特許第6366460号(P6366460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6366460プロービング装置、回路基板検査装置およびプロービング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366460
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】プロービング装置、回路基板検査装置およびプロービング方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/02 20060101AFI20180723BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20180723BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G01R31/02
   G01R31/28 K
   H05K3/00 T
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-222974(P2014-222974)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-90323(P2016-90323A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】寺沢 和直
(72)【発明者】
【氏名】友井 忠司
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−185912(JP,A)
【文献】 特開2010−236888(JP,A)
【文献】 特開2007−121183(JP,A)
【文献】 特開平02−036306(JP,A)
【文献】 特開2000−206147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/02−31/06
G01R 31/28
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に対して傾斜する方向からプローブを移動させて当該基準面における基板配置位置に配置された検査対象回路基板に当該プローブの先端部を接触させるプロービング処理を実行する移動機構と、前記基準面に垂直な方向に沿った前記検査対象回路基板までの垂直距離を検出する検出部と、検出された前記垂直距離に基づいて前記プロービング処理時に前記移動機構を制御する処理部とを備えたプロービング装置であって、
前記検出部は、前記検査対象回路基板を前記基板配置位置に実際に配置した状態において、表面が平坦な基準回路基板を当該基板配置位置に仮想的に配置して当該基準回路基板におけるプロービング点を含む領域内の複数の被検出位置までの各距離を検出しようとする際に、検出される当該検査対象回路基板までの各検出距離を前記垂直距離としてそれぞれ検出し、
前記処理部は、検出された各前記垂直距離から特定される前記検査対象回路基板の表面の特性と、前記基準回路基板の前記プロービング点に向けて前記基準面に対して前記傾斜する方向から前記プローブを移動させるときの前記先端部の移動軌跡とに基づいて特定される当該移動軌跡と当該表面との交差位置を実際の前記プロービング点として前記移動機構を制御するプロービング装置。
【請求項2】
前記検出部は、予め規定された検出位置に位置した状態で、前記複数の被検出位置までのそれぞれの前記垂直距離を一度に検出可能に構成されている請求項1記載のプロービング装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のプロービング装置と、当該プロービング装置によってプロービングされた前記プローブを介して入出力する電気信号に基づいて前記回路基板を検査する検査部とを備えている回路基板検査装置。
【請求項4】
基準面における基板配置位置に配置された検査対象回路基板までの当該基準面に垂直な垂直方向に沿った垂直距離を検出し、前記基準面に対して傾斜する方向からプローブを移動させて前記基板配置位置に配置された前記検査対象回路基板に当該プローブの先端部を接触させるプロービング処理を、検出した前記垂直距離に基づいて実行するプロービング方法であって、
前記検査対象回路基板を前記基板配置位置に実際に配置した状態において、表面が平坦な基準回路基板を当該基板配置位置に仮想的に配置して当該基準回路基板におけるプロービング点を含む領域内の複数の被検出位置までの各距離を検出しようとする際に、検出される当該検査対象回路基板までの各検出距離を前記垂直距離としてそれぞれ検出し、
検出した各前記垂直距離から特定される前記検査対象回路基板の表面の特性と、前記基準回路基板の前記プロービング点に向けて前記基準面に対して前記傾斜する方向から前記プローブを移動させるときの前記先端部の移動軌跡とに基づいて特定される当該移動軌跡と当該表面との交差位置を実際の前記プロービング点として前記プロービング処理を実行するプロービング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準面に対して傾斜する方向からプローブを移動させて基準面に配置された検査対象回路基板にプローブの先端部を接触させるプロービング処理を実行するプロービング装置、回路基板検査装置およびプロービング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板検査装置として、下記特許文献1において出願人が開示した回路基板検査装置が知られている。この回路基板検査装置は、載置台、移動機構(X−Y−Z移動機構)、プローブ、測定部、記憶部および制御部などを備えて、回路基板に対して所定の検査を実行可能に構成されている。この場合、載置台は、回路基板を載置可能に構成されると共に、クランプ機構を備えて回路基板を固定可能に構成されている。この回路基板検査装置では、移動機構が、制御部の制御に従って回路基板上のプロービング点にプローブをプロービングさせ、測定部が、制御部の制御に従ってプローブを介して検査用信号を出力することによって回路基板に対する所定の検査を実行する。また、この回路基板検査装置では、移動機構にレーザ変位計が取り付けられており、そのレーザ変位計から基準点(良品の回路基板を載置面に平行に載置した場合におけるプロービング点)に対応する回路基板上の点(プロービング点)までの距離を測定し、その測定結果に基づいて基準点に対するプロービング点の高さ方向の相対的位置を特定する。そして、その相対的位置に基づき、記憶部に記憶されているプロービング点の高さ方向の位置情報を補正してプロービングを行う。このため、この回路基板検査装置では、回路基板に反り等が生じていたとしても、各プロービング点に対してプローブを正確にプロービングさせることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−121183号公報(第5−11頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の回路基板検査装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、この回路基板検査装置では、レーザ変位計によって測定したプロービング点までの距離に基づいてプロービング点の高さ方向の位置情報を補正してプロービングを行っている。この場合、図3に示すように、プロービング点P1までの距離を測定する際には、基準点P0を通って載置台2の載置面2aに直交する直線上にレーザ変位計200を位置させてレーザ光Lを回路基板100の表面100aに照射させ、載置台2の載置面2aに対して垂直な方向に沿ったレーザ変位計200からプロービング点P1までの距離D1を測定する。例えば、同図に実線で示すように、回路基板100が、上方に湾曲(変形)しているときには、距離D1が、レーザ変位計200から基準点P0までの距離D0よりも距離D2分だけ短くなるため、この距離D2分を補正した高さをプローブ31をプロービングさせる高さとする。
【0005】
一方、この種の回路基板検査装置では、近接する2つのプロービング点P1に対して2つのプローブ31をプロービングさせる際に(図3では、1つのプロービング点P1、および1つのプローブ31だけを図示している)、各プローブ31同士が接触するのを回避するため、同図に示すように、載置台2の載置面2aに対して傾斜する方向(同図に一点鎖線で示す方向)に沿って各プローブ31を移動させる。このため、同図に示すように、回路基板100が湾曲しているときには、プローブ31の先端部が接触する表面100a上の接触点P2(表面100aと同図に示す一点鎖線との交点)の高さが、プロービング点P1の高さとは異なることがある。したがって、この回路基板検査装置には、レーザ変位計200によって測定された距離D1に基づいて補正した高さ(プロービング点P1の高さ)までプローブ31の先端部を移動させたとしても、プローブ31の先端部が回路基板100の表面100aに接触しないおそれがあり、この点の改善が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、プローブを検査対象回路基板に確実に接触させ得る回路基板検査装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載のプロービング装置は、基準面に対して傾斜する方向からプローブを移動させて当該基準面における基板配置位置に配置された検査対象回路基板に当該プローブの先端部を接触させるプロービング処理を実行する移動機構と、前記基準面に垂直な方向に沿った前記検査対象回路基板までの垂直距離を検出する検出部と、検出された前記垂直距離に基づいて前記プロービング処理時に前記移動機構を制御する処理部とを備えたプロービング装置であって、前記検出部は、前記検査対象回路基板を前記基板配置位置に実際に配置した状態において、表面が平坦な基準回路基板を当該基板配置位置に仮想的に配置して当該基準回路基板におけるプロービング点を含む領域内の複数の被検出位置までの各距離を検出しようとする際に、検出される当該検査対象回路基板までの各検出距離を前記垂直距離としてそれぞれ検出し、前記処理部は、検出された各前記垂直距離から特定される前記検査対象回路基板の表面の特性と、前記基準回路基板の前記プロービング点に向けて前記基準面に対して前記傾斜する方向から前記プローブを移動させるときの前記先端部の移動軌跡とに基づいて特定される当該移動軌跡と当該表面との交差位置を実際の前記プロービング点として前記移動機構を制御する。
【0008】
また、請求項2記載のプロービング装置は、請求項1記載のプロービング装置において、前記検出部は、予め規定された検出位置に位置した状態で、前記複数の被検出位置までのそれぞれの前記垂直距離を一度に検出可能に構成されている。
【0009】
また、請求項3記載の回路基板検査装置は、請求項1または2記載のプロービング装置と、当該プロービング装置によってプロービングされた前記プローブを介して入出力する電気信号に基づいて前記回路基板を検査する検査部とを備えている。
【0010】
また、請求項4記載のプロービング方法は、基準面における基板配置位置に配置された検査対象回路基板までの当該基準面に垂直な垂直方向に沿った垂直距離を検出し、前記基準面に対して傾斜する方向からプローブを移動させて前記基板配置位置に配置された前記検査対象回路基板に当該プローブの先端部を接触させるプロービング処理を、検出した前記垂直距離に基づいて実行するプロービング方法であって、前記検査対象回路基板を前記基板配置位置に実際に配置した状態において、表面が平坦な基準回路基板を当該基板配置位置に仮想的に配置して当該基準回路基板におけるプロービング点を含む領域内の複数の被検出位置までの各距離を検出しようとする際に、検出される当該検査対象回路基板までの各検出距離を前記垂直距離としてそれぞれ検出し、検出した各前記垂直距離から特定される前記検査対象回路基板の表面の特性と、前記基準回路基板の前記プロービング点に向けて前記基準面に対して前記傾斜する方向から前記プローブを移動させるときの前記先端部の移動軌跡とに基づいて特定される当該移動軌跡と当該表面との交差位置を実際の前記プロービング点として前記プロービング処理を実行する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のプロービング装置、請求項3記載の回路基板検査装置、および請求項4記載のプロービング方法によれば、検出した検査対象回路基板までの複数の垂直距離から特定される検査対象回路基板の表面の特性とプローブの先端部の移動軌跡とに基づいて特定される移動軌跡と表面との交差位置を実際のプロービング点とすることにより、実際のプロービング点としての交差位置にプローブの先端部を移動させることで、プローブの先端部を実際のプロービング点、つまり検査対象回路基板の表面に確実に接触させることができる。
【0012】
また、請求項2記載のプロービング装置によれば、予め規定された検出位置に位置した状態で複数の被検出位置までのそれぞれの垂直距離を一度に検出可能に検出部を構成したことにより、例えば、検出位置を移動させて各被検出位置までの垂直距離を個別に検出する構成および方法と比較して、検出処理に要する時間を十分短縮することができるため、プロービング処理の効率および検査処理の効率を十分に向上させることができる。また、このプロービング装置、回路基板検査装置およびプロービング方法によれば、例えば、複数の検出部を用いて各被検出位置までの垂直距離を個別に検出する構成および方法と比較して、検出部が少ない分、コストを十分に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】回路基板検査装置1の構成を示す構成図である。
図2】回路基板検査装置1の動作を説明する第1の説明図である。
図3】従来の回路基板検査装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、プロービング装置、回路基板検査装置およびプロービング方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
最初に、図1に示す回路基板検査装置1の構成について説明する。回路基板検査装置1は、同図に示すように、一例として、載置台2、移動機構3a,3b(以下、区別しないときには「移動機構3」ともいう)、検出部5、操作部6、記憶部7、検査部8および制御部9を備えて、回路基板100を検査可能に構成されている。この場合、載置台2、移動機構3、検出部5、操作部6、記憶部7および制御部9によってプロービング装置が構成される。
【0016】
載置台2は、回路基板100を載置するための載置面2a(基準面に相当する)、および載置面2aに載置した回路基板100を固定する図外のクランプ機構を備えて構成されている。この場合、載置面2aは、平坦に形成されて、載置台2が規定どおりに設置された状態において、一例として水平面と平行となるように構成されている。
【0017】
移動機構3は、制御部9の制御に従ってプローブ31を移動させて、図2に示すように、載置台2の載置面2aに載置されている回路基板100の表面100aにプローブ31の先端部31aを接触させるプロービング処理を実行する。この場合、移動機構3は、載置台2の載置面2aに沿った(平行な)方向(XY方向)にプローブ31を移動させると共に、同図に示すように、載置面2aに対して接離する方向であって、載置面2aに対して傾斜する(一例として、載置面2aに対して80°程度傾斜する)傾斜方向Waからプローブ31を移動可能に構成されている。
【0018】
また、移動機構3は、制御部9の制御に従って検出部5を移動させる。この場合、移動機構3は、載置面2aから上方に向けて予め決められた距離だけ離間した位置において、載置面2aに沿った方向(XY方向)に検出部5を移動可能に構成されている。
【0019】
検出部5は、制御部9の制御に従い、図2に示すように、検出部5が位置している検出位置Paから載置台2の載置面2aに垂直な垂直方向Wbに沿った回路基板100の表面100aまでの垂直距離Daを検出する検出処理を実行可能に構成されている。この場合、検出位置Paは、同図に破線で示すように、変形がなく表面100aが平坦な(または、表面100aが平坦であると仮定した仮想的な)回路基板100(以下、「基準回路基板300」ともいう)を載置台2の載置面2aにおける予め規定された基板配置位置に仮想的に載置(配置)した状態(以下、この状態を「規定状態」ともいう)において、プローブ31をプロービングさせるべき位置として予め規定された基準回路基板300のプロービング点Pdから垂直方向Wbに沿って上方に予め規定された距離だけ離間した位置に規定されている。
【0020】
また、検出部5は、図2に示すように、一例として、検出位置Paに位置した状態(検出位置Paから移動しない状態)で、回路基板100の表面100a上の複数の位置までの各垂直距離Daを、帯状のレーザ光L(または、複数本のレーザ光L)を用いて非接触で一度に検出することが可能な2次元レーザ変位計で構成されている。この場合、検出部5は、同図に示すように、検査対象の回路基板100(検査対象回路基板)を基板配置位置に実際に配置した状態において、規定状態における基準回路基板300のプロービング点Pdが含まれる予め決められた領域F(例えば、プロービング点Pdを中心として予め決められた長さの線状の領域)内の複数の位置(以下、この位置をそれぞれ「被検出位置Pb」ともいう)までの複数の垂直距離Daを検出しようとする際に、実際に検出される検査対象の回路基板100までの各検出距離(被検出位置Pbに対応する位置までの各検出距離)を垂直距離Daとしてそれぞれ検出する。
【0021】
操作部6は、各種のスイッチやキーを備えて構成され、これらが操作されたときに操作信号を出力する。記憶部7は、回路基板100のプロービング点Pdを特定可能な位置情報Ia(例えば、載置台2の載置面2aの基準位置を原点とするXY座標系における座標情報)や、プロービング点Pdにプロービングさせたプローブ31を介して入出力する電気信号に基づいて測定されるべき被測定量の基準値(回路基板100が良品のときに測定される被測定量の値)を示す情報などを含む基板情報Ibを記憶する。また、記憶部7は、規定状態における基準回路基板300のプロービング点Pdに向けて移動機構3がプローブ31を移動させるときの傾斜方向Waに沿ったプローブ31の先端部31aの移動軌跡Ta(図2参照)を特定可能なプロービング情報Icを記憶する。
【0022】
検査部8は、制御部9の制御に従い、回路基板100の表面100aに先端部31aが接触しているプローブ31を介して入出力する電気信号に基づいて回路基板100を検査する検査処理を実行する。
【0023】
制御部9は、操作部6から出力される操作信号に従って回路基板検査装置1を構成する各部を制御する。また、制御部9は、処理部として機能し、特定処理を実行して、移動機構3によって実行されるプロービング処理において、プローブ31を傾斜方向Waから移動させる移動距離Db(図2参照)を、検出部5によって検出される垂直距離Daに基づいて特定する。この場合、制御部9は、複数の垂直距離Daに基づいて特定される回路基板100の表面100aの特性(例えば、表面100aの断面形状(二次元的形状)や、その断面形状を示す曲線の方程式等であって、以下「断面形状等」ともいう)と、規定状態における基準回路基板300のプロービング点Pdに向けて移動機構3がプローブ31を移動させるときの傾斜方向Waに沿ったプローブ31の先端部31aの移動軌跡Ta(同図参照)とが交差する交差位置Pc(同図参照)をプローブ31の先端部31aを接触させるべき実際のプロービング点として、交差位置Pcまでの距離を移動距離Dbとして特定する。
【0024】
次に、回路基板検査装置1を用いて、回路基板100に対する検査を行う方法、およびその際の回路基板検査装置1の動作について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
まず、載置台2の載置面2aにおける予め規定された基板配置位置に検査対象の回路基板100を載置し、次いで、図外のクランプ機構で回路基板100を固定する。続いて、操作部6を操作して検査対象の回路基板100を指定する。この際に、操作部6が操作信号を出力し、制御部9が、その操作信号に従い、指定された回路基板100についての基板情報Ibを記憶部7から読み出す。
【0026】
次いで、操作部6を操作して検査の開始を指示する。この際に、操作部6が操作信号を出力し、制御部9がその操作信号に従って特定処理を実行する。この特定処理では、制御部9は、まず、記憶部7から読み出した基板情報Ibに含まれる位置情報Iaに基づき、移動機構3aによってプローブ31を最初にプロービングさせるべきプロービング点Pdを特定する。続いて、制御部9は、移動機構3aを制御して、規定状態における基準回路基板300のプロービング点Pdから垂直方向Wbに沿って上方に予め規定された距離だけ離間した検出位置Paに検出部5を移動させる(図2参照)。
【0027】
次いで、制御部9は、検出部5を制御して、検出処理を実行させる。この検出処理では、検出部5は、図2に示すように、検出位置Paに位置した状態(検出位置Paから移動しない状態)で、規定状態における基準回路基板300のプロービング点Pdが含まれる領域F(一例として、プロービング点Pdを中心として長さが5mm程度の線状の領域)内の複数(例えば、4つ)の被検出位置Pbに対して複数本のレーザ光L(または帯状のレーザ光Lを)を照射する。ここで、同図に示すように、載置台2の載置面2aにおける基板配置位置に実際に載置された検査対象の回路基板100が変形して表面100aが上方に湾曲しているときには、検出部5は、規定状態における基準回路基板300の各被検出位置Pbよりも上方においてレーザ光Lが表面100aによって反射されるため、規定状態における基準回路基板300の各被検出位置Pbまでの距離よりも短い距離を検出する。この際には、検出部5は、実際に検出される検査対象の回路基板100における各被検出位置Pbに対応する位置(各被検出位置Pbよりも上方の位置)までの各検出距離を垂直距離Da(載置台2の載置面2aに垂直な垂直方向Wbに沿った距離)としてそれぞれ検出する。また、検出部5は、各垂直距離Daを一度に検出する。
【0028】
続いて、制御部9は、検出部5によって検出された複数(この例では、4つ)の垂直距離Daに基づき、検査対象の回路基板100の表面100a(検査対象の回路基板100の表面100aにおける基準回路基板300の領域Fに対応する部分)の特性(断面形状等)を特定する。この場合、制御部9は、複数の垂直距離Daに基づいて補間処理を行うことにより、表面100aの断面形状等を特定する。
【0029】
次いで、制御部9は、記憶部7からプロービング情報Icを読み出して、規定状態における基準回路基板300のプロービング点Pdに向けて移動機構3aがプローブ31を移動させるときの傾斜方向Waに沿ったプローブ31の先端部31aの移動軌跡Ta(図2参照)をプロービング情報Icに基づいて特定する。
【0030】
続いて、制御部9は、特定した表面100aの断面形状等と移動軌跡Taとに基づき、移動軌跡Taと表面100aとの交差位置Pc(図2参照)をプローブ31の先端部31aを接触させるべき実際のプロービング点として特定する。次いで、制御部9は、規定状態における基準回路基板300のプロービング点Pdに向けて移動機構3aがプローブ31を傾斜方向Waから移動させる際の移動開始時にプローブ31の先端部31aを位置させる位置(以下、この位置を「待機位置Pe」ともいう:同図参照)から交差位置Pcまでの傾斜方向Waに沿った距離を移動距離Db(同図参照)として特定する。以上により、移動機構3aによって最初のプロービング点(実際のプロービング点)にプローブ31をプロービングさせる際の移動距離Dbを特定する特定処理が終了する。
【0031】
続いて、制御部9は、基板情報Ibに基づき、移動機構3bによってプローブ31を最初にプロービングさせるべきプロービング点Pdを特定し、そのプロービング点Pdに向けてプローブ31をプロービングさせる際に、実際のプロービング点(プローブ31の先端部31aを実際に接触させるべきプロービング点)、および実際のプローブ31にプローブ31をプロービングさせる際の移動距離Dbを特定する特定処理を上記した手順で実行する。この際には、制御部9は、移動機構3bを制御してプロービング点Pdの上方の検出位置Paに検出部5を移動させて、検出部5に検出処理を実行させ、検出部5によって検出された各垂直距離Daに基づいて移動距離Dbを特定する。
【0032】
次いで、制御部9は、移動機構3a,3bを制御して、両プローブ31を待機位置Peに移動させ、続いて、上記した特定処理において特定した移動距離Dbだけ傾斜方向Waから両プローブ31をそれぞれ移動させて、両プローブ31の先端部31aを検査対象の回路基板100の表面100aにそれぞれ接触させる。ここで、この回路基板検査装置1では、検査対象の回路基板100における表面100aの断面形状等と移動軌跡Taとに基づいて表面100aと移動軌跡Taとが交差する交差位置Pcを特定して、待機位置Peから交差位置Pcまでの傾斜方向Waに沿った距離を移動距離Dbとして特定している。このため、待機位置Peから移動距離Dbだけプローブ31を傾斜方向Waから移動させることで、プローブ31の先端部31aを検査対象の回路基板100の表面100a(交差位置Pc)に確実に接触させることが可能となっている。
【0033】
次いで、制御部9は、検査部8に対して検査処理の実行を指示し、これに応じて、検査部8が、検査処理を実行する。この検査処理では、検査部8は、検査対象の回路基板100に先端部31aがそれぞれ接触している2つのプローブ31を介して入出力する電気信号に基づき、予め決められた被測定量(例えば、各プローブ31が接触している各接触位置の間の抵抗)を測定する。続いて、検査部8は、制御部9を介して記憶部7から基板情報Ibを読み出して、基板情報Ibに基づいて被測定量の基準値を特定する。
【0034】
次いで、検査部8は、被測定量の基準値と測定値とを比較して、検査対象の回路基板100の良否を検査する。続いて、検査部8は、検査結果を図外の表示部に表示させて検査処理を終了する。この場合、この回路基板検査装置1では、上記したように、特定処理によって特定した移動距離Dbだけ、待機位置Peを基点として傾斜方向Waからプローブ31を移動させることで、プローブ31の先端部31aが検査対象の回路基板100に確実に接触されるため、検査対象の回路基板100を確実に検査することが可能となっている。
【0035】
次いで、制御部9は、次のプロービング点Pdの上方の検出位置Paに検出部5を移動させ、特定処理を実行して移動距離Dbを特定し、移動機構3に対してプロービング処理を実行させると共に、検査部8に対して検査処理を実行させる。続いて、制御部9は、他のプロービング点Pdについて同様の処理を繰り返して実行し、全てのプロービング点Pdについて各処理が終了したときに検査対象の回路基板100に対する検査を終了する。
【0036】
このように、このプロービング装置、回路基板検査装置1およびプロービング方法によれば、検出した検査対象の回路基板100までの複数の垂直距離Daから特定される検査対象の回路基板100の表面100aの断面形状等(特性)とプローブ31の先端部31aの移動軌跡Taとに基づいて特定される移動軌跡Taと表面100aとの交差位置Pcを実際のプロービング点とすることにより、実際のプロービング点としての交差位置Pcにプローブ31の先端部31aを移動させることで、プローブ31の先端部31aを実際のプロービング点、つまり検査対象の回路基板100の表面100aに確実に接触させることができる。
【0037】
また、このプロービング装置、回路基板検査装置1およびプロービング方法によれば、検出部5が、予め規定された検出位置Paに位置した状態で、複数の被検出位置Pbまでのそれぞれの垂直距離を一度に検出することにより、例えば、検出位置Paを移動させて各被検出位置Pbまでの垂直距離Daを個別に検出する構成および方法と比較して、検出処理に要する時間を十分短縮することができるため、プロービング処理の効率および検査処理の効率を十分に向上させることができる。また、このプロービング装置、回路基板検査装置1およびプロービング方法によれば、例えば、複数の検出部5を用いて各被検出位置Pbまでの垂直距離Daを個別に検出する構成および方法と比較して、検出部5が少ない分、コストを十分に削減することができる。
【0038】
なお、プロービング装置、回路基板検査装置およびプロービング方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、1つの検出位置Paから各被検出位置Pbまでの各垂直距離Daを一度に検出する例について上記したが、検出位置Paを移動させて各被検出位置Pbまでの垂直距離Daを個別に検出する構成および方法を採用することもできる。
【0039】
また、4つの被検出位置Pbまでの垂直距離Daを検出して、4つの垂直距離Daに基づいて検査対象の回路基板100における表面100aの特性(断面形状等)を特定する例について上記したが、2つ、または3つ、または5つ以上の任意の数(つまり、任意の複数)の被検出位置Pbまでの垂直距離Daを検出して、各垂直距離Daに基づいて表面100aの特性を特定することができる。また、表面100aの特性としては、断面形状等(二次元的な断面形状や、その断面形状を示す曲線の方程式等)に限定されず、表面100aの立体的形状(三次元的な形状)やその立体的形状を示す方程式等が含まれ、このような表面100aの特性に基づいて交差位置Pcを特定することもできる。
【0040】
また、レーザ光Lを用いて被検出位置Pbまでの垂直距離Daを非接触で検出する例について上記したが、例えば、プローブ31を検査対象の回路基板100の表面100aに接触するまで垂直方向Wbに沿って移動させて、その移動距離から垂直距離Daを検出する接触式距離測定の構成および方法を採用することもできる。
【0041】
また、2つの移動機構3を備えた構成例について上記したが、1つまたは3つ以上の移動機構3を備えた構成を採用することもできる。また、移動機構3がプローブ31および検出部5の双方を移動させる構成例について上記したが、プローブ31および検出部5を別々の移動機構3が移動させる構成を採用することもできる。
【0042】
また、載置台2の載置面2aに対して80°程度傾斜する傾斜方向Waからプローブ31を移動させる構成および方法に適用した例について上記したが、傾斜方向(載置面2aに対する傾斜角度)は、任意に規定することができる。また、傾斜方向Waは一定でなくてもよく、プローブ31の移動を開始したときから移動を終了するまでの間に変更(クランク状に変更したり、曲線を描くように連続的に変更したり)してもよい。
【0043】
また、上記の例では、回路基板100(基準回路基板300)上に存在する各プロービング点Pdについてそれぞれ特定処理を行う際に、その都度、垂直距離Daを検出して特定処理を行っているが、1つのプロービング点Pd(または、全てのプロービング点Pdのうちの一部のプロービング点Pd)について特定処理を行う際に検出した垂直距離Daを、他のプロービング点Pdについて特定処理を行う際に用いることもできる。また、同種類の複数の回路基板100に対して検査を行うときには、回路基板100毎に垂直距離Daを検出して特定処理を行ってもよいし、一部の回路基板100についてのみ垂直距離Daを検出して、その垂直距離Daを用いて他の回路基板100(垂直距離Daを検出していない回路基板100)における特定処理を行ってもよい。
【0044】
また、検査部8が測定する被測定量は、抵抗に限定されず、電流や電圧等の各種の物理量が含まれ、これらの被測定量に基づいて回路基板100を検査する回路基板検査装置1に適用することができる。
【0045】
また、載置台2の載置面2a(基準面)が水平面と平行となるように構成された例について上記したが、載置面2aが垂直面と平行となるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 回路基板検査装置
2 載置台
2a 載置面
3a,3b 移動機構
5 検出部
8 検査部
9 制御部
31 プローブ
31a 先端部
100 回路基板
100a 表面
300 基準回路基板
Da 垂直距離
Db 移動距離
F 領域
Pc 交差位置
Pd 規定位置
Pe 待機位置
Ta 移動軌跡
Wa 傾斜方向
Wb 垂直方向
図1
図2
図3