特許第6366337号(P6366337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366337
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】LED発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20180723BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20180723BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01L33/62
   H01L33/60
   H01L33/50
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-89301(P2014-89301)
(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公開番号】特開2015-207743(P2015-207743A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】今井 貞人
【審査官】 皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/150882(WO,A1)
【文献】 特開2007−234629(JP,A)
【文献】 特開2013−183148(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0278624(US,A1)
【文献】 特開2012−212823(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0021851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ基板と、
前記アルミ基板上に設けられた接着層、反射層、及び、増反射層と、
前記増反射層上に接着されたLED素子と、
前記接着層、反射層、及び、増反射層が設けられた領域以外の領域で、前記アルミ基板の表面に形成された粗面化領域と、
前記粗面化領域に接着されたプリント配線基板と、
前記プリント配線基板と前記LED素子とを接続するワイヤと、
前記LED素子の周囲に配置されたダム材と、
前記ダム材の内側領域に配置された蛍光体樹脂と、
を有することを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
前記増反射層は、SiO2及びTiO2層を少なくとも1層ずつ含む、請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
接着層、反射層、及び、増反射層が設けられたアルミ基板上にマスクを形成し、
前記マスクが形成された領域以外から前記接着層、反射層、及び、増反射層を除去しつつ、前記アルミ基板の表面に粗面化領域を形成し、
前記粗面化領域にプリント配線基板を接着し、
前記マスクが除去された前記増反射層上にLED素子を接着し、
前記LED素子と前記プリント配線基板とをワイヤで接続し、
前記LED素子の周囲に配置されたダム材の内側に蛍光体樹脂を配置する、
工程を有することを特徴とするLED照明装置の製造方法。
【請求項4】
前記増反射層は、SiO2及びTiO2層を少なくとも1層ずつ含む、請求項3に記載のLED照明装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED発光装置及びその製造方法に関し、特にアルミ基板上にLED素子を実装するLED発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子であるLED素子は、長寿命で優れた駆動特性を有し、さらに小型で発光効率が良く鮮やかな発光色を有することから、照明等に広く利用されるようになってきた。
【0003】
照明用の発光装置では、LED素子からの光を反射効率よく反射させるために、アルミの表面にアルマイト処理または蒸着処理などの鏡面処理を為し、その上にLED素子を実装することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−109701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鏡面処理がなされた表面に、LED素子と接続する配線板及び電極等を接着シート等により接着すると、鏡面処理により形成された層間の密着力が弱く、鏡面処理により形成された層を境にして、配線板等が剥がれ落ちてしまうという問題があった。
【0006】
また、周囲温度の変化によってアルミ基板が熱膨張及び収縮すると、鏡面処理により形成された層間で層間剥離が発生し、同様に、配線板等が剥がれ落ちてしまうという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を解消することを可能としたLED発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、アルミ基板とプリント配線基板との貼り付け強度を改善することが可能なLED発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るLED発光装置は、アルミ基板と、アルミ基板上に設けられた複数の増反射処理層と、複数の増反射処理層上に接着されたLED素子と、アルミ基板上で複数の増反射処理層が設けられた領域以外の領域に接着されたプリント配線基板と、プリント配線基板とLED素子とを接続するワイヤと、LED素子の周囲に配置されたダム材と、ダム材の内側領域に配置された蛍光体樹脂を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るLED発光装置では、プリント配線基板は、アルミ基板上で、複数の増反射処理層が設けられた領域以外に設けられた粗面化領域に接着されることが好ましい。
【0011】
本発明に係るLED発光装置では、複数の増反射処理層は、接着層、反射層、及び、増反射層から構成されることが好ましい。
【0012】
本発明に係るLED発光装置の製造方法は、複数の増反射処理層が設けられたアルミ基板上にマスクを形成し、マスクが形成された領域以外から複数の増反射処理層を除去してアルミ基板上に粗面化領域を形成し、粗面化領域にプリント配線基板を接着し、マスクが除去された複数の増反射処理層上にLED素子を接着し、LED素子と前記プリント配線基板とをワイヤで接続し、LED素子の周囲に配置されたダム材の内側に蛍光体樹脂を配置する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミ基板からプリント配線基板が剥離することがなく、信頼性の高いLED照明装置を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明に係るLED発光装置1の平面図であり、(b)は(a)のAA´断面図である。
図2】LED発光装置1の製造工程を説明するための図(1)である。
図3】LED発光装置1の製造工程を説明するための図(2)である。
図4】他のLED照明装置2の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照して、本発明に係るLED発光装置及びその製造方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0016】
図1(a)は本発明に係るLED発光装置1の平面図であり、図1(b)は図1(a)のAA´断面図である。
【0017】
LED発光装置1は、アルミ基板10、プリント配線基板18、ダム材19、LED素子20、蛍光体樹脂30等から構成されており、端部に設けられたガイド穴40を用いて他の照明器具等に取り付けられる。
【0018】
シリコーン樹脂によって略円形に配置されたダム材19によって仕切られた素子実装領域45には、増反射処理の為に、アルミ基板10上に接着層11、反射層12、及び増反射層13が積層されている。
【0019】
接着層11には、アルマイト層が用いられる。反射層12には、反射率が90%以上のAg蒸着層又はAl蒸着層が用いられる。増反射層13は、SiO2層及びSiO2より屈折率の高いTiO2層を、少なくとも各1層、積層した層である。なお、SiO2層及びTiO2層の代わりに、Al23層及びAl23より屈折率の高いTiO2層を積層しても良い。増反射層13は、反射率を向上させるために設けられている。
【0020】
素子実装領域45には、プリント配線基板18上の電極16−1と電極16−2との間に、12個ずつ直列接続された3グループのLED素子20群が並列に、金ワイヤ22によって接続されている。各LED素子20は、ダイボンド材21によって、増反射処理が施されたアルミ基板10の表面に直接接着されている。プリント配線基板18上に設けられた電極16a及び16b間に所定の電圧が供給されると、LED素子20が発光する。
【0021】
LED素子20の周囲で、ダム材19の内側には、LED素子20を保護するための蛍光体樹脂30が形成されている、蛍光体樹脂30としては、透明性のあるエポキシ樹脂やシリコーン樹脂が用いられる。蛍光体樹脂30には、樹脂と混じった蛍光体が含まれている。蛍光体は、LED素子20から発光された青色光の一部を吸収し、波長変換した黄色光を発光するので、青色光と黄色光が混じり合い、LED照明装置1からは白色光が出射される。なお、蛍光体樹脂30には、LED素子20から発光された光を均一に分散させるための散乱材が含まれていても良い。
【0022】
アルミ基板10上で素子実装領域45の周囲には、増反射処理を施しておらず、アルミ表面を粗面化した粗面化領域46が設けられている。粗面化領域46には、接着シート14によってプリント配線基板18が接着されている。プリント配線基板18は、基台15、電極16−1、16−2等、及び、レジスト17から構成される。
【0023】
複数の層により増反射処理が施された素子実装領域45では、層間の密着力が弱いため、その部分にプリント配線基板18を接着すると、層間剥離によってプリント配線基板18がアルミ基板10から剥がれ落ちる可能性があった。また、周囲温度の変化によってアルミ基板10が熱膨張又は収縮すると、同様に、層間剥離によってプリント配線基板18がアルミ基板10から剥がれ落ちる可能性があった。これに対して、LED発光装置1では、プリント配線基板18が、増反射処理が施された素子実装領域45ではなく、粗面化領域46に接着シート14により接着されているので、アルミ基板10とプリント配線基板18との貼り付け強度を強固にすることが可能となった。また、照明器具へLED照明装置1を組み込む場合等に、LED照明装置1に与えられる熱履歴によって、アルミ基板10からプリント配線基板18が剥離することがなく、信頼性の高いパッケージを形成することが可能となった。
【0024】
図2及び図3は、LED発光装置1の製造工程を説明するための図である。
【0025】
最初に、図2(a)に示す様に、増反射処理を施したアルミ板10´を用意する。増反射処理を施したアルミ板10´として、アノラッド社製 Miro2 0.7tを用いた。増反射処理を施したアルミ板10´は、アルミ基板10上に、アルマイトによる接着層11、Al蒸着膜による反射層12、及び、SiO2層及びTiO2層が(少なくとも各1層)積層された増反射層13が、予め積層された構造を有する。反射層12をAg蒸着膜とした方が反射率は向上するが、腐食しやすくなるため、ここではAl蒸着膜を用いた。
【0026】
次に、図2(b)に示す様に、ドリルマシンで、所定のガイド穴40をアルミ板10´に設ける。
【0027】
次に、図2(c)に示す様に、ラミネータで、感光性ドライフィルム50をアルミ板10´の表面に張り付ける。感光性ドライフィルム50として、日立化成社製 アルカリ現像型ドライフィルム フォテック(登録商標)H−7025を用いた。
【0028】
次に、図2(d)に示す様に、素子実装領域45をマスクするネガフィルム51を真空引きして感光性ドライフィルム50上に張り合わせ、紫外線Bによって露光し、素子実装領域45をマスクする感光性ドライフィルム50のみを硬化させる。次に、図2(e)に示す様に、現像液により露光済の感光性ドライフィルム50を現像し、素子実装領域45上にマスキング50´を形成する。現像液として、1%のアルカリ水溶液を用いた。
【0029】
図2(d)及び(e)に示す工程では、感光性ドライフィルム50を現像するというウエット処理によりマスキング50´を形成した。しかしながら、ストリッパソルダーレジスト(ピールコート)のようなゴム系のインクをスクリーン印刷によって素子実装領域45に塗布し、その後、熱硬化させてマスキング50´を形成しても良い。
【0030】
次に、図3(a)に示す様に、サンドブラストにより、粒子Cを高圧で吹き付け、マスキング50´が形成された箇所以外の領域における接着層11、反射層12及び増反射層13を除去し、アルミ基板10の表面を粗面化して、粗面化領域46を形成する。図3(a)に示す工程では、サンドブラストの代わりに、氷を使用したアイスブラストを用いることもできる。アイスブラストを利用すると、サンドブラストに比べて残渣が残り難く、より好ましい。
【0031】
図3(a)に示す工程では、サンドブラスト(又はアイスブラスト)といった物理的な方法によって粗面化領域46を形成したが、硫酸又は塩酸系のエッチング液を利用して化学的に粗面化領域46を形成しても良い。なお、化学的に粗面化領域46を形成する場合には、アルミ板10´の両面に感光性ドライフィルム50を貼り付けることが望ましい。さらに、物理的な方法に代わって、プラズマ処理により、電気的に粗面化領域46を形成することも可能である。
【0032】
次に、図3(b)に示す様に、マスキング50´をアルカリ水溶液で剥離除去する。
【0033】
次に、図3(c)に示す様に、接着シート14を仮貼りしたプリント配線基板18と、アルミ基板10とを位置合わせして、粗面化領域46に、所定の温度及び圧力下で張り合わせる。なお、張り合わせ前のプリント配線基板18は、基台15、電極16−1、16−2等及びレジスト17から構成され、アルミ板10´と同様の位置に同様の大きさのガイド穴が形成されている。次に、LED素子20を、ダイボンド材21を用いて、素子実装領域45上に接着する。次に、金ワイヤ22で、各LED素子20間及びLED素子20と電極16−1、16−2とを接続する。
【0034】
次に、図3(d)に示す様に、シリコーン樹脂を、ディスペンサによって、素子実装領域45の周囲に略円形に配置し、硬化させてダム材19を形成する。ダム材19の高さは、100μm〜600μmが好ましい。次に、蛍光体樹脂30を、ディスペンサによって、ダム材19の内部に配置し、硬化させて、LED照明装置1を完成させる。なお、蛍光体樹脂30の上から、透明シリコーン樹脂でモールドするようにしても良い。
【0035】
図4は、他のLED照明装置2の製造方法を説明するための図である。
【0036】
最初に、図4(a)に示す様に、増反射処理を施していないアルミ基板10を用意する。増反射処理を施していないアルミ基板10として、住友軽金属社製 汎用アルミ合金 55052−0 1.2tを用いた。
【0037】
次に、図4(b)に示す様に、ドリルマシンで、所定のガイド穴40をアルミ基板10に設ける。
【0038】
次に、図4(c)に示す様に、素子実装領域45に相当する領域にのみ、アルマイトによる接着層61、Ag蒸着膜による反射層62、及び、SiO2層及びTiO2層が(少なくとも各1層)積層された増反射層63を成膜する。
【0039】
次に、図4(d)に示す様に、接着シート14を仮貼りしたプリント配線基板18と、アルミ基板10とを位置合わせして、接着層61、反射層62及び増反射層63が成膜されていない領域に、所定の温度及び圧力下で張り合わせる。なお、張り合わせ前のプリント配線基板18は、基台15、電極16−1、16−2等及びレジスト17から構成され、アルミ板10´と同様の位置に同様の大きさのガイド穴が形成されている。次に、LED素子20を、ダイボンド材21を用いて、素子実装領域45上に接着する。次に、金ワイヤ22で、各LED素子20間及びLED素子20と電極16−1、16−2とを接続する。
【0040】
次に、シリコーン樹脂を、ディスペンサによって、素子実装領域45の周囲に略円形に配置し、硬化させてダム材19を形成する。ダム材19の高さは、100μm〜600μmが好ましい。次に、蛍光体樹脂30を、ディスペンサによって、ダム材19の内部に配置し、硬化させて、LED照明装置2が完成する。なお、蛍光体樹脂30の上から、透明シリコーン樹脂でモールドするようにしても良い。
【0041】
図1図3に示したLED照明装置1と、図4(d)に示したLED照明装置2との差異は、LED照明装置1が粗面化領域46を有しているのに対して、LED照明装置2では粗面化領域46は存在せず当初のアルミ基板10の表面を有している点のみである。
【0042】
LED照明装置2においても、プリント配線基板18が、増反射処理が施された素子実装領域45ではなく、アルミ基板10の表面に接着シート14により接着されているので、アルミ基板10とプリント配線基板18との貼り付け強度を強固にすることが可能となった。また、照明器具へLED照明装置2を組み込む場合等にLED照明装置2に与えられる熱履歴によって、アルミ基板10からプリント配線基板18が剥離することがなく、信頼性の高いパッケージを形成することが可能となった。
【符号の説明】
【0043】
1、2 LED照明装置
10 アルミ基板
11、61 接着層
12、62 反射層
13、63 増反射層
14 接着シート
18 プリント配線基板
19 ダム材
20 LED素子
30 蛍光樹脂
40 ガイド穴
45 素子実装領域
46 粗面化領域
図1
図2
図3
図4