特許第6366348号(P6366348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366348
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】成形型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   B29C33/38
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-97793(P2014-97793)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-214070(P2015-214070A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】東 大助
(72)【発明者】
【氏名】岸本 智子
(72)【発明者】
【氏名】野口 欣紀
(72)【発明者】
【氏名】白井 健士郎
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−187678(JP,A)
【文献】 特開2011−079261(JP,A)
【文献】 特開2005−194165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を成形する際に使用される成形型であって、
鉄系の材料から構成される金属基材と、
前記金属基材上に設けられ、酸化イットリウム、窒素および4A族元素のカチオンを含み、前記成形品と接触するセラミックス層と
前記金属基材と前記セラミックス層との間に介在する接着層とを備え、
前記接着層は、硬度の低い前記金属基材側から硬度の高い前記セラミックス層側に向けて高硬度となるように硬度が変化するものであり、
前記接着層の厚み方向において前記金属基材に近づくにつれて窒素濃度が低減され、
前記セラミックス層の表面が前記成形品と接触する、成形型。
【請求項2】
成形品を成形する際に使用される成形型であって、
鉄系の材料から構成される金属基材と、
酸化イットリウム、窒素および4A族元素のカチオンを含み、前記成形品と接触するセラミックス層と、
前記金属基材と前記セラミックス層との間に介在する中間層とを備え
前記中間層は、硬度の低い前記金属基材側から硬度の高い前記セラミックス層側に向けて高硬度となるように硬度が変化するものであり、
前記中間層の厚み方向において前記金属基材に近づくにつれて窒素濃度が低減され、
前記セラミックス層の表面が前記成形品と接触する、成形型。
【請求項3】
前記金属基材と前記中間層との間に介在する接着層をさらに備えた、請求項2に記載の成形型。
【請求項4】
前記中間層と前記セラミックス層との間に介在する接着層をさらに備えた、請求項2に記載の成形型。
【請求項5】
前記中間層が単層で形成されている、請求項2に記載の成形型。
【請求項6】
前記中間層が複数層で形成されている、請求項2に記載の成形型。
【請求項7】
前記中間層が複数層で形成され、前記複数の中間層における少なくとも2つの中間層の間に接着層を介在させた、請求項2に記載の成形型。
【請求項8】
前記接着層が単層で形成されている、請求項1、請求項3、請求項4、および請求項7のいずれか1項に記載の成形型。
【請求項9】
前記接着層が複数層で形成されている、請求項1、請求項3、請求項4、および請求項7のいずれか1項に記載の成形型。
【請求項10】
前記中間層は、前記金属基材よりも硬度が高く、かつ、前記セラミックス層よりも靱性が高い部分を有する、請求項2に記載の成形型。
【請求項11】
前記中間層は、M−A系(Mは、チタン、クロム、ニッケル、ジルコニウム、アルミニウム、またはシリコンであり、Aは、窒素、炭素、または酸素である。)の窒化物、炭化物、酸化物からなる部分を含む、請求項2に記載の成形型。
【請求項12】
前記接着層は、チタン、クロム、ニッケル、ジルコニウム、イットリウム、アルミニウム、シリコンの金属単体やそれらの混合物、または、前記金属単体の酸化物もしくは前記金属単体を複数含む酸化物からなる部分を含む、請求項1、請求項3、請求項4、請求項7〜9のいずれか1項に記載の成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品を成形する際に使用される成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2011−79261号公報)には、セラミックスからなる基材(5)の表面(8)に離型層(4)が形成された成形型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−79261号公報
【特許文献2】特開2010−185095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の離型層(4)は、離型性および防汚性に優れるとされている。他方、特許文献1では、セラミックスからなる基材を用いているが、このようにした場合、基材の機械加工が難しい、基材の取り扱いが難しい(割れや欠けが生じやすい)という問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、離型性および防汚性に優れ、かつ、割れや欠けが生じにくい成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る成形型は、成形品を成形する際に使用される成形型である。
本発明の1つの局面において、成形型は、鉄系の材料から構成される金属基材と、金属基材上に設けられ、酸化イットリウム、窒素および4A族元素のカチオンを含み、成形品と接触するセラミックス層と、金属基材とセラミックス層との間に介在する接着層とを備え、接着層は、硬度の低い金属基材側から硬度の高いセラミックス層側に向けて高硬度となるように硬度が変化するものであり、接着層の厚み方向において金属基材に近づくにつれて窒素濃度が低減され、セラミックス層の表面が成形品と接触する。接着層は単層で形成されてもよいし、複数層で形成されてもよい。なお、ここでいう「変化」とは、連続的な変化および段階的な変化ならびに連続的、段階的の組み合わせをいずれも含む。
【0008】
本発明の他の局面において、成形型は、鉄系の材料から構成される金属基材と、酸化イットリウム、窒素および4A族元素のカチオンを含み、成形品と接触するセラミックス層と、基材とセラミックス層との間に介在する中間層とを備え、中間層は、硬度の低い金属基材側から硬度の高いセラミックス層側に向けて高硬度となるように硬度が変化するものであり、中間層の厚み方向において金属基材に近づくにつれて窒素濃度が低減され、セラミックス層の表面が成形品と接触する。中間層は単層で形成されてもよいし、複数層で形成されてもよい。
【0009】
1つの実施態様において、成形型は、金属基材と中間層との間に介在する接着層をさらに備える。
【0010】
1つの実施態様において、成形型は、中間層とセラミックス層との間に介在する接着層をさらに備える。
【0011】
1つの実施態様において、中間層が複数層で形成され、複数の中間層における少なくとも2つの中間層の間に接着層を介在させる。
【0012】
1つの実施態様において、中間層は、金属基材よりも硬度が高く、かつ、セラミックス層よりも靱性が高い部分を有する。
【0016】
1つの実施態様において、中間層は、M−A系(Mは、チタン、クロム、ニッケル、ジルコニウム、アルミニウム、またはシリコンであり、Aは、窒素、炭素、または酸素である。)の窒化物、炭化物、酸化物からなる部分を含む。
【0017】
1つの実施態様において、接着層は、チタン、クロム、ニッケル、ジルコニウム、イットリウム、アルミニウム、シリコンの金属単体やそれらの混合物、または、金属単体の酸化物もしくは金属単体を複数含む酸化物からなる部分を含む。
【0018】
なお、本願明細書において「硬度」とは、株式会社島津製作所製の「ダイナミック微小硬度計」(型番:DUH-211S)を用い、測定条件は、「圧子:三角錐圧子(ベルコビッチタイプ、陵間角115°)、表面からの押込み深さ:0.1μm、負荷速度:設定値80(0.8758mN/sec)、負荷保持時間:15sec」として測定したものを意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、離型性および防汚性に優れ、かつ、割れや欠けが生じにくい成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の1つの実施の形態に係る成形型の断面を示す図である。
図2】本発明の他の実施の形態に係る成形型の断面を示す図である。
図3】中間層の構造の一例をより詳細に示す断面図である。
図4】中間層の構造の他の例をより詳細に示す断面図である。
図5】中間層の構造の他の例をより詳細に示す断面図である。
図6】本発明の1つの実施例に係る成形型と比較例に係る成形型とについて離型性を評価した実験結果を示す図である。
図7】本発明の1つの実施例に係る成形型を用いて所定回数の成形動作を行なった後の当該成形型の底面を示す写真である。
図8】比較例に係る成形型を用いて所定回数の成形動作を行なった後の当該成形型の底面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0022】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0023】
まず、本発明の実施の形態を概略的に説明する。
本発明の実施の一つの形態は、成形品を成形する際に使用される成形型であって、金属製の基材と、上記基材上に設けられ、酸化イットリウム、窒素および4A族元素のカチオンを含み、上記成形品と接触するセラミックス層とを備えた成形型である。上記基材と上記セラミック層との間には接着層を設けてもよい。
【0024】
また、本発明の一つの形態は、成形品を成形する際に使用される成形型であって、金属製の基材と、酸化イットリウム、窒素および4A族元素のカチオンを含み、上記成形品と接触するセラミックス層とを備え、上記基材と上記セラミックス層との間に介在する中間層をさらに備えた成形型である。また、上記基材と中間層との間に接着層を介在させてもよい。さらに、上記中間層と上記セラミックス層との間に接着層を介在させてもよい。
【0025】
なお、上記中間層を複数層で形成した場合、上記複数の中間層における少なくとも二つの中間層の間に接着層を介在させてもよい。
【0026】
更に、上記接着層を単層あるいは複数層で形成してもよい。
また、上記成形型において、上記中間層は、上記基材よりも硬度が高く、かつ、上記セラミックス層よりも靱性が高い部分を有する。また、上記中間層は、少なくとも上記セラミックス層側の表面部分において上記基材よりも硬度が高い。
【0027】
また、上記成形型において、上記中間層に緩衝層を含むことができ、例えば、上記緩衝層は、上記基材側から上記セラミックス層側に向けて高硬度となるように硬度が変化するように構成されている。
【0028】
また、上記成形型において、上記中間層に接着層を含む構成とすることができる。
また、緩衝層を複数層、設けることができ、少なくとも二つの緩衝層の間に、単層あるいは複数層の接着層を介在させることができる。
【0029】
なお、上記接着層が緩衝層の機能を示す場合がある。
また、例えば、中間層(緩衝層)とセラミックス層とを単層の接着層で接合しがたい場合がある。この場合、中間層(緩衝層)とセラミックス層とを多層の接着層(例えば三層の場合、セラミックス層側から第1接着層、第2接着層、第3接着層とする)を介在させて段階的に接合してもよい(図5参照)。
【0030】
即ち、セラミックス層と接する第1接着層をセラミックス層と接着しやすい物質で構成
し、かつ、中間層(緩衝層)と接する別の接着層(上記第3接着層に相当する)を中間層(緩衝層)と接着しやすい物質で形成することができる。すなわち接着層を必要に応じ多層構造とすることができる。
【0031】
なお、上記多層の接着層を三層とした場合、上記第1接着層と上記第3接着層とを上記第1および第3接着層と接着しやすい物質で形成される第2接着層で接合することができる。
【0032】
また、総じて言えば、上記中間層は実質的に緩衝層であり、上記中間層(緩衝層)は他の層と接着層を介して接合することができる(中間層に対する接着層の外的付加)。
【0033】
また、図例に示すように、上記中間層は緩衝層と接着層とから構成することができ、上記中間層は上記接着層を含む中間層となっている(中間層における接着層の内的付加)。
【0034】
従って、本発明に係る中間層は、実質的な中間層となる緩衝層に対して、接着層を外的にあるいは内的に付加することができるものである。
【0035】
なお、本発明に係る中間層は緩衝層のみであってもよいし、接着層のみであってもよい。
【0036】
また、緩衝層が接着作用を有する場合もあり、接着層が緩衝作用を有する場合もある。
また、前述した中間層(緩衝層あるいは接着層)による緩衝作用について言及する。上記セラミックス層は薄層であり上記金属製の基材に対して硬さが硬く靱性が低いものである。この両者の硬さの差及び靱性の差を緩衝する層として中間層が設けられることになる。
【0037】
以下、図面を用いてより具体的に説明する。
図1は、本実施の形態に係る成形型の断面を示す図である。本実施の形態に係る成形型は、樹脂成形品などを成形する際に使用されるものであって、図1に示すように、金属基材10と、金属基材10上に設けられ、成形品と接触するセラミックス層20とを備える。
【0038】
金属基材10は、鉄系の材料(たとえば、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、合金工具鋼、高速度鋼、プリハードン鋼など)から構成されてもよいし、非鉄系の材料(銅系、アルミニウム系、超硬合金系など)から構成されてもよい。これにより、加工性に優れるとともに、割れや欠けが生じにくい金属基材10とすることができる。
【0039】
セラミックス層20は、酸化イットリウム、窒素および4A族元素のカチオンを含む。これにより、離型性および防汚性に優れた成形型が提供される。金属基材10とセラミックス層20とは、図示しない接着層を介して接合してもよい。
【0040】
金属基材10は、切削加工や放電加工など、従来の金属加工法で形成可能である。セラミックス層は、たとえば、スパッタリングやイオンプレーティングなどの物理的蒸着法(PVD)により形成可能である。
【0041】
図1の例において、セラミックス層20の厚みは、0.1μm〜5μm程度である。金属基材10とセラミックス層20との間の接着層の厚みは、0.01μm〜1μm程度である。
【0042】
図2は、他の実施の形態に係る成形型の断面を示す図である。図2に示す実施の形態において、成形型は、基材10とセラミックス層20との間に介在する中間層30をさらに備える。中間層30は、金属基材10よりも硬度が高く、かつ、セラミックス層20よりも靱性が高い部分を有する。これにより、セラミックス層20が割れたり金属基材10から剥離したりすることを抑制できる。
【0043】
図2の例において、中間層30の厚みは、0.2μm〜5μm程度である。セラミックス層20の厚みは、図1の例と同様、0.1μm〜5μm程度である。
【0044】
次に、図3ないし図5を用いて、中間層30の構造をより詳細に説明する。図3の例において、中間層30は、緩衝層31A,31Bと接着層32A,32Bとを有し、図4の例において、中間層30は、緩衝層31と接着層32A,32Bとを有し、図5の例において、中間層30は、緩衝層31A,31Bと接着層32A〜32Dとを有する。
【0045】
すなわち、緩衝層は、図3図5に示すように複数層からなるものであってもよいし、図4に示すように単層からなるものであってもよい。接着層も、図3図4に示すように、緩衝層の両側において単層からなるものであってもよいし、図5に示すように、緩衝層の一方側において複数層、他方側において単層からなるものであってもよいし、さらに、緩衝層の両側において複数層からなるものであってもよい。
【0046】
なお、図5の中間層30において、実質的に中間層となる緩衝層31A,31Bとの間に単層あるいは複数層からなる接着層を設けてもよい。また、上記緩衝層(実質的な中間層)に他の層との接着層を設けた場合、上記中間層は接着層を含むものとなる。
【0047】
また、図4において、緩衝層31と金属基材10とを直接的に接合することができる。さらに、図4において、緩衝層31とセラミックス層20とを直接的に接合することができる。
【0048】
緩衝層および接着層ともに、たとえば、スパッタリングやイオンプレーティングなどの物理的蒸着法(PVD)により形成可能である。
【0049】
緩衝層は、硬度の低い金属基材10側から硬度の高いセラミックス層20側に向けて高硬度となるように硬度が変化するものであることが好ましい。たとえば、図3図5のように積層構造の緩衝層31A,31Bの場合は、金属基材10側の緩衝層31Aの硬度をセラミックス層20側の緩衝層31Bの硬度よりも低くすることにより、硬度を段階的に変化させることができる。また、図4のように単層構造緩衝層31の場合は、緩衝層の厚み方向に組成を変化させる(たとえば金属基材10に近づくにつれて窒素濃度を低減する)ことにより、硬度を連続的に変化させることができる。
【0050】
緩衝層は、たとえば、M−A系(Mは、チタン、クロム、ニッケル、ジルコニウム、アルミニウム、またはシリコンであり、Aは、窒素、炭素、または酸素である。)の窒化物、炭化物、酸化物からなる。
【0051】
接着層は、たとえば、チタン、クロム、ニッケル、ジルコニウム、イットリウム、アルミニウム、シリコンの金属単体やそれらの混合物、または、上記金属単体の酸化物もしくは上記金属を複数含む酸化物からなる。
【0052】
緩衝層を構成する素材および接着層を構成する素材は、適宜選択して組み合わせることが可能である。なお、緩衝層の厚み(合計)は、0.2μm〜5μm程度である。
【0053】
次に、図6を用いて、本発明の実施例による離型性の向上について説明する。図6は、本発明の1つの実施例に係る成形型と比較例に係る成形型(金属基材に硬質クロムめっきを施したもの)とについて所定回数の成形動作を行ない、その都度、離型力を測定することによって離型性を評価した実験結果を示すものである。
【0054】
図6を参照して、本発明の実施例に係る成形型によれば、比較例に係る成形型と比較して、離型力が低減されており、セラミックス層20によって、離型性に優れた成形型とされていることがわかる。
【0055】
次に、図7図8を用いて、本発明の実施例による防汚性の向上について説明する。図7図8は、各々、本発明の実施例に係る成形型、および、比較例に係る成形型を用いて所定回数(図7:1000回、図8:300回)の成形動作を行なった後の当該成形型の底面を示す写真である。
【0056】
図7図8を参照して、本発明の実施例に係る成形型(図7)においては、1000回の成形動作を行なった後も、目立った汚れは認められないのに対し、比較例に係る成形型(図8)においては、300回の成形動作の後、A部において樹脂の固着が認められる他、B部においてフラッシュの堆積が認められる。さらに、キャビティ底面全体において変色が認められる。以上の結果から、セラミックス層20によって、防汚性に優れた成形型とされていることがわかる。
【0057】
このように、本実施の形態に係る成形型によれば、セラミックス層20を用いることによって離型性および防汚性に優れた成形型にするとともに、金属基材10を用いることによって、成形型の割れや欠けを抑制できる。さらに、中間層30によって、金属基材10とセラミックス層20との接合構造を改善し、セラミックス層20の割れや金属基材10からの剥離を抑制することができる。
【0058】
なお、上記成形型は、例えば、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形に用いることができる。
【0059】
トランスファー成形(ないしは圧縮成形)の場合、樹脂材料を用いて、基板に装着した半導体チップをセラミックス層が設けられたキャビティ内で当該キャビティの形状に対応したパッケージ(成形品)内に封止成形(ないしは圧縮成形)することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10 金属基材、20 セラミックス層、30 中間層、31,31A,31B 緩衝層、32A,32B,32C,32D 接着層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8