(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366446
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】シートのハーネス支持構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20180723BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B60N2/90
B60R16/02 620A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-200385(P2014-200385)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-68780(P2016-68780A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391032451
【氏名又は名称】富士シート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】野村 秀政
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 幸平
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 翔太
(72)【発明者】
【氏名】澤田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】吉木 哲典
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−105641(JP,A)
【文献】
実開平04−039154(JP,U)
【文献】
実開平05−093300(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室フロアに設置された左右一対のフロア側スライドレール、および、シートのシートクッションに組み付けられた左右一対のシート側スライドレールの組み合わせを有するスライド機構により、車両前後方向にスライド可能な前記シートのシートクッションの下面に配索されるハーネスを支持するシートのハーネス支持構造において、
前記ハーネスの一端側が一方の前記フロア側スライドレールに固定され、前記ハーネスの他端側が他方の前記シート側スライドレール付近のシート部材上に配置され、
前記シートクッションの下面には該下面を覆う下面側表皮が設けられ、
前記下面側表皮のほぼ中央には前後方向のスリットが形成され、
前記スリットを境にして、前記ハーネスの一端側が前記下面側表皮の下方に配索されるとともに、前記ハーネスの他端側が前記下面側表皮の上方に配索され、前記ハーネスの中央が前記シートのスライドにより前記スリットに沿って前後方向に移動自在に、前記ハーネスが前記下面側表皮により支持されていることを特徴とするシートのハーネス支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のスライドレールに沿って車両前後方向にスライド可能なシートのシートクッションの下面に配索されるハーネスを支持するシートのハーネス支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のシートに搭載された電装品のハーネスで電気的に接続する際に、シートを構成するシートクッションの下面にハーネスを配設し、ハーネスの垂れ下がりを防止するために、シートを昇降可能にして高さ調整するハイトアジャスタ機構の構成部材である車幅(左右)方向に長尺のトーションバーを利用し、トーションバーの途中に螺旋状のループさせた曲り部を形成し、その曲り部にハーネスを挿通することにより、ハーネスをトーションバーにより支持して垂れ下がりを防止することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−242968号公報(要約、段落0025および
図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した特許文献1に記載のものでは、トーションバーを備えることが前提であり、トーションバーを備えない車種の場合には、トーションバーに相当する部材がなければハーネスの垂れ下がりを防止できないことになる。しかも、シートには前後方向にスライドするためのスライド機能が設けられており、シートをスライドさせるとシートの動きに連動してハーネスにたるみが生じることがあり、上記した特許文献1に記載のものでは、ハーネスが摩擦等によりトーションバーの曲り部を摺動しづらいため、シートの移動に伴いハーネスにたるみが生じても、ハーネスがトーションバーの曲り部を移動することによってたるみを吸収できず、たるみによるハーネスの垂れ下がりが生じるという不都合を解消できない。
【0005】
本発明は、簡単な構成により、シートクッションの下面に配設されたハーネスの垂れ下がりとたるみを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明のシートのハーネス支持構造は、
車室フロアに設置された左右一対の
フロア側スライドレール
、および、シートのシートクッションに組み付けられた左右一対のシート側スライドレールの組み合わせを有するスライド機構により、車両前後方向にスライド可能な前記シートのシートクッションの下面に配索されるハーネスを支持するシートのハーネス支持構造において、前記ハーネスの一端側が一方の前記
フロア側スライドレールに固定され、前記ハーネスの他端側が他方の前記
シート側スライドレール付近
のシート部材上に配置され、
前記シートクッションの下面には該下面を覆う下面側表皮が設けられ、前記下面側表皮のほぼ中央には前後方向のスリットが形成され、前記スリットを境にして、前記ハーネスの一端側が前記下面側表皮の下方に配索されるとともに、前記ハーネスの他端側が前記下面側表皮の上方に配索され、前記ハーネスの中央が前記シートのスライドにより前記スリットに沿って前後方向に移動自在に、前記ハーネスが前記下面側表皮により支持されていることを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、一端側が一方の
フロア側スライドレールに固定され他端側が他方の
シート側スライドレール付近に配置されたハーネスを
、スリットを境にして一端側を下面側表皮の下方に配索し、他端側を下面側表皮の上方に配索し、ハーネスの中央をシートのスライドによりスリットに沿って前後方向に移動自在に、ハーネスを下面側表皮により支持したため、シートの前後方向へのスライドに伴いハーネスにたるみが生じても、
下面側表皮の支持によりハーネスのたるみが吸収され、たるみと、たるみによるハーネスの垂れ下がりを同時に防止することができ、シートクッションの下方にスペースがない場合であっても、簡単な構成により、シートクッションの下面に配設されたハーネスの垂れ下がりとたるみを防止することが可能に
なる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るシートのハーネス支持構造の一実施形態におけるシートの側面図である。
【
図2】
図1のシートのある状態における底面図である。
【
図3】
図1のシートの異なる状態における底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るシートのハーネス支持構造を運転席側シートに適用した一実施形態について、
図1ないし
図3を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態でいう前後、左右とはシートに着座した状態で見た前後、左右を意味する。
【0010】
図1は車両に搭載されたシート1を示し、前後方向にスライド自在に配設されたシートクッション1aと、リクライニング機構によりシートバックフレームがシートクッションフレームに傾倒自在に結合されたシートバック1bと、シートバック1bに取り付けられたヘッドレスト1cとを備えている。ここで、車室フロアFに設置された左右一対のフロア側スライドレール2aとシートクッション1aのシートクッションフレームに組み付けられたシート側スライドレール2bとの組み合わせを有するスライド機構3により、シート1が前後方向にスライドする。
【0011】
このスライド機構3は、例えばシートクッション1aの前下方に設けられたスライドハンドルをアンロック操作することにより、ロック機構のロックが解除されてシート1が前後方向にスライドすることができる状態になり、スライドハンドルのアンロック操作を止めると、ロック機構が作動してスライドレールに係止部材が係止し、シート1がスライド不能に保持される。
【0012】
そして、
図2に示すように、シートベルトのシートバックル5に内蔵されたシートベルトセンサからの信号を、車両前部に設けられた車両制御用ECU(Electornic Control Unit)に送信するために、シートベルトセンサと車両制御用ECUとがハーネス6により接続される。このとき、ハーネス6の右端にはコネクタ7aが装着され、車両制御用ECUに接続されて右側の
フロア側スライドレール
2aの取り付けられたコネクタ7bに、ハーネス6側のコネクタ7aが嵌合するようになっており、ハーネス6の左端はシートバックル5のシートベルトセンサに接続されて左側の
フロア側スライドレール
2a付近
のシートクッション1aに配置されている。
【0013】
また、シートクッション1aの下面を覆う下面側表皮9が設けられており、この表皮9のほぼ中央に前後方向のスリット10が形成され、シートクッション1aの下面に沿って配設されたハーネス6の左半部が、スリット10を介して表皮9の上方であって表皮9とシートクッション1aの下面との間に挿入されるように配設され、表皮9によりハーネス6がその中央から左半部にわたって支持されている。このように、スリット10を有する表皮9が、ハーネス6を前後方向に移動自在に支持する本発明の支持手段の役割を果たす。
【0014】
いま、シート1が
図2の状態から
図3に示すように前方にスライドされると、シート1の移動によりシートバックル5も一緒に前方に移動するため、ハーネス6の左端もシート1に連動して前方に移動する。このとき、コネクタ7a,7bの嵌合により固定されたハーネス6の右端側はほとんど移動せず、ハーネス6の左端側が移動するが、ハーネス6の左半部がハーネス6は表皮9とシートクッション1aの下面との間で移動することになり、表皮9とシートクッション1aの下面との間でハーネス6が覆われることにより、ハーネス6のたるみや垂れ下がりが外部に現れることがない。
【0015】
したがって、上記した実施形態によれば、ハーネス6の左半部を表皮9に形成したスリット10を介して表皮9とシートクッション1の下面との間に配設したため、シート1の前後方向へのスライドに伴いハーネス6にたるみが生じても、表皮9によりハーネス6の左半部を覆うことによってハーネス6のたるみが外部に現れることを防止でき、ハーネス6のたるみと垂れ下がりを同時に防止することができる。その結果、構造的にシートクッション1aの下方にスペースがない車両であっても、既設の表皮9にスリット10を形成するという簡単な構成により、シートクッション1aの下面に配設されたハーネス6の垂れ下がりとたるみを防止することができる。
【0016】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば上記した実施形態では、シートバックル5に内蔵されたシートベルトセンサを電気的に接続するハーネル6に本発明を適用した場合について説明したが、その他の電装品用のハーネスであってシートクッション1aの下面に配設されるものにも適用可能である。
【0017】
また、上記した実施形態では、表皮9を支持手段とした場合について説明したが、支持手段は、例えばシートクッション1aの下面に設けられた前後方向の帯状の布や金属板であってもよく、これら帯状の布や金属板によりハーネス6の中央部分を下方から前後方向に移動自在に支持すればよい。
【0018】
また、上記した実施形態では、本発明を運転席側シートに適用した例を示したが、助手席側シート或いは後部シートにも適用できるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0019】
1 …シート
1a …シートクッション
3 …スライド機構
6 …ハーネス
9 …表皮(支持手段)
10 …スリット(支持手段)