特許第6366384号(P6366384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366384
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】道路照明灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/08 20060101AFI20180723BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180723BHJP
【FI】
   F21S8/08 200
   F21S8/08 110
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-133971(P2014-133971)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12491(P2016-12491A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】川口 嘉史
(72)【発明者】
【氏名】小池 輝夫
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−6406(JP,A)
【文献】 特開平11−111019(JP,A)
【文献】 特表2011−513931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/08
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が所定の一の進行方向に沿って走行する道路を上方から照明する道路照明灯具であって、
当該灯具の位置よりも前記進行方向側のプロビーム側と、当該灯具の位置よりも前記進行方向とは反対側のカウンタービーム側とに光を照射するとともに、
前記カウンタービーム側の路面上に照射されるカウンタービーム側光量が、前記プロビーム側の路面上に照射されるプロビーム側光量よりも多くなるように構成されており、
前記進行方向に互いに異なる領域を照明する2つの照明モジュールとして、
当該灯具の下方の路面上を、前記プロビーム側の部分と前記カウンタービーム側の部分とで対称となるように照らす対称ビーム部と、
主に前記カウンタービーム側の路面上を照らすカウンタービーム部と、
を備え、
前記カウンタービーム部は、発光面が前記カウンタービーム側の斜め下方を向くように傾斜していることを特徴とする道路照明灯具。
【請求項2】
車両が所定の一の進行方向に沿って走行する道路を上方から照明する道路照明灯具であって、
当該灯具の位置よりも前記進行方向側のプロビーム側と、当該灯具の位置よりも前記進行方向とは反対側のカウンタービーム側とに光を照射するとともに、
前記カウンタービーム側の路面上に照射されるカウンタービーム側光量が、前記プロビーム側の路面上に照射されるプロビーム側光量よりも多くなるように構成されており、
前記進行方向に互いに異なる領域を照明する2つの照明モジュールとして、
当該灯具の下方の路面上を、前記プロビーム側の部分と前記カウンタービーム側の部分とで対称となるように照らす対称ビーム部と、
主に前記カウンタービーム側の路面上を照らすカウンタービーム部と、
を備え、
前記対称ビーム部と前記カウンタービーム部とが、互いの発光面を同一方向に向けつつ並設され、
前記カウンタービーム部よりも前記進行方向側の部分に配置され、前記カウンタービーム部から前記プロビーム側に出射された光を反射させる反射ミラーを備えることを特徴とする道路照明灯具。
【請求項3】
主に前記カウンタービーム側の路面上を照らすカウンタービーム部を備え、
前記カウンタービーム部の発光面積が5000mm2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の道路照明灯具。
【請求項4】
前記道路が高速道路であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の道路照明灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路照明灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路を照明する道路照明灯具においては、一般に、車両の進行方向に対して対称な配光を形成する対称照明方式が採用されている。
【0003】
また、対称照明方式以外の照明方式として、車両の進行方向に光を照射するプロビーム照明方式や、トンネル内などに適用されて車両の進行方向とは反対方向に光を照射するカウンタービーム照明方式なども知られている。
このうち、前者のプロビーム照明方式では、特にトンネル出入口などで先行車を視認しやすくすることができる。一方、後者のカウンタービーム照明方式では、主に路面を照らすことで路面と路面上の障害物(の正面)とのコントラストを高くして、この障害物を視認しやすくすることができる。
【0004】
さらに、これらの照明方式を組み合わせて複合的なメリットを得ようとするものも提案されている。
例えば特許文献1では、プロビーム照明方式とカウンタービーム照明方式とを組み合わせつつ、プロビーム側(車両の進行方向側)の照射光量がカウンタービーム側(車両の進行方向とは反対側)よりも多くなるように構成された道路照明灯具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4715430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、障害物の視認性(視認しやすさ)や路面輝度を向上させる目的においては、上述した通りカウンタービーム照明方式が有効であるが、単純なカウンタービーム照明方式を採用した灯具では、プロビーム照明方式によるメリットを得られないのは勿論のこと、道路に沿って並設された複数の灯具間を暗部なく適切に照明することが難しい。
そもそも現在使用されている多くの道路照明灯具では、慣例的に、或いは技術的な難易度の低さなどから、対称照明方式が採用されているのが実情である。
【0007】
しかしながら、単純な対称照明方式の道路照明灯具や、また複合照明方式とはいえ上記特許文献1に記載のものでは、プロビーム側への光量が多いために効率的な照明を行うことができない。プロビーム側への光は、路面に照射されても車両(自車)側へ反射する割合が少ないため、運転者にとって有効なものとはなりにくく、この点で効率的に光を照射することが難しい。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来に比べ、効率的に光を照射しつつ、障害物の視認性や路面輝度を向上させることができる道路照明灯具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
車両が所定の一の進行方向に沿って走行する道路を上方から照明する道路照明灯具であって、
当該灯具の位置よりも前記進行方向側のプロビーム側と、当該灯具の位置よりも前記進行方向とは反対側のカウンタービーム側とに光を照射するとともに、
前記カウンタービーム側の路面上に照射されるカウンタービーム側光量が、前記プロビーム側の路面上に照射されるプロビーム側光量よりも多くなるように構成されており、
前記進行方向に互いに異なる領域を照明する2つの照明モジュールとして、
当該灯具の下方の路面上を、前記プロビーム側の部分と前記カウンタービーム側の部分とで対称となるように照らす対称ビーム部と、
主に前記カウンタービーム側の路面上を照らすカウンタービーム部と、
を備え、
前記カウンタービーム部は、発光面が前記カウンタービーム側の斜め下方を向くように傾斜していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は
車両が所定の一の進行方向に沿って走行する道路を上方から照明する道路照明灯具であって、
当該灯具の位置よりも前記進行方向側のプロビーム側と、当該灯具の位置よりも前記進行方向とは反対側のカウンタービーム側とに光を照射するとともに、
前記カウンタービーム側の路面上に照射されるカウンタービーム側光量が、前記プロビーム側の路面上に照射されるプロビーム側光量よりも多くなるように構成されており、
前記進行方向に互いに異なる領域を照明する2つの照明モジュールとして、
当該灯具の下方の路面上を、前記プロビーム側の部分と前記カウンタービーム側の部分とで対称となるように照らす対称ビーム部と、
主に前記カウンタービーム側の路面上を照らすカウンタービーム部と、
を備え、
前記対称ビーム部と前記カウンタービーム部とが、互いの発光面を同一方向に向けつつ並設され、
前記カウンタービーム部よりも前記進行方向側の部分に配置され、前記カウンタービーム部から前記プロビーム側に出射された光を反射させる反射ミラーを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の道路照明灯具において、
主に前記カウンタービーム側の路面上を照らすカウンタービーム部を備え、
前記カウンタービーム部の発光面積が5000mm2以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の道路照明灯具において、
前記道路が高速道路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、カウンタービーム側光量がプロビーム側光量よりも多くなるように構成されているので、プロビーム側への光量が多かった従来に比べ、車両(自車)側に反射されない無駄な光を減らすとともに、その分でカウンタービーム側の路面を有効に照明することができる。したがって、従来に比べ、効率的に光を照射しつつ、障害物の視認性や路面輝度を向上させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、主にカウンタービーム側の路面上を照らすカウンタービーム部の発光面積が5000mm2以上であるので、従来に比べて大幅に発光面積が大きくなり、発光面の輝度を低減させることができる。したがって、車両の運転者が感じるグレアを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における道路照明灯具を、その照明態様とともに示す図である。
図2】実施形態におけるポールに取り付けられた状態の道路照明灯具を示す図である。
図3】実施形態における道路照明灯具の(a)斜視図であり、(b)側面図である。
図4】道路の幅方向中央における車両の進行方向に沿った断面での(a)対称ビーム部による配光の光度分布を示すグラフであり、(b)カウンタービーム部による配光の光度分布を示すグラフである。
図5】実施形態の変形例における道路照明灯具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における道路照明灯具1を、その照明態様とともに示す図であり、図2は、後述のポール120に取り付けられた状態の道路照明灯具1を示す図であり、図3(a),(b)は、道路照明灯具1の斜視図及び側面図である。
【0019】
まず、道路照明灯具1の構成について説明する。
図1に示すように、道路照明灯具1は、車両(自動車)Cが所定の一の進行方向Xに沿って走行する道路100を上方から照明するものである。
道路照明灯具1が照明する道路100は、本実施形態においては、片側3車線の高速道路のうち、片側の3つの車線101〜103及び路側(図示省略)からなるものである。
道路照明灯具1は、この高速道路の中央分離帯110内に立設された2灯式のポール120に2つ設けられ、両側の2つの道路100,100を個別に照明する。
【0020】
道路照明灯具1を支持するポール120は、図2に示すように、上部が道路100の幅方向(進行方向Xと直交する方向)に枝分かれしたY字状に形成されており、その枝分かれ部分である2つのブーム121が、水平面に対して約10°の傾斜角度αで斜め上方に向かってそれぞれ傾斜している。また、ポール120は、図示は省略するが、道路100に沿って約40mのポール間隔で複数並設されている。
道路照明灯具1は、ポール120のうち2つのブーム121の各先端部に下方向きに取り付けられており、本実施形態においては、地上12mの高さhに配置されるとともに、ブーム121の傾斜に倣って道路100の外側方向きにやや傾斜している。
【0021】
具体的に、道路照明灯具1は、図3(a),(b)に示すように、進行方向Xに互いに異なる領域を照明する2つの照明モジュール3,3が、金属製のハウジング2内に収容された構成となっている。
2つの照明モジュール3,3は、ハウジング2から下方に露出した光源部30をそれぞれ有している。
この光源部30には、図示は省略するが、複数のLED(発光ダイオード)と、その前方に配置された複数の配光制御レンズとがマトリクス状に配列されている。
光源部30の発光面30aは、本実施形態においては、10000mm2以上の発光面積を有している。ここで、発光面30aの発光面積とは、マトリクス状に配列された複数の配光制御レンズを正面から見たときの配列面の全面積であり、隣り合う2つの配光制御レンズ間の隙間部分を含むものである。
なお、発光面30aの発光面積は、10000mm2以上であることに限定はされないが、後述するように、車両Cの運転者が感じるグレア(眩惑)を低減させる観点から、5000mm2以上であることが好ましい。但し、2つの照明モジュール3,3の両方がこの発光面積でなくともよく、当該2つの照明モジュール3,3のうち、少なくとも後述のカウンタービーム部32の発光面30aの発光面積が5000mm2以上であればよい。
【0022】
これら2つの照明モジュール3,3は、本実施形態においては、道路照明灯具1のうち進行方向X側の部分に下方向きに(発光面30aを下方に向けて)設けられた対称ビーム部31と、進行方向Xとは反対側の部分にやや斜め向きに設けられたカウンタービーム部32となっている。
【0023】
このうち、対称ビーム部31は、対称照明方式で道路100を照明するものであり、図1に示すように、道路100の路面のうち、道路照明灯具1の下方の対称ビーム照明領域LA1を照明する。
対称ビーム照明領域LA1では、進行方向Xにおける道路照明灯具1の灯具位置Pよりも進行方向X側(以下、「プロビーム側」という。)の部分と、灯具位置Pよりも進行方向Xとは反対側(以下、「カウンタービーム側」という。)の部分とが、灯具位置Pに対してほぼ対称となっている。
【0024】
より詳しくは、図4(a)に示すように、対称ビーム部31は、対称ビーム照明領域LA1として、灯具位置P(すなわち下方向き)を基準(0°)として進行方向Xに沿った面内での照射角θが正負両側でほぼ均等となるその間の範囲を照明している。
ここで、図4(a),(b)は、道路100の幅方向中央における進行方向Xに沿った断面での、対称ビーム部31及びカウンタービーム部32による配光の光度分布を示すグラフである。この図4(a),(b)では、照射角θがカウンタービーム側で正値を取るものとしている。
具体的には、対称ビーム部31は、対称ビーム照明領域LA1として、照射角θが約±70°の間の範囲であって、道路100のほぼ全幅員に亘る楕円状の範囲を照明している。また、このときの対称ビーム照明領域LA1は、約0°の照射角θにおける光度が最も低くなるとともに、約±70°の各照射角θにおける光度が最も高くなり、且つ、照射角θの+側と−側とでほぼ対称となる光度分布を有している。
【0025】
一方、カウンタービーム部32は、カウンタービーム照明方式で道路100を照明するものであり、図1に示すように、道路100の路面のうち、主にカウンタービーム側のカウンタービーム照明領域LA2を照明する。
より詳しくは、図4(b)に示すように、カウンタービーム部32は、カウンタービーム照明領域LA2として、照射角θが約70°から約−50°までの間の範囲であって、道路100のほぼ全幅員に亘る楕円状の範囲を照明している。また、このときのカウンタービーム照明領域LA2は、約−50°の照射角θにおける光度が最も低くなるとともに、約70°の照射角θにおける光度が最も高くなり、且つ、照射角θの増加に伴って徐々に上がりつつ約70°近傍で急峻に上昇する光度分布を有している。
【0026】
また、図3(b)に示すように、カウンタービーム部32は、その発光面30aがカウンタービーム側の斜め下方を向くように傾斜している。具体的には、カウンタービーム部32の発光面30aは、カウンタービーム側向きに斜めに傾斜しており、下方向きである対称ビーム部31の発光面30aに対する傾斜の角度が5°〜30°であることが好ましい。
なお、上述した通り、道路照明灯具1はポール120のブーム121に倣って道路100の幅方向に傾斜しているため(図2参照)、対称ビーム部31の発光面30aは、水平面をブーム121に倣って道路100の幅方向に傾斜させた面とほぼ一致する。つまり、カウンタービーム部32の発光面30aは、道路100の幅方向に傾斜させた当該面を基準として、カウンタービーム側向きに斜めに傾斜している。
このように、カウンタービーム部32の発光面30aをカウンタービーム側向きに傾斜させることにより、その照明対象であるカウンタービーム照明領域LA2をより直接的な光で照明しやすくなる。そのため、光源部30の配光制御レンズに、強い屈折角を得ることが可能な高価な高屈折率材料を用いる必要がなく、カウンタービーム部32の低コスト化を図ることができる。
【0027】
本実施形態における道路照明灯具1は、図1に示すように、道路100の路面のうち、上述した2つの照明モジュール3,3による対称ビーム照明領域LA1及びカウンタービーム照明領域LA2が重畳された照明領域LAを照明している。したがって、この照明領域LAでは、カウンタービーム側の光量がプロビーム側のものよりも多くなっている。つまり、道路照明灯具1は、カウンタービーム側の路面上に照射されるカウンタービーム側光量が、プロビーム側の路面上に照射されるプロビーム側光量よりも多くなるように、道路100を照明している。
本実施形態においては、道路照明灯具1の全照射光量のうち、約75%がカウンタービーム側光量であり、残る約25%がプロビーム側光量となっている。この光量比は、カウンタービーム側光量がプロビーム側光量よりも多くなるものであれば特に限定はされないが、カウンタービーム側光量がプロビーム側光量の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。
【0028】
続いて、道路照明灯具1による道路100の照明態様について説明する。
本実施形態の道路照明灯具1は、上述したように、道路100の路面のうち、対称ビーム部31による対称ビーム照明領域LA1と、カウンタービーム部32によるカウンタービーム照明領域LA2とが重畳されてなる照明領域LAを照明している。
【0029】
このとき、照明領域LAのうち、カウンタービーム側の路面上に照射されるカウンタービーム側光量が、プロビーム側の路面上に照射されるプロビーム側光量よりも多くなっている。これにより、プロビーム側への光量が多かった従来に比べ、車両C(自車)側に反射されない無駄な光を減らすとともに、その分でカウンタービーム側の路面を有効に照明することができる。
【0030】
ここで、車両Cに向かって前方から照射されるカウンタービーム側光量を単純に多くしてしまうと、この光が車両Cの運転者に対するグレア光となってしまう懸念がある。
この点、本実施形態の道路照明灯具1では、対称ビーム部31及びカウンタービーム部32のいずれにおいても、カウンタービーム側への照射角θが約70°までとなっているので、車両Cの運転者が感じるグレアを抑制することができる。
「LED道路・照明導入ガイドライン(案)」(国土交通省、2011.9)によれば、運転者の視点を高さ1.5mとしたときに、この運転者に強いグレアを感じさせる自動車の位置は、自動車のフロントガラス上端から一番手前の灯具が遮光される瞬間である場合が多く、また、自動車のフロントガラス上端による遮光角は、運転者の視線方向(前方)から上向きに20°とされている。
つまり、道路照明灯具1の照射角θで表わすと、70°(=90°−20°)よりも大きい、例えば70°〜75°の範囲の光が強いグレア光になりやすい。したがって、照射角θを約70°までとすることにより、強いグレア光になりやすい上記範囲の光が車両Cのフロントガラス上端に遮光されるため、車両Cの運転者が感じるグレアを抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態の道路照明灯具1では、車両Cに向かって前方から光を照射するカウンタービーム部32の発光面30aの発光面積が5000mm2以上となっている。これに対し、例えば従来より道路照明灯として用いられてきたナトリウム灯では、出力が250Wのもので、放電しているアーク部の発光面積は50mm2程度である。
したがって、従来に比べ大幅に発光面積が大きくなるため、当該発光面30aの輝度を低減させることができ、ひいては、車両Cの運転者が感じるグレアをさらに抑制することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態の道路照明灯具1によれば、カウンタービーム側光量がプロビーム側光量よりも多くなるように構成されているので、プロビーム側への光量が多かった従来に比べ、車両C(自車)側に反射されない無駄な光を減らすとともに、その分でカウンタービーム側の路面を有効に照明することができる。したがって、従来に比べ、効率的に光を照射しつつ、障害物の視認性や路面輝度を向上させることができる。
【0033】
また、カウンタービーム部32の発光面30aの発光面積が5000mm2以上であるので、従来のナトリウム灯などに比べて大幅に発光面積が大きくなり、当該発光面30aの輝度を低減させることができる。したがって、車両Cの運転者が感じるグレアを抑制することができる。
【0034】
続いて、上記実施形態の変形例について説明する。なお、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
図5は、本変形例における道路照明灯具1Aの側面図である。
この図に示すように、道路照明灯具1Aは、2つの照明モジュール3A,3Aとして、互いに並設された対称ビーム部31Aとカウンタービーム部32Aとを備えている。
【0036】
このうち、対称ビーム部31Aは、道路照明灯具1Aのうち進行方向Xとは反対側の部分に設けられており、それ以外の点については、上記実施形態における対称ビーム部31と同様に構成されている。したがって、この対称ビーム部31Aは、道路100の路面のうちの対称ビーム照明領域LA1を照明する。
一方、カウンタービーム部32Aは、道路照明灯具1Aのうちの進行方向X側の部分に設けられており、それ以外の点については対称ビーム部31Aと同様に構成されている。つまり、カウンタービーム部32Aは、その光源部30の発光面30aを、対称ビーム部31Aの発光面30aと同じく下方に向けている。
【0037】
また、道路照明灯具1Aは、カウンタービーム部32Aよりも進行方向X側の部分に、反射ミラー4Aを備えている。
この反射ミラー4Aは、カウンタービーム部32Aの配光を変換するものであり、カウンタービーム部32Aからプロビーム側へ出射された光を反射させる。
そして、カウンタービーム部32Aからプロビーム側へ出射されて反射ミラー4Aで反射された光と、カウンタービーム部32Aからカウンタービーム側へ照射された光とによって、カウンタービーム照明領域LA2が照明されるようになっている。
【0038】
以上のように、本変形例の道路照明灯具1Aによれば、上記実施形態の道路照明灯具1と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、2つの照明モジュール3A,3Aとして互いに同様に構成された対称ビーム部31Aとカウンタービーム部32Aとを用いつつ、対称ビーム照明領域LA1とカウンタービーム照明領域LA2とを照明することができる。したがって、上記実施形態のように互いに異なる構成の2つの照明モジュール3,3を用いる場合に比べ、照明モジュール3Aの生産・管理コストを低減することができる。
【0039】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態及びその変形例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態及びその変形例では、道路照明灯具1(1A)が2つの照明モジュール3(3A)として対称ビーム部31(31A)とカウンタービーム部32(32A)を備えることとしたが、照明モジュール3(3A)の数量やその照明方式は、これに限定されない。例えば、2つの照明モジュール3(3A)のうちの対称ビーム部31(31A)に代えて、主にプロビーム側を照明するプロビーム部を備えることとしてもよいし、単一の照明モジュール3(3A)のみを備えることとしてもよい。
【0041】
また、道路照明灯具1(1A)がポール120に取り付けられることとしたが、本発明に係る道路照明灯具は、上方から道路を照明できるものであれば、ポール(支柱)に取り付けられるものに限定されず、例えばトンネル内の壁面や天井に固定されるものであってもよい。
【0042】
また、道路照明灯具1(1A)が複数のLEDを備えることとしたが、本発明に係る道路照明灯具の光源はLED(発光ダイオード)に限定されない。
【0043】
また、道路100が3車線の高速道路であることとしたが、本発明に係る道路照明灯具が照明する道路は、車両が所定の一の進行方向に沿って走行するものであれば、1車線や2車線であってもよいし、一般道であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,1A 道路照明灯具
3,3A 照明モジュール
30 光源部
30a 発光面
31,31A 対称ビーム部
32,32A カウンタービーム部
4A 反射ミラー
100 道路
C 車両
X 進行方向
LA 照明領域
LA1 対称ビーム照明領域
LA2 カウンタービーム照明領域
P 灯具位置
θ 照射角
図1
図2
図3
図4
図5