【実施例1】
【0013】
図1ないし
図7は、本発明の実施例1による車両用トルクロッドの防振構造を説明するための図である。なお、本実施例において、前,後、左,右とは、車室内側から前方を見た状態での前,後、左,右を意味している。
【0014】
図において、1は自動車の前部であり、該自動車のエンジンルーム2内には、エンジン本体3aの左側部にトランスミッション3bを結合一体化してなるエンジンユニット3がクランク軸横置きに配設されている。前記エンジン本体3aの右側部は右のエンジンマウント4aにより、前記トランスミッション3bの左側部は左のエンジンマウント4bにより車体構成部材にそれぞれ支持されている。また前記トランスミッション3bの車幅方向略中央部はトルクロッド5により車体構成部材としてのサスペンションメンバ6に連結されている。
【0015】
前記トルクロッド5は、前記トランスミッション3bの車幅方向略中央に連結された第1ブッシュと7と、該第1ブッシュ7よりばね定数が小さく、サスペンションメンバ6に連結された第2ブッシュ8とを棒状の連結部材9で連結してなるものである。
【0016】
前記第1ブッシュ7は、金属製で円筒状の内輪7aと、同じく金属製で円筒状の外輪7bと、該外輪7b,内輪7a間に配置固定されたゴム等の弾性部材7cとで構成されており、その軸線を車両幅方向に向けて配置されている。
【0017】
前記第2ブッシュ8は、金属製で円筒状の内輪8aと、同じく金属製で円筒状の外輪8bと、該外輪8b,内輪8a間に配置固定されたゴム等の弾性部材8cとで構成されている。この第2ブッシュ8は、サスペンションメンバ6のアッパメンバ6aとロアメンバ6bとで構成される空間内に、該サスペンションメンバ6に形成された開口6cからその軸線を車両上下方向に向けて挿入配置され、内輪8a内にボルト11aを挿通し、ナット11bにより締め付け固定されている。
【0018】
また、前記連結部材9は、丸パイプで構成されており、該連結部材9の、一端9aは前記第1ブッシュ7の外輪7bに溶接固定され、他端9bは前記第2ブッシュ8の外輪8bに溶接固定されている。
【0019】
ここで、前記第1,第2ブッシュ7,8の内輪7a,8a略同一の直径を有するのに対し、第2ブッシュ8の外輪8bは第1ブッシュ7の外輪7bより大径に構成されており、そのため第2ブッシュ8の弾性部材8cの径方向厚さは第1ブッシュ7の弾性部材7cの径方向厚さより厚くなっている。この弾性部材8c,7cの、径方向厚さ及び硬度等の設定に起因して第2ブッシュ8の、特に径方向のばね定数が第1ブッシュ7の径方向のばね定数より小さくなっており、これにより外力に対して第2ブッシュ8がより大きく変形して外力を吸収することとなる。
【0020】
また、前記第2ブッシュ8の外輪8bの直径は連結部材9の直径の例えば3倍以上と大きく設定されており、そのため第2ブッシュ8の外輪8bと連結部材9との接続部にはコーナ部a,aが形成されている。
【0021】
そして前記第2ブッシュ8の外輪8bと連結部材9との接続部には錘部材10,10が前記左,右のコーナ部a,aを埋めるように配置固定されている。
【0022】
前記錘部材10は、鉄製で、曲面をなす外側面10aと、前記外輪8b及び連結部材9に沿う形状の内側面10bと、上,下平面10c,10cとを有する塊状のものである。
【0023】
ここで本実施例における前記コーナ部aは、前記第2ブッシュ8の外輪8bに外接し、前記連結部材9の軸線Aと平行な直線bと、前記外輪8bと連結部材9との連結点eから前記外輪8bの半径より少し短い距離だけ離れた点を通り前記軸線Aに直交する直線cと、前記外輪8b及び前記連結部材9とで囲まれた領域を意味する。そして前記外側面10aは、前記直線b及び直線bに内接し、従って前記第2ブッシュ8の外輪8bより軸直角方向にはみ出ることがない形状を有する。そして前記外側面10aの、前端部10a′が前記外輪8bに溶接固定され、後端部10a′′が前記連結部材9に溶接固定されている。
【0024】
また、前記内側面10bは、前記外輪8bの外周面に隙間d1を開けて沿う形状のブッシュ側内側面10b′と、前記連結部材9の外周面に隙間d2を開けて沿う形状の連結部材側内側面10b′′とで構成されている。
【0025】
本実施例では、連結部材9と第2ブッシュ8の外輪8bとの接続部に錘部材10,10を配置固定したので、該錘部材10の質量を適宜設定することにより、該トルクロッド5の固有振動数を効率良く変化させることができ、もって車体構成部材であるサスペンションメンバ6の固有振動数と異ならせることができ、その結果共振を回避できる。即ち、本実施例のトルクロッド5は、前記第1ブッシュ7のばね定数が前記第2ブッシュ8のばね定数より大きいため、該第1ブッシュ7を支点にして第2ブッシュ8が上下あるいは前後に振れる振動モードを有することとなる。そして本実施例では、前記連結部材9と第2ブッシュ8との接続部という前記支点から遠い部位で、かつ第2ブッシュ8に近い部位に錘部材10を配置しているので、トルクロッド5の固有振動数を効率良く変化させることができる。
【0026】
また本実施例では、前記錘部材10を、前記連結部材9と第2ブッシュ8との接続部に形成されているコーナ部a、つまり従来からデッドスペースとなっている空間を埋めるように配置した。具体的には、前記錘部材10の外側面10aが、第2ブッシュ8の外輪8bに外接し、かつ連結部材9の軸線Aを通る直線bに内接するように構成したので、錘部材10を設けたことによる配置スペースの拡大を最小限に抑えることができ、従って、前記第2ブッシュ8をサスペンションメンバ6の断面内に配置する場合であっても必要となる配置スペースを確保し易い。
【0027】
また本実施例では、錘部材10を前記コーナ部aを埋める形状に設定し、かつ該錘部材10の内側面10bを、前記外輪8bの外周面に隙間d1を開けて沿う形状のブッシュ側内側面10b′と、前記連結部材9の外周面に隙間d2を開けて沿う形状の連結部材側内側面10b′′とで構成したので、前記隙間d1,d2は、本実施例のトルクロッド5を、塗料浴に浸漬して塗装する際に、塗料を内部まで進入させるための隙間として機能し、これにより未塗装部分が生じるのを回避できる。
【0028】
また、前記左,右の錘部材10,10は、前記第2ブッシュ8がサスペンションメンバ6の開口6cから内部に挿入配置された状態(
図3,
図4参照)で見ると、前記開口6c内に位置して該開口6cから内部に泥等が進入するのを阻止又は抑制するように機能する。