ溶液としては、NaOH水溶液や、Na2CO3水溶液を用いることができる。アルカリ溶液タンク119は、アルカリ供給ラインL8を介して混合槽104にアルカリ溶液を供給する。
【0054】
制御装置120は、演算処理を行い、廃液処理システム100の各部、例えば、制御弁132、134、136、137、138、139、150の開閉、開度を制御する。また制御装置120は、各ラインにポンプ等が設置されている場合、ポンプによる液体の供給も制御する。制御装置120は、各種パラメータの計測結果に基づいて処理を実行する。
【0055】
廃液処理システム100は、制御装置120での制御に用いる各種パラメータを計測機器として、pH計測部140と、モリブデン濃度計測部142と、ジルコニウム濃度計測部144と、液位計測部146と、析出状態計測部148と、を有する。pH計測部140は、混合槽104に貯留されている溶液のpHを検出する。モリブデン濃度計測部142は、混合槽104に貯留されている溶液のモリブデンの濃度を計測する。ジルコニウム濃度計測部144は、混合槽104に貯留されている溶液のジルコニウムの濃度を計測する。液位計測部146は、混合槽104に貯留されている溶液の液面の高さを計測する。析出状態計測部148は、混合槽104内の析出物の状態(沈殿の状態)を計測する。pH計測部140と、モリブデン濃度計測部142と、ジルコニウム濃度計測部144と、液位計測部146とは、それぞれの計測対象を計測する種々の装置を用いることができる。析出状態計測部148は、溶液中の沈殿物の量を計測する装置や、混合槽104内の画像を取得し、析出状態を計測する装置等を用いることができる。
【0056】
次に、
図4を用いて廃液処理システム100で実行される処理動作について説明する。
図4は、廃液処理システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、制御装置120が各部の動作を制御することで実行することができる。処理動作は、作業員が行ってもよい。以下、制御装置120で実行する処理として説明する。
【0057】
制御装置120は、アルカリ廃液を廃液層102から混合槽104に供給する(ステップS12)。制御装置120は、アルカリ廃液を混合槽104に供給したら、モリブデン酸塩水溶液と、硝酸ジルコニウム塩水溶液と、硝酸水溶液を混合槽104に投入する(ステップS14)。制御装置120は、制御弁134の開閉及び開度を制御して、モリブデン酸塩水溶液タンク108から混合槽104に供給するモリブデン酸塩水溶液の量を制御する。制御装置120は、制御弁136の開閉及び開度を制御して、硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109から混合槽104に供給する硝酸ジルコニウム塩水溶液の量を制御する。制御装置120は、制御弁132の開閉及び開度を制御して、硝酸タンク106から混合槽104に供給する硝酸水溶液の量を制御する。
【0058】
次に、制御装置120は、混合槽104内の液体のpHが4以下であるか、つまりpH≦4.0であるかを判定する(ステップS16)。制御装置120は、pH計測部140の計測結果に基づいて、混合槽104内の液体のpHが4以下であるかを判定する。制御装置120は、pHが4以下ではない(ステップS16でNo)と判定したら、硝酸タンク106から混合槽104に硝酸水溶液を投入し(ステップS18)、ステップS16に戻る。
【0059】
制御装置120は、pHが4以下である(ステップS16でYes)と判定した場合、モリブデン濃度が閾値以上であるかを判定する(ステップS20)。制御装置120は、モリブデン濃度計測部142の計測結果に基づいて、混合槽104内の液体のモリブデン濃度が閾値以上であるかを判定する。制御装置120は、モリブデン濃度が閾値以上ではない(ステップS20でNo)と判定したら、モリブデン酸塩水溶液タンク108から混合槽104にモリブデン酸塩水溶液を投入し(ステップS22)、ステップS16に戻る。
【0060】
制御装置120は、モリブデン濃度が閾値以上である(ステップS20でYes)と判定した場合、ジルコニウム濃度が閾値以上であるかを判定する(ステップS24)。制御装置120は、ジルコニウム濃度計測部144の計測結果に基づいて、混合槽104内の液体のジルコニウム濃度が閾値以上であるかを判定する。制御装置120は、ジルコニウム濃度が閾値以上ではない(ステップS24でNo)と判定したら、硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109から混合槽104に硝酸ジルコニウム塩水溶液を投入し(ステップS26)、ステップS16に戻る。
【0061】
制御装置120は、ジルコニウム濃度が閾値以上である(ステップS24でYes)と判定した場合、沈殿が完了したかを判定する(ステップS28)。制御装置120は、析出状態計測器148で計測した結果に基づいて、混合槽104内の析出物が沈殿しているかを検出する。制御装置120は、沈殿が完了していない(ステップS28でNo)と判定した場合、ステップS28に戻る。つまり、制御装置120は、沈殿が完了するまでステップS28の判定を繰り返す。制御装置120は、沈殿が完了した(ステップS28でYes)と判定した場合、混合槽104からバッファ槽110に溶液を排出する(ステップS30)。処理後廃液供給ラインL5を介して混合槽104からバッファ槽110に溶液を供給することで、沈殿物を除去した(低減した)混合槽104内の上澄み液をバッファ槽110に供給する。
【0062】
廃液処理システム100は、
図4に示す処理でバッファ槽110に析出物(沈殿物)を取り除いた上澄み液の溶液を排出した後、バッファ槽110に貯留した溶液をガラス溶融炉112に供給する。ガラス溶融炉112は、バッファ槽110から供給された溶液とガラス粉末とを混合して加熱し、溶融させる。これにより、廃液をガラス固化体とした生成物を生成する。廃液のガラス固化体は、ガラス貯蔵部114に排出される。
【0063】
廃液処理システム100は、アルカリ廃液が供給された混合槽104に溶解したモリブデンとジルコニウムを供給し、さらに混合槽104の溶液を酸性、具体的にはpH4以下にすることで、溶液中に含まれるジブチルリン酸を選択的に析出することができる。なお、ジブチルリン酸は、モリブデンとジルコニウムとで錯体を形成して析出されているものと考えられる。
【0064】
廃液処理システム100は、混合槽104に供給したアルカリ廃液のジブチルリン酸を析出させて沈殿させ、析出物を除去した溶液をバッファ槽110に供給することで、ガラス溶融炉112に供給する廃液を、ジブチルリン酸を低減または除去した溶液とすることができる。これにより、廃液(溶液)を安定してガラス固化させることができる。またガラス溶融炉112の劣化等を抑制することができる。
【0065】
ここで、モリブデン濃度の閾値は、モリブデン酸の濃度を0.001mol/l以上とすることが好ましい。溶液中のモリブデン酸濃度を0.001mol/l以上とすることで、ジブチルリン酸を好適に析出させることができる。また、ジルコニウム濃度の閾値は、0.001mol/l以上とすることが好ましい。溶液中のジルコニウム濃度を0.001mol/l以上とすることで、ジブチルリン酸を好適に析出させることができる。
【0066】
また、混合槽104の溶液のpHは、4.0以下とすることが好ましいが、3.0以下とすることがより好ましい。これにより、ジブチルリン酸の析出速度をより早くすることができ、処理を高速化することができる。
【0067】
次に、
図5を用いて、混合槽104に析出された析出物、ジブチルリン酸を含有する物質の処理動作について説明する。
図5は、廃液処理システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、制御装置120が各部の動作を制御することで実行することができる。処理動作は、作業員が行ってもよい。以下、制御装置120で実行する処理として説明する。
【0068】
制御装置120は、析出物の量を検出する(ステップS40)。析出物の量は、実行した処理や、析出状態計測部148の計測結果から検出する。制御装置120は、析出物の量に基づいて、機械的除去を実行するかを判定する(ステップS42)。制御装置120は、例えば析出物の量が閾値以上の場合機械的除去を実行すると判定する。制御装置120は、機械的除去を実行する(ステップS42でYes)と判定した場合、混合槽104の析出物を析出物除去装置116で除去し(ステップS44)、本処理を終了する。
【0069】
制御装置120は、機械的除去を実行しない(ステップS42でNo)と判定した場合、溶解除去を実行するかを判定する(ステップS46)。制御装置120は、例えば析出物の量が閾値以上の場合、混合槽104に付着している析出物が閾値以上の場合、溶解除去を実行すると判定する。制御装置120は、溶解除去を実行しない(ステップS46でNo)と判定した場合、本処理を終了する。
【0070】
制御装置120は、溶解除去を実行する(ステップS46でYes)と判定した場合、アルカリ溶液タンク119から混合槽104にアルカリ溶液を投入する(ステップS48)。制御装置120は、アルカリ溶液を投入したら混合槽104内の溶液のpHが5以上(pH≧5.0)であるかを判定する(ステップS50)。制御装置120は、pHが5以上ではない(ステップS50でNo)、pHが5未満であると判定した場合、ステップS48に戻り、アルカリ溶液を投入する。
【0071】
制御装置120は、pHが5以上である(ステップS50でYes)と判定した場合、混合槽104の溶液をDBP廃液タンク118に排出し(ステップS52)、本処理を終了する。
【0072】
廃液処理システム100は、混合槽104の析出物を除去することで、混合槽104内の溶液を好適に除去することができる。また、廃液処理システム100は、析出物除去装置116で機械的に除去することで、少ない容積で混合槽104内のジブチルリン酸の残留物を取り除くことができる。また、廃液処理システム100は、混合槽104内のpHを高くすることで、具体的には5以上とすることで、ジブチルリン酸の残留物を溶解させることができる。これにより、液体プロセスで混合槽104内のジブチルリン酸の残留物を除去することができる。
【0073】
廃液処理システム100は、pH計測部140と、モリブデン濃度計測部142と、ジルコニウム濃度計測部144と、液位計測部146と、析出状態計測部148で混合槽104内の状態を検出し、その結果に基づいて制御したがこれに限定されない。廃液処理システム100は、あらかじめ設定した条件と、混合槽104への廃液、処理液の供給結果、供給してからの時間、供給量に基づいて、混合槽104内の状態を検出し、制御を実行してもよい。
【0074】
本実施例では、モリブデン酸塩水溶液を供給し、硝酸ジルコニウム塩水溶液を供給したが、それぞれ溶解したモリブデン、ジルコニウムを供給できればよく、溶液はこれに限定されない。また、本実施例では、混合槽104内の溶液を酸性にするための溶液として硝酸の水溶液を用いることで、他の系統への影響を少なくすることができる。なお、混合槽104内の溶液を酸性にできればよく、酸として硝酸以外を用いてもよい。
【0075】
図6は、廃液処理システムの概略構成を示す模式図である。
図6に示す廃液処理システム100aは、混合槽104に供給する処理液が異なる以外は、廃液処理システム100と同様の構成である。以下、廃液処理システム100と同様の構造については、同様の符号を付して説明を省略し、廃液処理システム100aに特有の点を説明する。
【0076】
廃液処理システム100aは、硝酸タンク106、モリブデン酸塩水溶液タンク108及び硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109に換えて、高レベル廃液タンク206を有する。また、廃液処理システム100aは、混合槽104と硝酸タンク106とを接続する硝酸供給ラインL2と、混合槽104とモリブデン酸塩水溶液タンク108とを接続するモリブデン供給ラインL3と、混合槽104と硝酸ジルコニウム塩水溶液タンク109とを接続するジルコニウム供給ラインL4と、に換えて、混合槽104と高レベル廃液タンク206とを接続する高レベル廃液供給ラインL12を有する。高レベル廃液供給ラインL12には、制御弁232が設置されている。
【0077】
高レベル廃液タンク206は、再処理施設1から排出され、モリブデン塩とジルコニウム塩を含有し、酸性の溶液である高レベル廃液を貯留している。廃液処理システム100aは、高レベル廃液供給ラインL12を介して、高レベル廃液タンク206から混合槽104に高レベル廃液を供給する。
【0078】
次に、
図7を用いて廃液処理システム100aで実行される処理動作について説明する。
図7は、廃液処理システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
図7に示す処理は、制御装置120が各部の動作を制御することで実行することができる。処理動作は、作業員が行ってもよい。以下、制御装置120で実行する処理として説明する。
【0079】
制御装置120は、アルカリ廃液を廃液層102から混合槽104に供給する(ステップS60)。制御装置120は、アルカリ廃液を混合槽104に供給したら、高レベル廃液を混合槽104に投入する(ステップS62)。制御装置120は、制御弁232の開閉及び開度を制御して、高レベル廃液タンク206から混合槽104に供給する高レベル廃液の量を制御する。供給する高レベル廃液の量は、例えば、廃液層102から供給されるアルカリ廃液の1/100以上とする。
【0080】
次に、制御装置120は、混合槽104内の液体のpHが4以下であるか、つまりpH≦4.0であるかを判定する(ステップS64)。制御装置120は、pHが4以下ではない(ステップS64でNo)と判定したら、ステップS62に戻る。
【0081】
制御装置120は、pHが4以下である(ステップS64でYes)と判定した場合、モリブデン濃度が閾値以上であるかを判定する(ステップS66)。制御装置120は、モリブデン濃度が閾値以上ではない(ステップS66でNo)と判定したら、ステップS62に戻る。
【0082】
制御装置120は、モリブデン濃度が閾値以上である(ステップS66でYes)と判定した場合、ジルコニウム濃度が閾値以上であるかを判定する(ステップS68)。制御装置120は、ジルコニウム濃度が閾値以上ではない(ステップS68でNo)と判定したら、ステップS62に戻る。
【0083】
制御装置120は、ジルコニウム濃度が閾値以上である(ステップS68でYes)と判定した場合、沈殿が完了したかを判定する(ステップS70)。制御装置120は、沈殿が完了していない(ステップS70でNo)と判定した場合、ステップS70に戻る。制御装置120は、沈殿が完了した(ステップS70でYes)と判定した場合、混合槽104からバッファ槽110に溶液を排出する(ステップS72)。
【0084】
このように、廃液処理システム100aは、高レベル廃液を供給することでモリブデン、ジルコニウムを供給し溶液を酸性することでも、ジブチルリン酸の析出に必要な環境とすることができ、混合槽104でジブチルリン酸を析出させることができる。これにより、溶液からジブチルリン酸を好適に除去することができる。