(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<実施例1>
図1は、園芸施設用エネルギー供給装置1の全体構成の概略を示している。この園芸施設用エネルギー供給装置1は、エンジン発電機20、エンジン廃熱回収手段2、エンジン排気ガスの二酸化炭素分離手段3を設け、エンジン廃熱回収手段2が蓄熱手段4に接続され、当該蓄熱手段4に太陽熱集熱手段5が接続されて、エンジン廃熱回収手段2の回収廃熱および太陽熱集熱手段5の捕集熱が共通の蓄熱手段4に蓄熱され、前記蓄熱手段4の補助熱源として燃焼式ボイラー6が設けられ、前記蓄熱手段4を熱源とする除湿手段7、冷熱供給手段8および温熱供給手段9が設けられたものである。
【0014】
園芸施設10としては、各種野菜、果物、花等を育てる施設である。具体的には、ビニールハウス、グラスハウスなどの閉塞された空間を形成するように構成された施設が挙げられる。また、ビニールハウスやグラスハウスなどは透光性を持たせることによって太陽光で光合成を行うように構成されているが、LED光で光合成を行わせるように構成された園芸施設10であってもよい。このような園芸施設10の場合には、ビニールやガラスなどの透光性の素材で形成された園芸施設10に限定されるものではない。また、園芸施設10の耕地としては、土壌などの固定培地であってもよいし、水耕培地などの溶液培地であってもよい。また、園芸施設10の規模は、家庭菜園レベルの小規模なものであってもよいし、大量生産可能な植物工場や、農家が行うビニールハウスレベルの大規模なものであってもよい。
【0015】
エンジン発電機20は、エンジンの駆動力によって発電機を駆動して電力を生じるように構成されたものである。エンジンとしては、排気ガスに二酸化炭素を含むものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、バイオマスガスなどのガスを燃料とするガスエンジンを使用することができる。また、発電機によって得られた電力は、そのまま園芸施設10内の照明等の各種電力負荷に使用するものであってもよいし、不必要時に売電または蓄電池に蓄電し、必要に応じて使用するようになされたものであってもよい。
【0016】
エンジン廃熱回収手段2は、エンジンの廃熱を回収する冷却水循環経路21と、冷却水循環経路21の途中に設けられて、排気ガスからの廃熱を回収する排気ガス熱交換器22と、エンジンおよび排気ガス熱交換器22から回収した廃熱を蓄熱手段4からの水媒体と熱交換する熱交換器23と、熱交換器23で回収した廃熱を蓄熱手段4へと供給する熱回収経路24とによって構成されている。冷却水循環経路21は、エンジンを冷却した後の高温となった冷却水が、排気ガス熱交換器22を通過してさらに高温となった後、熱交換器23を通過する際、当該熱交換器23において、蓄熱手段4からの水媒体と熱交換を行うように構成されている。熱交換後、低温となった冷却水は、ポンプ25によって再度エンジンを冷却し、その後、排気ガス熱交換器22から熱交換器23へと循環を繰り返すように構成されている。一方、熱回収経路24は、蓄熱手段4を構成する貯湯槽の底部付近から取り出した水媒体をポンプ26によって熱交換器23へと供給し、エンジン廃熱を回収して高温のお湯とした後、貯湯槽の上部付近から当該貯湯槽内部へと戻すように構成されている。
【0017】
上記エンジン発電機20と、エンジン廃熱回収手段2とによって、いわゆる熱電併給装置(CHP)11を構成するようになされている。
【0018】
二酸化炭素分離手段3は、切替弁31と、当該切替弁31から園芸施設10までの間を連絡する排気ガス供給経路32とによって構成されている。すなわち、エンジン発電機20から大気解放されていた排気ガスは、切替弁31によって排気ガス供給経路32へと切り替えることで、当該排気ガス供給経路32の下流端部に設けた二酸化炭素ガス供給ノズル33から、園芸施設10へと供給できるようになされている。この二酸化炭素分離手段3によって園芸施設10に二酸化炭素を供給することで、園芸施設10内に栽培する農作物の光合成を促進し、トマトやメロン等の甘味が価値を生む農作物の場合には、糖分を増やし、農作物に甘味を与えることができることとなる。
【0019】
蓄熱手段4は、貯湯槽によって構成されている。この蓄熱手段4は、上記したようにエンジン廃熱回収手段2の熱回収経路24が接続されて貯湯槽内の水媒体を高温のお湯に熱交換して高温の温熱を蓄熱できるようになされている。この蓄熱手段4は、冷熱供給手段8や温熱供給手段9において、蓄熱されたお湯を放出して使用してしまうような場合には、消費した分の水冷媒を補うことができるように、水の供給源に接続されており、自動または手動で、蓄熱手段4に一定量の水媒体を貯留することができるようになされている。
【0020】
太陽熱集熱手段5は、蓄熱手段4の底部付近から取り出した水媒体をポンプ51によって太陽熱集熱器52へ送り、当該太陽熱集熱器52で水媒体を太陽光で加熱した後、高温のお湯となった温水媒体を、蓄熱手段4の上部付近から当該蓄熱手段4の内部へと戻すように循環経路53を形成して構成されている。
【0021】
燃焼式ボイラー6は、蓄熱手段4の底部付近から取り出した水媒体をポンプ61によってボイラー62へと送り、当該ボイラー62で水媒体を加熱した後、高温のお湯となった温水媒体を、蓄熱手段4の上部付近から当該蓄熱手段4の内部へと戻すように循環経路63を形成して構成されている。この燃焼式ボイラー6としては、燃焼によって蓄熱手段4内の水媒体を加熱することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、エンジン発電機20を駆動する燃料と同燃料を使用して燃焼するものを用いることができる。
【0022】
除湿手段7は、蓄熱手段4の上部付近から取り出した温水媒体をデシカント除湿機71へと送り、当該デシカント除湿機71で、温水媒体から得た温風によって吸湿した除湿材(図示省略)の再生を図った後、温度が低下した水媒体を、蓄熱手段4の下部付近からポンプ72によって、再度蓄熱手段4の内部へと戻すように、循環経路73を形成して構成されている。デシカント除湿機71は、除湿材を通過することによって乾燥された空気を当該デシカント除湿機71が配置された空間に供給して除湿を行うように構成されている。また、これによって吸湿した除湿材は、蓄熱手段4からの温水媒体で形成した温風を通過させることによって、当該除湿材から高温多湿となった空気を外部に排気させることで、当該除湿材を再生させることができるように構成されている。この除湿手段7により、園芸施設10内は、除湿することができることとなる。
【0023】
冷熱供給手段8は、蓄熱手段4の上部付近から取り出した温水媒体を吸収式冷凍機81へと送り、当該吸収式冷凍機81で放熱した後、温度が低下した水媒体を、ホンプ82によって、再度蓄熱手段4の下部付近から当該蓄熱手段4の内部へと戻すように循環経路83を形成して構成されている。また、吸収式冷凍機81で発生した冷熱媒体を、園芸施設10内に設けた室内空調機84によって園芸施設10内の冷房に使用し、これによって温度が上昇した熱媒体を、ポンプ85によって、再度吸収式冷凍機81へと戻すように、吸収式冷凍機81と室内空調機84との間には、熱媒体循環経路86が形成されている。この冷熱供給手段8により、園芸施設10内は、冷房することができることとなる。
【0024】
温熱供給手段9は、蓄熱手段4の上部付近から取り出した温水媒体をラジエータ91へと送り、当該ラジエータ91で放熱した後、温度が低下した水媒体を、ポンプ92によって、再度蓄熱手段4の下部付近から当該蓄熱手段4の内部へと戻すように循環経路93を形成して構成されている。この温熱供給手段9により、園芸施設10内は、暖房できることとなる。
【0025】
次に、このようにして構成される園芸施設用エネルギー供給装置1の動作について説明する。以下の動作は、園芸施設用エネルギー供給装置1を制御する制御部(図示省略)によって制御される。
【0026】
園芸施設用エネルギー供給装置1は、エンジン発電機20によって発電を行い、園芸施設用エネルギー供給装置1および園芸施設10内で使用する電力を供給する。
【0027】
この際、エンジンから発生する二酸化炭素は、切替弁31によって排気ガス供給経路32へと排気ガスの流れを切替えることによって、園芸施設10内へ供給し、園芸施設10内で育てる農作物の光合成を促すことができる。ただし、園芸施設10内の二酸化炭素濃度が高くなりすぎると、園芸施設10内に人が出入りすることができなくなってしまうので、二酸化炭素分離手段3は、切替弁31を切替えて、排気ガス供給経路32によって二酸化炭素を園芸施設10内に供給した時間や濃度を管理して、当該園芸施設10内が常に安全な1%以下の二酸化炭素濃度に保たれるように制御するようになされている。
【0028】
また、エンジン発電機20から発生する廃熱は、エンジン廃熱回収手段2によって蓄熱手段4に蓄熱される。この際、蓄熱手段4の内部に貯湯された水冷媒の温度が所定の高温になれば、エンジン発電機20は停止するとともに、エンジン廃熱回収手段2による廃熱の回収も停止する。エンジン廃熱回収手段2による廃熱の回収の管理は、蓄熱手段4の底部付近に接続された熱回収経路24の水冷媒取入口に設けた温度センサ(図示省略)が、所定温度以上の高温になるまでポンプ26を駆動し、熱交換器23からエンジンの廃熱を回収することによって行われる。ただし、蓄熱手段4の蓄熱に合わせてエンジン発電機20を駆動したり、停止したりしていると、エンジン発電機20によって発電される電力が余剰になったり、不足したりすることとなる。したがって、エンジン発電機20には、余剰電力を蓄電し、不足時にはその蓄電した電力を使用できるように、バッテリー(図示省略)が備えられたものであってもよいし、余剰電力を売電し、不足時には外部電力を使用できるように外部電力と接続されたものであってもよい。
【0029】
また、蓄熱手段4に蓄熱する際、本発明の園芸施設用エネルギー供給装置1は、蓄熱手段4に太陽熱集熱手段5を設けているので、上記したエンジン廃熱回収手段2と並行して、この太陽熱集熱手段5によっても蓄熱が行われる。すなわち、蓄熱手段4の底部付近に接続された循環経路53の入口に設けた温度センサ(図示省略)が所定温度以上の高温になるまで、太陽熱集熱手段5に設けたポンプ51が駆動し、当該循環経路53の入口付近から取り出した蓄熱手段4の水冷媒を、太陽熱集熱器52で加熱して高温のお湯とした後、蓄熱手段4の上部付近から、当該蓄熱手段4に戻すことで熱回収される。
【0030】
この際、太陽熱集熱手段5は、太陽光が照射して十分な太陽熱を集熱できなければ、ポンプ51を駆動させても蓄熱手段4に蓄熱することができない。したがって、太陽熱集熱手段5は、循環経路53の入口付近に設けた温度センサ(図示省略)が所定温度以上の高温になっておらず、かつ、太陽熱集熱器52が所定の高温まで太陽熱を集熱している場合に駆動するように制御される。
【0031】
また、太陽熱集熱手段5は、ポンプ51の駆動力を必要とするだけなので、エンジン廃熱回収手段2よりも低コストで熱回収を行うことができる。したがって、太陽熱集熱手段5は、エンジン廃熱回収手段2と同時に並行して運転するものであってもよいし、エンジン廃熱回収手段2よりも優先して太陽熱集熱手段5だけが作動するように制御されるものであってもよい。
【0032】
このようにして蓄熱手段4に蓄熱された温熱は、例えば冬場等には、温熱供給手段9によって、園芸施設10内の暖房に使用することができる。すなわち、温熱供給手段9は、蓄熱手段4の上部付近から取り出した温水媒体をラジエータ91へと送り、当該ラジエータ91で放熱することで、園芸施設10内を温めることができるようになされている。また、温熱供給手段9は、ラジエータ91で放熱し、温度が低下した水媒体を、ポンプ92によって、再度蓄熱手段4の下部付近から当該蓄熱手段4の内部へと戻すように循環経路93によって循環させることで、園芸施設10内を継続して温め、当該園芸施設10内の温度を一定に保つことができるようになされている。このように園芸施設10内の温度を一定に保つことができることで、今まで農作物の生育が困難であった寒冷地等であっても、農作物の生育が可能となる。また、今まで農作物の生育が可能であった地域では、より優れた生育環境を形成することができることとなる。
【0033】
なお、温熱供給手段9は、ラジエータ91によって園芸施設10内の空気を暖めるようになされているが、このラジエータ91としては、土壌や水耕培地などの耕地に設けた伝熱管を使用し、耕地を直接温めるようにしてもよい。また、極寒の状態で園芸施設10内を温めた場合には、園芸施設10内は、設置環境の温度の影響で周囲から冷やされて結露水を生じることとなるため、この結露水を耕地に上手く還元しなければ、急速に乾燥状態になってしまう。また、耕地の乾燥を防止できたとしても、農作物は、耕地から水分の供給を受けて潤っているので、耕地のようにすぐに乾燥状態から脱することはできない。したがって、温熱供給手段9は、耕地や農作物に影響が出ない温度まで温度低下させた状態としてから蓄熱手段4に蓄熱された温水媒体を耕地に散布するようにしてもよい。例えば、園芸施設10内の暖房に使用して温度が低下した温水媒体をそのまま蓄熱手段4に戻さずに、耕地に散布してもよい。この場合、耕地に水分を与えながら耕地を一定の温度に保つことができるので、農作物の乾燥を防止しながら一定の温度を保って農作物の生育を促進することができることとなる。
【0034】
また、蓄熱手段4に蓄熱された温熱は、例えば湿気の多い雨季や、結露を生じる夜間等には、除湿手段7によって、園芸施設10内の除湿に使用することができる。すなわち、除湿手段7は、デシカント除湿機71に設けられた除湿材(図示省略)によって、園芸施設10内を除湿することができるようになされている。この際、吸湿した除湿材は、蓄熱手段4の上部付近から取り出した温水媒体をデシカント除湿機71へと送り、この温水媒体から得た温風によって再生される。また、除湿手段7は、上記除湿材の再生によって温度が低下した水媒体を、蓄熱手段4の下部付近からポンプ72によって、再度蓄熱手段4の内部へと戻すように循環経路73によって温水媒体を循環させることで、常にデシカント除湿機71に温水冷媒を供給して除湿材の再生を継続することができるので、園芸施設10内の除湿を継続することができる。この除湿により、農作物は、長期間の湿気によるカビの発生などを防止できることとなる。
【0035】
さらに、蓄熱手段4に蓄熱された温熱は、例えば夏場等には、冷熱供給手段8によって、園芸施設10内の冷房に使用することができる。すなわち、冷熱供給手段8は、蓄熱手段4の上部付近から取り出した温水媒体を吸収式冷凍機81へと送り、当該吸収式冷凍機81で放熱した後、温度が低下した水媒体を、ホンプ82によって、再度蓄熱手段4の下部付近から当該蓄熱手段4の内部へと戻すように循環経路83によって循環させる一方、吸収式冷凍機81で発生した冷熱媒体を、園芸施設10内に設けた室内空調機84へと送り、当該室内空調機84によって園芸施設10内の冷房を行うようになされている。また、冷熱供給手段8は、これによって温度が上昇した熱媒体を、ポンプ85によって、再度吸収式冷凍機81へと戻すように、熱媒体循環経路86で循環させることで、園芸施設10内の冷房を継続して、当該園芸施設10内を一定の温度に保つことができるようになされている。農作物の成長には、太陽光が必要とされるが、近年の予期せぬ異常高温が続く夏場には、園芸施設10内の温度が農作物の成長を阻害する程の高温になり過ぎてしまうことが懸念されるが、この冷熱供給手段8によって園芸施設10内の温度を一定に保つことができるので、異常高温による農作物の品質低下や収量低下を防止することができることとなる。
【0036】
なお、冷熱供給手段8は、園芸施設10内の空気を冷却して冷房するようになされているが、室内空調機84の代わりに、土壌や水耕培地などの耕地に設けた伝熱管を使用して、耕地を直接冷却するようにしたものであってもよい。また、農作物の中でも、レタス等の葉物の収穫は、農作物からの水分の蒸発を防止して瑞々しい状態を長く保つために、朝露を生じる程、湿度が高く温度が低い早朝に行うことが行われるが、この園芸施設用エネルギー供給装置1の場合は、冷熱供給手段8の室内空調機84に代えて、吸収式冷凍機81で冷却した冷水を作り出し、この冷水を直接園芸施設10内で散布するようにすることで、葉物の収穫に適した早朝の環境を作りだすことができる。また、このように冷水を散布することで、害虫の忌避効果を得ることもできる。さらに、このように形成した冷水は、耕地や園芸施設10内に散布するだけでなく、園芸施設10の屋外上空に散布してもよい。この場合、上空空気層の一部が気化熱で冷やされ、収縮して下降する際に対流が起こることとなる。この対流によって発生する微風は、昼間、太陽熱で高温になった土壌からの輻射熱で夜になっても作物周辺に熱が籠もりやすくなるといった状況を打開して、農作物の成長に必要な一定の温度勾配を有する環境を形成することができる。
【0037】
このように、本発明に係る園芸施設用エネルギー供給装置1によると、蓄熱手段4に蓄熱した温熱を、温熱供給手段9による暖房利用だけでなく、除湿手段7による除湿や、冷熱供給手段8による冷房にも利用して、農作物に好適な様々な環境を形成することができることとなる。
【0038】
また、家庭用の熱電併給装置(CHP)11とは異なり、園芸施設10で使用することを考えると、園芸施設用エネルギー供給装置1に求められる熱負荷は、電力負荷よりも大きくなり、その分蓄熱手段4を大きくしなければならないが、蓄熱手段4を大きくしてしまうと、その分同時に発電されるので電力過多となってしまう。この場合、過多な電力を売電してもコストに見合わず無駄になってしまうことが懸念されるが、本発明に係る園芸施設用エネルギー供給装置1の場合は、太陽熱集熱手段5と併用して蓄熱することができ、さらに不足分は、燃焼式ボイラー6によって水冷媒を加熱してから使用することができるので、園芸施設10の規模に見合った大型の蓄熱手段4を採用しても、エンジン発電機20は、電力負荷に見合った運転を行うことができる。したがって、園芸施設用エネルギー供給装置1は、熱負荷主運転ではなく、電力負荷主運転として、電力負荷に応じてエンジン発電機20の運転を行い、蓄熱手段4に十分な蓄熱がされなかったとしても、太陽熱集熱手段5や燃焼式ボイラー6によって不足する熱を補うことができる。もちろん過多な電力を売電しても十分に利益を得られるような売電価格が確保できる場合においては熱電併給装置(CHP)11は定格出力運転を行い、余剰電力を売電することも可能である。
【0039】
なお、太陽熱集熱手段5は、ビニールハウスやグラスハウス等のように透明の屋根で構成された園芸施設10の場合、当該園芸施設10の屋根に木漏れ日を形成する形で間隙を形成して設けてもよい。この場合、近年の異常高温が継続する夏場であっても、農作物への太陽光の過剰照射を避けて、農作物に好適な日照環境を形成して当該農作物の成長を促すことができる。また、太陽熱集熱手段5を構成する太陽熱集熱器52の配置に困ることも無くなる。
【0040】
また、燃焼式ボイラー6は、蓄熱手段4から取り出した水冷媒を加熱してから再度、蓄熱手段4へと戻すように構成されているが、蓄熱手段4から除湿手段7の循環経路73に取り出したところで加熱して、そのまま除湿手段7に利用するように構成してものであってもよい。同様に、冷熱供給手段8の循環経路83に取り出したところで加熱して、そのまま冷熱供給手段8に利用するように構成されたものであってもよいし、温熱供給手段9の循環経路93に取り出したところで加熱して、そのまま温熱供給手段9に利用するように構成されたものであってもよい。
【0041】
<実施例2>
図2に本実施の形態に係る園芸施設用エネルギー供給装置1を示す。本実施の形態は、上記した実施例1の園芸施設用エネルギー供給装置1の二酸化炭素分離手段3を、吸着剤を用いた圧力式分離方法(PSA法)の二酸化炭素分離手段3aに変更したものである。ここでは、上記実施例1との相違点についてのみ説明し、上記実施例1と同部材には同符号を付して説明を省略する。
【0042】
二酸化炭素分離手段3aは、排気ガスを水槽31aでバブリングさせて未燃分や油分などを除去した後の排気経路32aに温度センサ33aが設けられた構成となっている。この排気経路32aの温度センサ33aの排気下流側には、切替弁34aが設けられ、温度センサ33aが200℃を超えた場合は、大気解放経路35aへと切替られ、200℃以下の場合には、この排気経路32aのまま下流に設けられたPSA法による二酸化炭素分離装置36aへと送られるように構成されている。これは、200℃を超える排気ガスを二酸化炭素分離装置36aへと送ることによって、当該二酸化炭素分離装置36aの信頼性および耐久性が低下することを防止するためである。
【0043】
二酸化炭素分離装置36aでは、吸着剤を充填した吸着槽361aにポンプ362aによって排気ガスを所定の圧力で送り、二酸化炭素以外の他の成分を吸着槽361aに吸着させる。この際、所定の圧力は、吸着槽361a前後のバルブ363aによって調整される。また、吸着槽361aは、並列で2つが接続されており、一方が吸着して飽和した場合に、他方の吸着槽361aに切替え、その間に飽和した吸着槽361aの吸着剤の再生を図ることで、連続して排気ガスの処理が行えるように構成されている。吸着槽361aによって二酸化炭素以外の他の成分が吸着されることによって二酸化炭素濃度が高くなった排気処理ガスは、二酸化炭素分離装置36aの下流側に設けた二酸化炭素充填タンク37aに充填される。二酸化炭素充填タンク37aからは、当該二酸化炭素充填タンク37aと園芸施設10との間を連絡する経路38aに設けられたバルブ39aを開閉させることによって、二酸化炭素を園芸施設10へと供給できるように構成されている。吸着剤としては、二酸化炭素以外の成分を吸着することができるものであれば、特に限定されるものではなく、この種のPSA法で使用されている各種合成ゼオライトを使用することができる。
【0044】
この二酸化炭素分離手段3aを使用した場合、上記した実施例1の二酸化炭素分離手段3よりも正確に、かつ、高濃度で、二酸化炭素だけを取り出して園芸施設10へと供給することができる。しかも、二酸化炭素の分離は、排気ガス熱交換器22よりも下流側で行うため、二酸化炭素の分離のためにエンジン廃熱を利用しない構成となる。したがって、エンジン廃熱の回収効率を低下させることなく、二酸化炭素を分離することができる。
【0045】
なお、本実施の形態において、二酸化炭素分離手段3aは、排気ガスから二酸化炭素ガスを分離して園芸施設10に供給するように構成されているが、吸着槽361aに充填する吸着剤の変更によって、排気ガスから酸素ガスを分離することもできる。したがって、排気ガスの排気経路は、二酸化炭素ガスを分離する経路と酸素ガスを分離する経路との両方とする、またはそのいずれか一方だけとして二酸化炭素ガスおよび/または酸素ガスを取り出し、必要に応じて園芸施設10に供給するように構成してもよい。二酸化炭素ガスの場合は、農作物の糖分を増やし、農作物に甘味を加えることができ、酸素ガスの場合は、農作物の生育を促進することができる。例えば、甘味の必要が無いレタスなどの葉物系の農作物の場合は、二酸化炭素ガスを分離する経路と酸素ガスを分離する経路とを備えることなく、酸素ガスの経路だけで良いこととなる。
【0046】
また、本実施の形態において、園芸施設用エネルギー供給装置1は、エンジン廃熱回収手段2によって回収した廃熱を、蓄熱手段4に蓄熱した後、除湿手段7、冷熱供給手段8および温熱供給手段9を介して園芸施設10で使用するように構成されており、また、エンジン廃熱回収手段2で不足する廃熱回収を、太陽熱集熱手段5や燃焼式ボイラー6で補うように構成されているが、エンジン廃熱回収手段2によって回収した廃熱の利用方法や、他の廃熱回収方法との併用等については特に限定されるものではない。したがって、
図3に示すように、吸着剤を用いた圧力式分離方法(PSA法)の二酸化炭素分離手段3aを備えた園芸施設用エネルギー供給装置1であれば、園芸施設10内で要求される熱負荷に対する廃熱の利用方法や、他の廃熱回収方法との併用や、他の廃熱回収方法との併用の有無等については、どのような構成のものであってもよい。
【0047】
さらに、上記した各実施の形態において、園芸施設用エネルギー供給装置1は、園芸施設10における使用について述べているが、ビニールハウスやグラスハウス等のこの種の施設で行われているものであれば、ウナギの養殖、鯉の養殖、エビの養殖、チョウザメの養殖、その他各種魚介類の養殖など、漁業関連施設での利用を図るものに転用することもできる。