(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アノード電極を有するアノード室とカソード電極を有するカソード室を有する電解槽を用いて原料水を電気分解して水素分子が溶存した水素分子溶存水を製造する方法であって、アノード室とカソード室がフッ素系カチオン交換膜からなる隔膜で区切られ、アノード電極を複数の貫通孔を設けた板状電極とし、該アノード電極を隔膜に密着させ、アノ−ド電極面積より大きい面積を有するカソード電極に、カソード室の圧力を水頭圧5cm以上とし、電導度が250μS/cm以下の処理原料水を通水して電気分解することを含み、
カソード電極と隔膜の間に陰イオン交換樹脂が充填されている、pH9.5以下でかつ溶存水素分子濃度1.0ppm以上の水素分子溶存水の製造方法。
アノード室とカソード室の間にフッ素系カチオン交換膜からなる隔膜で仕切られた中間室を設け、該中間室に酸性物質を添加することを特徴とする請求項1に記載の水素分子溶存水の製造方法。
原料水を電気分解するためのアノード電極を有するアノード室とカソード電極を有するカソード室を有する電解槽であって、アノード室とカソード室がフッ素系カチオン交換膜からなる隔膜で仕切られ、複数の貫通孔を設けた板状のアノード電極を隔膜に密着させ、カソード電極の面積をアノード電極の面積より大きくし、カソード電極と隔膜の間に陰イオン交換樹脂が充填されており、カソード室の圧力を高める手段を設けたことを特徴とする溶存水素濃度が1.0ppm以上の水素分子溶存水の製造装置。
アノ−ド室に原料水を供給せず、金属繊維集合体カソード電極を組み込んだカソード室にのみ原料水を供給することからなる請求項1に記載の水素分子溶存水素水の製造方法。
【背景技術】
【0002】
人体は酸素分子(O
2)を取り込み、ミトコンドリアで食物由来の還元性物質により水にまで還元し、その際発生するエネルギーを利用している。この過程において、一部の酸素分子は活性酸素(O
2-)に変換される。活性酸素は不安定物質で、この物質を出発物質としてヒドロキシルラジカル(OH・)が生成され人体のDNAから電子を奪い安定化する傾向がある。ヒドロキシラジカルはDNAを損傷し、動脈硬化を引きおこしたり、癌の発生に関与し、生活習慣病の一大要因ともなっている。
【0003】
最近、水素分子が人体の活性酸素を低減することが日本医科大学老人研究所の太田成男教授から非特許文献1に報告されている。同大学の研究チームは、試験管で培養したラットの神経細胞で実験を行い、水素濃度1.2ppmの溶液が活性酸素を還元し無毒化することを確認した。水素は細胞の核の内部にも簡単に入り込むため、遺伝子を活性酸素の攻撃から守ることも期待できるという。
【0004】
従って、水素分子溶存水を効率的に安全でかつ低コストで生成する技術が着目されている。水素分子溶存水の生成方法は以下の二つに大別される。
【0005】
(1)高圧下で水素ガスを水に溶解させる方法
(2)電解槽を用いてカソード電解により直接水の中に水素分子を生成する方法
【0006】
(1)の水素ガス溶解方法は方法としては容易であるが、危険物用の圧力容器が必要となり、簡便でなく、高コストとなる。更に、水素ガスは危険物であるため、水素ガスボンベを家庭で使用することは困難である。
【0007】
家庭用に安価に水素分子溶存水を生成する装置として(2)の電解法を用いることが有望である。家庭向け電解装置としては、従来よりアルカリイオン水生成器が一般的である。アルカリイオン水生成器は本来胃酸過多症に対処するために水道水等を電解してpHが7〜8.5の弱アルカリ水を生成することを目的としている。
【0008】
家庭用に安価に水素分子溶存水を生成する装置として(2)の電解法を用いることが有望である。家庭向け電解装置としては、従来よりアルカリイオン水生成器が一般的である。アルカリイオン水生成器は本来胃酸過多症に対処するために水道水等を電解してpHが7〜8.5の弱アルカリ水を生成することを目的としている。この種の装置には、
図1に示すように、隔膜8でアノード極9を有するアノード室10とカソード極7を有するカソード室4の二室に分けた2室型電解装置が組み込まれている。処理しようとする水は、アノード室入口11とカソード室入り口5から供給され、アノード極9およびカソード極7で電解され、電解水はアノード室出口12とカソード室出口6から排出される。この場合、隔膜5と電極(アノード極4、カソード極9)が離れているので、通電するためには電解槽に供給する水に電解質が含まれることが必須である。しかし、水道水にはナトリウム等のアルカリ金属イオン、塩素等の陰イオンが100〜200ppm溶解しており、ナトリウムと塩素が溶解した水道水の場合以下の反応が考えられる。
【0009】
アノード電極における反応
2Cl
- - 2e
- → Cl
2 (1)
2H
2O - 4e
- → O
2 + 4H
+ (2)
カソード 電極における反応
2Na
+ + 2e
- → 2Na (3)
2Na + 2H
2O → 2Na
+ + H
2 + 2OH
- (4)
2H
2O + 2e
- → H
2 + 2OH
- (5)
【0010】
上記の反応式からわかるように、カソード室6から排出されるカソード電解水には水素分子が溶解したアルカリ水が得られる。生成した電解水を飲用とするには水道法上pHに制限があり、pH8.5以下にすることが要求される。
【0011】
図1に示した2室型電解槽を用いた場合、強電解するとpHが8.5以上になる可能性が高くなり、飲用に適さないカソード電解水が生成されることになる。また、pHを下げようとして、例えば電解電流0.05A/cm
2以下に低下させると、当然水素分子濃度が低下するので水素分子の効果が期待できなくなる。このように
図1に示した従来の2室型電解槽は飲料水用の溶存水素飲料水の製造装置としては適さず、アルカリイオン整水器の範疇に分類されることになる。アルカリ性機能水生成器の基準として、一般的にpH9から10の範囲が設定されている。現在販売されているアルカリイオン整水器において、溶存水素分子濃度を0.8ppm以上にする場合、強電解が必要で、そのときpHは10を超える。pH10以上のアルカリ水を摂取すると、血液のpHがアルカリ側にシフトすることが知られている。この結果、アルカリイオン整水器の場合、強電解は好ましくない。このことは電解槽および電解方法を改良することが必要であることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
溶存水素分子濃度をあげるために、カソード電極における電流密度を低減可能とするために、アノ−ド電極に比較しカソード電極面積を大きくすることが必要である。
【0021】
前述したように溶存水素分子濃度をあげるためには、基本的に電解電流をあげることが必要であることは明らかである。しかし、カソード電解の原料水中にCa, Mg等が溶解し、更に電解電流を上げると、カソード電解水のpHがアルカリ性となる。pH>10のアルカリ性となると、飲料に不適となる。このようにpHがアルカリ性になることを防止する為に、原料水からNa,Ca, Mg イオン等を除外することにより、電解電流を上げてもカソード電解水のpHを10以下にすることが必要である。Na,Ca,Mgイオン等を除外して伝導度250μS/cm以下とする方法は、以下の二つの方法に大別される。
【0023】
一般に溶存水素濃度向上を目的とした電解槽は
図1に示す様に隔膜の両側にアノ−ド極とカソードを極を配置した電解槽が用いられる。前述のアルカリ水を生成する場合、
図1に示す電解槽が多くの場合用いられる。この場合、電解電圧を低減し、電解効率を向上させる為に、電導度が100μS/cm以下が望ましい。一般的に原料水として水道水を利用した場合、電導度に寄与するNa,Ca,Mgイオン等が溶解している。これらのプラスイオン等は、電解と共に、カソード室に移行し、カソード電解水のpHをアルカリ性に換える。
【0024】
電解によるカソード電解水のpHをなるべくアルカリ性に移行することを防止する為には、原料水からプラスイオン等のイオン性不純物を除去することが必要となる。その場合、不純物の除去に伴い、電解電圧が向上するので、電解効率が大幅に低減する。電導度が100μS/cm以下の純度の原料水を電解する為には、隔膜として
図2のフッ素系カチオン交換膜を活用した。
図2に示すような構造の隔膜の両側に
図4に示す多孔性カソード極及びアノ−ド極を密着させた
図3に示すような電解槽 が望ましい。カチオン交換膜の特徴は、下記の資料に詳しい。基本メカニズムは、ポリオレフィン又は塩化ビニールをベース樹脂にイオン効果基−SO
3Hを結合させた場合、H
+イオンの解離程度が小さいのでイオン交換膜内の電導度が小さく、電解電圧が大きくなる。しかし、フッ素系カチオン交換膜内に結合した−SO
3H基のH
+イオンは解離し易く、20ボルト以下に電解電圧が低減する。更に、アノ−ド室に供給される原料水中のプラスイオン濃度が低減されているので、電解後においてもカソード電解水のpHが強アルカリ性となりにくい。
【0026】
原料水をフィルター処理することが必要である。具体的には、イオン交換樹脂塔または逆浸透膜フィルターを使用することが適している。フィルター処理時間を延ばすためには逆浸透膜フィルターの方が望ましい。
【0027】
電解により生成された水素分子気泡の状況を図に示す
図5(a)、(b)に示すような気泡は半径 rが小さいほど内圧 Pが高く,また式(7)に示すヘンリーの法則より圧力に比例して気体は溶解するため,小さな気泡ほど気液界面の溶解気体の濃度は高いと考えられる。ここで γ:表面張力, C
S:気体の溶解濃度,P
0:気体外部の圧力,κ:ヘンリー定数を示す。
【0028】
(6) ΔP=P−P
0 =2γ/r
P= P
0 + 2γ/r
(7) C
S =κP
【0029】
(6)式に基づき電解槽カソード室内部の圧力、ここでは水素分子気体外部の圧力P
0が大きくなると、式(7)から分かるように溶存水素分子濃度は大きくなる。
【0030】
次の問題点は本発明の目的である溶存水素分子濃度を高めるカソード電極構造に関して説明する。まず、溶存水素分子濃度の定義を考えることが必要である。本発明では、摂取して、人体に吸収される形態の水素分子を対象にしている。人体に吸収されるためには、少なくとも細胞膜を通過することが必要となる。東亜ディーケーケー株式会社製のポータブル溶存水素計は隔膜型ポーラログラム電極を採用している。即ち、高分子フィルムからなる隔膜を通過した溶存水素分子のみをポーラログラム電極法で測定している。このように水素分子気泡が高分子フィルムを通過する為には、気泡径が1μm以下になることが必要である。本発明では、ポータブル溶存水素計で測定可能な水素分子気泡を溶存水素分子と定義する。更に溶存水素分子濃度を簡易に測定するために株式会社ミズより販売されているメチレンブルー水溶液に白金コロイド溶液を利用した。
【0031】
図5(a)に示す様に、電解時におけるカソード極表面の状況を説明する。電極表面の拡散層内で、まず1μm以下の微細なバブルが生成される。このような小さなバブルが電極表面から離れるに従い合体して大きなバブルとなる。
【0032】
カソード極表面の拡散層内31では極微小の水素分子気泡30が生成され、拡散層から離れるにつれて、気泡は合体を繰り返して気泡サイズ32が大きくなる。この結果、溶存水素分子濃度が低下する。
【0033】
微細バブルの数密度が高くなるに従い、合体の可能性が大きくなる。即ち、電流密度を高めると、微細バブルの数密度が大きくなり、バブル合体の確率が大きくなる。このことは電流密度を上げると、溶存水素分子濃度が下がる可能性が高まることを意味する。この現象は実施例1において具体的に示す。
図10に電極面積(すなわち電流密度)と溶存水素分子濃度の関係を示す。カソード電極面積を大きくし、電流密度密度を下げると、溶存水素分子濃度が増加することが分かる。
【0034】
一般的には複数の貫通孔を設けた板状の電極(以下、「板状多孔性電極」と称する)の代表的な例として
図4に示す。この様に電極板に適当な孔をあけた電極を使用することが一般的であるアノ−ド電極として
図4に示す多孔性板状電極を用いた。この電極はチタン製多孔性電極に白金メッキを施されている。
【0035】
アノ−ド電極の寿命が長いことが要求される場合は、白金メッシュを用いる。例えば80メッシュの白金電極をアノ−ド電極として使用する。
【0036】
図3に示す高純度原料水電解に適した電解槽には
図4の電極を組み込む。この場合、カソード電極表面におけるカソード反応を模式的に
図6に示す。この図に示す様にカソード電極背面で溶存水素分子バブルが生成される。これらの微少な水素分子バブルが合体して多くなって電極表面に出て、カソード電解水に供給される。
【0037】
この場合、溶存水素分子濃度をあげることが困難な状況である。そこで、板状多孔性電極以外の、通水性の電極を検討することとした。
【0038】
板状多孔性電極以外の通水性電極を大別すると、
(1)金属繊維の集合体
(2) 特許第1946382号のような連通性多孔質金属
(3)金属繊維集合体の焼結体
(4)粒状金属集合体
等が挙げられる。基本的に電極内部に通水機能を有することが必要である。この構造にすることにより電極外形寸法に比較して、実質の表面積は広くなり、同じ電解電流を適用しても、電流密度が小さくなる特徴がある。
【0039】
金属繊維集合体をカソード電極として用いる場合、金属繊維集合体を板状カソード電極に密着させ、この板状カソード電極に電気を供給すればよい。
【0040】
そこで、板状多孔性電極ではなく、繊維状の電極を検討することとした。
図7に模式的に金属繊維集合体状のカソード電極を組み込んだ電解槽を示す。隔膜であるフッ素系カチオン交換膜8のアノ−ド室10側に多孔性アノ−ド電極9を密着させる。一方カソード室4にはまず板状カソード電極7を設ける。板状カソード電極7と隔膜8の間に金属繊維集合体を用いた通水性(多孔性)カソード電極を設ける。この様に、繊維集合体状電極を用いると、繊維のなかに原料水を通水することが可能となる。金属繊維更に、繊維の表面積が大きい外形の寸法に比較して通水表面積は大きくなる。この点を実施例1にて説明する。
【0041】
非特許文献1で説明されているようにフッ素系の樹脂にイオン交換基 -SO
3Hにおいて、-SO
3-とH
+の結合が比較的弱く、H
+イオンが解離する傾向にある。この解離したH
+イオンが電導度に寄与する。更に重要な点は、イオン交換基を有するために、イオン交換膜内部水分が吸収されやすいことである。すなわち、フッ素系カチオン交換膜は水と接触すると、水分を吸収して膨潤する。この膨潤機能により膜内部のH
+イオンが移動しやくなるので、膜の電導度があがり、高純度水を原料水として用いても電解電圧を低減することが可能である。
【0042】
前述のようにフッ素系カチオン交換膜は水を吸収する能力がある。
図7に示す電解槽において、アノ−ド室に原料水を供給しなくても、カソード室に供給した原料水の一部がフッ素系カチオン交換膜に吸収されて、アノ−ド極表面に供給される。このために、アノ−ド室に原料水を供給しなくても、電解が可能となる。この結果、アノ−ド室供給水を節約可能となる。また、アノ−ド室に原料水を供給しないので、プラス金属イオン等の不純物イオンがアノ−ド室からカソード室に濃縮される危険性が大幅に低減される。
【0043】
図1の電解槽に示す様に隔膜と電極が離れた構造の電解槽に高純度の原料水を供給した場合、隔膜と電極が離れていると、原料水の抵抗により電解電圧が高くなる問題点が残っていた。しかし、アノ−ド電極と隔膜を密着させた場合、まず、原料水の抵抗問題が低減され、アノ−ド電極において(2)式の水の酸化反応によりH
+イオンが生成される。隔膜なかで解離したH
+イオンがカソード室及びカソード電極に移行した後、アノ−ド電極で生成されたH
+イオンが隔膜に補充されるので、電解反応が持続する。
【0044】
このアノ−ド電極と隔膜の密着の問題は、高度純水を原料水として利用し、隔膜としてフッ素系カチオン交換膜を利用した場合、特に重要である。フッ素系カチオン交換膜内部で解離したH
+イオンがカソード電極に移行した後、アノ−ド電極で水の酸化反応(2)により生成したH
+イオンが補充可能となり、電解反応が持続することになる。このように水の純度が高くなるにつれて、隔膜としてフッ素系カチオン交換膜使用の必要性が高まり、さらにフッ素系カチオン交換膜とアノ−ド電極を密着させることが必要となる。
【0045】
図5(b)に示されたように、溶存水素分子濃度は水素分子気泡の外部圧力に依存し、溶存水素分濃度は式(7)に従って変化する。即ち、電解槽カソード室内の圧力が上がると、溶存水素分子濃度が上がることが分かる。電解槽内の圧力を上げる方法として、原料水をカソード室に供給ポンプのによる電解槽の入口圧力と出口圧力の差圧を利用することになる。具体的には、電解槽カソード室出口配管に流量調整バルブを設けてカソード室内部の圧力を調整する。溶存水素分子濃度と圧力の関係は差圧のみではなくカソード電極表面の電解水の流れ特性にも依存している。カソード室の内部圧力(水頭圧)が少しで上がれば、原理的に溶存水素分子濃度は向上するが、本発明の目的である1.0ppmを超えることを目標にする場合試験に基づいて内部圧力(水頭圧)を設定することが望ましい。
【0046】
具体的には通水性カソード電極の構造にも影響される。カソード室内部の圧力(水頭圧)と溶存水素分子濃度の関係を実施例2において説明する。
【実施例1】
【0047】
実施例1では、電流密度と溶存水素分子濃度との関係を説明する。
【0048】
以上で説明した板状多孔性電極による溶存水素濃度向上効果を本実施例で説明する。まず、
図8に示す形状で3×12cmの白金メッキチタン電極を基本にこれに5×24個の孔を開けた電極を使用した。
図3に電解槽の構造を示す。まず、この電極をアノ−ド電極及びカソード電極として用い、隔膜であるフッ素系カチオン交換膜に密着させた。次に、
図8のカソード電極を2枚用いた電解槽の構造を
図9に示す。この電解槽では、フッ素系カチオン交換膜に密着したカソード電極7に加えて、背後に2枚目の第2カソード電極75を配置し、カソード電極7と第2カソード電極75をカソード極繋ぎ線76で接続し、カソード電極間に原料水を通水した。なお、電気は第2カソード電極75に供給した。
【0049】
原料水は、水道水を逆浸透膜フィルターをにより高純度化した。処理した原料水の電導度は9μS/cm以下であった。
【0050】
更に、
図7に示す様に、アノード室10側には、フッ素系カチオン交換膜8に板状多孔性アノード電極9を密着させ、カソード室側には電気を供給するための第2カソード電極75に金属繊維集合体72を密着させた。この金属繊維集合体として、20μmφのチタン繊維不職布からなる目付の900g/m
2の中に原料水を通水する。このチタン不職布を1枚使用した場合と2枚使用した場合における溶存水素分子濃度を比較検討した。さらに、カソード室4に設置した金属繊維集合体カソード電極72のなかに原料水を効率的に供給する為にカソード電極の裏側に原料水が流れないようにカソード室通水邪魔板41を追設する。
【0051】
これらの電解槽を用いて、電流を3A通電し、300CCを通水した。生成されたカソード電解水中の溶存水素分子濃度とカソード電極面積の関係を
図10に示す。この結果は、カソード電極の面積が大きくなると、溶存水分子濃度が大きくなることが分かる。即ち、電流密度が小さくなると溶存水素分子濃度が増加することになる。
【実施例2】
【0052】
図7の電解解槽を
図11の試験装置に組み込み、カソード室内の圧力と溶存水素分子濃度との関係を測定した。電解槽26に原料水を供給し、カソード内の圧力を調整するために電解槽出口配管に流量計291と流量調整弁29を設け、流量調整弁29によりカソード室内圧力を調整した。その他の条件である電解電流は3A、水量は300cc/min.とした。圧力(水頭圧)測定は、電解槽出口で測定した。測定結果を
図12に示す。電解槽出口の圧力が水頭圧5cm以上になると、溶存水素分子濃度は1.0ppmを超えることが分かる。このように、溶存水素分子濃度をあげるためにはカソード室内の圧力を上げる方法が有効であることが分かる。
【実施例3】
【0053】
図13に、電気を供給するための板状カソード電極7に金属繊維集合体カソード電極72を接触させて、金属繊維集合体カソード電極72とフッ素系カチオン交換膜隔膜8の間にイオン交換樹脂13を充填した電解槽構造を示す。溶存水素分子濃度はこの充填イオン交換樹脂の種類にも依存する。陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂が溶存水素分子濃度に対する影響を比較し他結果を
図14に示す。この図から分かるように溶存水素濃度をより向上させる為には、
図13に示した電解槽構造において陰イオン交換樹脂を充填することが有効であることが分かる。
【0054】
一方、陽イオン交換樹脂充填した場合、原料水中の金属イオンの補足が可能となる。
この構造にすることによりカソード電解水のpHがアルカリ性に移行する程度を抑制することが可能となる。板状カソード電極の裏側に通水されないように、邪魔板41を設ける。この邪魔板41により原料水が金属繊維集合体カソード電極内及びイオン交換樹脂内に供給される。
【実施例4】
【0055】
図15に
図7または
図13の電解槽を組み込んだ飲料水ディスペンサー用の基本システムフローを示す。水道水等の原料水は、まず糸巻きフィルター21,活性炭フィルター22、及び逆浸透膜フィルター23を用いて処理をした。これらのフィルターを使用して、原料水の電導度を10μS/cm以下とした。原料水を一旦貯水タンク24に溜めて、冷却器28を用いて原料水の温度を下げた。この原料水をポンプ27により電解槽26のカソード室4及びアノ−ド室10に供給した。カソード電解された電解水出口配管に設けた流量調整弁29を用いてカソード室内部の圧力を調整して水頭圧を約10cmとし、溶存水素分子濃度が0.8ppm以上、望ましくは1.0ppm以上になるようにした。
【実施例5】
【0056】
カソード室には。図に示す様にアノ−ド室には板状多孔性アノ−ド極を設け更に、フッ素系カチオン交換膜からなる隔膜8に密着させる。一方、カソード志手では金属繊維集合体72を隔膜8に密着させる。カソード室4では、まずイオン交換膜からなる二つ目の隔膜81に接触させた状態に設置する金属繊維集合体カソード極内に供給水を通水させる為に邪魔板41を設ける。通水性カソード電極72 に原料水を供給する為には邪魔板41を設置することが有効である。金属繊維カソード電極に電流を供給する為に板状カソード電極75を組み合わせる。
【実施例6】
【0057】
図16に示す中間室を設けた電解槽を飲料用ディスペンサーに組み込んだ基本システムフローを
図17に示す。カソード室4とアノ−ド室10の間に中間室17を組み込んた電解槽を設ける。水道水等の原料水は、まず糸巻きフィルター21,活性炭フィルター22、及び逆浸透膜フィルター23を用いて処理をした電導度4μS/cm以下の高純度水を一旦貯水タンク24に溜めて、冷却器28を用いて原料水の温度を下げる。この原料水をポンプ27により電解槽26のカソード室4及びアノ−ド室10に供給する。カソード電解された電解水出口配管に調整バルブ29を用いてカソード室内部の圧力を調整して、溶存水素分子濃度が0.8ppm以上、望ましくは1.0ppm以上にする。更に、カソード電解水にビタミンC等のサプリメントを添加するとき、中間室に原料を添加して中間室からカソード電解水に供給する場合に適している。中間室液タンク40にサプリメントを供給した。
【0058】
なおカソード室の圧力は、調整弁29を用いてカソード室内部の圧力を調整して水頭圧約10cmとした。
【実施例7】
【0059】
図19に示す様に、逆浸透膜フィルターの代わりに0.1μm微粒子を濾過可能な中空糸フィルターを用いた原水を浄化して電解するシステムを示す。具体的には糸巻きフィルター21、活性炭フィルター22の後段に中空糸フィルター231を用いて処理した原料水を一旦貯水タンク24に溜めて、電解カソード水使用時にポンプ27を用いて電解槽26のカソード室4に原料水を供給する。カソード電解水の出口に流量調整弁29を設けてカソード室内の圧力を調整して、溶存水素分子濃度を0.8ppm以上にする。このとき、隔膜としてフッ素系カチオン交換膜を用いると、アノ−ド室に原料水を供給しなくても、低電圧で電解が可能となる。なおカソード室の圧力は、調整弁29を用いてカソード室内部の圧力を調整して水頭圧約10cmとした。
【0060】
このシステムでは、逆浸透膜フィルターを用いないので、原料水中に溶解しているCa、Mg等の金属イオンによるカソード電極の汚染が懸念される。この実施例では、
図7の電解槽と
図9の電解槽を用いて、電極の形態と電解電圧を比較検討した。
図7の電解槽では、金属繊維集合体カソード電極を組み込み、
図9の電解槽では、板状多孔性カソード電極を用いた。電導度〜150μS/cm原料水流量は0.5l/min.とし、電解電流は3Aとした。カソード電極が金属不純物で汚染すると、電解電圧が増加する。試験結果を
図17に示す。
図18から明なように、板状多孔性カソード電極に比較して、金属繊維集合体カソード電極を用いた場合、電解電圧の増加程度が低かった。このことは、金属集合体カソード電極は、金属不純物による汚染対策としても有効であることを示す。