特許第6366477号(P6366477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366477
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】鉄塔装柱設計支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20180723BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G06F17/50 604A
   H02G1/02
   G06F17/50 612C
   G06F17/50 680B
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-233770(P2014-233770)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-99664(P2016-99664A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年5月21日 東北電力株式会社本店において開催された、平成26年度研究開発報告会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 三千男
(72)【発明者】
【氏名】溝江 弘樹
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−117373(JP,A)
【文献】 特開平07−301557(JP,A)
【文献】 特開2003−304613(JP,A)
【文献】 特開2005−237116(JP,A)
【文献】 特開2010−250559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
H02G 1/02
H02G 7/00 − 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一径間の両端に配置される2基の送電鉄塔の設計値を含む設計情報の入力を受け付ける設計情報受付部と、
前記設計情報受付部が受け付けた前記設計情報に基づいて、非線形計画法を使用して、前記2基の送電鉄塔の間に懸架された一の電線と他の電線が所定の風速で揺らされたときの前記一の電線と前記他の電線との離隔距離が最小となる座標x、xと横触れ角θ、θを求め、該結果に基づいて、前記一の電線と前記他の電線との前記離隔距離が最小となる最接近位置と最接近距離とを特定する最接近位置特定部と、
前記最接近位置と前記最接近距離とを視認可能な態様で提示する提示部と、
を備える鉄塔装柱設計支援システム。
【請求項2】
前記離隔距離は、前記一の電線と前記他の電線の座標x、xと横触れ角θ、θから成る次式に基づいて求める、
請求項1に記載の鉄塔装柱設計支援システム。
AB=F(x,x
【請求項3】
前記電線は、前記送電鉄塔の腕金に設けられたがいしにより分断され、分断された前記電線は、分断された前記電線を電気的に接続するためのジャンパ線を介して接続されており、
前記最接近位置特定部は、前記ジャンパ線が所定の風速で揺らされたときの前記ジャンパ線と前記送電鉄塔との離隔距離を演算し、前記ジャンパ線と前記送電鉄塔との離隔距離が最小となる最接近位置を特定する、
請求項1または2に記載の鉄塔装柱設計支援システム。
【請求項4】
前記提示部は、前記最接近位置特定部が特定した前記最接近位置に基づいて、前記2基の送電鉄塔の設計値を修正するための修正案を提示する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄塔装柱設計支援システム。
【請求項5】
前記提示部は、前記最接近位置における前記離隔距離が所定の値を下回る場合に、前記修正案を提示する、
請求項4に記載の鉄塔装柱設計支援システム。
【請求項6】
前記提示部は、前記2基の送電鉄塔のうち少なくとも1基の送電鉄塔の設計値を修正し、修正した設計値を提示する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の鉄塔装柱設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔装柱設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電のための電線が適度なたるみ(弛度)を持たせて懸架されることにより、鉄塔に作用する張力が緩和され、送電鉄塔の倒壊を防止することができる。一方で、風による揺れにより、電線同士あるいは電線と周囲の樹木等とが接触し、短絡又は地絡が発生するおそれがある。このため、電線が風により揺らされたときの電線との離隔距離をあらかじめ求める技術が考案されている。
【0003】
特許文献1には、電線の振れ角に応じて電線の周囲を複数のエリアに区分し、区分されたいずれかのエリアに樹木が存在することを検出すると、エリア毎に異なる式を使用して電線と樹木との離隔距離を求めることが記載されている。特許文献2に開示されている送電線位置計測処理では、電線の懸垂(カテナリー)曲線を求めるため、電線を支持する2つの支持点を結んだ架空線上の任意の観測点3点により懸架された架空線の2次近似曲線を算出する。
【0004】
特許文献1、2には、建設済みの送電鉄塔に懸架されている電線との離隔距離を求めるための技術が開示されているが、送電鉄塔の設計時においても、同一の送電鉄塔に懸架される複数の電線間の距離を求める必要がある。設計時には、送電鉄塔の装柱の設計(腕金の長さ、腕金の垂直間隔等の設計)において、横揺れした電線が相互に最接近したときの電線の離隔距離を算出し、算出した距離が所定の基準を満たさない場合に腕金の長さ、腕金の垂直間隔等の装柱の設計値を変更する。
【0005】
設計時における電線同士の離隔距離を求める従来手法のひとつとして平面的手法がある。ここでは、図13(a)に示すように、送電鉄塔1と送電鉄塔2に3相3線式2回線の電線が懸架されている場合を例に説明する。なお、各送電鉄塔はそれぞれ3段の腕金を有しており、送電鉄塔1と送電鉄塔2の装柱はほぼ同じであるものとする。
【0006】
図13(a)に示すように、送電鉄塔1又は2から離れるほど、つまり径間(送電鉄塔1及び2の間)の中間地点に近づくほど電線のたるみが大きくなるため、中間地点における電線の揺れは径間において最も大きくなる可能性がある。このことから、風に揺らされた電線は径間の中間地点において最も接近する可能性が高いといえる。
【0007】
また、揺らされた各電線の振れ角は風の乱れによってほぼ同じ場合もあれば、異なる場合もある。図13(b)に、径間の中間地点(図13(a)の破線で囲まれた位置)において、最上段の腕金に懸けられた電線(上相の電線)C1、C4が揺れたときの各電線の位置の変化の様子の一例を示す。図13(b)では、紙面右側から左側に向かって風が吹いたものとする。なお、白丸は、腕金に懸架されている箇所(径間の端)における電線C1、C4の位置を示し、黒丸は、径間の中間地点における電線C1、C4の位置を示す。図示するように、電線C1、C4は、平均的な振れ角(平均横振角)に変動角を増減した範囲で振れる。
【0008】
以上のことを踏まえ、従来の平面的手法では、径間の中間地点における平均風速に対する電線の振れ角の平均値(平均横振角)を計算により求め、平均横振角に統計的に求めた変動角を加えた角度に基づいて電線同士の最小離隔距離を求める。
【0009】
また、他の従来手法として径間分割手法がある。図14(a)に、送電鉄塔1と送電鉄塔2を含む径間の概観を示し、図14(b)に、図14(a)の破線で囲まれた部分を拡大した図を示す。径間分割手法では、図14(a)に示すように、送電鉄塔1と送電鉄塔2の径間における電線を複数の区間に分割し、図14(b)に示すように、各分割点の3次元座標を求め、求めた各分割点の3次元座標に基づいて電線同士の最小離隔距離を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−252729号公報
【特許文献2】特開2009−58254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の技術では、分割したエリア毎に異なる式を使用して電線との離隔距離を求める必要があり、処理が煩雑になってしまう。また、特許文献2に記載の技術では、架空線上の任意の1点を順次移動させ、その都度、架空線上の任意の1点を中心とした円弧を求める必要があり、処理が煩雑である。
【0012】
また、平面的手法では、ほぼ同じ装柱の送電鉄塔の径間においては、複雑な処理を必要とせずに電線同士の離隔距離を求めることができるが、送電鉄塔の装柱が大きく異なる場合には、電線同士の最小離隔距離を正確に求めることは難しい。径間分割手法では、装柱が大きく異なる送電鉄塔の径間、あるいは、長い径間においても、電線同士の離隔距離を求めることが可能であるが、分割点の位置の決め方によっては、分割点の位置と電線同士が最接近する位置とがずれる場合があり、求めた最小離隔距離が正確でない場合がある。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、径間に係る条件にかかわらず、電線同士の最小離隔距離を高精度にかつ簡易に求めることが可能な鉄塔装柱設計支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点に係る鉄塔装柱設計支援システムは、
同一径間の両端に配置される2基の送電鉄塔の設計値を含む設計情報の入力を受け付ける設計情報受付部と、
前記設計情報受付部が受け付けた前記設計情報に基づいて、非線形計画法を使用して、前記2基の送電鉄塔の間に懸架された一の電線と他の電線が所定の風速で揺らされたときの前記一の電線と前記他の電線との離隔距離を演算し、前記一の電線と前記他の電線との前記離隔距離が最小となる最接近位置と前記最接近位置における前記離隔距離である最接近距離とを特定する最接近位置特定部と、
前記最接近位置と前記最接近距離とを視認可能な態様で提示する提示部と、
を備える。
【0015】
前記電線は、前記送電鉄塔の腕金に設けられたがいしにより分断され、分断された前記電線は、分断された前記電線を電気的に接続するためのジャンパ線を介して接続されており、
前記最接近位置特定部は、前記ジャンパ線が所定の風速で揺らされたときの前記ジャンパ線と前記送電鉄塔との離隔距離を演算し、前記ジャンパ線と前記送電鉄塔との離隔距離が最小となる最接近位置を特定するようにしてもよい。
【0016】
前記提示部は、前記最接近位置特定部が特定した前記最接近位置に基づいて、前記2基の送電鉄塔の設計値を修正するための修正案を提示するようにしてもよい。
【0017】
前記提示部は、前記最接近位置における前記離隔距離が所定の値を下回る場合に、前記修正案を提示するようにしてもよい。
【0018】
前記提示部は、前記2基の送電鉄塔のうち少なくとも1基の送電鉄塔の設計値を修正し、修正した設計値を提示するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、径間に係る条件にかかわらず、電線同士の最小離隔距離を高精度にかつ簡易に求めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1に係る演算用コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る演算用コンピュータの制御部が実現する機能を示す機能ブロック図である。
図3】ある径間における無風時の電線の弛度曲線、横揺れ時の電線の弛度曲線を3次元座標系として示した図である。
図4】(a)、(b)は電線間の離隔距離を求める方法を説明するための図である。
図5】最急降下法の処理を示すフローチャートである。
図6】実施の形態1に係る離隔距離演算処理を示すフローチャートである。
図7】最接近箇所等を提示する態様を示す一例である。
図8】(a)は、最接近箇所等の提示態様の他の例を説明するための図であり、(b)は、最接近箇所等の提示態様を示す他の例である。
図9】変形例1に係る離隔距離演算処理を示すフローチャートである。
図10】(a)、(b)、(c)は送電鉄塔への電線を懸架する方式の例を示す図である。
図11】(a)、(b)、(c)は多導体送電線について、最小離隔距離の算出を求める手法を説明するための図である。
図12】従来手法と本発明に係る手法による最小離隔距離の算出結果を比較するための図である。
図13】(a)、(b)は従来手法を説明するための図である。
図14】(a)、(b)は従来手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る鉄塔装柱設計支援システムを説明するための実施の形態を説明する。
【0022】
図1に、実施の形態1に係る鉄塔装柱設計支援システム1000のシステム構成を示す。鉄塔装柱設計支援システム1000は、演算用コンピュータ100を含む。演算用コンピュータ100は、設計技術者により作成された送電鉄塔の設計図に基づく設計情報(設計値)から電線が相互に接近して電線間の距離が最も小さくなるときの電線間の想定される離隔距離(最小離隔距離)を求め、求めた最小離隔距離に係る情報を設計技術者に提示する。
【0023】
以下、演算用コンピュータ100の構成を説明する。演算用コンピュータ100は、PC(Personal Computer)等からなり、図1に示すように、入力部110、出力部120、記憶部130、制御部140を有する。入力部110、出力部120、記憶部130は、バス190を介して制御部140に接続されている。
【0024】
入力部110は、ユーザインターフェースであり、キーボード、マウス等の入力装置を備える。設計技術者は、キーボード、マウス等の入力装置を使用して演算用コンピュータ100に所望の処理を行うよう指示する。入力部110は、入力装置を介して受け付けた指示を制御部140に通知する。出力部120も、ユーザインターフェースであり、ディスプレイ装置121を含む。出力部120は、制御部140の制御に従って、ディスプレイ装置121に画像を表示する。
【0025】
記憶部130は、HDD(Hard Disk Drive)等から構成される。記憶部130には、演算用コンピュータ100の動作に必要な各種データ・プログラムが格納される。記憶部130には、演算用コンピュータ100の各部を制御するためのOS(Operating System)131、電線間の最小離隔距離等を求めるための離隔距離演算用プログラム132が格納されている。さらに、記憶部130には、設計技術者が設計した設計図に基づく設計情報を格納するための設計情報格納領域133が確保されている。
【0026】
制御部140は、CPU(Central Processing Unit)、ワークメモリ等を備え、記憶部130に格納されたOS131を実行して、演算用コンピュータ100の各部を制御する。
【0027】
また、制御部140は、離隔距離演算用プログラム132を実行することによって、図2に示す設計情報受付部141、最接近位置特定部142、提示部143として動作し、以下に示す機能を実現する。
【0028】
設計情報受付部141は、2基の送電鉄塔の設計図に基づく情報入力を受け付ける。本実施の形態においては、設計情報受付部141は、あらかじめ設計技術者により設計情報格納領域133に保存された離隔距離算出に必要な装注データならびに径間データ(以下、離隔距離算出用データとする)を読み出し、読みだした離隔距離算出用データを最接近位置特定部142に出力する。設計情報受付部141は、必要に応じて設計情報格納領域133から読みだした離隔距離算出用データに対して変換処理等を施してもよい。
【0029】
最接近位置特定部142は、設計情報受付部141から供給された離隔距離算出用データに基づいて2基の送電鉄塔に懸架された電線が揺らされたときの電線間の離隔距離が最小となる最接近位置を求め、そのときの離隔距離(最小離隔距離)を演算する。演算によって求められた最接近位置、最小離隔距離は、記憶部130に格納される。提示部143は、最接近位置、最小離隔距離を出力部120を介して視認可能な態様で提示する。さらに、提示部143は、最接近位置、最小離隔距離に基づいて、2基の送電鉄塔の設計値を修正するための修正案を提示してもよい。
【0030】
以下、最小離隔距離を求める手法を説明する。なお、以下の説明においては、電線は耐張方式で送電鉄塔に支持されているものとする。また、以下の説明においては、風による電線の横揺れのみを考慮し、がいし及び電線の荷重による電線の横揺れへの影響については考慮しないものとする。
【0031】
一般的に、送電鉄塔に懸架された電線の形状は、電線の張力及び重量によって決まり、カテナリー曲線に従うことが知られている。よって、支持点の位置、径間長が決まるなら、無風時の電線の形状を求めることができる。
【0032】
図3に、ある径間における無風時の電線Wの弛度(たるみ)を示す弛度曲線、横揺れ時の電線Wの弛度曲線を3次元座標系として示す。ここでは、電線Wを支持する一方の支持点(支持点1)は、送電鉄塔1の腕金における懸架位置を示し、他方の支持点(支持点2)は、送電鉄塔2の腕金における懸架位置を示す。
【0033】
支持点1の位置を示す座標PS1(xS1,yS1,zS1)は、送電鉄塔1の建設地の緯度、経度及び標高、送電鉄塔1の高さ、電線Wの懸架の対象となる腕金の送電鉄塔1における高さ位置、電線Wが懸架される腕金の長さにより決まる。腕金の送電鉄塔1における高さ位置、腕金の長さは、送電鉄塔1の装柱の設計値から求められる。演算用コンピュータ100の制御部140は、記憶部130(設計情報格納領域133)に格納された離隔距離算出用データを読み出し、離隔距離算出用データに含まれる送電鉄塔1に係る情報に基づいて支持点1の座標PS1を求める。また、制御部140は、支持点2の座標PS2(xS2,yS2,zS2)についても、離隔距離算出用データに含まれる送電鉄塔2に係る情報に基づいて支持点1と同様に求める。
【0034】
ここで、電線Wが、角度θだけ横揺れした場合、電線Wの任意の点Aの位置の変化について説明する。点Aの位置は、3次元の座標(xx,yy,zz)で表されるものとする。ここでは、無風時の電線Wの点Aの位置が座標PA0(xxA0,yyA0,zzA0)で表され、横揺れにより移動した点Aの位置が座標PA1(xxA1,yyA1,zzA1)で表されるものとする。なお、図3に示す、αは支持点間の鉛直角度であり、βは鉄塔中心間をx軸としたときの支持点間の投影水平角度(支持点間の水平角度をxy平面に投影したもの)であり、α、βは、支持点1、支持点2の位置に基づいて一意に決まる値である。このときの座標PA1の各成分は数1に示すように求められる。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、Δxは、図4(a)に示すように、支持点1のx座標と点Aのx座標の距離を示し、Δx=xxA0−xS1である。d(Δx)は、座標PA1における電線Wの弛度である。このときの弛度は、電線Wの位置、風速、架線張力、径間長、電線重量、支持点の高低差により決まる。
【0037】
【数2】
【0038】
ここで、Tは電線張力(水平成分)、wは単位長における電線質量、Gは重力加速度、qは負荷係数(電線Wに加わる合成荷重(電線重量と着雪重量と風圧荷重のベクトル和)と電線重量の比)、Sは径間長、hは支持点の高低差である。電線張力T、単位長における電線質量w、重力加速度Gの値は、あらかじめ決められた値が記憶部130に格納されている。また、径間長S、高低差hは、支持点1、支持点2の座標PS1、PS2から求めることができる。このように、横揺れにより移動した電線W上の任意の点Aの位置を示す座標PA1、その位置における弛度d(Δx)を求めることができる。
【0039】
次に、横揺れしたときの2本の電線の任意の点の距離の求め方を説明する。電線WA、電線W上の任意の点をA、Bとし、電線WA、電線Wが横揺れしたときの点A、点Bの位置がそれぞれ座標PA1(xxA1,yyA1,zzA1)、座標PB1(xxB1,yyB1,zzB1)で表されるとする。電線Wを支持する一方の支持点(支持点1)の位置は座標PS1(xS1,yS1,zS1)、電線Wを支持する他方の支持点(支持点2)の位置は座標PS2(xS2,yS2,zS2)、電線Wを支持する一方の支持点(支持点3)の位置は座標PS3(xS3,yS3,zS3)、電線Wを支持する他方の支持点(支持点4)の位置は座標PS4(xS4,yS4,zS4)で表されるとする。このとき、座標PA1と座標PB1との距離(移動後の点Aと点Bとの距離)DABは以下の式で表される。
【0040】
【数3】
【0041】
ここで、移動後の点Aの位置を示す座標PA1の各成分、座標PA1における電線Wの弛度を上述の数1、数2を使用して求めると、数4に示すようになる。
【0042】
【数4】
【0043】
数4において、Δxは、x軸上における電線Wの支持点1と点Aとの距離である。dは、点Aの位置における電線Wの弛度である。
【0044】
次に、移動後の点Bの位置を示す座標PB1の各成分、座標PB1における電線W弛度を上述の数1、数2を使用して求めると、数5に示すようになる。
【0045】
【数5】
【0046】
数5において、Δxは、電線Wの支持点3と点Bのx軸上の距離である。dは、点Bの位置における電線Wの弛度である。
【0047】
前述したように、α、βは、支持点1と支持点2(あるいは、支持点3と支持点4)の位置に基づいて一意に決まる値である。従って、上述の数3〜数5から、横揺れ時の2本の電線W、W間の距離DABは、数6に示すように、電線W、Wそれぞれの径間方向の座標の座標xと横触れ角θを変数とする関数Fにより求めることができる。
【0048】
【数6】
【0049】
なお、電線Wについての座標xと横振れ角θ、電線Wについての座標xと横振れ角θが取りうる値は、数7に示すように特定の範囲に限定される。電線Wについての座標xA1が取り得る値の最小値は支持点1のx座標であり、最大値は支持点2のx座標である。電線Wについての座標xが取り得る値の最小値は、支持点3のx座標であり、最大値は支持点4のx座標である。
【0050】
【数7】
【0051】
つまり、電線W−電線W間の最小離隔距離を求めるために、数7に示す制約条件のもとで、数6に示す関数の最小値を求めればよい。つまり、この電線W−電線W間の最小離隔距離を求める手法は、複数の変数で表される関数の最小化問題と同様である。よって、最小離隔距離を求めるため、一般的な非線形計画問題の解法を採用することができる。
【0052】
一般的な非線形計画問題の解法として、最急降下法、共役勾配法等がある。例として、最急降下法を図5を参照しながら説明する。ここでは、以下の式で表されるXを変数とする関数f(X)を目的関数とし、関数f(X)の最小値を求める。
【0053】
【数8】
【0054】
まず、図5に示すように、Xの初期値X(k=0)、適切な学習係数αを選択する(ステップS101)。ここで、Xは、第kステップにおける近似解である。また、kを0とする(ステップS102)。
【0055】
次に、数9に示すように、関数fの勾配の絶対値を求め、関数fの勾配の絶対値が所定の値ε(ε:十分に小さな正の値)以下であるか否かを判別する(ステップS103)。
【0056】
【数9】
【0057】
なお、関数fの勾配は、関数fの微分値であるため、数10により求められる。
【0058】
【数10】
【0059】
関数fの勾配の絶対値が所定の値ε以下であると判別した場合(ステップS103;Yes)、Xを近似解とし(ステップS104)、処理を終了する。
【0060】
一方、関数fの勾配の絶対値が所定の値εより大きいと判別した場合(ステップS103;No)、数11に示すように、現在のXの値(X)から関数fの勾配に学習計数αを乗じた値を減じて得た値を次の関数の値(Xk+1)とする(ステップS105)。
【0061】
【数11】
【0062】
さらに、kの値を加算し(ステップS106)、再び、ステップS103以降を実行する。
【0063】
本実施の形態においては、演算用コンピュータ100は、2本の電線間の最小離隔距離を求めるため、最急降下法の非線形計画問題の解法を採用して目的関数の最小値を求める。
【0064】
以下、演算用コンピュータ100が電線間の最小離隔距離を求める離隔距離演算処理の流れを示す。
【0065】
まず、離隔距離演算処理の実行に先立って、設計技術者は、2基の送電鉄塔1及び2の設計図(装柱図)を作成する。設計技術者は、作成した設計図に基づいて離隔距離算出用データを求め、入力部110を介して求めた離隔距離算出用データを入力する。制御部140は設計技術者の操作に従って、入力された離隔距離算出用データを記憶部130の設計情報格納領域133に保存する。
【0066】
その後、設計技術者は、入力部110を介して、離隔距離演算用プログラム132の起動を指示する。設計技術者の指示に応答して、制御部140は、離隔距離演算用プログラム132を実行して、上述の設計情報受付部141、最接近位置特定部142、提示部143として機能し、図6に示す離隔距離演算処理を行う。
【0067】
以下、送電鉄塔に3相3線式2回線の電線が懸架されている場合を例に説明する。ここでは、ある1つの風速条件(例えば、風速20メートル以下/秒)において、6本の電線のうち選択した2本の電線が最も近づいたときの電線間の離隔距離(最接近距離)を求める。そして、すべての電線の組み合わせ、すなわち、の組み合わせ(15通りの組み合わせ)の電線の最接近距離を求め、15通りの組み合わせに係る最接近距離のうち最も小さい値を最小離隔距離と特定する。なお、風速条件を示す情報は、設計技術者により設計情報格納領域133にあらかじめ格納されている。
【0068】
まず、制御部140は、設計情報格納領域133に保存された離隔距離算出用データを読み出し(ステップS201)、読み出した離隔距離算出用データを記憶部130の一時領域に記憶する。さらに、制御部は、離隔距離の演算対象となる電線の組み合わせを求め、15通りの電線の組み合わせの情報を記憶部130の一時領域に記憶する(ステップS202)。
【0069】
次に、制御部140は、15通りの組み合わせのうちのひとつの組み合わせを選択し、選択した組み合わせの2本の電線(電線Wと電線W)が最も接近したときの電線間の離隔距離である最接近距離を演算し、演算により求めた最接近距離を記憶部130の一時領域に記憶する(ステップS203)。具体的には、制御部140は設計情報格納領域133に保存された離隔距離算出用データに基づいて、まず、電線Wについて、図3に示す支持点1の位置を示す3次元座標PS1(xS1,yS1,zS1)と支持点2の位置を示す3次元座標PS2(xS2,yS2,zS2)を求める。支持点1、支持点2の3次元座標PS1、PS2は、送電鉄塔1及び2のそれぞれの建設地についての情報、電線Wが懸架されている腕金の長さ、腕金の高さ位置等に基づいて算出される。送電鉄塔1及び2のそれぞれの建設地についての情報(緯度・経度、標高等)、腕金の長さ、腕金の高さ位置等は、離隔距離算出用データに含まれている。同様に、制御部140は、電線Wの2つの支持点の3次元座標を求める。
【0070】
次に、制御部140は、電線W、Wについて、数7に示す制約条件を求める。まず、電線Wの線路方向座標x図3に示すx軸方向の座標)が取りうる範囲を2つの支持点1、支持点2の位置を示す3次元座標PS1、PS2から求める。ここでは、線路方向座標xが取りうる値の範囲は、xs1<=x<=xs2となる。同様に、制御部140は、電線Wの線路方向座標xが取りうる値の範囲を求める。
【0071】
さらに、制御部140は、電線W、Wの振れ角θ、θを求める。制御部140は、数7に示す平均横振れ角mean(θ)、mean(θ)(以下、横振れ角θA、θの平均値をmean(θ)、mean(θ)、あるいは、θ、θにバーを付した符号で表す)を求めるため、風速条件、電線重量、電線張力等の値を使用して、以下の数12(「電気学会技術報告(2部)第220号,架空送電線路の絶縁設計要綱」(社)電気学会発行、昭和61年5月、第53頁参照)に基づいて、所定の演算を実行し、求めた値を記憶部130に記憶する。風速条件、電線重量、電線張力は、予め記憶部130に記憶されているものとする。
【0072】
【数12】
さらに、制御部140は、変動角nσ、nσBを求めるため、径間長、負荷係数、電線張力、風速の係数等を使用して、以下の数13に基づいて、所定の演算を実行し、求めた値を記憶部130に記憶する。数13における、a、α、β、K等のパラメータは所定の演算により求められ(「電気学会技術報告(2部)第220号,架空送電線路の絶縁設計要綱」(社)電気学会発行、昭和61年5月、第54頁参照)、予め記憶部130に記憶されているものとする。
【0073】
【数13】
【0074】
そして、制御部140は、数3に示す式を目的関数とし、最急降下法を使用して、上述のように求めた制約条件(数7)のもとでの目的関数の最小値を求める。このようにして求められた最小値が電線Wと電線Wの最小離隔距離となる。併せて、制御部140は、径間において電線Wと電線Wが最も近づいたときの位置を、例えば、3次元の座標値として求め、求めた位置と最接近距離(目的関数の最小値)とを、該当の電線の組み合わせを示す情報とともに記憶部130に記憶する。
【0075】
次に、制御部140は、すべての組み合わせについて電線間の最接近距離の演算が終了したか判別し、終了していない場合(ステップS204;No)、再び、ステップS203以降の処理を実行する。
【0076】
一方、制御部140は、すべての組み合わせについて電線間の最接近距離の演算が終了したと判別すると(ステップS204;Yes)、記憶部130に格納した15通りの最接近距離のうち最も値が小さい最接近距離を最小離隔距離として選択する(ステップS205)。制御部140は、選択した最接近距離(最小離隔距離)と、その位置(最接近箇所)とを視認可能な態様で提示する(ステップS206)。具体的には、制御部140は、最小離隔距離と最接近箇所とを示す画面をディスプレイ装置121に表示させる。ディスプレイ装置121に表示する具体的な態様については後述する。
【0077】
なお、ここでは、ある1つの風速条件の下で、最小離隔距離を演算する処理を説明したが、制御部140は、複数の風速条件が指定された場合、それぞれの風速条件について、図6に示す処理を繰り返し実行して、各風速条件における最小離隔距離を併せて提示するようにしてもよい。
【0078】
図7に、ステップS206で、制御部140がディスプレイ装置121に表示させる画面の例を示す。図7に示す例では、画面左側に2基の送電鉄塔の様子を模式的に示した図を示している。ここでは、一方の送電鉄塔の腕金に符号を付しており、架空地線(上述の説明においては演算の対象外)が懸架される腕金の一方をL1C0、他方をL2C0、上相の電線が懸架される腕金の一方をL1C1、他方をL2C1、中相の電線が懸架される腕金の一方をL1C2、他方をL2C2、下相の電線が懸架される腕金の一方をL1C3、他方をL2C3としている。なお、2つの風速条件(毎秒20メートル以下、毎秒20メートル超過)についてそれぞれ最小離隔距離を演算したものとする。
【0079】
図7に示す例において、画面の左側には、各風速条件について、制御部140が求めた15通りの最接近距離のうち最接近距離が最も小さい電線の組と、線間の離隔距離が最小となる位置(最接近箇所)とが図示されている。さらに、画面の右側には、各風速条件について、最接近する電線の組と最小離隔距離が表示されている。ここでは、風速条件が毎秒20メートル以下の場合、L1C1とL2C2に懸架される2本の電線が最も最接近し、その最小離隔距離は7.8メートルであること、風速条件が毎秒20メートル超過の場合、L2C2とL2C3に懸架される2本の電線が最も最接近し、その最小離隔距離は5.8メートルである例が図示されている。
【0080】
さらに、制御部140は、ディスプレイ装置121に次のような画面を表示するようにしてもよい。ここでは、1つの風速条件について最小離隔距離を演算したものとする。制御部140は、図8(a)に示すようにX、Y、Z軸を取った場合に、各電線の位置をXZ平面、XY平面、YZ平面に投影した図をディスプレイ装置121に表示する。図8(b)にディスプレイ装置121に表示される画面の例を示す。ここでは、例として、図8(a)に示すL1C0とL2C0に懸架された電線2本の最接近距離を測定したときの結果を示している。このような態様で表示することで、設計技術者は、電線が最接近したときの電線の様子を視覚的に把握することができる。さらに、XZ平面、XY平面、YZ平面に投影した図を表示することで、設計技術者は、上空から径間を見た場合、一方の鉄塔から径間に沿う方向に他方の鉄塔を見た場合、径間を側方向から見た場合、と3方向から電線間の間隔を視認することができる。さらに、制御部140は、図8(b)に示す画面を表示する際に、併せて、電線の離隔距離を表示してもよい。
【0081】
さらに、制御部140は、電線間の離隔距離を十分に確保することができるような修正案を提示してもよい。例えば、制御部140は、送電鉄塔の設計値についてシミュレーションを行い、送電鉄塔の修正後の設計値を求め、求めた修正後の設計値をディスプレイ装置121に表示させてもよい。あるいは、制御部140は、修正後の設計値を、CAD(Computer Aided Design)データに変換可能な形式のデータ(例えば、ベクター形式のデータ)として出力してもよい。あるいは、制御部140は、修正後の設計値を提示するのではなく、例えば、上相の腕金の長さを左右にそれぞれ10センチメートル長くするほうが望ましいといった、設計図を修正する際の指針となるような情報を提示してもよい。このとき、制御部140は、少なくとも1基の送電鉄塔についての修正後の設計値又は設計図を修正する際の指針となるような情報を提示すればよい。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態に係る鉄塔装柱設計支援システム1000では、制約条件のもと目的関数の最小値を求めることで、電線同士の最小離隔距離を求める。このように、電線同士の最接近距離をカテナリー曲線から得られる関数とみなして、非線形計画法を適用することで、電線同士の最接近位置を離散値でなく連続値で評価する。よって、例えば、径間の両端の2基の送電鉄塔の装柱が大きく異なる、径間が長い、2基の送電鉄塔の建設地の標高差がある等の2基の鉄塔の立地条件が大きく異なる等の場合であっても、図3に示す、支持点1及び2の座標値、制約条件を適切に求めることで、電線同士の最小離隔距離を求めることができる。つまり、径間に係る条件にかかわらず、電線同士の最小離隔距離を簡易に求めることができる。さらに、従来の径間分割手法では、分割点の位置の決め方次第で演算精度が落ちてしまうことがあったが、上述の手法によれば、高精度の演算を行うことが可能である。
【0083】
(実施例)
以下、2本の電線(A、B)の最接近距離を分割法(径間分割法)と本手法でそれぞれ求め、その結果を検討した。表1に離隔計算検討条件を示す。ここでは、風速を2m/sから40m/sまで変化させた場合に、電線の離隔距離が最も小さいときの距離を最接近距離として求めた。表2に、電線の架線に係る設計条件を示す。

【表1】
【表2】
【0084】
本手法では、先ず、表1及び表2のデータに基づいて、電線W、Wの位置のx座標、x座標を求めると共に、数7に示す制限条件である横触れ角θ、θの上限値と下限値を求める。次に、この制限条件のもとで、数6に示す関数に基づいて、最急降下法等を用いて上記数6の関数の最小値を示すθ、θB、、xを求めると共に、この結果に基づいて、電線WとWとの離隔距離が最小となる最接近位置と最接近距離とを特定することができる。
【0085】
表3に2本の電線(A、B)の最接近距離を分割法と本手法により求めた結果を示す。X軸は、検討対象とする電線を支持する2鉄塔の中心を結ぶ線の水平成分方向で、Y軸は、X軸と直交する線の水平成分方向、Z軸は高さ方向としている。原点(Y,Y,Z)=(0,0,0)は、検討対象径間の前側の鉄塔中心(地表面)である。
【表3】
図12に、分割法について、分割数を変えた場合の最接近距離をプロットした。分割数については、基準とした分割数(径間方向に25分割・横振れ方向10分割)に対する倍率で示している。例えば、分割倍率=2は、径間方向50分割・横振れ方向20分割となる。分割倍率=16で、径間方向400分割・横振れ方向160分割である。なお、径間方向と横振れ方向の分割数の比は固定されている。
【0086】
本手法は分割数によらないことから,グラフ上では水平な直線として表示している。分割法は分割数nを大きくすると精度が良くなるが、図12によれば、分割数の増加とともに,分割法の最接近距離が本手法の最接近距離に漸近していくことが示されている。本手法で得られる最接近距離は,分割数の多い場合の分割法で得られる値に近く、高い精度が得られている。分割法は分割数n→∞で、厳密解(=正解)に収束することから、本手法がほぼ厳密解であることを示唆している。また、分割法は、分割数を増やしていくと指数的に計算量が増大し計算時間が増えるが、本手法の計算時間は一定であり、効率的に厳密解が得られることも本手法の利点である。
【0087】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
上述の実施の形態では、15通りの組み合わせについてそれぞれ求めた最接近距離のうち最も小さい最接近距離を最小離隔距離として提示したが、例えば、最接近距離が所定の閾値未満である場合に、該当する最接近距離についての情報を提示するようにしてもよい。図9に変形例1に係る離隔距離演算処理を示すフローを示す。ステップS201からS204までの処理は実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0088】
ステップS204において、制御部140は、すべての組み合わせについて電線間の最接近距離の演算が終了したと判別すると(ステップS204;Yes)、記憶部130に格納した15通りの最接近距離について、それぞれの値が閾値未満であるか否かを判別する(ステップS205a)。制御部140は、閾値未満であると判別した最接近距離とその位置とを視認可能な態様で提示する(ステップS206a)。
【0089】
さらに、制御部140は、図9に示すフローのステップS205aにおいて、最接近距離が閾値未満であると判別した場合に、電線間の離隔距離を十分に確保できるような修正案を提示してもよい。例えば、制御部140は、送電鉄塔の設計値についてシミュレーションを行い、送電鉄塔の修正後の設計値を求め、求めた修正後の設計値をディスプレイ装置121に表示させてもよいし、修正後の設計値をCADデータに変換可能な形式のデータ(例えば、ベクター形式のデータ)として出力してもよい。あるいは、制御部140は、修正後の設計値を提示するのではなく、例えば、上相の腕金の長さを左右にそれぞれ10センチメートル長くするほうが望ましいといった、設計図を修正する際の指針となるような情報を提示(ディスプレイ装置121に表示)してもよい。このとき、制御部140は、少なくとも1基の送電鉄塔についての修正後の設計値又は設計図を修正する際の指針となるような情報を提示すればよい。
【0090】
また、実施の形態1においては、耐張方式の送電鉄塔を例に説明したが、送電鉄塔への電線を懸架する方式は様々な方式がある。図10に送電鉄塔への電線を懸架する方式をいくつか例示する。一般的に、電線は、絶縁性を確保するため磁器等からなるがいしを介して送電鉄塔に支持される。また、送電電圧が高圧である場合、複数のがいしが連ねられたものが使用される。図10(a)はI吊り型の懸垂方式である。ここでは、紙面左右が線路方向であり、腕金の先端部に、がいし1が吊り下げられ、がいし1の先端に電線1が懸けられる。図10(a)に示す懸架方式においても、上述の実施の形態1と同様に電線間の最小離隔距離を求めることができる。
【0091】
図10(b)では、紙面左右が線路方向であり、線路方向に対して垂直な方向から腕金を見た場合を示す。ここでは、2組のがいし1及び2が腕金の左右(線路方向においては腕金の前方部分と後方部分)にそれぞれ懸けられ、電線1は、がいし1及び2により分断される。さらに、分断された電線1A、電線1Bを電気的に接続するためのジャンパ線ががいし1及び2の先端部に懸けられる。図10(b)に示すジャンパ線を含む場合においても、電線1A、電線1Bのそれぞれと他の電線との最小離隔距離を求めることができる。
【0092】
また、図10(c)では、紙面の奥行き方向が線路方向であり、線路方向に腕金を見た場合を示す。ここでは、2組のがいしを線路方向からみてV字形に配置し、その下端で電線1を支持する(V吊型の懸垂方式)。この場合においても、実施の形態1と同様に電線間の最小離隔距離を求めることができる。
【0093】
さらに、図10(b)に示すジャンパ線についても、ジャンパ線の一端と他端の位置(位置を示す座標値)は、電線1A及び1Bの張力、電線重量、がいしの数、がいしの重量等に基づいて求められる。よって、ジャンパ線が振れる範囲を制約条件とし、ジャンパ線と送電鉄塔との離隔距離を示す関数を目的関数とし、実施の形態1と同様の手法でジャンパ線と送電鉄塔の最小離隔距離について求めることができる。
【0094】
上述の説明においては、1相の電線が1本の電線(単導体)である例を説明したが、例えば、多導体送電線の場合でも電線間の最小離隔距離を求めることができる。図11(a)に、1相が6本の電線から構成される6導体送電線を線路方向に見た場合の略断面図を示す。ここでは、多導体である電線10、20の2回線を図示している。各相をそれぞれ構成する6本の電線の間にはスペーサ12、22が設けられている。スペーサ12、22により、6本の電線(11a〜11f、21a〜21f)は、所定の距離を空けて、略六角形に配置される。さらに、スペーサ12、22が設けられることで、風による横揺れがあっても6本の電線(11a〜11f、21a〜21f)は規定された間隔を保持したままで、一体となって揺らされる。よって、電線10と電線20との最小離隔距離を求める際には、電線10、20のそれぞれの中心点A、Bを通る線路方向の軸上にとった任意の点を、上述の説明の電線WA、電線Wの任意の点とみなして、その距離が最小となるような位置を求めればよい。なお、最小離隔距離を提示する際には、求めた最小離隔距離から、電線10、20のそれぞれの半径を差し引いた値を提示すればよい。
【0095】
また、1相が4導体である場合は、図11(b)に示すように、電線30、40の中心点C、Dを通る線路方向の軸上の任意の点について、1回線が2導体である場合は、図11(c)に示すように、電線50、60の中心点E、Fを通る線路方向の軸上の任意の点について、最小距離を求めればよい。
【0096】
さらに、上記の手法は、電線と電線下の樹木との最小離隔距離を求めるときにも採用できる。この場合、電線が振れる範囲と、電線下の樹木の、例えば、先端部の揺れる範囲とを制約条件として設定すればよい。上記の手法を採用した場合、線路方向に対して直角な方向への樹木の倒壊のみならず、他の方向(線路方向等)への樹木の倒壊についても加味できるため、電線と樹木の離隔距離をより高い精度で算出することが可能である。
【0097】
上記の実施の形態においては、電線の横揺れへの影響を与える条件として風のみを考慮し、がいし及び電線への荷重については説明を省略したが、がいし及び電線への荷重による電線の横揺れへの影響についても考慮する必要がある。
【0098】
上述の実施の形態では、設計技術者が入力部110を介して離隔距離算出用データを入力することにより、演算用コンピュータ100に離隔距離算出用データが供給されたが、離隔距離算出用データの供給方法はこれに限られない。例えば、演算用コンピュータ100は通信インタフェースを備え、ネットワークを介して接続された他のコンピュータから離隔距離算出用データが供給されてもよい。
【0099】
また、上述の例では、設計技術者が作成した設計図に基づいて求めた離隔距離算出用データを演算用コンピュータ100に入力する例を説明した。あるいは、設計技術者が演算用コンピュータ100にインスト−ル済みのCAD用プログラムを実行して設計図を作成し、作成した設計図のCADデータを記憶部130に保存するようにしてもよい。この場合、制御部140は、図6に示す離隔距離演算処理の実行に先立って、CADデータを離隔距離算出の処理に適切な形式のデータ(例えば、ベクター形式のデータ)に変換する処理を実行する。あるいは、演算用コンピュータ100に、ネットワークを介して接続された他のコンピュータからCADデータが供給されてもよい。
【0100】
上述の例では、非線形計画問題を解く手法として最急降下法を採用したが、あるいは、共役勾配法を使用してもよい。
【0101】
また、上述の例では、3相3線式2回線の電線が懸架されている場合に、6本の電線について、電線間の離隔距離を演算したが、架空地線と電線の離隔距離についても演算するようにしてもよい。この場合、架空地線も含めた8本の電線のうち選択した2本の電線が最接近したときの離隔距離を求めるため、の組み合わせ(28通りの組み合わせ)の電線の最接近距離を求め、28通りの組み合わせに係る最接近距離のうち最も小さい値を最小離隔距離と特定すればよい。
【0102】
なお、本発明に係る鉄塔装柱設計支援システムは、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いても実現可能である。例えば、コンピュータに、上記動作を実行するためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶して配布し、これをコンピュータシステムにインストールすることにより、上述の処理を実行する表示制御装置もしくは制御装置を構成してもよい。さらに、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを記憶しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
100 演算用コンピュータ
110 入力部
120 出力部
121 ディスプレイ装置
130 記憶部
131 OS
132 離隔距離演算用プログラム
133 設計情報格納領域
140 制御部
141 設計情報受付部
142 最接近位置特定部
143 提示部
190 バス
1000 鉄塔装柱設計支援システム
A、 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14