(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係るマルチバンドアンテナは、多周波広帯域の送受信波に対応するマルチバンドアンテナを対象とするものであり、単一の給電部1を用いることにより、多周波広帯域の送受信を行うものである。本発明の実施形態1に係るマルチバンドアンテナは
図1(a)(b)に示すように、単一の給電部1に接続された単一の軸部2と、前記軸部2から枝分かれして非対称な給電素子3a,3bと、前記軸部2から切り離された非対称な無給電素子5a,5bとを有しており、これらの素子を同一の基板4上に設けている。
なお、
図1(a)では、軸部2,給電素子3a,3b及び無給電素子5a,5bの相互関係を示すために、基板4の表面4a側に形成した軸部2,給電素子3a,3b及び無給電素子5aに加えて、基板4の裏面4b側に形成された無給電素子5bを基板表面側から透視した状態で図示している。同様に、
図1(b)では、軸部2,給電素子3a,3b及び無給電素子5a,5bの相互関係を示すために、基板4の裏面4b側に形成された無給電素子5bを加えて、基板4の表面4a側に形成した軸部2,給電素子3a,3b及び無給電素子5aを基板表面側から透視した状態で図示している。
図1(a)(b)で示した図示の形態は、
図3〜
図9,
図10〜
図14及び
図17においても同様に踏襲している。
【0020】
さらに、本発明の実施形態1に係るマルチバンドアンテナは、前記軸部2の線幅をL1,前記給電素子3a,3bの線幅をL2,L3、前記無給電素子5a,5bの線幅をL4,L5とすると、前記軸部2の線幅L1を、前記給電素子3a,3b及び前記無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5より広く、或いは前記給電素子3a,3b及び前記無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5と同じに設定している。
【0021】
本発明の実施形態1は、軸部2の線幅L1を給電素子3a,3b及び無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5より広く、或いは前記給電素子3a,3b及び前記無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5と同じに設定することにより、給電素子3a,3bと無給電素子4a、4bと軸部2とに流れる表面電流の密度を、低周波数帯及び中間周波数帯並びに高周波数帯毎に異ならせて、
図6〜
図9に示す実測値から明らかなように低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応するものである。なお、
図6〜
図9に示す実測値は、軸部2の線幅L1を給電素子3a,3b及び無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5より広く設定した場合であるが、軸部1の線幅L1を前記給電素子3a,3b及び前記無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5と同じに設定しても同様の実測値を得ている。
【0022】
より具体的に説明すると、
図1(a)(b)に示す本発明の実施形態1では、給電素子3a,3b及び無給電素子5a,5bのパターンを誘電体の基板4上にエッチング加工により形成している。エッチング加工後の実施形態1に係るマルチバンドアンテナの構造を説明する。
図1(a)(b)において、非対称な給電素子3a,3bはその長さが長短異なるものであり、その給電素子3a,3bを基板4の表面4a上に形成している。非対称な無給電素子5a,5bはその長さが長短異なるものであり、長さの短い無給電素子5bを基板4の表面4a上に形成し、長さの長い無給電素子5aを基板4の裏面4bにそれぞれ分けて形成している。
基板4の表面4aに形成した給電素子3a,3b及び無給電素子5a,5bには異なる模様の網点を付けて相互間を識別している。しかも、基板4の裏面4bに形成された無給電素子5bには1点鎖線を付することにより、基板4の表裏面4a,4bの素子相互間を識別している。
【0023】
前記軸部2は
図1(a)(b)に示すように、前記給電部1に接続されて立ち上がって基板4の表面4a側に形成されている。そして、前記給電素子3a,3bは前記軸部2から枝分かれさせて基板4の表面4aに形成され、前記無給電素子5a,5bは前記軸部2から切り離されて基板4の表面4aと裏面4bとに分けて形成されている。前記給電素子3a,3bは前記軸部2に直結して機械的に結合され、前記無給電素子5a,5bは前記軸部2に電気的に結合(静電結合或いは電磁結合)されている。
【0024】
図1(a)(b)に示す実施形態1においては、長い給電素子3a及び長い無給電素子5aは前記軸部2を中心として左側の基板4の表面4a上に形成し、短い給電素子3b及び短い無給電素子5bは前記軸部2を中心として右側の基板4の表面4a上に形成している。なお、長い給電素子3a及び長い無給電素子5aを軸部2の右側、短い給電素子3b及び短い無給電素子5bは前記軸部2を中心として左側にそれぞれ形成してもよいものである。
【0025】
前記給電素子3a,3bと前記無給電素子5a,5bとは、それぞれ非対称構造のアンテナ素子として形成しており、その構成を具体的に説明する。
長い給電素子3aは
図1(a)(b)に示すように、前記軸部2の頂部から左側の横方向に引き出し、その先端を下側に引き出し、次に右横側に折り曲げて形成している。短い給電素子3bは
図1(a)(b)に示すように、前記軸部2から右横側に引き出し、その先端を上側に引き出し、次にその先端を左横側に折り曲げて形成している。さらに、短い給電素子3bは、軸部2から右横側に引き出した箇所をミアンダ形状に形成している。
長い無給電素子5aは
図1(a)(b)に示すように、前記軸部2に対して左側の横方向に引き出し、その先端を下側に引き出し、次に右横側に折り曲げて形成している。短い無給電素子5bは
図1(a)(b)に示すように、前記軸部2に対して右横側に引き出し、その先端を上側に引き出し、次にその先端を右横側に折り曲げて逆L型アンテナ素子として形成している。
【0026】
本発明の実施形態1は上述したように、表面電流の密度を周波数帯毎に異ならせることにより、低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応させるために、前記軸部2の線幅をL1,前記給電素子3a,3bの線幅をL2,前記無給電素子5a,5bの線幅をL3とすると、前記軸部2の線幅L1を前記給電素子3a,3b及び前記無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5より広く(L1>L2〜L5)、或いは前記軸部2の線幅L1を前記給電素子3a,3b及び前記無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5と同じ(L1=L2〜L5)に設定している。上述した前記軸部2及び前記給電素子3a,3b並びに前記無給電素子5a,5bの線幅L1,L2〜L5は、これらの素子の最も広い部分での寸法を意味している。
すなわち、軸部2はその根元側と頂部側とが同一の線幅に設定されて立ち上がっており、線幅L1はその根元側と頂部側との矢印で示す部分の寸法である。線幅L2は長い給電素子3aの軸部2から左横側に引き出した矢印で示す部分の寸法であり、線幅L3は短い給電素子3bの軸部2に対して左横側に折り曲げた矢印で示す部分の寸法である。線幅L4は長い無給電素子5aの軸部2から左横側に引き出した矢印で示す部分の寸法であり、線幅L5は短い無給電素子5bの軸部2に対して左横側に折り曲げた矢印で示す部分の寸法である。
【0027】
次に、上述したアンテナ素子3a,3b,5a,5bと組合せるグランド板6との関係を説明する。前記単一の給電部1は、前記軸部2のグランド板6側の端部2aと前記グランド板6とに接続している。前記基板4の表面4aに形成した無給電素子5bはグランド板6から立ち上がって逆L型形状に形成している。前記基板4の裏面4bに形成した無給電素子5aは、グランド板6から立ち上がって形成している。前記基板4の表面4aに横長のインピーダンス整合片7を形成し、前記インピーダンス整合片7の一端部7aを前記軸部2のグランド板6側の端部2aに接合し、且つ前記グランド板6の端縁に沿って沿わせた前記インピーダンス整合片7の他端部7bを前記グランド板6に接合している。この場合、インピーダンス整合片7とグランド板6の端縁との間には、隙間S1を確保している。このため、インピーダンス整合片7の他端部以外がグランド板に接触するのを回避してインピーダンス整合を図る。なお、前記インピーダンス整合片7は、より良いVSWRの改善のために用いているものであり、これらのインピーダンス整合片7を不要とした場合であっても実用上支障がないことを確認している。なお、グランド板6を基板4の一部にエッチンング加工により形成しているが、ノートパソコンの共通電極をなすグランド板6と組合せるようにしてもよく、グランド板6が基板4に形成されていることは必要十分条件ではない。
【0028】
次に、
図1(a),(b)に示すアンテナ構造によるVSWRを実測した。その結果を
図2に示す。
図2の横軸は周波数、縦軸はVSWRを示す。
【0029】
図2に示すように、低周波数帯の850MHz付近で共振し、中間周波数帯の1900MHz付近及び2600MHz付近で共振し、高周波数帯の3100MHz付近及び3600MHzで共振していることが分る。
【0030】
以上のように、
図1(a),(b)に示すアンテナ構造によれば、軸部の線幅を給電素子及び無給電素子の線幅より広く或いはこれらの素子の線幅と同一に設定することにより、
図2から明らかなように低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応することができる。これは、給電素子と無給電素子と軸部とに流れる表面電流の密度が低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯毎に異なるから、低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応することができたものと考えられる。
【0031】
以上のように、
図1(a),(b)に示す構造によれば、軸部の線幅を給電素子及び無給電素子の線幅より広く或いはこれらの素子の線幅と同一に設定したため、
図2から明らかなように、低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応させるという目的を達成することができた。
【0032】
さらには、給電素子と無給電素子と軸部とに流れる表面電流の密度を前記素子及び前記軸部の組合せにより前記周波数帯毎に異ならせて低周波数帯から高周波数帯までの多周波広帯域に対応するため、これらの給電素子及び無給電素子の規定の電気長を短縮することができ、更なる小型化を実現することができる。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態1によれば、低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応させるという目的を達成することができたが、中間周波数帯でのずれがあるため、これを改善する必要がある。本実施形態2では、中間周波数帯でのずれを改善することを試みている。
【0034】
摂動素子を用いて低域側に周波数をシフトすることは一般的に行われているので、この技術をそのまま本発明に適用した場合について考察した。その考察を
図3及び
図4に基づいて説明する。
図3(a)は板状の摂動素子P1を長い給電素子3aに設けた場合を示す図である。
図3(a)に示すように摂動素子P1を長い給電素子3aに設けた構造では、
図2と
図3(b)とを比較すると明らかなように中間周波数帯の改善に至っていないことが分かる。また、
図4(a)は
図3(a)に示す板状の摂動素子Pを角柱の摂動素子P2に変更し且つ角柱の摂動素子P2を長い給電素子3aに設けた場合を示す図である。
図4(a)に示すように摂動素子P2を長い給電素子3aに設けた構造では、
図2と
図4(b)とを比較すると明らかなように中間周波数帯の改善に至っていないことが分かる。
【0035】
本実施形態2は、
図3及び
図4に示す摂動素子P1,P2の構造を解析して、
図5(a)に示す構造を開発したものである。すなわち、本実施形態2は、前記上段の給電素子3a,3bに非対称な摂動素子8,9をそれぞれ設けている。短い給電素子(逆L型アンテナ素子)3bの逆L型無給電素子5bに沿う辺3cはミアンダ形状に成形している。なお、給電素子3bの辺3cの全体をミアンダ形状としているが、
図6〜
図9に示すように、辺3cの一部に線幅の太い部分を設けてその両端をミアンダ形状にしてもよいものである。
【0036】
前記非対称な摂動素子8,9は長さを異ならせて給電素子3a,3bに沿わせて設けている。すなわち、長い給電素子3aには長い摂動素子8を、短い給電素子3bには短い摂動素子9をそれぞれ設けている。さらに、前記上段の長い給電素子3aに設けた前記摂動素子8を前記軸部2まで延長させて設けている。この場合、短い給電素子3bに設けた摂動素子9の長さは給電素子3bの長さに止めている。
上述した本実施形態2のその他の構成は本実施形態1の構成と同様に構成してある。
【0037】
次に、上段の給電素子3a,3bに摂動素子8,9を設け、しかも辺3cの一部に線幅の太い部分を設けてその両端をミアンダ形状にし、さらに、軸部2の線幅L1を給電素子3a,3b及び無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5より広く設定することにより、給電素子3a,3bと無給電素子5a,5bと軸部2とに流れる表面電流の密度を低周波数帯及び中間周波数帯並びに高周波数帯毎に異ならせて、低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応させ且つ中間周波数帯の改善がなされているかを
図6〜
図9に示すシミュレーションの結果に基づいて検証する。
図6〜
図9の実測値は、軸部1の線幅L1を前記給電素子3a,3b及び前記無給電素子5a,5bの線幅L2〜L5と同じに設定しても同様の実測値を得ている。
【0038】
以下に示す
図6(a)(b)(c),
図7(a)(b)(c),
図8(a)(b),
図9(a)(b)において、
図6〜
図9でのシミュレーションは、給電素子3a,3bと無給電素子5a,5bと軸部2とに流れる表面電流の密度を低周波数帯及び中間周波数帯並びに高周波数帯毎に異ならせて、低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応させることを示すことに主眼があるため、電流がグランド板6にも流れているが、グランド板6に流れる表面電流の密度分布については割愛している。インピーダンス整合片7についても同様に割愛している。
【0039】
図6(a)は低周波数帯の下限周波数低周波数である698MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図6(a)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図6(a)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図6(a)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図6(a)のシミュレーション結果から明らかなように、長い給電素子3aと長い無給電素子5aとの表面電流密度が最大を示しており、軸部2の全体,短い給電素子3b及び短い無給電素子5bの一部にも表面電流密度が比較的高い部分が見られる。この周波数698MHzでは、斜線で示す長い給電素子3a及び長い無給電素子5aが共振に主に寄与しているものと考えている。
【0040】
図6(b)は低周波数帯の上限周波数付近である1000MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図6(b)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図6(b)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図6(b)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図6(b)のシミュレーション結果から明らかなように、長い給電素子3aと長い無給電素子5aとの表面電流密度が最大を示しており、軸部2の全体,短い給電素子3b及び短い無給電素子5bの一部にも表面電流密度が比較的高い部分が見られる。この周波数698MHzでは、斜線で示す長い給電素子3a及び長い無給電素子5aが共振に主に寄与しており、それ以外の領域が前記共振に補完的に寄与しているものと考えている。このシミュレーションの結果は、
図6(a)に示すシミュレーションの結果と実質的に符合しており、低周波数帯の6987MHz〜960MHzの範囲に対しては斜線で示す長い給電素子3a及び長い無給電素子5aが対応していることが分かる。
【0041】
図6(c)〜
図8(b)は中間周波数帯1428MHz〜1595MHz,1710MHz〜2170MHz,2500MHz〜2700MHzを意図してシミュレーションしている。
図6(c)は中間周波数帯の下限周波数付近である1400MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図6(c)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図6(c)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図6(c)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図6(c)のシミュレーション結果から明らかなように、軸部2と、長い給電素子3a及び長い無給電素子5aと、短い給電素子3b及び短い無給電素子5bとに実質的に均一とみられる表面電流密度が現れており、この周波数1400MHzでは、斜線で示す、軸部2,長い給電素子3a及び長い無給電素子5a,短い給電素子3b及び短い無給電素子5bが共振に寄与しており、これらの素子が周波数1400MHzに対応しているものと考えられる。
【0042】
図7(a)は中間周波数帯である1595MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図7(a)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図7(a)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図7(a)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図7(a)のシミュレーション結果から明らかなように、軸部2と、長い給電素子3a及び長い無給電素子5aと、短い給電素子3b及び短い無給電素子5bとに実質的に均一とみられる表面電流密度が現れており、この周波数1595MHzでは、斜線で示す、軸部2,長い給電素子3a及び長い無給電素子5a,短い給電素子3b及び短い無給電素子5bが共振に寄与しており、これらの素子が周波数1595MHzに対応しているものと考えられる。
【0043】
図7(b)は中間周波数帯である1700MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図7(b)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図7(b)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図7(b)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図7(b)のシミュレーション結果から明らかなように、軸部2と、長い給電素子3a及び長い無給電素子5aと、短い給電素子3b及び短い無給電素子5bとに実質的に均一とみられる表面電流密度が現れており、この周波数1700MHzでは、斜線で示す、軸部2,長い給電素子3a及び長い無給電素子5a,短い給電素子3b及び短い無給電素子5bが共振に寄与しており、これらの素子が周波数1700MHzに対応しているものと考えられる。
【0044】
図7(c)は中間周波数帯である2200MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図7(c)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図7(c)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図7(c)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図7(c)のシミュレーション結果から明らかなように、軸部2と、長い給電素子3a及び長い無給電素子5aと、短い給電素子3b及び短い無給電素子5bとに実質的に均一とみられる表面電流密度が現れており、この周波数2200MHzでは、斜線で示す、軸部2,長い給電素子3a及び長い無給電素子5a,短い給電素子3b及び短い無給電素子5bが共振に寄与しており、これらの素子が周波数2200MHzに対応しているものと考えられる。
【0045】
図8(a)は中間周波数帯である2500MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図8(a)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図8(a)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図8(a)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図8(a)のシミュレーション結果から明らかなように、軸部2と、長い給電素子3a及び長い無給電素子5aと、短い給電素子3b及び短い無給電素子5bとに実質的に均一とみられる表面電流密度が現れており、この周波数2500MHzでは、斜線で示す、軸部2,長い給電素子3a及び長い無給電素子5a,短い給電素子3b及び短い無給電素子5bが共振に寄与しており、これらの素子が周波数2500MHzに対応しているものと考えられる。
【0046】
図8(b)は中間周波数帯である2700MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図8(b)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図8(b)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図8(b)において、表面電流密度が高い領域を斜線で示し、それに続く領域をドットで示している。
図8(b)のシミュレーション結果から明らかなように、軸部2と、長い給電素子3a及び長い無給電素子5aと、短い給電素子3b及び短い無給電素子5bとに実質的に均一とみられる表面電流密度が現れており、この周波数2700MHzでは、斜線で示す、軸部2,長い給電素子3a及び長い無給電素子5a,短い給電素子3b及び短い無給電素子5bが共振に寄与しており、これらの素子が周波数2700MHzに対応しているものと考えられる。
【0047】
図9(a)は高周波数帯である3400MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図9(a)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図9(a)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図9(a)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図9(a)のシミュレーション結果から明らかなように、軸部2と、短い給電素子3b及び長い無給電素子5aとに主に表面電流密度が現れており、この周波数3400MHzでは、斜線で示す、軸部2,短い給電素子3b及び長い無給電素子5aが主に共振に寄与しており、これらの素子が周波数3400MHzに対応しているものと考えられる。
【0048】
図9(b)は高周波数帯である3600MHzを意図してシミュレーションした結果を示している。なお、
図9(b)の左側は基板4の表面4aからシミュレーションの結果を見た図、
図9(b)の右側は基板4の裏面4bからシミュレーションの結果を見た図である。
図9(b)において、表面電流密度が高い領域及び比較的高い領域を斜線で示している。
図9(b)のシミュレーション結果から明らかなように、軸部2と、短い給電素子3b及び長い無給電素子5aとに主に表面電流密度が現れており、この周波数3600MHzでは、斜線で示す、軸部2,短い給電素子3b及び長い無給電素子5aが主に共振に寄与しており、これらの素子が周波数3600MHzに対応しているものと考えられる。
【0049】
図5(a)に示すように、上段の給電素子3a,3bに摂動素子8,9を設け、しかも辺3cの全体をミアンダ形状にしたアンテナ構造であっても、
図6〜
図9に示すシミュレーションと同様の結果を得ている。
【0050】
図5(a)に示す非対称な上段の給電素子3a,3bに非対称な摂動素子8,9を設け、しかも辺3cの全体をミアンダ形状にしたアンテナ構造におけるVSWRを実測し、その実測結果を
図5(b)に示す。
図5(b)のVSWRの実測値を
図2のVSWRの実測値と比較すると、摂動素子8,9を設けたことにより、中間周波数帯での特性の改善及び帯域幅の拡大に寄与していることが分かる。
さらに、
図5(a)及び
図6に示すミアンダ形状を採用することにより、給電素子3bを流れる電流による電気的結合(電磁結合又は静電結合)の影響を無給電素子5bに付与することで、中間周波数帯での特性の改善及び帯域幅の拡大に寄与していることが分かった。この場合、前記電気的結合による大きな影響を与えるには
図5(a)のミアンダ形状を採用すればよい。
【0051】
以上のように、本実施形態2によれば、給電素子と無給電素子と軸部とに流れる表面電流の密度を
図6〜
図9に示すように周波数帯毎に異ならせて、低周波数帯,中間周波数帯及び高周波数帯に対応することができるばかりでなく、中間周波数帯での特性の改善及び帯域幅の拡大に寄与することができるという顕著な効果を得ることができるものである。
【0052】
さらには、給電素子と無給電素子と軸部とに流れる表面電流の密度を前記素子及び前記軸部の組合せにより前記周波数帯毎に異ならせて低周波数帯から高周波数帯までの多周波広帯域に対応するため、これらの給電素子及び無給電素子の電気長を短縮することができ、更なる小型化を実現することができる。
【0053】
図5(a)に示す本実施形態2によれば、
図5(b)に示すように、1500MHz付近で共振しており、中間周波数帯を改善することができるとともに、高周波数帯も改善することができるという利点がある。
【0054】
(実施形態3)
図1(a)及び
図5(a)に示した実施形態では短い給電素子(逆L型アンテナ素子)3bの逆L型無給電素子5bに沿う辺3cをミアンダ形状に形成した例を示したが、
図10(a)に示す実施形態3は、短い給電素子3bの辺3cをストレート形状に変更している。この場合、
図5(a)に示す摂動素子8,9が存在していることを前提としている。
上述した本実施形態3のその他の構成は本実施形態1の構成と同様に構成してある。
図10(b)と
図5(b)とを比較すると明らかなように、短い給電素子3bの辺3cを一点鎖線で示すミアンダ形状D1から実線で示すストレート形状D2に変更しても
図5(b)に示すように、1500MHz付近で共振しており、中間周波数帯を改善することができるとともに、高周波数帯も改善することができるという利点がある。
【0055】
(実施形態4)
図11(a)は、長い給電素子3aの長い無給電素子5aに沿う辺3dの線幅L21を広く反対側の線幅L22を狭くした場合のVSWRを実測した。
図11(b)と
図2とを比較すると明らかなように、前記給電素子3aの辺3dを広く反対側を狭くすることにより、低周波数帯及び中間周波数帯のアンテナ特性が劣化することが分かる。
この考察から、
図1(a)及び
図5(a)に示すように、長い給電素子3aの長い無給電素子5aに沿う辺3dの線幅L21を狭く反対側の線幅L22を広くすることが必要であることが分かる。上述した本実施形態4のその他の構成は本実施形態1の構成と同様に構成してある。
【0056】
(実施形態5)
図12(a)は、
図5(a)に示す摂動素子9に庇9aを設けている。前記庇9aは短い給電素子3b側に設けている。本実施形態5では、庇9aが給電素子3bに電磁的影響を与えることにより、
図5(b)と
図12(b)とを比較すると明らかなように、高周波数側の帯域が改善していることが分かる。上述した本実施形態5のその他の構成は本実施形態1の構成と同様に構成してある。
【0057】
以上の実施形態では、摂動素子8,9を給電素子3a,3bに直結することにより機械的に結合して例を示したが、これに限られるものではない。
図13(a)に示すように、摂動素子8,9を給電素子3a,3bから若干浮かせて隙間(約0.1mm)S2を明けて配置することにより、摂動素子8,9を給電素子3a,3bに電気的に接合(電磁結合或いは静電結合)させてもよいものである。なお、隙間Sを明ける場合、隙間S2内に誘電体を介装し、その誘電体で摂動素子8,9を支えて給電素子3a,3bに取り付ける構造を採用してもよい。
図13(a)に示す構造は、
図13(b)と
図5(b)とを比較すると明らかなように、一点鎖線で示す浮きなしのVSWRD3に対して実線で示す隙間S2があるVSWRでは中間周波数帯の下限側で若干変化するが、全体として実用範囲である。このことからして、摂動素子8,9と給電素子3a,3bとは機械的結合或いは電気的結合のいずれを選択して実装することができる。
【0058】
(実施形態6)
図14(a)に示す例は、前記摂動素子8,9の前記給電素子3a,3bに対する起立角度θを調整する場合を考察した例である。
図14(a)では、前記摂動素子8,9の前記給電素子3a,3bに対する起立角度θを45°に調整している。そのVSWRを
図14(b)に示す。
図14(b)には、起立角度θが90°の場合を一点鎖線V1、起立角度θが45°の場合を実線V2で示している。
図14(b)における一点鎖線V1で示すVSWRと実線V2で示すVSWRとを比較すると明らかなように、起立角度θによって低周波数帯から高周波数帯までのVSWRを調整することができることが分かる。なお、
図14(b)では、起立角度θを45°と90°の場合のVSWRを採り上げてその変化の傾向を示しており、起立角度θによってVSWRに変化を与えられるので、これ以外の角度で起立させてもよいものである。上述した本実施形態6のその他の構成は本実施形態1の構成と同様に構成してある。
【0059】
(実施形態7)
次に、摂動素子8,9を給電素子3a,3bにクリップ構造により実装する構造を
図15,
図16に基づいて説明する。
図15(a)〜(d)に示すクリップ構造は、クリップ片10で基板4を挟持して実装する構造である。クリップ片10は誘電体から構成され、舌片10aと支え部10bとを有している。
舌片10aは支え部10bと交差する方向に突き出ており、バネ性を有して板厚方向で基板4を挟むようになっている。
支え部10bは、摂動素子8,9を挿入する両端と底部側が開口された逆コ字型のパイプ形状をなし、舌片10aが基板4を挟持した位置で軸部2と給電素子3bとの間に対応させて仕切10cを備えており、左右から内部に圧入されて仕切10cに当接した状態で摂動素子8,9を支えている。2つの摂動素子8,9は仕切10cにより相互間が電気的に絶縁されている。
一方の摂動素子8は、給電素子3aの長さを超えて軸部2に接合する位置まで支え部10b内に圧入され、他方の摂動素子9は給電素子3bの長さ範囲で支え部10b内に圧入されている。支え部10bの内壁には
図15(b)に示すように内側に突き出た突起10dを有しており、支え部10b内に圧入された摂動素子8,9に突起10dが密着して抜け出るのを阻止している。
また、基板4には
図15(b)に示すように軸部2と給電素子3bとの間に溝4cが設けられ、舌片10aには、溝4cに嵌合する凸片10eが設けられている。
【0060】
図15に示すクリップ片10で摂動素子8,9を給電素子3a,3bに実装するには、
図15(a)(b)に示すように、支え部10b内に左右方向から摂動素子8,9を圧入し、その相互間を仕切10cで絶縁する。
次に、
図15(a)(b)(c)に示すように、舌片10aで軸部2と給電素子3bとの間の位置で基板4を挟持し、舌片10aのバネ性を利用して、支え部10b内の摂動素子8を給電素子3aに、摂動素子9を給電素子3bにそれぞれ圧着させる。
さらに、
図15(d)に示すように、支え部10bの凸片10eを基板4の溝4c内に圧入して、摂動素子8と給電素子3a、摂動素子9と給電素子3bとの位置決めを行う。
【0061】
以上のように、
図15に示すクリップ構造によれば、パイプ形状の支え部10b内に2つの摂動素子8,9を保持し、舌片10aで基板4に挟持して、摂動素子8,9を給電素子8,9にそれぞれ設けるため、ワンタッチ方式で摂動素子8,9を組み付けることができ、組立の生産性を向上させることができる。
さらに、溝4cと凸片10dとの嵌合により、給電素子3a,3bと摂動素子8,9との位置決めがされるため、摂動素子8,9と給電素子3s,3bとの組合せによる多周波広帯域の送受信の性能を維持することができる。
さらには、アンテナでは誘電体をアンテナ素子に重合させると、VSWRの改善に寄与することが知られており、本実施形態では、摂動素子8,9の取付けの際に誘電材の舌片10aが軸部2と給電素子3bとの間に介在することになり、摂動素子8,9の取付けとVSWRの改善とを一挙に行うことができるという利点がある。
【0062】
図16に示すクリップ構造は細径のパイプを用いた構造である。
図16(a)に示すように、摂動素子8,9を給電素子3a,3b側に向けて貫通する孔11を設け、
図16(b)に示すように、貫通孔11に一致させて基板4の板厚方向に貫通する孔12を給電素子3a,3b設けている。
【0063】
図16(a)に示す細径のパイプを用いて摂動素子8,9を給電素子3a,3bに実装するには、
図16(a)(b)に示すように、摂動素子8,9の貫通孔11及び給電素子3a,3bの貫通孔12に渡って細径のパイプ13を貫通させ、その先端を基板4の孔12から裏面4bに突き出し、その突き出たパイプ13をかしめ、そのカシメ力(クリップ力)により摂動素子8,9を給電素子3a,3bに密着させている。
【0064】
図16に示すクリップ構造によれば、摂動素子8,9及び給電素子3a,3bに貫通孔11,12を設けることにあるが、それらの貫通孔11,12がパイプ13で穴埋めされるため、摂動素子8,9と給電素子3s,3bとの機能に影響を与えることを回避することができ、多周波広帯域の送受信の性能を維持することができる。
図16に示すクリップ構造にあっても、パイプ13を貫通孔11,12に圧入させてカシメることにより、摂動素子8,9を給電素子3a,3bに実装することができるという利点を有している。
上述した本実施形態のその他の構成は本実施形態1の構成と同様に構成してある。
【0065】
(実施形態8)
図17(a)(b)は、
図5(a)に示すアンテナ構造におけるVSWRをさらに改善する例を示すものである。
図17(a)に示すように、軸部2から給電素子3aに枝分かれる箇所を拡大(拡大部14)している。同様に
図17(b)に示すように、基板4の裏面4b側の無給電素子5aがグランド板6から立ち上がった箇所を拡大(拡大部15)している。
上述した本実施形態8のその他の構成は本実施形態1の構成と同様に構成してある。
【0066】
図17(a)(b)に示すように、拡大部14,拡大部15を設けることにより、軸部2と給電素子3aとの間、グランド板6と無給電素子5aとの間での電流の流れに変化を与えて、
図17(c)に示すように低周波数帯から高周波数帯までのVSWRの改善と帯域幅の拡大を図ることができるという利点がある。
なお、本実施形態のように2つの拡大部14,15を設けることが最も有効であるが、そのいずれか一方を設けるだけでも実用の範囲での効果を得ることができることを確認している。