特許第6366385号(P6366385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366385
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】温風暖房装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/02 20060101AFI20180723BHJP
   F23N 5/02 20060101ALI20180723BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F24H3/02 301C
   F23N5/02 350K
   F23N5/00 U
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-134102(P2014-134102)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-11800(P2016-11800A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】萩原 伸一
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−061664(JP,A)
【文献】 特開平08−075261(JP,A)
【文献】 特開2001−208433(JP,A)
【文献】 特開平08−005151(JP,A)
【文献】 米国特許第05984663(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/02
F23N 5/00
F23N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸い込む吸込口及び空気を吹き出す吹出口を有する筐体の内部に、燃料を燃焼する燃焼器と、前記燃焼器に供給する燃料量を調節する燃料量調節手段と、前記吸込口を介した前記筐体内への空気の吸気と前記吹出口を介した前記筐体内からの空気の吹き出しとを行うように空気を流動させる空気流動手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記吸込口から前記筐体内に吸い込んだ空気を前記燃焼器の燃焼排ガスと混合させることで空気の昇温を行って、昇温した空気を前記吹出口から吹き出す温風暖房装置であって、
前記吸込口から前記筐体内に吸い込む空気の温度を測定する吸込空気温度測定手段と、
運転に関する指示を使用者から受け付ける運転指示受付手段とを備え、
前記運転指示受付手段は、第1暖房運転モードでの運転に用いる設定目標温度の設定指示を使用者から受け付け、及び、前記燃料量調節手段により調節される最小供給燃料量と最大供給燃料量との間の全供給燃料量範囲の中から、第2暖房運転モードでの運転に用いる設定燃料量を特定可能な情報の設定指示を受け付け、
前記制御手段は、
前記運転指示受付手段が前記第1暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、前記吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度が前記運転指示受付手段が受け付けた前記設定目標温度となるように、前記吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度と前記設定目標温度との温度差に基づいて、前記全供給燃料量範囲の中から前記燃焼器に供給する目標供給燃料量を決定し、当該目標供給燃料量を前記燃料量調節手段により前記燃焼器へ供給させ、並びに、
前記運転指示受付手段が前記第2暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、一定の燃料量を前記燃料量調節手段により前記燃焼器に継続的に供給して燃焼させる一定燃料量運転を行い、及び、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされると、前記燃焼器に供給する燃料量を減少させることを含む過剰暖房回避処理を行い、
前記第2暖房運転モードでの運転を開始するとき、前記運転指示受付手段が受け付けた前記第2暖房運転モードの前記設定燃料量を、前記一定燃料量運転で前記燃焼器に供給する前記一定の燃料量とし、
前記運転指示受付手段は、使用者によって押し操作される毎に、前記第1暖房運転モードでの運転に用いる前記設定目標温度としての複数の設定値と、前記第2暖房運転モードでの運転に用いる前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値とを含む設定値群のうちの何れか一つの設定値が順次設定変更される設定値切替スイッチを有し、
前記制御手段は、
前記設定値切替スイッチによって前記設定目標温度としての設定値が設定されているときは前記運転指示受付手段が前記第1暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けていると判定し、前記設定値切替スイッチによって前記設定燃料量を特定可能な情報としての設定値が設定されているときは前記運転指示受付手段が前記第2暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けていると判定し、
使用者による前記設定値切替スイッチに対する押し操作が設定時間以上連続したときの長押操作と、使用者による前記設定値切替スイッチに対する押し操作が前記設定時間未満連続したときの通常押操作とを区別して判定し、
前記第1暖房運転モードの前記設定目標温度としての複数の設定値には、前記設定値切替スイッチが前記通常押操作される毎に順次設定変更されるときの変更順序が定められていると共に、前記設定目標温度としての複数の設定値の中に一つの第1境界設定値があり、
前記第2暖房運転モードの前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値には、前記設定値切替スイッチが前記通常押操作される毎に順次設定変更されるときの変更順序が定められていると共に、前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中に一つの第2境界設定値があり、
前記第1暖房運転モードの前記設定目標温度の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による前記設定値切替スイッチに対する前記長押操作が行われると、前記第2暖房運転モードの前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の特定の設定値に設定変更し、
前記第2暖房運転モードの前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による前記設定値切替スイッチに対する前記長押操作が行われると、前記第1暖房運転モードの前記設定目標温度の中の特定の設定値に設定変更し、
前記設定値切替スイッチに対する前記通常押操作が行われる毎に前記設定目標温度としての一つの設定値から前記設定目標温度としての他の設定値へと順次設定変更すると共に、前記設定目標温度としての一つの設定値から前記第1境界設定値である設定値に設定変更された後で前記設定値切替スイッチに対する前記通常押操作が行われると、前記第2境界設定値である設定値に設定変更し、
前記設定値切替スイッチに対する前記通常押操作が行われる毎に前記設定燃料量を特定可能な情報としての一つの設定値から前記設定燃料量を特定可能な情報としての他の設定値へと順次設定変更すると共に、前記設定燃料量を特定可能な情報としての一つの設定値から前記第2境界設定値である設定値に設定変更された後で前記設定値切替スイッチに対する前記通常押操作が行われると、前記第1境界設定値である設定値に設定変更する温風暖房装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度が所定の判別用温度以上になると前記過剰暖房条件が満たされたと判定する請求項1に記載の温風暖房装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度が所定の判別用温度以上である期間が所定期間継続すると前記過剰暖房条件が満たされたと判定する請求項1又は2に記載の温風暖房装置。
【請求項4】
前記過剰暖房回避処理は、前記過剰暖房条件が満たされると、前記燃焼器に供給する燃料量を所定量だけ減少させる燃料量減少処理を行った上で前記一定燃料量運転を継続する処理である請求項1〜3の何れか一項に記載の温風暖房装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第2暖房運転モードで前記一定燃料量運転を行っているとき、前記燃焼器に供給する燃料量が前記最小供給燃料量である状態で前記過剰暖房条件が満たされると、前記過剰暖房回避処理として、前記燃焼器への燃料の供給を停止させて前記燃焼器での燃焼を停止させる請求項4に記載の温風暖房装置。
【請求項6】
前記過剰暖房回避処理は、前記過剰暖房条件が満たされると、前記燃焼器への燃料の供給を停止させて前記燃焼器での燃焼を停止させる処理である請求項1〜3の何れか一項に記載の温風暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込口から筐体内に吸い込んだ空気を燃焼器の燃焼排ガスと混合させることで空気の昇温を行って、昇温した空気を吹出口から吹き出す温風暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスファンヒーターや石油ファンヒーターなどの温風暖房装置は、吸い込んだ室内の空気を、燃焼器の燃焼排ガスと混合して再び室内へと吹き出すような温風循環式であり、暖房能力も大きく、室内全体を暖房することに最適の暖房機器である。温風暖房装置の運転形態としては、使用者が指示した設定目標温度に基づいて行う運転モードや、使用者が指示した設定燃料量(燃焼量)に基づいて行う運転モードなどがある。
【0003】
前者の運転モードは、居室の空気の温度が設定目標温度となるように、測定した居室の空気温度と設定目標温度との温度差に基づいて、燃焼器に供給する目標供給燃料量を決定し、その目標供給燃料量を燃焼器へ供給させるような運転モードである。つまり、この運転モードは、例えば、居室全体の空気の温度を設定目標温度に暖めるときに利用される。この場合、居室の快適性は確保されるが、燃焼器に供給される燃料量は居室の空気温度と設定目標温度との温度差に基づいて自動で調節されるためにランニングコストの予測は難しく、燃焼器に供給される燃料量が多くなって、ランニングコストが高くなる可能性がある。
【0004】
後者の運転モードは、一定の設定燃料量を燃焼器に継続的に供給して燃焼させるような運転モードである。つまり、この運転モードは、例えば、温風暖房装置に近い位置にいる使用者が、温風暖房装置から吹き出される温風に当たることで温まるときなどに利用される。この場合、燃焼器に供給される燃料量は一定値に維持されるため、ランニングコストを比較的正確に予測することができる。つまり、使用者は、ランニングコストを非常に低くしたいのであれば、燃焼器に供給される燃料量を非常に少なく設定すればよい。
【0005】
特許文献1に記載の温風暖房装置は、自動燃焼量制御部と手動燃焼量制御部とを備えている。自動燃焼量制御部は、上述した前者の運転モードを実行する(例えば、室温と予め設定された設定目標温度とに応じて燃焼量を自動的に決定する)ように構成されている。手動燃焼量制御部は、上述した後者の運転モードを実行する(例えば、燃焼量を強燃焼、中燃焼、弱燃焼の三段階に調節する)ように構成されている、即ち、燃焼器に供給される燃料量を三段階に調節するように構成されている。そして、使用者が、手動スイッチを押し操作することで、手動燃焼制御の強燃焼、中燃焼、弱燃焼と、自動燃焼量制御とが順次切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−007810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のような温風暖房装置では、自動燃焼量制御が行われているときは燃焼器で燃焼される燃料量が自動的に調節されて居室の温度の制御が行われるが、手動燃焼制御が行われているときは燃焼器で燃焼される燃料量が一定値に維持されるため、居室の温度の制御が行われていない。そのため、居室の大きさ、居室への外気の出入り(居室への人の出入り)、外気温度などに応じて、燃焼器に供給される燃料量が一定のままでも居室の温度が徐々に上昇することもある。つまり、居室全体の空気を必要以上に暖めることとなり、そのような場合には、ランニングコストが必要以上に高くなるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要以上にランニングコストが高くなることを回避できる温風暖房装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る温風暖房装置の特徴構成は、空気を吸い込む吸込口及び空気を吹き出す吹出口を有する筐体の内部に、燃料を燃焼する燃焼器と、前記燃焼器に供給する燃料量を調節する燃料量調節手段と、前記吸込口を介した前記筐体内への空気の吸気と前記吹出口を介した前記筐体内からの空気の吹き出しとを行うように空気を流動させる空気流動手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記吸込口から前記筐体内に吸い込んだ空気を前記燃焼器の燃焼排ガスと混合させることで空気の昇温を行って、昇温した空気を前記吹出口から吹き出す温風暖房装置であって、
前記吸込口から前記筐体内に吸い込む空気の温度を測定する吸込空気温度測定手段と、
運転に関する指示を使用者から受け付ける運転指示受付手段とを備え、
前記運転指示受付手段は、第1暖房運転モードでの運転に用いる設定目標温度の設定指示を使用者から受け付け、及び、前記燃料量調節手段により調節される最小供給燃料量と最大供給燃料量との間の全供給燃料量範囲の中から、第2暖房運転モードでの運転に用いる設定燃料量を特定可能な情報の設定指示を受け付け、
前記制御手段は、
前記運転指示受付手段が前記第1暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、前記吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度が前記運転指示受付手段が受け付けた前記設定目標温度となるように、前記吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度と前記設定目標温度との温度差に基づいて、前記全供給燃料量範囲の中から前記燃焼器に供給する目標供給燃料量を決定し、当該目標供給燃料量を前記燃料量調節手段により前記燃焼器へ供給させ、並びに、
前記運転指示受付手段が前記第2暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、一定の燃料量を前記燃料量調節手段により前記燃焼器に継続的に供給して燃焼させる一定燃料量運転を行い、及び、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされると、前記燃焼器に供給する燃料量を減少させることを含む過剰暖房回避処理を行い、
前記第2暖房運転モードでの運転を開始するとき、前記運転指示受付手段が受け付けた前記第2暖房運転モードの前記設定燃料量を、前記一定燃料量運転で前記燃焼器に供給する前記一定の燃料量とし、
前記運転指示受付手段は、使用者によって押し操作される毎に、前記第1暖房運転モードでの運転に用いる前記設定目標温度としての複数の設定値と、前記第2暖房運転モードでの運転に用いる前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値とを含む設定値群のうちの何れか一つの設定値が順次設定変更される設定値切替スイッチを有し、
前記制御手段は、
前記設定値切替スイッチによって前記設定目標温度としての設定値が設定されているときは前記運転指示受付手段が前記第1暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けていると判定し、前記設定値切替スイッチによって前記設定燃料量を特定可能な情報としての設定値が設定されているときは前記運転指示受付手段が前記第2暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けていると判定し、
使用者による前記設定値切替スイッチに対する押し操作が設定時間以上連続したときの長押操作と、使用者による前記設定値切替スイッチに対する押し操作が前記設定時間未満連続したときの通常押操作とを区別して判定し、
前記第1暖房運転モードの前記設定目標温度としての複数の設定値には、前記設定値切替スイッチが前記通常押操作される毎に順次設定変更されるときの変更順序が定められていると共に、前記設定目標温度としての複数の設定値の中に一つの第1境界設定値があり、
前記第2暖房運転モードの前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値には、前記設定値切替スイッチが前記通常押操作される毎に順次設定変更されるときの変更順序が定められていると共に、前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中に一つの第2境界設定値があり、
前記第1暖房運転モードの前記設定目標温度の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による前記設定値切替スイッチに対する前記長押操作が行われると、前記第2暖房運転モードの前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の特定の設定値に設定変更し、
前記第2暖房運転モードの前記設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による前記設定値切替スイッチに対する前記長押操作が行われると、前記第1暖房運転モードの前記設定目標温度の中の特定の設定値に設定変更し、
前記設定値切替スイッチに対する前記通常押操作が行われる毎に前記設定目標温度としての一つの設定値から前記設定目標温度としての他の設定値へと順次設定変更すると共に、前記設定目標温度としての一つの設定値から前記第1境界設定値である設定値に設定変更された後で前記設定値切替スイッチに対する前記通常押操作が行われると、前記第2境界設定値である設定値に設定変更し、
前記設定値切替スイッチに対する前記通常押操作が行われる毎に前記設定燃料量を特定可能な情報としての一つの設定値から前記設定燃料量を特定可能な情報としての他の設定値へと順次設定変更すると共に、前記設定燃料量を特定可能な情報としての一つの設定値から前記第2境界設定値である設定値に設定変更された後で前記設定値切替スイッチに対する前記通常押操作が行われると、前記第1境界設定値である設定値に設定変更する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、制御手段は、運転指示受付手段が第1暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、吸込口から筐体内に吸い込む空気の温度(例えば、温風暖房装置が設置されている室内空気の温度)が、使用者から受け付けている設定目標温度となるように燃焼器に供給する燃料量が調節される。その結果、温風暖房装置が設置されている室内の温度が使用者にとって快適な状態に近づくことになる。
【0011】
尚、使用者が、例えば室内全体の空気の温度が所望の温度に調節されているといった快適性をあまり重視しておらず、温風暖房装置から吹き出されたある程度の高温の温風に自身が当たることで暖かさを感じることができればよいと考える場合もある。そのような場合、第1暖房運転モードでの運転(即ち、吸込口から筐体内に吸い込む空気の温度を上記設定目標温度にするという運転)が行われると、その間に燃焼器に供給される燃料量は自動的に変更されるため、燃焼器に供給する燃料量が相対的に多くなってランニングコストが上昇する可能性がある。つまり、第1暖房運転モードでは、使用者にとって必要以上のランニングコストをかけながら暖房が行われていることになる。
【0012】
ところが本特徴構成では、制御手段は、運転指示受付手段が第2暖房運転モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、一定の燃料量を燃料量調節手段により燃焼器に継続的に供給して燃焼させる一定燃料量運転を行うように構成され、この一定燃料量運転を開始するときの上記一定の燃料量は、使用者から受け付けている値(設定燃料量)となる。つまり、燃焼器に供給されて燃焼される一定の燃料量は、温風暖房装置で自動的に調節する値ではなく、使用者から受け付けている値(設定燃料量)になるため、暖房が、使用者にとって必要以上のランニングコストをかけながら行われることが回避される。
更に、制御手段は、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされると、燃焼器に供給する燃料量を減少させることを含む過剰暖房回避処理を行う。つまり、過剰な暖房が行われているということは、燃焼器に供給されて燃焼されている燃料量が過剰であることを示しているので、燃焼器に供給する燃料量を減少させることを含む過剰暖房回避処理を行うことで、過剰な暖房の抑制とランニングコストの更なる低下とを併せて達成できる。
従って、必要以上にランニングコストが高くなることを回避できる温風暖房装置を提供できる。
更に、上記特徴構成によれば、設定値切替スイッチを使用者が押し操作する毎に、第1暖房運転モードでの運転に用いる設定目標温度としての複数の設定値と、第2暖房運転モードでの運転に用いる設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値とを含む設定値群のうちの何れか一つの設定値が順次設定変更される。つまり、一つの設定値切替スイッチを用いて第1暖房運転モード用の設定値と第2暖房運転モード用の設定値とを設定できるので、第1暖房運転モード用の設定値と第2暖房運転モード用の設定値とを設定するためのスイッチを温風暖房装置に別々に搭載しなくてもよい。
加えて、制御手段は、設定値切替スイッチによって第1暖房運転モード用の設定値が設定されているときは第1暖房運転モードでの運転が指示されていると判定し、設定値切替スイッチによって第2暖房運転モード用の設定値が設定されているときは第2暖房運転モードでの運転が指示されていると判定するので、使用者が第1暖房運転モードでの運転を指示するためのスイッチと第2暖房運転モードでの運転を指示するためのスイッチとを温風暖房装置に別々に搭載しなくてもよい。
また、上記特徴構成によれば、制御手段は、使用者による設定値切替スイッチに対する上記長押操作と上記通常押操作とを区別して判定する。
そして、第1暖房運転モードの設定目標温度としての複数の設定値には、設定値切替スイッチが通常押操作される毎に順次設定変更されるときの変更順序が定められており、第2暖房運転モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値には、設定値切替スイッチが通常押操作される毎に順次設定変更されるときの変更順序が定められている。その結果、使用者は、設定値切替スイッチに対する通常押操作を行うことで、第1暖房運転モードの設定目標温度としての複数の設定値を、上記変更順序に従って順次設定変更することができる。同様に、使用者は、設定値切替スイッチに対する通常押操作を行うことで、第2暖房運転モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値を、上記変更順序に従って順に設定変更することができる。
加えて、第1暖房運転モードの設定目標温度としての一つの設定値から第1境界設定値である設定値に設定変更された後で設定値切替スイッチに対する通常押操作が行われると、その第1暖房運転モードの設定値(第1境界設定値)から第2暖房運転モードの設定値(第2境界設定値)に設定変更する。これに対して、第2暖房運転モードの設定燃料量を特定可能な情報としての一つの設定値から第2境界設定値である設定値に設定変更された後で設定値切替スイッチに対する通常押操作が行われると、その第2暖房運転モードの設定値(第2境界設定値)から第1暖房運転モードの設定値(第1境界設定値)に設定変更する。つまり、使用者は、設定値切替スイッチに対する通常押操作を行うことで、第1暖房運転モードの設定値が設定されている状態から第2暖房運転モードの設定値が設定されている状態への設定変更、及び、第1暖房運転モードの設定値が設定されている状態から第2暖房運転モードの設定値が設定されている状態への設定変更を行うことができる。
尚、使用者が通常押操作を行った場合には、第1暖房運転モードの設定値が設定されている状態と第2暖房運転モードの設定値が設定されている状態との間での設定変更は、第1暖房運転モードの複数の設定値の中の第1境界設定値及び第2暖房運転モードの複数の設定値の中の第2境界設定値とを経由して行われる。つまり、使用者は、設定値切替スイッチを何度も通常押操作しなければ、第1暖房運転モードの設定値が設定されている状態と第2暖房運転モードの設定値が設定されている状態との間での設定変更をさせることができない。
ところが本特徴構成では、制御手段は、第1暖房運転モードの設定目標温度の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による設定値切替スイッチに対する長押操作が行われると、第2暖房運転モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の特定の設定値に設定変更し、第2暖房運転モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による設定値切替スイッチに対する長押操作が行われると、第1暖房運転モードの設定目標温度の中の特定の設定値に設定変更する。つまり、使用者は設定値切替スイッチに対する1回の長押操作によって、第1暖房運転モードの設定値が設定されている状態と第2暖房運転モードの設定値が設定されている状態との間での設定変更をさせることができる。
【0013】
本発明に係る温風暖房装置の別の特徴構成は、前記制御手段は、前記吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度が所定の判別用温度以上になると前記過剰暖房条件が満たされたと判定する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、制御手段は、吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度(例えば、温風暖房装置が設置されている室内空気の温度)が所定の判別用温度以上になると、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされていると判定して上記過剰暖房回避処理を行う。つまり、吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度に基づいて、過剰な暖房が行われているか否かを判定し、過剰な暖房が行われている場合には上記過剰暖房回避処理を行うことで、過剰な暖房の抑制とランニングコストの更なる低下とを併せて達成できる。
【0015】
本発明に係る温風暖房装置の更に別の特徴構成は、前記制御手段は、前記吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度が所定の判別用温度以上である期間が所定期間継続すると前記過剰暖房条件が満たされたと判定する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、制御手段は、吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度(例えば、温風暖房装置が設置されている室内空気の温度)が所定の判別用温度以上である期間が所定期間継続すると、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされていると判定して上記過剰暖房回避処理を行う。つまり、吸込空気温度測定手段が測定する空気の温度及びその空気の温度が所定の判別用温度以上である期間の長さに基づいて、過剰な暖房が行われているか否かを判定し、過剰な暖房が行われている場合には上記過剰暖房回避処理を行うことで、過剰な暖房の抑制とランニングコストの更なる低下とを併せて達成できる。
【0017】
本発明に係る温風暖房装置の更に別の特徴構成は、前記過剰暖房回避処理は、前記過剰暖房条件が満たされると、前記燃焼器に供給する燃料量を所定量だけ減少させる燃料量減少処理を行った上で前記一定燃料量運転を継続する処理である点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、制御手段は、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされると、過剰暖房回避処理として、燃焼器に供給する燃料量を所定量だけ減少させる燃料量減少処理を行った上で一定燃料量運転を継続する。つまり、過剰な暖房が行われているということは、燃焼器に供給されて燃焼されている燃料量が過剰であることを示しているので、燃料量減少処理を行うことで、過剰な暖房の抑制とランニングコストの更なる低下とを併せて達成できる。
【0019】
本発明に係る温風暖房装置の更に別の特徴構成は、燃焼器に供給する燃料量が前記最小供給燃料量である状態で前記過剰暖房条件が満たされると、前記過剰暖房回避処理として、前記燃焼器への燃料の供給を停止させて前記燃焼器での燃焼を停止させる点にある。
【0020】
第2暖房運転モードで一定燃料量運転が行われているとき、燃焼器に供給される燃料量が最小供給燃料量である状態では、それ以上の燃料量減少処理を行うことはできない。
そこで本特徴構成では、制御手段は、第2暖房運転モードで一定燃料量運転を行っているとき、燃焼器に供給する燃料量が最小供給燃料量である状態で過剰暖房条件が満たされると、過剰暖房回避処理として、燃焼器への燃料の供給を停止させて燃焼器での燃焼を停止させる。
【0021】
本発明に係る温風暖房装置の更に別の特徴構成は、前記過剰暖房回避処理は、前記過剰暖房条件が満たされると、前記燃焼器への燃料の供給を停止させて前記燃焼器での燃焼を停止させる処理である点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、制御手段は、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされると、過剰暖房回避処理として、燃焼器への燃料の供給を停止させて燃焼器での燃焼を停止させる。つまり、過剰な暖房が行われているということは、燃焼器に供給されて燃焼されている燃料量が過剰であることを示しているので、燃焼器への燃料の供給を停止させて燃焼器での燃焼を停止させることで、過剰な暖房の抑制とランニングコストの更なる低下とを併せて達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態の温風暖房装置の概略的な構成図である。
図2】第1実施形態の運転操作受付部の構成例を示す図である。
図3】第1実施形態の設定室温表示部で表示される通常モードの設定値の遷移例を示す図である。
図4】第1実施形態の設定室温表示部で表示される手動モードの設定値の遷移例を示す図である。
図5】第1実施形態の温風暖房装置の機能ブロック図である。
図6】第1実施形態の暖房運転を説明するフローチャートである。
図7】第2実施形態の運転操作受付部の構成例を示す図である。
図8】第2実施形態の設定室温表示部で表示される通常モード及び手動モードの設定値の遷移例を示す図である。
図9】第4実施形態の暖房運転を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態の温風暖房装置100について説明する。本実施形態の温風暖房装置100は、使用者が指定した設定目標温度に応じて運転を行う通常モード(本発明の「第1暖房運転モード」に相当)と、使用者が指定した燃焼器20への供給燃料量に応じて運転を行う手動モード(本発明の「第2暖房運転モード」に相当)とを切り替えて実行する。つまり、以下に説明するように、温風暖房装置100を通常モードで運転させることで、暖房出力が自動的に適宜変更されながら、温風暖房装置100が設置されている部屋全体の空気の温度を所定の設定目標温度にさせることができる。また、温風暖房装置100を手動モードで運転させることで、温風暖房装置100の燃焼器20で燃焼される燃料量を使用者が指定した一定の燃料量に維持した状態(即ち、暖房出力を一定に維持した状態)での局所的な暖房(例えば、吹き出される温風が直接当たる範囲での暖房)を行うことができる。
【0030】
図1は、第1実施形態の温風暖房装置の概略的な構成図である。具体的には、図1(a)は温風暖房装置100の主要な構成部品の配置状態を示す正面透視図であり、図1(b)は温風暖房装置100を側部から見た断面図である。図示するように、温風暖房装置100は、空気を吸い込む吸込口70及び空気を吹き出す吹出口72を有する筐体10の内部に、燃料を燃焼する燃焼器20と、燃焼器20に供給する燃料量を調節する燃料量調節手段Fと、吸込口70を介した筐体10内への空気の吸気と吹出口72を介した筐体10内からの空気の吹き出しとを行うように空気を流動させる対流用ファン40(本発明の「空気流動手段」の一例)と、動作を制御する制御手段80とを備え、吸込口70から筐体10内に吸い込んだ空気を燃焼器20の燃焼排ガスと混合させることで空気の昇温を行って、昇温した空気を吹出口72から吹き出すように構成されている装置である。加えて、温風暖房装置100は、筐体10の天面に、運転に関する指示を使用者から受け付ける運転操作受付部50(本発明の「運転指示受付手段」の一例)を備える。
【0031】
このように、温風暖房装置100の筐体10には、背面に外気を燃焼用空気Aとして取り入れる吸込口70が設けられていると共に、前面に燃焼後の燃焼排ガスと空気との混合ガスを温風として吹き出す吹出口72が設けられている。そして、筐体10の背面には、周囲の空気の温度を測定できる、即ち、温風暖房装置100が使用されている室内の空気の温度を測定できる室内温度センサ1が設けられている。つまり、この室内温度センサ1は、吸込口70から筐体10内に吸い込む空気の温度を測定する吸込空気温度測定手段として機能する。また、吸込口70の外側には、塵埃を捕捉するためのエアフィルタ71が設定されている。
【0032】
燃焼器20は、燃料ガスGを燃焼用空気Aと共に燃焼させる。具体的には、燃焼器20には、燃料ガスGを導く燃料ガス流路24が連通接続されており、その燃料ガス流路24には、燃料ガスGの流通を止める又は許容する第1電磁弁26a及び第2電磁弁26bと、燃料ガスGの流量を調整可能な比例弁25と、燃料ガスGを燃焼器20に向けて噴射する噴射ノズル23とが設けられている。このうち、第1電磁弁26a及び第2電磁弁26b及び比例弁25が、燃焼器20に供給する燃料量を調節する燃料量調節手段Fとして機能する。二つの電磁弁(第1電磁弁26a及び第2電磁弁26b)が設けられている理由は、燃料ガスGが燃料ガス流路24の下流側へ漏出することを、より確実に防止するためである。加えて、燃焼器20は、その燃焼室22に導かれた燃料ガスGと燃焼用空気Aとの混合気に点火する点火器21と、形成された火炎を検出して火炎の立ち消えを検知可能な火炎センサ4とを備えている。
【0033】
本発明の空気流動手段としての対流用ファン40は、クロスフローファン41と、クロスフローファン41を周方向に回転させるファン駆動用モータ42とから構成されている。ファン駆動用モータ42が、クロスフローファン41を回転させることにより、吸込口70から筐体10の内部へと外気が取り入れられる。そして、筐体10の内部に吸い込まれた空気の一部は、燃焼用空気Aとして燃焼器20の燃焼室22へ導かれ、残りの空気は燃焼室22を迂回して流れながら燃焼器20の燃焼排ガスと混合される。これにより、吸込口70から筐体10の内部に吸い込まれた空気が昇温されて、吹出口72から筐体10の外部へと吹き出される。
【0034】
図2は第1実施形態の運転操作受付部50の構成例を示す図である。図3は第1実施形態の設定室温表示部で表示される通常モード(第1暖房運転モード)の設定値の遷移例を示す図であり、図4は第1実施形態の設定室温表示部で表示される手動モード(第2暖房運転モード)の設定値の遷移例を示す図である。図5は、第1実施形態の温風暖房装置の機能ブロック図である。
【0035】
運転操作受付部50は、筐体10の天面に設けられ、運転に関する指示を使用者から受け付ける。運転操作受付部50は、使用者等により操作させる操作スイッチとして、おやすみタイマースイッチS1と、おはようタイマースイッチS2と、エコ運転スイッチS3と、手動モードスイッチS4と、温度/時間設定スイッチ(設定値切替スイッチ)S5(上方向スイッチS5a、下方向スイッチS5b)と、運転/停止スイッチS6とを有する。加えて、運転操作受付部50は、温風暖房装置100の状態を示す表示部として、おやすみタイマーの設定中に点灯されるおやすみタイマーランプ51と、おはようタイマーの設定中に点灯されるおはようタイマーランプ52と、エコ運転の実行中に点灯されるエコ運転ランプ53と、手動モード運転の実行中に点灯される手動モードランプ54と、吸込口70に設けられているフィルターの目詰まりを使用者に報知するために点灯されるフィルター掃除ランプ55と、運転が行われているときに点灯される運転状態表示ランプ56と、通常モード及び手動モードの設定値等を表す数字・文字・記号などを表示する設定室温表示部57と、現在室温等を表す数字・文字・記号などを表示する現在室温表示部58とを有する。
【0036】
運転/停止スイッチS6は、運転の開始及び停止を指示するためのスイッチである。温風暖房装置100が運転を停止した状態にあるとき使用者が運転/停止スイッチS6を押し操作すると、制御手段80は、その操作を運転開始の指示として受け付けると共に運転状態表示ランプ56を点灯させる。また、温風暖房装置100が運転を行っている状態にあるときに使用者が運転/停止スイッチS6を押し操作すると、制御手段80は、その操作を運転停止の指示として受け付けると共に運転状態表示ランプ56を消灯させる。
【0037】
制御手段80は、例えばマイクロコンピュータ等の演算処理機能及び例えば半導体メモリなどの情報記憶機能を有する電気回路部を用いて構成される装置である。そして、制御手段80は、温風暖房装置100を、通常モードに相当)での運転と手動モードでの運転とを、使用者からの指示に応じて切り換えて実行する。本実施形態では、制御手段80は、後述する手動モードスイッチS4が「入り」操作されていなければ、通常モードでの運転の実行指示を受けていると判定し、手動モードスイッチS4が「入り」操作されていれば、手動モードでの運転の実行指示を受けていると判定する。
【0038】
制御手段80は、通常モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、吸込空気温度測定手段としての室内温度センサ1が測定する空気の温度が設定目標温度となるように、室内温度センサ1が測定する空気の温度と設定目標温度との温度差に基づいて、最小供給燃料量と最大供給燃料量との間の全供給燃料量範囲の中から燃焼器20に供給する目標供給燃料量を決定し、その目標供給燃料量を燃料量調節手段Fにより燃焼器20へ供給させる。後述するように、運転指示受付手段としての温度/時間設定スイッチ(設定値切替スイッチ)S5は、通常モードでの運転に用いる設定目標温度の設定指示を使用者から受け付ける。
【0039】
また、本実施形態では、燃料量調節手段Fを構成する比例弁25は、燃焼器20へ供給する燃料量に対応する弁開度を段階的に変化させる段階比例弁である。そして、制御手段80は、比例弁25の弁開度を段階的に変化させることで、燃焼器20へ供給する燃料量を段階的に変化させる。表1に示すのは、燃料量調節手段Fが燃焼器20に供給可能な最小供給燃料量と最大供給燃料量との間の全供給燃料量範囲の例である。表1に示すように、比例弁25の弁開度は1段(最小供給燃料量)〜12段(最大供給燃料量)までの合計12段階ある。例えば、弁開度が1段のときの燃焼器20への供給燃料量は、暖房能力で0.76kWに相当する。そして、弁開度の段数が大きくなるにつれて、燃焼器20への供給燃料量(暖房能力)が多くなる。また、制御手段80は、燃焼器20への供給燃料量に応じた空気を燃焼器20に供給するべく、対流用ファン40の運転状態を制御する。
【0040】
【表1】
【0041】
制御手段80が通常モードで運転を行うときの上記設定目標温度は、使用者が温度/時間設定スイッチ(設定値切替スイッチ)S5を操作して設定できる。例えば、制御手段80は、通常モードで運転を行っているとき、設定室温表示部57に使用者が入力した設定目標温度又は初期値を表示している。そして、使用者が上方向スイッチS5aを押し操作する毎にその温度の表示値が順次増加変更され、下方向スイッチS5bを押し操作する毎にその温度の表示値が順次減少変更される。温風暖房装置100を通常モードで運転させることで、暖房出力が自動的に適宜変更されながら、温風暖房装置100が設置されている部屋全体の空気の温度を所定の設定目標温度にさせることができる。
【0042】
図3は、設定室温表示部57で表示される通常モードの設定値の遷移例を示す図である。この例では、使用者は、12℃〜26℃までの温度を通常モードでの設定目標温度として1℃刻みで設定できる。図示は省略するが、このとき、現在室温表示部58には室内温度センサ1で測定されている温度が表示されている。加えて、使用者は、12℃よりも低い設定温度に対応する設定状態として「L(ロー)」を設定でき、26℃よりも高い設定温度に対応する設定状態として「H(ハイ)」を設定できる。例えば、「L(ロー)」が設定された場合には設定温度は10℃等の低温度となり、「H(ハイ)」が設定された場合には設定温度は45℃などの高温度になる。そして、図3に示す複数の設定値は、上方向スイッチS5a及び下方向スイッチS5bを使用者が押し操作する毎に、図3に矢印で示した順序で一段階ずつ順次設定変更される。
【0043】
これに対して、制御手段80は、詳細は後述するように、運転指示受付手段としての手動モードスイッチS4が手動モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、一定の燃料量を燃料量調節手段Fにより燃焼器20に継続的に供給して燃焼させる一定燃料量運転を行い、及び、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされると、燃焼器20に供給する燃料量を減少させることを含む過剰暖房回避処理を行う。ここで、燃焼器20に供給する燃料量を減少させた上で燃料量の供給を継続すること(即ち、燃焼器20での燃焼を継続させること)、燃焼器20に供給する燃料量を減少させてゼロにすること(即ち、燃焼器20での燃焼を停止させること)の両方が過剰暖房回避処理に含まれる。後述するように、運転指示受付手段としての温度/時間設定スイッチ(設定値切替スイッチ)S5は、燃料量調節手段Fにより調節される上記全供給燃料量範囲の中から、手動モードでの運転に用いる設定燃料量を特定可能な情報の設定指示を受け付ける。
【0044】
手動モードスイッチS4は、本発明の第2暖房運転モード(本実施形態で説明する手動モード)の実行を指令するためのスイッチである。手動モードスイッチS4が「入り」操作された状態にあると、制御手段80は温風暖房装置100を手動モードで動作させ、手動モードスイッチS4が「切り」操作された状態にあると、制御手段80は温風暖房装置100を通常モードで動作させる。上述のように、この手動モードスイッチS4は、通常モード(第1暖房運転モード)と手動モード(第2暖房運転モード)とを切り換える運転モード切替スイッチとして機能する。このように、手動モードスイッチS4は、使用者から手動モードでの運転の実行及び停止を受け付けるための専用のスイッチである。また、本実施形態では、使用者が手動モードスイッチS4を「入り」操作すると、その制御手段80は、運転を手動モードに切り換えると共に、手動モードスイッチS4が「入り」状態であることを記憶し、運転が停止された後も手動モードスイッチS4が「入り」状態であることを記憶し続けている。
【0045】
図4は、設定室温表示部57で表示される手動モードの設定値の遷移例を示す図である。この例では、使用者は、燃焼器20に供給する設定燃料量を特定可能な情報として、P1〜P5までの5個の設定値のうちの何れかを入力できる。表2は、手動モードの設定値と、燃焼器20に供給する設定燃料量(即ち、暖房能力)との対応関係の例である。
【0046】
【表2】
【0047】
本実施形態では、表2に示すように、手動モードでの運転に用いる設定燃料量を特定可能な情報としての設定値が「P1」であるとき、燃焼器20に供給される燃料量は、表1で示した燃料量調節手段Fを構成する比例弁25が「1段」であるときの燃料量に相当する。同様に、手動モードの設定値が「P2」〜「P5」であるとき、燃焼器20に供給される燃料量は、表1で示した燃料量調節手段Fを構成する比例弁25が「2段」〜「5段」であるときの燃料量に相当する。このように、P1〜P5までの5個の設定値は、燃焼器20に供給される燃料量が互いに異なるように設定されている。使用者は、P1が最も暖房能力が低くなり、P5が最も暖房能力が高くなるという表2の対応関係を知っているものとする。そして、図4に示すP1〜P5の設定状態は、上方向スイッチS5a及び下方向スイッチS5bを使用者が押し操作する毎に、図4に矢印で示した順序で一段階ずつ順次設定変更される。使用者は、設定室温表示部57に表示されているP1〜P5という設定値を見ることで手動モードでの運転が行われていることを認識できる。また、制御手段80は、使用者によって設定された手動モードの設定値(例えば、上記P1〜P5の何れか)を記憶しておく。
【0048】
おやすみタイマースイッチS1は、運転停止の予約を行うためのスイッチである。使用者がおやすみタイマースイッチS1を「入り」操作すると、制御手段80は、その操作を、現在運転中である温風暖房装置100の運転停止の予約指示として受け付ける。例えば、使用者がおやすみタイマースイッチS1を「入り」操作すると、制御手段80は、おやすみタイマーランプ51を点灯させると共に、設定室温表示部57に、何分後に運転停止するのかを示す数字(初期値)を表示させる。そして、制御手段80は、温度/時間設定スイッチS5の上方向スイッチS5aを使用者が押し操作したことに応じてその表示された時間を増加させること、或いは、温度/時間設定スイッチS5の下方向スイッチS5bを使用者が押し操作したことに応じてその表示された時間を減少させることで、その表示された時間を運転停止するまでの残り時間として設定させる。但し、このおやすみタイマーで設定可能な時間は例えば60分を上限とする。
【0049】
おはようタイマースイッチS2は、運転開始の予約を行うためのスイッチである。使用者がおはようタイマースイッチS2を「入り」操作すると、制御手段80は、その操作を、現在停止中である温風暖房装置100の運転開始の予約指示として受け付ける。例えば、使用者がおはようタイマースイッチS2を「入り」操作すると、制御手段80は、おはようタイマーランプ52を点灯させると共に、設定室温表示部57に、何時間後に運転開始するのかを示す数字(初期値)が表示される。そして、制御手段80は、温度/時間設定スイッチS5の上方向スイッチS5aを使用者が押し操作したことに応じてその表示された時間を増加させること、或いは、温度/時間設定スイッチS5の下方向スイッチS5bを使用者が押し操作したことに応じてその表示された時間を減少させることで、その表示された時間を運転開始するまでの残り時間として設定させる。
【0050】
エコ運転スイッチS3は、温風暖房装置100で消費される燃料量を相対的に少なくさせる運転の実行を指令するためのスイッチである。使用者がエコ運転スイッチS3を「入り」操作すると、制御手段80は、その操作を、エコ運転の実行指示として受け付ける。例えば、使用者がエコ運転スイッチS3を押し操作すると、制御手段80は、エコ運転ランプ53を点灯させると共に、エコ運転モードでの運転を開始する。このエコ運転モードの運転では、制御手段80は、通常モードでの運転を行いつつ室内温度センサ1が測定した室内の温度が上記設定目標温度まで上昇すると30分間はその設定目標温度のままで運転を行い、その後、実際の運転制御上の目標温度を設定目標温度よりも1℃下げた状態で通常モードでの運転を継続する。尚、設定室温表示部57に表示される設定目標温度は、使用者が設定した設定目標温度のままである。そして、制御手段80は、更に30分間運転を行い、室内温度センサ1が測定した室内の温度が目標温度(設定目標温度よりも1℃低い温度)以上であれば、更に実際の運転制御上の設定温度を1℃下げる。このように、体感温度を大きく損なうことなく、徐々に設定室温を低くすることで、燃料費を節約することができる。
【0051】
筐体10の内部には、内部温度を測定する本体内用温度センサ2が設けられている。図1に示した例では、本体内用温度センサ2は、燃焼器20よりも下流側で、且つ、燃焼排ガスと空気とが混合された後の混合ガスが流れる部位での温度を測定する。そして、制御手段80は、本体内用温度センサ2の測定温度が、異常高温域に達していると判定した場合には、燃焼器20の燃焼を停止する等の制御を行う。本体内用温度センサ2の測定温度がこのような異常高温域に達するのは、吸込口70に設けられているフィルターの目詰まりである可能性が高い。そのため、制御手段80は、本体内用温度センサ2の測定温度が異常高温域に達していると判定した場合には、この問題を使用者に報知するためにフィルター掃除ランプ55を点灯する。
更に、制御手段80等を構成する電気回路の途中には、その電気回路の温度が所定以上となった場合に、その電気回路を断線させる回路用温度ヒューズ3が設けられている。つまり、回路用温度ヒューズ3が所定の温度で溶断することで、電気回路の耐え得る温度を超える前に電気回路(即ち、制御手段80)の動作が停止されて温風暖房装置100の動作が停止され、その電気回路が熱によって故障することなどを防止している。
【0052】
次に、温風暖房装置100の運転制御について説明する。
図6は、第1実施形態の暖房運転を説明するフローチャートである。制御手段80は、運転/停止スイッチS6が「入り」操作されると、工程#10に移行して運転開始処理を行う。制御手段80は、この運転開始処理において、温風暖房装置100を運転停止状態から運転状態へ切り替える場合、第1電磁弁26a及び第2電磁弁26bを開状態とし、比例弁25を所定の開度に設定して、燃料ガスGを噴射ノズル23から燃焼器20の燃焼室22へ噴射させる。制御手段80は、それと同時に、ファン駆動用モータ42を駆動させて対流用ファン40を働かせ、燃焼室22へ燃焼用空気Aを導く。そして、制御手段80は、点火器21により燃料ガスGと燃焼用空気Aとの混合気に点火して燃焼させる。
【0053】
次に工程#11において制御手段80は、手動モードが「入り」状態であるか否かを判定し、手動モードが「入り」状態でない場合には工程#12に移行して通常モードでの運転を行い、手動モードが「入り」状態である場合には工程#13に移行して手動モードでの運転を行う。
【0054】
工程#12において制御手段80は、通常モードでの運転、つまり、室内温度センサ1が測定する空気の温度と設定目標温度との温度差に基づいて、表1に示した全供給燃料量範囲(即ち、比例段数の1段〜12段の範囲)の中から燃焼器20に供給する目標供給燃料量(即ち、設定する比例段数)を決定し、その目標供給燃料量を燃料量調節手段Fにより燃焼器20へ供給させる。その結果、室内温度センサ1が測定する空気の温度が設定目標温度よりも低いほど、目標供給燃料量が多くなるように(即ち、高い比例段数になるように)な制御が行われる。このように、制御手段80は、吸込口70から筐体10内に吸い込む空気の温度(即ち、温風暖房装置100が設置されている室内空気の温度)が設定目標温度となるように燃焼器20に供給する燃料量が調節されるので、温風暖房装置100が設置されている室内の温度が使用者にとって快適な状態に近づくことになる。
【0055】
工程#13において制御手段80は、手動モードでの運転、つまり、一定の燃料量を燃料量調節手段Fにより燃焼器20に継続的に供給して燃焼させる一定燃料量運転を行う。例えば、制御手段80は、手動モードでの運転を行うとき、燃焼器20に供給する設定燃料量を特定可能な情報として「P3」という設定値が使用者によって予め設定されていれば、表2に示したように、比例弁25の弁開度の段数を「3段」にさせて一定燃料量運転を行う。このように、温風暖房装置100を手動モードで運転させることで、温風暖房装置100の燃焼器20で燃焼される燃料量を使用者が指定した一定の燃料量に維持した状態(即ち、暖房出力を一定に維持した状態)での局所的な暖房(例えば、吹き出される温風が直接当たる範囲での暖房)を行うことができる。
【0056】
尚、手動モードでの一定燃料量運転が行われているときは燃焼器20で燃焼される燃料量が一定値に維持されるため、温風暖房装置100が設置されている部屋の温度の制御は行われていない。そのため、部屋の大きさ、部屋への外気の出入り(部屋への人の出入り)、外気温度などに応じて、燃焼器20に供給される燃料量が一定のままでも部屋の温度が徐々に上昇することもある。つまり、部屋全体の空気を必要以上に暖めることとなり、そのような場合には、ランニングコストが高くなるという問題が生じる。
【0057】
そこで、工程#14において制御手段80は、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件を満たしているか否かを判定する。そして、制御手段80は、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件を満たしている場合には、燃焼器20に供給する燃料量を減少させることを含む過剰暖房回避処理を行う。具体的には、本実施形態の過剰暖房回避処理は、過剰暖房条件が満たされると、燃焼器20に供給する燃料量を所定量だけ減少させる燃料量減少処理を行った上で一定燃料量運転を継続する処理であり、更に具体的には、燃焼器20に供給している燃料量が最小供給燃料量ではないこと(即ち、工程#15において「No」であること)を条件として、燃焼器20に供給する燃料量を所定量だけ減少させる燃料量減少処理を行った上で一定燃料量運転を継続する処理である。例えば、過剰暖房条件が満たされたと判定される前に、比例弁25の弁開度の段数を「3段」にさせた一定燃料量運転が行われていた場合、制御手段80は、比例弁25の弁開度の段数を「2段」にさせるという燃料量減少処理を行った上で一定燃料量運転を継続する。尚、燃料量減少処理によって、比例弁25の弁開度の段数を「3段」から「2段」へと1段階だけ下げるのではなく、複数段階下げてもよい(例えば、「3段」から「1段」へと2段階下げてもよい)。
【0058】
本実施形態では、工程#14において制御手段80は、室内温度センサ1が測定する空気の温度が所定の判別用温度以上になると上記過剰暖房条件が満たされたと判定する。或いは、制御手段80は、室内温度センサ1が測定する空気の温度が所定の判別用温度以上である期間が所定期間継続すると過剰暖房条件が満たされたと判定してもよい。
例えば、制御手段80は、上記判別用温度として22℃という温度を記憶しており、室内温度センサ1が測定する空気の温度が22℃以上になると過剰暖房条件(温度条件:22℃)が満たされたと判定する。或いは、制御手段80は、上記判別用温度として22℃という温度を記憶しており、室内温度センサ1が測定する空気の温度が22℃以上である期間が30分(上記所定期間の一例)継続すると過剰暖房条件(温度条件:22℃及び時間条件:30分)が満たされたと判定する。
【0059】
ここで、制御手段80が上述した何れの過剰暖房条件、即ち、上述したような温度条件のみを有する第1過剰暖房条件、或いは、上述したような温度条件及び時間条件を有する第2過剰暖房条件を採用するのかは適宜設定可能である。
例えば、制御手段80が、手動モードでの運転を開始してから未だ上記燃料量減少処理を行っていない間は上記第1過剰暖房条件を採用し、手動モードでの運転を開始してから燃料量減少処理を行った後は上記第2過剰暖房条件を採用するというように、第1過剰暖房条件と第2過剰暖房条件とを組み合わせて採用してもよい。具体例を挙げると、制御手段80は、手動モードでの運転を開始してから未だ上記燃料量減少処理を行っていない間は、室内温度センサ1が測定する空気の温度が22℃(所定の判別用温度)以上になると過剰暖房条件が満たされたと判定して燃料量減少処理を行い、このような燃料減少処理を行った後は、室内温度センサ1が測定する空気の温度が22℃以上である期間が30分継続すると過剰暖房条件が満たされたと判定するという制御を行ってもよい。
勿論、制御手段80が、手動モードでの運転を開始してから未だ上記燃料量減少処理を行っていない間、及び、手動モードでの運転を開始してから燃料量減少処理を行った後の何れの場合においても、上記第1過剰暖房条件のみを採用するように構成してもよいし、上記第2過剰暖房条件のみを採用するように構成してもよい。
【0060】
このように、制御手段80は、図6の工程#13〜工程#16に示したように、手動モードでの運転では、燃焼器20に供給している燃料量が最小供給燃料量では無い限り(即ち、比例弁25の弁開度が表2に示した「1段」になっていない限り)、過剰暖房条件が満たされたと判定される度に、燃料量減少処理を行うことになる。
これに対して、制御手段80は、過剰暖房条件が満たされていないと判定すると(即ち、工程14#において「No」)、上述した燃料量減少処理を行わず、そのままの燃料量で手動モードでの運転を継続するべく、工程#17に移行する。
【0061】
尚、制御手段80は、手動モードで一定燃料量運転を行っているとき、燃焼器20に供給する燃料量が最小供給燃料量である状態で過剰暖房条件が満たされると、上記過剰暖房回避処理として、燃焼器20に供給する燃料量を減少させてゼロにさせて、即ち、燃焼器20への燃料の供給を停止させて燃焼器20での燃料の燃焼を停止させる。つまり、図6の工程#14〜工程#15に示したように、制御手段80は、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件を満たしており、且つ、燃焼器20に供給している燃料量が最小供給燃料量である場合(即ち、工程#15において「Yes」である場合)には、燃焼器20への燃料の供給を停止させて燃焼器20での燃料の燃焼を停止させる(工程#18)。
【0062】
工程#17において制御手段80は、運転/停止スイッチS6が「切り」操作されたか否かを判定し、「切り」操作されていなければ工程#11に帰還し、「切り」操作されていれば温風暖房装置100の運転を停止させる。
【0063】
以上のように、本実施形態の温風暖房装置100では、通常モードでの運転が行われているとき、吸込口70から筐体10内に吸い込む空気の温度(例えば、温風暖房装置100が設置されている室内空気の温度)が、使用者から受け付けている設定目標温度となるように燃焼器20に供給する燃料量が自動的に調節される。その結果、温風暖房装置100が設置されている室内の温度が使用者にとって快適な状態に近づくことになる。
加えて、本実施形態の温風暖房装置100では、手動モードでの運転が行われているとき、一定の燃料量を燃料量調節手段Fにより燃焼器20に継続的に供給して燃焼させる一定燃料量運転を行うように構成され、この一定燃料量運転を開始するときの上記一定の燃料量は、使用者から受け付けている値(設定燃料量)となる。つまり、燃焼器20に供給されて燃焼される一定の燃料量は、温風暖房装置100で自動的に調節する値ではなく、使用者から受け付けている値(設定燃料量)になるため、暖房が、使用者にとって必要以上のランニングコストをかけながら行われることが回避される。更に、上述した過剰暖房条件が満たされると、燃焼器20に供給する燃料量を減少させることを含む過剰暖房回避処理(図6に示した工程#15、工程#16、工程#18)を行う。つまり、過剰な暖房が行われているということは、燃焼器20に供給されて燃焼されている燃料量が過剰であることを示しているので、燃焼器20に供給する燃料量を減少させることを含む過剰暖房回避処理を行うことで、過剰な暖房の抑制とランニングコストの更なる低下とを併せて達成できる。従って、必要以上にランニングコストが高くなることを回避できる温風暖房装置100を提供できる。
【0064】
<第2実施形態>
第2実施形態の温風暖房装置は、手動モードスイッチS4を備えない点で上記実施形態と異なっている。以下に、第2実施形態の温風暖房装置について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0065】
図7は、第2実施形態の運転操作受付部の構成例を示す図である。図7に示すように、本実施形態では、上記実施形態で設けられていた手動モードスイッチS4が運転操作受付部50に設けられていない。その代わり、本実施形態では、温度/時間設定スイッチS5が、使用者から手動モード(第2暖房運転モード)での運転の実行及び停止を受け付けるために利用される。
【0066】
図8は、第2実施形態の設定室温表示部57で表示される通常モード及び手動モードの設定値の遷移例を示す図である。この例では、使用者は、通常モードの設定値(設定目標温度)としての12℃〜26℃並びに「L」状態及び「H」状態よりも下の段階に、手動モードの設定値(設定燃料量を特定可能な情報)としてのP1〜P5(第1実施形態の表2で示したのと同様)を設けている。そして、運転操作受付部50が有する温度/時間設定スイッチS5(本発明の「設定値切替スイッチ」に相当)が使用者によって押し操作される毎に、通常モードでの運転に用いる設定目標温度としての複数の設定値(12℃〜26℃並びに「L」状態及び「H」状態)と、手動モードでの運転に用いる設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値(P1〜P5)とを含む設定値群のうちの何れか一つの設定値が、図8に矢印で示した順序で一段階ずつ順次設定変更される。
【0067】
具体的には、設定室温表示部57に通常モード用の設定である「L」が表示されている状態で更に下方向スイッチS5bが押し操作されると、手動モード用の「P5」という設定に表示が切り換わる。そして、制御手段80は、温度/時間設定スイッチS5によって通常モードの設定値が設定されているときは(即ち、設定室温表示部57に通常モードの設定目標温度が表示されているときは)運転指示受付手段としての運転操作受付部50が通常モードでの運転の実行指示を受け付けていると判定し、温度/時間設定スイッチS5によって手動モードの設定値が設定されているときは(即ち、設定室温表示部57に手動モードの設定値としてのP1〜P5の何れかが表示されているときは)運転指示受付手段としての運転操作受付部50が手動モードでの運転の実行指示を受け付けていると判定する。
【0068】
このように、通常モードの設定目標温度としての複数の設定値(H、26℃、25℃、・・・、13℃、12℃、L)には、温度/時間設定スイッチS5が押し操作される毎に順次設定変更されるときの変更順序が定められており、温度/時間設定スイッチS5が押し操作される毎に設定目標温度としての一つの設定値から設定目標温度としての他の設定値へと順次設定変更される。手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値(P1〜P5)には、温度/時間設定スイッチS5が押し操作される毎に順次設定変更されるときの変更順序が定められており、温度/時間設定スイッチS5が押し操作される毎に設定燃料量を特定可能な情報としての一つの設定値から他の設定値へと順次設定変更される。また、通常モードの設定目標温度としての複数の設定値の中に一つの第1境界設定値(L)があり、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中に一つの第2境界設定値(P5)がある。
【0069】
そして、制御手段80は、下方向スイッチS5b(温度/時間設定スイッチS5)に対する押し操作が行われることで通常モードの設定目標温度としての一つの設定値(12℃)から第1境界設定値である設定値(L)に設定変更した後で更に下方向スイッチS5b(温度/時間設定スイッチS5)に対する押し操作が行われると、手動モードの第2境界設定値である設定値(P5)に設定変更する。また、制御手段80は、上方向スイッチS5a(温度/時間設定スイッチS5)に対する押し操作が行われることで手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての一つの設定値(P4)から第2境界設定値である設定値(P5)に設定変更した後で更に上方向スイッチS5a(温度/時間設定スイッチS5)に対する押し操作が行われると、通常モードの第1境界設定値である設定値(L)に設定変更する。
【0070】
以上のように、温度/時間設定スイッチS5を使用者が押し操作する毎に、通常モードの複数の設定値と手動モードの複数の設定値とを含む設定値群の中の何れか一つの設定値が順次設定変更される。つまり、一つの温度/時間設定スイッチS5を用いて通常モード(第1暖房運転モード)用の設定値と手動モード(第2暖房運転モード)用の設定値とを設定できるので、通常モードの設定値を設定するためのスイッチと手動モードの設定値を設定するためのスイッチとを温風暖房装置100に別々に搭載しなくてもよい。
加えて、制御手段80は、温度/時間設定スイッチS5によって通常モードの設定値が設定されているとき(即ち、設定室温表示部57に通常モードの設定値が表示されているとき)は通常モードでの運転が指示されていると判定し、温度/時間設定スイッチS5によって手動モードの設定値が設定されているとき(即ち、設定室温表示部57に手動モードの設定値が表示されているとき)は手動モードでの運転が指示されていると判定するので、使用者が通常モードでの運転を指示するためのスイッチと手動モードでの運転を指示するためのスイッチとを温風暖房装置100に別々に搭載しなくてもよい。
【0071】
<第3実施形態>
第3実施形態の温風暖房装置は、温度/時間設定スイッチS5が押し操作されたときの通常モードの設定値と手動モードの設定値との遷移形態が上記第2実施形態と異なっている。以下に、第3実施形態の温風暖房装置について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0072】
上記第2実施形態では、温度/時間設定スイッチS5を使用者が押し操作する毎に、通常モードの複数の設定値と手動モードの複数の設定値とを含む設定値群のうちの何れか一つの設定値が一段階ずつ順次設定変更される例を説明した。この場合、温度/時間設定スイッチS5を何度も押し操作しなければ、通常モードの設定値を設定している状態と、手動モードの設定値を設定している状態との間での状態遷移をさせることができない。例えば、図8に示した例では、通常モードの設定値としての「26℃」が設定されている状態から、手動モードの設定値としての「P3」が設定されている状態へと遷移させるために、使用者は温度/時間設定スイッチS5の下方向スイッチS5bを18回も押し操作しなければならない。
【0073】
そのような問題に鑑みて、制御手段80が、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する押し操作が設定時間以上連続したときの長押操作と、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する押し操作が上記設定時間未満連続したときの通常押操作とを区別して判定するように構成してもよい。例えば、制御手段80が、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する押し操作が3秒以上連続したときの長押操作と、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する押し操作が3秒未満連続したときの通常押操作とを区別して判定するように構成してもよい。
【0074】
そして、制御手段80は、通常モードの設定目標温度の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する長押操作が行われると、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の特定の設定値に設定変更し、並びに、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する長押操作が行われると、通常モードの設定目標温度の中の特定の設定値に設定変更する。
これに対して、制御手段80は、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する通常押操作が行われた場合、上記第2実施形態で説明したのと同様に、各設定値を一段階ずつ順次設定変更する。
【0075】
例えば、制御手段80は、通常モードの設定目標温度としての「26℃」が設定されている状態から、使用者が温度/時間設定スイッチS5の下方向スイッチS5bを長押操作すると、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の特定の設定値としての「P3」が設定されている状態へと遷移させる。これに対して、制御手段80は、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の「P3」が設定されている状態から、使用者が温度/時間設定スイッチS5の上方向スイッチS5aを長押操作すると、通常モードの設定目標温度の中の特定の設定値としての「26℃」が設定されている状態へと遷移させる。
【0076】
ここで、制御手段80は、過去に通常モードから手動モードへ切り換えられた段階での直近の設定値である当該通常モードでの設定目標温度(この場合は「26℃」)を記憶しており、この記憶している設定目標温度を、上記設定目標温度の中の特定の設定値(即ち、長押操作による変更先の設定値)としている。同様に、制御手段80は、過去に手動モードから通常モードへ切り換えられた段階での直近の設置値である当該手動モードでの設定値(この場合は「P3」)を記憶しており、この記憶している設定値を、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の特定の設定値(即ち、長押操作による変更先の設定値)としている。
【0077】
以上のように、本実施形態では、制御手段80は、通常モードの設定目標温度の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する長押操作が行われると、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の特定の設定値に設定変更し、並びに、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値の中の何れかの設定値が設定されている状態で、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する長押操作が行われると、通常モードの設定目標温度の中の特定の設定値に設定変更する。つまり、使用者は温度/時間設定スイッチS5に対する1回の長押操作によって、通常モードの設定値が設定されている状態と手動モードの設定値が設定されている状態との間での設定変更をさせることができる。
【0078】
<第4実施形態>
第4実施形態の温風暖房装置は、過剰暖房回避処理の内容が上記実施形態と異なっている。以下に第4実施形態の温風暖房装置について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0079】
図9は、第4実施形態の暖房運転を説明するフローチャートである。
本別実施形態の図9に示すフローチャートは、図6で説明したフローチャートの工程#15及び工程#16を省略したものである。そして、本実施形態において制御手段80は、過剰暖房条件が満たされると、燃焼器20への燃料の供給を停止させて燃焼器20での燃焼を停止させる過剰暖房回避処理を行う。つまり、制御手段80は、運転操作受付部50が手動モードでの運転の実行指示を受け付けているとき、一定の燃料量を燃料量調節手段Fにより燃焼器20に継続的に供給して燃焼させる一定燃料量運転を行い(工程#13)、及び、その一定燃料量運転を行っている途中に、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件が満たされると(工程#14において「Yes」)、燃焼器20に供給する燃料量を減少させてゼロにさせて、即ち、燃焼器20への燃料の供給を停止させて燃焼器20での燃料の燃焼を停止させる(工程#18)。このように、本実施形態でも、一定燃料量運転が行われることで、暖房が、使用者にとって必要以上のランニングコストをかけながら行われることが回避される。更に、上述した過剰暖房条件が満たされると燃焼器20への燃料の供給を停止させて燃焼器20での燃焼を停止させることで、過剰な暖房の抑制とランニングコストの更なる低下とを併せて達成できる。
【0080】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、温風暖房装置100の構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。例えば、比例弁25が12段階の比例段数を有する例を説明したが、12段階よりも多い又は少ない比例段数を有する比例弁25を用いることもできる。他にも、比例弁25が、燃焼器20へ供給する燃料量に対応する弁開度を段階的に変化させる段階比例弁である例を説明したが、燃焼器20へ供給する燃料量に対応する弁開度を連続的に変化させる無段階比例弁を用いることもできる。
【0081】
<2>
上記実施形態では、通常モード(第1暖房運転モード)の複数の設定値(設定目標温度)、及び、手動モード(第2暖房運転モード)の複数の設定値(設定燃料量を特定可能な情報)について具体例を挙げて説明したが、それらの設定値は適宜変更可能である。また、表1及び表2において、比例弁25の弁開度の比例段数と暖房出力との関係についても具体的な数値を挙げて説明したが、それらの数値についても適宜変更可能である。
更に、上記実施形態では、制御手段80が、使用者による温度/時間設定スイッチS5に対する押し操作が3秒以上連続したときに長押操作が行われたと判定する例を説明したが、押し操作が何秒以上連続した場合に長押操作が行われたと判定するかは適宜変更可能である。
【0082】
<3>
上記実施形態において、過剰な暖房が行われていることを示す過剰暖房条件を満たしているか否かを判定するための指標として所定の判別用温度を例示したが、この判別用温度は固定値でもよく或いは可変値でもよい。例えば、制御手段80は、上記実施形態で例示したように22℃という温度を判別用温度の固定値として一貫して用いることができる。或いは、制御手段80は、上記燃料量減少処理を行うと共に判別用温度を高温側に設定変更してもよい。例えば、制御手段80は、一定燃料量運転を行っているときに燃焼器20に供給する燃料量に関わらず、判別用温度の初期値を22℃としておき、燃料量減少処理を1回又は複数回行う毎に判別用温度を0.5℃や1℃などの所定温度だけ高温側に設定変更してもよい。
他には、一定燃料量運転を行っているときに燃焼器20に供給する燃料量が最小供給燃料量(上述した例では、設定値:「P1」(即ち、比例弁25の段数が「1段」))であるときの判別用温度のみを高温側に設定変更してもよい。例えば、設定値:「P2」〜「P5」で一定燃料量運転を行っているときの判別用温度は22℃に設定し、設定値:「P1」で一定燃料量運転を行っているときの判別用温度は最も高温の26℃に設定するような変更を行ってもよい。つまり、この場合は、設定値:「P1」で一定燃料量運転を行っているときに過剰暖房条件(少なくとも温度条件:26℃を含む)が満たされると、燃焼器20での燃料の燃焼が停止されることになる。
【0083】
更に別の例として、以下の表3に例示するように、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値のそれぞれに関連付けて判別用温度を設定しておいてもよい。表3に示した例では、一定燃料量運転で燃焼器20に供給するときの燃料量が多いほど判別用温度が低くなる関係で、手動モードの設定燃料量を特定可能な情報としての複数の設定値のそれぞれに関連付けて判別用温度を設定している。例えば、燃焼器20に供給される燃料量が最も多いときの手動モードの設定値:「P5」(即ち、比例弁25の段数が「5段」)のときの判別用温度は22℃に設定され、燃焼器20に供給される燃料量が最も少ないときの手動モードの設定値:「P1」(即ち、比例弁25の段数が「1段」)のときの判別用温度は26℃に設定されている。
【0084】
【表3】
【0085】
<4>
上記第3実施形態で説明した、長押操作が行われたときの変更先の設定値は適宜変更可能である。例えば、上記第3実施形態では、長押操作が行われたことに応じて手動モードから通常モードへ切り替えるとき、変更先の通常モードの設定値として、過去に通常モードから手動モードへ切り換えられた段階での直近の設定値(「26℃」)を用いていたが、他の設定値を用いてもよい。
例えば、温風暖房装置100を通常モードで運転するときに推奨される設定値が「22℃」であり、温風暖房装置100を手動モードで運転するときに推奨される設定値が「P4」であり、制御手段80がそれらの設定値を記憶しているとき、制御手段80が、長押操作が行われたときの変更先の設定値として、上記推奨される設定値を採用してもよい。或いは、制御手段80は、通常モードの複数の設定値の中の中央値(例えば、12℃〜26℃の間の中央値である「19℃」)、手動モードの複数の設定値の中の中央値(例えば、P1〜P5の間の中央値である「P3」)を、長押操作が行われたときの変更先の設定値としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、暖房能力の高さは確保しながら、吹き出される温風の温度を所望の温度に調節できる温風暖房装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 室内温度センサ(吸込空気温度測定手段)
10 筐体
20 燃焼器
25 比例弁(燃料量調節手段 F)
26a 第1電磁弁(燃料量調節手段 F)
26b 第2電磁弁(燃料量調節手段 F)
40 対流用ファン(空気流動手段)
50 運転操作受付部(運転指示受付手段)
S4 手動モードスイッチ
S5 温度/時間設定スイッチ(設定値切替スイッチ)
S5a 上方向スイッチ(設定値切替スイッチ)
S5b 下方向スイッチ(設定値切替スイッチ)
70 吸込口
72 吹出口
80 制御手段
100 温風暖房装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9