特許第6366444号(P6366444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6366444-トルクロッドの防振構造 図000002
  • 特許6366444-トルクロッドの防振構造 図000003
  • 特許6366444-トルクロッドの防振構造 図000004
  • 特許6366444-トルクロッドの防振構造 図000005
  • 特許6366444-トルクロッドの防振構造 図000006
  • 特許6366444-トルクロッドの防振構造 図000007
  • 特許6366444-トルクロッドの防振構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366444
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】トルクロッドの防振構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20180723BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20180723BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F16F15/08 T
   B60K5/12 Z
   F16F15/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-198968(P2014-198968)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-70333(P2016-70333A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】多鹿 俊介
(72)【発明者】
【氏名】野村 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大輝
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−185883(JP,A)
【文献】 特開平11−166583(JP,A)
【文献】 特開2008−175359(JP,A)
【文献】 実開平03−112154(JP,U)
【文献】 特開2013−112042(JP,A)
【文献】 特開2010−196850(JP,A)
【文献】 特開2008−095821(JP,A)
【文献】 特開2009−030769(JP,A)
【文献】 特開2009−243548(JP,A)
【文献】 特開2013−177924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
B60K 5/12
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンユニット側に連結される第1ブッシュと該第1ブッシュよりばね定数が小さく車体構成部材側に連結される第2ブッシュとを棒状の連結部材で連結してなるトルクロッドに錘部材を固定することによりエンジンユニット側から車体構成部材側に振動が伝わるのを防止又は抑制する防振構造であって、
前記第2ブッシュは、内輪と前記連結部材より大径の金属製外輪との間に弾性部材を配置固定してなり、
前記連結部材と前記第2ブッシュの外輪との接続部にはコーナ部が形成されており、
前記錘部材は、前記コーナ部を埋めるように配置され、前記連結部材及び外輪に固定されていることを特徴とするトルクロッドの防振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンユニットを車体に搭載するために使用されるトルクロッドに関し、詳細にはエンジンユニット側の振動が車体構成部材側に伝わるのを抑制する防振構造の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、エンジンユニットを複数のエンジンマウントを介して車体構成部材に支持させ、エンジンユニットからのトルク反力や車両加減速時の前後方向力をトルクロッドを介して車体構成部材に支持させる場合がある。また前記トルクロッドには、エンジンユニット側からの振動が車体構成部材側に伝達されるのを抑制する防振機能も要請される。
【0003】
ところで、前記トルクロッドの固有振動数が車体構成部材の固有振動数と一致すると両者が共振し、その結果、エンジンユニット側の振動がトルクロッドを介して車体構成部材、ひいては車室に伝達され、乗員が不快に感じるという問題がある。
【0004】
そこで前記トルクロッドの固有振動数を変化させることで共振を防止又は抑制するようにした防振構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来構造では、第1,第2ブッシュをフランジ部を有する平板状の連結プレートで接続し、前記フランジ部の、前記第1,第2ブッシュの中心を結ぶ仮想直線から離れた部分に錘部材を配設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−95821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来構造では、フランジ部に錘部材を配設したことで、トルクロッドの固有振動数を変化させることができるとされている。しかしその構造上、大径の第2ブッシュに、フランジ部をさらに径方向に拡げて設け、該フランジ部に錘部材を配設するようにしているので、必要な配置スペースが大きくなる。一方、前記第2ブッシュは、サスペンションメンバの筒状をなす部分の断面内等に配設する場合が多く、前記配置スペースの確保が困難という問題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、配置スペースの拡大を回避しつつトルクロッドの固有振動数を変化させることができ、ひいてはエンジンユニット側の振動が車体構成部材側に伝わるのを防止又は抑制できるトルクロッドの防振構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジンユニット側に連結される第1ブッシュと該第1ブッシュよりばね定数が小さく車体構成部材側に連結される第2ブッシュとを棒状の連結部材で連結してなるトルクロッドに錘部材を固定することによりエンジンユニット側から車体構成部材側に振動が伝わるのを防止又は抑制する防振構造であって、
前記第2ブッシュは、内輪と前記連結部材より大径の金属製外輪との間に弾性部材を配置固定してなり、前記連結部材と前記第2ブッシュの外輪との接続部にはコーナ部が形成されており、前記錘部材は、前記コーナ部を埋めるように配置され、前記連結部材及び外輪に固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連結部材と第2ブッシュとの接続部に錘部材を配置固定したので、該錘部材の質量を適宜設定することにより、該トルクロッドの固有振動数を効率良く変化させることができ、もって車体構成部材の固有振動数と異ならせることができ、その結果共振を回避できる。即ち、本発明のトルクロッドは、前記第1ブッシュのばね定数が前記第2ブッシュのばね定数より大きいため、前記第1ブッシュを支点にして第2ブッシュが上下に振れる振動モードを有することとなる。そして本発明では、前記連結部材と第2ブッシュとの接続部という前記支点から遠い部位で、かつ第2ブッシュに近い部位に錘部材を配置しているので、トルクロッドの固有振動数を効率良く変化させることができる。
【0010】
また前記錘部材を、前記連結部材と第2ブッシュとの接続部に形成されているコーナ部、つまり従来からデッドスペースとなっている空間を埋めるように配置したので、錘部材を設けたことによる配置スペースの拡大を最小限に抑えることができ、従って、前記第2ブッシュを筒状の車体構成部材の断面内に配置する場合であっても必要となる配置スペースを確保し易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係るトルクロッドの配置位置を示す斜視図である。
図2】前記トルクロッドの側面図である。
図3】前記トルクロッドの平面図である。
図4】前記トルクロッドの第2ブッシュ部分の配置状態を示す側面図である。
図5】前記トルクロッドの断面平面図(図4のV-V線断面図)である。
図6】前記トルクロッドに固定される錘部材の平面図,背面図及び連結部材側から見た側面図である。
図7】前記トルクロッドに固定される錘部材の背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図7は、本発明の実施例1による車両用トルクロッドの防振構造を説明するための図である。なお、本実施例において、前,後、左,右とは、車室内側から前方を見た状態での前,後、左,右を意味している。
【0014】
図において、1は自動車の前部であり、該自動車のエンジンルーム2内には、エンジン本体3aの左側部にトランスミッション3bを結合一体化してなるエンジンユニット3がクランク軸横置きに配設されている。前記エンジン本体3aの右側部は右のエンジンマウント4aにより、前記トランスミッション3bの左側部は左のエンジンマウント4bにより車体構成部材にそれぞれ支持されている。また前記トランスミッション3bの車幅方向略中央部はトルクロッド5により車体構成部材としてのサスペンションメンバ6に連結されている。
【0015】
前記トルクロッド5は、前記トランスミッション3bの車幅方向略中央に連結された第1ブッシュと7と、該第1ブッシュ7よりばね定数が小さく、サスペンションメンバ6に連結された第2ブッシュ8とを棒状の連結部材9で連結してなるものである。
【0016】
前記第1ブッシュ7は、金属製で円筒状の内輪7aと、同じく金属製で円筒状の外輪7bと、該外輪7b,内輪7a間に配置固定されたゴム等の弾性部材7cとで構成されており、その軸線を車両幅方向に向けて配置されている。
【0017】
前記第2ブッシュ8は、金属製で円筒状の内輪8aと、同じく金属製で円筒状の外輪8bと、該外輪8b,内輪8a間に配置固定されたゴム等の弾性部材8cとで構成されている。この第2ブッシュ8は、サスペンションメンバ6のアッパメンバ6aとロアメンバ6bとで構成される空間内に、該サスペンションメンバ6に形成された開口6cからその軸線を車両上下方向に向けて挿入配置され、内輪8a内にボルト11aを挿通し、ナット11bにより締め付け固定されている。
【0018】
また、前記連結部材9は、丸パイプで構成されており、該連結部材9の、一端9aは前記第1ブッシュ7の外輪7bに溶接固定され、他端9bは前記第2ブッシュ8の外輪8bに溶接固定されている。
【0019】
ここで、前記第1,第2ブッシュ7,8の内輪7a,8a略同一の直径を有するのに対し、第2ブッシュ8の外輪8bは第1ブッシュ7の外輪7bより大径に構成されており、そのため第2ブッシュ8の弾性部材8cの径方向厚さは第1ブッシュ7の弾性部材7cの径方向厚さより厚くなっている。この弾性部材8c,7cの、径方向厚さ及び硬度等の設定に起因して第2ブッシュ8の、特に径方向のばね定数が第1ブッシュ7の径方向のばね定数より小さくなっており、これにより外力に対して第2ブッシュ8がより大きく変形して外力を吸収することとなる。
【0020】
また、前記第2ブッシュ8の外輪8bの直径は連結部材9の直径の例えば3倍以上と大きく設定されており、そのため第2ブッシュ8の外輪8bと連結部材9との接続部にはコーナ部a,aが形成されている。
【0021】
そして前記第2ブッシュ8の外輪8bと連結部材9との接続部には錘部材10,10が前記左,右のコーナ部a,aを埋めるように配置固定されている。
【0022】
前記錘部材10は、鉄製で、曲面をなす外側面10aと、前記外輪8b及び連結部材9に沿う形状の内側面10bと、上,下平面10c,10cとを有する塊状のものである。
【0023】
ここで本実施例における前記コーナ部aは、前記第2ブッシュ8の外輪8bに外接し、前記連結部材9の軸線Aと平行な直線bと、前記外輪8bと連結部材9との連結点eから前記外輪8bの半径より少し短い距離だけ離れた点を通り前記軸線Aに直交する直線cと、前記外輪8b及び前記連結部材9とで囲まれた領域を意味する。そして前記外側面10aは、前記直線b及び直線bに内接し、従って前記第2ブッシュ8の外輪8bより軸直角方向にはみ出ることがない形状を有する。そして前記外側面10aの、前端部10a′が前記外輪8bに溶接固定され、後端部10a′′が前記連結部材9に溶接固定されている。
【0024】
また、前記内側面10bは、前記外輪8bの外周面に隙間d1を開けて沿う形状のブッシュ側内側面10b′と、前記連結部材9の外周面に隙間d2を開けて沿う形状の連結部材側内側面10b′′とで構成されている。
【0025】
本実施例では、連結部材9と第2ブッシュ8の外輪8bとの接続部に錘部材10,10を配置固定したので、該錘部材10の質量を適宜設定することにより、該トルクロッド5の固有振動数を効率良く変化させることができ、もって車体構成部材であるサスペンションメンバ6の固有振動数と異ならせることができ、その結果共振を回避できる。即ち、本実施例のトルクロッド5は、前記第1ブッシュ7のばね定数が前記第2ブッシュ8のばね定数より大きいため、該第1ブッシュ7を支点にして第2ブッシュ8が上下あるいは前後に振れる振動モードを有することとなる。そして本実施例では、前記連結部材9と第2ブッシュ8との接続部という前記支点から遠い部位で、かつ第2ブッシュ8に近い部位に錘部材10を配置しているので、トルクロッド5の固有振動数を効率良く変化させることができる。
【0026】
また本実施例では、前記錘部材10を、前記連結部材9と第2ブッシュ8との接続部に形成されているコーナ部a、つまり従来からデッドスペースとなっている空間を埋めるように配置した。具体的には、前記錘部材10の外側面10aが、第2ブッシュ8の外輪8bに外接し、かつ連結部材9の軸線Aを通る直線bに内接するように構成したので、錘部材10を設けたことによる配置スペースの拡大を最小限に抑えることができ、従って、前記第2ブッシュ8をサスペンションメンバ6の断面内に配置する場合であっても必要となる配置スペースを確保し易い。
【0027】
また本実施例では、錘部材10を前記コーナ部aを埋める形状に設定し、かつ該錘部材10の内側面10bを、前記外輪8bの外周面に隙間d1を開けて沿う形状のブッシュ側内側面10b′と、前記連結部材9の外周面に隙間d2を開けて沿う形状の連結部材側内側面10b′′とで構成したので、前記隙間d1,d2は、本実施例のトルクロッド5を、塗料浴に浸漬して塗装する際に、塗料を内部まで進入させるための隙間として機能し、これにより未塗装部分が生じるのを回避できる。
【0028】
また、前記左,右の錘部材10,10は、前記第2ブッシュ8がサスペンションメンバ6の開口6cから内部に挿入配置された状態(図3図4参照)で見ると、前記開口6c内に位置して該開口6cから内部に泥等が進入するのを阻止又は抑制するように機能する。
【符号の説明】
【0029】
3 エンジンユニット
5 トルクロッド
7 第1ブッシュ
8 第2ブッシュ
9 連結部材
10 錘部材
8a 内輪
8b 外輪
a コーナ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7